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知識工学基本技術のFAへの応用

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知識工学基本技術のFAへの応用
特集
FAシステムとその画像処理技術
U.D.C.〔占58.5.011.5る:る81.323〕:る81.32.0る
知識工学基本技術のFAへの応用
BasedControITechnologY
KnowIedgeEnglneering
for FactorYAutomation
松本邦占項*
g〝〃由鬼才 肋由〟,抑∂わ
菜軟性,高信頼性,高保守性及びシステムの段階的立上げが求められている。これ
薦田憲久*
入bカゐゐα
らの要求にこたえるために,エンドユーザーの生産技術者がもっているFA制御の知
明石吉三*
識を活用し現場で計画や制御のプログラムを容易に作成・保守できる,知識工学を
解良和郎=
肋z〟0+打eγロ
渡瀬英夫…*
ガ左お∂l柏Jおsg
最近のFAシステムでは,製品の多様化,ライフサイクルの短期間化に伴って,高
応用した分散形FA荷り御のミドルソフトウェアと,異形の貨物を自動で積み付けるた
めの横付け計画の基本ソフトウェアを開発した。制御用ミドルソフトウェアとして
助椚0〔ね
A由sカ∼
一打ざcぁざz∂
岡坂建一****
+打g乃■オcゐオ(〕点αざα々α
は,非手続形言語のIF(条件)∼THEN(結論)ルールで記述するSCD,及び動作フロ
ーで記述するSCRを開発し,16ビットマイクロコンピュータに搭載して現場設置形
のFAコントローラFMCを実現した。また,横付け計画用の基本ソフトウェアとして
は,計画者の経験的知識と数値処理・図形処理を結合できる貨物配置計画システム
を開発し,16ビット制御用計算機HIDIC一V90/5へ搭載し実現した。
n
緒
言
知識工学応用の類似の研究は,国内外の大学や企業でも進
多品種少量・中量生産に対応する高菜軟性,高信頼性,高
められており13ト15),FAの新世代の核技術となってゆくと考える。
保守性のFA(FactoryAutomation)システムとするために,
多様な作業パターンに対応できる自律分散FA制御システムを
臣lルール制御ソフトウェアSCD
開発した1卜4)。このシステムの中でFA機器群を制御する制御ソ
2.1自律分散FAと制御ミドルソフトウェアの基本思想
フトウェアと,製品をこん包した貨物をパレットやコンテナ
FAシステムで,高桑軟性,高信頼性及び高保守性の要求に
に積み付けるための横付け計画ソフトウェアについて述べる。
これらのソフトウェアには知識工学を応用し,現場の生産技
こたえる方式として,FAシステムを構成する加工・組立,搬送,
術者が制御や積付けのプログラムを容易に作成・保守できる
部品供給,検査,こん包,横付けなどの各サブシステムで,各
ようにしている。条件組合せ制御に:対しては,ルール制御ソ
サブシステムの自律性を保ちながら,機器故障などに迅速に対
フトウェアSCD5卜7)(StationCoodinator)を,順序制御に対し
応するため,協調制御させることを特徴とする自律分散思想に
Control-
ては動作フロー制御ソフトウェアSCR軌9)(Station
基づく自律分散FA制御システムを開発した。自律分散FA制
1er)を,横付け計画に対しては対話形貨物酉己置計画システ
御トータルシステムの構成は,図1に示すように,管理・制御
ム10)・11)を開発し,16ビットマイクロコンピュータM68000に搭
レベルに応じて6階層に分け,各レベルの機能を満たす計算
載し,低価格の現場設置形コントローラ12〉を実現している。
機,FAコントローラFMC(FlexibleManufacturingcell
階
層
WORKS
機
能
システム構成
生産計画
(経営レベル)
l
■川DIC-V90/50
HIDIC-V90シリーズHIDIC-V90/30
進捗管理
実績管理
SHOP
FMC(FlexibleMan]facturi咽
l
日程計画
FACTORY
注:略語説明
l
汎郎十算機
工手呈間管王璧
在庫管理
テ一夕管理
卜HOPCON
l
l
CallContro‖er)
Pけ0(プロセス入出力機器)
lF(インタフェース装置)
NC(数値制御機械)
PJC(ProgrammableLogic
