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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System
熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
生体脳内でのGABA作動性神経細胞機能のコンディショナ
ルノックアウト及び一過性制御の試み
Author(s)
棚平, 千代子
Citation
Issue date
2009-03-25
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/14377
Right
学位論文
Doctoral Thesis
生体脳内でのGABA作動性神経細胞機能の
コンディショナルノックアウト及び一過性制御の試み
(An attempt to make conditional knockout and temporal
manip ulation of GABAergic neurons in vivo)
棚平 千代子
Chiyoko Tanahira
熊本大学大学院医学教育部博士課程生体医科学専攻脳回路構造学
指導教員
玉巻 伸章 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程生体医科学専攻脳回路構造学
2009年3月
学位論文
Doctor’s Thesis
論文題名:
生体脳内でのGABA作動性神経細胞機能の
コンディショナルノックアウト及び一過性制御の試み
(An attempt to make conditional knockout and temporal
manipulation of GABAergic neurons in vivo)
棚平 千代子
Chiyoko Tanahira
指導教員:
熊本大学木学院医学教育部博士課程生体医科学専攻脳回路構造学
玉巻 三章 教授
審査委員:
知覚生理学担当教授 宋 文悉
生体機能生理学担当教授 山本 達郎
神経内科学担当教授 内野誠
神経精神科学担当教授 池田 学
2009年3月
目次
1. 要旨 ・・・・・・・・・・… 邑・・”・oo’’”o・●’・…
1
II. 発表論文リスト ・・・・・・・・・・・・・・・・・・… .......
2
III.謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
3
Iv.略語一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
4
V. 研究の背景と目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
6
大脳皮質神経細胞
GABAと精神神経疾患
GABA性神経伝達とノックアウト実験
VI.実験1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
8
タモキシフェン誘導性Cre遺伝子組換え系を用いた門内皮質局所の
VGATコンディショナルノックアウト
VI・1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
8
タモキシフェン誘導1生CreAoxP遺伝子組み換え系
小胞性GABAトランスポータv・一一(vesicular GABA transporter:VGAT)
嗅内皮質局所のVGATコンディショナルノックアウト
VI・2 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
10
動物
タモキシフェン塊の作製と脳表への留置と行動観察
免疫組織化学分析
in situハイブリダイゼーション
CA(limRFPI一(MP Rosa26・(>reER 7クヌ脳弓へのタモキシフェン塊の留置
VI・3.結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
12
タモキシフェン誘導性遺伝子組子えの程度には個体差があった
VGA T fiifl∫Rosa26・CreERマクスで活動性の低下をみとめた
in situハイブリダイゼーションによるVGAT mRNA検出
VGAT免疫染色
GABA免疫染色
VGLUT1免疫染色
Nissl染色
VI-4 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
15
嗅皮質局所のVGAT遺伝子不活化と結果のばらつき
組織学的解析で明らかになった海馬、扁桃体、新皮質、帯状回の変化
活動性の低下
実験方法について
VII.実験2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
17
光刺激による大脳皮質Parvalbumin陽性GABA作動性神経細胞活動の
一過性制御の試み
VII-1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・… ........
17
Parvalbumin陽性GA:BA作動性神経細胞
光刺激による神経細胞活動制御
大脳皮質におけるPV陽性錐体細胞
VII-2. Halorhodopsin,channelrhodopsin発現プラスミドの作製と培養細胞による
発現解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
18
遺伝子コンストラグトの作製
培養細胞での発現解析
VII・3. BACトランスジェニック法を用いたPV’Creマウスの作製・・…
20
VII-3-1 方法
トランスジェニックマウスの免疫組織化学分析 ・・・・…
in situハイブリダイゼーション ・・・・・・・・・・・…
VII・3・2.結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
PV」Creマウスでは、 PV陽性細胞に一致してCreを発現する
GFP発現Creレポーターマウスを用いて明らかになった新皮質第V層
PV陽性錐体細胞の分布様式
VII・4.今後の展望 ・・・・… 一・・・・・・・・・・・… ...
AU1120σ
Creレポーターマウス作製 ・・・・・・・・・・・・・…
9臼9珊9一9一9刮
BACトランスジェニック法 ・・・・・・・・・・・・…
25
VIII. 結語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
26
IX. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…
27
1.要旨
大脳皮質を構成するグルタミン酸作動性興奮性神経細胞とγ ’aminObutyriC aCid(以下
GABA)作動性抑制性神経細胞は、常に調和をとりながら活動している。多様性に富むGABA
作動性神経細胞は、大脳皮質神経活動において鍵となる働きをしているようであり、また、一
部の精神神経疾患との関連が報告されている。今までに、生きた成体で局所的にGABA作動性
神経伝達を阻害した報告はない。そこで、今回、生きた成体で大脳皮質GABA性神経伝達を局
所的に制御することを目的とし、2つの実験を計画した。
実験1では、嗅内皮質のGABA放出を阻害するため、タモキシフェン作用部位でCre遺伝
子組換えが起き、小胞性GABA輸送体(vesicula■GABAtr ansp orter、以下VGAT)遺伝子が
不活化されるという特徴を持つVGATHifl Rosa26-CreER 7 0.xを用い、嗅内皮質脳表にタモキ
シフェン塊を留置し、行動観察と組織学的解析を行った。VGA7!7ifi Rosa26-CreERマク,スのな
