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水槽について講演(pdfファイル約2MB
NMRI 試験水槽の技術 海上技術安全研究所 深海技術研究グループ 田村 兼吉 NMRI 内 容 1.水槽の歴史 2.曳航水槽 3.キャビテーション水槽 4.運動性能水槽(旋回腕水槽・角水槽) 5.その他の水槽 NMRI 1.水槽の歴史 水槽試験の概史 NMRI ●水槽試験は誰が最初に行ったのか? ・Leonardo Da Vinci簡単な船舶模型試験を行った記録 ・Benjamin Franklin船舶抵抗の水深影響を試験1768年 ●相似則が明らかでない→模型試験の有効性も疑問視 ・実船の成績から次の船を考えるのが主流 ●William Froude(英国 1810-1879)の登場 ・曳航水槽で模型試験の有効性を実証 ●水槽の形態・目的の多様化・専門化 ・キャビテーション水槽、耐航性/操縦性水槽、回流 水槽、氷水槽、深海水槽等 水槽試験の始まり NMRI ●世界最初の本格的水槽 ・英国海軍の費用でW.FroudeがTorquayに建設。 ・長さ85m x 幅11m x 深さ3mの曳航水槽。 ・1871年竣工、1872年より模型試験開始。 ●水槽の目的 ・相似模型の実験を 精密に行い、実船 性能を正しく見積 もる。 ・形の異なった船の 間の抵抗の関係を 明らかにする。 水槽試験の広がり NMRI ●1800年代後半から1900年代初頭の欧米での曳航水槽 ・1884年 Deny水槽(英) ・1887年 Haslar水槽(英海軍) ・1902年 Berlin水槽(独) ・1905年 Michigan大学水槽(米) ・1906年 Paris(仏) ・1910年 NPL水槽(蘭) ●日本の水槽 ・1907年 長崎飽の浦(三菱)、東京築地(海軍) ・1924年 九大 1928年 阪大 1936年 東大 ●1930年前後から1940年代にかけて水槽建設ラッシュ NMRI 2.曳航水槽 抵抗試験での相似性 NMRI ●流れの力学的相似性 ・無次元数と境界条件が2つの系で同じ→流れは相似 ●抵抗試験の無次元数 ・水の粘性の存在→レイノルズ数 Rn = VL/ν Fn = V/√Lg ・自由表面の存在→フルード数 RnとFnを同時に満足する模型実験は不可能 Froudeの仮説( Froude則)の登場 フルード則と摩擦抵抗則 NMRI ●フルード則 ・船体の抵抗=摩擦抵抗+剰余抵抗 ●摩擦抵抗則 ・摩擦抵抗=長さと浸水面積の等しい平板の摩擦抵抗 ・剰余抵抗=Fnのみの関数 ●Fnだけを合わせた模型試験を実施し、Rnの違いを 近似的な経験則を用いて修正する。 二次元外挿法 二次元外挿法の概念図 NMRI 二次元外挿法の問題点と三次元外挿法 NMRI ●Froudeの摩擦抵抗算式に対する疑問 ・Reynoldsの法則に従っていない。 ●1950年代のHughesの一連の実験から ・船体の抵抗=粘性抵抗+造波抵抗 ・物体形状が平板でないことによる粘性抵抗の増分を Form Factorkを用いて摩擦抵抗の1+k倍とする。 ・造波抵抗=Fnのみの関数 ・Form Factorkは船型のみによって決定される。 三次元外挿法 (現在、どちらの方法も経験的に使われている。) 三次元外挿法の概念図 NMRI 曳航水槽で通常行う推進性能試験 NMRI ●抵抗試験 ・静止流体中、模型船を一定速度で曳航し、その抵抗 を計測する。 ●プロペラ単独試験 ・静止流体中、一定回転数で回転させながら一定速度 でプロペラを曳航し、トルク、スラストを計測する。 ●自航試験 ・静止流体中、プロペラを一定回転数で回転させなが ら一定速度で模型船を曳航し、トルク、スラストを 計測する。 抵抗試験概略図(旧式の天秤型) NMRI 模型船・模型プロペラ NMRI ●模型船 ・木製、パラフィン製、(FRP製) ・船長 6m程度が多く使用される ・乱流遷移促進 トリップ・ワイヤー、スタッド ●模型プロペラ ・アルミ製、真鍮製 ・実験精度から 直径 20cm前後 プロペラ単独試験概略図 NMRI 三鷹第二船舶試験水槽(400m水槽)NMRI 水槽および曳引車主要目 ■ 水 槽 ・ 長さ ・ 幅 ・ 水深 400m 18m 8m ■ 造波装置 ・ プランジャー式 ・ 波長 0.5m∼15.0m ・ 最大波高 0.3m ・ 規則波及び不規則波 ■ 曳引車 ・ 長さ 17m ・ 幅 20m ・ 最高速度 15m/s 三鷹第二船舶試験水槽(400m水槽)NMRI 巨大タンカーや超高速船の試験にも対応 可能な世界最大級の曳航水槽。