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農業生産環境対策事業
5.1.5
投資環境
(1)関連行政
オーストラリアの憲法の下では、鉱物資源は個人ではなく国家に帰属すると定めら
れており、政府自体は商業的な探査や開発に関与しない。表 5.1-11 に連邦政府と州・
準州政府の役割分担について示す。
また、立法権に関しても役割分担がなされており、教育・環境問題・刑法・道路行
政等の重要分野に関する立法権は州政府が保有している。ただし、連邦政府は課税の
権限を持つため、州政府が重要分野に係る政策決定を行うにあたって、大きな影響力
を持つ。
表 5.1-11
連邦政府
州・準州政府
地方政府
オーストラリアにおける各政府の役割分担
国家的な政策の決定 -防衛、外交、国庫歳入、財政, 税制
外国投資のガイドライン
移民
競争政策
貿易と税関
企業法
先住民の土地所有権
鉱物資源開発権の管理と分配
基本的土地管理政策
操業規制 - 環境衛生及び労働安全、鉱物生産税(ロイヤルティ) の徴
収
地方開発計画の立案及び地域社会政策
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年よりみずほ情報
総研作成
①連邦政府
本事業で調査対象とするリン鉱石およびカリ鉱石の調達に関連があると考えられ
る連邦所管省庁・研究機関は、表 5.1-12 に示す 2 つである。このうち、地球科学研
究機構は資源エネルギー・観光省の所管する機関である。
表 5.1-12
オーストラリア連邦政府の肥料原料関連省庁
機関名(英)
Department of Resources,
Energy and Tourism
Geoscience Australia
機関名(日)
資源エネルギー・観光省
地球科学研究機構
本事業との関連
調査対象であるリン・カリ
を所管する省庁
リン・カリを含む鉱物資源
に関する情報収集・研究を
行う機関
(出典)公開情報よりみずほ情報総研作成
資源エネルギー・観光省(地球科学研究機構含む)の組織図を図 5.1-18 に示す。
本事業と直接に関連がある部署は資源エネルギー・観光省の資源局鉱物課である。
- 84 -
輸入原料安定確保調査等事業
図 5.1-18
オーストラリアの資源エネルギー・観光省組織図
(出典)資源・エネルギー観光省ウェブサイト
(http://www.ret.gov.au/Department/Documents/org-chart/RETOrgChart_JAN_12_external.pdf)
- 85 -
農業生産環境対策事業
②州政府
オーストラリアにおいて、鉱物資源に係る具体的な法律・規制は各州政府にゆだね
られている。したがって、リン鉱石およびカリ鉱石の鉱床が存在すると見込まれる北
部準州・ヴィクトリア州・西オーストラリア州の政府や法制度に着目する必要がある。
各州の関係省庁は表 5.1-13 のとおりである。
表 5.1-13
州
オーストラリア地方政府の肥料原料関連省庁
NT 州
Department of Resources
北部準州資源省
VIC 州
Department
of
Primary
Industries, Victoria
Department of Mines and
Petroleum, Government of
Western Australia
ヴィクトリア州
一次産業省
本事業との関連
調査対象であるリン・カ
リを所管する省庁
調査対象であるリン・カ
リを所管する省庁
西オーストラリ
ア州鉱業石油省
調査対象であるリン・カ
リを所管する省庁
WA 州
機関名(英)
機関名(日)
(出典)公開情報よりみずほ情報総研作成
③関連団体
肥料産業に関わる企業の多くが加盟する業界団体が、連邦レベルで存在する(表
5.1-14)。企業としての地位・評価の向上のためには加盟が望ましいとされる。
また、州レベルでは鉱物産業に関わる業界団体が存在する(表 5.1-14)。各州の鉱
業協会は、業界の重要事項を決定・実行し、関連官庁や地域社会との連携を図る役割
を担っている。
表 5.1-14
オーストラリアの肥料原料関連団体
Cwt
NT 州
協会名(英)
Fertilizer industry federation of Australia
Northern Territory Minerals Council
VIC 州
Victorian Minerals and Energy Council
WA 州
Chamber of Minerals and Energy WA
団体名(日)
豪州肥料産業協会
北部準州鉱物協会
ヴィクトリア州鉱物・エネルギ
ー協会
西オーストラリア州鉱物・エネ
ルギー協会
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年
他より
