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ROSEリポジトリいばらき (茨城大学学術情報リポジトリ) Title Author(s) Citation Issue Date URL アイルランド英語研究小史 松岡, 利次 茨城大学人文学部紀要. 文学科論集(8): 9-34 1975-03-26 http://hdl.handle.net/10109/8882 Rights このリポジトリに収録されているコンテンツの著作権は、それぞれの著作権者に帰属 します。引用、転載、複製等される場合は、著作権法を遵守してください。 お問合せ先 茨城大学学術企画部学術情報課(図書館) 情報支援係 http://www.lib.ibaraki.ac.jp/toiawase/toiawase.html アイルランド英語研究小史 松 岡 利 次 アイルランドで用いられている英語の方言に関する研究は,方言研究に一般 的に見られる発達段階一一1.文学作品における軽蔑的使用,2古物・珍物とし ての興味・収集,a事実としての記録,生近代言語学の手法を用いた体系的な 記述}}を確かに踏んでいる。しかし今までの研究には,アイルランド英語が 一言語の古形(archai sm)残存ではなく,二言語のシンタ。クスにまで及ぶ 接触であるという特殊性の明確化が,また,記述上の理論的裏付けの獲得が未 だなされていない。この小論は以上の点の一貫した検討を目的とする。 研究成果をたどる前に,方言研究という特殊性を考慮して,その方言の基本 的性格とその方言の外的な歴史を概観しておく必要があろう。 1.アイルランド英語の基本的性格 アイルランド英語はIrish English, Anglo−Irish,Hiberno−E㎎Iish 、 ニいう三つの呼称をもっている。(1A㎎10_Irishが一番よく用いられてき たものであるが,この術語は意味があいまいで,アイルランド英語に関する最 も包括的な研究・4π9♂0−∫γZ3ん1九αん06げ万0γ6んRo300那η0πを書いて , いるP.L. Henry自身,“A L、inguistic Survey of Ireland ; Preliminary Report”に三つの意味の可能性をあげている。(1)Angloに アクセントがあり,第二要素がそれを修飾。(2) Irish にアクセントがあり, 第一要素がそれを修飾。(3)A㎎Io−Irish tradeのように同じアクセント で交互的な場合。Ro80那ηoπ は必らずしも(1)ではなく,この“Survey”も どれにあたるかはっきりは言えない。むしろ“Survey”の結果によりどれで あるかわかるであろうから,とにかく(3)の意味で使って澄くとしている。 Hibemo−E㎎1ishというのは最近の呼称で, Anglo−Iri shの腕曲的な ● 0 P0 表現(2であると同時に上記のあ瞭いさを除去してE㎎li町にアクセント を澄きHibernoがそれを修飾する形をとろうとしたものである。 Henryはアイルランド語の要素が強いか,英語の要素が強いかは“Survey” ‘‘ フ結果わかるであろうと言い・またA㎎lo−Irishのことをianguage in the making㎝such a vast scale”(3と言い, J. M. Synge などの 英語を(2)のアイルランド語の要素の方が強い方にしているが,「英語」の一変 種(vari e ty)〔4であることは間違いなく,音声・語彙・統辞いずれの面から見 ても「アイルランド語」の一変種とはどうしても考えられない。従って,アメ リカ英語に関してMard【wardtがMεn6kenの7ん8痂6γ乞oαπ1απ卯αgθ とKraPPの 7マん¢Eπψ3ん五απ9財μ9θ編肋8幅oαを折衷してAmerican E㎎h。hとした(5のに伽,またC。調i㎝E㎎h,h, Au、t・ali・n E㎎一 1ish, Indian E㎎1ish等の合成語の構成と一致するので, Irish Eng一 lishとして統一してよいと考える。 ただし上記の変種全部に共通するような性格が必ずしもあるわけではない。 他の変種の第一要素が地域をさすのに,アイルランドの場合はIrish一の意味 は地域名とそこの在来の言語名が含まれうるのに注目すべきである。アメリカ 英語はシェークスピア時代の英語を基盤にして,いわゆるmelti㎎potとし て,フランス・ドイツ・スペインその他各国からの移民の言語から多くの借用 、 語を得,さらにアメリカインディアンからの借用語(地名・缶暖・動植物相等) を加えた。オーストラリア英語は原住民からの動植物相等の借用語が多いだけ。 スコットランド英語はScottish Gaelicからの影響は語彙面にあるだけ で,NorthumhriaDから続く北部方言の浸透の名残が強い。一方アイルラン ド英語の場合は借用語あるいは古語の残存という語彙レベルだけでなく,統辞 のレベルでも在来語であるアイルランド語の影響(6がみられることである。言 語が接触する場合,語彙・発音の影響は強い(7が,統辞のレベルでの影響は極 めて少ないという一般言語現象からみると,アイルランド英語は特殊な存在で あると言えようチ8 2 アイルランド英語の史的環境 21.ノルマン人の侵入 1166−72年にかけて,ノルマン人がイギリスを経てアイルランドに侵入 松 岡:アイルラソド英語研究小史 11 してくる。アイルランドに診ける英語の歴史はこの時点にはじまった。その ・ 100年前,William, the Duke of Nomlandyがイギリスを征服,ノル マンデイに加えてイギリスの王になっていた。ヘンリー一世・ヘンリー二世と 経るまでは,征服者の第一国語であるフランス語が社会支配の場面である政治 ・商業上の主要語であったので,フランス語は上流社会のことばとして盛んに 学ばれ,用いられる。しかし,一般の農民は英語のみを用いていたし,侵入後 そのままイギリスに留まったフランス人・フランダース人等も多く英語民と同 、 化していった。このような言語状況がほぼ定着した頃,イギリス人であり,ノ ルマン人である民がアイルランドに移民してくることになる。 被侵入国のアイルランドはまた別の言語圏であり,侵入によリアイルランド 語・英語・フランス語が入り混じることになる。ノルマン人が入る以前にもデ 一ン人の侵冠,ノルウェー人の侵略などがあいついでいたが,これらは広範囲 にアイルランドに定着することはなく,ただ海岸地帯にいくらかの移民が入っ た程度であった。 2.2 中世紀の言語事情 アイルランド語と英語とフランス語とそれにヨーロッパの他の国と同じよう に,書きもののためのラテン語という四つの言語が並存するが,E. Curtis, “Spoken Languages in Medieval Ireland,”56協初3(1919)による @ (9 ニ,アイルランド語は全般的に使われ・英語は移民の力に応じて地域的 にも 階級的にも浸透して行き,フランス語はイギリスの場合のように政治・商業の 場面で,しかしより限られて使われていた。その中でアイルランド語と英語の 関係が問題になるが,植民者はイギリスの被支配階級であり・イギリス系はも とより,ノルマン征服によリイギリスに移住した者でもこの頃までには多く英 語を使うようになっていたので,彼らは英語のみを持ち込んだことになる。従 って,初期の英語人口は植民者のみであるが・しばらくすると・地主として入 ったイギリス人が被支配者であるアイルランド人に英語を習うことを余儀なく させる。侵入後この形にそっての英語の力が特にDubl in・Dmdalk, D ro9一 ㎏da, Athenry, G alway等の町で強くなった。 しかし_方では,民族間の婚姻(10により植民者がアイルランド人に同化して 行く過程もみられ,実際にはこの同化が次第に進み・14世紀になると言語゜ 風俗習慣いずれに澄いても同化状態ができあがる。こうして中世紀の英語の残 12 1 カは極めて限られた形(WexfordのFlorth and Ba−gyに18世紀まで残っ ていたことは有名)でしかなく・イギリスのノルマン征服の時のようなフラン ス語化と比較すればアイルランドの英語化は極めて短期間の出来事であった。 この背景には,イギリスの場合のように血stingsの戦いでイギリス貴族が 殺され,重要な官職はノルマン系が占めたというようなことはなく,アイルラ , , , 塔hの豪族・例えば北のONei11,西のO Comor,東のO By】me, nToolがイギリス系に拮抗する形で残ったという事情がある。社会支配の , 場面でのことばとしてアイルランド語が残ったので,イギリス人がフランス語 を上流階級のことばとしたのと違い,アイルランド語は英語よりも下級なこと ぱであるという感覚が生じなかった。 この点の認識が重要なのは,近世紀になリアイルランド語が次第に滅んでい く過程は・アイルランド人の支配階級の零落の度合と一致していること,即ち イギリスの強力な言語弾圧の効果によるものではなく,むしろアイルランド側 の体制の変化による,アイルランド語人口の減少であると指摘せざるを得ない からである。 2.3,近世紀 中世アイルランド英語は植民者の同化という形で聞かれなくなったが,近世 紀に入るとまた新しい波としての英語が入ってくる。1541年に,ヘンリー八 世がアイルランドの国王でもあることがアイルランド議会で確認された時, Earl of Ormondは集まったアイルランド貴族たち,といってももともと イギリス系・に向ってアイルランド語で宣言する必要があった。