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IC16001 IC-MSによるメタボロミクスにおける有機酸と糖リン酸の分析
Application Note IC16001 IC-MSによるメタボロミクスにおける有機酸と 糖リン酸の分析 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 キーワード 分析条件 イオンクロマトグラフィー、 IC-MS、質量分析計、メタボロミクス、有機酸、糖リン イオンクロマトグラフ分析条件 酸、 解糖系 装置: Thermo ScientificTM DionexTM ICS-5000+ RFICTM system IC-MS アミノ酸、糖、糖リン酸、有機酸、脂質類などの低分子量代謝物を網羅的に解析す るメタボロミクスでは GC-MS、LC-MS、CE-MSなどが主な分析手法として用 分離カラム: ガードカラム: IC16001 いられています。 Application Note はじめに Thermo Scientific Dionex IonPacTM AS11 -HC-4 µm(2×50 mm) Thermo Scientific Dionex IonPac AG11 -HC-4 µm(2×250 mm) イオン交換カラムはアミノ酸、糖、糖リン酸、有機酸などのイオン性成分の分離 カラム温度: 30℃ に適していますが、電気伝導度検出器はイオンの選択性に乏しく、導電率を有さ 溶離液: 水酸化カリウム溶離液 溶離液ジェネレーターにより調製 ない化合物は検出が困難です。またイオンクロマトグラフィーでは溶離液に塩 時間(分) を含む水溶液を使用するため、質量分析計との接続は難しいとされてきました。 このアプリケーションノートでは、 サプレッサー方式のイオンクロマトグラフ IC-MS −7 .0 1 .0 0 .0 1 .0 1 .0 1 .0 75 .0 100 .0 80 .0 100 .0 (IC)と質量分析計(MS)を直接接続した IC-MS により、 メタボロミクスのター Dionex ICS-5000+ RFICTM system ゲットの一部である有機酸と糖リン酸を分析する手法について紹介します。 Dionex IonPac AS11-HC-4µm (2 x 50mm) Dionex IonPac AG11-HC-4µm (2 x 250mm) 30 GC-MS LC-MS CE-MS イオンクロマトグラフと質量分析計の接続 ICと MSを接続する際に留意しなければならない点があります。 溶離液流量: KOH ( (mmol/L) サプレッサー: -7.0 1.0 MS IC-MS れ、問題が生じることがありますが、本法の では溶離液に 0.0 1.0 1.0 1.0 含まれる塩をサプレッサーで除去することにより、溶離液を純 75.0 100.0 80.0 100.0 ! 水に変換します。 " # $ % & ' ( ) このため、 * + , - 高濃度の塩を安定して除去すること . / 0 1 2 3 0.20 mL/min. 注入量: Dionex AERS-500, 2mm MS MS 高濃度の不揮発性の塩を含む溶媒を MS IC) に導入すると MSが汚 IC-MS ができる高交換容量のサプレッサーの使用が必須となります。 IC-MS 25 µL 検出器: また MSでのイオン化効率を上げるために、MSに導入する手前 図1に IC-MSシステムのフロー図を示します。 ESI SIM 400 2.0 kV 2 N2 85psi 0 .20 mL/min Thermo Scientific Dionex AERS 500、 2 mm エクスターナルモード 25 µL 電気伝導度検出器 Thermo Scientific MSQ PlusTM 質量分析計 MSQ Plus MS MS でアセトニトリルやメタノールなどの有機溶媒を添加する必要 MS ICがあります。 1. IC-MS 質量分析計条件 0.2 mL/min. イオン化法: ESI ネガティブモード 検出モード: SIM メイクアップ溶媒: アセトニトリル 0 .2 mL/min プローブ温度: 400℃ ニードル電圧: 2 .0 kV コーン電圧: 図2 に記載 ネブライザーガス: N2ガス 85 psi 図1 : IC-MS システムのフロー図 KOH濃度(mmol/L) 2 2 標準液と試料の調製 (PEP)、β -ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドナトリウム 塩(NAD)、β -ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド 還元型 標準液 二カリウム塩(NADH)、D-グルコース -6 -リン酸一ナトリウム NADと NADH以外の標準液は超純水、NADと NADHの標準液は 塩(G6 P)、D-フルクトース -6 -リン酸二ナトリウム塩(F6 P) 4図2 5に上記標準液の 6 7 SIMクロマトグラムを示します。 