その他、より探鉱に特化した業界団体として、鉱業探索企業協会(Association of
Mining and Exploration Companies (AMEC))も活動している。会員企業へのアドバイ
スや専門情報の提供のほか、業界を代表して政府の政策への提言も行っている。また、
探鉱を行う際の外部環境として重要な、先住民・環境・技術・税制の 4 つの委員会を
設け活動している。
- 86 -
輸入原料安定確保調査等事業
(2)鉱業法
①鉱業関連政策
オーストラリアにおける資源政策・鉱業政策は、2001 年 6 月以降、鉱物石油資源
閣僚評議会(Ministerial Council on Mineral and Petroleum Resources : MCMPR)によっ
て定められてきた。しかし、2011 年 7 月より MCMPR はエネルギー閣僚評議会
(Ministerial Council on Energy: MCE)と統合され、資源・エネルギー常設評議会
(Standing Council on Energy and Resources: SCER)となった。評議会は連邦の資源エ
ネルギー省の大臣を議長とし、各州(およびニュージーランド)のエネルギー・資源
関連省の大臣がメンバーとして名を連ねる。
この評議会の役割は以下のとおりであり、資源開発に係る項目は 5 つ中 1 つである。
‰
石油採掘の上流に係る管理および規制の一貫した基準の作成
‰
資源探索・開発への投資に影響を及ぼす問題への対処
‰
クリーンエネルギー技術(CCS含む)に対する国家としての一
貫した取組の推進
‰
発電や電力ネットワークへの投資と効率性の推進
‰
オーストラリアのエネルギーセキュリティの向上
など
(出典)オーストラリア政府評議会(COAG)(2011)ENERGY AND RESOURCES MINISTERS’ MEETING
2011 年 12 月に発表された SCER の討議結果によると、エネルギー関係のものが多
くを占める中で、資源探索に対する投資についても議論された。
探鉱への支出は記録的な水準にあることが明らかとなっており、オーストラリアの
国際競争力は維持するためには、探鉱への投資について引き続き政府として支援を行
うことが重要であることが強調された。このような状況下においても、オーストラリ
アの資源探索支出の世界シェアは低下しており、現状への対処は SCER の行動計画
の中でも引き続き優先度が高い課題である。
以上を踏まえ、評議会では、生産性委員会(the Productivity Commission)が資源探
索企業の直面する資金面以外での障壁の再検討を行うことが発表された。この調査は
2012 年に開始する予定である。なお、前回の調査は 2001 年に実施されている。
SCER の前身である MCMPR は鉱物資源探査アクションアジェンダを設けたが、現
時点でそれらがアップデートされたとの情報は入っていない。したがって、ここでは
MAMPR が設けたアクションアジェンダを紹介する。
- 87 -
農業生産環境対策事業
‰
土地アクセス戦略(Land Access Strategy)
‰
財政戦略(Finance Strategy)
‰
競争前地球科学情報戦略(Pre-competitive Geoscience Strategy)
‰
人材育成及び知的資本戦略(Human and intellectual Capital Strategy)
など
(出典)オーストラリア政府評議会(COAG)(2011)ENERGY AND RESOURCES MINISTERS’ MEETING
②鉱業関連法
オーストラリア憲法では、鉱業に関する法の立法権を連邦議会の権限としていない。
したがって、各州が定める法律が基本となる。ただし、連邦議会が権限を持つその他
の法律と各州の鉱業関連法が矛盾する場合には連邦議会が立法した法律が優先する
こととなる。調査対象とする 3 州において関連する法律は以下のとおりである。
表 5.1-15
NT 州
VIC 州
WA 州
オーストラリア地方政府の鉱業関連法
法律名(英)
Mineral Titles Act 2010(NT)
Mining Act 1980(NT)
Mining Management Act 2001(NT)
Mineral Resources (Sustainable
Development) Act 1990(Vic)
Mining Act 1978(WA)
法律名(日)
鉱業権法(2010 年、2007 年法を改訂)
鉱業法(1980 年)
鉱業管理法(2001 年)
鉱物資源(持続可能開発)法(1990 年)
鉱業法(1978 年)
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
まず、オーストラリアにおける一般的な探鉱ライセンスおよび採掘ライセンス取得