Controller)
CRT(CathodeRayTube)
バレタイソング
WORK
CENTER
設備統括制御
(CEJL)
設備監視
l
l
FMC
トラッキング
ll
FMC
FMC
STAT10N
lpl/Ol
UN「T
*
機
器
J■。
lp /Oll■p+
l
CRT
C
l機■械IlロボットIl絡
械lロボットl】N
CllロボットtN
′機Il機
日立製作析システム開発研究所工学博士
日立製作所大みか工場
自律分散FA制御ト
***
ータルシステム
ように,管王里・制御レベルに応
じて6階層に分け,各レベルの
吉l
**
図l
図に示す
l
い+
l(荒業)
l■Fl
l.吉l
肝l
機器制御
-′
l
l
WORK
l
l
l
l
---l(バッF非ップ)l
l
l
l
l
l
l
l
日立製作所土浦工場
機能を満たす計算機.FAコント
ローラ,ネットワークなどを準
備Lた。
****日立製作所笠戸工場
31
692
日立評論
VOL.67
No.9(1985-9)
Controller),ネットワークなどで構成する。
漂昔口
制御ミドルソフトウェアについては,生産現場の熟練運転
員がもつ経験的知識や運転論理を,生産技術者がそのままの
JFトーー・・一
-)
rFトニニ)
TH巨N
r・・一‥-=一一=う
形で記述でき,その知識を機器の制御へ直接利用できること
を目指して,知識工学技術をシステム制御へ応用した。知識
を活用するためには,一定の形式のもとで構造化された知識
葺ルール記
基本文形表示画面
ルールテーブル
ワークテーブル
SCD核プログラム
と呼ばれる情報群を蓄える知識ベース(KnowledgeBase)と,
その問題解決に利用するための処理装置一推論機構(Infer-
lF(ステーション〈X〉は空)
1F〔ステーション〈X〉
enceEngine)-を基本要素として含む構成をもつ。知識ベー
は〈Y〉作業可)
THEN(〈Y〉作業の処理可)
スを推論機構から分離することによって,知識をデータとし
(ステーションく1〉は空)
lF部パターン
マッチング部
(ストション〈字〉は作業中)
(ステーション〈1〉は
く組立A〉作業可)
(ステーション〈1〉は
〈組立B〉作業可)
(ステーション〈2〉は
く加工A〉作業可)
て取り扱うことが可能となり,この結果,知識の定義,変更
手続き1
及び追加が容易となり,システム制御への適用が可能となる。
2.2
SCDと従来手続形言語の比較
手続き2
論
結
書込み部
制御指令テーブル
生産技術者の判定論理を中心とした制御ノウハウ(宣言的知
(台車〈1〉はワーク
識)を制御プログラムとする場合,従来はFORTRANなどの手
く38〉をステーション
く1〉に搬送せよ)
続形言語で記述されていた。このため,制御ノウハウをプロ
制御指令
出 力部
システム
現況入力部
グラム言語レベルの論理に置き換え,制御プログラムの中に
制御メッセージ
埋め込まねばならないという問題のほかに,テーブル設計,
処理アルゴリズム設計,プログラム構造設計などの専門知識
図3
SCDのソフトウェア構成
現況メッセージ
マンマシン端末からIF(条件トTHEN
を必要とする。また,制御ノウハウがどのように利用され,
(結論)ルールで記述された制御プログラムは,ルールテーブルに記憶される。
どのような役割を果たしているかの判別作業に多大の時間を
FA機器やプロセスの状態は,システム現況としてワークテーブルに書き込ま
要し,制御プログラムの迅速な開発,変更は難作業である。
れる。この二つのテーブルの内容がパタ此ンマッチングされ,制御指令が結論
とLて出される。
これに対しSCDは,IF-THENルール,すなわち「∼のと
きは,∼を行なう+といったルールの羅列により,運転知識
を表現する方法であり,その記述性,可読性及び保守性に優
存在すると,THEN(結論)部の文字列を新たにワークテーブ
れている。SCDによるルール記述とFORTRAN記述の比較例
ル(中間結論の場合),あるいは制御指令テーブル(最終結論の
を図2に示す。
場合)に書き込む。制御指令テーブルに書き込まれた結論は,
2,3
制御指令出力部により制御対象へ出力される。
SCDのソフトウェア構成
SCDのソフトウェア構成を図3に示す。マンマシン端末か
2.4
らIF-THENルールで記述された制御プログラムは,ルール
ルールの会話形入力方式
ルールの入力・修正を簡単かつ誤りなく行なえるようにす
