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南スーダンに派遣される自衛隊部隊に 「駆け付け警護」等
南スーダンに派遣される自衛隊部隊に 「駆け付け警護」等を行わせることに反対する会長声明 政府は、明日、国際連合平和維持活動(以下「PKO」という)として国際連 合南スーダン派遣団(UNMISS)に派遣される自衛隊部隊に対して、 「駆け 付け警護」などの新たな任務を付与する閣議決定を行うと報道されている。 ここに「駆け付け警護」とは、昨年9月に改正された国際連合平和維持活動等 に対する協力に関する法律(以下「改正法」という)第26条第2項に基づくも ので、離れた場所にいる国連や民間NGOの職員などが武装勢力などから襲わ れた場合に助けに向かう業務をいい、業務を行うに際しやむを得ない必要があ ると認める相当の理由がある場合には武器を使用することができるとされてい る。そして、 「駆け付け警護」を行うには、武力紛争の停止及びこれを維持する との紛争当事者間の合意があり、かつ、当該活動が行われる地域の属する国及び 当該紛争当事者の当該活動が行われることについての同意がある場合に、いず れの紛争当事者にも偏りなく実施される活動であることが要件とされている (改正法第3条第1号イ。いわゆるPKO参加5原則の第1乃至第3原則)。 しかしながら、南スーダンでは、本年7月に首都ジュバ市内で政府軍と反政府 勢力との間で武力衝突が発生し、市民数百人や中国のPKO隊員が死亡した。そ の後も、10月8日にはジュバ近郊で民間人を乗せたトラックが襲われ21人 が死亡し、また、同国東北部における政府軍と反政府勢力間の戦闘で60人以上 が死亡するに至っている。そのため、UNMISSは、本年10月12日に、 「暴 力や武力衝突の報告が増加していることを非常に懸念している。」との声明を発 表している。また、反政府勢力のトップであるマシャール氏は、本年10月26 日、同国の内戦について、現在も戦闘が起きており、 「和平合意は崩壊した」と の見解を示した上で、政府軍との協議が不調に終われば内戦を継続する意思を 示すなどしている。そうすると、現在の南スーダンをめぐる情勢は、 「駆け付け 警護」を行うための要件である「紛争当事者間の停戦合意」を欠いているとの重 大な懸念が存するものであり、このまま実行されれば、自衛隊員が政府軍や反政 府勢力の兵士を殺傷したり、自らも犠牲になる危険性が極めて高いといわざる を得ない。 政府は、改正法がいわゆるPKO参加5原則を踏まえたものであることから、 PKOへの自衛隊の参加は憲法第9条の禁じる武力の行使に当たらないとの説 明を行ってきた。にもかかわらず、その原則を具体化した改正法の定める要件を 欠いたまま「駆け付け警護」の任務を付与することは、政府の見解によっても、 憲法第9条に反して改正法の運用を行うものであり、とうてい容認できない。 そもそも、 「駆け付け警護」は、昨年9月19日に強行採決されたいわゆる安 全保障法制によってPKO協力法が改正されたことにより認められたものであ るが、自衛隊のPKO活動に「駆け付け警護」という新たな任務とその任務遂行 のための武器使用権限を認めることは、紛争解決のための武力行使に当たるお それがあり、憲法第9条に反する可能性が高い。これまで当会が指摘してきたよ うに、この改正は、憲法第9条に反する可能性が高いにもかかわらず憲法第96 条の改正手続を経ることなく解釈変更を行った上で安全保障にかかわる立法を 行うもので、立憲主義に反するといわざるを得ない。このような点から、 「駆け 付け警護」自体、そもそも容認できないものである。 よって、当会は、政府に対し、南スーダンに派遣している自衛隊に対し、 「駆 け付け警護」等の新任務を付与し、その任務遂行のための武器使用権限を付与す ることに強く反対するものである。 2016年(平成28年)11月14日 大阪弁護士会 会長 山 口 健 一