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通販研究会

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通販研究会
はじめに
1985年から始まったソフト化経済センターの研究会、その第一
回目のシリーズで「通信販売」をテーマにしていました。あれ
から 18 年・・・。もう一度このテーマを取り上げます。
18年前に現在のインターネット通販の形態を既に予測していま
した。そしてその未来が現実となった今、通販の経験のないベ
ンチャー企業やコンビニ、そして海外の企業が e コマースのメ
インプレイヤーとして名乗りをあげました。結果は・・・。
つまり「新技術ばかりに目を向けて、本当のモノの売り方が抜
けているのでは?」そして「昔から無店舗販売/通販を経験し
ている連中の方が、インターネットだけでしか物販を経験して
ない連中より、はるかにすごいのでは?」という疑問。
よって、この研究会は「通信販売を正しく理解する」ことから
始めました。
新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等、既存のメディアを最大限活用
して商品を販売するプロフェッショナルのノウハウを再認識す
ることが、インターネットの普及から始まり、ブロードバン
ド、モバイルなど、新しいインフラを活用するためには必要で
す。
それぞれの研究員が、何人もの専門家の皆さんのお話をもと
に、今の物販に欠けているものは何かを探り、新しいビジネ
ス・ヒントを得られれば幸いです。
目次
1. 講演録 ※所属・肩書きは講演当時
岡崎太郎氏(株式会社ピクトシステム代表取締役)
須川紘之氏(バジリコ株式会社常務取締役)
鳴川正一氏(ニフティ株式会社企画・CS統括部/CS推進部)
三田隆治氏
(フリージャーナリスト/ケータイコンテンツプランナー)
佐々木迅氏(株式会社 QVC ジャパン代表取締役社長)
三田隆嗣氏(まいさいど株式会社プロデューサー)
大野誠一氏
(松下電器産業株式会社 ep 事業統括センター
e マーケティンググループ e くらし担当部長)
水谷世希氏
(株式会社日立製作所コンシューマネットビジネス推進本部
チーフサービスデザイナ兼プロジェクトマネージャ)
2. 研究会を振り返って
3. 研究員紹介
講演録
岡崎太郎氏(株式会社ピクトシステム代表取締役)
まずは、用語の説明です。聞いたことのある方もいると思いますが、CPO
という用語があります。コスト・パー・オーダー、つまり一人のお客様に
販売するための広告料金がいくらかということですね。そしてもう一つ、
CPR。これはコスト・パー・レスポンス。一人の見込み客を獲得するのに
いくらかかったかです。 はっきり言って、世の中常識に惑わされすぎなんです。広告を載せるこ
とによって、マーケットに認知が生まれる、と告代理店の方が言うんです
が、これは全く嘘です。全く関係ない。一回打って、一回 CPO をピシャッ
と併せないと、雑誌とか折り込みとか新聞とかでやるスタイルの単品通販
ものは、よっぽど大きな会社で、お金を湯水のように使わないと成り立た
ちません。確実に一回一回のワンチャンス、ワンタイムでコストを併せて
いく。そこにとことん力を集中していかないと、やっぱり上がるものも上
がらない、これが一つです。
では、反響率がどのくらいかというと、よくて 0.1%です。よくてです
よ。悪いとコンマ1以下。では良かったときのCPOで考えてみましょう。0.1
%というのは 1000 分の 1 でしょう。つまり 999 人が「俺、絶対買わない」
と言っても、一人が圧倒的に買う。じゃこ
の 1000 分の 1 の確率が日本の人口で言う
と、まず 1 億 2700 万人の中の有効射程、そ
れは当社が考える女性ターゲットで 25 歳
から 45 歳のだいたい 4500 万人くらいなん
ですが、つまりそのターゲットに対して
1000分の1に訴求をかけて成り立っている
訳です。
一番大切なことはテストをすることです。
どれだけ考えてもここにしか
行き着かないです。どんなに賢い人でもこれしかありません。コンピュー
ター屋の人と話をすると、必ず出てくるのが、データマイニングの話。こ
れがそもそも大きな勘違い。だってないでしょう、もとになる基礎データ
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が?今僕が話しているのは、新規をどのくらいで取ってくるかという話で
すから、新しい企画なのにそんな都合のいいデータはないんですよ。だか
らテストに集中をする。
じゃ次に何が大切か。大切なことはスピードですね。スピードというの
は商品企画から媒体を選んで、広告原稿を作って、媒体に差し込むまで、
ここのリードタイムを短くしろと。長いと駄目です。世の中の変化のス
ピードは本当に早いから、今売れると思ったら今やらないといけない。
で、このリードタイムの話をテストと絡めて考えていくのです。
あともう一つ。拡張性の話です。仮に「週刊女性」でテストをして当た
りますよね。そしたら当然「週刊女性」の次に行きますよね。そうすると
どういうところに広げられるかというと、
「女性セブン」とか「女性自身」
とか同一カテゴリーで、上に移動するのか横に移動するのか、要は面積を
広げるという話です。さらに次に進んで「JJ」でテストをしたらどこにの
ばせるのか。
「キャンキャン」
「RAY」に。これらは本のサイズ、厚さ、テー
ストがほとんど同一展開しています。
折り込み広告とは、1000分の1の効果で訴求を何回も繰り返しているの
ですね。そうすると 1000 分の 1 がある時から低下します。つまり、1回目
より 10 回目のほうが反響が悪くなる。
というのが常識なんですが、僕が今やっている仕事ではCPO は下がって
いないんです。今日たまたま売ったら 1000 分の 1 だけど、1 年後でも 1000
分の 1 なのです。それは階段的に年齢が 1 年経てば、19 歳の人は 20 歳にな
る。24 歳の人は 25 歳になる。1 年経ったら、26 歳くらいの女性は、この辺
が厚くなってきたりとか、吹き出物が出てきたりとか化粧ののりが悪く
なったりとかがあるわけですね。ニーズが順送りになっているからなのか
な?化粧品なら化粧品の中でもニーズが循環している。ちょっと難しいん
ですが、1000 分の 1 と 100 分の 1 の間に、
「循環」というキーワードがある
と僕は思うのです。また、始めて 4 年間くらいで、初めてブランド認識、
商品認識ができて、今まで買おうと思わなかったお客様に、届いていくよ
うな気もするのです。その辺が面白いなと思っています。
イチゴミルクダイエットは僕の大当たりでした。当初は1980円で始めた
のですが、1980 円ではうまみがないですね。それで値段を上げたんです
よ、2980 円に。ダメかなあと思ったら、売れるんですよね、それも圧倒的
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に。1980 円の時代よりよけい売れちゃって、びっくりしたんです。さらに
3800円に上げたんですが、全然売り上げの勢いが落ちないんですよ。CPO、
反響が全然変わらない。今度は 3800 円を 3 本セットで 7800 円で売ったん
です。そしたらもの凄いことが起こりまして、注文の 8 割が 3 本セットで
す。「ハッハー」と思いましたね。
しかし、これがあるときに境目が来るんですね。何かと言うと、阪神大
震災と地下鉄サリン事件です。今考えるとお客様のマインドが変わったん
ですよ。お客様のどういうマインドが変わったかと言いますと、ファニー
なものキャッチーなもの、それから本物志向じゃないものが、とことんダ
メになったんですね。1 月 17 日僕の誕生日に阪神大震災が起こって、それ
で売り上げがどんどん下がって、3 月にオウムの事件があったのですね。
それで僕が当時やっていたくだらない、シャレ1 本でやっていたものは全
部駄目になって、そこから 2、3ヶ月くらいはどうしよ
う、どうしようということでした。そのままだと会社が
終わっちゃいますから、その時に僕が作った3番目に当
てた商品が「パーフェクトダイエット」です。世の中の
安全、安心が壊れて、次に何かを出さないといけないと
いうときに、より本物志向のものをやろうと、考えられ
る成分を全部入れたんです。ダイエット成分で28種類。
28 種類の成分全部を細切れに入れたんです。今だから
僕はわかるのですが、
最適な配合率が本来あるんですよ
ね。当時の僕にはそれはわかりませんから、全部入れて
作ったんです。
僕がこれを一番最初にやったときは、1 本 1 万 8000 円で広告を出したん
です。今まで注文がどかーんと来ていたのが、注文 1 件でした。原価 480
円で1500本作ったので、最悪安い価格帯にスイッチして、今までやってき
た価格帯で売る、いわゆる戦略変更ができる設計になっていました。それ
で僕は凄く単純なので、1 本しか売れないから、戦略変更をして 3800 円で
販売をすると言ったら、うちのスタッフが「何を考えているのですか」と。
常識的な人ですから。「1 万 8000 円の広告を出したものをある時を境に
3800 円にしたら、会社の信用も何もないじゃないか」と言ったんです。言
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われてみればそんな感じもするので、企画を付けたのです。それがモニ
ター販売。ちなみに今は禁止になりましたから、できません。真似しちゃ
駄目ですよ(笑)
。
当時これが当たったんですよ。限定 500 名で今日から 1 週間限り、1 万
8000 円をモニター販売でなんと 2780 円でお届けしました。お客様にお安
く提供する変わりにB4ビッシリのアンケートを一緒に付けて、
これに必ず
記入して送り返してくれと。この労力に対して私達は1万8000円のものを
2780円で売りますというストーリーを作ったのです。
そしたら公正取引委
員会からクレームが入るかもと媒体の審査に言われたので、頭に「予定販
売価格」というよくわからないものを付けたのです。それで「予定販売価
格 1 万 8000 円」
「モニター特別価格 2780 円」さらに「3 本セット 9980 円」
普通2780円で3本買ってもこの値段にならない。最終的に「3本セット9980
円」で売りました。これ凄いですよ。1 万 8000 円× 3 = 5 万 4000 円ですよ。
5 万4000円がなんと9980円、迫力ありますよね。ここにもの凄いヒントが
隠れています。
お客様はどういう商品を欲しいのか?高い価値のものを安い価格で欲し
い。高いものを安く買いたい。安いものを安く買いたくない。一番頭に来
るのは安いものを高く買うこと。今世の中を見ていると普通のものを普通
に安く、もしくは当たり前に安いものを安く、そうじゃないですか。徹底
的に高いものを安く買う。だから家具でいくと、チョイ傷の傷もの市と
か、程度がちょっと中古の新古車とか、そういうものが凄く売れている。
そこに値段の差がぽっかりとある。だけどそこに納得性がないといけない
ですね。妥当性のある、いいわけが必要
なんです。そうするといきなり物は売
れます。
「パーフェクトダイエット」が
売れまして、これで1年くらいお世話に
なりました。これもまた1年くらいの寿
命でしたが。
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普通に考えれば、
単品通販系は単品なのでお客様のニーズは全ては拾え
ないですね。逆に総合通販系、カタログ系はたくさんの商品からお客様の
もともとのニーズあわせて選んでいただける。しかし逆に言うと、単品で
すから、僕が今話してきたみたいに、世の中にそういう商材がないので開
発することができる。一方カタログ通販は、取り扱いアイテムが 1 万アイ
テムとか 5000 アイテムあると、5000 の商品を全部作るわけにはいきませ
んから、探してくるということをしなくてはいけない。ですから全然プロ
セスが違います。
バックヤードを見てみるとどうでしょうか。単品なので在庫管理がめ
ちゃくちゃ簡単です。段ボールに 100 本入りというときは、10 箱数えれば
10×100で1000本あるとわかるのですが、複数の商品をやっていますとそ
ういうわけにいかないですね。それから賞味期限の管理がとても楽です。
ピッキングも簡単ですね。
また、
コールセンターのオペレーターが楽です。
また、
さっきのパーフェクトダイエット話を聞かれていてわかると思うの
ですが、売り方をきちんと戦略に落とせます。この商品をどうやって売る
のかとか、システムとかアイデアとか資源を集中することができます。で
もカタログの方はぼやけますよね。
それから媒体としては紙面が少なくていい。
5000 アイテムおしなべて紹介しようとするとと
ても面積がいるという話になりますが、一つの
商品だと6分1連合広告でも成り立ってしまうの
で、あらゆるツールで購買を喚起する可能性が
あります。
そして、総合通販は自社カタログが必要にな
ります。カタログをお客様にお届けして、それを
見て貰ってから注文をもらいます。
単品通販よりワンステップ購買までに
入ってしまいます。一つ工程が多いのかなという気がします。
それからさっき僕がスピーディーに企画を立ち上げる必要性に関して話
をしましたが、単品だからこそ企画がスピーディーに立ち上がります。で
もカタログの場合は、カタログを制作しなければいけないから、これを一
つ作るだけでもえらい大変です。
また、単品通販は印刷スペースを集中して有効に使えますし、業務も単
純です。業務が単純ということはつまりアウトソーシングも簡単。
それから結果の検証でいくと、単品の場合、検証がし易いですね。です
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からより深く検証して、また何が悪かったかはっきりします。
サメの肝油を売っているエバーライフさんの話をします。今期20億円く
らいの会社で、社長は 44 歳。バブルの絶頂期、不動産をやっていました。
しかし全部すって、大変なことになって、通販というかテレセールスを
やっていて、30 万円くらいのものを売っていました。そして 40 歳になる
ときに「もう嫌だ」電話で30 万円も売っている自分も嫌だし、お客さんに
対してもちゃんとやれてないので嫌だという話になって、
本物を売りたい
と言い出したんです。これはとてもきれいな話なのですが、ただ本物と
言っても何が本物か当然議論が必要だと思います。これは社長が自分で本
物と思った商品を売る。お客様は偽物だとかいろいろ言うかもしれませ
ん。
「でも、僕が自信をもってお客様に届けられるものを1万円くらいでや
りたい」と。ここから社長は 2 年間相当苦労しました。しかし、来期の売
り上げはなんと 70 億円なんです。どうしてか。
社長は言います「150 人のオペレーター全員に『売るな』と言っている」
多分共感しろということだと思います。そしてとにかく一番大事なこと
は、
自分たちがこのサメの何とかというのを本当に良いものだと理解して
いて、それをお客様に呑んでいただくことが、私達こんなに嬉しい、とい
うことをちゃんと伝えていきなさいということですよ。
最後に僕の近況ですが、ジモスという会社で商品開発と売り方開発の二
つのドメインで仕事をやっておりまして、今年開発しないといけないのは
20アイテム。一発目は函館の毛ガニをしました。生きたままの毛ガニを翌
日港から直送させる。これをまた新しいチャネルで開発してやる、これを
まずやりまして。二発目は枕を今企画していまして、これはとても寝心地
がいい。ただ売り方開発ということで、14 個おまとめ大特価をやろうと
思ってます。ノリで作っちゃったんたんですけ
ども、ちょっとヤバイかなと最近考えています。
しかし、14 個枕をまとめて買ってもらうと 1 万
4800 円の枕が 3840 円(笑)
、これはもしかした
らパワーがあるかなと期待しております。
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須川紘之氏(バジリコ株式会社常務取締役)
なぜ『通販生活』が注目されるか?話題になるのか?それは、カタログ
通販に正統派と異端派があるとすれば、
『通販生活』は異端派だからでは
ないでしょうか。95 年頃から、千趣会、セシール、ニッセン、高島屋、フ
ジサンケイリビングといった正統派、
大御所と呼ばれる通販会社が軒並み
不調だ、不振だ、なかなか思うように利益が上がらないとマスコミを賑わ
すようになり、「逆風の中で順調に売上を伸ばしている異端派カタログ、
通販生活」といった見出しをよく見かけるようになりました。最近では、
ジャパネットタカタさんとか米国発インフォマーシャル通販とか、低周波
振動器つきフィットネス腹巻
(!?)