テーブルに記憶される。FA機器やプロセスの状態であるシス
るため,図4に示す構文誘導形入力方式を開発した。これを
テム現況は,システム現況入力部を通しワークテーブル内に
ルールエディタと呼ぶ。本エディタは,ルールの1章文規則に
文字列の形で取り込まれる。IF(条件)部パターンマッチング
従い,入力すべき文節(IF部,THEN部など)を示す"IF'',
部は,ワークテーブル中にIF部の文字列と一致する文字列が
"THEN''などの識別子を出力し,正しい文字列の入力を誘導
SCD(ルール形制御)
lF(8UNP2(1.N).NE.,+,)THEN
l
F
FORTRAN77
lF(B〕NP2(1,N).NE.,K-)THEN
lF(GRタ"イシヤく3〉セイシ小ヨウ)
lF(GR〈3〉セイシ≠ヨウ)
WRITE(L〕06,2310)N,8〕NP2(1,N)
lERRl=lERRl+†
lF(GRタ"イシヤく3〉サ¶イナシ)
THEN(GRタ≠イシヤく3〉ショウカノウ)
BUNP2(1,N)=,
EJSE
F
2-1
川UNP
==
(GRタ屯イシヤ〈4〉 セイシやヨウ)
+(rcHAR(BUNP2(3,N))-240)
け(lBUNP.+T,1.OR.1B〕NP.GT.KMAX)THEN
WRITE(L〕06,2320)N,B〕NP2(2,N),B〕NP2(3,N),
B〕NP2(1.N),lBUNP
lF(GR〈4〉セイシ≠]ウ)
lF(GRタ仏イシヤ〈4〉サ≠イナシ)
lF(サイティレサやイナシ)
THEN(GRタ≠イシヤく4〉ショウカノウ)
lERRl=lERRl+1
BUNP2(1,N)=,
F2-2
ELSE
lF(GRタ也イシヤ〈X〉イシ竹]ウ)
ショウ フカ)
THEN(GRタ甘イシヤ〈X〉
2-3
F
=(lCHAR(B]NP2(2,N)ト240)*10
ENDIF
ENDIF
ELSE
lB〕NP
=(lCHAR(B〕NP2(2,N))一240)*10
+(lCHAR(B〕NP2(3,N))-240)
lF(川〕NP.LT.1.OR.18UNP.甘T.+MAX)THEN
WRITE(L〕06,2320)N,巳〕NP2(2,N),B〕NP2(3,N)
B〕NP2(1,N)川UNP
lF(GR〈X〉イシ小ヨウ)
THEN(GRタ"イシヤ〈X〉シ]ウ7力)
F6
lF(キュウサ℡イカリオキく3〉サ"イナシ)
lERRl=+ERRl+1
カリオキく3〉 セイシ"ヨウ)
(キュウサ≠イ
THEN(キュウサ≠イカlけキ〈3〉オロシコウホ)
BUNP2(1,N)='
け
け(イサイキ〈3〉サキ¶ヨウチユウOFF)
lF(イサイキく3〉サ寸イアリ)
lF
(イサイキく3〉セイシ"]ウ)
サ"イ
アl=
SCD(ルール形制御)と
従来FORTRANの比重交
ELSE
END】F
は.FORTRANなどの手続形言語で
ENDIF
F9
THEN(オロシ
図2
記述されていた。このため,制御ノ
ELSE
l日〕NP
=(弓CHAR(B〕NP2(2,N))-240)*10
+(lCHAR(BUNP2(3,N)卜240)
lF(r8UNP.LT.1.OR.川]NP.GT.1MAX)THEN
l
l
ウハウをプログラム言語レベルの論
理に置き換え,制御プログラムの中
に埋め込むなど専門知識を必要とし
た。これに対LSCDは,lF-THEN
注:略語説明
SCD(StationCoodinator)
32
ルールにより運転知識をそのまま記
述できる。
従来
693
知識工学基本技術のFAへの応用
J
〕
し し「二
臣l動作フロー制御ソフトウェアSCR
}pしL
しりhlMA:+⊃
ロ甘口1
1ら
l\戸∪†
RUFFFR・
LUIT==*
--一十----㌧.----+----・‡--
 ̄ミヾT5LIPl
TYPF
3.1SCRと従来ラダー言語の比較
SCDサポート
…。:…:三言■一二三1三三:三ニニニニ三二: (1)エディット機能
作業ステーション内のシーケンス制御には,従来PC(Pro-
紺05TH川・・キュ叩■ィ州オ与川叶コつ丁ナ ̄/■
(2)アナリシス機能
州2-′てrP[デhウサイ刑オキ(コ、サーイナシ.
grammableController)が用いられ,代表言語としてラダー言
(4)トランスレート機能
≡Eこくご…[.キュウサ・ィ…キう・サノィナン√
(5)ディレクトリ機能
(6)モニタ機能
呂呂こ∴HE∴…二::二三::二三:`ニニァエア■三三∴シ.