このように再 度アイルランド語化したアイルランドに入ってきた新しい植民者は前回とは異 なり・すでにイギリスの中で変化を受けたModern E㎎1ishをもたらした。 近世紀の英語人口の増加の基礎はエリザベスー世及びク・ムウェルの強硬な アイルランド語排斥政策ではなく・むしろ16世紀のチューダー朝とアイルラ ンド豪族との間の政治抗争におけるアイルランド側の敗退(1607年のFIight of Eads)であると考えられる。イギリス人に対抗する力のあるアィルラン ド人の上流階級がいなくなると,アイルランドの小地主たちは率先して英語を 修得しようとする。そればかりでなく一般人民も経済的必要性から支配者たち のことばを知る必要が生じてきた。σ1 18世紀になると植民がより広範囲に行なわれ,英語がそれに応じてアイル 松 岡:アイルラソド英語研究小史 13 ランドの各地へ深く浸透して行く。後半になると,宗教の面では1829年のカ トリック解放令へ向かう神父たちの動きが活発になるが・英語化していた彼ら の活動はアイルランド語の方が強い地域に対してまでその英語化に力を貸すご とになってしまう。1795年にMaynoothに創立されたカトリックの神学校 Royal College of St. Patrickは宗教面での英語の制度化を象徴してい る。その後1831年になってNational Schoolの体制がとられ・教育上も英 語を拡める体制が整った。 アイルランド英語にとってもまた最大の事件である1845年の大飢鰹が訪れ, 15。万人が死亡,、。。万人が移民した.σ2それらの大部分が飢饅の打撃を直 接に受けた貧困階級,即ちアイルランド語使用者であった。 宗教と並んで政治の面でも皮肉なことが続く。アイルランド語復活運動と相 まった独立運動が激しくなり,当時すでに大部分英語化していたアイルランド 人民(1セ向って,(∫Connel 1等の独立運動家はさかんに英語の歌を歌い,雄 弁なる英語の演説を行なった。 このようにして経済的にも,宗教的にも,教育的にも,政治的にも英語が実 質的な第一一国語となる。また残った文学面でさえも,19世紀には政治詩など に幾分の文学活動もみられるが,微弱なものである。このような社会状況では アイルランド語の威信回復は不可能に近いものになる。独立してアイルランド 語が政治及び教育,また一部宗教に澄いて名目上必須のものとして「制定」さ れるまで,アイルランド語は未開発地域のことばであり,教育のない者のこと (14 ホであるようにみなされた。 1946年のアイルランド語人口588,725から1961年の716,420への増加 は,独立以後の政治・教育の場面でのアイルランド語の威信を向上させようと する努力が幾分実ったと言えないこともない。しかしながら,経済面での不必 要性はGaeltacht(アイルランド語使用地域)の人口の減少に反映されている。 (15 3.アイルランド英語研究以前 アイルランド英語の研究がはじまるのは,18世紀からその兆はあるものの, 19世紀になってからである。従って,18世紀までの研究成果の記述はいき おい厳密な意味での「について」ではなく,それ「を使って」の文献をあげて 14 その性格をみることになる。なお,「を使って」は後世の「について」のため の資料の一部を提供する。 a1.中世紀 中世英語の時代と考えればよいが,イギリスの中世英語期は1500年頃まで であるのに,アイルランドでは17世紀に第二波の移民が入ってくるまでであ ると考えなければならない。 この時期,アイルランド語側では伝説・宗教書・家系などの書写が盛んに行 なわれ,storyteHerであり, judgeであり, poetであるfiliたちによっ て韻文・オガム文字・アイルランド語の文法などが教授されていた。13世紀 以降はfi l iよりも下の階級であるBardたちが台頭し, Bα頑05y撹α髭zα乙♂ , V四〇63(16C.∼17C.)を残している。これは作詩のための標準語の文 法書であるbOsborn Berginが適確にこの書の特徴を指適している。“There is little or no theorizing. Sometimes we find t1〕e admirable remark, too often forgotten by modem grammarians,100伽oん6 παoんαzπ6αγ・incorrect b㏄ause it is not used.・”(16それ以前にも, 0’.鯉「窃∠ooπ7y’3 0♂083α3ノ(13C.), L¢oαπ0ん33αγy(15C.),「 c伽oγ6π’30∠038αy(16C.)などの古語を説明した語彙集が残っている。 θ’ アイルランド英語については「研究」と呼べるものは何も残っていないが, 「研究」の意味を最も広範囲に考えて,「について」でなくとも「を使って」 も人れるとすれば,次のようなアイルランド英語で書いたもの,あるいはアイ ルランド英語を使った翻訳があげられる。 a1.1. 14世紀 現存の資料で一番古いとされているものは1300年頃の作とされる The Kildare Poems(17である。16篇の詩すべてが何らかの形でアイルランドの 事物にふれている。内容は宗教詩・風刺詩・バラ・ドなどである。 他に断片的なものとして,Loscombe MSの中の“Virtues of Herbs” (18 ニ‘‘On Blood−1.etting”がある。 末期にはPγ乞伽げL乞∫2という寓意劇が残っている。 3.1.2. 15世紀 松 岡:アイルラソド英語研究小史 15 1422年James Youngによる580γ¢6α5θoγ6加㎜の訳(Jofroi of Waterfordのフランス語版を用いた)がある。この翻訳の意図その他の情報を 含んでいる個所を例にひくと,“And therfore I−chargid Some good boke of gouemaunce of Prynces out of latyn othyr Frenche ilr to you肥modyr Englyshe to㎎e to translate. And for als m㏄he as euer y hame bounde for youre gracious kyndly genti lne sse onto youre comaundenFlent to obey, now y here trans丑ate to you恥 Souerayne nobi lnes the boke of arystotle, P rynce of Phyl osofors, of the gouer皿aunce of Prynces, the whyche boke is cal lid in Latyn Secreta secretorum:that is to Say, the Pryuete of Pryueteis.”(E.E. T. S. ES 74. p.122) この引用にも,過去分詞 に接頭辞i一をつけること(1−chargi d),一人称単数形がichでなくyで ある等のアイルランド英語の特徴があらわれている。 7ん6Eπ9あ3んOoπ9膨86(ゾ1γ¢♂α誕はGiraldus Calnbrensisの E卿g㎜伽∬訪伽加¢ に依ったもので,五っのMSSが残っている。その うち一番古いものはFlurniva11が編集したE.E.T.S. OS l o7にある1425 年頃のものである。前述の5θo雇α5εoγ660搬加の中にも“The E㎎1ish Conquest of Ireland”と“Why Ireland belongs to England”との 二っの章がある。 アイルランドの議会文書としてはオ翌伽碗α∠∫γoηzPαγあα耀π6碗 1)励あπ60丑¢π7y71(1429) にはじまって多くがi残っているが,アイル ㌧ ランド語法は少ない。 その他当時の英語で書かれたものを列挙すると,丁加R¢00πむ0プD泌あπ (」451年まではラテン語とフランス語で,それ以後は英語が用いられている)_ 7んθR200酌げ6ん¢刀面あπ0秘乞掘げ丑f6”加π63(1438年にはじまる 記録)鰻それに15世紀前半のGal wayの法的な記録などとして,0’FII a1Erty, 1αγOo㎜α%g競及び別α肋Fα厩勾R¢oo廊 が残っている。 3.1.3 16世紀 Bo協0∫∬0ω6ん(前述の7Tん6 Eπψ3ん00η9粥360∫1γθ∠α掘も含んで いる)。市の記録として,0α♂ωαyBoo奴1550年頃から書かれる),Boo彦 oプ研α加7プoγd がある。 16 32 近世初期のアイルランド英語 a21. 17世紀 17世紀に入るとイギリスの作家によるアイルランド英語の発音を真似たも のが多く現われてくる。ほとんどが滑稽味を出すために・あるいは軽蔑的に使 われている。特徴の表わし方は子音の場含かなりの点まで一様である。b→p (efry podyes ‘‘evelybody,,)th−→t〔bote ‘‘both’り th−→d(fade r ‘‘ ?≠狽??秩h)wh→f(phoi t“whi te”)w→v〔vi t ‘‘wi t”) s→sh (shoul“sou1”)。例えばBen J onson・7ん61γ魔ん1fα89%θ(1613) のPhair ish te ki㎎?thewolk ish ilI done等々。