を大ヒットさせた新しい通販会社とか、
異端派として紹介される会社もだいぶ増えてきましたが、
とりわけカタロ
グ通販では、『通販生活』は相変わらず注目されているようです。
『通販生活』が異端派へと歩み始めたのは、創刊 3 年目、私が入社して 1
年経ったころでした。創刊以来2年間送り続けていた全てのリスト(名簿、
カタログの送り先、つまり宛名)を、なんと『通販生活』は捨てたのです。
このリスト、名簿というのが通信販売業界にとって欠くべからざるもの、
言い換えると財産だと言われています。
ただ闇雲にダイレクトメールを送
るよりも、過去に何かしら接点を持っているお客さんに送る方が有効であ
るという通販業界のセオリーから、
その名簿をどれくらい持っているかは
すなわち、カタログをどれだけの量撒けるかにつながり、つまりは大事な
企業資産、財産だという認識が今でも通販業界にはあります。では何故、
『通販生活』はその財産ともいえるリストを捨てたのか。
創刊 3 年目、カタログを有料にしようという検討がなされました。理由
はふたつ。ひとつは、第 3 種郵便物の認可を取り、カタログ郵送コストを
軽減するためでした。第3 種郵便物の認可を受けると郵便料金が安くなり
ます。そのためには認可の条件のひとつである「送付冊子が有料であるこ
と、定期購読者に送付される冊子であること」を満たさなくてはなりませ
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ん。
しかし、通販の売上とカタログの配布部数は単純に比例します。カタロ
グを有料にしたら、とうぜん部数は減ります。部数を減らすよりは、多少
郵送コストが高くても、
無料のカタログをたくさん送付した方がいいとい
うのが大方の、正統派の考え方です。通販会社のほとんどが、わずかな誌
代収入や郵送コストの軽減をリストの減少(販売機会の損失)と天秤にか
けて、割に合わないと判断するのは当然です。何故『通販生活』は有料化
を検討したのか。
ふたつ目の理由ですが、85 年『通販生活』の創刊を期にカタログハウス
と社名を変更しました。社名は、出版社マガジンハウスをメタファーに命
名されました。カタログをマガジン化したい、
『通販生活』は単なる通販
カタログにあらず、カタログ・マガジンであるという理念に基づきます。
マガジン(情報誌)である以上、誌代があって当然。年間売上のほとんど
を単品通販であげていた当時は、カタログは売上よりも内容、質にこそこ
だわりたいというのが社長の意向でした。
しかし現場(当時のカタログ部)は
というと、入社まもなくカタログ部に
配属された私の印象ですが、質の向上
よりも「有料化していったいどれくら
いの部数が確保できるか」が最大の検
討課題だったように思います。それも
そのはずで、少ないながらも創刊 3 年
目、30 万部で年間 10 億円くらいの売
上はありましたから。当時の責任者が、質よりもまず部数、売上を心配す
るのは無理もありません。
検討の末、ともかく誌代 150 円に設定し、過去の単品通販で集めた購入
者リスト 100 万人に定期購読者募集のダイレクトメールを出しました。し
かし、お察しの通り全然集められませんでした。当たり前の話です。過去
の商品購入者に無料でカタログを送るならともかく、
「以前は○○をお買
い上げいただきありがとうございました」とへりくだった上で「有料のカ
タログを定期購読しませんか」という案内ですから。まったく集まらな
かった。この時点で有料化を断念し、過去の購入者リストに無料カタログ
を配布し続けていたら、すくなくとも現在の異端派『通販生活』はありま
せんでした。
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ところが、ここで過去の購入者リストを捨てるという暴挙に出るので
す。すでに商品を買ってくれているお客さんに、さらにカタログを買って
くれと言っても買ってくれない。初対面のお客さんにファーストコンタク
トで『通販生活』の面白さを売り込まなくては!で、単品通販のカリスマ、
社長をかつぎだし、1 冊 150 円のカタログを売るために新聞の一面広告を
打ったのです。朝毎読、3 誌あわせて 2000 万円くらいの広告費だったと思
います。有料でもいいから通販カタログが読みたいなどという物好きが、
果たしてどのくらいいるか・・・言い出した手前もう後には引けませんが、
やると決まったら正直怖くなりました、やっちゃたって感じでした。
結果は何と!1回の新聞広告で、20万人の購読希望者を集めることがで
きたのです。これが 87 年後半の出来事です。現在の『通販生活』はこのと
きがほんとうのスタートでした。過去の全てのリストをいったん捨てて、
無料があたりまえのカタログ業界で、
買ってでも読みたいというリストを
集めることができたからスタートできた。こうして『通販生活』は異端派
としての歩みをはじめるのです。
カタログの有料化はふたつの効果を生みました。
そのひとつが競合する
他社カタログとの差別化です。
ご存じのように通販カタログやダイレクトメールは郵便ポストに投げ込
まれます。それも消費者の購買意欲の高
まる商戦シーズンや給料日後には、同じ
日に 2 ∼ 3 冊投げ込まれることもめずら
しくありません。そうなるといかに捨て
られず開封してもらうか、他誌に先んじ
て開封してもらうか、これは通販の重要
なノウハウだったりします。封書であれ
ば封筒に凝ったり、カタログであれば表
紙にインパクトを持たせたり。
『通販生活』はこれらのノウハウに無関心だったわけではありませんが、
有料にしたおかげで、ゼッタイ捨てられず、他の通販カタログより特別扱
いされました。そりゃそうでしょ、お金を払っているのですから。ポスト
から出した瞬間「おぉ、ようやく来たか」と待っていてくれて、
「金を払っ
て申し込んだカタログは一体どんなものか」と端から端までわりと見てく
れる。有料化がもたらしたこの効果は大きいと思いますよ。
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反面「これで内容が陳腐だったら、捨てられるどころじゃ済まない」
、こ
の危機意識はそのまま編集部員のモチベーションにつながりました。
これ
がもうひとつの効果です。
創刊当初の『通販生活』編集部には、カタログハウスという社名を誤解
したのか、いた人たちのほとんどが編集者志望でした。残念ながら出版社
に就職出来なくて、社名がマガジンハウスと似ていて、<カタログ編集
者、募集>なんて求人広告を見れば、出版社の編集と大差ないだろうと勘
違いしたおっちょこちょいがいても不思議はありません。しかし、入って
みたら大違い。編集作業とはいってもメーカーから送られてくるパンフ
レットや写真を整理して、レイアウトして入稿という作業の繰り返し。取
材もなければ、撮影もない。クリエイティブとはほとんど無縁な世界。
ところが有料化をしたことによって状況が一変します。
無料が当たり前
の通販カタログにお金を払ってくれている。有料に値するカタログにしな
いと盗人呼ばわりされかねない。も
ともと編集者志望だった人たちです
から、状況を理解すればモチベー
ションも上がります。
「パンフレット
の情報だけでは面白くないね、メー
カー取材に行こう」
「写真がつまらな
いね、撮りなおそうよ」
「この商品あ
りふれてないか、もっと面白い商品
ないの∼」という具合に、とても活
気づいたのを今でも覚えています。
こうした編集部の変化は、
<売る前に読ませる通販カタログ>という基
本コンセプトを生み出しました。掲載商品の選定基準も<この商品は読む
情報として面白いか面白くないか>が重要になります。
メーカーから商品
の売り込みがあったり、編集者が商品を探し回ったりする際に、この商品
を記事にしたとき、文章を作るとき、写真を撮るとき、面白いか面白くな
いかをつねに考える。ある商品をそのままトレースしてもつまらなけれ
ば、どういうストーリーを作ったら面白くなるかを考える。どうにも面白
くならなかったら潔く掲載をやめる。売れるか売れないかよりも、面白い
か面白くないかなのです。
『通販生活』は商品を情報化して、買わなくて
もいいから読んでくださいという形で提示する異端派カタログなのです。
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ひたすら読んでもらうことに力を入れて、読んだらきっと買いたい人は出
てくる。そうしたら売ってあげよう、というのが基本コンセプトでした。
もうひとつの基本コンセプトとして<我々は陳列型にあらず、
選択型の
カタログである>があります。消費者が最終的に商品を選ぶ、商品の選択
権は消費者にあるのだ、という立場に立って販売するのが陳列型。陳列型
の場合、小売りは消費者に奉仕する世話役です。消費者が主役で小売りは
あくまでも裏方。
例えば消費者が掃除機を買いたいと思ったときに、小売りはいろんな
メーカーの掃除機を揃えて陳列する。性能の違い、使い方、デザイン、価
格などいろいろ差異のあるものを、なるべく全て取りそろえて、陳列して
あげて、
その中からお客さんが買いたいと思うものを自由に選んでいただ
く。
「こんなにたくさん取り揃えました。どうぞ選んでください」と。つ
まり売り場の規模と品数の多さが勝負の分かれ目になります。
対して選択型は、消費者に変わって小売り
が商品を選んであげる。自ら商品選びのプロ
を標榜することで、消費者にとってふさわし
い商品はこれですよという形で決めつけて、
ひたすらその理由を述べて説得する。その説
得に共感、支持が得られれば売れるし、共感
してもらえなければ、どうぞ陳列型のお店へ、
とある意味開き直る。これが選択型です。
掃除機を例にすると、
『通販生活』ではたっ
たひとつの機種しか掲載しない。たとえそれ
が 8 万円もする超高額の掃除機であっても、
です。
「我々は可能な限り、いろんな掃除機の性能、使い勝手、耐久性、価
格などを比較しましたが、現時点でおすすめしたい掃除機はこの○○社製
です。理由は・・・」という具合に説明します。読者は読み進むうちに、
なるほど、フムフム、一理あるなぁ、掃除機なら○○社製かなぁ・・・と
納得してもらえるまで、しつこく細部にわたって説得します。
「なんだか押し売りみたい」と思われた方、ある意味正解です(笑)
。で
も<押し>売りではなくて<推し>売り、推薦のいち推し売りなのだと正
当化するのが選択型なのです。要はお客さんに対して良くないものを無理
やり押しつけて、無理やり買わせるのが押売りで、それとは違うと。そう
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いえば、
ジャパネットタカタさんもTVインフォマーシャル通販も<推し>
売りの選択型でしょ。
では、選んだ商品をどう料理していくか、売り方の技法というと大袈裟
ですが、これを少しお話します。
●「これが売りたい」を主張する
数ある商品群の中から「なぜこれを選んだのか」を説明しなければなり
ません。性能、使い勝手、耐久性、価格などをひとつひとつ比較して説明
することは重要ですが、
これだけだといわゆるクールな説明になってしま
います。人それぞれだとは思いますが、頭ごなしにこうで、こうで、こう
だからこれが一番、みたいな説明をされると、なんとなく否定的な立場を
とってみたくなる。これだと論理的な説明にはなっていても、説得して
買ってもらうことはできません。
そこで少しホットな主張を加えます。例えば梅雨時に除湿機を売るとし
ます。
「私達は、ただひたすら除湿だけにこだわる除湿専用機が欲しいの
に、冷風が出るよ、温風も出るよ、空気清浄はいかが、温度センサーつき
だよ、とメーカーは多機能化にまっしぐら。梅雨時には除湿したい場所が
たくさんあるのだから、できるだけ短時間
にぐんぐん除湿してくれる強力な除湿機が
欲しいのだ。だから∼」と、これが主張で
す。クールに言いかえると「性能的には除
湿能力以外は他機種に劣るが∼」になりま
す。もちろん、主張に共感できない人は
買ってくれませんが、どちらが説得力を
もっているかといえば前者です。
●作者のメッセージを仲介し、誕生物語に仕立てる
『プロジェクトX』はふだんなにげなく見ていたもの、利用していたもの
に、なるほどそんなドラマがあったのかと感動を与えてくれます。ドラマ
である以上、必ず主人公は人間で、感動はその人間に対する感情です。カ
タログで商品のスペックをトレースしても人間は見えてきません。でも、
その陰には必ず人間が介在しているわけだし、作者はその商品に強いメッ
セージを託しているかもしれない。
なにか感動的なドラマがあるかもしれ
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ない。そんな臭いを感じるとすぐにメーカーへ取材に行って、広報部で
も、営業部でもなく、作った張本人に会わせてもらい話を聞きます。それ
を誕生物語に仕立てて、客観的な(クールな)商品の説明にかぶせていく。
ただ商品を説明する文章と比べれば、面白さも説得力も段違いです。
●使用体験を取材し、巡り合い物語に仕立てる
ドラマはメーカーや作者にだけあるとは限りません。その商品と巡り
合った人間(消費者)にもドラマはあります。
「使ってよかったです」
「重
宝しています」
「助かりました」といった類の使用感インタビューみたい
なものはいくらでもあります。しかし、それは宣伝文句を消費者の口を借
りて言わせているにすぎない。丹念に、丹念に取材を重ねていくと、凡百
のコピーライターが逆立ちしても作れない、本当の巡り合いドラマに遭遇
します。あとは誕生物語と一緒です。
●ディテールを追求する
ひとつの失敗から学んだ技法です。
ある高性能浄水器を売っていたので
すが、その浄水器がいかに高性能であるか、水質分析をしてみたり、目隠
しして他の浄水器と味比べをしたり、メーカーを取材したり、使用体験を
取材したり、浄化された水のすばらしさは表現し尽くしたつもりでした。
しかし、いかんせん高価であるため「こんなものか」という結果しか得ら
れなかったのです。
ところが、ある使用者を取材に行った時、
「ちょうどフィルターを交換
しようと思っていたの。
見て!このフィルターの真っ黒が身体の中に入る
と思うと、もうゼッタイ手放せないわ」と言われて愕然としました。フィ
ルターの浄水能力はもちろん、1 年以上交換不要の大容量であることも文
章では説明していたのに、写真は真っ白な使用前の写真しか載せていな
かったのです。メーカーの製品パンフレットにもありませんでした。で、
メーカーに聞いてみたら、
「汚れ方は使用状況によって異なるし、必要以
上に水道水の汚さをあおるのは・・・」とのこと。メーカーの言い分とし
ては一理あります。しかし、あれほど浄化された水のすばらしさを説明し
ながら、汚れたフィルターを見落としていたのは我々の失敗です。ディ
テールを追求しきれていなかった。すぐに原稿を作り直し、必要以上に水
道水の不安をあおらぬよう注意しながら、使用後 2ヶ月、6ヶ月、1 年後の
フィルターを使用者から借りてきて撮影しました。「ものぐさな私は、
買ってから 1 年経って納得しました」というコピーも入れて、売上が倍増
したのは言うまでもありません。
16
●売れない商品をあえて売る
実用性をまったく感じられない商品は、いくら説得しても売れません。
しかし、けっしてユーモア商品ではなく、限られた一部の人たちにとって
は大真面目な実用品だったりする商品に出くわすときがあります。一般的
には「こんなの誰が買うの、プッ」と吹きだす商品を、もちろんたくさん
売れることは期待できないのですが、あえて売るのが『通販生活』です。
『通販生活』がこういう商品を載せず、実用一辺倒の説得カタログでしか
なかったら、今日の成功はなかったかもしれません。
最後になりますが、ここまで何度か「通販生活は面白くなくてはならな
い」と申し上げてきました。
「面白く」にはいろんな意味をこめて話して
きたつもりですが、ひとことで言うと「つまらなくしてはならない」とい
うことです。メーカーが消費者の購買意欲を掻き立てるような面白い商品
を生み出そうとしても、小売がただ売れるか売れないかで判断して、売れ
筋の商品だけを店頭に陳列するようになってしまったら、
どんどん消費は
つまらなくなっていくような気がします。店員はただ商品を陳列するだけ
で、なぜこの商品を売りたいと思うのか、この商品はどんな人々がどんな
想いで作り上げたものなのかをまったく語らなくなってしまったら、消費
そのものはまったく無味乾燥なものになってしまうでしょう。これ以上、
消費をつまらなくしてはいけない!そ
んな使命感を感じずにはいられないの
です。カタログ通販は商品を売る小売
のチャネルであると同時に、知恵と努
力を惜しまなければ消費そのものを面
白くできるメディアのひとつだと私は
考えています。
17
3.PC インターネットユーザー(ニフティ)
鳴川正一氏(ニフティ株式会社企画・C S 統括部 / C S 推進部)