語が使用されていた。ラダー言語は,リレー回路によるハー
(3)シミュレート機能
ご冨呂冒て:.三こ…ニニニ三:二;;【二∴ノ三ヶアリでイ/Y一つ.
じ=THEN・キー⊥叶イ=キ′∠lノリ叶コ”・
ドワイヤードロジックをソフトウェア的に実現したものであ
るため,設計者の思考内答のレ〈こルとのギャップが大きい。
†Y㌢[
亡n15
ヵl・■
・キ▲ウサ、ィ
\
*‥■コメント行識別子
入力中の行
行馴1識別子
*
[雪害苧警宗管盲動出力]
*
*
また,動作の流れが表現できないために,同期,排他のイン
タロックの組込みや修正が難しい。また,異常処理支援機能
が弱いなどの欠点が,システムの規模が大きくなるにつれて
¥TYPE】FTHEN
問題になってきた。
これに対しSCRは,非同期,並行動作システムのモデル化
方法の一つであるベトリネットモデルを用い,FA機器間の運
STARTEND
転シーケンスや作業などの順序的知識を表現し,動作状態を
ルール構文規則
モニタできるようにした。ベトリネットを制御向きにするた
図4
SCDルールエディタの画面例
利用者が容易にIF(条件トTHEN
めに,PI/0(プロセス入出力)の条件,繰返し作業,ファイル
(結論)ルールを記述できるように,ルールの構文規則に従って入力できるよう
のアクセスなどを扱えるように拡張し,これをC-Net(ControI
にLた構文誘導形入力方式であり,二れをルールエディタと呼ぷ。
Net)と名づけた。SCRによる動作フロー記述とラダー記述の
比較例を図5に示す。
3.2
SCRのソフトウェア構成
SCRのソフトウェア構成を図6に示す。C-Netは,(1)動作
及び状態を表わすボックス,(2)ボックスの動作が実行中ある
する。入力された文字列は,1行ごとに固定部,パラメータ
いは状態が占有されていることを示すトークン,(3)ボックス
部に分割され,括弧の抜けやパラメータ長のチェックなどの
間のトークンの移動を制御するゲート,及び(4)ボックスとゲ
文節単位のシンタックスチェック(アナリシス機能)を行なう。
ートの接続関係を示すアークの四つの基本要素から成る。CNetで記述された動作モデルは,マンマシン端末からC-Net入
これにより,ルール開発時間の短縮が図れる。
SCDのサポートとしては,上記のエディット機能,アナリ
力部を通じ,ボックス情報テーブル及びゲート情報テーブル
シス機能のほか,シミュレート機能,トランスレート機能,
に分けて格納される。ボックス情報テーブルには,図6に示
ディレクトリ機能及びモニタ機能も開発されている。
すような動作定義データが格納される。一方,ゲート情報テ
従来PC
SCR
GRASP
制
御
ボックスとゲートによる
方
動作フローレベルの制御
●動作内容:部品〈×〉をつかむ
●1
リレー論理による局所的制御
動作仕様
(〕
/
外径Jニンねじ一しユーー外径-く〕l
()訂L′′ご()ね〔′′\\ /\
AHC
部品
〔)〔〕
組立
()
周辺
(トークン番号=1)
MOVE
式
原点
●動 作 名:GRASP
SHIFT
シーケンス記述方式
庄入
賢
SCR
/
●起動設備:ロボノト1
●許容動作時間:20秒
●動作完了判定条件:
ニLS3*LS4
+外部入力名
C-Net入出力部
し〕()
(×)()
卜 一ク
lトマ穴洗浄
ン
制御部
(動作7。_記述)ク
⊂亘::]
ボックス情報
□
ね
じ
締
め
ハンド返却
ハンド取付け
ハンド返却
点復帰
スプロケット取付け
原
で7(ラダープ。グラミング) は在晶㌫.)C-Net動作モデル
(動作定義データ)
ま¶ヨ巨
ゲート情報
(C-Net構造データ)
フェース部
YI
Y2
X7
起動待ち動作=SHIFT,MO〉E
●外部入力との同期条件:
二・LSl*+S2
リーマ穴
スプロケット圧入
L外部入力名
ま¶
Y2
/男声よ、∈
X5
、ぺ、r-
\咄
l
一
u
注:略語説明SCR(StationCont「ol榊・PC(P「og「?mmableControlle「),
AHC(AutoHandChanger),Rl(ロボット動作中)
図5
●動作順序関係:
完了待ち動作=GRASP
プロセス
イ ン
タ
Y3
●ゲート名:G3
SCR(動作フロー形制御)と従来ラダーの比較
 ̄\ミこ二:=/
従来,機器
図6
竜染
轡E
注:略語説明
1作業ステーション
C-Net(Contro卜Net)
SCR(動作フロー形制御方式)のソフトウェア構成