他の作品として は,Shakesp腸re,丑飢γyグ(MacMorri s),Jonsonには他に万6ω1ππ (1629),Dekkerには0♂伽∬oγ6撚孟麗(1600),∬oπθ36研んoγ¢ (1630)がある。他に∬επη7と同じ事件を扱った作者不詳の五ヴ召oゾ 5乞γノ・航0勧観∠¢(1600),0⑫伽7ん・.5齢吻(1605),7ん・ 〃76♂8ん E加う¢98α40γ(1623),Randolph,∬83ノ.プoγ∬oγL68オy(1652)。 アイルランド人の書いた英語としては,7んε56α招Pゆ6僧の中の断片的 なもの。5初gεげBα”yα”yOα認♂6(CαClare)の話。作者不詳の Tん¢4Pん0γ徳諺0α♂1)加00麗7yoプ7γ¢α80πα尻¢∬α0云乞0π(アイルランドの 歴史的事件を拾ったもので多くのアイルランド語法が見られる)。 Tん¢1γ乞8ん∬嘱訪π3,0γ∬m9α〃協πPγ乞πo¢(1689).作者はJames Farewell of Lincoln’ 刀@Innとされているが未詳である。唯一のFingal一 han(Co. Dublinの中世英語の残存)の資料でもあり, Paleの英語とア イルランド語の知識を持った者の書いたものであることは明らかである。Pale の言語・スポーツ・習慣を観察して,Paleにおける方言の社会的な区別を説 明せんとする。一般に「について」の最初は後述のThomas Sheri danの ノ4Rん¢60幅oα♂0γ㎜παγo∫6ん¢Eπ9あ8ん五απ9膨9¢の中の・へppendixと されているが,むしろこの7加17乞3ん∬協狛π3をそれに考えるべきであろ う。ことばの上からは,現在のアイルランド英語の語法の特徴(アイルランド 語の影響)の一つにあげられている加+4加γ+gerundで完了形を表わす ‘‘ ニいう慣用法が用いられている。Ven dou vas after being dead When you were dead”.また,アイルランド人の多用するGodを使った句・ ‘‘ food rost his Shoul God rest his soul”なども見うけられる。 17世紀後半の作品では,反カトリック教徒感情に満ちた1688年の革命が 松 岡:アイルラソド英語研究小史 17 近づき,アイルランド人が前半以上に冷酷に扱われている。Head,∬加鉱 び力乙q泓飢1663),Howard, Ooηz珈μ¢ε(1665), Shadwe】L 7¢g粥 θ1)z〃θ〃yU682)とz伽γo”β乞go666(1690),作者不詳の7加 κoyα∠1’oyαg飢1690)。他に18世紀にかかるが, Farquhar,7「面π 苑θα∠3U703)作者不詳のB¢α臨’・S6γα6αg峨(1707)。 3.2.2. 18世紀 18世紀にはアイルランド英語「について」語る者が三人現われる。Jonathan SwiftとThomas SheridanとCharles. Macklinである。 Swiftはアイルランド語排斥論者として有名である。“An Answer to Several Letters Sent Me from Unknown Hands”の中で,アイルラ ‘‘ 塔h人を辛辣な表現で描写しながら彼らの言語の排斥を主張する。 the Iaziness, the perverseness, or thievi sh di sposition・ of the poor native Iri sl1・・‘‘SupPosing tlle size of a native’s understanding just equal to that of a dog or horse”‘‘It would be a noble 既hievement to abolish the lrish language in this kingdom” “This wou】d, in a great measure,civilize the most bafbarous among them,,“this uncultivated peopIe fmm that idle,savage, beastly, tllievish manner of life” ‘‘‘‘A Dialogue in Hibernian Style between A. arld B.,,と Irish Eloquence”は当時のアイルランド英語を真似たものである・前者から例を とると,A. Them aples is very good. B. I camαg伽πyou in , 狽?≠煤D A.あord I was bodderd t other day with that prating foo I,Tom.もちろんこれは忠実な筆写ではなく,前掲の文学作品のように アイルランド英語の特徴を幾分誇張したものである。 アイルラシド語法が見られるβ掲麗1γな伽απ(1773)の作者であり, また役者でもあったThomas Sheridanは国語教育・雄弁術の研究家でもあ り,オ0傭卿・∫L・・6膨3・πE♂・曜乞・π(1762)や」0¢π粥♂ D乞・伽駕η可伽.翫ψ・んL・π9吻・,伽癩π吻・・6・ゾωん乞・ん・3 6・6・6α翫・んαP∠α乞παπ己P・㎜π配・6α曲γ己ヴ”・π伽乞α6乞・π(1780) を著わしている。アイルランド英語と関係のあるのは.4.Rんθ加悔o認0γ覗一 彫αγ・μん昭πψ・んL・π9醐9・・0・♂α房・磁・・♂吻∫・・6ん・んη・8” 1 18 1 狽s・α・伽9丹卯・吻・プP・・π加・6乞・π・・冠廊幡・けD・伽・η, あ6観7伽卯・・勿6ん・0解僧・プ5P…飢・783)のApP・ndix pP. 132−139で・Rules to be observed by the Natives of Ireland in order to attaln a just Pronunciation of hnglishという見出し で,例えば1‘Thus the Irish say, patron, matron, the vowel, a, having the same sound as in the word father;whiIst the English pronounce them a8 if written, paytron, maytron.” というような間違いをあげそれを正すためのルールをあげたもの。母音のみに 限った雄弁術から見ての方言発音矯正であり,19世紀にはじまる言語事象の 記録の範疇にはまだ入れられない。 C.Mackl inの戯曲丁㍑¢一加糀1γ乞3んπ侃(1793)はイギリス風の作法 ・生活様式・ことば使いをまねようとする人物を嘲笑するもので,代表的人物 Mr8. Diggertyはimminsely(イギリスでは卑俗な発音にとられる), veestly“vastly”を口ぐせのように使う。アイルランド英語の特徴をとら えた上での一種のひねりであるので,作者は「について」に通暁していたもの と思われる。 4.アイルランド英語研究の開始 生1.素朴な方言研究 19世紀はじめになると,自分たちの使っていることばを客観的に見,それ を「記録」するという素朴な方言研究がはじまる。例えばWiIham S. Mas・n,オ・6αご乞・如α♂α…襯,・γPαγ・・伽♂鋤π・y・∫∫・・∠απd, 4γαωπ啄)∫γoηz6んεooηLη砒π乞oαあ伽 oプ6ん60∠θγgy(Dubl in,1814 一1819)に,各地の教区で用いられている方言についてのいろいろな注記が 記録されている。ただ注記の多くはアイルランド語が使われなくなってきてい るということである。未見であるが,J. Wrightの丁雇Eπψ誘D乞(励06 刀競めπαγyの文献にあげてあるオ5ん0γ60伽μ幅80π加6ω¢¢π齢8 伽ψ・んα価1γご・んPγ・肱π・乞傭・παπ己Pんγ鋭・勿y,ゐy・0・πμ・脚 ηαπyyεαγ3αγ¢3z¢¢π60∫Eπg♂α冠(Dublin,1817)もこの種の「記 録」であろう。 この時期にForth and Bargy の方言に関する記録が数篇みられる。そ 松 岡:アイルラソド英語研究小史 19 のうち重要なのは,Jacob Poole,オ g♂033αγy,ω玩ん30伽jp乞¢o¢30プ 〃¢γ32, 0/L 孟んε 0♂己 d・Zα∠¢0彦 0プ’孟ん¢ E7L9♂乞3ん 00♂07Ly 乞γL 6ん2 6αγ0π乞θ3 oプFoγ6ん伽d.Bαγgy,0侃撹y oプ研吋o嘱,∫γ¢♂侃4 で,1867年に W.Bamesの編集にょり出版されている。他に言語以外の風俗習慣などへの 興味も見られる。Herbert F. Hore,“The dialect and other char一 acteristics of the inhabi tants of the baror睦es of Forth and Bargy, County of Wexford,’ノo㏄mα♂ o∫1(乞既¢ππyα幅50%6ん6α3孟 o/1γθ♂απd」γo舷60∠09加α♂500乞¢砂,N. S. Vo1.4(1862).また既 に18世紀に出されたものであるが,Charles Vallancey,“Memoir of the language, manners and customs of an Anglo−Saxon colony settled irl the baronies of Forth and Bargie,in the County of Wexford, Ireland, in l167,1168,1169”7㎜α06乞o留oプ6んθ Royα♂1γ乞8ん オoα(f侃y,Vo1.2, p t.3(1788). 