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小浜東部地区
農 林 水 産 大 臣 1.地区概要 参加団体名:福井県 小浜東部土地改良区 表彰地区名:小浜東部 事 業 名 等:県営経営体育成基盤整備事業 工 期:平成15年度~平成21年度 主 要 工 事:●区画整理 A=102.4ha ・整地工 A=102.4ha ・用水路工 L=18.9km ・排水路工 L=10.6km ●客土工 A=7.0ha 賞 ・道路工 L=11.8km ・暗渠排水工 A=35.2ha 2.活動の概要 本地区は昭和44年~50年に30a区画のほ場に整備されたが、近年の厳しい農業情勢とともに、不安定な 農業用水や用排水路施設の老朽化による管理コストの増大、担い手の高齢化などの課題を抱えていた。 このため、小浜東部土地改良区では、地域の農業と農村を守るための経営体の設立に向けた地域の合意 形成を図るとともに、大区画圃場や農業用水のパイプライン化など低コスト水田農業に向けた生産基盤整 備の推進に尽力してきた。 この結果、地区内の各集落を跨ぐ広域的な農業生産法人「小浜東部営農生産組合」が設立され、他の担 い手との土地利用調整による農地利用集積や大型機械の導入、湛水直播(条播)などの新技術導入など、 地域の手本となるべく水田農業経営の確立に努力している。 この農業生産法人では、経営の強化と地域の活性化を図るため、水稲以外に白ネギやミディトマト、ブ ロッコリー、一寸ソラマメ等を新たに導入し、自ら開設した直売所での販売や小学校給食への供給を通じ て地産地消に取り組むとともに、地域の小学校や老人会と連携して農業体験をとおした食の教育や高齢者 の生きがいづくりに貢献をしている。 また、小浜東部土地改良区では、農地・水・環境保全向上対策と連携して直営施工でビオトープを造成 するなど、地域が一体となって美しい農村環境と生態系の保全活動に取り組んでいる。 3.受益地区における農家及び担い手の状況 (1)受益地区における農家数の状況 区 分 総農家数 事業実 施前 現 在 (H21) 264戸(0 戸) 26戸 (2戸 ) うち専業 農家数 0 戸 (0 戸 ) 2戸( 2戸 ) うち兼業 農家数 264戸( 0 戸) 24戸 (0戸 ) 0人 2人 0 組織 2組 織 認定農業 者 生産組織 等(法人 含む) ※( )は、担い手農家数 (2)農用地の流動化状況 項 目 受益面積 事業実施前 現 在(H22) 目 標( H24) 112.3ha 102.4 ha 担い手等 の利用集 積面積 0 ha 76.9ha 85.1ha ①利用権 設定面積 0ha 0ha(換地 計画決定前) 85.1ha ②受託面 積 0ha 76.9ha 0ha 4.農業経営状況 区分 作物名 水稲 事 業 実 施 前(10a当たり ) 労働 時間 反 収(kg) 生産 費(円) 30hr 420kg 103,875円 現在(10a当た り) H22 労 働時間 反 収(kg) 生 産費(円) 25hr 450kg 75,000円 大麦 10 250 20,000円 白ネギ 450 3,000 600,000円 ミディトマト 500 2,000 1,000,000円 一寸ソラマメ 250 1,500 400,000円 ブロッコリー 100 1,000 200,000円 区分 作物名 水稲 作 事 業実施前 78.5ha(0ha) 付 面 積 の 推 移 現在(H22) 96.0ha(73.5ha) 目 標( H24) 88.2ha(76.0ha) 大麦 0ha(0ha) 3.0ha( 1.0ha) 10.0ha(6.0ha) 白ネギ 0ha(0ha) 0.6ha( 0.5ha) 1.0ha( 0.8ha) ミディトマト 0ha(0ha) 0.1ha( 0.1ha) 0.1ha( 0.1ha) 一寸ソラマメ 0ha(0ha) 0.5ha( 0.2ha) 0.8ha( 0.5ha) ブロッコリー 0ha(0ha) 0.2ha( 0.1ha) 0.3ha( 0.2ha) その他 0ha(0ha) 2.0ha( 1.0ha) 2.0ha( 1.5ha) 78.5ha(0ha) 102.4ha(76.9ha) 102.4ha(85.1ha) 69.9 % 100 % 100 % (菊、 キャベツ等) 計 土地利 用率 ※( )は、担い手農家等の作付面積 5.営農推進の状況 (1)栽培技術関係 ①高精度条播機による直播技術の導入 農業生産法人では、全面積で高精度条播機による湛水直播を実施、低コスト化を図っている。 ②大型機械の導入 大区画圃場(2ha)の効果を最大限に発揮するため、レーザープラウやレーザーレベラー、乗用管理 機、大型コンバイン(6条)、大型トラクター(75ps)等を導入し作業効率の向上を図っている。 (2)転作関係の状況 ①整備後の転作の状況(現況) ・転作面積 6.4ha 他は多用途米対応 (事業実施前の転作面積 0ha ・・・ 殆どが自己保全対応) ②転作作物名と作付面積 ・作物名:大麦(3ha)、白ネギ(0.6ha)、ミディトマト(0.1ha)、一寸ソラマメ(0.5ha)、 ブロッコリー(0.2ha)、菊、キャベツ等(2.0ha) ③新規作物等導入状況 ・作物名:大麦(3ha)、白ネギ(0.6ha)、ミディトマト(0.1ha)、一寸ソラマメ(0.5ha)、 ブロッコリー(0.2ha)、菊、キャベツ等(2.0ha) ④転作や新規作物の導入にあたって、特にPRすること。 本地域はイノシシやシカなどによる獣害が著しいため、園芸作物の導入に当たっては獣害防止柵(金 網柵)を地区全域に整備して生産意欲の維持と向上を図っている。 (3)農産物の加工、流通、販売などに向けた取り組み 農業生産法人の米や野菜は、農業生産法人の直売所で販売する他、JAわかさの直売所や学校給食へも供 給、販売している。 6.環境に配慮した取り組み 土地改良区では、住民参加型の直営施工により水路や水田、山林の連続性に配慮したビオトープを造成 して環境学習や地域活動の拠点として活用している。 また、芝ザクラやコスモス、水田アート等による農村の景観づくりや、排水路の石積み水路や魚道、深み の設置などの水田の生態系の保全に取り組んでいる。 農業生産法人では、8haの水田で冬季湛水を実施し、オタマジャクシの変態時期に配慮して中干し時期を 遅らせるなど、水田の生き物に配慮した環境保全型農業に取り組んでいる。 7.その他事業実施の効果による新たな取り組み (1)余剰労働力の活用方法について 農業生産法人では、常時雇用者3名のほかにパート雇用4名、直売所の従業員や白ネギなど新規作物 の栽培管理に地域の女性8名をパート雇用している。 また、農地・水・環境保全向上対策の活動において、余剰労力を草刈りや獣害防止柵の点検・修理 等に積極的に活用している。 (2)学校教育との連携と将来の担い手の育成 土地改良区と農業生産法人、小学校、老人会が連携して、水稲やサツマイモなどの農業体験を行い、 食と農業に対する理解を深めることにより、地域の担い手が育つことを期待している。 (3)生産者と消費者との交流の促進 土地改良区と農業生産法人では、消費者との交流を促進するために、直売所に隣接する農地で貸農 園や体験農園、白ネギの収穫祭(採れ採れまつり)を実施している。 8.行政や関係者が「事業計画、施工、利活用など」において苦労した点 (1)地域の合意形成 小浜東部土地改良区では、「地域を維持発展させるためには生産基盤の整備だけでなく地域の核と なる農業経営体が必要である」と考え、事業計画の初期段階において土地改良区内に営農部会を設置 し、県や市、農協のソフトおよびハード部局とも連携しながら地区全域を対象にした農業経営体づく りに着手した。 そして、受益者に新たな経営体による地域農業の将来像を示すことにより、本事業の円滑な合意形 成づくりに尽力した。 (2)新しい経営体と他の担い手との土地利用調整 事業実施後の効率的な土地利用集積を図るため、早い段階から土地改良区が中心となって既存の個人 認定農業者や地区外の出入り耕作者と協議・調整を行い、農地の所有権と利用権を切り離すことにより 効率的な土地利用集積を実現した。 (3)経営体の専従者の確保 農業生産法人の専従者は、地域農業を守る意欲のある地区民を募集するとともに、大型農業機械を扱 うことから「大型特殊」や「けん引」の免許を取得させるなどプロ意識の徹底を図っている。 (4)用水管理の効率化と渇水対策 本地区の主水源である松永川は、渇水期の用水不足に悩まされてきた。そこで、限られた水を有効に 利用するため自然圧を利用したパイプライン化を図るとともに、反復用ポンプと貯水池、調整水槽を設 けて、効率的な水管理と渇水期の水不足に対応している。 (5)獣害対策による営農意欲の向上 本地区では、イノシシやシカによる農作物への被害が急激に増加しており、営農意欲の減退や耕作放 棄地の発生など、獣害対策が喫緊の課題であった。そこで、本事業や農地・水・環境保全向上対策で地 区全域に獣害防止柵(金網柵)を設置して、獣害を防ぐことにより営農意欲の維持と向上を図った。 9.周辺地域への波及効果及び将来の展望 (1)周辺地域への波及効果 隣接する地域でも集落営農組織や農業生産法人などが設立されているが、ほとんどが水稲主体のため 米価の低迷に伴い厳しい経営が続いている。 このような中、土地改良区が主体となって設立した農業生産法人「小浜東部営農生産組合」では、農地 の利用集積や直播等による生産コストの縮減と園芸作物や直売所による経営強化と併せ、「地域の持続 的発展」を念頭にした「高齢者の生きがいの場の提供」や「将来の担い手づくり」に積極的に取り組ん でおり、農業経営体としてだけではなく、土地改良区と連携した「農村づくり集団」としての活動に周 辺地域から注目が集まっている。 (2)将来への展望 小浜東部土地改良区では、組合員はもとより農業生産法人「小浜東部営農生産組合」や「農地・水・ 環境保全向上対策(松永川流域の環境を良くする会)」、地元の小学校、老人会などと協力しながら農 地や土地改良施設を守り、地域の豊かな自然や農村景観を子供たちに引き継いでいきたい。 小浜東部地区の全景 直営施工でビオトープづくり 「水土里」直売所 大型コンバインと大区画ほ場 乗用管理機による白ネギの消毒作業 児童の玉ねぎ収穫体験