平成13、 14年度の2カ年で機能強化工事で・曳引 車制御系や造波装置(フラップ型から プランジャ型へ)を更新。 昭和40年(1965年)に完成。昭和41年には 皇太子殿下・妃殿下(当時)も見学された。 日本産業全体の中での造船業の大きさ。 三鷹第三船舶試験水槽(中水槽) NMRI 水槽および曳引車主要目 (1971年完成) ■ 水 槽 ・ 長さ ・ 幅 ・ 水深 水深を0.2mから 3.5mの範囲で調整することにより、浅水 域での巨大船の航行性能等に関する実験が可能 。 水深に対応できる造波機が設置されており、海洋構造物 や運動性能等のための多目的水槽として、各種の実験 にも活用できる。曳引車はボックスガーター方式の構造 で、平成7年度に 速度制御システムを改修し、実験精度 が向上し、実験が一層行い易くなった。 150m 7.5m 0∼3.5m ■ 造波装置 ・ プランジャー式 ・ 波長 0.5m∼10.0m ・ 最大波高 0.3m ・ 規則波及び不規則波 ■ 曳引車 ・ 最高速度 6m/s NMRI 3.キャビテーション水槽 キャビテーション現象 NMRI ●キャビテーションとは ・流体機器で液体が加速され、液体の静圧が下がる とき、ある限界の圧力以下で気泡が生じる現象。 ●キャビテーションによる影響 ・プロペラ性能劣化 ・プロペラ翼表面の壊食 ・振動・騒音 ●キャビテーション水槽の登場 ・キャビテーション水槽は曳航水槽の次に歴史がある。 ・世界初のタービン船タービニア号が予想性能を発 揮せず、その原因究明。 ・1895年 Parsons(英)世界初のキャビテーション 水槽を製作(現在ニューキャッスルの博物館にある) キャビテーション水槽 NMRI ●1920年前後にプロペラの壊食が論議される ・1925年 Kaiser Wilhelm Institut(独) ・1929年 DTNSRDC(米) ●軍艦→高速化→キャビテーション ・1936年 CIT(米) ・1938年 MARIN(蘭)、MIT(米) ・1941年 船舶試験所(目白) ●船舶の大型化によりキャビテーションが問題に ・1974年 大型キャビテーション水槽(三鷹) 大型キャビテーション水槽 NMRI 計測胴が2種類あり、第一計測胴ではプロペラや二次元物体の試験を、第二計測胴では模型船 の後方で作動するプロペラのキャビテーション試験が行える。特に模型船を用いた実験が可能 な、わが国唯一のキャビテーション水槽である。また、回流水の気泡核を供給する水素気泡発 生装置も備えている。動力計・分力計は試験に応じて4種類用意されており、通常プロペラのほ か斜流プロペラ試験などに用いられる。 大型キャビテーション水槽 ■ 方式 : 縦型減圧回流式、高さ10m、長さ18m ■ 圧力調整範囲 : 0.05∼2.0kg/cm2 ■ 第1計測部 : 断面0.75mφ、長さ2.25m、最大流速20m/s ■ 第2計測部 : 断面2m×0.88m、長さ8m、最大流速6.5m/s NMRI MARIN(蘭)の減圧曳航水槽 NMRI キャビテーション水槽と 曳航水槽の中間。見学に は、誓約書が必要。 ・圧力2500∼4000Pa. ・キャビテーション 数=0.4 ・240m x 18m x 8m NMRI 4.運動性能水槽(旋回腕水槽・角水槽) 旋回腕水槽 NMRI ●模型船を円形運動させて操縦性能を調べる。 ●最初の旋回腕水槽 ・1938年 Barrilon直径70mの半屋外式円形水槽を建設 ・日本では九州大学に現存する。 角水槽 NMRI ●運動にさらに自由度を持たせて操縦性能を調べたい。 ・Z試験等 ●角水槽の発達 ・1945年 Davidson 24m角の半屋外曳引車付円形水槽 ・1950年代 日本(船研)、カナダ、英国で曳引車無 しで模型船を無線操縦する角水槽が建設。 ・その後、X方向の曳引車とY方向の補助台車を持ち、 屋根付きのタイプが主流となる。 ●角水槽は通常、造波装置を備えており、操縦性能 試験だけでなく、耐航性試験にも対応可能。 