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経営戦略と技術戦略(1)

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経営戦略と技術戦略(1)
技術に優れる日本企業が
なぜビジネスで負けるのか
イノベーション・ケーススタディ
2011年5月17日
A.T. カーニー株式会社
山本 直樹
©2010 A.T. KEARNEY K.K. All Rights Reserved.
禁無断転載・複製
クイズ
一人当たりGDP世界ランキング
日本は2000年時点で3位
今は何位?
A.T. Kearney 22/7566/100311
2
過去200年のGDPシェアの推移
1820年
1950年
1973年
2003年
2030年
西ヨーロッパ
23.0
26.2
25.6
19.2
13.0
アメリカ
1.8
27.3
22.1
20.7
17.3
豪・加・NZ
0.1
3.4
3.3
3.1
2.5
日本
3.0
3.0
7.8
6.6
3.6
先進地域計
27.9
59.9
58.7
49.6
36.4
中国
32.9
4.6
4.6
15.1
23.8
インド
16.0
4.2
3.1
5.5
10.4
他アジア諸国
7.4
6.8
8.7
13.2
15.4
東ヨーロッパ
3.6
3.5
3.4
1.9
1.3
旧ソ連
5.4
9.6
9.4
3.8
3.4
ラテンアメリカ
2.1
7.8
8.7
7.7
6.3
アフリカ
4.5
3.8
3.4
3.2
3.0
先進地域以外
72.1
40.1
41.3
50.4
63.6
アジアの世界に占める割合
59.3
14.9
24.2
40.5
53.3
注: 単位%。他アジア諸国は1950年からはバングラデシュ、パキスタンを含む。
出所: Angus,Maddison, "Shares of the Rich and the Rest in the Rest in the World Economy: Income Divergence Between Nations. 1820-2030," Asian
Economic Policy Review (2008) 3
日本経済の低迷(超長期)①
日本の上場企業の営業利益率の推移
製造業の利益率の長期低下、非製造業の一貫して低い利益率
注:サンプルは東証、大証、名証(1部・2部)の上場企業。構成は期間により変動(最大1,144社)
出所:「戦略不全の論理」P32(三品和広著、東洋経済新報社、2004)
日本経済の低迷(超長期)②
日本の上場製造業の営業利益率・為替・景気循環の関係
景気後退期 オイルショック
(一次) (二次)
プラザ合意
製造業の収益性は景気循環と為替に連動。しかし、長期低下傾向は覆せず
注:サンプルは東証、大証、名証(1部・2部)の上場企業。構成は期間により変動(最大1,144社)
出所:「戦略不全の論理」P34(三品和広著、東洋経済新報社、2004)、A.T. カーニー分析
原因:「グローバル経営力」の欠如
グローバル化が進まない
「言い訳」は色々
日本企業が乗り越えるべき課題
n  「長期」「世界」視野での構想の欠如
•  大きな国内市場
戦略
•  独自のニーズを持つ日本の顧客
•  日本企業特有の風土、雇用慣行
•  日本語の壁、国際化人材の欠如
n  経営資源(ヒト、カネ)は依然として国
資源配分
•  外国人のマネジメントの難しさ
・ ・ ・ •  短期的な収益を追求し、小さな「成
長戦略」
•  海外展開は、日本市場との類似性
等の視点から攻略し易い市場のみ
内に厚い配分
n  製品戦略もグローバル志向というより
国内主導
n  「国内部門」 vs. 「海外部門」
組織・人事
n  国内部門生え抜き中心の経営チーム
n  海外法人は現地任せの運営
結局は「経営」の力で乗り越えな
ければいけない課題
<ケース・スタディ>
汎用DRAMにおける経営力の差
汎用DRAMのグローバル・シェアの推移
日本企業は汎用DRAM
の低コスト大量生産によ
りシェアを拡大
インテル
DRAMを正解で最初に開発し
た企業でありながら、1985年に
DRAMから完全に撤退し、
MPUに特化することを宣言
日本企業
各社ともシステム
LSI注力を宣言
汎用DRAMの
縮小・撤退を開始
過剰技術で過剰品質の日本メーカ
日本
韓国・台湾など
最優先事項
高品質、極限技術
歩留り、コスト
要素技術
技術開発力は高い
極限性能を追求する
オーバースペック気味
既存技術を延命する
技術開発には興味無い?