PCインターネットユーザーについてお話しします。非常に大きなテーマ
ですが、ニフティから見たインターネットユーザーという視点で、社内を
廻り、詳しそうな人から話を聞いてきました。
会員分布
まず全体的な傾向ですが、今ニフティの会員数は524 万人と言われてい
ます。
ニフティの年齢別会員分布を日本の人口の年齢別分布割合と比較し
てみると、19 歳以下と 60 歳以上が一番違うところで、30 代あたりがニフ
ティは多いけど、ティーンネイジャーや 60 歳以上が少ないです。で、19
歳以下というのは、ニフティは基本的にカード決済ということで少ない。
60歳以上はPCにまだ慣れていないだろうということで少ないんですけど、
実はその19歳以下と60歳以上の方が30代の方より目立って増えてきてい
ます。ティーンエイジャーはニフティの家族会員制度を利用して入ってき
ている方が多いです。おじいちゃんというと、リタイヤした人が入ってく
るといった感じです。
おばちゃんの脅威
それから「おばちゃんの脅威」があります(笑)
。この人達はニフティ
にとっては、訳の分からない人となってます。今まで積み上げてきたロ
ジックが全く通じない人々ということで、
ちょっと対策を考えなくてはい
けないかもしれないと思っています。
例えば、ニフティではユーザービリティテストをよ
くやっているのですが、先日 40 か 50 代のおばちゃん 4
人を呼んだとき、2名ずつペアにしてテストをやってみ
たのですが、まず「検索」
。
「なんでこんなことしなきゃ
ならないんだ。面倒だ」と言われてしまいました。
「メ
ルマガが購読できます」というと、
「そんなもんうっと
おしい」
。で、
「いろいろなアンケートに答えると、あな
たにあった商品をレコメンドしてくれますよ」という
と、
「そんなもん、うっとおしいからやめてくれ」と、こ
とごとく裏目裏目にでまして、私たちが今まで、
「こう
18
した方が使いやすいだろう」と思ってやってきたことが、全く通じない人
達なんだなということがよくわかりました。でも、こういうおばちゃん達
は消費者としては結構経験豊富で、
しかも地元で井戸端会議的に口コミパ
ワーを持っているので、これは非常に手強い相手がはいってきたなぁと。
ここ 1、2 年ではそういった傾向があります。
始める動機が希薄
ここ数年の加入者の傾向ですが、「○○ができるから PC を始めました」
とか「○○をするためにPCをはじめました」というような動機が極めて希
薄な人々(ボンヤリ型)が最近は非常に多いです。
「近所の○○さんが始
めたから私も・・・」とか、
「そろそろやり始めた方がいいんじゃないか・・・」
というようなケースが非常に増えていて、じゃ、
「何するんですか?」っ
て聞くとメールとかホームページという答えしか返ってこない。
PC超ド初心者は、
まぁニフティのポジショニングとかブランドによるの
かなとも思うのですが、とりあえず老舗だし、大きいからとりあえず入っ
ちゃおうということで、最初に選ばれるのがニフティ、という傾向がある
ようです。PC 買って半年立たない人が入会する比率が半分くらいいます。
要するに入会者全体で P C 買って半年も
立ってない人が半分くらいいるのです。
こういった方々とのサポートのやりとり
を聞いていると、もう漫才にしか聞こえ
ないですね。一本の電話で 30 分、長い場
合には 3 時間以上とか。そういった、サ
ポートには非常にコストのかかる人々を
相手にしているわけです。
3 つの時代
参考までに「3 つの時代」といって、ニフティが今まで経てきた 10 何年
が 3 つに分けられるんじゃないかという考え方があります。
最初の時期は、立ち上げてから94年くらいのパソコン通信時期と言って
いいとも思うんですけど、
そのころの加入者の方は非常に目的意識がはっ
きりしています。そのころ、ニフティサーブといっていましたが、基本と
なるサービスで「フォーラム」という、まぁ、同好会みたいなモノですが、
そこで何かを言う、
ということを意識して入ってくる方が多かったように
思います。
19
次に、Win95 ブームというのがやってきます。これによって、ニフティ
に入会者の質が劇的に変わりました。
何か自分の暮らしに有効に使えるん
じゃないかとか、何か情報を引き出せるんじゃないかとか、何か使えば便
利なんじゃないか、という理由で入会される方が増えてきました。で、目
的意識と言えば、初期のころから比べると強いモノでもないし、はっきり
したモノでもないのですが、何か使えるんじゃないかということで入って
きました。このころがニフティサーブとしての会員数の伸び率というのは
一番のピークで、だいたい月に 15 万人くらいの入会者がいました。
このブームの流れがだいたい 97、8 年くらいまで続きまして、最後の時
代(98 年以降)は IT バブル崩壊以降から今までということで、その最後
の時代が、このボンヤリ型や、PCド超初心者が非常に多い時代となってい
ます。で、その 3 つの時代ごとの入会者の割合が現在 1:1:1 くらいになっ
ています。
まあ、これはあくまでも @ ニフティでの話なので、他のプロバイダーさ
んではまた違うのかなと思います。どちらかというと @ ニフティは「最底
辺」という風に認識していただいてもいいのかなと思います。YAHOO B B
とかならまた違ってくるのかなと思います。
ブロードバンド化
次にブロードバンド化につ
いてです。日常的にブロード
バンド化というと大容量とか
広帯域とか光速とか言われる
んですが、実際なんであなた
はADSLにしたの?と聞くと、まず電話代がかからない、いつでも好きなと
きに使えるということがまっ先に挙げられます。
あとはつながりっぱなし
なので、面倒くさくないとか。どちらかというと新聞とかで書かれている
ようなブロードバンド系コンテンツとか、速いとか大容量とかがメインに
言われますが、実際に使われている方にしてみれば、ブロードバンドのコ
ンテンツといってもあまりピンとこない、というような感じです。
ニフティでは、ADSLとか光ファイバーとか使っている人は全体の10%弱
となってます。これはほかのプロバイダーさんの平均から見るとちょっと
低いのかなと思います。ただ、これはニフティのブロードバンドを使って
いる方が 10%ということであって、例えば YAHOO B B を足廻りに、ニフ
ティでHPを持っているとか、そういう例もあると思うので、そう考えると
広い意味でのブロードバンドユーザーというのはもっと多くなるのかな、
20
という気がしています。で、利用時間、接続時間そのものは非常に増えて
います。大体 1.4 ∼ 1.5 倍くらいの接続時間になっているようです。
で、ニフティとしては困ったことが起きてまして、例えば家庭でADSLを
引くと、アカウントをもっているご主人が使い、奥さんが使い、子供が使
う。つまり、一本の線でいろんな人が使うのです。しかし、ニフティとし
て把握しているのはアカウントをもっているご主人だけということで、利
用実態があまり分からなくなってきているのです。例えば、囲碁・将棋で
遊んで、と思ったら子供向けのコンテンツを買って、女性の下着を買って
という現象が 1 アカウントで発生するので、ニフティとしてはどういうこ
となんだと。だから、ブロードバンド化によって、見えなくなってきてい
るものも結構あるのかな、という気がします。
ニフティの人気コンテンツ
では、ニフティではどんなコンテンツが人気があるかということです
が、まずメール系のサービスが基本のサービスなので人気が高いですね。
メールアカウントを追加したり、ウィルスバスターといって、受送信する
メールのウィルスチェックをして、
自動的にウィルスを駆除して知らせて
くれるというサービスなんですけど、
そういうメール系のサービスが人気
が高いです。ウィルスバスターはまだ始まってそんなにたってないんです
けど、15 万人くらい登録されています。
あとは画像系ですね。グラビア、エッチ
系。売上としては結構高いです。あと、昔
から根強いのはビジネス系で、
企業情報を
検索したりとか、
新聞記事検索といった定
番系が非常に根強いですね。
あと、
エンターテイメント系では占いが
ダントツ一位ですね。グラビア、企業情
報、占いの 3 つがニフティの有料コンテン
ツの稼ぎ頭ですね。ただ、その売上が上がりもせず下がりもせず、フラッ
トなラインを 5 年くらい描いています。ですから、PC を買う人の数を考え
ると、利用している人の数は減っているのかなぁというところです。
それからPVの高いジャンルですが、
ニフティが圧倒的に強いのは個人HP
系です。今、ニフティの会員の方で自分のHPをもっていらっしゃる方は約
25 万人、25 万 ID ですね。ニフティのサイトバナーのかなりの部分を個人
HP が稼ぎ出しているという状況です。アクセスが多いのは個人 HP の中で
も、当たり前なのかもしれませんがエッチ系で、夜中エッチ系のサイトを
21
目当てにしたアクセスで、サーバーのレスポンスが大幅にダウンすること
も半年くらい前までは結構ありましたね。
次に検索系のアクセスというこ
とで、提携しているgoogleになるんですけど、これも定番ということで非
常に利用が多いです。これは1検索あたりでgoogleさんにお支払いしてい
るので、
かなりの額をgoogleさんにお支払いしているということになりま
す。で、お役立ち系、トップページの目立つところにあるということもあ
るんですが、かなりの利用がありますね。あと、当然なんですが、サポー
ト系のページも高いですね。住所変更や、メールアカウントを追加すると
きなどにここのサポート系を通って行くので、必然的に多くなってきてい
ます。
しかしこれらのコンテンツはみな小粒で、
これっていう決め手がないの
が現状です。ニフティではキラーコンテンツ志向というか、そういう思想
がずっとあったのですが、最近ではそんなものはないね、というふうに開
き直っています。
ショッピング
これは、
数人のショッピング担当者に聞いたりデータをもらったりして
きました。
まず購買頻度ですけど、
「一度もしたことがない」が 17%で、それ以外
はしたことがあるということで、ニフティの会員さんはお買い物が好きな
のかしら、というデータが出ていますが、アクティブな会員さんに対して
アンケートを取ったものであって、全体
でいうともう少し「一度もしたことがな
い」が高くなるのかな、という気がしま
す。したがって、言えることは二極分化
してきているなということです。
次に商品別の購買意向(複数回答)で
すが、まずパソコン系が52%、書籍等が
62%、チケットや旅行手配が48%あたり
が高いですね。
で、売れやすいものということで、担当者と話をしてまとめてみまし
た。まず、
「Internet と親和性の高いもの」単価が高いということもあっ
て、売上的には目立ちますね。それから「探すのに苦労するもの」商品棚
をじぃ∼っと見て探さなきゃならないようなものがInternetでは探しやす
いということで、非常に買いやすいと思われます。
「季節ネタ的なもの」も
そういう時期には売上的がポンと上がるようです。それから「反プレッ
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シャーセールス」というのがあり、女性に多いそうなんですけど、化粧品
というのは買わざるを得ない状況に追い込まれる、ということで、
Internet 上の化粧品はよく売れるようです。あと、女性の下着なんです
が、面白いことに購買者の約 3 割以上が男性です。プレゼントかご自分で
使われるのかはわかりませんけど(笑)
。あとは、ブランドものの「安売
り系」ですね。
売れるお店
ニフティにはショッピングのお店がだいたい600店舗くらいあるんです
けど、商品や価格以外で売れているお店というものを考えてみたときに、
こういう傾向があるんじゃないか、
とあるショッピング担当者が言ってい
たものを紹介します。まず「店長・店員の気質」で、マメで、おせっかい
で、自らオンラインショッピングしているというのが、売上的には高いと
いうことです。
「対応」は、当たり前のことですが、レスポンスが激早、ク
レーム対応が採算度外視のお店というのがよいということで、
あるお店な
んかは、クレームがきたら「しめた!」と思うそうです。要するに、クレー
ムがきた対応で非常に評価を逆転させてプラスの評価に持っていったとき
の口コミ効果というのはすごいですよ、
というのをその店長は言っていた
そうです。あと、お店のページについていえば、わかりやすいページで、
買わなくても楽しいとか、役に立つという要素もあるかもしれないといっ
てました。
で、ニフティの 600 店舗あるお店はわりと小さなお店が多くて、そう
いったお店は何を武器にして商売をしているかというと、どの店長も「口
コミです」と言うそうです。要するに、一度買っていただいたお客様をど
れだけ大切にできるかということが、
次のお客さんをその人が呼んできて
くれるかにつながるようです。ニフティでは小さくて専門的なお店が多い
ので、全体的にそういった傾向があるのかな、と思います。
ということで、かなり断片的な話になりましたが、結局PCインターネッ
トユーザーとは何だと言われてもわからない、ということだと思います。
23
三田隆治氏
(フリージャーナリスト / ケータイコンテンツプランナー)
ケータイに関しては、普及の地域格差がほとんどありません。都心だけ
流行っているということもなく、全国まんべんなく普及しています。それ
から、男女格差がありません。これに関しましては、PC インターネットと
顕著な差を構成しています。ある意味、いわゆるブラウザフォンと呼ばれ
るインターネットアクセスができる携帯電話というのは、日本というか、
世界的に見ても唯一女性の方の利用が活性化しているツールです。
普及台
数でいうと、男性が 53%くらいだと思います。しかし、利用時間やパケッ
ト料金とかから見ると、むしろ女性の方が多いという結果が出ていまし
て、
単純に女性にリーチするのに向いているツールだと理解していただい
ていいと思います。それから、世代。普及のピークというのは 20代後半で
す。これはPCインターネットに似ているのかも知れませんが、新機種がで
たりしたときに真っ先に飛びつく年齢層は 27 ∼ 28 歳と言われています。
よく、
ケータイというと女子高生のツールという印象が強いと思うので
すが、mコマースの利用の活性率を見ると、若年層は、やはり可処分所得
が少ないということもあって、女子高生がi アプリをバカスカダウンロー
ドして使いまくっている、というようなことはそんなに多くなく、やはり
主たる利用はメールにとどまっているケースが多いです。
次は利用実態ですが、音声通話の率が 5 割を
切っています。要するに、メール等に活用される
比率の方が、当然メール打つのは電話より時間か
かりますし、金額ベースでもメールに費やされる
ものや、ウェブアクセスもかなり増えてきていま
す。現在ケータイユーザーの一日のメールの送受
信回数は平均 11 通くらいです。メールが特に多いのは 10 代の女の子。ア
ンケートによっては送受信合計が平均 23 通というデータもありまして、
メールの活用においては若年層が多い。
こういうアンケートはTVに出たり
するわけですけども、理由として大事なのは、携帯電話(ブラウザフォン)
24
そのものが、一つのデフレトレンドの象徴なのだろうと考えています。
では、PCを持っていない人というのはどういう人なのか、ということを
考えるときに、まず、持っている人というのは統計があるのですが、
「P
Cを持っていない人」となると明解な統計というのはないのです。単純に
持っている人の逆をイメージしてみると、それがケータイユーザーの実状
とオーバーラップする部分が非常に多いように思うので、挙げてみます。
まず、18歳未満の男女。もちろんPCを持っている人もいるのですが、や
はり比較的持ってない人が多い。それから、20 歳前後の高校生より上の、
専門大生や大学生についていうと、ちょっと言いにくいんですが、高学歴
でない男女がPCを持っていないケースが多いです。今、四大生というのが
一説によると97%PCを持っているといわれ、
就職に不可欠のツールらしい
のですが、専門大生、短大生等になるとパソコンの普及率は大変低くなっ
ていまして、彼らのいわゆるITライフというものがケータイ中心になって
いる、という状況です。それから上の 20 代から 40 代でいうと、
「ホワイト
カラーでない男性」
。世の中にはパソコンがなくても困らない人というの
はたくさんいらっしゃるのです。例えば、20 前半の短大生、もしくは専門
大生の女の子のライフスタイルを考えてみればわかると思うのですが、ま
ず学校に行って戻る。それから特に家に帰って勉強をするわけではない。
へたをすると、地方出身で都会に小さなアパートを借りていたりするわけ
ですが、こういう方は家に机がない場合も多い。本を読んだり、PC で情報