4,2 18−19世紀の学界の動き 上記の二篇については論文自体も然ることながら,その収められている jou㎜1の母体の性格,学界の動きを考える必要がある。17世紀に入って以 来強い植民地支配の下におかれ続けていたアイルランド人は,極端には先に引 用したSwi ftのことばのようにみなされており,アイルランド文化に対する 見方も当然これに比例していた。しかし,1785年にRoyal Irish Academy が創立されると,別に予期していたわけでもないが,アイルランドの古物事に 対する関心が高まり,それにっれて各地のArchaeological Societyが盛 冒 んな活動をはじめた。1853年にはThe Ossianic S㏄ietyが創立され・ これを契機にアイルランドの古い文学に限らず,現代語にも興味が高まってい 藍 く。 このような動向はアイルランド英語「にっいて」も反映され,パラ。ドなど を集めたものに語彙集を加えたものが出版される。Henry M. Flecher, Po¢窺3,50π98α属Bα〃α(オ3(Belfast,1866). Patrick Kennedy (pseud. for H。 Whitney),7んθBα廊oプIBoγo:α0んγoπ診o∠¢oゾ 統¢Oo%π砂o∫研ε》oγ(Z(London and Dublin,1867). Patrick 1(ennedy, Eη侃乞πg3乞π6ん¢1)吻アγθy(1」ondon and Dublin,1869). Patrick ]Kennedy,7んεF乞γ¢3認¢ 5渉oγ1乞88 0∫1γ¢♂απ(Z(Dublin, 20 1870).Alexander Knox,ノ111z3孟oγy oプOoπη・砂 1)oωπ・財o・ (Dublin,1875). 以上のような研究は依然として古物収集の域を出ておらず,当時のイギリス の言語学界に澄けるような比軟文法・更的言語学を応用した文献学的研究は二 十世紀まで待たねばならぬ。イギリスでこの時期に出る,Alexander J. Ellis,伽Eα吻Eπψ3んP箔・π脇・乙α6ご・π・E.E.T.S. ES 56 (1889)の中にある“Irish pronunciation of English”は一つの対 照例である。 43 19世紀の「を使って」 「を使って」の面でも多くの文学作品の中に方言がみられるが,この期は 17,18世紀と違って,こっけい味,軽蔑的な意味合いを必ずしも持たせたも のではなく,より写実的になる。つまリアィルラソド人で英語を話す者が一般 的にもっている方言的特徴を登場人物により忠実に「真似」させている。 重なものをあげると,WilIiam, Carleton, Tγα乞63α雇S’oπ¢30∫ 6ん6 1『γづ8ん P¢α3απごγy((1827)1896 ed,);Fαγψ)γり㏄g伽 6ん召 jfZ 86γ (1839);7ん¢B♂αoん PγoPん碗(1847). Crofton C roker, Fα乙γy L¢g麟8(1825).CharIes Kickham(1825−1882). Kπoo枷αgo初;oγ 7加∬oηz¢30プ7乞1卿¢四γy,25th ed.(1930).他にGerald Griffin, Charles Lever,それにMaria Edgew〔】rth等。 4.4.Abraham Hume 先に述べたアイルランド語に対する興味の高まりは,1877年S㏄iety for the Preservation of the Irish Languageという形で表わされ,独立 運動とも結びつくようになる。これを…つの契機として,より詳細な,多岐に わたる方言研究がなされるが,その先駆であり,それまでの研究のまとめのよ ‘‘ 、な役を果すものがAbra㎞Hume, Remalks on the Irish Dia一 1ect of the English Language’, 7γαπ8α06乞oπ8 0プ6ん召1ノ乞8彦oγ乞o Sooz磁yげ Lαπoα8ん乞γ¢α7泌 0んε3ん乞γe, Vol.30(1878). pp.93−140 である。それまで多くσ♂8’θγノ0解πα♂0ゾ浸γ0んα¢0♂0卯 に書いたものの 集大成で,まず英語が入ってきた歴史を手短かに,特にUlsterを中心に述べ, アイルランド英語の特徴にエリザベス朝の英語が基礎にあることを指適する。 松 岡:アイルラソド英語研究小史 21 PopeやCowperからとった一節の脚韻とLever・Crokerなどからとっ たそれと比較して,発音上その一致を証明する。語彙については・アイルラン ド語からの借用語を使った文を三ページにわたって作り・それぞれの英訳語を 欄外にあげている。⊆借用語の使われる頻度はGaeltachtの近くとそうでな いところとは大きく異なるという指適もしてある。)例えば,“H6 1ives n。ar th。。伽,4 th。t。v。rh。ng。 th。κπ・・κ5;・nd y。u a仰・…h hi、 h。u、e by th。加襯6・r…ん7 tuming・ff th・㎞gh・・批d 。t the…一吻8 int。 whi,h th。・噸伽g fl・w・.(・M・un、一 tain. 5 Hi11. 6 Narrow lane.7 A road on which bushes have been placed, especiaI I y in the ruts, to prevent the sir避dng of the wheeI8 0f carts or cars. 8 Little river. 9 bittIe silver stream.)残りはアイルランド語の発音の影響,統辞的・形態論的 な影響の列挙,他の英語の方言との比較,そしてGIossaryの例としてAの 分をいくつかあげている。 Humeの研究で重要なのは,アイルランド英語の要素としてエリザベス朝の 英語の影響とアイルランド語の影響に言及する形が明確に出されたことである・ ただしこの枠は1950年代のP.L. Herry(後述)になっても粗な形で使わ れており,共時的記述に歴史的方法が混入し記述性を不徹底なものにしている・ Humeは19世紀の方言研究の目覚めを集約したという評価はできるが,言語 事実の収集による純粋な記述という面は弱く,文学作品からの引用を分析対象 にしている場合が多いことからみても,「古物収集」の段階を超えてはいない・ ㌧ 4.巳 雑多な研究(1879−1gog) Hu皿e以後は以前にまして,アイルランド英語に関する多種多様の収集・ま , とめが行なわれる。この時期に出たものをみると,題目にアイルランド英語を さすbrogue,Anglo−Irish, Irishism, Hibernicism といったよう な名称がでてくる。これはアイルランド英語が一つの研究対象として意識され ‘‘ ヘじめたことを物語っているといえよう。〔G.Shee〕, The Irish ‘‘ ‘‘ arogue,, in Fiction:a Protest.,,7’ん¢』40撹ん,Vol.45(1882). she Irish Brogue,,・40α己伽yαπ(f乙記召γα如γ¢,Vo1.61(1900(?D. AIbert Matthews,“Irishman’s “Brogue”” 亙αだ㎝・VoI.79 (1904). T.E. Bridgett,“OId English and Anglo−1rish 22 1 iabout 1340),,1γ乞8ん Eoo∠⑳乞α3ご乞oα♂ R召ooγ己,3rd ser. Vol.13 (1892).William Burke,“The Anglo−Irish Dialect”1γ乞3ん Eoo♂¢認α8加oα∠ Rεooγ4,3rd Ser. Vo1.17(1896ノ. Colone10’Crit一 , 奄モ≠戟@(pseud. for Francis Sadleir Stoney), 」Ooπ6, 」Pαご : α辺伽編(ゾ1幅3ん乞8脚(Dublin,1885). Edwin W Bowen, ‘‘ ,9 rome Disputed Hibernicisms 刀Zα久Chicago), Vo1.22 (1897). UIsterはIrishのUIster方言め影響に加えて,スコットランドからの 移民が多いことからアイルランドの他の地域とは幾分異なった方言地域を構成 している。その英語に関する研究はG.B. Ad ams,J. Brai dwoodなどを 中心として現在でも盛んだが,この時代も他の地域に比べて研究成果が多い。 重要なものをあげると・William且Patterson,オ0♂o∬αηo∫彫o幅8 zπ σ86 zπ 6ん召 Oo御π6乞880∫ ノ望撹γ乏ηαπ4 1)o∼鵬(bondon,English Dialect Society,1880). Henry C. Hart,‘‘Notes on tbe UIster ,,(20 @ 7γ略α・μ鰯・∫孝ん8Pんビん∠・9乙・α♂Dialect,Chiefly DonegaI 500乞θ63!(]London, 1899). 英語の中に使われるアイルランド語の語彙表をつくることは今日でも続けら れているが,この時期から盛んになっている。