のプロセスを示す(図 5.1-19 および図 5.1-20)。
- 88 -
輸入原料安定確保調査等事業
図 5.1-19
オーストラリアにおける一般的な探鉱ライセンスの手続き
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
図 5.1-20
オーストラリアにおける一般的な採掘ライセンスの手続き
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
- 89 -
農業生産環境対策事業
(3)環境法・規制
連邦の環境規制の主軸となるものは 1999 年に制定された環境・生物多様性保護法
(Environment Protection and Biodiversity Conversion Act 1999 (Cth)(EPBC 法))であり、
プランニングやアセスメントの枠組みが定められている。
この枠組みが適用されるの
は「国家的環境重要事項(Matter of national environment significance)」に多大な影響
を与える可能性の高い事業のみである。この国家的環境重要事項としては以下のもの
が挙げられている。
‰
世界遺産
‰
国家遺産
‰
ラムサール条約指定湿地
‰
指定絶滅危惧種および群集
‰
指定移住種
‰
環境(核関連行為の場合)
‰
海洋環境
など
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
これらに影響を与えると判断された行為は「コントロールド・アクション」と呼ば
れる。コントロールド・アクションに対して実施の承認を行うのは Commonwealth
Minister for Sustainability, Environment, water, Population and Communitie であり、場合に
よっては環境アセスメントが要求される。
連邦の規制の他、各(準)州においても独自の環境関連法を制定している。今回対
象としている 3(準)州について、関係する法律は下表のとおりである。
表 5.1-16
州
NT 州
VIC 州
WA 州
オーストラリア地方政府の環境関連法
法律名(英)
Environmental Protection Authority
Act 2007 (NT)
Environmental Assessment Act 1994
(NT)
Environment Protection Act 1970 (Vic)
Environment Impact Act 1978 (Vic)
Environmental Protection Act 1986
(WA)
Contaminated Sites Act (WA)
Dangerous Good Safety Act 2004 (WA)
Rights in Water and Irrigation Act 1914
法律名(日)
環境保護権限法(2007 年)
環境アセスメント法(1994 年)
環境保護法(1970 年)
環境影響法(1978 年)
環境保護法(1986 年)
汚染敷地法
危険品安全法(2004 年)
水利・灌漑権法(1914 年)
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
- 90 -
輸入原料安定確保調査等事業
以下、各州の環境関連法について述べる。
‰
北部準州(NT)
環境保護権限法により環境保護庁が設置されている。環境保護庁は環境の側面から
持続可能な開発に関して政府や事業者、地域社会に対して助言と勧告を行う役割を果
たす独立組織である。観光に関する法律・規則などを自発的に審査・改善することが
可能である。
環境アセスメント法は北部準州内における開発提案の環境影響アセスメントの実
施を定めている。開発提案者は事故の提案についての申し立てを大臣に対して実施す
る。申し立て内容を受け、
大臣は環境影響ステートメントの要件を提案者に通知する。
その後、環境影響ステートメントドラフトに対してパブリック・コメントおよび政府
顧問のコメントを得、諮問機関の評価を経て承認がおりる。
‰
ヴィクトリア州(VIC)
国立公園法で指定された土地について採鉱・採掘リースに制限をつけている。また、
環境に重大な影響を及ぼす可能性のあるプロジェクト案のアセスメント実施を定め
ている。環境影響法を所管する大臣は環境影響ステートメントを作成する権限を持つ。
環境影響ステートメントはあるプロジェクト案に対して承認の可否および承認に
あたっての条件付加の判断をするにあたって有用となる情報を提供するために用い
られる。
‰
西オーストラリア州(WA)
鉱業事業者は操業開始前に環境に与えうる影響およびかかる影響に対処するため
の管理計画を概説した環境調査書面を用意する必要がある。書面は環境保護局によっ