をゲットしたりするためのスペースそのものが存
在していない。また、友だちが家に泊まりに来た
り、彼氏の家に泊まりに行ったりと、全般に「家に
帰らない」人達です。女子高生のプチ家出もそうな
のですが、そもそもパソコンに触れる時間という
のが存在しないので、パソコンを使うということ
自体がイメージできないというところがあるよう
です。
それから、
「非就業者の女性」
。いわゆる「おばちゃん層」なんですが、
確かに徐々にケータイからPCにシフトしつつある方もいらっしゃると思い
ますが、相変わらず「PC は私にはまだ早い」とか「高いんじゃないか」と
か、私には贅沢だみたいに考えてしまう層が存在します。
最近では「定額接続」というトレンドが PC でますます増えつつあって、
普通に考えて自宅が定額接続の環境にあったら、e ショッピングなどはな
25
るべくパソコンでやります。それで、ここ 1 年で特に出てきた傾向という
のは、パソコンが定額接続化すればするほど、i モードが「あまり使いた
くないサービス」という位置づけになる、という傾向が統計にも出てきて
います。これが、パソコンユーザーがケータイをあまり使わないという実
態の裏付けになっているものだと思うのですが、特にビジネスマンの方な
どは、実際周囲を眺めていただければ、ケータイにはまっている方って周
囲にあまりいないと思います。でも、現実には、ケータイ好きの人という
のは沢山存在していて、では、その人達ってどこにいるのっていうと、先
ほど説明したように、
パソコン持っていないひとがITツールとして使うと
いうところにケータイ利用の大きなボリュームゾーンがあるのです。
要するに、PC を持っているケータイユーザーにとっては、
「パソコンで
できることはケータイでやらない」
という住み分けがどんどん顕著になっ
てきてしまっています。ただし先ほどもいったように、パソコンを必要と
しない、欲しいと思わない、これからも買おうと考えていないユーザーと
いうのは、数千万人単位で存在します。2 千万 3 千万という単位で存在す
るわけで、特にケータイに特化してサービスを提供する場合、私はここの
ゾーンに対してどういうアピールをしていったらいいか、
ということを考
えるのがむしろいいのではないかと思います。
ケータイ電話が最近使われている量はどうなってきているのかというこ
とですが、ケータイの月々の一人あたりの使用金額のデータを見てみる
と、ケータイブームといわれながらも、実際は過去 1 年間ぐらいにわたっ
て、実は一人一人の i モードの利用は減ってきています。2000 年の実績が
一人あたり平均 2110 円使っていたのが、2001 年全般では 2200 円に上がっ
たので、
一昨年から昨年にかけて上がったんじゃないかと思うかもしれま
せんが、実は昨年度の第4四半期だけを見ると実は2040円に激減していま
す。
それで、直近 3ヶ月のものが今月の 10 日くらいに出る予定ですが、どう
やらもっと下がるらしい。それで、下がっているというのはこの数字以上
に大きなものがありまして、この 1 年の間に JAVA のアプリケーションと
か、容量をますます食うものがどんどん増えていって、しかも i アプリ対
応の機種はすでに1300万台も売れている。という意味では、ケータイその
ものは好調に売れ続けているというのにもかかわらず、
使用料は減ってい
るという実態があるのです。
26
特に i モードユーザー特有のユーザー層というのを見るときに、とても
象徴的な事例なのでいつもこの話を紹介させていただいているのですが、
去年の8月に毎日新聞に、
「仮想暴走族」が補導されたという記事が載って
いたのですが、無料 HP の作成サイトの中で、全国の女子中学生たちが HP
上で、
「仮想暴走族」を結成していたんです。
「狂翼天使」っていう HP で、
16人くらいのチームを作っていました。
その中でチームのリーダーだった
人が高校進学するにあたってアメリカに留学するのでやめるといったら、
仲間の「掟」に反するってことで、全国からメンバーが集まって、その脱
退しようとした女の子をリンチしたという事件が新聞記事になりました。
顕著な特徴としましては、この女の子の中でバイクの免許を持っていた
子は一人もいなくて、バイクを持っている子も一人もいなかった。要する
に、暴走族という価値観、そのコミュニティをそのまま電脳化したものだ
ということです。で、その 3ヶ月後くらいには八王子で暴走族の抗争事件
が起こっているのですが、
抗争のきっかけがやっぱりケータイHPの掲示板
のケンカだったそうです。
実はこの暴走族系というカテゴリーがiモードのHPの中ではかなり大き
な比率を占めていて、例えばコンビニにあるi モード裏マニュアル本とか
いう、あまりお上品ではないHPを書いたものですが、この本のコンテンツ
を見てみると、
「ヤンキー系」
「暴走族系」
「漢の世界」
「入れ墨系」
「改造
車系」
「走り屋系」
「ギャンブル系」などなどがある。HP カテゴリーの中で
こういったカテゴリーは、従来のパソ
コンの HP にはほとんど存在しなかっ
たものです。実際、中学生で暴走族に
あこがれて家に帰らない人達が、そも
そもパソコンで HP を作るはずがない
のであって、ところが「ケータイだっ
たら作れた」、ということなのでしょ
う。
暴走族とは、つまり一種の「価値観コミュニティ」なので、バイクに乗っ
ているというのは二次的なことじゃないですか。そういったものというの
が、
PCにないケータイユーザーの特質だと考えていただいていいと思いま
す。ヤンママ系であるとか、そういった HP が結構な比率があって、ユー
ザーが非常に活性化しているという事実があります。
また、ケータイの HP のなかでも大体 3 つのキーワードがあります。
「友
だち」
「恋バナ(恋の話)」
「お悩み相談」です。ケータイの HP で一番多い
27
話題は大体この 3 つだといわれています。例えば「オレはこの話だったら
だれにも負けん!」
「このコレクションだったら・・!」みたいな、ある
種非常に「濃い」人達がコミュニティを形成するというのがあると思うの
ですが、ケータイはある種「薄さ」の集まりみたいなところがあって、友
だちのはなし、恋のはなし、悩み相談のはなしというのは、ある種特徴を
持たない人たちのコミュニティであるというのが特徴なんじゃないかと思
うのです。
ですから、ボクはよく冗談でいうのですが、ケータイでコミュニティサ
イトをつくって今一番受けると思うのが、
「前科モノ .com」とかじゃない
かと(笑)
。いわゆる服役していたお方たちが集まって、みんなで権利を
守りあうというようなページが作れたら、
もちろんPCで作るというのもい
いのでしょうけど、
多分ケータイで作ったらめちゃめちゃ受けるんじゃな
いかなと。「保護観察 .com」とか。そこ
にあるキーワードは何かといえば、「高
学歴ではない」ということ、そして「ホ
ワイトカラーじゃない」ということ。そ
れから、まぁこれはケータイもPCも同じ
ですが、
「匿名性」です。今後、コミュニ
ティが形成される一番核になるものは、
今まで横のつながりができなかった人々
なんかが有望じゃないかと思います。
モバイルコマースの今後についてなんですが、一般にPCユーザーの延長
で考えますと、ケータイでものを売るサイトを作るときに、ようするに写
メールも出てきたし、ケータイの性能も高性能化してきたので、絵とかを
バンバン出して、ゴージャスなモバイルコマースサイトを作ればいいん
じゃないかと考えがちですが、先ほども言ったように、ケータイユーザー
というのは非常にコストコンシャスになってきていますので、
パケ代をい
たずらに食わせるモバイルコマースがいいかというと、そうは言えなく
なってきているようです。そう考えると、これは実際実績も出ているので
すが、
一般論的にモバイルコマースに一番向いている商材というのは俗に
「三河屋的商材」といわれるものでして、それは何かというと、まずブラ
ンドを一回決めてしまったらあまり変えないもの。要するに、昔三河屋さ
んが来て「お米なくなっていませんか?」といって「なくなっているから
持ってきてちょうだい」というようなビジネスモデルが有効だと思いま
28
す。
e コマースに限らず、情報提供でもコミュニティでも、多分何でもそう
だと思うんですが、ケータイと PC の一番の違いというのは、PC というの
は情報提示のモデルとしては「pull 型」といわれるもので、無数の選択肢
の中からあなたの好きな色を選んで下さい、というようなものです。その
選択肢が多ければ多いほどある種充実していると見なされ、そうしたpull
型を好むこと自体が、
PCユーザーの主たる特質だと考えていいと思うんで
すが、ケータイユーザーの大事なポイントは「push 型」であるということ
です。push とは、あなたに向いているものはこれですよ、とレコメンドし
てくれるようなもの。それから、例えば今日の私を占ってといったら、今
日のあなたに向いたお昼ご飯は○○ですよ、
とコンサルティングしてくれ
るとか。そういう情報提供手段が向いていると思います。
なぜこうした傾向の差異が出るかというと、まずケータイユーザーとい
うのは基本的に薄い人達なので、百個あるうちから自分で選ぶという行為
に対する耐性があまりない。もう一つは、性能的な制約ですね。PC であれ
ば、百個あるうちから一つ選ぶのは一画面でできるかもしれませんが、
ケータイの画面で百個あるなかから一つを選ぶということは大変です。時
間もパケット代もかかってしまいますから、
基本的にケータイはpush型の
情報配信を考えなくてはならない。既存の
ものでいえば、メルマガのようなもの。そ
れも例えば、生年月日を入れるとその生年
月日専用の占いを送ってくるメルマガとか
が人気のようです。そうしたコンテンツに
よって、日常的なアクセスを確保して、そ
の上で「さそり座のあなたにはこんなもの
はいかがですか?」みたいな、そういう商
材アピールというのがケータイでは効果的だといわれているようです。
全般に言えることは、
ケータイの物販はPCの物販に比べるとまだかなり
小さいです。規模にすれば、まだ 1/10 すらないです。なぜかというと、ま
ずケータイでものを買うということにユーザーが慣れていないというこ
と。それから、商品アピールが難しい。そういう意味では、ケータイのコ
ミュニティ戦略は、PCでeコマースをする場合とは明確に異なると考えな
ければならないでしょう。
まずは媒体をバーチャルで完結させないこと。「クリック&モルタル」
29
などとよく言われますが、PC であれば 1 から 10 まで全てを PC 上でやると
いう可能性は十分にありますが、ケータイに関してそれは現実的ではな
く、やっぱり PC サイト、雑誌、実店舗、TV、カタログ、フリーペーパーな
んかとの相乗効果・補完効果を常に意識すべきだと思います。
また、広告チラシ。例えば、マクドナルドの敷紙のチラシによく URL が
書いてあって、あれなどは非常に理にかなっていますよね。大体見てしま
いますからね。そこでファーストフードを食べながら、ケータイに触る率
が高いと考えれば、そこからケータイサイトに導入するというのは、非常
に理にかなっていると思うのですが、そう考えると、紙やチラシや、そう
いったとこでふと見かけるものからケータイのサイトに導入していく、も
しくはケータイでは表現力や詳しい説明に限界がある部分はカタログやパ
ンフレットにやらせて、
購買行動のみをワンプッシュで済ませるという仕
組みが理想的かもしれません。
売る側からしてみれば、それによってバックオフィスの手間を軽減し
て、コストダウンに寄与できるというような、要するにケータイだからモ
ノが売れるんじゃなくて、ケータイにするおかげで事務コストが下がると
か、他の競争相手より合理化ができたとか、むしろそういう視点を大事に
した方がいいのではないかと思います。
ケータイになったからモノがバカ
スカ売れるとは考えないほうがいいと思うのです。
30
佐々木迅氏(株式会社 Q V C ジャパン代表取締役社長)
まず、会社の概要と事業モデルについてご説明させていただきます。
QVC ジャパンは一昨年、2000 年の 6 月に設立しました。資本金 50 億円で
スタートして、現在は 110 億と、非常に大きな資本金となっています。こ
れは、コールセンター、スタジオなどをインハウスで持っているためで
す。
インハウスで持つ意味というのはこれからゆっくりご説明させていた
だきます。内容は株式は米国の QVC が 60%、日本の三井物産が 40%となっ
ています。現状の従業員人数は、コールセンターのオペレーター、倉庫の
ワーカーも含めた総員が 497 名です。
アメリカの QVC は 1986 年に事業を始めまして、現在で 16 年経つんです
が、その間にかなりの勢いで伸びてます。アメリカの放送局のランキング
というのがありまして、単純に比較できるものではありませんが、ネット
ワーク局(日本でのキー局)との売り上げ比較なんですが、アメリカのQVC
は第2 位の放送局になっています。ちなみに 1位はよくご存じのNBC、CBS、
ABC といういわゆるネットワーク局が入っています。ちなみに、8 位に HSN
(ホームショッピングネットワーク)という会社があり、これが売り上げ
規模としては QVC のほぼ半分、QVC は 36 億ドルですから日本円で約 4 千億
円くらいの売り上げがあるわけですが、その半分です。この HSN 社は日本
では住商さんとジュピター・プログラミングという会社と合弁で、6 年前
からショップチャンネルという、われわれと同じ業態のTVショッピングを
始められて、昨年 200 億という売り上げをあげられました。ちなみに日本
の放送局の売り上げはどのくらいなのかな、とお思いになると思います
が、日本の放送局は売り上げが非常に大きくて、アメリカのネットワーク
の売り上げとほぼ匹敵するほどです。そういう意味では、日本の広告市場
というのは現状では大きなキー局が占めているといえます。
資本金からい
くと、QVC ジャパンは日本で 5 番目の放送局ということになります。
QVC の意味というのはよく聞かれるのですが、非常に単純で「クオリ
31
ティ・ヴァリュー・コンビニエンス」で、QVC のサービス理念を表してい
ます。良質なものを(クオリティ)価値あるものを(ヴァリュー)簡便さ・
便利さ・楽しさ(コンビニエンス)を提供するということです。
QVCはアメリカで生まれた会社です。
場所はフィラデルフィアの郊外で、
ニューヨークから 1 時間くらいのところにあります。そこにスタジオパー
クという本社スタジオを持ってまして、そこで 1 日 24 時間ライブ放送を
行っています。ですから、1 年中 24 時間止まることなく動いている放送局
です。そこに従業員 1 万 2 千人いるのですが、全国にコールセンターが 3
つ、物流センターが 3 つございまして、電話を受けた瞬間に即輸送と、リ
アルタイムに行う仕組みになっています。QVC 自身は英・独・日本に海外
展開しています。
英と独の現状の事業内容ですが、英
では 1993 年に事業を始めました。生放
送の時間が現状 17 時間、配信世帯数が
900 万世帯。8 年目の去年の売り上げが
340億円相当。独は96年から事業を開始
して、現状19時間の生放送、衛星とケー
ブル両方で配信して、約 2800 万世帯に
配信しています。売り上げは約200 億円
です。
TV ショッピングはアメリカで生まれて徐々に広がっていったんですけ
ど、その中で特異な動きをしているのは韓国なんですよ。韓国は4500万人
の人口で 1300 万世帯数、ケーブルが約 1000 万世帯に到達していて、非常
にケーブルが発達しています。その中で 85 年の 8 月から放送を開始して、
ほぼ 7 年間で 1 兆ウォン、1 千億円ですね、の売り上げをあげています。
会社でいえば LG グループの関係会社と CJ という会社なんですけど、ど
ちらも 8000 億円近い売り上げを上げてます。今年は LG が 1400 億くらい売
り上げをあげると聞いてますんで、非常にすごい勢いで伸びています。去
年まではこの 2 社だけだったんですが、去年現代グループが新しく始めま
して、今年の売り上げが 800 億くらい行くと聞いています。ですから、非
常に狭い中で売り上げが非常に高いです。ちなみに韓国のカタログを含め
た通販の TV 以外のマーケットは、約 1 兆ウォンと聞いています。日本の
32
マーケットは通販全体で 2 兆 4000 億くらい、TV が 2000 億、インターネッ
ト関連が 2000 億といわれていますから、韓国の TV のマーケットはお化け
みたいな勢いになってます。この 2 社とも 24 時間放送をしていまして、ラ
イブの時間がそれぞれ 21 時間です。
日本でTV ショッピングというとみなさん思い出されるのが、夜の遅い時
間に UHF の TV 番組でやっているものが多いと思うんですが、一般に TV