群の同期・寺非他制御には.ラダー言語が使用されていた。二の言語は設計者の
器群の同期・排他制御をボックス,ゲート,トークン,アークの四つの基本要
思考内容のレーくルとギャップが大きく,動作の流れをそのまま記述できないた
素で表現するC-Net(Contro卜Net)によりモデル化L,動作モニタを行ないなが
め,専門知識を必要とした。ニれに対LSCRは,機器間制御の動作フローに従
らリアルタイム制御を実行する。
FA機
ってそのまま記述できる。
33
694
日立評論
VOL.67
N。.9(柑85-9)
-ブルには,ボックスの接続関係を示すC-Netの構造データが
格納される。トークン制御部は,ゲート情報テーブルを調べ,
(1)貨物配置自動決定機能
先に述べたゲートの通過条件を満たしてゲートを抽出し,ト
ある。この機能を,計画者の貨物配置決定に関するノウハウ
ークンを動かす。新たにトークンが入ってきたボックスにつ
いて,プロセスインタフェース部が,制御メッセージ及びメ
(これを横付け知識と呼ぶ。)と2次元平面での配置決定アルゴ
ッセージ送信先をボックス情報テーブルから読み出し,設備
横付け知識(貨物配置の特徴と配置方針)を知識ベース化し,
群へ制御指令を送出する。
以下の手順を繰り返し,貨物配置を段階的に決定する。(a)前
3.3
このシステムの第一の特徴は,自動決定機能をもつことで
リズムとを融合することによって実現している。すなわち,
動作フローの会話形入力方式
段階までに決められた貨物配置に対して,例えば,配置の決
C-Netの入力,変更を会話形で容易に行なえるように,ライ
定されていない貨物が多い,広い面が存在する,といったそ
トペン使用による画面エディタを開発した(図7)。C-Netで定
の配置の特徴を抽出する。この特徴に基づき,知識ベース内
義すべきボックスデータ,ゲートデータ,モニタ表示用デー
の横付け知識を用い,どの貨物をどの位置に配置すべきかの
タなどを,ライトペンにより会話形にコマンドを選択しなが
代替案を自動作成する。(b)i欠に,各代替案に対して,貨物個々
ら入力できる。この画面エディタを用いることにより,作業
の配置を配置決定アルゴリズムにより`求め,最適な配置を選
ステーション立上げ支援,稼動状況の把握及び\異常箇所の検
択する。
出が行なえる。
(2)対話形配置修正機能
田
上記(1)の機能だけでは,常に積載効率の高い貨物配置を決
対話形貨物配置計画システム
定できることは保障できない。そこで,上記(1)の機能で得ら
4.1従来法の間遺点と対話形貨物配置計画システムのねらい
れた貨物配置を,計画者が対話形式で修正できる機能を設け
貨物の横付け作業の自動化のニーズは高く,従来から横付
ている。
け作業の自動化装置として,オートバレタイザが開発されて
4.3
システム構成
いる。この装置は,同一寸法の貨物の積付け作業を対象とし
このシステムのソフトウェア構成を図8に示す。
ている。一方,異なる寸法の貨物を1個のパレット,コンテナ
(1)貨物配置自動決定機能
などに積み付ける作業も多い。この場/如こは,横付け装置の開
この機能は,(a)貨物配置の特徴抽出,(b)代替案の作成,(c)
発だけでなく,いかに積載効率(輸送器の容積に占める貨物の
配置計算,(d)配置結果の評価,を繰り返し,貨物配置を自動
総容積の割合)の高い貨物配置を決定するかが重要課題となる。
決定する機能である。計画プロセスを図9に示す。
寸法の異なる貨物の配置を決定する問題は,数学的には組
(a)貨物配置の特徴抽出
合せ最適化問題であり,この問題を数理計画手法によって実
計画の途中段階での貨物配置に対し,その特徴を抽出する。
用的な時間内に解くことは困難である。そのため,現状では
(i)配置が決定されていない貨物(これを残貨物と呼ぶ。)の
計画者の手作業に頼っており,積載効率の低下,計画時間の
特徴抽出
増加を招いている。
残貨物が多い,高い貨物が残貨物の中に存在する,とい
これを解決するため,知識工学技術を応用した対話形貨物
配置計画システムを開発した。
った残貨物全体の特徴と,残貨物個々の形状の特徴,例え
ば大きい,高いといった特徴を抽出する。
4.2
(ii)残貨物を配置可能な面(これを横付け面と呼ぶ。)の特徴
システムの!特徴
抽出
このシステムは,次の特徴をもつ。
作画エリア
対話形貨物配置計画システム
容器
3
X12
4
5
6
7
8
9】0111213141516「7
1
柑
//T ̄ ̄ ̄二刀
仁一+一丁/!
