...

特別支援学校の医療的ケアにおける協働を促進する要因

by user

on
Category: Documents
23

views

Report

Comments

Transcript

特別支援学校の医療的ケアにおける協働を促進する要因
特別支援学校の医療的ケアにおける協働を促進する要因
一一
ハ教職員・養護教諭・看護師の協働とバーンアウトに着目した分析_
専 攻 学校教育学専攻
コース 臨床心理学コース
学籍番号 M10054G
氏 名 金山三恵手
I研究背景と目的
医療的ケアにおける協働尺度を構成する。
方法
特別支援学校の医療的ケアに現在従事してい
る一般教職員,養護教諭及び看護師の33名の調査
協力者及び大学院生と大学院教員により協働に
必要な項目を検討レ,39項目の質問紙を作成。
兵庫県内で看護師を配置して医療的ケアを実施し
ている全学校(25校)に質問紙を郵送し,19
校(149人)から回答を得た(回収率76%)。
結果
尺度の因子構造の検討一最尤法・プロマック
重度の障害をもつ子どもにとって,命を維持
するために医療が不可欠であるのと同様に,子
どもたちが人間らしく生きる上で教育もまた不
可欠である。そして,重度の障害をもつ子ども
達が安心して教育を受けるためには,学校にお
けるより良い医療的ケアの体制づくりが重要で
ある。
しかし,医療的ケアにおけるチーム内の協働
に焦点を絞った研究は今のところなされていな
い。また,一般教職員,養護教諭及び看護師の
3職種全てを対象とした全国調査も数少ない。
そこで、今後の特別支援学校におけるより良
い医療的ケアの体制作りを進めていく上で,医
療的ケアチームにおける臨働の促進要因と阻害
ス回転による因子分析行った。3因子構造が妥
当であると判断した。それぞれ第I因子<組
織・システム的要因〉,第■因子<専門的対人
関係要因>,第㎜因子〈日常的対人関係要因>
と命名した。
要因に着目して検討することは,有用であると
尺度の内的整合性の検Cr㎝bachのα係数を
考えた。
算出したところ,全体(α=.90),各下位因子
(α=.85∼.87)において十分な内的整合性が’
また,職業的対人援助者の職業病ともいわれ
るバーンアウトについて,Mas1acheta1.(1997
高域訳1998)は,“バーンアウトの原因は個人に
求められるのではなく社会環境の問題であり,
それは職場の構造と機能によって決まる”と述
べている。この様な職場の構造と機能は,医療
的ケアの協働の成否にも密接に係わっているの
確認された。
[研究2]
目的
医療的ケアチームにおける協働の促進要因と
阻害要因について検討する。
ではないだろうか。
方法
以上のことより,本研究では特別支援学校ρ
医療的ケアチームにおける一般教職員,養護教
諭及び看護師の協働を測定する尺度を作成し,
協働の促進要因と阻害要因を探索することに加
え,バーンアウトとの関連についても検討する
全国47都道府県892校の特別支援学校の学
ことを目的とする。
ちの202校から研究協力の承諾が得られた。こ
の承諾が得られた学校を調査対象校として,一
般教職員,養護教諭及ぴ看護師に研究1で作成
した質問紙及びバーンアウト尺度(田尾・久保,
1996)を郵送。うち178校(回収率88.1%)437
校長に研究協力依頼を行った。葉書の返信があ
ったのは,646校(回収率72,4%)であった。
返信があった学校のうち看護師を配置して医療
的ケナを実施している学校は327校で,そのう
皿研究方法と結果
[予備記査及ぴ研究1]
.日的
名から回答が得られた。
一116一
種,雇用形態,看護師配置人数,医療的ケア対象
人数及び協働得点であった。「脱人格化」に有意
差がみられた変数は,職種,雇用形態,医療的ケ
ア対象人数及び協働得点であった。「個人的達成
感」に有意差がみられた変数は,職種,雇用形態,
調査時期2011年7月∼8月
詰果1(主成分分析)
Cronbachのα係数を算出したところ,全体
(α=、白9),各下位因子(α:、80∼.82)にお
