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奈良市特別支援教育ハンドブック

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奈良市特別支援教育ハンドブック
奈良市特別支援教育ハンドブック
平成19年3月
奈 良 市 教 育 委 員 会
奈良市特別支援教育推進委員会
はじめに
学 校 教 育 法 の 一 部 改 正 に よ り 、い よ い よ 本 年 4 月 か ら は 特 別 支 援 教 育
が ス タ ー ト し ま す 。ま た 、教 育 基 本 法 も 改 正 さ れ 、「 特 別 支 援 教 育 元 年 」
ともいうべき転換期を迎えております。
本 市 に お き ま し て は 、平 成 1 6 年 度 か ら「 奈 良 市 特 別 支 援 教 育 検 討 委
員 会 」を 設 置 し 、保 護 者 や 教 職 員 向 け リ ー フ レ ッ ト を 作 成 し 配 布 す る と
と も に 、平 成 1 7 年 度 に は「 奈 良 市 の 特 別 支 援 教 育 の 在 り 方 に つ い て( 最
終 報 告 )」 を ま と め ま し た 。 ま た 、 奈 良 市 教 育 改 革 プ ロ グ ラ ム 推 進 事 業
に お い て「 特 別 支 援 教 育 推 進 モ デ ル 校 」で 研 究 を 進 め 、そ の 実 践 を 教 育
改 革 推 進 フ ォ ー ラ ム を 通 し て 全 校 園 に 広 げ ま し た 。平 成 1 8 年 度 か ら は
「 奈 良 市 特 別 支 援 教 育 推 進 委 員 会 」を 設 置 し 、検 討 委 員 会 の 最 終 報 告 を
も と に 、具 体 的 な 取 組 に つ い て 検 討 を し て ま い り ま し た 。引 き 続 き「 特
別支援教育推進モデル校」においても研究実践を進めております。
奈 良 市 の 障 害 児 教 育 は「 す べ て の 子 ど も の 学 習 権 を 保 障 し 、し あ わ せ
に 生 き る 力 を 身 に つ け さ せ る 」こ と を 方 針 と し 、障 害 児 学 級 を 中 心 と し
て 、障 害 児 教 育 の 実 践 を 深 め て ま い り ま し た 。こ れ か ら は 、今 ま で 培 っ
て き た 障 害 児 教 育 の 蓄 積 を も と に 、特 別 支 援 教 育 の 発 展 ・充 実 の た め に 、
今後の特別支援学級の在り方や一人一人の教育的ニーズに応じた全校
での支援体制について取組を進めていただきたいと思います。
こ の「 奈 良 市 特 別 支 援 教 育 ハ ン ド ブ ッ ク 」が 教 育 関 係 者 に 広 く 活 用 さ
れ 、子 ど も を 中 心 に 据 え た 支 援 や 取 組 が 学 校 長 の リ ー ダ ー シ ッ プ の も と
に着実に展開されることを願っております。
最 後 に な り ま し た が 、本 ハ ン ド ブ ッ ク 作 成 に あ た り 、ご 協 力 を い た だ
き ま し た 岩 坂 委 員 長 、並 び に 各 委 員 、関 係 者 の 方 々 に 心 か ら 感 謝 申 し 上
げます。
平成19年3月
奈良市教育委員会
教育長
中尾
勝二
奈良市特別支援教育ハンドブックの有効な活用を願って
本ハンドブックは、「奈良市の特別支援教育の在り方について( 最終報告 )」(平成
18年3月)を受けて、平成18年度に設置された「奈良市特別支援教育推進委員会」
の中で多くの議論を重ねてまとめられたものです。委員会では最終報告での「4つの柱」
を軸に、奈良市の現状もふまえたうえで、本年4月からの特別支援教育をスムーズにス
タートするための体制整備を急いできました。特別支援教育は一人一人の子どもの教育
ニーズに応じて、全校体制で支援を行っていくものです。すなわち、全ての教員が担い
手となります。そのため、本ハンドブックは市内小中学校の全ての教員、および幼稚園
や高校への配布を目的として作成しました。
特別な支援の必要な子どもにどう気づき、どう理解し、そしてどのように子どもに寄
り添った配慮と支援を行っていくか。それらを具体化するために、本ハンドブックでは
8つのポイントをあげて、それぞれに章立てしています。まず第1章では「困った子」
ではなく、「困っている子」であるという理解の大切さを述べています。第2、第3章
では、特別支援教育コーディネーターを中心とした校内委員会のあり方について、特別
支援教育推進モデル校などでの取組をもとに具体的に述べました。そして、第4章では
個別指導計画の作成の仕方について、実態把握から目標設定、手立ての工夫にいたるま
で詳細に説明しました。第5章では、教室における配慮として、気づきに基づく支援を
誰が、いつ、どこで、どのように行えるかについて述べました。第6章から第8章まで
は、校内研修のあり方から、保護者に役だつ相談窓口の情報、そして連携ケースの具体
例について、特にライフサイクルを見越した支援の観点から紹介しました。
本書の利用法の一例を紹介しましょう。目の前の子どもの躓きに気づいたら、本書を
手にとってまず第8章をみてください。そして、太郎君の笑顔のための支援について考
えてみてください。次に、第2章から一気に読み進めて、第5章の学びやすさのチェッ
クを行ったうえで、何かひとつ教室での配慮を実行してみてください。そして、手ごた
えを確認できたら、もう一度第4章をじっくり読んで他の先生とも相談しながら個別の
指導計画をたててみてください。子どものニーズに応じた支援をより効果的に行ってい
くためには、この個別の指導計画を作成し、全校体制で実践し、そして子ども本来の笑
顔を喜びあうことが何よりも大切です。一人の子どもへの一人の先生の取組から特別支
援教育がはじまり、チームワークで支援していくことでさらに支援の輪がひろがってい
くことを心から願っています。よろしくお願い申し上げます。
平成19年3月
奈良市特別支援教育推進委員会
委員長
岩坂
英巳
目
次
特別支援教育とは
奈良市の特別支援教育
4つの柱
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
校内委員会の役割
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
校内委員会の運営
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」・・・・・・・・
7
「個別の指導計画」を作成しましょう
・・・・・・・・・・・・・・
8
「個別の指導計画」作成の流れ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
9
実態把握の仕方
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10
目標の設定
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
13
作成例
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14
教室における配慮のポイント
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16