ll
ll
4
貨物配置自動決定機能
マ
ン
マ
貨物
シ
ン
2
3
82・
〔ヲ
撃惑
b2∼
ン
タ
白ク
フ
エ
♂9…
ライト
b2J
イ
■
■
ス
......
グラフィック端末
キー入力情報
BO.\・lD?[.212
エラーメッセージ
表示エリア
巳OX
〇.斗T〔 ARC
什+5×
C【ANG巨
口白0ズ
DGATE
ウARC
INSY
FJODE
CANCEL
D巧P
ABNO
九10〉E
EN□
ii
配コ
置マ
結ン
果ド
能訳
機選
l
図7
トランスレート機能
アナリシス機能
ディレクトリ機能
シミュレート機能
モニタ機能
SCR動作フローエテディタの画面例
代替案の
作成
ベース
1
配置計算
1
アルゴ
リズム
/ヾ-ス
配置結果の
価
l評
図8
し
対話形貨物配置計画システムの構成
貨物配置を自動的に決
形で容易に行なえるように,ライトペンを用いてボックスやゲートなどのコマ
定する機能と対話形式により貨物配置を修正する機能で構成し.貨物配置結果
ンドを選択L.画面上でプログラミングできる。
をクうフィツク端末に透視画法で表示できる。
34
知識
対話形配置修正機能
ノ
c-Netの入九変更を会話
1
翠
llll
エディット機能
特徴抽出
のの
ll【lll
SCRサポート
b
貨物配置の
l
ペン
9
ll
知識工学基本技術のFAへの応用
容
貨
器
///r▲‖二二て
抄
選択する。このとき,代替案で与えられた横付け面に対す
物
る貨物配置の是非だけでなく,残りの貨物の配置に対する
A〔男物4侶
是非をも含めて評価する。それは,代替案で与えられた積
C`当茅お1口個
付け面に対する貨物の占有率が高くても,残りの貨物を各
巨♂6個昌2?苧
横付け而に均等に配置することが困雉となり,積載効率の
入力
低下を招くからである。
貨物配置自動決定機能
(2)対話形配置修正機能
貨物配置の特徴抽出
計画者との対話形式で,貨物配置を修正する機能である。
、
-----◆
積付け面の特徴
徴
積付け面
ここでは,次の修正機能を用意している。
残貨物の特徴
各積付け面の特徴
特
(a)輸送器内のすべての貨物の削除
各残貨物の特徴
形
695
状
高さ
広い
長い
低い
(⊃
(⊃
○
形
特徴
貨物
状
数量
大きい
長い
高い
A
○
(⊃
(⊃
○
B
×
×
⊂)
×
(b)計画者から指示された貨物の削除
多し、
(C)計画者から指示された位置への指示された貨物の配置
(d)同一貨物の重ね積み配置
(2)全休の特徴
●平面が少ないこ
●広い平面がある
●低い平面がある
これら修正の要求は,コマンド入力で実現している。
(2)全体の特徴
●残貨物の個数が多し、.、
●数量の多い貨物がある
また,計画者による貨物配置の評価を容易に実現させるた
め,透視画法で貨物配置をグラフィック端末に表示している。
巨垂≡∃
代替案の作成
知識1:【f(残貨物の個数が多し、、)
(広い平面あり.、)
lhen(数量の多し、貨物を広し平面に
長方形状に配置せよ、)
知識2:=(残貨物の個数が多い..)