てレビューされ、環境大臣に勧告を送付する。勧告内容を受け、環境大臣は条件ステ
ートメント(法的拘束力有)を事業者に対して発行。
その他、採掘オペレーションを行うためには環境部 CEO の許認可が必要。条件に
反すれば罰金を科せられることもある。
(4)外国投資法
鉱山を開発するには多額の投資を要する。また、海外の企業が開発に携わる可能性
も十分にある。したがって、投資に関する法制度、特に海外からの投資に関する法制
度を把握するのは非常に重要である。海外からの投資に係る法律として 1975 年外資
買収法(Foreign Acquisitions and Takeovers Act 1975 (Cwth))がある。この法律の概要
を以下に整理する。
①前提となる考え方
外国投資法を解釈するにあたって、
外国人の定義と国土区分の定義が重要となって
くるため、表 5.1-17 に整理する。
- 91 -
農業生産環境対策事業
表 5.1-17
オーストラリアの外国投資法で重要となる区分とその定義
項目
区分
個人
外国人の定義
国土区分
法人
ルーラルランド
アーバンランド
定義
オーストラリアに通常居住していない個人
豪州に居住していない自然人もしくは外国資本が
相当な部分(15%以上)を有する法人、複数の外
国人が合計で相当な持分(40%以上)を有する法
人
全体的および独占的に第一次産業事業に用いられ
ている土地を指す。
(ここでの第一次産業事業(耕
作、牧畜、酪農、園芸、漁業、林業など)は、一
定規模以上を持ちかつ商業的性格を備える事業で
なければならない。)
ルーラルランド以外のすべての土地
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
②鉱業権取得に係る投資
本調査に関わる投資形態の一つとして、鉱業権取得がある。以下に示す、開発時の
3 条件あるいは操業時の 1 条件に該当する場合には、鉱業権取得について外資審議委
員会(FIRB)に申請しなくてはならない。
‰
取得しようとする鉱業権が、アーバンランドを占有する権限を付与するものであり、
かつ、その期間が(延長を含め)5年を超過する可能性がある場合
‰
取得しようとする鉱業権が、アーバンランドの利用・取引から生じる利益または収
入の分配等に関する契約についての権利や利得を付与するものである場合
‰
取得しようとする鉱業権が、アーバンランド(オーストラリア・アーバン・ランド
会社*の株式を含む)の(直接的または間接的な)持分を付与するものである場合
*オーストラリア・アーバン・ランド会社:オーストラリアのアーバンランドが総資産の
50%超を占める会社
‰
操業段階に入ったのち、5,000万豪ドル以上の開発商業物件(操業地)の持分を買い
受けまたは取得する場合
(5)税制
本事業内容と関連する税制度として、法人所得税およびキャピタル・ゲイン税がま
ず挙げられる。その他、輸出を視野に入れた際に関税も関係する。
①所得税
所得税法上、居住法人と非居住法人で適用が区別される。詳細は表 5.1-18 のとお
りである。課税対象範囲は居住/非居住法人で異なるが、税率は一定である。
- 92 -
輸入原料安定確保調査等事業
表 5.1-18
区分
オーストラリアにおける所得税課税対象の整理
定義
オーストラリア国内で設立さ
れた法人、(海外で設立された
法人でも)オーストラリアにお
いて事業を営んでおり、その管
理及び支配の中心がオースト
ラリアに存在するか又はその
議決権をオーストラリア居住
者が支配している法人
居住法人
非居住法人
上記以外の法人
課税対象
税率
全世界所得が課税対象
30%
豪州国内源泉所得のみが課税
対象(ただし、金利や配当、使
用料等の源泉税対象となる収
入及び課税対象豪州資産のキ
ャピタル・ゲインは例外的に課
税対象)
30%
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
②キャピタル・ゲイン税
保有資産を譲渡した場合にはキャピタル・ゲイン税(CGT)が適用される。
表 5.1-19
項目
用語
税率
非居住者への課税条件
備考
キャピタル・ゲイン税概要
内容
キャピタル・ゲイン:資産譲渡価額から資産簿価を控除した額
30%(法人税率と同様)
・ 資 産 が 課 税 対 象 豪 州 資 産 ( Taxable Australian Property,
TARP)に該当すること
・キャピタル・ロス控除後のキャピタル・ゲインは課税所得に含め
られる
・キャピタル・ロスは将来のキャピタル・ゲインと相殺可能(その
他の所得との相殺は不可能)
・キャピタル・ロスは一定条件のもと繰り越し可能
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
次に、課税対象豪州資産(TARP)に該当するものを記載する。
‰