6
特別支援教育のための研修の促進
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
19
7
保護者の相談窓口
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
21
8
連携ネットワーク
特別支援教育8つのポイント
1
特別な支援が必要な子どもの理解
2
校内委員会
3
特別支援教育コーディネーター
4
個別の指導計画の作成
5
教室における配慮
―太郎君のケース―
引用・参考文献
・・・・・・・・・・・・・・
22
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
24
【資料編】
・
軽度発達障害の理解と支援
(1)LD(学習障害)とは
(2)ADHD(注意欠陥多動性障害)とは
(3)高機能自閉症等とは
・
奈良市特別支援教育ネットワーク図
特別支援教育とは
「特別支援教育とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な
取り組みを支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握
し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導
及び必要な支援を行うもの」です。
「特別支援教育を推進するための制度のあり方について」抜粋
平成17年12月18日
特殊教育から特別支援教育へ
平成15年3月「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告 )」では障害の程
度に応じ特別な場で指導を行う「特殊教育」から障害のある子ども一人一人の教育的
ニーズに応じて適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図ることが示さ
れました。
平成17年12月8日「特別支援教育を推進するための制度の在り方について 」(答
申)が出されました。平成18年6月21日、学校教育法の一部を改正する法律が公
布され、平成19年度より特別支援教育が始まります。
特別支援教育
( 義務教育における概念図 )
従来の特殊教育
盲学校
聾学校
養護学校
小・中学校
・LD
・ADHD
・特殊学級
・通級指導教室
知的障害
肢体不自由
病弱
・高機能自閉症
など
特別支援教育は、子ども一人一人の教育的ニー
ズに応じた多様な学びを支援していくものです。
今後、特別支援学級の活用と交流及び共同学習
の推進が必要とされています。また、保護者をは
じめ教育・福祉・保健・医療・労働等、様々な関
係機関との連携・協働が必要です。
-1-
奈良市の特別支援教育
奈良市の特別支援教育
Ⅰ
4つの柱
4つの柱
一人一人の教育的ニーズに応じた多様な学びの支援
LD、ADHD、高機能自閉症等の子どもたちへの支援が緊急の課題です。
・ 各学校で特別支援教育コーディネーターを指名し、校内支援体制を整備する必要があり
ます。
・ 校外にサポートチームをつくり、校外からの支援体制を構築する必要があります。
・ LD、ADHD、高機能自閉症等の子どもたちの学びを支援するために、特別支援教室
(仮称)を開設する必要があります。
・ 通級指導教室の適正配置と機能を強化する必要があります。
・ 通常学級の中で、個のニーズに応じた支援をする必要があります。
Ⅱ
子どものライフステージに応じた支援体制の構築
保護者がこどもの障害等について相談できる、適切な相談機関が必要です。
・ “こども発達支援センター(仮称)”を要とした相談指導体制を構築し、保護者が安心
して相談できる体制を作る必要があります。
・ 幼児期から指導を受けることができる、“こども発達支援室(仮称)”の開設が求められ
ます。
・ 関係機関が連携して相談チームを組むことができるよう、連携システムを作る必要があ
ります。
・ 教育相談ファイルを作成し、支援情報を蓄積する必要があります。
・ 関係機関が連携をして、後期中等教育や就労への移行をスムーズに行う必要があります。
Ⅲ
教職員の専門性や指導力の向上
障害にかかわる個別の教育的ニーズに十分にこたえられることが必要です。
・ 特別支援教育コーディネーターを養成する研修を継続する必要があります。
・ 教職員一人一人の役割に応じた研修を行う必要があります。
Ⅳ
地域で豊かに学び生活する環境作り
地域で育ち、地域で学ぶ環境作りを進めなければなりません。
・ 保護者や地域の人々の理解と協力を得ながら、ボランティアの組織を整備する必要があ
ります。
・ 学校施設のバリアフリー化を計画的に推進していく必要があります。
・ ホームページへの活動事例の掲載等、積極的な情報発信を行う必要があります。
奈良市の特別支援教育の在り方(最終報告)平成18年3月より
1
特別支援教育8つのポイント
特別支援教育8つのポイント
1特別な支援が必要な
2校内委員会
子どもの理解
3
ページ
4~5
ページ
4個別の指導計画の作成
3特別支援教育
コーディネーター
6
7~15
ページ
5教室における配慮
ページ
6特別支援教育のため
の研修促進
16~18 ページ
19~20
7保護者の相談窓口
ページ
8連携ネットワーク
ー太郎君のケースー
21
ページ
22~23
2
ページ
1特別な支援が必要な子どもの理解
特別な支援が必要な子どもの理解
「困った子」ではなく「困っている子」
子どもの困難さの理解
LD等の子どもは、自分では一生懸命に取り組んでいるにもかかわらず、注意され
たり 、誤解されたりすることが少なくありません 。
「 どうしてできないのだろう 。」
「み
んなといっしょにやっているのに 。」と疑問を抱き、学習に対する意欲減退、自信喪
失に陥り、不登校になることや、二次障害を引き起こし行為障害に進む事例もありま
す。
のかな・・。困った子だ。
何度言ったら分かる
んだ!!
君だけだぞ、まだで
きてないのは。
困った子ととらえる
何度同じことを説明させる
一生懸命やってい
るのになあ・・。
視点の転換
て、別の手だてを考え
みよう
すごいね。全部でき
たじゃないか。
困っている子ととらえる
スモールステップにし
そうだったのか、
わかったぞ。
このような子どもは、奈良市の小中学校に5%程度在籍し
て い ま す 。( 平成16年奈良市特別支援教育検討委員会調査)
学 級 担 任や 教科の担任からすると「気になる子 」「困った子」
として見られることが多く、時には問題行動として生徒指導
の対象になることもあります。しかし子どもたちからする
と 、「 一生懸命しているのにうまくいかない 。」「先生にいつも
注意ばかりされて自信がない」など大きな悩みを抱えていま
す。
このような子どもたちは学習や生活の場面で「困っている
子 」 と いう 視点が必要です 。「困っている子」すなわち支援が
必要な子どもたちなのです。
3
2校内委員会
校内委員会の役割
校内委員会は、校内における全体的な支援体制を整理するために必要な委員会です。
校内委員会の役割
①学習面や行動面で特別な教育的支援を必要とする子どもの気付き
②その子どもの実態把握
③保護者や関係機関と連携し、子どもに応じた支援方法・指導内容の検討(個別の教育
支援計画、個別の指導計画)・担任への支援方法の具体化
④子どもへの指導や保護者との連携について、教職員の共通理解および校内研修の計画