装置メーカー任せ
インテグレーション技術
高性能実現のため、あら
ゆる工夫を盛り込む
その結果工程数が多い
歩留り向上のためにイン
テグする(韓国)
マスク枚数、工程数をなる
べく減らす(台湾)
生産技術
歩留りよりも高品質優先
高級な装置を並べる
装置のスループット悪い
歩留り向上を徹底する
既存装置を使いこなす
装置稼働率・スループット
向上を目指す
出所: 日本の「半導体」敗戦 湯之上 隆
DRAMのマスク枚数比較
30
サムスンは、チップ
面積を最小化した
25
マイクロンは半分の
マスクで作った
20
枚
数
15
10
日本
A社
29枚
日本
B社
28枚
日本
C社
26枚
韓国
D社
22枚
韓国
E社
20枚
5
0
国籍・メーカー
日本は「安く作る技術」が弱い
出所: 日本の「半導体」敗戦 湯之上 隆
韓国
F社
20枚
米国
G社
15枚
マスク枚数が減らない理由
現状
開発センター長
20枚で作れ
設計
設計部長
試作
プロセス開発部長
何とか20枚で
設計しました
性能と品質は
下げるな
32枚
量産工場長
歩留りを
上げろ
32枚
20枚
出所: 日本の「半導体」敗戦 湯之上 隆
量産
1枚2枚と増加
日系メーカとインテルの違い
日系メーカー
インテル
n  研究部・開発部・量産部に
士農工商がある
n  どれだけの最終商品をいく
らで出荷したか
n  開発部にいるエンジニアは
開発にしか興味がない
n  それによってどれだけ利益
を出したか
n  コスト削減は工場の仕事
技術の「専門家」が偉い
「儲けたヤツ」が
一番偉い
経営の力とは
キーワード
ポイント
n  リスク
•  稟議でリスクはつぶせるが、リター
ン(価値)は増えない
n  トレードオフ
•  正解はナイ
•  やってみなければ判らない
•  結果責任
n  トップダウン
•  「決める」のは個人でしかない
n  専門家
•  「全体観」と「責任」で対抗
決める力
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この講義の狙い
n  リーダーを育てる
n  そのために、この講義では
「経営としての考え方」 を
体感する
A.T. Kearney 22/7566/100311
18
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この講義において大切な事
n  自分で考える
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ディスカッション 1
経営とは何か
「経営とは○○だと思う。なぜならば…」
自分の言葉で表現し、なぜそう考えたか
考え方を示す
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20
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ディスカッション 1
経営とは何か
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考えるヒント
分けて考える
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分けて考える(対比)
経営 と 執行
本社 と 事業部
戦略 と 戦術
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経営とは
ビジネス
技術
研究開発 ? 将来
R(リサーチ)
B 事業部
A 事業部
現在
事業領域 D(デベロップメント)
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クラウゼヴィッツ
戦略とは戦争目的を達成するために
戦闘を組み合わせる活動
戦略レベルでの失敗を
戦術レベルで補う事は出来ない
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孫子
技
将
兵
×
Skill
(能力)
Will
(やる気)
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ディスカッション 2: 本社の役割とは?
?
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本社の4つの役割
①全社目標の設定
②ポートフォリオ管理
③個別目標のストレッチと
モニタリング・・・
④共通基盤づくり
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ケーススタディ 1
テーマ: ヴィジョンについて考える
1)
a. 企業にとって、ヴィジョンとは何か定義する。 b. ヴィジョンは企業にとってなぜ必要か考察し、
c. ヴィジョンの要件を整理する
2)
優れた企業ヴィジョンを一つとりあげ(どんな企業でもOK)
a. 企業の概要(どんな企業か)と
b. その企業のヴィジョン(どんなヴィジョンか)を紹介する
3)
2.b のヴィジョンがなぜ優れていると思うか議論する
上記1) 3)までを5分以内にプレゼンする
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本社の4つの役割
①全社目標の設定
②ポートフォリオ管理
③個別目標のストレッチと
モニタリング・・・
④共通基盤づくり
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ビジョンの提示と全社の求心(IBM)
フルライン戦略
e-Business
ビジョン
コンセプト
Pervasive Computing
戦
略
新
転
換
Grid
Computing
Autonomic
Computing
(
Deep Computing
サーバー・ミドルウェアに集中
e-Business
on demand
スパコン
サーバー
PC
事 携帯端末
業
ミドルウェア
OS
)
アプリ
集
中
選
択
デスクトップのモデルを整理、縮小
×
×
×
開発・製造から撤退
開発から撤退
新ビジョン・
コンセプトに
合わない事業
は縮小・撤退
開発から撤退
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講義予定
テーマ
課題
ケース
n 
5/17 構想する
ビジョンの欠如
n 
4/27 先を読む
不連続な変化への対応
演習1:想定される変化
n 
5/11 意義を考える
課題発見
演習2:研究開発領域の設定
n 
5/18 まとめ
グローバル競争と日本企業
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次回の宿題
下記企業の「クラウド」に対する取り組みを議論
しなさい
Google, IBM, SAP, Salesforce,
Microsoft, Amazon,
・どんな企業か概要を説明し(事実)
・クラウドに対しどのように取り組んでいるか纏め(事実)
・なぜその様な取り組みをしているのか、その理由を考察せよ(推論)
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33
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