ショッピングという定義では、そのように地上波の時間枠を買って流すよ
うな放送というのはアメリカでは「インフォマーシャル」と呼ばれまし
て、これはインフォメーションとコマーシャルの略なんですが、あくまで
も「プログラム」ではなくて「コマーシャル」なんですよ。非常に見た目
は両者似てるんですけど、実際の中身には非常に大きな差があります。そ
れは何かというと、
インフォマーシャルの場合には大量に商品を買ってき
て、それを地上波の時間枠を買って、そこに流し、そのときに電話を受け
て発送するというものです。これは
録画したものを3ヶ月から長いときは
半年、何度も何度も流すわけですよ
ね。だから最初に見たときの面白さ
はありますが、続けて見ることに
よって飽きてくるというのがあって、
決して見るための番組になってない
というところがありますよね。
もうひとつ大きな違いは、買った人にどこの会社から買ったかという意
識があるかないかですよね。インフォマーシャルの場合は「8 チャンの通
販で買った」くらいにしか思わないんですよ。しかし、QVCなどのTVショッ
ピングの場合、買った方が明らかにQVC から買いましたという意識を持っ
ているわけですね。そこにある大きな差というのは、
「QVCで買ったからま
た QVC で買おう」と思っていただけるということですよね。ですから我々
の場合はリピートされるお客様が非常に重要になり、売りきりでなく戻っ
てきてもらうということが重要です。逆にいつでも戻れるように24時間の
放送をするのです。ですから、インフォマーシャルとTVショッピングはそ
こに大きな違いがあるのです。
33
我が社の業務フローなんですが、QVC は自社内にスタジオを持っていま
す。商品部も持っています。そこにはデパートなどの商品部にいた方を採
用しています。その人達が商品を考えて商品を持ってきます。それを放送
局やプロダクションにいた人を採用したテレビ部の人間がその商品をいか
に見せるかということを考えます。で、放送された時点で小売店さんから
電話を受けて、現状では 1 日 6000 までを送るということで、12 時すぎに
バック処理で倉庫にデータを送り、
倉庫から翌日配送という風なスタイル
をとっています。あと、ウチの特徴としては商品QAを行うセンターを持っ
ています。ですからメーカー品も含めて当社のスタンダードとしてこの商
品が適切であるかというのをチェックしています。
システム的なことについていいますと、お客様はウチのコールセンター
を介してオーダーを入れます。ですから、コールセンターはウチとお客様
の接点になるところです。この接点になるところをアウトソースに持たず
に自社で持とうというのが当社のポリシーです。これは英も独も同じで
す。
現状では110席のシートがあるんですが、そこで24時間電話を受けてい
ます。コールセンターで受けたものをシステムに入れて、ここには商品情
報、顧客情報、レスポンス情報というのが入って、そして支払い方法が
入ったら出荷指揮が行くというようになっています。
コールセンターではオペレーターの対応と音声自動応答、IDR です。こ
の IDR は去年導入したのですが非常に好評で、商品情報は通常 IDR ですと
商品番号しか入れてないのですが、
私どもの場合には自前で商品情報を音
声で入れてます。そのようにユーザーフレンドリーな環境を作っています
ので、IDR の利用率は非常に高いです。
QVC ジャパンの収益モデルはどこにあるのかということですが、ひとつ
はコンテンツ訴求力。ウチの場合は通販ですから、最終的には商品力だと
思うんですけど、商品力も含めたコンテンツ訴求力。それは商品であり、
また番組。番組でいえばナビゲーターのプレゼン力、カメラワーク、構成
なども含めてコンテンツと言えると思うんですけど、多品種のものを小
ロットでそろえていまして、そういう商品構成も含めたコンテンツです
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ね。
もうひとつは媒体力。現状私どもはスカパー、全国のケーブル局、それ
とCS110度の3つの媒体。それとそのトータル世帯数がいえると思います。
現状、710 万世帯の方がウチの番組を見られるんですけど、その総和の数
とコンテンツ力とかけて収益力となるのではないかと思います。
QVC が商品を選ぶ基準としているのは、ストーリー性のある商品です。
今小売りの現状は大きく分けて二極化していると思います。
デパートや大
型の専門店など、顧客に対して十分に商品を説明できる能力のあるところ
はそれなりの価格で販売し、一方では価格を主体として、ユニクロに代表
されますが、低価格で商品を提供するもの。しかし、実際にはその中間の
商品は非常に多いのではないか、そしてその中間の商品は今売場をどんど
ん失っているのではないかと思います。
今流通は人をどれだけ省いて商品を売るかという方向に動いていますか
ら、省くということは当然説明する人がいない。しかし、私どものチャン
ネルはメディアですから、当然情報発信ができるわけです。だから、ある
一面で流通業ですが、ある一面では
情報産業の部分があります。そのメ
ディアとしての機能は、商品の開発
者やデザイナーなどを連れてくるこ
とによって、確実に700万人近い人に
商品のコンセプトを十分に説明でき
ます。ですから、その商品の開発に関
する想いなどを伝えることができれ
ば、それは独りよがりかもしれませ
んけど、実際にそのよさをわかって
買う人はこの広い世の中にいるわけ
ですから、その小さなニーズを全国から集めて一定の数量にすることがで
きるわけですね。そういう意味で、ストーリー性のある商品をちゃんと提
供すれば、それに同調して買って頂ける方がいるんじゃないか、という前
提に基づいて商品集めをしています。
QVC の優位性は、正確な情報を多くの消費者に伝えられるということで
35
す。ゲストとして設計者、生産者、営業の第一線にいる人など、その商品
を一番よく知っている人が出てお話いただいているわけですから。
もう一つは、店頭で売りこなせないワンランク上の商品。身体障害者の
方が開発した高額なクッションとか、2 万 3 万する化粧品なども、その効
能とかをきっちり説明することによって、
納得して買っていただけるとい
う利点があると思います。
今後の、QVC ジャパンとしては、新たな流通チャンネルの確立というの
があります。TVショッピングはひとつの確立した小売りのツールであると
いうこと。
もう一つは先ほど申し上げた、情報発信機能。商品の開発コンセプト、
生産背景、使用方法なんかもそうですが、そういうものをちゃんと説明す
ることによってお買いあげいただける。
それから、新たな市場開拓。まるっきり新しいコンセプトの商品を持っ
てきたとすると、それを理解するというのは難しい。説明型の商品という
のは非常に増えてますから、私たちのメディアを使ってきっちり説明でき
る。説明文を読んでもわからないが、映像で見たらわかるという人は非常
に多いですから、そういう意味で新たなマーケットを拡大できるのではな
いかなと。この 3 つを目指して事業を進めています。
最後に今の日本の TV の市場規模なんですが、日本の世帯数は約 4700 万
世帯、その中でケーブル TV がサービスを始めようとしている世帯が 2700
万世帯。現状2200万世帯までが、玄関の前まではケーブルの配線が終わっ
ています。現状ケーブルに接続できる世帯が1300万世帯。そのなかで有料
視聴者は 400 万世帯です。
その中で現状のQVCジャパンのケーブルの普及状況ですが、全国159局、
配信世帯数が 400 万世帯、スカパーの 320 万世帯を合わせて 720 万世帯に
配信を行っています。配信契約も順次増えていまして、年内にはあと 100
万で 500 万近い数字に行けるかなと思っています。
36
三田隆嗣氏(まいさいど株式会社プロデューサー)
まずテーブル端末ってナニ?ということですが、運営会社はすかいらー
くでもまいさいどでもなく、ジェイ・シー・エムという会社がやっていま
す。レストランの滞在時間の長さに目をつけ、そこに情報端末を置くのも
面白いんじゃないか、といろんな思惑が一致して、ジェイ・シー・エムが
端末を運営し、すかいらーくに置く。そこへコンテンツをジェイ・シー・
エムが中心になって提供し、まいさいども提供していく、ということで事
業が始まりました。正式な端末名称は「PLUSe」といい、日立ソフトがハー
ドを作っています。
現状、すかいらーくガスト店約 950 店舗の 1 店舗につき約 16 台、合計
15000 台設置されています。ジェイ・シー・エムはすかいらーく以外にも
不二家、ココス、フレンドリーなどにも数台置いていますが、すかいらー
くがほとんどなので実際の内容に関するイニシアチブはすかいらーくが
握っているという状況です。その端末でどのようなことをやっているかと
いうと、コンテンツを有料課金で販売している、もうひとつが広告媒体と
しての利用です。
現在提供されているコンテンツは 100 ∼ 120 個です。これは数が増えて
いくとひとつひとつの売り上げは落ちていくという傾向があるようでし
て、これ以上増やすのか、逆に絞り込むのかというのがいま岐路に立って
います。全国に実際に端末が配置されたのが今年の 5 月 6 月くらいの話な
ので、やっと一通りの状況が見えてきたという段階で、コンテンツの数に
関してもこれから本格的に探っていくということです。
ジャンル数は11個あり、
コンテンツをだいたいいくらで売っているのか
ということに関しては、特に制約は設けていませんで、40円で売っている
ところもあれば 200 円で売っているところもありまして、平均すると 100
円くらいが売りやすい額です。
仕様スペックはOS はWin98、CPU はCeleron の766、メモリーは128、ハー
ドは 60 くらいのスペックです。液晶は 12.1 の TFT、タッチパネル式です。
ネットワークですが、
コンテンツは衛星を使って各店舗のサーバーに落と
37
しています。上りはデータ集計や課金集計しか使っておらず、インター
ネットとはつながっておらず、ローカルで動いています。
トップ画面ですが、
「懸賞」
「プレゼント・CM」というのが下にあります
が、
「懸賞」はタッチパネル式のキーボードが出てきてデータが登録でき
るようになっていまして、名前などを登録しておくと使うたびにポイント
がたまって、後から何か商品が送られてきますよというものです。
「プレ
ゼント・CM」というのは広告媒体用のボタンです。ここは無料でだれでも
見ることができます。例えば、ここにクーポンが当たりますというような
ものを入れておいて、
先ほどのキーボードのタッチパネルで携帯のアドレ
スを入力しておけばそこに送られてくる、というようなこともやられてい
ます。
テーブル端末は面白いんじゃないかとか将来性があるんじゃないかとか
言われていますが、実際はどうなのか。
長所としては滞在時間が長いのでコンビニの端末よりは使いやすいとい
うのがありますし、コンビニ端末と違うのは、グループで来店して、座っ
てみんなで使えるということです。後ほど申し上げますが、家族、カップ
ル、
友だちといったユーザーがターゲットになりやすいというデータも出
ています。
あと、コンテンツの課金がしやすいです。このコンテンツは 100 円かか
りますがどうしますか?と出てきて、
それを押すとレジで食事代と一緒に
精算されますので、
使うときにコインを入れるとかカードを通すとかがあ
りません。それからタッチパネルなのでお年寄りでも使いやすい。
短所としては、衛星の回線での配信なの
でコストがかかります。ですから現在は3週
間に1度しか更新されていません。当初われ
われは情報系を考えていたのですが、3週間
となると情報としてはかなり遅いですから、
非常にネックになっています。またイン
ターネットにつながらないので、配信した
ものをローカルで次の配信まで使い続けな
ければなりません。
あと、店舗の都合で印刷ができません。当初は印刷用の端末を店舗のど
こかに置いて、そこからプリントアウトできるとか、デジカメを置いとい
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て撮ったものをプリントアウトできるという、コンビニ端末のようなもの
も考えていたようなんですが、レストランの通常業務のオペレーションに
支障をきたすということで、実施されていません。
それから、テーブル端末用の仕様というのがタッチパネル式で、なおか
つ課金をするということで、通常Web でコンテンツを提供しているところ
は、そのままそのシステムをテーブル端末に配信することができません。
あと、
肘を浮かしながらタッチパネルを押していくと腕が疲れるという
ことで、操作しにくいということがあります。ですから、情報系に向いて
なく、特に長時間の検索に向いていません。
テーブル端末の将来ということですが、現在売れているのは占いや診断
もの、アイドルの動画・写真などのエンターテイメント系のコンテンツが
中心です。画像がキレイですので動画配信を生かし、例えば音楽などで
「モーニング娘。
」の曲が流れて実際に歌っている姿が出てきて、全部見た
い人は○○円ですよ、みたいな感じで使えます。
我々の方も本当は情報系を流したいのですが、現在は診断ものでWeb の
ものを少しカスタマイズしたものがほとんどです。メジャーな週刊情報雑
誌のコンテンツで花火特集としてクーポンをつけて50円で提供したのです
が、ほとんど売れませんでした。その雑誌のネームバリューをもってして
も、ほとんど売れなかったのです。
携帯電話との連動の可能性ということでいうと、自分の情報を入力する
と、
自分の携帯に情報が流れてくるというような仕掛けをしているところ
もありますが、まだ 1 つ 2 つくらいしかありません。この 1 つ 2 つを見てみ
ても、あまり登録者はいないようです。もちろんそれはコンテンツにもよ
ると思いますので、しばらく様子を見る必要があると思います。
それからスターバックスの無線LANサー
ビスなどとの差別化という点ですが、たぶん
競合相手ではないとは思います。
また、広告媒体の利用価値ですが、音楽や
映画の有料のコンテンツはそこそこ売れてい
ます。ただ、広告「媒体」として考えると、個
人的な感じでは今のところあまり手応えはで
ていないようです。というのは、ターゲット
を絞りにくいからです。TV であれば、番組に
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ヒモ付けでやりますが、テーブル端末は CM ボタンが独立してありますか
ら、ターゲットをヒモ付けしにくく、どのように打ったらいいのかという
のを試行錯誤している状況です。
店舗売り上げと端末とのシナジーということでいうと、
すかいらーくに
端末を入れてどれだけ売り上げがあがったかというデータがないのです
が、特に売り上げが急激に伸びたということはないようです。
実際のデータですが、まず来店者構成(男)では 15 ∼ 19 才、20 ∼ 24 才
では圧倒的に友人・知人と使っています。そして25才を境に利用する構成
が大きく変わってきて、夫婦やカップル、家族などが増えています。
女性の場合は 15 ∼ 19 才は約 50%が友人・知人と利用しています。20 ∼
24才はカップルでの利用が半数を占めていて、
25才をすぎると子供連れの
家族や友人との利用がアップします。
時間帯別に見てみると、17 ∼ 20 時は家族が約 60%を占めていて、20 時
以降ではカップルが 35%、友人・知人が 45%、逆に家族は 10%になりま
す。ですから、20 時を境に利用者が大きく変わっています。
時間帯的売り上げでは、圧倒的に20時以降の売り上げが多いです。です
から、これらのことから考えると、
「19∼24才、カッ
プル・友人・知人、20 時以降」もしくは「25 ∼ 39 才、
家族」このあたりがコンテンツを作る上でのポイン
トといわれています。実際そのあたりをターゲット
としてどんどん増やしていけばいいのですが、一方
レストランとしてはそういう人達ばかりが増えると
いうことを望んでいる訳ではないので、その辺の思
惑をどう調整していくのか、という部分があります。
あと、今コンテンツプロバイダーは50社くらい参加してまして、掲載期
間は平均して 3ヶ月くらいです。これは今の 100 個くらいのコンテンツの
中で、3ヶ月である一定の水準の売り上げをあげないと入れ替わりになる
というのもあって、だいたい 3ヶ月くらいです。
売れているコンテンツは月間で 1 千万円以上いきます。傾向としては、
それだけの売り上げがあるのは占いやゲーム系、エンタメチックな診断も
のなどになります。あと、お子さま向け知育ゲームは爆発的には売れませ
んが、かといってすぐに売れなくなるということもなく、寿命が長いで
す。
40
大野誠一氏
(松下電器産業株式会社 e p 事業統括センター