⑤関係機関との連携(市教育委員会、県立教育研究所、特別支援学校
等)
⑥保護者の相談の窓口
校内委員会の設置
①新規に委員会を設置する。
②既存の校内にある組織の機能を拡大して校内委員会を設置する。
(障害児教育推進部、生徒指導部、教育相談部、人権教育部など)
③従来の組織を統廃合して校内委員会を設置する。
などが考えられます。学校の規模や校務分掌の位置づけを考慮して設置していくこ
とが大切です。
校内委員会の構成
特別支援教育コーディネーター(以下、コーディネーター)を中心に、校長・教頭・教
務主任・生徒指導主任・学年主任・特別支援学級担任・養護教諭等が学校の実態と実情に
あわせて集まって、話し合う組織を作っていきましょう。
小中学校の場合、学年部会、教科部会、分掌部会などの組織があり、それぞれが連
携しながら情報交換を行いましょう。
子どもの支援方法など検討する会議(ケース会議)は、子どもに関わる教職員だけ
でなく、時には関係機関と連携するなどし、必要に応じて柔軟に運営しましょう。
コーディネーターが、それぞれの意見をまとめながらよりよい支援が行えるように
考えていくことが大切です。共通理解を図るために教職員に報告する機会や研修の場
を作って「みんなで取り組む」意識を高めることも大切です。
4
2校内委員会
校内委員会の運営
定期的に校内委員会を開き、子どもの実態を把握し、指導方法を検討し指導計画を
作成しましょう。また、随時、ケース会議を行って支援内容や方法の評価を行い、修
正しながらよりよい支援を行うことが大切です。
校内委員会
担任の気付き
保護者の気付き
教育相談
全校体制での支援
担任を中心とした支援
校内委員会での協議
担任と指導や配慮の
方法を検討
・認知特性に応じた指導
・指導方法の工夫
・教室環境の整備
等
ケース会議で
支援方法の検討
保護者や関係機関
との連携
・少人数指導の実施
・個別の指導
・校内通級による指導
・委員会、部活動での支援
・スクールサポーターによ
る支援
等
年間の活動計画例
月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
活 動 内 容
○前担任からの引き継ぎ
○学年部会(気になる児童生徒の把握)
■校内委員会 ( 支援対象児童生徒の特定 )
■校内委員会(支援体制の検討)
○個別の指導計画の作成
○指導計画の評価と修正
○研修(生徒の共通理解、障害理解に
ついて)
■校内委員会
○保護者との話し合い
○授業研究
○研修(具体的な支援の進め方)
○指導計画の検討
○指導計画の評価と修正
■校内委員会
(本年度の反省、来年度の課題)
○就学・進学に向けての支援連絡会
5
学校行事
○学級開き
○家庭訪問
○校外学習
○個人懇談
○運動会
○個人懇談
3特別支援教育コーディネーター
特別支援教育コーディネーター
一人一人の教育的ニーズに応じて適切
な支援を行うためには、特別支援教育コ
ーディネーターの位置づけが必要です。
コーディネーターの役割には次のよう
なものがあげられます。
<担任への支援>
○担任から子どもの様子をつねに把握しておく。
○必要に応じて担任への助言を行う。
○サポートできる組織を検討して柔軟に対応する。
<外部との関係機関との連携>
○就学前の様子や医療等の情報が必要な場合は、保護
者の同意のもと 、関係機関と連絡を取って入手する 。
○市教育委員会や県立教育研究所との連絡調整をする 。
○医療や保健など専門機関との連携を図り、子どもの
指導にあたる。
<保護者に対する窓口>
○保護者や本人の願いや悩みに耳を傾け、信頼関係を
築く。
○保護者と話し合い、家庭と学校とが協力しながら、
支援方法を共に考える。
○将来の展望を見据えて子どもの成長を見る。
6
コーディネーターは特別支援教育のキーパ
ーソンとして多くの役割を果たすことが期待
されていますが、いろいろな仕事を一人で担
う必要はありません。
学校の規模によってはコーディネーターを
複数にするなども考えられます。
<校内委員会での推進役として>
○支援を必要とする子どもを把握して校内委員会の運
営を行う。
○担任の気付きに対して、校内委員会で資料を提示で
きるように情報をまとめておく。
○ケース会議が必要な場合、校内委員会だけでなく必
要なメンバーを招集して小委員会を開催する。
4個別の指導計画の作成
「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」
文部科学省が発表した「小・中学校におけるLD(学習障害 ),ADHD(注意欠陥/
多動性障害 ),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン( 試
案 )」(平成16年)の中で、小・中学校の支援体制の構築にあたり「個別の教育支援計
画」と「個別の指導計画」を作成することが求められています。
「個別の教育支援計画」とは
「 個別の教育支援計画」は、教育、福祉、医療、労働等が一体となって乳幼児期か
ら学校卒業後まで障害のある子どもの支援を行うための計画をいいます。障害のある
子どもに関わる関係者が子どもの障害の状態等に関わる情報を共有化し、教育的支援
の目標や内容、関係者の役割分担などについて策定するものです。
「個別の指導計画」とは
「 個別の指導計画」は 、「個別の教育支援計画」と関連させ、児童生徒一人一人の障
害の状態などに応じてきめ細やかな指導をするためのものです。学校における教育課
程や指導計画をより具体的にするため、児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて指
導目標や指導内容、方法等を盛り込んだものです。
「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」の位置づけ
個別の指導計画
就学前
小学校
中学校
高等学校
個別の教育支援計画
7
卒業後
4個別の指導計画の作成
個別の指導計画を作成しましょう
個別の指導計画は、個々の子どもの実態や環境に応じて、学期または年間の具体的な指
導目標、内容等を盛り込んだものです。
通常の学級では、各学校の教育課程に沿って学年毎に教科・領域の指導計画が立てられ
ていますが、特別な教育的支援を必要としている子どもに対しては、教科・領域だけでな
く、日常生活全般を含め、個々の子どもに応じた「個別の指導計画」が必要になります。
特別な教育的ニーズのある子どもに適切な支援をするためには
特別支援学校では個別の指導計画の作成が進められています。
特別支援学級においても個別の指導計画の作成が求められていま
す。特別な支援が必要な子どもたちの個別の指導計画を作成する
ことで 、「いつ 」「どこで 」「誰が 」「どのように」支援するのかが
明確になります。
個別の指導計画を作成することで
○子どもに関わる複数の教職員の目で見ることによって的確な実態把握が行えます。
○指導目標が明確になり個に応じた適切な指導が期待できます。
○評価の視点が明確になり、継続性や発展性のある指導が展開できます。
○本人や保護者の願いを把握しながら作成することで、学校教育への理解が深まり、
協力体制が期待できます。
○子どもに関わる複数の教職員間の共通理解のもとに指導が展開され、組織的な指導
が展開できます。
○子ども自身が自分の学習の方向性を理解しやすくなります。
個別の指導計画の作成と活用
個別の指導計画を生かすために