その代表的なものは,Society for the Preservation of the Irish L鋤guageから分かれたGaelic Unionの機i関誌である0α6島0ノ侃糀α♂(1幅8♂6αゐんαγπα0α64ん乞∠9の にシリーズで掲載された“Irish Words in「the Spoken English of Leinster Oαθ面o/o㎜α♂,Vol.11,12(1900−1902)である。 S outh Kilkenny, Athboy(Co. Meath), Baronies of Castlerahan and Crossrea(Co. Cavan), Famey(South Monaghal1), Carlow Town(Co. Carlow),Baronies of Rathdrum and Rathdown(Co. Wicklow), Co. Louth についてそれぞれ収集されたword−hstであ る。単なるリストでありながら細かい説明・用例などがある場合もある。例え ば 0αゐαoん ‘‘cunlling,’. ‘‘She is very cab批ch,,, said of a child who listened to what grown people said, and repeated it ・1・ewhere.0・α・煽ん.“H・put a cearradh・n m・”−h。。t。仰。d me・and kept me talking to him;he delayed me. この時期大陸には・単なる一方言の研究というより英語学一般の上からも重 松 岡:アイルラソド英語研究小史 23 要なW.且。user,“Di。 Kildare−G。di。ht。,B・膨・B鋭濯9・ z%γオπ9あ詑酌,Vo1.14 U904)がある。これにはKildare poems (前述)以外の中世紀のアイルランド英語も編集されている。 以上のようなこの時代の各種の研究を簡約にまとめたものがMary H創yden ‘‘ ≠獅п@Marcus Hartog, The Irish Dialect of E皿glish” である。 its origins and v㏄abularyと 8yntax and idiomの二っの副題に 分けて,いずれもFoγ伽砂競♂y Rθ麗¢ω,0.S. Vo1.91(1909)に出た。 TudorとStuart期の英語の名残とGaelicの影響とに分けながらアング ・アイリ。シュ文学に出てくるような特徴をあげている。 4,6.収集の総括期(1910−1926) これらの準備をふまえて,EW. Joyce, Eπψ3んオ3〃7θ5Pθα彦1孟 珈1γ6∠απ4(London and Dublin,1g10)がでる。 Joyceの他の著作, 例えばヨ5・・zα♂研3’・γy・∫」忽観1γ6∠α屈や7ん¢0γ乞9∼π伽d ∬乞360γyo∫1悔3ん1Vα加¢30∫1)∠αoε3,また彼がPresidellt of the Royal Society of Antiquaries of Irelandであったというようなこ とが裏付けしているように,この著作の性格は英語学的というよりもことばに っいてのエピソードを集めた民俗学的なものである。エピソードというのは, 例えば普通の英語では不要なonの不快感・損害などを表わすethical dative 的な用い方についての説明のあとに,“Ionce heard a grandmother ≠氏@educated Dublin Iady−−say, in a charmingly petting way, to her litt】e grandchild who came up crying:一一・“What did 一一 theydo to you onme−did they beat you on me?” という話 ‘‘ したり・Ch. IX. Exaggeration and Redundancyの中で・ The word destroy is very often used to characterize any trifling damage easily remedied:一一That car splashed on me, and my coat is all destroyed.,,という説明をしたり, Ch. XII A Variety of Phrasesの中で, Godやbord を使った様々な表現(感謝・苦悩の訴 え・死人についてふれる時)についての説明の中で,“In Dub】in, Roman ‘‘ batholics when passing a Catholic church(or chapel,’) remove the hat or cap for a moment as a mark of respect, and usually utter a short aspiration or prayer under breath. 24 脚 shis custom is I think spreading.” という説明を入れたりしてい ることである。この書の青以上を占める約150ページにわたるv㏄abularyは 今でも有用である場合がある。あとの章はSou㏄es of Anglo−Irish Dialect/Affirming, Asserting, and Saluting/Asserting by Negative of Opposite/Idioms Derived from the Irish L。nguag・/Th・D・vi1・nd hi・“Territ・ry”/Sw・a・ing/ Grammar and Pronunciation/Proverbs/Comparisons/The .Memory of History and of Old Customs.以上の中にアングロア イリッシュ文学で珍重されるアイルランド英語の特徴は網羅されている。 当時のアイルランド文芸復興運動の影響がみられるのは,Synge, Yeats ‘‘ フアイルランド英語の特徴をまとめたA.G. van HameL On Anglo一 Irish Syntax”Eπψ30ん¢56協z¢π, Vo1.45(1912)である。語法の もとになったと考えられるアイルランド語の表現の説明をまじえている。石アン グロアイリッシュ作家の作品を読む手引きとしてのことば上の特徴とその例の 羅列にすぎず,文体論的試みでもない。日本のアイルランド英語研究はこれと 軌を一にする。市河三喜“Irish−Englishの語法”「英文法研究」(1912), 勝田孝興「愛蘭英語と蘇格蘭英語」(1940)・「アング・アイリ。シュ」(1932) 尾上政次「アメリカ語法の研究」(1952),Jiro Taniguchi,」Gγα那一 那α伽α♂」㎜∠y・… ∫オγ6乞・6・・−R・μ・鋸曲・π・〆1γ・8んEπψ8ん (212nd ed.(Tokyo,1972). 〆 James M. Clark,71ん¢700α加ぬγy o∫!{π9∠o−∫γ乞3ん(St. GalL 1917)は文法上の説明及び語彙の説明を列挙したもの。 ‘‘ ddmund Curtis, The Spoken Languages of Medieval Ireland・・56協招3,Vo1.8(1919)は1169年のノルマン侵入から1541 年ヘゾリー八世がアイルランド国王であることを宣するまでの,言語を中心に おいた歴史である。言語構造でなく,外的な歴史であり,この種のものとして は唯一の論文で,彼の!{∬乞360γyo∫」4¢己z勿α∠1γ¢♂α届(1923)に裏 付けされ,有用である。、 5 言語学の方法の応用 5.1.史的言語学を使って 松 岡:アイルラソド英語研究小史 25 史的な方法にょるアイルランド英語研究の先駆けである Jeremiah J. Hogan,7んθEπg♂乞3んLαπg秘αg8勧1γ6♂απ4(Dublin,1927)も外的 な歴更に関しては多くCurtisに依っている。言語事象の歴更に関しては,英 語学の研究において充分実践された(The Philological Society(1842 創立)や,多く中世英語の資料の刊行を行なったThe Early English Text Society〔1864創立)の活動)19世紀の比較言語学・史的言語学の 方法をアイルランド英語に応用している。 全体を二っに分け,16世紀中頃までをEnglish in皿edieval Ireland とし,それ以後をModern Anglo−Irishとしてそれぞれの前半で資料の 説明,その言語的特徴を述べ,後半で全体から見たそれぞれの時期のアイルラ ンド英語共通の特徴を整理している。多くの資料をあげているので,類書がな いこともあり,重要なものである。ただし詳細な研究ではなく,資料の整理と いうべきものであり,この資料にそった通時的な研究が待たれる。 通時言語学的興味にそったのは他にForth and Ba」gy についての, ‘‘ jathleen A. Browne, Ancient Dialect of the Baronies of Florth and Bargy” ノoωγηα♂oゾ 6ん8 Ro3ノα♂ 500乞¢63/o∫ノ4π加9㏄αγ乞a9 ‘‘ ー1γ8∠α冠,Vo1.57(1927). P.J。 