e マーケティンググループ e くらし担当部長)
今日はepの話をするのは主眼ではなく、
それに関連して個人的に担当し
ているミッションのお話をしようと思っています。
一応簡単に ep について説明しておくと、ep ステーションと命名した専
門のセットトップボックスで、現在 8 万円くらいします。これを各ベン
ダーが ep におさめて、ep ブランドで端末を販売すると同時に、それと同
時に購入者を会員として、完全な垂直統合型のビジネスをやろうというの
が ep というものです。
この専用端末でできることは、BSデジタルとCS110度のデジタルチュー
ナー、そして現状 60 ギガから 80 ギガくらいの専用のハードディスクを積
んでいて、主に動画系のコンテンツを毎日自動的にため込んでいく。その
ためにハードディスク内の20ギガという容量を「epエリア」と称して、そ
こに毎日20ギガ分のデータを上書きするという仕組みを導入しています。
20 ギガですから、通常の地上波並の画質であれば、動画コンテンツを 8 時
間くらい毎日送れます。それをハードディスクにため込んでおいて、ユー
ザーがいつでも見られますよ、ということです。
それから、現状発売しているのは56KのインターネットモデルTCP/IPの
モデムを積んでいて、インターネット接続ができます。そしてそのスペッ
クのセットトップボックスを販売し、会員化し、増やしていきます。
現在 ep 社という事業運営会社は松下、東芝、日立を中心に 46 社の出資
企業が 250 億の資本金を投入して運営を始めていまして、事業計画上は所
有資金MAXを一応500億ということで運営しています。7月から実際にサー
ビスを開始しましたが、CS110 度を使ってデータを送りますので、基本的
には CS110 度を受信できる方の中からユーザーが出てくるわけです。
CS110度の放送系プラットホームはスカパー2とプラットワンの2社があ
りまして、たぶんまだ2社合わせてユーザーは3万人程度だと思います。ep
はこのベースの上でチューナーを利用していただくということで、現状出
41
荷ベースで 5 千くらいです。いろいろと事業モデルの見直しもしています
が、まずは目標を100 万世帯というあたりをプラットホーム事業としての
ターニングポイントとしてがんばっておりますが、
なかなか大変だなとい
うところです。
また、
デジタル放送なるものが今後どうなっていくかという一番大きな
難問もありますし、
通信と放送の融合という非常に難しいテーマもありま
す。これはいろんな利権がからむことで、テレビに通信がうつるというこ
とは一体何なのかということが当然放送業界からは出てきますし、総務省
の中でも担当が違ったりしますので、なかなか大変です。
ここから本題に近づいていきますが、
もう一方で今後のメーカーのプロ
ダクトアウトの要素として当然出てくるのが、ネットにそのままつながる
TV です。これはこの数年来、ウェブ TV をはじめいろいろな取り組みが既
にされてきて、全て失敗しております。その今後がどうなっていくのか、
そしてそこにおけるコンテンツを考えていくというのが今の私のテーマで
す。
なぜだめだったのか少し環境面の比較をしますと、ウェブ TVが 95、6年
くらいに結構華々しく出てきましが、
過去出たものでインターネットにつ
ながる TV というのは普通の TV よりも非常に高く、松下が 5、6 年前に作っ
ていたものも+ 20 万円くらい高かったですね。先日日立から発表された
PDP にインターネット構造がついているものは+ 8 万円です。これがひと
つです。それから、接続環境がダイヤルアップなのでつなげばつなぐほど
お金がかかります。また、TV 向けのコンテンツではなく、あくまでもパソ
コン向けの Web 接続を前提にしていたので、パソコンと同じものを見るだ
け。この 3 点セットでだめでした。振り返ってみれば当たり前ですけど、
簡単にいうと買う理由があまりないのです。
これから出ていくTVは、この3つのうちの2つをほぼクリアしています。
まず地上波デジタルが来年度スタートするにあたり、
地上波デジタルの双
方向機能はTCP/IPのベースの56K以上で行って下さいと規定で決まってい
ます。ですから、これから出ていく地上波デジタルチューナーを積んだTV
は、必ず 56K 以上の速度でインターネット接続できるようになります。そ
ういった機能はほとんどタダで付けられるので、TV の値段が上がりませ
ん。また、モデム接続かLAN接続で出すかはメーカーの自由のようなので、
基本的にこれから常時接続家庭が増えていくことを前提に、
遠からず全部
LAN になると思います。そうすると常時接続で定額制の家庭がつなぐだけ
42
なので、従量制の課金がないということになります。つまり、ダイヤル
アップで通信費がかさむことはないということです。ということで、先ほ
どの 3 つのうち 2 つをクリアしています。
問題は 3 つ目です。今、TV 向けのコンテンツはありません。TV 向けとい
うのはどういうことかというと、ひとつは見た目の問題でいうと、今はワ
イドテレビなので16:9というのがあります。
もうひとつは操作がリモコン
であるということ。リモコンで決定的なのは、ポインティング・ディバイ
スがないということです。ですからケータイと同じように上、下、左、右、
いわゆる十字キーで動かして、ENTER を押すということしかできない。そ
うすると通常のWebページは仮にキレイに映ったとしてもトントンと操作
できないという可能性が高いです。それから、CPU のパワーとかメモリと
かは、値段を上げなければスペックが落ちるということなので、ハード
ディスクを積んでいませんから、フラッシュメモリーで対応します。それ
からバージョンアップというものに対してどういうスタンスでのぞむかと
いうのも、結構大きな問題です。TV は一度買ったら 10 年、とかいわれま
すが、インターネットが10年経たないうちにこれだけ進歩している中で、
テンポよくバージョンアップしていかない端末でよいのか、
ということで
す。というふうに、見た目以上にいろいろ制約があります。
そのような状況の中でTV向けの通信コンテンツというものをどうやって
集めようか。そういうのが私の個人的なテーマです。当然、手持ちのもの
が金に変わるならやってみるか、ということで、少し i モード的なビジネ
スモデルが想定されるかな、と思います。その時は、なんらかのプラット
ホームなりポータルなり、そのような仕組みを提供することが必要なん
じゃないかと思います。
例えば、端末の認証から会員管理、課金回収みたいなスペックを用意す
れば、そういうCP が動く可能性はあるかもしれません。それから、もう少
しフラットなユーザーの視点で考えると、
TVの方が通信サービスに向いて
いるものって何かありますかね?これは松下の中でも何回かヒアリングを
していますけど、まず出てくるのはTV放送に関連する情報が通信ですぐ見
られるんだったらいいかな、という想定ができます。もうひとつはエリア
情報ですね。例えば、お出かけ前にちょっとチェックするみたいな行為に
ついては、パソコンよりは TV のほうがいいかも、という想定が出てきま
す。そんなふうに考えながら、その中でどういうビジネスモデルなり、各
関係企業に対する提供スペックみたいなものをつめていくと、TVを使った
通信サービスというものが、
かつてのウェブTVとは違った形で成立するの
かしないのか、ということを考えているのです。
43
水谷世希氏
(株式会社日立製作所コンシューマネットビジネス推進本部
チーフサービスデザイナ兼プロジェクトマネージャ)
1990 年代は IT 絶好調の時期で、何かしら IT やインターネットに対して
の期待が膨らんできた時代でした。今、話題の竹中さんが「これからはみ
んなパソコンを使えるようにするんだ」とか「パソコン受講券を配るん
だ」といっていましたが「私は何か違うな」と思ったのです。パソコンを
一生懸命勉強してインターネットをやって、というのは直感で違うと思い
ました。当時も盛んにインターネットといわれていました。でもそれを
使って何をしているのですか、というのがちっとも見えてこないのです。
ではどうすればいいか、と考えた時に大きく3 つのテーマがあると思い
ました。1 つ目はブロードバンドでのネット接続が定額で常時接続になら
なければならないことです。これは森前首相も「やっていく」といったの
で2005年には5千万人がブロードバンド接続できるようになる、といわれ
ています。
2つ目はリテラシーというか使い勝手、道具の話になります。しかし、私
には10年後を想像した時に、
パソコンをみんなが使っているというのがど
うもイメージできませんでした。むしろパソコンではなく他の何かを使っ
てインターネット接続しているんじゃないかな、と思いました。今までも
新しい製品が出ては消えています。
例えば TV でインターネットとかインターネットアプライアンス(イン
ターネット専用機器)みたいな話がありました。その「何か」というのを
誰が考えるんだっけ?と思ったのですが、
それは本来メーカーが考えなければなりま
せん。それがメーカーのミッション、使命
だと思います。
3 つ目はもっと本質的なことをいえば
「それでなにをやるの」ということで、これ
が最も重要なのです。ダイアルアップのイ
ンターネット接続だと電話料金を気にして
しまいます。せっかく繋げても早く仕事を
44
終えてダイアルアップを切ろうとしてしまいます。ですからそこで落ち着
いて何かしようと思わなくなります。そこで毎月3千円くらい接続料金が
かかっているとしたら「3 千円で夜中にお父さんが楽しんでいるんだった
らまあいいわ」というくらいでした。ところがこれが常時接続になったら
変わるだろうな、と思ったのです。つまり毎月 3 千円払っているわけです
から、それを「お父さんが帰ってきてからだけ使っている道具に 3 千円払
うのはもったいない」「毎月お金を払っているのに昼間も使わないのは
もったいない」となります。そして「お父さんだけに使わせておけない、
私も使いたい」と言い出すと思ったのです。そうするとインターネットに
繋がるものは書斎ではなく
「リビングに移っ
てくるのだろう」と思いました。そこに「暮
らしの道具として使えるサービス」と「生活
の中に溶け込む道具」みたいなものが入って
きて始めてインターネットが世界を変えてい
く、毎日を変えていくのだろうな、と思いま
した。
では、
「それは一体どうやったらできるのだろうか」
「その時に使われる
サービスはどういうものなのだろうか」
を考えたのがこの実証実験だった
のです。この話を考え始めたのが 2 年前でした。それで実証実験をやろう
と決めてなんとか承認を取り付けたのが2001年の3月くらいです。そして
たまたまお付き合いをさせていただいている管理会社の方に紹介していた
だいたのが、ちょうど 7 月に入居が始まるマンションだったのです。さっ
そく 6 月の内覧会に我々も参加させていただき、各世帯に一軒ずつ実験の
説明をさせていただいてモニターでの参加をお願いしたのです。
そこでは
じめて実証実験をすることができました。
そこで何をやったのかそれでどうなったのか、ということをこれからお
話します。
まず使いやすさを実現するインターフェイスが重要だと思います。
人と
機械の間のインターフェイスを毎日の生活の中で使いたくなるようなもの
が必要だと思うし、
その人その世帯なりに役に立つサービスを提供してい
きたいと考えました。
何かやろうとした時にまずパソコンの設定から始ま
るとそこでみんなこけてしまうのです。
面倒くさいことがあるともう辞め
た、となってしまいます。携帯電話みたいに買ってきたらすぐに使える、
というのが必要です。
45
情報もなるべく身近な話題が必要です。例えばたまには休日に「何かお
いしいお昼を食べに行こうか?」となって「じゃあインターネットで調べ
てみよう」とやりだすと、調べている間に30 分たってしまいます。それで
結局手ぶらなのです。
「いいのがなかった」とね。そうやっていると奥さ
んに「あなた何やっているの」といわれてしまいます(笑)
。
身近な情報がポポーンととれるのがいいのです。例えば今日、近くの
スーパーの特売は何だろうとか、いつも行き付けのレストランのランチは
何だろうとか、そういうことをやっていかないと使えるメディアにはなら
ないと思います。コンテンツの世界でいうと、ブロードバンドといえば映
像や映画とか色々あります。それはそれでいいのですが、そういう事業だ
けを考えていると行き詰まるのです。ユーザーから見れば「結局レンタル
ビデオでもいいや」となって「返却するのは面倒くさいが借りに行くのは
けっこう楽しいし、300 円で済めばそれ
でいいよ」というケースもあるのです。
ですから必ずしもリッチなコンテンツだ
けでなくてもいいと思います。
コマースでいえば「地方の名産が買えます」というのがあります。それ
はインターネットの魅力なのですが、
究極はスーパーの買い物みたいなも
のがインターネットで済んでしまうもの、例えばお米やトイレットペー
パー、ビール1 ケースなど重くかさばるものを奥さんが買いに行くのはし
んどいわけです。車があれば問題ありませんが、届けてくれるにこしたこ
とはないわけです。そういうのがポンと買えるようになって、お金が動き
出すようになると地方の名産品よりも、
毎日のス−パーでの買い物の方が
総額では大きくなるのです。そこではじめてコマースの手数料ビジネスが
成立するのだと思います。
それから家電などのコントロールは、インターネットをやりながら
ちょっとテレビの番組を変えたいな、
という時に手元でピッピッと変えら
れる道具になるといい、ということです。テレビ欄を新聞で見るのではな
く画面上で見て「これ予約」とボタンを押せば完了するようになればいい
です。
そして、世の中全般のグローバルな情報だけでなく「私だけの情報」
「パーソナル化された情報」になってくるというのが必要です。キラーコ
ンテンツは「コミュニケーション」や「コミュニティー」という人の繋が
りです。i モードがブレイクしたというのはおそらくメールであって、少
46
なくともバンキングではありません。
これからはコミュニケーションが重要なコンテンツになるでしょうから
「このインターネットメディアを使ってコミュニケーションができるよう
な仕掛け」さらに「人間同志の暮らしの中での出会いを生んでいく」こと
が重要だと思います。
自分が将棋をやりたいと思っても引っ越したばか
りで相手がいない時「こんなに身近に将棋をやっている人がいるんだ」と
いうことがわかって「今度会いましょう」となり、やがて一緒にやるよう
になるようになるのがいいと思います。
このように普段ならすれ違ってい
たかもしれない人同志が、今までなら何の接点もなかったのにこのメディ
アによって新しい出会が生まれてくると、とてもいいと思います。
この実証実験はすぐにでもやれることをやって、サービスの可能性を検
証することが目的でした。周辺のお店の情報だとか病院・公共機関の情
報、管理組合からのお知らせやゴミの捨て方、交通情報など、それ以外の
ニュースや天気などダイナミックに情報が変わるサイトには、URL を気に
せずに見られるようにリンクを貼りました。また、毎日この画面を見てい
ただけるようにレシピや占い、日替わりのコンテンツなども入れました。
操作は画面に触れるだけで画面が変わり
ます。端末の中に無線LANが入っていて、家
の中ではどこでも使っていただけるように
しました。スタンドもついていますので、好
きな場所に置いて使っていただけます。テ
レビをみながら寝転がったりしてレシピを
みていただいて、そのままキッチンへ持っ
ていってこれを見ながら料理できるのです。
また、私がインターネットや Web を使って感じたことは、スクロールは
普通の人には使いにくいのだろうと思いました。自分がどこを見ているか
わからなくなってしまうと思うのです。
ブロードバンドでは定額料金なの
でページの概念はあまり気にならなくなってきています。
ですからこの端
末はスクロールを全て排除しました。
基本的にページ切り替えにしていて、
この端末はポンと押せばすぐに画面は変わります。それから一画面の情報
量をなるべく抑えました。インターネットの多くのサイトはヤフー型で一
画面にたくさんの情報を盛り込んでいます。しかし人間はマジックナン
バーが 7 とか 8 とかいわれています。一画面に情報がいっぱい出ると、そ
れだけで何を選んだらいいかわからなくなると思います。
ですからこの端
47
末はほとんどテレビのチャンネルの感覚で使えるようにしました。
何か 1 個ボタンを押すと最大 9 個のボタンが出てきます。その中から自
分がこれだ、と思ったものを押していただけると目当てのところに誰でも
たどり着くように工夫されています。コンテンツは我々だけでなく、他の
所にも協力していただいたり、天気、ニュースなどはリンクを貼らさせて
いただきました。
このように使い勝手が良くなってきて身近な情報が入ってくるようにな