○個別の指導計画は一度作成して終わるのではなく、子どもの状態や環境の変化に
柔軟に対応するためにも修正や見直しをすることが大切です。
○個別の指導計画は個人情報が掲載されていることから、守秘義務を守ることが大
切です。また、教職員の中ではいつでも確認できるような工夫が大切です。
8
4個別の指導計画の作成
個別の指導計画作成の流れ
個別の指導計画を作成するには
個別の指導計画は、日々の授業の中で生かされることが大切であり、その作成にあたっ
ては、本人や保護者の希望や願いを聞きながら作成します。
個別の指導計画の立案・作成の流れ
実態の把握
配慮や支援が必要な情報の収集
(例)
○特殊音節の表記を誤る。
○漢字がなかなか覚えられない。
○衝動的な行動が目立つ。
等
担任の情報
保護者の情報
関係者からの情報
専門機関からの情報
等
目標の設定
具体的な目標の設定
(例)
○3年生までの漢字の読み書きがで
きる。
○自分の気持ちを周りの人に伝える
ことができる。
○九九の表を使い割り算ができる 。
目標は具体的に、焦点
を絞ることが大切です 。
目標の設定は、単元・
学期・学年ごとに行い
ます。
手だての工夫
目標達成のための手だて
(配慮の例)
○座席の位置を前にする。
○さりげなく手助けできる子と同じ
グループにする。
(支援の例)
○問題数の少ないプリントを用意する。
○指示が理解できたか個別に確認する。
9
一人一人の教育的ニー
ズに応じて手だてや実
施方法・期間などを具
体的に記入します。
4個別の指導計画の作成
実態把握の仕方
よりよい子どもの支援のための情報収集
学習や行動面で困難さを示し、特別な教育的支援を必要としている子どもたちの
様子を把握することは、そのつまずきの原因を考え、そのことをもとに適切な教育
的支援を行っていくために必要なことです。特別支援教育コーディネーターや担任
が中心になって多面的に情報収集を行います。
実態把握では次のことがポイントになります。
①つまずいている領域や課題を見つける。
②子どもが得意なところはどこか把握する。
③どの部分に支援が必要なのか把握する。
④保護者・子どものニーズを把握する。
多面的な情報収集
子どもの情報収集をする場
○生活場面での様子
合、学習や生活での困難さを
○学習場面での様子
把握することは大切なことで
○長所
すが、特別な教育的支援が必
○発達の様子
要な子どもたちを指導するに
○本人や保護者の願い
あたっては、得意なことや興
○友人関係
味関心を把握することが大切
○医療関係の情報( 服薬・病院名・主治医等 )
です。
■情報を収集する場合は、奈良市
情報収集の方法
個人情報保護条例にのっとり
・保護者の同意を得る
○行動観察
・不必要な情報を収集しない
○学習・行動の記録
・目的外に使用しない
○面接による聞き取り
・守秘義務を守る
○生活スケジュールの調査
○心理検査
など、個人情報の取り扱いには
等
十分な配慮が必要です。
10
4個別の指導計画の作成
多面的な情報収集のために
中学校実態把握シート(例)
情報を収集するにあたって、特別支
援教育コーディネーターや担任が中心
となり、保護者・専門機関・関係職員
等子どもに関わる多くの人からの情報
を集めることが大切です。中学校では
教科ごとに関わる教員がちがうため、
実態把握シートなどを使ってより多く
の教職員から情報を得られるようにす
ることが大切です 。
記録をとって実態把握
子どもに気になる行動が見られるとき、まず 、「どんなときに 」「どんな行動をし
たのか 」「どう対応したのか」などを記録をとってみましょう。1週間にどの程度そ
の行 動が現れ るのか 回数も記 録しましょう。記録をもとに、子どもの気になる行動
の原 因を探っ てみま しょう。 気になる行動がなぜ現れるのか、原因を推測し、支援
の方法を検討することが大切です。
行動のABC分析( 例 ) 子どもの行動と対応した結果を記録にとる。
間接的状況
A:先行条件
先生がほかの子ど
B : 子ども状況
苦手な学習課題
C:
結果
先生が追いかけてきて
教室に連れ戻してく れ
教室を飛び出す
もを教えている
る
〔記録表〕
項目
先行条件
いつ
気になる行動
どのような
どのような
状況で
内容
算数の時間
どのように
行動が
生じたか
結果
どのようなことが
起こったか
どのように
展開したか
担任が他の子の個別 教室からの飛び出し「こんな問題いやじゃ」担任が追いかけてい 気分が落ち着くまで話
指導をしていた。
た。
と言って飛び出す。
推測した原因
○先生に注目してほしい。
った。
をした。
対応策
→
教室から飛び出してもすぐに追いかけない。
(安全面と支援体制を考慮した上で)
○自分から「教えて」と言えない。
→
理解できているか、授業の中で確かめる。
11
4個別の指導計画の作成
心理検査等を使った実態把握
子どもの発達の様相を客観的に把握し、指導の参考にするために心理検査を使いま
す。その子の持っている認知面での特徴が数値で表されます。いくつかの検査を組み
合わせることでより多面的な情報を得ることができます。
検査の種類
発達検査
検査名
新版K式発達検査
2001
特徴
姿勢運動、神経心理学の最新理論の
研究をもとに、子どもの知的活動の
水準を測定することができます。
知能検査
WISC-Ⅲ知能検査 一般知能を言語性、動作性、全検査
の3種類のIQによって測定する。
知的発達の状態を評価点プロフィー
ルで表示することで 、「個人内差」
という観点から分析的に判断できま
す。
K-ABC心理教育
認知処理能力を継次処理、同時処理
アセスメントバッテリー から捉え、学習障害の教育的診断や
指導プログラム作成に利用できま
す。
言語発達検査 絵画語彙発達検査
基本的な「語いの理解力」の発達度
PVT
を短時間に正確に測定することがで
きます。
社会性
新版S-M
領域別に社会生活年齢(SA)と社会
発達検査
社会能力検査 生活指数(SQ)が算出され、SAプロ
フィールを描くことで子どもの特徴
がわかり、適切な指導が行えます。
自閉症に
PEP-R
模倣・知覚・運動機能・認知機能な
関する検査
ど、発達上の重要な側面を的確にと
らえることができます。
視知覚検査
幼児から小学校低学年の子どもの視
フ ロスティッグ
視知覚発達検査 知覚情報の問題を発見し、適切な訓
練を行うための検査です。
LDに
LDI
6つの基礎的学力(聞く、話す、読
関する検査
む、書く、計算する、推論する)と
行動、社会性の計8領域で構成され
ています。
適応範囲
3ヶ月~
成人
5歳~
16歳11ヶ月
2歳6ヶ月~
12歳11ヶ月
3歳0カ月 ~
10歳11ヶ月
乳幼児~
中学生
6ヶ月~
12歳
4歳~
7歳11ヶ月
小学校1年生~
6年生
心理検 査は行 うだけで はなく 、結果を考察することでその子にあった指導の在り
方を見出 すこと が大切で す。ま た、結果として表される数値だけで判断するのでは
なく、エピソードと結びつけて分析することも大切です。
個別の 心理検 査を行う 場合、 保護者(本人)の同意が必要です。心理検査は指導
に役立て るため に行うも のです 。結果を日頃の指導に生かすためにも、結果から明
らかにな った指 導の方針 を保護 者(本人)に説明し、学校と家庭が協力して支援を
することが大切です。
12
4個別の指導計画の作成
目標の設定
○実態把握から、優先順位を考える
実態把握の中から、緊急度の高いもの、取り組みやすい課題から始めるなど優先順
位を考える。