課税対象豪州不動産(例:豪州所在の不動産等)
‰
TARP に対する間接的持分 (例:TARP を保
有する豪州法人の株式。下記参照)
‰
豪州にある恒久的施設で用いた事業用資産
‰
上記を取得するためのオプションや権利
など
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
- 93 -
農業生産環境対策事業
以下の例は、外国法人株式及び豪州法人株式が TARP に該当し、非居住者による
外国法人株式の譲渡又は外国法人による豪州法人株式の譲渡が CGT の対象となる
場合である(図 5.1-21)。
図 5.1-21
外国法人に関する TARP 該当資産および CGT 対象行為の整理
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
③その他の税
法人税およびキャピタル・ゲイン税の他、関係してくると考えられる税等について
表 5.1-20 に整理する。
- 94 -
輸入原料安定確保調査等事業
表 5.1-20
税の種類
一般消費税
フリンジ・ベネ
フィット税
印紙税
関税・物品税
ロイヤルティ
オーストラリアでの肥料原料鉱床開発にあたって関連する税
課税対象
オーストラリア国内での課税対象物
品・サービス(流通の各段階の付加
価値部分に課税)
従業員等に支給される現金による賃
金/給与以外の経済的便益の価値
不動産およびその他の事業資産の
譲渡(各州で運用)
物品輸入(事業目的で購入した燃料
に化された物品税に対する控除が認
められる)
リン鉱石
カリウム塩
課税対象者
税率
物品・サービス需
要者
10%
雇用主
譲渡した側
46.5%
最大 6.75%
10 百万ドル以上
の鉱山プロジェク
トを営む納税者
5%
オンショア鉱物生
産者
(例)NSW 州:
0.7 豪ドル/トン
(例)NSW 州:
0.4 豪ドル/トン
(出典)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2011)オーストラリアの投資環境調査 2010 年より
(6)インフラ
①道路
オーストラリアの道路・鉄道網を図 5.1-22 に示す。主に沿岸部に敷設されており、
内陸部に敷設されているのはアリススプリングを経由して大陸を縦断する一路線の
みである。西オーストラリア州の大半が、主要幹線道路・鉄道へのアクセスが悪い地
域であることがわかる。
- 95 -
農業生産環境対策事業
図 5.1-22
オーストラリアの道路・鉄道網
(出典)Infrastructure Australia, National Land Freight Strategy Discussion Paper February 2011
2009 年 2 月、連邦政府は国を挙げてのインフラ開発計画として、Nation Building
Program を発表した。この計画には総額 420 億豪ドルが充てられることとなっている。
この計画には道路・鉄道双方の整備を含む。本項では、道路の開発計画について表
5.1-21 に整理する。
- 96 -
輸入原料安定確保調査等事業
表 5.1-21
オーストラリアの Nation Building Program の道路関連プロジェクト一覧
州
プロジェクト
QLD
Ipswich Motorway - Dinmore to
Goodna
QLD
Douglas Arterial Duplication
VIC
Pacific
Motorway
Transit
Project (Section B) - Daisy Hill
to Springwood South
Goulburn Valley Highway Nagambie Bypass
Princes
Highway
East
Duplication - Traralgon to Sale
Western Highway - Anthony's
Cutting Realignment
Western Ring Road Upgrade
WA
Mandurah Entrance Road
QLD
VIC
VIC
VIC
SA
TAS
NSW
NSW
連邦政府
出資金額
(百万豪ドル)
クイーンズランド州
運輸・幹線道路省
クイーンズランド州
$55
運輸・幹線道路省
$1,764.6
$210
Tarcutta Bypass
NSW
Woomargama Bypass
クイーンズランド州
運輸・幹線道路省
$177.6 ヴィクトリア州運輸省
$140 ヴィクトリア州運輸省
$160 ヴィクトリア州運輸省
$900 ヴィクトリア州運輸省
西オーストラリア州
$77.5
幹線道路省
南オーストラリア州
$451.2
運輸・エネルギー・インフラ省
タスマニア州
$186.2
インフラ・エネルギー・資源省
ニューサウスウェールズ州
$349
道路交通局
