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総合プロデュース活動の取り組み

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総合プロデュース活動の取り組み
総合プロデュース機能
総合プロデュース活動
商用化開発
市場展開
総合プロデュース活動の取り組み
みぞぐち ま さ と おきむら
たかゆき
溝口 匡人 /沖村 隆幸
情報通信市場の急速な発展のもと,多様化・複合化するお客さまのニーズ
にこたえるため,NTTでは総合プロデュース機能を整備して研究開発を推進
ま つ だ あつし
松田
淳 しています.本特集では,総合プロデュース活動の概要を示し,いくつかの
NTT第三部門
取り組み事例を紹介します.
総合プロデュース活動の
取り組み背景
NT Tは,技術革新に基づく将来構
想を「ビジョン」として作成するととも
れは,5年先の光による本格的なブ
術の確立」と事業導入に向けた「商用
ロードバンド& ユビキタス時 代 の安
化開発」に大別し,事業化に向けた商
全・豊かな社会生活・企業活動の変
用化開発は総合プロデューサが全権限
革を展望するとともに,NT Tグループ
と責任を持って遂行する仕組みです.
共通のコンセプトを表したものです.
総合プロデュース機能の概要
に,これに沿うかたちで研究開発や実
このビジョンの発表に対応してNT T
証実験を進め,その成果を新しいサー
R&Dはその役割を見直し,研究開発
ビスとして花開かせてきました.1999
成果の事業化推進をさらに強化するこ
る間には,いわゆる「死の谷
年 のNTT再 編 成 以 来 , NT T R&D
とを目的として,2003年7月に「総
在し,多くの研究成果がこれを超えら
は,着実にその成果をN T T グループ
合プロデュース機能」を整備しました.
れずに埋もれているといわれています.
に提供しています.2002年11月に,
この総合プロデュース機能の概念図を
これを克服するため,総合プロデュー
NT Tは新しいビジョンとして,「“光”
図1に示します.NT T R&Dの取り組
サはNT T研究所で創出したコア技術
新世代ビジョン」を発表しました.こ
みを,競争優位の源泉となる「コア技
をどのようなかたちで商用化開発すれ
研究開発成果を事業化に結びつけ
(1)
事業会社ニーズ
市中技術・製品
市中技術・製品
総合プロデュース機能
市中技術・製品
リサーチ
リサーチ
リサーチ
コア技術開発
コア技術開発
基盤技術の確立
・目利き
・市場・技術動向分析
・マーケティング
・開発企画&提案
・マーケットクリエーション,
新事業開拓
市場動向
図1 総合プロデュース機能
10
NTT技術ジャーナル 2005.3
・関連業界との
アライアンス
による実用化
・
・
・
・
・
・
・事業会社での応用R&D
商用化開発
創出したコア技術の
事業導入に向けた開発
事業導入
」が存
特
集
■サービスプラットフォーム
◇サウンド入力型楽曲検索サービス
■レゾナントサービス
◇ナビゲーション・プロジェクト
■セキュリティ
○セキュア企業網アクセス制御シス
テム
○privangoメールシステム
通信関連の技術を通信分野以外に応
す. NT Tグループを代表するポータル
用することも総合プロデュース機能を通
サイト「goo」を提供するNT Tレゾナ
じて推進しています.総合プロデュース
ントで,昨年の12月15日にサービス開
機能の設置によって,商用化開発に向
始されました(http://mobile.goo.ne.
けてリスク負担と責任の所在が明確化
.
jp/melody/)
され,着実かつ効率的な開発が行え
サービス開始に先立って,昨年10月
■ICカード
○TypeB ICチップ搭載携帯電話
るようになってきました.2003年12月
には,音楽業界のイベント「in the city
■オープンソースソフトウェア(OSS)
○OSS利用の推進
にはNT Tレゾナントを設立し,NT T
TOKYO 2004」で 実 証 実 験 を行 い,
■環境・エネルギー
○公共系環境ITシステム
○iDCシールドバウルト
研究所で生まれたさまざまなビジネス
音楽ファン,コンテンツホルダの意見を
の種を基にサービスの商用化に取り組
幅広く収集し,サービスに対するニーズ
■ビジネスクリエーション
○人の体を信号経路としたヒューマ
ンエリア・ネットワーク技術
◇歌声合成技術“ワンダーホルン”
んでいます.昨年11月に発表された
を確認するとともに,サービス開始に向
NT Tグループ中期経営戦略に沿った
けてのプロモーションを行いました.
■デバイス
○指紋認証トークン“FingerQuick”
◇スーパールミネッセントダイオード
具体的な取り組みについても,この総
このサービスは,NT T 研究所の「高
合プロデュース機能を最大限に生かし
速メディア探索技術」と「サービス連
て,効果的に取り組みます.