○目標達成までの課題を分析する
目標を達成するまでの課題を分析してスモールステップで課題を明確にする。
○授業との接続を考える
目標達成のために 、授業の中で「 どのように支援するか 」「 どのように評価するか 」
まで考える。
目標設定のポイント
実態把握をもとに目標を設定する場合、一定の期間内に達成できそうな目標にするこ
とが大切です。また、その目標が達成したのかどうかが分かりやすく評価できる具体的
な内容の目標にすることも大切です。
長期目標と短期目標
長期目標・・・大きな目標。1年間のスパンで考えた目標。
短期目標・・・長期目標を達成するために設定する小さな目標。学期や月などの短いスパ
ンで考えた目標。
長期目標
身の回りのことは自分でできるようにする。
短期目標
ランドセルの荷物を机に入れる 。
さらに細かな目標を
ランドセルを机の上に置く。
ランドセルから荷物を取り出す 。
短期目標もさらにスモールステップで指導し、目標とする行動に「教職員の支援を受
けて」や「声かけをして」等のことばを付け加えて支援の度合いを表すと、さらに評価
がしやすくなります。
13
4個別の指導計画の作成
個別の指導計画の作成例
実態把握シートで情報を整理し、
目標を立て、個別の指導計画を作成
していきます。
14
4個別の指導計画の作成
中学校では、教科担
当や部活動担当など、
多くの教職員からの情
報を短くまとめられる
ように工夫することが
大切です。
15
5教室における配慮
教室における配慮のポイント
特別な教育的支援が必要な子どもたちは、小さいときから“うまくできない ”“上手
にできない”などの失敗体験を他の子どもたちより多く持っている場合が多いです。そ
こで、このような子どもたちへの援助を考える場合、特に意識すべき援助の原則があり
ます。
①
学習環境を整える。
②
成就感を味わわせる。
③
自律心を育てる。
④
見通しを持たせる。
この4つの原則は、すべての子どもたちへの援助にもいえることがらです。
黒板が授業前にはきれいに消されていますか?
教
前面の掲示板にはよけいなものは貼っていませんか?
教室は明るすぎたり暗すぎたりしていませんか?
室
教室の外から気になる音が聞こえてきませんか?
環
机はきれいに整頓されていますか?
ゴミやプリントなどが床に落ちていませんか?
境
教室の設備(ロッカーや荷物かけ)などは壊れていませんか?
一日の流れが簡潔に分かりやすく提示されていますか?
大事なポイントが分かるように板書ができていますか?
教
どの子にも聞こえる声で話していますか?
員
短くわかりやすい落ち着いた声で指示をしていますか?
先生の机の上や教卓は整理ができていますか?
子どもの机の上には不必要なものは出ていませんか?
子
窓から外が見えるところに席がありますか?
ど
授業の終わりごとに、机の上はきれいになっていますか?
机の中に、テストや配布プリントなどがたまっていませんか?
も
授業中も机の上の整理ができていますか?
16
い
いいえ
特別な支援が必要な子どもたちの教室での
は
学びやすさをチェックしてみましょう。
特別な支援が必要な子どものための
学びやすさのチェックリスト(例)
5教室における配慮
教室の中での特別な配慮
自律心を育てる
学習環境を整える
○自分のことは自分でする習慣を身につ
ける。
○自分で判断し、決定していく場面を設
定する。
○規則や指示を分かりやすくする。
○落ち着いた学習の雰囲気を作る。
○教室内外の掲示物など、よけいな刺
激を排除する。
○身の回りの整理整頓について個別に
声かけをする。
してほしいことを言う
教室での座席の配慮
○○してはいけません。→ ○○しましょう。
外を見てはいけません。→ 黒板を見なさい 。
教卓
教卓
周りを見て
動きやすい
個別の支援がしやすい
個別の支援がしやすい
個別の指示がしやすい
短いことばで言う
明日の連絡が書けたら帰る用意をしましょう。
→明日の連絡を書きましょう。
→帰る用意をしましょう。
具体的に言う
早くしなさい。
(いつまでにしたらいいのか分からない)
→10分までにしましょう。
見通しをもたせる
○一日のスケジュールを絵や文字で具
成就感を味わわせる
体的に伝える。
○ 得 意な 面 を 見つ け て やる 気を育 てる。
○ ス モー ル ス テッ プ で 学習 の目当 てを分
かりやすくする。
○ 一 人で や り 遂げ ら れ る体 験を積 み重ね
る。
○ 一 人一 人 の 子ど も た ちの 良さを 認めあ
える学級集団作りをする。
○望ましい学習行動を具体的に教える 。
○授業中は絵図や文字などの視覚的手
がかりを有効に使う。
○自分の学習や行動の目当てを自分自
身で評価できる場面を作る。
信頼関係の確立
スクールサポーターによる
個別の支援
障害のあるなしに
かかわらず、どの子
も認めてもらってい
るという安心感を持
てる学級作りが大切
です。
その土台があって 、
初めて特別な支援が
できるといえます。
大事にされている
学級集団を育てる
安心感
認めてもらえる
安心感
困っていることに適切に
配慮・支援
担任による支援
クラスの中での育ちを支援
17
5教室における配慮
子どもの支援するためには 、担任だけではなく学校全体で取り組むことが大切です 。
「だれが 」「いつ 」「どこで 」「どんな」支援を行うのか、校内委員会が中心となって
支援体制を作る必要があります。
全教職員が連携をして支援をするためには次のようなことが考えられます。
だれが
学級担任
教科担任
学級担任
教科担任
学級担任
教科担任
同学年教員
いつ
授業時間内
教室
授業時間外
教室
教室
合同授業
学級担任と
少人数指導担当
学級担任と
特別支援学級担任
どんな支援を
一斉指導の中で担任が教材や学習方法
を配慮しておこなう
個に応じた方法・内容で個別に指導す
る
一斉指導の中で同じ内容を個別に指導
をする
課題別のグループ指導を行う
教室
スクールサポーター
一斉指導の中で同じ内容を個別に指導
をする
一斉指導の中で個に応じた学び方に配
教室
慮し指導する
学習の補充、個に応じた内容をグルー
指導教室
プや個別で指導する
個に応じた内容をグループや個別で指
特別支援学級
導する
少人数担当時間 教室
授業時間内
全職員
授業時間外
特別支援学級担任
授業時間内
養護教諭
授業時間内
※
どこで
保健室等
心理的な安定をはかる
上記の表は一例です。各学校の創意工夫によって様々な支援が考えられます。
指導・支援を評価し見直すことが大切です 。(PDCAのサイクル)
Plan
Do
教育活動を計画する
・学習内容を選択する
・個に応じた支援を計画する
・「 いつ 」「 だれ が 」「 どこで 」を 具体
的に計画する
Action
実践する
・ 授業、実践の工夫をする
・手だての工夫をする
・目標の修正しながらすすめる
Check
評価をもとに指導計画を改善する
評価する
・ 新しい課題を整理する
・ 子どもがどう変容したのか
・保護者と新しい課題を共通理解する
・指導及び手だてはどうであったか
・記録を残し、伝える
・課題として残ったことは何か
18
6特別支援教育のための研修の促進
特別支援教育のための研修の促進
特別な教育的支援を必要とする子どもに対応するためには、全教職員が特別支援教育に
ついて共通理解をし、研修を充実させていくことが不可欠です。子どものニーズを把握し
的確な指導をするため研修をしましょう。
様々な障害に対応する
にはどんな研修をすれ
ばいいのかな?