ニューサウスウェールズ州
$298
道路交通局
ニューサウスウェールズ州
$238
道路交通局
ニューサウスウェールズ州
$265
道路交通局
Northern Expressway and Port
Wakefield Road Upgrade
Midland Highway - Brighton
Bypass
Pacific Highway - Bulahdelah
Bypass
Pacific Highway - Banora
Point/Sextons Hill
NSW
担当部署
(出典)Nation Building program ウェブサイト(http://www.economicstimulusplan.gov.au/road_rail/pages/default.aspx)
プロジェクトの内容としては、車線数増加とバイパス建設が多く、交通渋滞の緩和
に注力するようなものとなっている。その他、新規の幹線道路建造プロジェクトも少
ないながら存在する。
- 97 -
農業生産環境対策事業
②鉄道
Nation Building Program における鉄道敷設計画は表 5.1-22 のとおりである。
表 5.1-22
州
オーストラリアの Nation Building Program の鉄道関連プロジェクト一覧
プロジェクト
Sydney – Brisbane New, Extended &
Upgraded Loops
Cootamundra –
Parkes Track
Upgrade
Hunter Valley: Liverpool Range New
Rail Alignment
Hunter
Valley:
Bidirectional
Signalling, Maitland to Branxton
担当
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
VIC
Hunter Valley: Minimbah Bank –
Third Rail Line
Hunter Valley: St Heliers to
Muswellbrook Duplication
Hunter Valley: Minimbah to Maitland
– Third Rail Line
Hunter Valley: Ulan Line Passing
Loops and Duplication
NSW Border – Acacia Ridge Track
Upgrade
Melbourne – Adelaide Extended
Loops
Seymour – Wodonga Track Upgrade
VIC
Wodonga Bypass Duplication
NSW/VIC
Melbourne – Junee Passing Lanes
NSW/VIC
Western Victoria Track Upgrade
NSW/SA
Cootamundra – Crystal Brook New &
Extended Loops
Adelaide –
Kalgoorlie New &
Extended Loops
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
Australian
Rail
Corporation (ARTC)
NSW
NSW
NSW
NSW
NSW
NSW
NSW
NSW
QLD
SA
SA/WA
Track
Track
Track
Track
Track
Track
Track
Track
Track
Track
Track
Track
Track
Track
Track
Track
(出典)Nation Building program ウェブサイト(http://www.economicstimulusplan.gov.au/road_rail/pages/default.aspx)
- 98 -
輸入原料安定確保調査等事業
③港湾
港湾開発が積極的に行われており、運営の効率化が進んでいる。日本までの距離は
ダーウィン港からは約 5,500km 、パース港からは約 8,700km である。
図 5.1-23 に、オーストラリアの港湾一覧を示す。沿岸全域にわたって港湾が整備
されているが、東海岸およびアデレード近辺で最も港湾整備が進んでいる一方、大陸
南部のグレートオーストラリア湾奥は港湾整備が遅れている。基本的には、鉱床から
最も近い港湾を選ぶのが輸送面では最も効率がよいので、鉱床の位置によっては、グ
レートオーストラリア湾奥の整備が必要になると考えられる。
図 5.1-23
オーストラリアの港湾一覧
(出典)Ports Australia ウェブサイト(http://www.portsaustralia.com.au/port_industry/)
- 99 -
農業生産環境対策事業
④交通インフラ整備の見通し