10 %アセトニトリル水溶液で調製を行いました。糖リン酸の標 準液は次の試薬より調製しました。 試料調製 アセチルコエンザイム Aナトリウム塩(Acetyl-CoA)、DL-グリ IC-MS用のサンプルは、すりつぶした豚レバーから Bligh-Dyer セルアルデヒド三リン酸溶液(GAP)、D-フルクトース 1、6 -ビ 抽 出 法と 限 外ろ 過により 調 製しました。 限 外ろ 過 膜には スリン酸三ナトリウム塩 水和物(FBP)、アデノシン5′-三リン Amicon Ultra-0 .5 Centrifugal Filter Unit with Ultracel-10 酸二ナトリウム塩 溶液(ATP)、ジヒドロキシアセトンリン酸二 membrane(Merk Millipore)を使用しました。 ナトリウム塩(DHAP)、D-(−)-3 -ホスホグリセリン酸二ナト 図3に Bligh-Dyer抽出法の概要を示します。 リウム塩(3PGA)、L-2-ホスホグリセリン酸二ナトリウム塩 水 和 物(2 PGA)、ホ ス ホ エ ノ ー ル ピ ル ビ ン 酸 一 カ リ ウ ム 塩 6,000 100,000 Cone Voltage: 50V SIM:178-180 70,000 Cone Voltage:40V SIM:86-88 -10,000 35,000 40,000 Cone Voltage: 40V SIM:116-118 60,000 40 Cone Voltage: 40V SIM:132-134 Cone Voltage: 50V SIM:258-260 RT=27.89 Cone Voltage: 60V SIM:72-74 -2,000 -10,000 Cone Voltage: 70V SIM:258-260 14 Cone Voltage: 40V SIM:144-146 5, -5,000 -5,000 18,000 Cone Voltage:50V SIM:88-90 Cone Voltage: 50V Cone Voltage: 30V SIM:114-116 SIM:807-809 Cone Voltage: 20V SIM:130-132 -10,000 60,000 Cone Voltage: 50V SIM:184-186 Cone Voltage: 60V SIM:184-186 Cone Voltage: 50V SIM:190-192 Cone Voltage: 60V SIM:190-192 Cone Voltage: 50V Cone Voltage: 40V SIM:166-168 Cone Voltage: 40V SIM:168-170 RT= -10,000 Cone Voltage: 60V SIM:663-665 SIM:661-663 Cone Voltage: 50V SIM:168-170 Cone Voltage: 70V SIM:338-340 Cone Voltage: 60V SIM:505-507 :1 mg/L 図 IC-MS による標準液の SIMクロマトグラム 2.2 : IC-MS SIM / = 1/2 600 µL / = 1/2 600 µL 3 / 200 µL 200 µL 200 µL 200 µL ( ) / 有機酸、糖リン酸、糖、無機イオン ( ) 有機酸、糖リン酸、糖、無機イオン ( ) 超純水+サンプル 180 µL 超純水+サンプル 3. 180 µL 抽出法の概要 図3 : Bligh-Dyer ( )) ( ( 3. F6P 2PGA,3PGA G6P µS/cm F6P 2PGA,3PGA G6P µS/cm PEP PEP - ( FBP DHAP, GAP FBP ATP DHAP, GAP ATP ) ( ) SIM 37.13 - 2PGA 37.13 - 2PGA 37.13 - 3PGA SIM SIM:184-186 SIM:184-186 SIM:184-186 37.13 - 3PGA 62.37 - ATP 62.37 - ATP 39.60 – 51.87 - DHAP 51.87 - DHAP 51.92 - FBP 28.72 – 51.92 - FBP 28.72 – SIM:190-192 SIM:168-170 SIM:168-170 SIM:338-340 SIM:338-340 SIM:114-116 SIM:114-116 SIM:258-260 27.70 - F6P 27.70 - F6P 27.14 - G6P SIM:258-260 SIM:258-260 27.14 - G6P 51.86 - GAP 23.49 – 51.86 - GAP 23.49 – 41.28 – 27.26: - 