三鷹第一船舶試験水槽(80m角水槽)NMRI 第2面造波機 第1面造波機 水槽主要目 1959年完成 長さ 80m 幅 80m 深さ 4.5m 第1面造波装置 第2面造波装置 波長 0.7∼12.0m 0.5∼10.0m 波高 ∼0.4m ∼0.3m 波形 規則波 不規則波 規則波 多方向不規則 波 フラップ式 プランジャー式 形式 * 波長により異なります。 野島崎沖での異常海難や漁船転覆、フェ リー浸水等の海難事故原因究明に活躍。 三鷹第一船舶試験水槽(80m角水槽)NMRI 無線操縦による自由航走模型船を用いて 船舶の操縦性能、耐航性能の試験を行う。 水槽の2面に造波装置を設置し、規則波だ けでなく、任意のエネルギー分布を持つ不 規則波や多方向波も発生させることができ る。 海洋構造物試験水槽(大陸棚水槽) NMRI 造波装置 水槽および台車の主要目(1978年完成) 潮流吹出口 走行副台車 主台車 固定副台車 潮流吸込口 消波板 27.1m 40m ■ 水 槽:長さ40m、幅27.1m、水深0∼2m ■ 造波装置 ・ フラップ式、周期0.4∼3s、最大波高0.3m ・ 規則波及び不規則波 ■ 潮流発生装置:最大流量824m3/min ■ 台車 ・ 主台車の最高速度 2.0m/s ・ 走行副台車の最高速度 1.5m/s ・ 固定副台車 : 移動可能 NMRI 5.その他の水槽 変動風水洞(1982年) NMRI 最大30m/secの定常風のほかに、変動する風を発生できる。 風洞の計測洞の下に水槽があり、船舶や海洋構造物の模型を 浮かべて、風、波、流れが共存する状態での実験ができる。 ■ 風洞部 ・ 形式 : ゲッチンゲン型水平回流式 ・ 閉鎮型 : 長さ15m×幅3m×高さ2m、風速 1∼30m/s、正弦変動風可能 ・ 開放型 : 長さ 3m×幅3m×高さ2m、風速 1∼30m/s、正弦変動風可能 ■ 水槽部 : 長さ15m×幅3m×水深1.5m ・ 造波装置 : 規則波及び不規則波、フラップ式、最大波高0.3m、周期0.6∼4.0s ・ 回流装置 : 流速 0∼0.3m/s 氷海水槽 NMRI ●初期の氷水槽(軍事的) ・1955年レニングラード北極南極研究所(ソ連) ・1958年 ハンブルグ試験水槽(独)、CRREL(米陸軍) ・1960年 海中技術研究所(米海軍) ●1968年アラスカでの石油試掘成功→民間でも ・1970年 アイオワ大水学研究所、アークテック社(米) ヴァルチラ社(フィンランド) ●日本の氷水槽(石油価格の高騰を受けて) ・1981年 船舶技術研究所 ・1982年 日本鋼管(津) 模型氷の作成 NMRI ●2つの方法 ・水槽表面を冷却結氷させて氷板を作る(氷水槽) ・別途作成した合成ワックス製板を水槽に浮かべる (模擬氷水槽) ●模型氷の条件 ・模型の縮尺に合わせて強さ(通常曲げ強さ)と弾 性率を小さくする必要がある。 ・塩、尿素、エチレングリコール等を水に添加 ●海技研の氷水槽では ・過冷却後、霧を吹いて柱状結晶を生成させる。 氷海船舶試験水槽(1981年) ■ ・ ・ ・ ■ ・ ・ ・ ■ ・ ・ ・ 試験水槽部 長さ 35.0 m 幅 6.0 m 深さ 1.8 m 製氷能力 結氷速度 3 mm/h(-20℃) 最大氷厚 300 mm 冷却方式 自然対流方式 曳引台車 長さ 6.4 m 重量 17 ton 速度 0.2∼2.0 m/s NMRI 氷海船舶試験水槽 NMRI 砕氷の様子 (横の観察窓から) 下に押し割る。 実験風景 世界の深海水槽 NMRI MARIN(オランダ)(2001) 45m x 36m x 10.5m(30m) Lab Oceano(ブラジル) (2003) 40m x 30m x 15m(25m) 深海水槽(2002年) NMRI 世界一深い試験水槽で(ギネス認定)、水槽周囲には、造波装置 (128台)があり、これによってあらゆる波を再現することができる。 水槽内には非接触式の3次元水中挙動計測装置があり、振動する ライザー管等の運動や水中を降下する物体の運動が計測できる。 深海水槽 NMRI 造波装置(128台) 16m 台車 5m 35m 30m 6m ■ 水槽 : ・ 水深0∼5mの円形水槽部 : 直径14m ・ 水深5m∼35mの深海ピット部 : 直径 6m ■ 台車 : XYZに移動可能 ■ ・ ・ ・ ・ 造波機 吸収型フラップ式造波機(128台) 周期 0.5∼4.0s 最大波高0.5m (周期1.5s) 規則波、短波頂不規則波