(数量の多し、貨物なし】)
川en(高し、貨物を低い平面に
代替案2
代替案1
貨物名
個数
綴付け面
配置法
1(∋
積付け面1
長方形状に
平面効率良く配置せよっ)
配置計算
アルゴリズムベース
配置案1
配置薬2
アルコ
配置形態
リズム名
占蓼7
∠≦萱芦ヲ
2エl+ア
配置方式
配置結果の評価
途中段階での配置
lll
llll
5エリア
配置方式
b
FAコントローラFMCと各基本ソフトウェア適用例
5.1
FAコントローラFMC12)
自律分散FA制御システムで,日程計画,在庫情報などの管
理用データベース,及び「貨物配置計画はV90シリーズの計算機
やショップ管理用コンピュータSHOPCONに集約され,作業
計画は下位FMCへ分配される。FMCは作業計画に基づき制御
を実行するため,制御ソフトとしてSCD,SCRを搭載する。
制御レベルでは,ロボット,NC(数値制御)の直接制御は原則
的には機器コントローラ又はPLC(Programmable
Logic
Controller)に任せ,FMCは設備群,機器群の統括制御,協調
制御を行なう。FMCは,16ビットマイクロコンピュータM68000
を使用し,FA用LAN(ローカルエリアネットワーク)の〟-∑
Network(自律分散ネットワーク思想をもつ。)と結合し,拡張
∠≦萱≡声ヲ
出力
貨物配置
性,保守性及び信頼性を高めている。
5.2
SCDの適用例
SCDは,FMCのほか,V90シリーズに搭載され実システム
歪膠
図9
貨物配置自動決定機能
二の機能は,貨物配置の特徴抽軋代替
案の作成,配置計算,配置結果の評価,を繰返Lて貨物配置を自動決定する。
に適用されている。代表例として,物壬充搬送システムや倉庫
システムがある。本稿では,その中の一つである製鉄所のビ
レット精整プロセスヘの適‥開例7)について述べる。ビレット精
整プロセスは,図10に示すように,10m前後の棒状の鋼材を探
傷し,2台(将来4台)のGR(ブラインダ)で効果的に研磨する
システムである。このFAシステムで,(a)グラインダ処理能力
の最大i舌用,(b)同一ロット材の分散防止,(c)設備故障時の代
替設備による切替運転の可能化,である。これを260ルールで
積付け面が多い,広い横付け面が存在するといった横付
け面全体の特徴と,横付け面個々の特徴,例えば広い,低
実現し,プログラム開発工数を従来に比べ÷に低減で
5.3
SCRは,部品組立作業ステーションやロボットの協調制御
いといった特徴を抽出する。
(b)代替案の作成
貨物配置の特徴に基づき,どの残貨物(名称と個数)をど
SCRの適用例
などの順序制御に使用されている。このうち,ロボットの部
品組立ステーションヘの適用例を図11に示す。ロボット本体
の横付け面に配置すべきかの代替案を作成する。代替案の
及び周辺機器との間の同期・排他制御をC-Netで記述し,ロボ
作成には,知識ベース内の横付け知識を活用する。横付け
ットの主要な部分の部品組立てを行なっている。C-Net記述に
知識とは,ある特徴をもつ横付け面に対して,配置すべき
より,プログラム開発工数を従来に比べ÷に低減でき
貨物とその配置形態とを表現した知識である。この知識は
5.4
IF-THEN形のルールで表現する。
(C)配置計算
代替案ごとに,横付け面上での貨物個々の配置を,2エ
リア配置方式10),5エリア配置方式13)などの2次元平面での
対話形貨物配置計画システムの実験評価
異形物貨物をパレット上に配置する例を,実データを用い
て対話的に配置計画を行なった結果,熟練者の手作業による
計画立案に比べ,同程度あるいはそれ以上の積載効率を実現
するとともに,計画時間を古一吉に低減できる見通しを
配置決定アルゴリズムにより決定する。
このことは,積載効率の向上による輸送コストの低減だけで
(d)配置結果の評価
なく,少ない計画者で多くの貨物配置計画を可能とする。ま
代替案ごとに決定した貨物配置から,最適な貨物配置を
た,本計画システムをV90/5へ搭載し,現場設置の対話形貨物
35
696
日立評論
VOL.67
No.9(1985-9)
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島観図
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配置計画システムを実現した。
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t司 結
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拡弓良性,保守性,高信頼性,開発工数低減化及び低価格化
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を実現する自律分散FAシステムと,その主要な構成要素であ