近年、オーストラリアのインフラ開発は連邦及び州政府共に積極的に推進しており、
多くの資金が投じられている。連邦及び州政府の両レベルにおいて、インフラ投資に
対して長期のコミットが行われている。重要な計画として以下のものを挙げることが
できる。
表 5.1-23
主なインフラ開発計画概要
公表時期
2009 年 2 月
2008 年 12 月
不明
公表者
連邦政府
ビクトリア州政府
ニューサウスウェールズ
州政府
2005 年
クイーンズランド州政府
計画名
Nation Building Program
Victorian Transport Plan
Metropolitan
Transport
Plan ( Metropolitan Plan
for Sydney 2036)
South East Queensland
Infrastructure Plan
金額
420 億豪ドル
380 億豪ドル
502 億豪ドル
286 億豪ドル
(出典)JETRO シドニー事務所(2011)オーストラリア・インフラマップ
オーストラリア連邦及び州政府は、
インフラ関連分野に対して今後 10 年間で 7,500
億豪ドル(約 61.5 兆円:1 豪ドル=@82 円)を投資する計画があると表明している。
しかしながら、インフラの開発・改修に必要な資金調達の難しさに現在のオーストラ
リア政府は直面している。そのため、今後のインフラ整備は効率よくコストパフォー
マンスのよい方法で実施する必要があるとの認識を持つ。したがって、民間企業の役
割は重視されている。
オーストラリアでは、1980 年代からインフラ整備に民間企業が携わる事例がみら
れる。1990 年代の各種法改正・制定を受け、民間企業がインフラ整備に参入する機
会は拡大している。改正・制定された各種法律には、国家鉄道会社法(National Rail
Corporation Act 1992)、道路交通法(Roads Act 1993)、空港法(Airport Act 1996)
、電
気通信法(Telecommunications Act 1997)などがある。これらの法律により、所有権、
リース条件、政府に対するサービスの提供などについての自由度が、従来よりも高ま
った。
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輸入原料安定確保調査等事業
⑤電力インフラ
オーストラリアの電力網は図 5.1-24 の通りである。国土東側沿岸部にグリッドが
集中しており、それ以外はパース近郊およびダーウィン近郊に若干あるのみとなって
いる。西オーストラリア州、クイーンズランド州、北部準州では独立電源が多い。
図 5.1-24
オーストラリアの電力網
(出典)Australian Government Department of Resources Energy and Tourism (2011) Energy in Australia 2011
(http://www.ret.gov.au/energy/Documents/facts-stats-pubs/Energy-in-Australia-2011.pdf)
2009 年から 2010 年にかけて、系統接続の発電容量が 53,529MW 増設され、系統に
接続されていないものも 5,503MW が増設された。
現在、電力関連事項の所管は、「卸電力市場および送電線への規制など各州をまた
ぐ事項」については連邦政府、「配電・小売」については州政府との分担になってい
る。歴史的に州単位で電気事業が営まれてきた経緯もあり、州間連系設備が十分では
なく、現在整備が進められている。
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農業生産環境対策事業
⑥ガスパイプライン
オーストラリアのガス堆積盆とパイプラインの分布は図 5.1-25 の通りである。国
土東部が最もパイプラインが整備されており、その他、ダーウィンから南下するライ
ン、および西海岸沿いのラインとそこから内陸に入るラインが整備されている。電力
網が無い場合にはガスパイプラインからのガスを用いて、
発電を行うことも考えうる。
図 5.1-25
オーストラリアのガスパイプライン
(出典)Australian Competition & consumer Commission (2011) State of the energy market 2011
(http://www.accc.gov.au/content/index.phtml/itemId/1021485)
(7)その他
鉱物産業分野の専門知識を持つ人材が多く、ステータスが高い。さらに、鉱物産業
業界は過去 25 年安定しており、ストライキも少ない。
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