例えばADHDの子ど
もを指導するためには
どのような研修をすればいい
のかな?
脳性麻痺、ダウン症、
自閉症などの様々な障
害 や 、 LD、 ADHDな ど の 発 達 障
害に関する資料や書籍はたく
さんあります。それらの本を
読んだり、専門の知識を有す
る人を招いて研修することも
大切です。
効果的な指導方法につい
ては視覚的な面や聴覚的
な面など、それぞれの子ども
には理解しやすい特性があり
ます。一人一人の特性に応じ
た指導法を研修することが大
切です。
ADHDの場合学習面の指
導方法だけでなく行動面の問
題を改善する方法についても
研修をすることが大切です。
個別の指導計画をどの
ようにして作ればいい
のかな?
保護者に安心感と信
頼感を持ってもらう
にはどのように話せばいい
のかな?
保護者との相談におい
ては、保護者の思いや
願いに十分に耳を傾けましょ
う。また、その後の保護者と
の連携の仕方も研修すること
が大切です。
19
県立教育研究所から出
ている資料や多くの書
籍、HPにも参考資料が多く
あります。指導計画を自分で
立てられるように研修するこ
とが大切です。
子どもを知るためには行動
観察が必要です。子どもの特
性を知るためにも、行動観察
の観点を研修することも大切
です。
6特別支援教育のための研修の促 進
コーディネーターが中心になって進める校内研修
コーディネーターは学校全体を見て教職員一人一人が必要性を感じるようなことが
らを明らかにし、研修計画を作成することが大切です。
研修の例として
基礎的な事柄の理解
○LD、ADHD、高機能
自閉症の知識と理解を深
める。
○様々な障害に対する知識
と理解を深める。
○特別支援教育に関する理
念や動向を知る。
個に応じた指導
○行動観察の観点・方法に
ついて。
○個別の指導計画の作成に
ついて。
○支援の必要な子どもに対
する効果的な指導法につ
いて。
○個に応じた指導のための
授業研究をする。
連携等
○保護者との連携の仕方に
ついて。
○教育相談について。
○進路相談と就労への課題
について。
教員一人一人が専門性を深める自己研修
一 人一人 の子ども の教育上の課題やニーズを把握し、子どもの指導目標を明らかに
する中で、効果的な指導をするために研修内容を明らかにしていきます。
○県立教育研究所のホームページから
○国立特殊教育総合研究所のホームページから
○特別支援教育に関する文献から
○子どもと関わる人(保護者・教職員・医師等)から
○個別の指導計画の作成
○指導方法について市や大学の研修講座等に参加
○授業研究を通して指導法を研修
○指導を振り返り、新たな課題の解決に向けて、自校のコー
ディネーターや特別支援学校の意見を聞き、新たな取組に
向け準備を始める。
20
様々な情報を収集
することで課題を
明確にする。
焦点を絞り効果的
な指導に向けて、
研修をする。
自己評価だけでは
なく、様々な人の
助言を得ることも
大切です。
7保護者の相談窓口
保護者の相談窓口
特 別 支 援 教 育 につ い て保 護 者 に理 解 し てい た だ くこ と は大 切 な こと で す 。「学 校 だ
より 」、「学級通信 」、「保護者会」などで積極的に正しい情報を発信してください。
保護者の方が相談できる窓口は以下のようなところがあります。
奈良市教育委員会学校教育課
教育相談員による電話相談や来室相談
学校園を訪問しての相談及び発達検査
通級指導教室
きこえの教室
奈良市保健所健康増進課
(椿井小学校)
ことばの教室
健康診査
( 済美小学校、あやめ池小学校、鳥見小学校)
きこえ、ことばに関する相談、検査、通級指導
1才7ヶ月児健診
3才6ヶ月児健診
地域担当の保健師による発達相談
心理相談員によるすくすく相談
奈良市保健福祉部保育課
園を訪問し、指導の助言
保 育 園
幼 稚 園
奈良市総合福祉センター
小学校
みどり園
就学前の支援を必要とする子どもの
親子 通園 指導
奈良市障がい福祉課
奈良県
中央子ども家庭相談センター
中学校
高等学校
医療機関
親の会
県発達障害支援センター
でぃあー
民間の相談支援機関
奈良県障害福祉課
なら就業・生活支援センター
コンパス
県立特別支援学校
奈良県総合リハビリテーションセンター
県立教育研究所特別支援教育部
奈良教育大学
特別支援教育研究センター
21
8連携ネットワーク
連携ネットワーク
-太郎君のケースー
関係機関と連携し、情報を集めることで、教室で気になる子どもの行動や学習上の
問題について理解することができます。また、つまずきの原因を正しくとらえること
ができます。
太郎くんは、乗り物のことについてはとってもよく知っていて、駅名の難しい漢
字も読めます。生活の場面では当番や掃除などの学級の活動に取り組みません。好
きな学習には積極的ですが、苦手なことには取り組もうとしません。また、授業中
にわからないことがあれば 、「こんなの、わからない 。」と大きな声で言います。指
示や話の内容が理解できているかどうか分かりません。ゲームに負けると怒ってし
まいます。
わがままな子だな。
我慢のできない子だ
話を聞かない子だな。
決めつけるのは早すぎます。関係機関
に連絡をとり、情報を集めてみました。
まずはじめに、保護者の了承を得て、保
育園・相談機関に聞いてきました 。また 、
保護者にお願いして、医療機関からの情
報も得ました。
情報収集のための連携
その日の予定が分からないと不安に
なるようでした。写真や絵カードな
どで予定を分かりやすくしていまし
た。虫や乗り物のことや地図がとっ
ても好きでした。
保育士
心理検査を行いました。言葉だけ
の指示では理解しにくいところが
あります。視覚的に示されたこと
がらはよく理解できます。
広汎性発達障害と診断されています。
医師
太郎君
相談機関
集まった情報の整理
○人の話を聞いて理解することが苦手である。 ○気になるものがあると注意がそれやすい。
○見通しを持たせてやると安心して過ごせる。 ○視覚的な情報は理解しやすい。
○広汎性発達障害と診断されている。
○自分の興味があることはとってもよく知っている。
22
8連携ネットワーク
校内委員会での話し合い
校内委員会で、集団生活や学習の場でできる太郎君への支援について話し合い、次のよ
うな方針で支援しようということになりました。
○授業の始めに、その時間の課題は何かを意識できるようにする。
○具体物や、視覚的な資料を使いながら理解できるように授業を工夫する。
○指示は短く、具体的な言葉でする。
○朝の会や終わりの会、掃除、当番の仕事、給食当番の手順を掲示するなどし、手順が
分かるようにする。
○太郎君が取り組みやすい活動から取り組み、成功体験を積んでいくようにする。
連携による支援
○勝ち負けが多くなる体育の時間はスクールサポーターに支援してもらい少しずつ負け
が受け入れられるようにサポートしてもらう。
○言葉の理解面の指導は通級指導教室で指導を受ける 。
よりよい支援のための連携
保育士