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′ン僅′′N。.3禁インダ田\、、、諾欝
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るFAコントローラFMCに搭載する知識形FA制御ミドルソフ
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しいタイプのFA言語として利用し,16ビットマイクロコンピ
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ノ/増設予定
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トウェアSCDとSCR,及びV90/5に搭載する対話形貨物配置計
画システムについて述べた。このように知識工学の技術を新
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ン小
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、台車
ュータを使用したFMCやV90/5に搭載することにより,ユー
ザーが直接記述・保守できるようになり,多種少量・中量生
産向けの自律分散FA制御システムを実現した。今後のFAは,
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試作量産形FAシステムへ移行してゆくと思われるため,ます
十<
ます知識工学応用が図られると予想する。
←探傷機
参考文献
図10
SCD適用のビレット精整ヤードの例
10m前後の棒状の鋼材
1)
松本,外:自律分散FA制御システム,電気学会東京支部大
会,S.7-5(昭58-12)
を探傷し,2台(将来4台)のグラインダで効果的に研磨するシステムでSCDを
適用L,ソフトウェア開発工数の低i成,現j易の早期立上げ,保守容易性を実現
2)松本,外:ファクトリーオートメーションにおける自律分散
Lた。
システム,日立評論,65,12,823∼828(昭58-12)
3)松本,外:知識工学のFAシステム制御への適用,ファクト
り・オートメーション(昭59-7)
An
4)N.Komoda,etal∴
ControI
転栄
$…
∈)
⊂〕
5)
7)
ィタ,情報処王里学会第29回全国大会(昭59-9)
都島,外:ルール形制御方式の実プロセス制御への適用,第
23回SICE学術講演会(昭59-7)
艶
ヽ
8)
9)村田,外:作業ステーション制御用ステーションコントロー
/
ラ(SCR)用画面エディタ,情報処理学会第28回全国大会(昭
59-3)
ヽ
■■し
\
ヽ
ヽ
1
、1
「
組立雇
制御装置
1
1
ロ
ボ
10)小西,外:三次元Cutting
ッ
コントローラ
ト
締付,圧入
制御装置
ね
じ 締
め
ドライバ制御
Stock問題の一解法と製品積載計
画問題への適用,H本OR学会秋季研究発表会アブストラクト
集(昭57-10)
-
1
周辺機器
制御装置
.†■一.+
\
、、
村田,外:ベトリネットに基づく高フレキンブルFA制御シス
テム,計測自動音別御学会論文集,第20巻,第9号(昭59-9)
ヽ
ヽ
Vol.22,No.9(昭58-9)
薦田,外ニルールベ】スコントローラ用ルール入力画面エデ
列
日
廻
ヽ
Automation,IEEE
6)
、や
礼…M
Factory
田代,外ニルール記述に基づくシステム制御方式,計測と制
御
\・ミこ
ミきこ
for
COMPUTER(December1984)
パ几
転機
System
Autonomous,Decentralized
パレット搬送
制 御 装 置
11)天満,外:部分最適配置アルゴリズムを活用した対話型貨物
配置計画方式,第27回自動制御連合講演会予稿集(昭59rll)
12)解良,外:分散型FAシステム用高機能コントローラHIDIC
ポール盤
制御装置
FMC(基本アーキテクチャー),情報処理学会第30回全国大会
(昭60-3)
13)E.Bischoff,etal∴An
Design
14)
SCR適用のロボット部品組立ステーションの例
本体及び周辺機器との間の同期・排他制御をSCRのC-Netで記述L,組立ステ
ーションの早期立上げ,保守容易性を実現した。
36
of
Micro
Distribution,J.Opl.Res.Soc.Vol.33,No.3
(1982)
SCR(M68000)
図II
and
Application
長谷川,外:マークフローグラフとFAへの応用,計測と制御,
Vol.22,No.11(昭58-11)
ロボット
15)
長谷川,外:非連続システムのためのマーク流れ線図の提案,
計測自動制御学会論文集,Vol.20,No.2(昭59-2)
to
Product
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