いて今回の調査でも十分な内的整合性が確認さ
れた。また主成分分析をおこなったところ,こ
の第2主成分は特に学校組織や医療的ケアのシ
ステムに大きく影響を受けている成分だと考え
られた。この結果は,Marti虻Roariguez,et,
医療的ケア対象人数及び協働得点であった。2要
因分散分析で交互作用は見られなかった。
結果2(重回帰分析)
重回帰分析の結果,統計的に有意な標準回帰
係数(β)が得られた変数は養護教諭(看護師免
許あり),正規雇用,医療的ケア対象者人数10人
a1.(2005)が指摘した,多職種間の医療的ケアチ
ームにおける協働には,人的資源管理などの組
織的要因も重要な役割であるという説を支持す
る結果であっただけでなく,協働を促進させる
うえでは,対人関係要因よりも、組織やシステ
ム要因が重要であるという新たな知見を見出す
以上及び協働得点の4つであった。
結果3(ロジスティック回帰分析)
バーンアウト得点高群について,バーンアウト得
点を従属変数としてロジスティック回帰分析を行っ
ことができた。
たところ,正規雇用の非正規雇用に対するオッズ
結果2(分散分析・亘回帰分析)
比は2.11であった。
性別,年齢,職種,雇用形態,医療的ケア従事
年数,医療的ケア実施形態,医療的ケア実施場所,
看護師配置人数,医療的ケアを必要とする児童・
生徒数及び校種が協働に及ぼす影響について分
散析を行った。なお多重比較では全てTukeyの
皿 考察及ぴ提言
本研究では,特別支援学校の医療的ケアにお
ける協働について,研究1「協働尺度の作成」,研
「協働得点」に有意差がみられた変数は,職種と
究2r協働の促進要因と阻害要因の探索」,研究3
「協働の成否がバーンアウトに及ぼす影響」の3つ
HSl)法を用いた。
従事年数であった。また,各下位尺度については,
の研究に取り組んだ結果,2つの重要な知見が得
組織・システム的要因に有意差がみられた変数は,
られた。
医療的ケア対象者人数であった。専門的対人関
係要因に有意差がみられた変数は,年齢,職種,
雇用形態及び従事年数であった。日常的対人関
係要因に有意差がみられた変数は,職種と雇用条
件であった。また看護師配置人数と医療的ケア
対象生徒人数において交互作用が有意であっ
1つは,今回の研究によって医療的ケアにおけ
た。
大きいという新たな知見が得られたことである。
る協働の構成要因として,「組織・システム的要因」
「専門的対人関係要因」「日常的対人関係要因」の
3つの要因を抽出し,特別支援学校の医療的ケア
チームにおける協働の促進要因として,対人関係
要因よりも組織・システム的要因の方がより影響が
もう1つは,協働はバーンアウトに大きく影響を及
[研究3]
ぼす要因であるという結果が得られたことである。
目的
その二つの成果をふまえ特別支援学校の医療
協働の成否がバーンアウトに及ぼす影響につ
的ケアにおける協働について以下のように考える。
いて明らかにする。
特別支援学校の医療的ケアにおける協働を促進さ
せるには,個人の能力に頼るのではなく,組織・シ
結果1(相関分析)
バーンアウト尺度との相関分析を行った結果,
Pearsonの相関係数は全体(r=一.47),各下位因
子(r=一.32∼一.49)の弱∼中程度の負の相関関
ステムとして協働をおこなう環境を整えることが最も
係がみられた。
ンアウトを防ぐ上で重要であると考えられる。
結果2(分散分析)
子どもたちが生き生きと輝ける学校づくりをすす
重要である。そして,よりよい協働関係は,教育効
果をあげるだけでなく,医療的ケア従事者のバー
1要因の分散分析を行った結果,「バーンアウト
めていくことは,そこに働く職員が生き生きと輝ける
得点」に有意差がみられた変数は,職種,雇用形
職場でもあるということではないだろうか。
態,看護師配置人数,医療的ケア対象人数及び
協働得点であった。また,各下位尺度については,
主任指導教員 岩井圭司
指導教員 岩井圭司
r情緒的消耗感」に有意差がみられた変数は,職
一117一
Fly UP