相談機関
市教育委員会教育相談員
県教育委員会専門家チーム
実際に指導の様子を参観し
てもらい助言を得ました 。
成長の様子を伝え、支援の
ヒントもいただきました 。
通級指導教室
特別支援学校
医療機関
専門的な立場からの助言を
得ました。
効果的な指導法について
ともに考えました。
ポイント
保育園・幼稚園、小学校、中学校が連携をすすめ、気になる子どもの集団生活や
学習場面を参観し、支援の内容や方法について検討しあいましょう。
療育・相談機関、特別支援学校、通級指導教室と連携をすすめ、子どもの教育的
ニーズに合わせて支援の内容や方法について検討しましょう。
子どもが医療機関で診察を受けている場合、発達の課題への対応の仕方等具体的
な助言を得ることも大切です。
23
引用・参考文献
1)小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、
高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)
文部科学省
平成16年
2)特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)
文部科学省
平成17年
3)ADHD及びその周辺の子どもたち
尾崎洋一郎他
同成社
平成13年
4)LD・ADHD特別支援マニュアル
森 孝一
明治図書 平成13年
5)LD・ADHD・高機能自閉症
森 孝一
明治図書 平成15年
6)ソーシャルスキルマニュアル
上野一彦・岡田智 明治図書 平成18年
7)特別な教育的支援が必要な子どものためのガ
イドブック
佐賀県教育委員会
平成17年
8)湖南市特別支援教育ハンドブック
湖南市教育委員会
平成18年
9)軽度発達障害の心理アセスメント
上野一彦 海津亜希子 服部美佳子編
平成17年
10)通常学級の担任がつくる個別の指導計画
廣瀬由美子 佐藤克敏 東洋館出版社
平成16年
11)個別の指導計画作成ハンドブック
海津亜希子 特殊教育総合研究所
平成17年
12)特別支援教育の専門性に関する研究
北海道特殊教育センター研究紀要第19号
平成18年
13)特別支援教育コーディネーターガイドブック 青森県教育委員会
平成17年
14)個別の指導計画に基づく授業の在り方に関す 鹿児島県総合教育センター通巻第108号
る研究
平成17年
15)LD AD/HD 高機能自閉症の理解と指導のた
神奈川県総合教育センター
平成16年
めのティーチャーズガイド
16)はじめよう!自閉症の子どもへの支援
福岡県教育委員会
平成18年
24
奈良市特別支援教育ハンドブック【資料編】
◆軽度発達障害(LD、ADHD、高機能自閉症等)の理解と支援
(1) LD(学習障害)とは
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算
する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すも
のである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障
害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではな
い。
「学習障害児に対する指導について」 (文部科学省平成 11 年 7 月)より引用
理解のポイント
学習障害 (Learning Disabilities, Difference の頭文字をとってLDという。) の児童生徒は、 基本的
に知的な遅れはありません。したがって、一般的には通常学級で学習をしていますが、特定の能力に著
しい困難を示し、苦手なことがある児童生徒です。通常、誰でも得意なこと、不得意なことはあります
が、特にその偏りが顕著だといわれています。
LDの児童生徒に見られるつまずきの例
z
z
z
z
z
z
z
たどたどしい読み方をしたり、行をとばしたり、同じところを2回読んだりする。
黒板に書いてある内容の書き写しに時間がかかる。
鏡文字を書くことがある。
国語はできるのに、算数が極端に苦手である。
コンパスや分度器などを使うことが苦手である。
球技や器械運動、なわとびなどの運動が苦手である。
筆算で桁をそろえることが難しい。
支援の工夫
z
z
z
z
聞くことが難しい子どもへの支援は、注意を集中しやすいように話し方を工夫します。要点を捉
えるのが苦手なので、一斉指示の後個別の指示を与えます。視覚的な情報を効果的に活用すると
理解しやすくなります。
話すことが難しい子どもへの支援は、楽しく会話する場面を増やします。話の主題を先に確認し
てから話の順番をガイドして聞いたりします。
読むことが難しい子どもへの支援は、文字の大きさや並び方を工夫します。文の横に物差しを当
てたり、一行だけ見える窓の開いた厚紙を利用したりします。
書くことが難しい子どもの支援は、適度の大きさのマス目の補助線入りのノートが使いやすいで
しょう。書く量が多いと雑になるので、丁寧に書くことを重視し負担を軽くします。作文は絵や
写真で場面を思い出し、言葉に置き換えて書くことも有効です。
奈良市特別支援教育ハンドブック【資料編】
(2) ADHD(注意欠陥多動性障害)とは
注意欠陥/多動性障害とは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性
を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。
また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると
推定される。
「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」 (文部科学省平成 15 年 3 月)より引用
理解のポイント
ADHD(注意欠陥多動性障害)の子どもたちは、見ているようで見えていない、聞いているようで聞
いていない、気づいているようで気づいていないのが特徴です。行動面で問題になることが多く、本人
にとっては無意識にしてしまったことを、注意されたり、叱責されたりすることが多くなります。
「落
ち着きがない」
「約束を守れない」
「自分勝手」
「聞き分けがない」などまわりからは厳しい評価を受け
がちです。周りからのマイナス評価は、自信と意欲の低下につながっていきます。
ADHD の児童生徒に見られるつまずきの例
z
z
z
z
z
z
z
z
z
z
z
見落としや聞き落としが多く、不注意な間違いをする。
物事を順序立てて行うことが難しい。
物をよくなくす。忘れ物が多い。
手足をそわそわ動かし、落ち着きがない。
授業中、座席から離れることが多い。
順番が待てないことが多い。
質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう。
他の人の活動を邪魔する。
何かに駆り立てられるように活動する。