れば、みんなもっと使っていただけるだろうし、もっと欲しいと思ってい
ただけるだろう、という仮説をもとに、三ヶ月実験をやりました。アン
ケート、インタビューをしてどうだったかというと、アンケート結果では
9 割の方が使い続けたいと言っています。ここでやったコンテンツは必ず
しも最初に考えていたこと全てはできていません。
かなりスタティックな
コンテンツです。レストランの情報が見られるといっても基本情報だけで
す。今日のランチが見られるわけではありません。まだ不十分なのですが
「それでもみれたら嬉しいよね」
「もっとよくなればいいよね」という期待
感もあると思います。
さらにその内の半分弱の人がお金を払ってもいい、
と言っていただけま
した。相場がわかっている人とそうではない人、コンテンツの中身が自分
の中で膨らんでいる人もいると思いますので一概にはいえませんが。それ
でも 500 円くらい払ってもいいよ、という人、100 円ならいいよという人
がいるのです。
評判がよかったのは我々が用意したコンテンツよりも口コミ的な情報で
す。地元の情報を見ることができるということです。 実際にそれを見て
レストランへ行っていただいたり、
自分では見つけられなかったお店を見
つけたのが嬉しいとか、
現場が後楽園の近くで文学の小道みたいなところ
が色々あるので、何キロで何分くらいのコースですよ、というのも我々で
特集記事を組んで紹介しました。
それからお買い得情報です。ひとつは
Webサイトにチラシ情報を配信しているサ
イトがあって、そことお話をして地元の
スーパーを紹介したりしました。以前、岡
崎さんがお話されていたように、だいた
いチラシをまいたところでレスポンスが
あるユーザーは通常はコンマ数%です。
48
ところが今回は、このような実証実験をやっているということもあったの
でしょうが、数%のオーダーで反応が返ってきました。どれだけ関連性が
あるのかは何ともいえませんが、インターネットが気軽に使えるようにな
ると、通販へ応用するのに何かしらのやりようがある、という期待感が持
てました。
私はブロードバンドということはそんなに重要なこととは思っていなく
て、
むしろ常時接続になってしかも定額で低料金でインターネットが使え
るようになることが大切だと思っています。
そうすると人の暮らしの中に
インターネットがどんどん入ってきて生活が変わっていくのだろうと思い
ます。そうすればこのような道具が必要になってくるのです。すると
ショッピングや通販はどう変わってくるのだろう、というのがこの後の
テーマだと思っています。
49
「0.1%の現実」
不景気になると必ず話題になるのが、マーケティングとセー
ルスの手法です。売れる物、売れる先を考えるマーケティング
と、売り方を模索するセールス。「モノを売ること」に関して、
みんなが悩み出すからでしょう。インターネット、IT、ブロー
ドバンドからユビキタス、情報化社会のキーワードは、次々と
生まれてきます。それに伴い新しい情報伝達ツールが登場して
きました。携帯、P D A から、自動車搭載型、住宅用アプライア
ンス、店舗用情報端と、多様化しています。
新しい道具が生まれたとき、その道具をどの様に利用してモ
ノを売ればいいのか?郵便制度、新聞、雑誌、電話、ラジオ、テ
レビが世の中に普及したとき、モノ売る人々は、知恵を絞って
新しい道具の使い方を模索してきました。そして広告、ダイレ
クトメール、コマーシャルと、当新しい道具でモノを売る方法
が開発され、定着してきたのです。
研究会では、ふたつのテーマを追いかけながら進めてきまし
た。一つのテーマが「今、そしてこれから普及するであろう新
しい道具を理解すること」ともう一つが、店舗を使わず、新し
い手段でモノを売る方法である「通信販売の手法を理解するこ
と」です。この二つのテーマを重ね合わせることで「新しい道
具で物販をするには、どうすればいいのか?」という問題の解
が少しは見えてくるだろうと仮説を立てました。
新しい道具として
●PC
●インターネット接続可能な携帯電話
●テレビのデジタル放送
●ファミリーレストランの卓上設置型情報端末
●マンション、
一戸建家屋用情報アプライアンス
を取り上げました。
売り方「通信販売」に関しては
52
●単品通販
●カタログ通販
●テレビショッピング
を対象としました。
研究会を振り返ってみると、あまりにも強烈だった「通販」のノ
ウハウが印象的でした。
新しい道具の使いこなし方なんて後にして、
ギリギリまで知恵を絞ってモノを売ることに情熱を注ぐ通信販売の
人々を、もっと追いかけて行きたいという欲求が溢れてきまし
た。
商品開発から広告宣伝、販売促進まで全て一人でこなす単品
通販。絶対に売れるはずのない 8 万円の掃除機を売ってしまう、
カタログハウスの「通販生活」。製品開発者自らが、視聴者が納
得するまで説明するテレビショッピング。売れない時代にモノ
を売っている彼ら彼女らの手練手管は、注目に値します。マー
ケティングの新手法よりも、I T を活用した新システムよりも、
実際にモノが売れている現象を研究して、分析することがどれ
だけためになるか、痛感しました。
本報告書では、本来研究会の成果を書かなくてはいけないの
ですが、結論はまとめていません。研究会に参加した各研究員
の短いレポートと、研究会に参加していただいた講師の講演録
だけで構成されています。中途半端な結論よりも、この構成の
方が研究会を表現するのに適していると私が判断しました。
各研究員がこの研究会で何を得たのか?研究会から所属する
組織に何を持ち帰るのか?主査としては気になるところですが、
私自身が得たものは、単品通販に関して講師をお願いした岡崎
太郎氏の「0.1 パーセント」という言葉です。
「通販チラシで 1000
人に 1 人注文をとれたら通販が成立する」。つまり、1000 人のう
ち、9 9 9 人が買わない商品でビジネスが成立する現実を現した
数字が 0.1 パーセントです。「0.1 パーセント」が購入する商品
開発と「0 . 1 パーセント」を見つけだす両方のノウハウを、あ
なたは、あなたの組織は持っていますか?研究会に参加すれば
良かったのに。
53
ソフト化の研究会に参加して
これからはネットの時代で、
お客様はインターネットで
「商品」
「所
在地」
等を調べて店舗へ来店するようになるのではないか。
または、
ネットで直接商品の購入をするようになるといわれ、
我々としても
積極的にこちらから仕掛ける方法はないかと悩んでいたときに、
デ
フレ時代のものの売り方を研究するという話を聞き何か仕事の参考
になるのではないかと思い参加をしてみました。
まずモノの売り方はいろいろあるということを認識させてくれま
した。モノを売るチャネルとしては、店舗販売と無店舗販売いわゆ
る通販程度位しか認識がありませんでした。
講師をしていただいた
各氏からお客様と商品をつなぐ方法として無店舗販売、
カタログ販
売、TVショッピング等のお話をいただきました。売りたい商品の
特性を考え、ターゲットとする年齢層、性別、媒体、また見せ
方、説明の仕方等により売れ方が違ってくるとのこと。
いろいろ聞かせていただき印象に残りましたがその中でも特
に記憶に留め、尚かつ我々でも出来そうな気がしてきた(ただ
しマネで)ものを二点程あげますと、一つはイチゴミルクダイ
エットの話を聞いたとき講師の話し方が上手でしたのでそんな
モノかと聞き流していたが、後で講演録を見直したとき、これ
で食べていこうという頑張りと、妙に細かい計算とで成り立っ
ており又 CPR、CPO なる言葉も教わりました。取り組む姿勢とア
イデアにより何とかなりそうな気分にしてくれました。
もう一つはカタログ通販の話で、普通は無料のカタログの中
で写真同士を比較し購買させるものから、誰もやってない有料
でかつ単品訴求による商売の試みに驚きを感じました。
一般にものを売るときは安いとか逸品であるとか、
そのもの自体
の特徴を強調して販売することが多いと思いますが、
彼らは劇場型
といいますか、
その商品を手に入れることによる心の満足のような
ものを追求しているのではないでしょうか。
我々の会社は着物を中心とした小売業です。着物を販売する
54
ときに、こういった情景をお客様に伝えながら販売出来ればお
客様に気持ちよく購入していただけるのではないかと再確認い
たしました。
それでも韓国人が通販で買うわけ
<キムさん何買ったの?>
ソウルの友人・キムさん宅でテレビを観ていると、いや、通
販番組の多いこと多いこと。
「なんだこりゃ? 日本と同じじゃないか」
日本で流れている画像と同じアメリカ人の役者が、ハングル
しゃべってスチームクリーナーを売っている。
で、実際にキムさんは通販で何を買ったかというと、パソコ
ンに携帯電話と、結構重宝しているらしい。
韓国のケーブルテレビ加入世帯数は 3 5 0 万。通販マーケット
は 8 , 0 0 0 億円といわれ、その半分をテレビ通販が席巻し、最大
手の LG 通販の売上高は、2002 年で 2,000 億円に達したともいわ
れている。
<手軽さと破産リスクの間(はざま)で>
通販に欠かせないモノといえば、クレジットカード。韓国人
はカードが大好きだ。2 0 0 1 年の統計では、国民 1 人あたり 4 枚
のカードを保有し、使用額は国全体で 4 4 兆円に上った。
韓国のネット上カード決済システムは比較的安全だ。カード
番号に加えて、住民登録番号(出生時に全国民に付与)を入力
する必要があるから、他人のカードの不正使用は結構難しい。
こうしたシステムセキュリティ面と、行政がカード利用額に
応じて税金を控除したり、カード会社が緩い審査基準で若者に
もカードを大量発行したことで、カード使用額は 9 8 年以降急激
に伸びはじめた。
――おおっ、韓国経済の V 字回復の理由がわかったぞ!いや、手
55
放しで喜んでばかりもいられない。当然のことながら、韓国は
今、カード破産者の急増が深刻な社会問題になっている。
<韓国の通販事情を見る限り……>
「破産しそうだろうが買う人、たくさんいるよ」キムさんも、
こんな韓国の「プラスチックバブル」ぶりを嘆く国民の一人だ。
「ブームが来れば、とことんまで行ってしまう " ケンチャナヨ
(大丈夫)文化 " の悪しき一面だ」と彼は呟いた。
――余談はこれくらいに。
大ブレイクした韓国の通販ビジネスは、必ずしもネットやテ
レビのマス宣伝力だけで拡大したわけではない。
逆に言えば、ひととおりモノが普及した日本で、純粋にネッ
トの力だけで新規顧客にブランドを周知させ、通販で購買につ
なげていくには、韓国政府のカード政策ばりの力ワザが必要な
のではないだろうか。
いや、それでも真の「逸品」はネットを通じて顧客の心に響
くのだろうか……。
ソフト化経済センター「通販に学ぶデフレ時代のモノの売り方
研究会」に参加して
研究会への参加を通して、カタログ販売、テレビショッピン
グ、通販におけるモノの売り方の手法、特に広告の重要性につ
いて考えるようになりました。
私は月に数回、会社の本社がある大阪へ出張しますが、その
際飛行機や列車の座席においてあるカタログ通販の小冊子を必
ず見るようになりました。また周囲のどれくらいの人が目を通
しているのか気にするようになりました。そこで気が付いた事
は特に飛行機に乗っている人が通販の雑誌に目を通す人が多い
と思います。大抵座席の両隣の人は目を通しています。この理
由を考えてみると、一つには飛行機では電子機器の使用が制限
56
されており、CD や MD を聞くことができないためであり、また荷
物を収納しているため本や雑誌を片づけにくいため、時間をつ
ぶす手段として、機内誌に目を通す人が多いのではないかと思
います。
研究会のなかで一番印象に残ったのは、岡崎太郎氏の講演で、
単品通販と総合通販の違いや単品通販の利点、ただし売り上げ
を伸ばすためには単品のアイテム数を増やす必要があることや
常に顧客を飽きさせないための商品開発が必要であるという点
がモノの売り方を考える点で印象的でした。単品通販と総合通
販のどちらがよいかとは一外にいえませんが、売り上げや規模
の拡大を目指していくと、どうしても総合通販になっていくよ
うに思えます。
単品通販の強みの部分で経費が節約可能であるという点は、
私の勤務している会社が物流業ということもあり、特に実感が
わきました。商品とアイテム数が増えると専用の保管場所が必
要であり、また細かく商品を管理する情報システムも必要なた
め、物流費が増加するからです。逆に言えば、成長している単
品通販企業で自社では商品を管理仕切れなくなっている企業が
当社の営業ターゲットになりえます。物流専業者の仕組みや施
設を利用して、効率的に物流を運営できるからです。
今後通販関係の企業に営業をする際は、この研究会で得た通
販に関する知識やニーズ等を踏まえ仕事に生かし取り組んでい
きたいと思います。また、通販広告の構成や顧客に対するア
ピールの仕方等は、営業の提案書を作成する上で共通するとこ
ろがあり今後取り入れていきたいと思います。
ソフト化経済センター「通販に学ぶデフレ時代のモノの売り方
研究会」に参加して
「実務に通じた人の話は、やっぱり説得力がある」…これが研
57
究会に参加して感じた事です。
この実感は第一回の「問題提起(亀田さん)」から始まり、多
くの講師の方々、そして研究会のメンバーの皆様に至るまで一
貫していました。更に申し添えれば、「スピードがある」という
ことも感じました。とにかく「テスト・マーケティング」に躊
躇しない。貪欲に吸収する。
研究会の席は勿論のこと、その後懇親会でお話をさせていた
だくと私ごときの貧しい知識・知恵さえ " ガバッ " と食われて
しまうような感じがしていました。何だか「世間知らず」を露
呈させているような話ですが、素直な感想です。
話が前後しますが、私はこの研究会の存在を久米繊維工業の
久米社長の「縁尋奇妙」で知りました。百貨店情報システム部
の「I T 素人責任者」として、多くのことに行き詰まっていた時
でした。大手システムベンダーに煽られ、部内のメンバーの言
葉に翻弄される中で「売場とは!」の一点張りで仕事を進めて
きていた自分にはいつも「怯えと売場業務への郷愁」が巣食っ
ていました。そんな状況の中で「個人参加」を申し込ませてい
ただき、今日を迎えています。
結果はどうだったか…?…冒頭の言葉「実務に通じた人の話
は、やっぱり説得力がある」と感じつつ、「沢山の引き出し」を
作らせて頂きました。勿論オフレコの話も多かったわけですか
ら「守秘」であり「表現を変えて」引出しから小出しにしてい
るわけですが…。
これから発表会に向けて仕上げの段階に入っていきますが、
何とか足手まといにならないよう、微力を尽くしていこうと思
います。同時に、こういった場を求めている人は世の中に沢山
いると思います。私達の発表内容がそういった方々との「接ぎ
穂」になれば、その結果として「ソフト化経済研究センター」が
さらに活性化されるといいなと思っています。
皆様、ありがとうございました。
58
「通販」研究会に対する感想
主査の亀田さんからお誘いを頂いた当時は、大胆にも「情報」に
対してWeb上で課金する生活支援情報サイトサービスを親会社の新
規事業として企画、運営しており、販売というマーケティングを勉
強する意味では、とても勉強になる研究会であった。
ただ、残念なことに研究発表を行う前に事業の方が先に終了
してしまい、実践で役立てることが出来なかった。
研究会のなかで、特に参考になったことは、下記の 2 つの講
演、見学会である。
1 .「通販生活」について・・・須川さん講演
無料が当然と言われていたカタログを有料化していくうえで
の戦略、苦労話は当時手がけていた新規事業を企画する上でと
ても参考になった。
特に情報に対して自分たちの価値観をぶつけそれを前面に押し出
すことにより、
付加価値が付き差別化ができるといった内容にとて
も感銘を受けた。
2.「TV ショッピング」について・・・QVC 社の見学
実際の撮影現場とそこに付随するインフラ、システムの仕組
みを見学できたことは、W e b ビジネスをやる上でとても参考に
なった。
特にリアルタイムで消費者の動向を把握し、生中継の現場に
その情報を伝えまた物流システムにも直結する仕組みは、I T な
らではの醍醐味であった。
また、
中間価格の商品に対する説明がデパートや小売の現場で行
われていなく、その部分でのニーズが多いこと、また、PCを扱えな
い40歳後半以降の方のニーズが多いことなど新しい市場を垣間見た
気がした。
以上の 2 つが実業にとても参考になり、今後のマーケティン
グのヒントになるべく機会であった。(ただし、今は親会社に戻
59
りまったく違う仕事に携わり残念であるが。)
通販といっても様々な媒体があり、その媒体ごとの特徴、効
果を生の声として聴くことができ、その幅広さ、奥深さを実感
することが出来た。
最後に、私にとってもっとも貴重なことは、今回の研究会で
同席させていただいた仲間と出会えたことである。
2005年の通販ってこんな感じ?
