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報告書 - 国立大学法人 北海道教育大学
別紙様式2 平成24年度学術研究推進経費による研究成果概要報 告 書 報告者氏名・所属 中道 莉央 研 究 期 間 平成24年4月 ・ 札幌校 ~ 平成25年3月 プ ロ ジ ェ ク ト の 名 称・ 車いすバスケットボール選手の生活観の基礎的国際比較 研究題目・重点設備名 経費の種類 ☑若手教員研究支援 □研究推進重点設備 ※ 該 当 す る も の に レ を記入してください。 プロジェクト担当者 中道 莉央 (氏名・所属・職) ・ 札幌校 成 果 ・ の 講師 概 要 本研究では,日本,オーストラリア,カナダ,アメリカ,中国,シンガポール,マレーシ アの 7 カ国の障がいのある車いすバスケットボール選手の「アスリート」としての競技生活 (On-court life)と,「障がいのある人」としての日常生活(off-court life)という 2 つ の場における意識を「生活観」として調査し,それに各国の競技環境の実態を明らかにしな がら,国際比較を試みてきた。その結果,本研究のおもな成果として,次のようなことを挙 げることができる。 1. 選手は各国共通して,車いすバスケットボール活動を「人生そのもの」と意識しており, 「 生涯の生きがい」と認識している。選手らは,競技活動を通じてアスリートとしての自信 や誇りを育み,障がいのある自己を受け容れながら自己実現を目指していることがわかっ た。また,各国選手は共通して「自らの経験や体験を活かし,障がい者スポーツの普及や 促進に貢献したい」というモチベーションも高いことがわかった。このことから,(各選 手の自己実現にとどまらず)他者の自己実現や社会全体の幸福の実現に対し,「どのよう な力を発揮することができるのか,どのように寄与できるのか」と,社会と積極的に向き 合おうとする主体的な体育・スポーツのあり方に邁進する傾向を示していることもわかっ た。 2. 各国に共通し,競技活動のための時間や費用の確保,練習やトレーニングの場所の確保, 障がいのある人を指導できる経験のある指導者の確保等に不便や困難が生じていること がわかった。アスリートとしての生活において不可欠な競技環境の改善に対しては,国を 違えても同程度の要望があることが明らかになった。 3. しかし,シンガポールとマレーシアでは,競技環境の具体的な改善以前に,障がいのある 人のスポーツに対する国家的・社会的な位置づけそのものに問題があることがわかった。 他の日本,オーストラリア,カナダ,アメリカ,中国の5カ国の選手たちが示した競技環 境の改善への要望は,エリートプロとでも呼べるアスリートとしての「戦う相手に勝つた め」の“強い要求”であった。このことから,本研究で対象としたシンガポール,マレー シアにおける障がいのある人のスポーツ環境と,これら5カ国のそれとの間には大きな隔 たりのあることが明らかとなった。 4. 日本における障がいのある人のスポーツには,依然として“医療”や“福祉”の一環とみ なす現実もある。それは,障がいのある人のスポーツの最高の舞台であるパラリンピック を管轄するのが厚生労働省であることからも明らかである。今後,オリンピックを管轄す る文部科学省の管轄下となることで,“医療的リハビリテーション”という既成概念が払 拭され,健常者のそれに並ぶスポーツとして発展していくことが期待される。そうすれば ,社会の認識は障がいのある人がおこなう異種的なスポーツではなく,また、プレイする 障がいのある人は特別な人であると見なすこともなく,おなじ人間として同等,公平であ るという認識や理解につながると考えられる。本研究において,調査対象とした選手も自 分たち(障がいのある人)への理解を深めてもらうために,「社会や学校で障がいのある 人についての教育や学びの拡充」を望んでいることもわかった。 以上,本研究の成果として4点について述べてきたが,今後,障がいのある人々が生涯を通 じて体育・スポーツに親しんでいくのを推進するための課題として「公的支援」「情報拡充」 「障がい理解教育の推進」の3点をコアに位置づけることができよう。しかし,単に「公的支 援」と言っても,国家補助の獲得は容易ではない。これらの課題を達成するためには,残る2 点の「情報拡充」および「障がい理解教育の推進」としての「社会や学校で障がいのある人 についての教育や学びの拡充」等の取組みとの密接かつ補完的な相乗性が有効であると推察 される。ここに,学校教育における持続的な取組みの意義と価値があると考えられる。 成 果 の 公 表 の 状 況 【学術論文】 1. 中道莉央,女性車いすバスケットボール選手の生活観の国際比較,体育学研究,57,2012 ,285-295 2. 中道莉央,女性車いすバスケットボール選手のスポーツライフの一考察:IWBFアジア・オセ アニアゾーンに着目して,アジア障害社会学会,12,2012,85-96 3. 中道莉央,女性車椅子バスケットボール選手のアスリート生活に関する研究:2008-2012 大阪国際大会出場選手への意識調査にもとづいて,武庫川女子大学大学院臨床教育学研究科 研究誌,19,2013,(未刊) 【口頭発表】 1. Rio Nakamichi,Yutaka Mizutani,Difference between Japan and USA on the Views & B ehavior of Athlete life in wheelchair basketball for the disabled,第3回教育に関す る環太平洋国際学会(於・北海道教育大学札幌校),2012 2. Rio Nakamichi,Yutaka Mizutani,International Comparison of Lifestyle of Wheel ch air Basketball Athletes No.3,第12回アジア障害者体育・スポーツ学会国際シンポジウム ,(於・ホンコン教育学院),2012 3. 中道莉央,車椅子バスケットボールに関する研究(第1報) :障がいのある女性アスリートの 個人的属性,北海道体育学会第52回大会,札幌大学,2012 【パネリスト】 1. 中道莉央,身体障害者のスポーツ環境:車椅子バスケットボールを中心に,北海道体育学会 第52回大会,札幌大学,2012 【ポスター発表】 1. 中道莉央,車椅子バスケットボールに関する研究(第2報) :日米における競技活動の実態の 比較,平成24年度桜門体育学学会,日本大学,2013 【その他】 1. 中道莉央,覇を競う車椅子バスケットボール,JWBF(日本車椅子バスケットボール連盟機関 誌),36,10,2012 教育現場で活用可能な分野等 小学校の体育科または総合的な学習の時間,中学校の保健体育科(とりわけ体育理論)等に おいて,児童・生徒がスポーツの多様な見方や考え方(本研究で取り上げている障がいのあ る人たちのスポーツの世界について)を深め,スポーツが人々の生活や人生を豊かにするか けがえのない文化であることを学ぶ際の教材(実例)として活かすことが可能である。児童 ・生徒は,現代社会においてスポーツが果たす役割や文化的な価値・意義を知るとともに, スポーツ文化が世界中に広まり,様々な違いを超えて人々を結びつける働きをもっているこ とを学習する。これにより, 「する・みる・ささえる」といったスポーツへの多様な関わり方 を学ぶとともに,生涯にわたり体育・スポーツ活動に親しむ能力や習慣を養うことに資する と考える。 配付可能な資料の有無 ダウンロード可能な ドキュメント 問い合わせ先 資 料 あ り : 冊 子 体 20部 なし 責任者:中道 莉央 電話:011-778-0967 Fax:011-778-0967 Mail:[email protected]