Irwin, Lost Loscombe Manuscript:a Transcript”ノ4πgあα,Vo].57(1933). P.J. I rwb “Some Emendations in the Chronology of the N.E.D.” ノoπγηα♂o∫Eπg∠∼8ん α砿 0¢ηπαπ乞o Pん乞♂o∠ogy,VoL 33(1934). このような英語学の啓蒙の書としてHoganが珈0磁♂6π60プEπψ3ん Pん露oんgy,0ん乞6∫リノoγ」rγ乞3ん5オ認¢π63(Dublin and Cork,1934) を書き,アイルランド英語の一般英語の研究の中で占める位置を例示している。 全体の記述の中では傍注的な扱いではあるが,Cu㎜e,5y撹⑳(1931)に 艦 はしばしばアイルランド英語が引かれている。多くが16−17世紀の英語の残存 としてとらえられたり,現在の一般英語の口語と並置されたものである。引用 文はSynge等の文学作品からとっている。 5.2 Glossaries J.J. Hogan,“Notes on the Study of Anglo−Irish Dialect” B6α♂o掘6α8,Vol.14(1944)はAnglo−Irish が消えつっあるので今そ れを記録しなければならないという緊急性を説き,方言研究の三分野phonol ogy, 26 grammar, v㏄abularyのうち,前の二つは専門知識を要するが, v㏄abulary には特殊な訓練は不要であって簡単なルール(ruIes for making a glossaly) を守ればよいとして,12条を設定している。そのうち4.5,6は・今日では全く常 識的なことであるが,記述的な方言研究の時代の先駆けに入ったことを暗示し ている。(4.Take a small district in which the speech is homogeneous. aRecord only from people born and brought up in the place,and who have never left it for any long period. 6, Put down nothing but what you have heard yourself.) このようなルールで既に記録されているところにKildareとCorkがある。 Omurethi,“Irish and Anglo−Irish words in use in the County]E(ildare,, 10πγπα♂ o〆 6ん¢Oo. K乞♂dlαγθ ノ4γoんα¢o♂09乞oα♂ 500乞召り,VoL 6(1909−1911). D. J. Leahy, Eπg♂乞3んノ48 5ノ)oん¢π 勧Ooγん0諺y(unpublished dissertation,University College, Cork,1915). この期にB鋤掘螂及び珍ゆ・:オノ・獺狗∫1。励5楓伽 に新しく出たものに次のようなものがある。Liam Ua Broin,“A South一 ノ 翌?唐煤@Dublin Glossary”.B2α♂o諺¢α8,Vo1.14(1944).これは他のに ‘‘ 艪オ情報が豊富である。例を引くと,0αω島n.and vb. A look, to look.,, @〃7ん6π 310ω んα〃¢ (オoπ8 ω乞6ん 6んα6μ∫)6γ, ♂召置 ηz¢ んα〃召 α 9αω乃 α孟乞6.709αωκα”謡=to go about gaping and aimlessly. 〔0αωん, vb. is used in English dialects in the sense‘‘stare ,璽 奄р撃凵@or vacantly, wander aimle8sly :but the noun 8eems to be specially Anglo−lrish〕. P砺oん.‘‘A fat cheek”Looんα6 ノ ’6ん¢pんo傍o∫6んα60砺♂4.(IL pんo)他に, O hEaluighthe, “Irish W㎝is in Coゴk Speech’,1o働伽∠o∫Ooγ彦∬乞860γ乞oα∠ ノ 媚加ん…卿・・♂5・・読y・V・L49(19441・E・m・nn Mh… n eoca互6 L och Garmaガ’E乞g8¢,Vo.5. N. Breathna£h,“Focai I ’ ”Ghaedhilge ata le cIos sa Bhe批rla a labhartar sa ChaisIean 松 岡:アイルラソド英語研究小史 27 ノ ! mua, Co. Luimnigh”E乞g9¢,VoL 5. Patrick C. O Nei1L ノ“A North−county Dublin Glossary,, B6α∠o認θα3,VoL 17(1947). P血。aig 6 C。n。hub加i。,“An Off・ly GI・ssa・y”B乙・∠・乞伽, Vo1.20U950). 以上は一般英語の対訳をつけた語彙リストにすぎないが,これらに比べ辞書 編集技術で格段の進歩をみせているのが,Co. DOnegalにっいての336ペー ジにわたるMichael Traynor, Tん6 Eπ94甜ん刀毎♂¢060∫Doπ¢9ヒz♂; 辺0∠088αγy(1953)である。例としてfriendの項をみると・Fγ宛記(fren (d)),π.Also in fonns ∫γ2π(CC.208),∫悔侃(ib.95).1. A relation by blood or marriage. Is he a friend to you?(H). 2Phr.60 加πo∫γ乞θηd3ω乞6ん, not on good terms with(McM); ii.∫γ宛π(オ8 ηzαy ηz6¢6 ゐα・6 ηzo㎜6α珈8 π吻θγ(saying)・Cf・ Ir・ ノ ノ ’casaid na daoine ar a cheile ach ni chasam na cnuic na na s16ibhte.[Sc. n. I r. Norw. di a】.∫γ謡8, a kinsman, re】ativeJ ただし括弧内は引用の出所で,H, McMというのはインフォーマントの略号 である。 それ以後もgl…a・y㈲嘩けられているノM・・garet C・㎜・y・“A South Meath Glossary,, R乞ooん6πα力1乞(オん8,VoL 2(1960). Michael Hewson,“ `Word−list from S㎝th−west Clare” 2Voγ6んMωη説¢γオπあq鵬γどαπノo紘mα∠,Vol.9(1962−65). MichaeI Ma君Carvi l I,‘‘An Aghabog G I ossary”0♂ogん¢γR¢ooγ己, VoL 5 ノ ” i1963).(Co. Monaghan). Stiofan O hAnnrachain,0α乞撹απ Bんα乞♂¢ Dんω乞ゐん(1964)(Co.】i(er「y). 5。3 記述的な方言研究 1920年代から50年代にかけて,言語地理学の応用の成果がイタリア・New EngIand・England・スイス・アイルランド(アイルランド語)°スコット ランド等の方言地図の形で出る。 P.L. Henry,14πノ望π9ん一∬γ乞3ん1)乞α♂¢06〔ゲ1Voγ6んRo300ηηπoπ: 1)んoπo♂09y・」oo認¢η麗・5yπ6(魏(Dubl in,1957)(237ページ)はその ような記述的な方言研究を目論んだものであり,音韻・形態・統辞の三っのレ ベルにわたる最初の充実した研究である。第一部の音韻論では,音素分析に関 ! 28 , キる説明はないが,音素を見出しにした詳細な音声表記がなされている (“Phonetic Description of the Phoneme”p.24)。この点の ph・n・mi・i・tからの反論に“hi・田・n・y’・」impressi・ni・ちi・ally aJranged sound−groups need restudying before cIassification into phonemes can be accepted as final”という主張がでるかも知 れないとA.A. HilI(後述論文, P.34)は言う。第三部の統辞論は, The Substantival SystemとThe Verbal SystemとCoordination and Subordinationの三つの大きな文法範疇を設定し,彼以前の研究にお ける統辞レベルでの羅列的な性格を超えようとしている。 豊富な例に音声表記と普通の英語へのパラフレイズが添えてある。今まで全 く指適されていなかった記述,及び今までアイルランド英語の特徴としてあげ られでいたもののより詳細な統辞的差異の記述が数多く見られる。今まで指適 されていなかったものとして例えば,§1.Side by side with the familiaJ singuIar and pluraL our dialect has:A. A mode of specification by means of one representative㎜it, or grouping of such units.1. DθZ e kμθr an θkolor lnet. ・ o Tん・γ・’・α・・♂… απ… 」・π・・π宛“there are m・ny。。1。u。、 1 奄氏@existence”. Cp・Ir.6α面紘α9%3血6ん(8乞♂のαππ. (音声表 記はIPAによっている。