携技術」を,プロデューサの目利きに
○:本特集の個別記事で紹介
◇:本巻頭記事で簡単に紹介
図2 総合プロデュース機能で
取り組み中のテーマ例
総合プロデュース活動の
取り組み事例
より組み合わせて実現しました.高速
メディア探索技術によって,携帯電話
で送られた音源から特徴情報(フィン
ば事業化に結びつくかをプロデュース
現在,総合プロデュース活動で取り
ガープリント)を抽出し,そのコンテ
活動によって導き出します.具体的に
組んでいるテーマの事例として,図2
ンツの属性情報を含むデータベースか
は,技術テーマごとに技術の目利き,
にその一部を示しました.本特集では,
ら楽曲を特定します.またサービス連
市場動向やニーズの分析,マーケティ
『サイバーセキュリティプロジェクト』
携 技 術 により, 電 話 を受 けるC T I
ングなどを実施し,各技術テーマに適
『TypeB ICチップ搭載携帯のプロデュー
( Computer Telephony Integration )
した商用化開発の企画提案を行いま
ス活動』『オープンソースソフトウェア
サーバやフィンガープリントどうしを照
す.総合プロデューサは,プロジェク
に関するプロデュース活動』『環境・
合する複数サーバの相互連携を行いま
トの実施にあたり,定量的な事業規模
エネルギー分野におけるプロデュース活
す.この技術により,今後のサービス
からなるコミットメント を設定し,事
動』『人の体を信号経路としたヒュー
の追加や変更に伴うシステム開発にも
業化に責任を持ちます.その責任を果
マンエリア・ネットワーク技術“レッ
柔軟に対応することができます.
たすため,リソース配分やその見直し,
ドタクトン”』『指紋認証デバイスへの
今後は,フィンガープリントデータ
不採算プロジェクトの撤退などに全権
取り組み』を個別記事にて紹介しま
ベースをコアに,放送・インターネッ
限を持ち,機動的にプロジェクトを遂
す. N T T 研 究 所 が 行 う商 品 化 開 発
トモニタリングサービス,アフィリエイ
行します.
は,基本的にはすべて総合プロデュー
トサービスに必要なコード変換サービ
総合プロデュース機能では,NTT
ス機能の下で進めています.また以下
ス等を,コンテンツホルダ,著作権管
R&Dが持つ幅広い基盤技術を,市中
では,個別記事に取り上げていない最
理団体,放送事業者向けに提供する
技術と組み合わせながら,どのような
近の成果で,プロデュース活動が効果
「コンテンツ・アグリゲーション・プラッ
かたちでタイムリーに事業化していく
的に機能している事例をいくつか簡単
トフォーム」として,業界各社と実証
かを,NT Tグループ内だけでなく,グ
に紹介します.
実験を積み重ねながら,構築していく
ループ以外の企業や団体などとのアラ
■楽曲検索サービス「あて!?メロ」
予定です(図3).
イアンスも視野に入れ,積極的に事業
「あて!?メロ」は街中やTV,ラジ
化を推進します.またこれまで培った
オから流れる音楽を約20秒間携帯電
プロジェクト
話に聞かせると,曲名,アーティスト
ブロードバンドの普及に伴い,日々
名などを知ることができるサービスで
増え続けているインターネット上の情
*
* コミットメント:プロデューサが達成に責任を
持つ年間目標のこと.
■gooラボでのナビゲーション・
NTT技術ジャーナル 2005.3
11
総合プロデュース活動
報を有効に活用するための新しいナビ
へ移行)」,自分好みのコンテンツをド
ルサマリ」,ニュースサイトやブログサ
ゲーション技術の重要性が高まってい
ラッグ&ドロップで自由なレイアウト
イトの最新のホットトピックを抽出して
ます.NT TとNT Tレゾナントは,ビ
に組み合わせて閲覧できる「パーソナ
自動的に提示する「ホットウインドウ
ジネスや娯楽など生活のさまざまな場
面で必要となる情報に適切に出会うこ
とのできる第3世代検索サービスの実
コンテンツ市場の活性化
著作権管理団体
JASRAC RIAJ
現を目指し,共同実験プロジェクト
「ナビゲーション・プロジェクト」を立
ち上げました.NT Tの研究成果を実
CD
CPRA
データベース
消費者
着うた チケット グッズ
・メロ
コンテンツホルダ
レコード プロダク 音楽
ション 出版社
会社
データベース
際に評価する場として運営してきた
「 g o o ラボ( http://labs.goo.ne.jp/)」
上でさまざまな公開共同実験を行い,
商用サービスに向けたマーケティング
を進めています.本プロジェクトで開
始した公開実験には,ニュース記事の
検索結果を分類表示する「トピックマ
スター(TopicMaster)」,ブログ記
事の全文検索や話題になっている記事
の検索を効率よく行う「ブログスコー
プ(2月1日より,gooの本サービス
サウンド入力型
携帯楽曲検索サービス
「あて! ?メロ」
携帯楽曲検索+検索結果からのアフィリ
エイト(CD販売,着うた,着メロ等)
キャンペーンへの活用,消費者行動デー
タ提供などマーケティング関連サービス
サービス連携のための
プラットフォーム提供
放送モニタリングサービス
インターネット
モニタリングサービス
放送された楽曲のリスト提供