11.21 – SIM:184-186 SIM:505-507 SIM:505-507 SIM:190-192 39.60 – SIM:258-260 SIM:168-170 SIM:168-170 SIM:72-74 SIM:72-74 SIM:190-192 41.28 – 27.26: - 11.21 – ) SIM:190-192 SIM:144-146 SIM:144-146 SIM:88-90 23.53 – SIM:88-90 SIM:132-134 23.53 – NADH SIM:663-665 SIM:132-134 NADH SIM:663-665 SIM:130-132 42.54 - PEP 42.54 - PEP 13.06 – 13.06 – SIM:166-167 SIM:86-88 24.07 – SIM:86-88 SIM:116-118 24.07 – ( 図4 : レバー抽出物のクロマトグラム 4. SIM:116-118 ) ( 4. SIM:130-132 SIM:166-167 ) 3 3 親水性物質を含むメタノール /水混合層を、限外ろ過後 IC-MSに 注入しました。図 4に豚レバーサンプルの抽出物の電気伝導度 と SIMのクロマトグラムを示します。電気伝導度では多数の ピークが出ており、すべてのピークの定性は困難ですが、いくつ かのピークは MSQ Plusで定性することができました。 まとめ Application Note IC16001 図3で示した Bligh-Dyer抽出法を用いて豚レバーより抽出した IC-MSQ Plusにより解糖系の21種類の有機酸と糖リン酸の 定性を行うことができました。MSQ Plusではカラムで分離 できない成分を確認できるので、サンプルの前処理方法の確 認などに有効であると考えられます。しかしシングル四重極 質量分析計の分解能は未知成分の定性を行うには十分ではな く、トリプル四重極や Orbitrapのような高分解能の質量分析 結果と考察 計がより適しています。 今回の検討では、IC-MSにより計23種の有機酸、糖リン酸および グルコースの定性を試みました。図2の23成分のクロマトグラ ムのうち、21成分を MSQ Plusで検出することができました。グ ルコース -6 -リン酸(G6 P)と フルクトース -6 -リン酸(F6 P) は同じm/z 259ですが、これらは陰イオン交換カラムで分離で きているため、それぞれ別成分として定性が可能です。m/z 191 のクエン酸とイソクエン酸についても同様に定性が可能でし た。一方、 同じm/z 185の2 -ホスホグリセリン酸(2 PGA)と 3 -ホスホグリセリン酸(3 PGA)、 m/z 169のジヒドロキシアセ トンリン酸(DHAP)とグリセルアルデヒド3リン酸(GAP)は、 今回の条件ではカラムで分離できなかったため、それぞれ定性、 定 量することはできませんでした。また Acetyl-CoAと NADは 今回の方法では検出できませんでした。 MSQ Plusシングル 参考文献 1 . Dionex Corporation (now part of Thermo Fisher Scientific). MS ApplicationGuide; Sunnyvale, CA. 2 . Dionex Corporation (now part of Thermo Fisher Scientific). Determination of Common Anions and Organic Acids Using Ion Chromatography-Mass Spectrometry. Application Note 243 ; Sunnyvale, CA. 3 . Thermo Fisher Scientific. Determination of NADH and NADPH Using Ion Chromatography and High Resolution Accurate Mass Spectrometry. Technical Note 149 ; Sunnyvale, CA. Dionex ICS-5000 + 四重極質量分析計 Ⓒ 2014 Inc. 無断複写・転載を禁じます。 2016 Thermo Fisher Scientific K.K. ここに記載されている会社名、製品名は各社の商標、登録商標です。 ここに記載されている内容は、予告なく変更することがあります。 サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 分析機器に関するお問い合わせはこちら TEL 0120-753-670 FAX 0120-753 -671 〒221-0022 横浜市神奈川区守屋町3 -9 E-mail : [email protected] www.thermoscientific.jp IC078_A1601SO