ただしDはthe voiced neutral blade一 alveolar,9はamixed vowel with Iow tongue position).また, §107. c) ご4π己expresses logical relations usuaIIy expressed by subordinating conjunctionsという点はアイルランド英語の特徴とし て以前から指適されているが,Henryは更に次の語法があると言う。 A common coordinative usage ofαπ’is to attach it in company with a noun(pronoun)and complement to a preceding phrase. The attached phrase expresses a circumstance, usualIy temporaL of the principal verb in the first phrase。 This scheme is very idiomatic in Ir. and seems un−English.....3. ・ 。 ノ рie mρinDDθ de:an w1:INDgul kε:51? 1)o yo㏄ ’ 加π46ん64吻α㎡ω6zπ彦ん60κoα36♂¢? “do you remember the day that we were in the’ 盾撃п@castleゼ より詳細な,より体系的な記述とはいえ・問題は残る。文法範疇の設定に関 松 岡:アイルランド英語研究小史 29 して,例えばaspectに関して Deutschbein,5」ρ値zo加yoんo♂ogむoん¢ 56∼協¢π(C6then,1918)及び・43ア¢麓¢π.」屍乞oπ3α材¢π珈翫麗π9一 ∠z30ん8π〔Leipzig,1939)を参照したといった注記があるが,全般にわた る統一した説明はない。また記述上の手法に対しても批判がなされる余地があ る。この点に関してはP.Strevensが書評(オγo痂膨那L編g協3擁砲7π, Vo1.10(1958))の中でdescriptive,comparative, historicalの三手 法が“not adequately separated”であると指適している。たしかに現代 記述言語学の手法を用いる意図を持ちながら,部分的に・アイルランド語との 比較,シェークスピアとの比較として単に用例のみを説明なしに付加している。 例えば前掲の第一の例の“Cp. Ir....”のような簡略した説明など全く読者 の解釈にまかせられている。 共時的な研究に史的な説明を混入したための誤謬は近代言語学の成立時から 指適されているところであるが,この記述上の欠陥はArchibald A. HilL ‘‘ ` Conjectural Restructuring of a Dialect of heland” 五〇〇ん♂α㎜ン,Vo1.2(1962)に実践されているような,構造主義的な扱いに徹 することでも解決されよう。 HiI1の論文はHenryのRo300ηηoπに依ったもので,その母音体系に っいてHenryの立場であるEuropean, historicaL dialectologicaI をHillのAmerican, descriptive, structuralで説明しなおしてみ, ようというものである。例えばcomplex nucleiとしてHenryは〔ei〕 〔ou〕〔ε:θ〕[e:〕の四つのタイプをあげているが, He皿ryがこれらをそ れそれ一っの音素とするのに対し,アメリカの言語学者であれば母音十半母音 の二つの音素から成ったものと説明するであろう例えば〔ei〕〔OU〕について は/y//w/を設定するといったようにとし・それぞれのタイプを移しかえ て説明しようとする。 ‘‘ P958年に同じくHenryの A Li㎎uistic Survey of Ireland; Preliminary Report” @Loo砺αππ, Vol.1,pp.49−208が出る。 Part I Introductory and Historica1. Part皿Synchronic.とな っている。このPart皿はRo800形彫oπよりも論文の性格からかより descriptiveになっている。この調査は現在も進行中である・ Ulsterについては前に触れたように, G. B. Adams, R. J. Greg9・ J.Braidwoodの三人が中心となって,一つの方言研究地域として独自の研 30 } ? 進めている。G. B. Adams,“Introduction to the Study of Ulster Dia丑ects” Pγoo8θ(オ珈980ノ ごんθRoyα∠」rγ乙3ん ノ4α凝召η妙, ‘‘ b−52−1(1948); Phonological Notes on the English of South Donega1”、RR.1.オ, C−53−4(1950);‘‘Phonology of the Antrim Dialect”P.κ1.左,C−57−3(1956);“The Emergence of Ulster as a Distinct Dialect Area” σ∠868γFo命∠zノ¢,VoL 4 (1958); Robert J. Gregg,“Phonology of the Antrim Dialect” 0γ尻8,Vo丑.8(1959);J. Braidwood,7ん6σ♂3孟¢γ1)Zα♂θ06 五癩ooπ(BeIfast・1969). これらの三人にP. b. Henryが加わって, σ♂36・γD乞α♂・・6・;」π1撹・・伽6・η5yゆ・・謡皿(Belfast,1964). 最近の論文としてA.J. BIiss,“Languages in Contact:Some Problems of Hiberno−English”Pγooθ召4乞πg30∫6ん¢Royα♂ 1幅3ん・40α{オ¢z叩,72−Cρ3(1972)があるが,vowel phoneme8; 。。n,。nant・y・t。m・b。。ad。nd、1。nder;imperativ。“1。t・¢2; h註bitual bees, does beの四点についての憶説で,特別に新しい方法論 は見られない。 a 結 論 アイルランド英語に関する研究の思潮が事実の収集→史的言語学の応用→方 言学の応用という進展として概観されたが,アイルランド英語の研究がアメリ 力英語のそれとの比較を待つまでもなく,依然未発達の状態であることは “pi lot survey”であるP. L. Henryの研究に対する批判からもうかがえよ う。HillによるHenryの母音体系の構造言語学的な解釈は,次に進むべき 一っの形を提示したものと受けとれる。記述言語学の徹底した応用により,特 殊性も一般性も含めたアイルランド英語の構造全体を記述してはじめて,英語 の他の方言との比較も容易になる。A. HumeからHenryにまで続いてい る比較枠のような,単なる表層上の類似で,史的にあるいは共時的に他の方言 ・言語との影響関係を決定するような伝統的な比較論は常に疑問視されねばな らない。 、 ウらに,アイルランド語の影響の指適の際にも,現代アイルランド語の三っ の方言・Connacht,Munster, UIsterの相違が多く閑却されている。ア 松 岡:アィルラソド英語研究小史 31 イルランド英語の地域差とアイルランド語の方言間の相違は,特に音声の面で 明らかに相関するが,未だその細分析がなされてい妙。 人種間のあるいは地域間の侵略関係は常に言語の問題を伴なう。言語の内的 構造の間にはいかなる優劣性はなくても,外的な要因が使用者にそのような錯 覚をもたせるのである。アイルランド語復活の是非は別問題として,bH in一 guaIismの裏に潜む社会的な要因,またそれからくる心理的な要因の明確な ’ ノ , 燒セが求められるゆえんである。Mムirtin O Murchuの小冊子L⑳9鵬9θ α艇Ooη碗πz6y(Dubl in,1970)は,上の概観の中にも全くなかったこの 方向にそった最初の序論であり,今後の研究が期待される。 その結論に,アイルランド語を中心においたものとしてのbi lingual ism を維持しながら,diglossia的並立,即ち特定領域では一方の言語が,別の 領域では他方の言語が用いられるような状態を示向すべきであるという。 home−11eighbourhoodの領域でアイルランド語の強い基盤を作り, educaπ tion/public admjnistrationの領域ではその下位区分領域によリアイ ルランド語と英語を使い分けるという形を念頭に置いているように考えられる。 この図式は最も安定したbiIingualismとしてFis㎞anがパラグァイに澄 けるグアラニ_語とスペイン語の関係を例にとって説明している!23ものに該当 ’ ,する。注意すべきは,OMurchuはアイルランド英語が方言であることを無 視しているが,アイルランドの言語問題はアイルランド語と英語の関係でなく, 言語使用上,アイルランド語とアイルランド英語と標準英語の三つの要因が絡 み合っているものとしてとらえられなくてはならないことである。 今後,アイルランド英語の言語的特殊性の更に詳細な組織的記述が待たれる が,それと並行して,記述上の理論的欠陥の克服と,アイルラソド英語の歴史 的環境を考慮した社会言語学的アプローチの採用が図られねばならない・ 。 