違法ファイルのモニタリング
アーティストオンエア通知
ランキング情報提供
インターネット上における
プロモーション効果の測定
メディア露出と販売情報の
相関分析データ
放送受信設備
CTI設備
コンテンツ・アグリゲーション・
プラットフォーム
インターネット
巡回ロボット
連携
フィンガープリントデータベース
(コンテンツを探すためのデータベース提供・維持管理)
メタデータ
データベース
図3 コンテンツ・アグリゲーション・プラットフォームと
コンテンツ市場向けサービスイメージ
ニュース記事分類・検索実験
Webページパーソナライズ高度化実験
●検索結果をカテゴリ分けされた
ラベルで提示
・結果が概観可能
・絞込みが容易
●新たな情報の発見が可能
●ドラッグ&ドロップによる
直感的な操作
●RSS,HTMLで記述された
コンテンツを表示可能
ブログ検索高度化実験
最新話題提示実験
第3世代の検索
サービス創出
●類似記事検索技術
●高効率な独自データベースに
よるリアルタイムリンク解析
技術
●話題語を抽出し,ジャンルに分けて表示
●興味や関心に応じたジャンルの選択が可能
●利用シーンに応じた3タイプの気付き支援
インタフェース
RSS: Resource Description Framework Site Summary
図4 ナビゲーション・プロジェクト
12
NTT技術ジャーナル 2005.3
デ
ー
タ
ベ
ー
ス
連
携
特
集
直径3mm
自作の歌詞
好きな歌手の声
サクラマスの魚卵
自分だけの
歌声メッセージ
バッハの曲
あらかじめ作製した
個人歌声データベース
受精6時間後
図5 歌声合成技術「ワンダーホルン」の利用例
(Hot Window +)
」等があります(図
■医療計測用スーパールミネッセント
2mm
2日後
4)
.本プロジェクトによって新しいナ
ダイオード
ビゲーション技術を広くお客さまに直
NT Tでは光通信システムの大容量
接体験していただき,お客さまの生の
化,高度化に対応するために,高度な
声をフィードバックすることで,技術・
光デバイス技術を蓄積してきました.
サービス双方の早期充実を図っていき
総合プロデュース機能に基づき,こう
ます.
して蓄積された技術を通信以外 の分
機能を最大限に活用して,研究所技術
■歌声合成技術「ワンダーホルン」
野へ応用することにも取り組んでいま
の事業化を機動的に進めていきます.
「ワンダーホルン」は,あらかじめ
す.その1つとして,医療用機器であ
■参考文献
個人の実声収録によって作製した個人
る光干渉断層計(OCT: Optical Cohe-
(1) http://www.atp.nist.gov/atp/secy-rept/
events_rpt.htm
歌声データベースと,その場で入力さ
rence Tomography)への適用が可能
れた楽譜と歌詞から,人間の歌声をコ
なスーパールミネッセントダイオード
ンピュータで合成する技術です.歌声
( SLD: Super Luminescent Diode)
特有の倍音構造を忠実に再現するモ
OCTは,光干渉断層イメージング
抽出した特殊ノイズをミックスする技
技術を活用した無侵襲生体断層計測
術により,歌声データベースを用意し
装置です.図6に,財団法人山形県
た人の声で思いどおりの歌声メッセー
産業技術振興機構によるサクラマスの
ジを作成することが可能です(図5).
魚 卵 のO C T 観 測 例 を示 しました.
ワンダーホルンはすでにNT Tアドバ
OCTは今後,内視鏡との融合が進み,
ンステクノロジ(NT T-AT)を通じて,
ガンの早期発見・治療に活用されると
ゲームなどのエンタテインメント分野,
見込まれています.開発したSLD光源
および音楽教育分野への提供が開始
は,内視鏡融合 OCT装置に適した長
されています.NT T-ATが運営する
波長帯で,広い波長帯域と高い光出
「うたばら.com(http://www.utabara.
力を両立させることに成功しました.
com/)」では,用意されたサンプル歌
これにより,鮮明かつ精細な断層画像
声データベースを使って実際に歌声合
を得る内視鏡融合 OC T装置の実現が
成機能を試してみることができます.
期待されます.
も精力的に有望な用途開拓を継続し
ていく予定です.
図6 山形県魚・サクラマスの
成長の様子を示すOCT像
光源を開発しました.
デルの採用と,個人の歌声から実際に
総合プロデュース機能により,今後と
3mm
今後の取り組み
NT Tでは,今後も総合プロデュース
(左から)沖村 隆幸/ 溝口 匡人/
松田
淳
総合プロデュ−ス機能を導入し,まもな
く2年です.急速に発展する情報通信市場
で多様化・複合化するニーズにこたえるた
め,NTTのR&Dは総合プロデュース機能を
活用して機動力のある研究開発に取り組み
ます.
◆問い合わせ先
NTT第三部門 プロデュ−ス担当
TEL 03-5205-5343
FAX 03-5205-5329
E-mail [email protected]
NTT技術ジャーナル 2005.3
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