お日様がまぶしい。日曜日ということもあって朝寝坊をした
ようだ。リビングに降りてみるとすでに誰もいない。いつもの
ソファーに腰をおろすとテーブルに見慣れぬ端末が。ノートパ
ソコンのようにも見えるがキーボードは付いていない。手に
とってスイッチを入れてみると「日下さんこんにちは」と画面
に出てきた。どうやら私専用の内容のようだ。端末には他にス
イッチらしきものは無い。操作は画面を直接触れば良いらしい。
とりあえず「テレビ」というボタンに触れてみるとリビングにあ
るテレビの電源が入った。
ちょうど地方の特産品の紹介番組をやっ
ており、私の好きな松坂牛の紹介をやっている。
「これはうまそう
だ!」思わず舌なめずりをした。と、手に持っていた端末にも
番組と同じお店の紹介記事が。なるほど番組と連動していて、
ここで注文すれば直ぐに買うことができるのか。値段も手ごろ
だ。思わず「注文ボタン」を押してみる。予め私の住所などは
登録されているらしく、面倒な入力は必要ない。注文内容とお
届け先を確認して確認ボタンを押す。明日の夜には松坂牛が堪
能できそうだ。
ところで家内はどこへ行ったのだろう。
そろそろ昼ご飯の時間だ
が…。ふと端末の画面を見ると「デリバリーピザ、今すぐお届け」の
文字が。ホタテと蟹の海鮮ピザか、どんな味なのだろう。試してみ
るか。と、「注文ボタン」を押してみる。簡単なものだ。
60
しばらくして届けられたピザをほおばりながら先ほどの端末
を弄ってみる。面倒な操作は必要なく、見たい記事に触れるだ
けで内容をより詳しく見ることができる。雑誌のページをめ
くっている感覚だ。しかも内容は私の趣味に合わせてあるよう
だ。先ほどから出てくる記事は興味のあるものばかりだ。
「革靴の特売!」そういえば雨の日にもはける革靴が欲しかっ
たんだ。なになに通気性は抜群、水溜りもへっちゃら。そうそ
う、そういうやつが欲しかったんだ。商品紹介には利用者の体
験談も投稿されているから一層のリアリティがある。あと 3 足
しか残ってないじゃないか。あまり悩んでる時間は無さそうだ。
と、「注文ボタン」を押す…。
◇本日のお買い上げ
・ 松坂牛 5000円
・ ホタテと蟹のピザ 1800円
・ 雨の日も履ける革靴 17000 円
・ のんびりした日曜日のひととき priceless
通販の舞台裏ってこんなに簡単なものじゃないってことは研究会
に参加してみてよくわかりました。でも、そのうちこんな時代が来
れば一層通販市場も広がるのでは。
インターネットと通販の出会い
にはまだまだ大きな可能性が秘められているようです。
ソフト化経済センター共同研究会に参加して
私がソフト化経済センターの共同研究会へ参加したきっかけ
は、「 デメ研亀田」(さん)という人がどんな実在する人物である
か?という興味からに他ならなかった。
この「デメ研亀田」
(さん)という人物の存在を知ったのは、
ソフト
化経済センターの研究員である久米繊維工業の久米社長のメールマ
ガジンを購読するようになったのがきっかけである。
この久米社長のメールマガジンの中で、時にはまじめに、時
61
には?と考えてしまうような話題の仕掛け人が「デメ研亀田」(さ
ん)という人物であった。。。
今、思うと人との出会いは不思議である。久米社長と出会っ
たのもある方が研修会の講師として久米社長をある組合の研修
会にお迎えし、そこでお話をお聞きしたのがきっかけである。
しかし、ソフト化経済センターの亀田先生の共同研究会に参
加して、当初のなぞは深まるばかりである。。。
あるときは怪しい九州の通販青年実業家を連れてきたかと思えば、
カタログ通販の神様を連れてくる。。。うーん判らない。どうし
てそんな繋がりがあるのか?この「デメ研亀田」(さん)という人
はなんなんだろうか?
共同研究会は終了に近づいているが、まだ当初の目的は達成
していない。しかし、共同研究会に参加しての副次的な効果は
たくさんある。それは通常の会社での仕事では合うことの出来
ない様々に人達と会話を交わし、同じ方向を見ることが出来る
事である。
そう、既存の枠を越えての繋がりがもてた事がソフト化経済
センターの共同研究会に参加しての一番の得たものだろう。。。
そこに「デメ研亀田」(さん)とソフト化経済センターの本質があ
るような気がします。
ソフト化感想文
この共同研究会を参加して感じたことは、研究テーマが、自
分の専門分野と離れたものだったことから、普段、仕事では出
会うことがないであろう方々と知り得たことです。
その結果、自分自身にとって刺激になりました。もともと、この
研究会を選んだ理由が、異業種分野をふれることで、見識を深めた
かったこともあったのですが、
自分が思っていた以上だったことに
自分自身驚きを感じています。
62
また、研究テーマが「通販」で、今まで通販を利用したこと
がなかったことから、単純に通販の仕組み(売る側、買う側)が
知りたかったのもあります。
講義、ディスカッション、施設見学など、いろんな角度から
研究していく中で、「通販ってなかなかオモシロイ」と思い始め
るように。
私の友人で通販大好きな方がいるのですが、本人曰く、きちんと
カタログを読み、しかも、繰り返し読むそうです。その上でやっぱ
り気になったものは購入してみる。
その繰り返しだそうです。
この友人の話を聞いて、研究会でも話にあった「商品をきちんと
説明してお客様に理解してもらう事が一番」ということと同じ
であると思い出し、共通点を見つけたようで何故かうれしかっ
たりもしました。
最後に、研究会を通してみると、分からないことばかりで戸
惑うことが多々ありましたが、その反面、普段の仕事からでは
身につくことが出来ない事を感じ取ったような気がします。
また、異業種の方と交流が出来た事が財産になったのではな
いかと思います。
日本には色々なモノの売りかたがある。今の世の中を眺めて
みると、どうもアメリカ育ちのマーケティング的合理的効率的
なモノの売りかたのほうに眼が行きがちだ。
でも日本って結構モノの売りかたではたいしたものなんじゃ
ないかと思っている。顧客をセグメンテーションしてロイヤル
カスタマーを云々...。「ほうほう。でもそれってお得意さんっ
てことだよね。昔からやってるじゃん。」例えばそんな具合だ。
アメリカでは、
売りかたを学術研究の対象としてオープンにして
きた。それに対して、日本は、商売の知恵として代々受け継ぐもの
として大事に育んできたといえるのではないか。そしてその売
63
りかたの知恵は、さらにしなやかな発展を遂げて、いま元気な
企業の中に見事に息づいている。だから、売りかたの先端を知
ろうとすれば、もっともらしいカタカナ題名の本やその道の権
威に聞くのではなく、売りの現場の人たちに話を聞くのが一番
なのだ。
で、この研究会である。ソフトで逞しい売りかたの先端現象に多
数触れることができ、
わたしは目からウロコがいったい何枚落ちた
やら。モノが売れないといわれているこの時代、ちょっと目先を変
えるだけで、
すごいヒントを得ることができる。
そんなことからも、
日本は捨てたもんじゃない、いやそれどころか、全然心配すること
ない、
とさえ思わせるくらいのインパクトがこの研究会にはあった。
悩んだあげく、
外資系のコンサル会社などに助けを求めたりすると
きは終わったのだ。
ソフト化経済センター研究会に参加して
私は入社17年目で、
入社以来おもに総務・経理部門に在籍し、
社
外の方との交流があまりなかったこともあり、
モノの見方が社内を
基準とした尺度となって、
考え方が凝り固まっておりました。
今回、
月に一度ではありますが研究会に参加し、
亀田さんをはじめとして、
文字通り非常にソフトな考えをされる、
頭の柔らかい方々と交流で
きたことは、
私にとっては良い経験であったと思います。
今回、
「通販に学ぶデフレ時代のモノの売り方」
というテーマを選
択したのは、冒頭にも書きましたが、営業の経験がまったくなかっ
たため、モノが売れない時代に売上を伸ばしている業界に興味を
もったからです。講師の方々の話を聞いて、モノを売るということ
は、いかにして消費者に思わずそのモノを「欲しい」、
「買いたい」と
いう気にさせるかであり、
通販業界が売上を伸ばしているのは、
スー
パーにもコンビニにもないものを扱っているからではないかと思い
ました。その気にさせる売り方、他で扱ってないモノを考え出
64
すには、やはり柔軟なすなわちソフトな思考が必要なのだと思
いました。
最後の発表会のテーマが「ソフト化経済センターを通販で売
込む方法」とは想像できませんでした。これこそまさにスー
パーにもコンビニにもないものです。私はてっきり「何故通販
はこの時代売上を伸ばしているのか」または「売上を伸ばす秘
訣は何か」といったことをまとめて発表するものだと単純に考
えておりました。さすがソフト化経済センターと思ってしまい
ました。
最後に、研究会の後の懇親会において、社内に居ては絶対に得ら
れない業界の色々な情報を聞けたことも貴重な経験でした。
最初に「通販」と聞いた時には「なんで?」という印象が強
かったのですが、主査の亀田さんのお話を聞くうちにぐいぐい
興味を引かれていきました。前半の座学で講義をいただいた、
数々の通販の達人のお話はとっても刺激的でした。
その特異な半生が赤裸々につづられた経歴書でいきなりノッ
クアウトされてしまったオカザキタロウ氏。コワモテのルック
スからは意外なほどに( ! ? ) 緻密に数字やロジックを追いかける
姿勢に彼のビジネスに対する執念を感じました。
今や定番のように位置づけられた通販生活も、当初は異端児
という位置づけからスタートしていたという、須川さんの通販
生活立上げからのお話。エネルギッシュな編集作業のエピソー
ドに情熱を感じました。
遠足気分で見学した幕張 Q V C では、ちいさな地方局もビック
リの放送設備のクオリティと毎日 1 7 時間の生放送!のバイタリ
ティに圧倒させられました。スポット参加のビッダーズ南場さ
んが別の取材もクロスさせて、多忙を極める姿がかっこよかっ
たです。
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それからケータイジャーナリストの三田さん!インターネッ
トのビジネスをこれまで想像もしなかった視点から見せてもら
いました。具体的な数字も含めた説得力のあるレポートでした
が、驚きの連続で怖いくらいでした。
などなど、思い出せばキリがないほど、「通販」を切り口にこ
の研究会では多方面に渡って、自分にとっては新鮮なお話しを
たくさん聞く事ができました。また、これらの講義を受けての
自分たちのビジネスの検証などの活動も、新しい視点から自分
のビジネスを見つめ直す事ができ、興味深いものとなりました。
そしてなにより、この研究会を通して知り合えた方々!メー
リングリストでも楽しくやり取りをさせていただきましたし、
それ以上に研究会後の懇親会が楽しい時間でした。さて、この
原稿が冊子になる頃には結果の出ているだろう発表会はどう
なっている事やら。打ち上げで通販研のみなさんと美味しいお
酒を酌み交わしている姿を想像しつつ!
通販の手法はそれを応用することによって私たちが学ぶべき
ことはたくさんあり、ヒントが隠されていた。例えば広告を出
す時期のタイミングやチラシの文言、手元に商品が届いて梱包
を開けた際に消費者が一番最初に見るチラシの見せ方、価格の
高い理由や安い理由。付加価値の説明、その商品やサービスを
提供するに至ったストーリーを消費者に伝えることなど・・・
通販は商品のターゲットを誰にするか、によって広告媒体や
アプローチの仕方まで全く変わってきてしまう。私たちが普段
何気なく目にしている広告や商品は、全ての人が目にしている
わけではないし、見たとしても関心がなければ気にもとめない。
もし目にして心が動かされれば、その人は選ばれたわけだ。通
販は非情にセグメントされた業態だと思う。
そしてこれからも、このモノが溢れかえっている、豊かな日
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本でターゲットを絞り込むことは大切なことだと思う。人々は
最低限欲しいものは手に入れてしまっている。それでもみんな
が何かを探し求めている。おびただしい情報が氾濫している。
そして不要な情報が多すぎる…
それは他の商品やサービスを提供する全ての企業にも当ては
まると思う。これからは「【あなたのために】この商品やサービ
スを用意しました」と、消費者に伝わらなければならない。そ
んなメッセージが必要なのだ。そのための努力をしない企業は
マーケットから淘汰されていくだろう。
そして何よりも第一線で活躍中の講師の方や各研究員が実践
していることや成功例・失敗談など、お互いが話し合い議論で
きたことが貴重だった。これは今後、体験した人にしかわから
ない大きな財産になることだろう。
最後に研究会で講師をしていただいた方、研究員のみなさん
に感謝いたします。
事務局という立場ではあったが、いろいろな意味で勉強に
なった。
出向元のすかいらーくは料理を作って売る商売である。売る
という意味では通販と共通項が多く、実に多くの点で参考に
なった。
まずは、九州の単品通販の話。チラシの作り方、まき方、評
価の仕方等の話は、私たちにも応用できそうだ。特に弊社は全
国に店舗展開し、店舗ごとの商圏で商いをしているので、作戦
的にもチラシのまき方は重要である。集客度、あるいは新商圏
進出にあたっての認知度アップにも大きく影響を及ぼす。
次に、
各種インフラについても貴重なお話をたくさんいただいた。
一番面白かったのはケータイの話。
私たちにも絶対に役立つ話であ
る。特に、ルームサービス(宅配サービス)が弊社の中で比重を増
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している中で、いつでもどこでも顧客にリーチできるケータイ
電話は魅力的である。
そして何よりも主査の亀田さん、多彩な講師陣、そして精鋭軍団
の研究員のみなさまとの触れ合いが、何ものにもかえがたく、そし
て楽しかった。時には冗談チックに、時にはオフレコ的に、また
ちょっとした事情で寂しかった私を合コンにまで連れて行っていた
だいたりもした(笑)
。
至らない事務局で、
みなさまの役に立つどころか助けていただい
てばかりでしたが、いつの日かこのご恩を返せるように、もう一年
ソフト化経済センターでがんばっていきたいと思います。
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主査 亀田 武嗣(
(株)デジタルメディア研究所主任研究員)
吉井 宏治(サカタウエアハウス(株)物流システム研究所)
加藤 猛(
(株)さが美 ec プロジェクト部長)
中森 晴海(
(株)三省堂書店ネット事業部課長)
濱田 博(昭和リース(株)渋谷支店)
川島 祥一(
(株)ナムコ事業開発グループ)
鳴川 正一(ニフティ(株)CS 推進部)
水谷 世希(
(株)日立製作所コンシューマ
ネットビジネス推進本部プロジェクトマネジャー)
三田 隆嗣(まいさいど(株)プロデューサー)
福江 加寿美(三谷産業(株)人事部人事課)
柳澤 修(三谷産業(株)企画本部)
大久保 篤(アイケーシー(株)東京支店
マーキング事業部企画開発室 / 特別個人会員)
柿本 茂(
(株)ダイヤモンド社新事業準備室 / 特別個人会員)
佐藤 治夫(
(株)東武百貨店情報システム部部長
/特別個人会員)
柳 晃(新日本石油精製(株)根岸製油所総務グループ
/ 特別個人会員)
櫻井 栄一(
(株)ミクニ危機管理質室長 / 特別個人会員)
事務局 納谷 聡(
(社)ソフト化経済センター)
相澤 拓也(
(社)ソフト化経済センター)
※所属・肩書きは 2 0 0 2 年 6 月現在
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