32 注 1。 Irish孟sm, Hibernicism はアイルランド英語の特殊面(アイルランド語 の影響)のみに対する名称である。 2.娩曲というのは“Anglo−lrish”のかって持っていた軽蔑的な意味に対 するものであると同時に,方言であるアィルラソド英語が使用者に社会的・ 心理的劣等感をひきおこす可能性に対するものでもある。 3 ‘‘A Linguistic Survey of Ireland;Preliminary Report,, 五〇〇んグαππ,Vo且.1(1958) p.58. ., S. Quirk and Marckwardt,ノ100㎜oπLαπ9払α9θ ;βγz加3ん απ(Z .47麗幅oαπEπ9あ8ん(1964)で使われている用語。dialectという語をイ ギリスあるいはアメリカの中での方言にあてて混同を避けようとし.ている。 5. ノ望ηzθγ乞αzπ、Eπ9あ3ん (New York,1958) P. ix. 6. アイルラソド語の影響に関しては通時的にも共時的にも見れる。通時的に は時代が下るほどアイルランド語の要素の度合が低くなるし,共時的には Gaeltachtの住民の英語はアイルラソド語の要素がより強い。 7.0ノ.“Th・best k・・w・typ・・f li・g・i・ti・i・f・・ence i・ represented by the so−called loanwords or [exical borrowings. The fact that isolated free morphemes are taken over w ith such readiness confirms what has be6n said above about ・the unsystematic nature of the greater part of vocabularyワー−Hans Vogt, ‘‘1、anguage Contacts” ”70τ(オ10(1954)p.369. & pidgin English は中国語・ポルトガル語の影響が入り,統辞の面での 影響もある。 駄 MeathをはじめとしたLeinsterにかぎらず, East Ulster, M珈ster, 西のCOnnachtまでも進出していった。 10.0∫.“i・t・・−marri・g・b・twee。 th・tw・,ace、 w・, c。㎜。 f,・m the beginning.... To speak of the ‘‘Gaelicisation of the NQrm如s,, as if itwere an external process, without taking into accouロt the fact that many−−perhaps most−−of thepeople in question belonged by birth as much to one race as to the other, is to place the process of assimilation in a false perspective” 一一Kenneth Ni・h・ll,,0αθあ・α冠0αθ♂乞・乞8¢41γ¢∠鰯乞腐ん8班繊∠2」9¢3 (Dublin,1972). pp.16−7. 11.“becau・e th・y fi・d・g・eat i・c・nve・i・・ce i・m・vi。gth・ir suit・ by an interpreter, they do for themost part send their children to schools, especially to learn the English language”一一Sir John D・・i・・,」加・・…卿・プ6ん・T・wO伽・3ωんylγ・♂α艇ωα・ , ホ¢%θγθπ6zγ吻Sの血砿..1612. 松 岡:アイルラソド英語研究小史 33 ノ ’ P2M…een W・li,“Th・Decli… fth・1,i、h L・nguag・”OC・i・ ed.,ノ4 7乞¢ω(ゾ≠ん6 1γ冒乞8ん Lαπg協g¢ (Dlλblb・,1969)p.87. 13.このような時期のアイルランド語人口の推移をみると,1S61年1,077,087 (全人口の24.5%),1871年80缶547(1α8%)となっている。06御%30ノ ・ Poμ∠α髭oπけ1γ%α価1961,VoL 9. Irish上anguage(1966).ただし これらの数字は,英語も話せる,場合によっては英語の方をむしろ日常用い ている人口も含んでいる。 14・言語に関する人口統計は1851年から行なわれているが,この最・初の統計に ノ ノ チいてはその正確さが疑問視されている。Brian O Cuiv,1γ28ん、」翫α面063 α畷1γ捨ん一5jp¢α勉π91万8εγ乞063 (Dublin,1951)P.20が当時のRobert MacAdamなる者の意見を引用している。“numbers of indivlduals returned themselves as ignorant of the Irish language, either from asort of faIse shame, or from a secret dread that the(玉}vernment,in making this inquiry(for the first time)had some concealed motive, which could not be for their good. Their native shrewdness, therefore, dictated to them that their safest policy was to apPear i.gnorant of the unfashionab韮e language.,, 15.1956年のThe Gaeltacht Areas Orderで定められたGaeltachtの人 口は1956年の85,703から1961年には78,524と減少している。 16.7ん2ハτα孟乞麗1γ乞3ん0γαηzηzαγ乞απ ,The Sir John Rhys Memorial 丑ecture, British Academy(1938)p.8. 17.この名前はWHeuserの編集した“Die Kildare_Gedichte”Bo7肌θγ B¢記短g¢飢γ.4πgあ86魏,Vo1.14(1904)によってっけられた。・なおこ ‘‘ 黷ノはHolthausenによる校訂がある, Zu den Kildare−Gedichten” ノ4ηg∠乞α,Vo1.40. 、 「 る。なおP,J. Irwin,‘‘工ost 1」oscombe Manuscript:ATranscript,, ノ4π9んα,Vol.57(1933)参照。 19 H.正「. Berry ed. in the !o∼んγ7協♂o〆6ん¢ Royα♂ Soo乞ε6310∫ノ4π6乞一 星 q祝α舜63(ゾ1γ8♂απ己,Vol.30(1900).同じBerryの編集に“The Dubhn Gild of Carpenters, Millers, and Heliers, in the Six_ teenth Century”ノ.R.5.・4」.,Vo1.35(1905)がある。 2αこれはM.Traynor,7ん2 Eπgあ3ん1万αんoごρプ1)oπ¢gα♂(Dublin, 1953) に吸収されている。 21.谷口次郎氏は伝統文法の枠にそって,文学作品からの豊富な例をひきなが ら記述している。また第二版には文体論的な考察が加えられている。しかし ながらP.L. Henry,“The playboy of the Western World,,1)ん詔o♂09一 ‘‘ ’ 薰純ソPγα9飢・銘α (1965)P.189 fn.に rich in materia1, but tech一 L 34 P 獅奄モ≠撃撃凵@defective,,の指適がある。 22アイルラソド英語で命令形にlet youを用いるが,これに相当するような アイルランド語の形はないので今までいろいろな説明がなされてきている。 BHssはやはりアイルラソド語的な発想であるとして論じている。 2a ‘‘Socletal Bilingualism:Stable and Transltive,, Lαπg膨g¢編 50厩oo雄加弼∠(7伽g2(Stanford,1972)p.137に次のような図を示し ている。 DIG五〇SSIA BI上INGUALISM 十 一 十 1.Botk diglossla 2 Bi量ingualism and bihngualism without diglossia 一 3 Diglossia without 4 Neither diglossia bilingualism nor bllingualism 1がここで指摘した状態。2は不安定なbliingualismで,アィルラソドの 場合は18−19世紀のアイルラソド語の衰退の時期にあたる。diglossiaがな いので言語使用境界がなく,社会的に勢力のある言語が他を圧倒して行く。 3は侵略直後の状態にみられる言語状態で,アイルラソドの場合は17世紀に 新しい植民者たちが入ってきた時期にあたる。ニケ国語を使用する者はほと んどなく,それぞれの生活領域を守っている。