課題や遊びで集中の持続が難しく、最後まで取り組めない。
興味ある活動には参加するが、そうでないものはあきやすい。
支援の工夫
z
z
z
z
z
z
z
z
z
z
注目させて気づかせることから始まります。
一度にたくさんの情報を与えると混乱するので、指示は分かりやすくはっきりと出します。
活動の見通しを持たせます。時間や問題数を提示し到達のゴールを具体的に示します。
長い時間の集中は苦手なので、活動の時間を区切り努力を認める声かけをして、成功経験を増やし
ます。
座席はなるべく刺激の少ない場所に、個別の対応ができる前の方にします。
一つ一つ具体的に何度も繰り返し粘り強く教えていきます。
過去のことをいろいろ持ち出さずに、今起きたことについて解決を図ります。
注意や叱責で問題行動を止めさせる対応よりも、認められる行動を具体的に教えます。
自尊感情に配慮し、個人ではなく行動について叱るようにします。
校内で落ち着ける場所や人を確保することは、行動を調整する手がかりになります。
奈良市特別支援教育ハンドブック【資料編】
(3) 高機能自閉症等とは
高機能自閉症とは、3 歳までに現れ、①他人との社会的関係の形成の難しさ、②ことばの発達
の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症の
うち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。中枢神経系に何らかの要因による機能不全がある
と推定される。
アスペルガー症候群とは、知的発達の遅れを伴わず、自閉症の特徴のうちことばの発達の遅れ
を伴わないものをいう。
「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)
」平成 15 年 3 月より引用
理解のポイント
知的発達に遅れのない自閉症の一つのタイプです。ことばやジェスチャーを使ってコミュニケーショ
ンをしたり、想像力を働かせて相手の気持ちを察したりすることに困難があるため、集団生活を送る上
で不都合が生じてきます。予定が変わり見通しが持てなくなったときには不安感が大きくなります。
「で
きるのにやらない」
「わがまま」
「協調性がない」などと受け止められがちです。
高機能自閉症等の児童生徒に見られるつまずきの例
z
z
z
z
z
z
z
z
z
暗黙のルールがわからない。
会話が一方通行で、一方的な発言が多い。
物事を字義通りに受け止め、たとえばなしや冗談がわからない。
場面や状況に関係なく、周囲の人が困惑するようなことを言う。
予測や見通しが持てないことに対する不安感が強い。
知覚の過敏、鈍感さが見られる場合がある。
一つのことにこだわると、切り替えることが難しい。
特定のものに興味が強くこだわりがある。
前後関係がなく突然、パニックや予想のつかない行動をとることがある。
支援の工夫
z
z
z
z
z
z
z
z
z
突発的なことは避け、できるだけ見通しの持てるように手がかりを与えます。予定変更をしなけれ
ばならないときは繰り返し納得させます。
視覚的な教材を工夫します。長い説明は極力避け、簡潔な指示をします。
決まりだからと無理強いすると、不安定につながるので避けます。避けられないものは安心できる
対応を考えます。
独特のこだわりや感覚の過敏さから情緒的不安定を招きやすいので、つまずきが見られたら対応を
工夫します。
一度身につけた約束やルールを利用して、活動しやすいように工夫します。
ことばを字義通り受け止めやすいので曖昧な表現、たとえ話は伝わりにくいことを理解して支援し
ます。
応答の仕方や話への割り込み方、話題の変え方など会話のルールをそのつど教えます。気持ちや感
情を表す表現も具体的に教える必要があります。
否定的な言動に対して非常に敏感です。
「~はだめ」よりも「~しよう」と方向性を示す声かけに
します。
教師の接し方が学級の子どもたちへのモデルになります。積極的に良い行動を認めるようにします。
園内の担当者が中心に支援体制をつくります
校内委員会、特別支援教育コーディネーターが中心に支援体制をつくります
校内の担当者が中心に支援体制をつくります
子どもが通う各校園の担当者、特別支援教育コーディネーターにご相談ください。
校園内に支援体制をつくり、関係機関と連携を図りながら、支援を行う取組をすすめています。
奈良市教育委員会
学校教育課 奈良市保健所
健康増進課 ℡ 0742-34-5129
1才7ヶ月児健診、3才6ヶ月児健診
保健師による発達相談、心理相談員によるすくすく相談
奈良市保健福祉部
保育課 ℡ 0742-33-5709
市内の保育所で電話相談・面接相談
℡ 0742-34-4763
電話相談・来室相談・訪問相談・発達検査等
通級指導教室
椿井小学校きこえの教室 ℡ 0742-23-7062
済美小学校ことばの教室 ℡ 0742-22-2724
あやめ池小学校ことばの教室 ℡ 0742-43-4446
鳥見小学校ことばの教室
℡ 0742-43-4723
特別支援学校
県立奈良養護学校
℡ 0742-34-2671
県立奈良東養護学校 ℡ 0742-44-0112
県立盲学校 ℡ 0743-56-3171
県立ろう学校 ℡ 0743-56-2921
奈良県立教育研究所
特別支援教育部 ℡ 0744-32-8201
特別な支援を必要とする子どもたちを
みんなで支えます
奈良市総合福祉センター
みどり園
℡ 0742-71-0770
就学前の支援を必要とする子どもの親子通園指導
奈良教育大学
特別支援教育研究センター ℡ 0742-27-9314
奈良市障がい福祉課 ℡ 0742-34-1111(代表)
奈良県障害福祉課 ℡ 0742-22-1101(代表)
(ホームページには生活上の多くの情報が掲載されています。)
奈良県中央子ども家庭相談センター ℡ 0742-26-3788
奈良県発達障害支援センター
でぃあー ℡ 0742-62-7746
なら就業・生活支援センター
コンパス ℡ 0742-32-5512
親の会や当事者の会、民間の相談支援機関
(ホームページに多くの情報が掲載されています。)
奈良県立医科大学附属病院 ℡ 0744-22-3051(代表)
℡ 0742-46-6001(代表)
℡ 0744-32-0200 (代表)
奈良県立奈良病院 奈良県総合リハビリテーションセンター 平成19年3月
奈良市教育委員会・特別支援教育推進委員会
奈良市教育委員会事務局学校教育課
この資料に関する
お問い合わせ先
TEL:0742-34-4763
FAX:0742-34-4597
http://www.city.nara.nara.jp/kyouiku/index.htm
e-mail:[email protected]
おはよう おかえり こんにちは
声かけ 気にかけ 笑顔かけ
毎月17日は子ども安全の日です
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