かに、著しく活動性が低下したマウスがおり、VGAT mRNA発現とVGAT免疫染色結果から、
嗅内皮質のVGATノックアウトが確認できた。また、海馬、扁桃体、新皮質、帯状回では、明
らかな行動変化が生じなかった》αA”服㊧05a26-OrθE究マクスと他のコントロール群にはみら
れない二次的変化が生じていた。GABA免疫活性が増強し、海馬、扁桃体では多数のアストロ
サイト様細胞がGABA免疫活性をしめした。扁桃体ではVG:LUT 1免疫活性も増強していた。
海馬では、歯状幽門神経細胞が減少している印象を受け、VGAT、 VGL、UT 1陽性軸索終末の分
布パターンが変化しており、薬剤誘発性てんかんモデル組織像に一部類似する変化だった。
この実験系は再現効率が悪く、十分な解析ができなかったけれども、六白皮質局所のVGAT
不活化によるGABA性神経伝達の障害は、著しい活動1生低下をもたらし、組織学的に脳の広範
囲で興奮性と抑制性神経活動に変化を来す可能性があることがわかった。
実験2では、興奮性神経細胞の発火タイミングを効果的に調節しているGABA作動1生神経細
胞サブタイプの1つであるParvalbumin(以下PV)陽性細胞の活動を、大脳皮質局所で制御す
るために、光照射によって細胞膜を過分極、脱分極させ得る2つのロドプシンタンパク
halorhodopsin(以下NpHR)とchannelrhodopsin-2(以下ChR2)を用いた実験を計画した。
まず、NpH:RとChR2を培養細胞に発現させ、光照射によって膜電位変化を誘導することが
できた。次に、PV陽性細胞特異的にNpHRとChR2を発現させるために、3種類のトランス
ジェニックマウス作製を計画した。まだ、進行中であり、今回、そのうちの1つのPV一 Creマウ
スを作製した。組織学的解析で、PV陽性細胞に一致して遺伝子組換えタンパクCreを発現する
ことがわかった。また、PV」CreマウスとG:FP発現Creレポーターマウスを用いてPV陽性細
胞にG:FPを発現させ、PV陽性細胞の形態を詳細に観察した結果、大脳皮質にはPV陽性GABA
作動性神経細胞だけでなく、少数の:PV陽性錐体細胞が存在することがわかった。 PV陽性錐体
細胞の分布を調べた結果、前頭部と尾側側頭部のPV陽性細胞はGABA作動性神経細胞のみで
あるため、PV陽性GABA作動性神経細胞をターゲットした光刺激実験が可能であることがわ
かった。
1
II.発表論文リスト
Tanahira, C., Higo, S., Watanabe, K., Tomioka, R., Ebihara, S., Kaneko, T.,
and Tamamaki, N. (2009). Parvalbumin neurons in the forebrain as revealed by
parvalbumin-Cre transgenic mice. Neurosci Res 63, 213-223.
2
III.謝辞
本研究を行うにあたり、全面的に御指導下さった熊本大学大学院医学薬学研究科脳回路構造
学分野の玉巻伸章教授に深く感謝いたします。また、ご支援下さった肥後成美先生をはじめと
する脳回路構造学分野の皆様に厚く感謝いたします。
3
IV:略語一覧
BAC: bacteri al artificial chromosome
’
CA G promoter; cytomegalovirus immediate-early enhancer and chicken beta-actin promoter
CG; cingulated gyrus
ChR2; channelrhodopsin-2
CMV; cytomegalovirus
cop4; channelrhodopsin 4
CPU; caud-putamen
CR: calretinin
’
Cx; neocortex
DAB ; 3,3’ 一diaminobenzidine tetrahydrochloride
DG; dentate gyrus
Ent; entorhinal cortex
fA ; fragment A
fB ; fragment B
GABA; y-aminobutyric acid
GABA-T; y-aminobutyric acid transaminase
GAD; glutamate decarboxylase
GAT; y-aminobutyric acid transporter
GFP; green fluorescent protein
GL; granular layer of the dentate gyrus
GP; globus pallidus
GYFP; Gprotein fused to yellow fluorescent protein
H: hilus
,
Hip; hippocampus
IR: immunoreactive
’
IRES; internal ribosomal entry site
LD: laterodorsal thalamic nucleus
’
LMo; lacunosum moleculare layer
M1 ; primary motor cortex
ML; molecular layer
mRFP; modified red fluorescent protein
nls; nuclear localization signal
NpHR; halorhodopsin
PB S; phosphate-buffered saline
4
PCR; polymerase chain reaction
PFGE; pul sed-field gel electrophoresis
Pir; piriform cortex
polyA; polyadenylation signal
ProK; protenase K
PV; parvalbumin
Rt: reticular thalamic nucleus
’
RT-PCR; reverse transcription-polymerase chain reaction
S1; primary somatosensory cortex
SLu: stratum lucidum
’
SO; stratum oriens of the hippocampus
SP; stratum pyramidale of the hippocampus
SR; stratum radiatum of the hippocampus
SOM: somatostatin
’
V: visual cortex
’
VGAT; vesicular gamma amino butyric acid transporter
VGLUT 1; vesicular glutamate transporter 1
VPL; ventral posterolateral thalamic nucleus
VPM; ventral posteromedial thalamic nucleus
YFP; yellow fluorescent protein
5
V.研究の背景と目的
大脳皮質神経細胞は、神経伝達物質の違いによって大きく2種類に分類される。1つは興奮性
伝達物質グルタミン酸を放出するグルタミン酸作動性神経細胞であり、もう1つは抑制性伝達
物質GABAを放出するGABA作動性神経細胞であり、高次脳機能の中核を担う大脳皮質神経活
動は、こられの神経細胞から発信される興奮性と抑制性の出力が絶妙な動的バランスをとるこ
とにより営まれている。約2割を占めるGABA作動1生神経細胞は多様性に富み、様々なシナプ
ス結合様式を持ち(:Kawaguchi and:Kubota,1997)、この多様性をもつGABA作動1生神経細
胞が神経回路に張り巡らされていることが、大脳皮質の高度な情報処理を可能にする鍵となっ
ていると考えられている(Somogy et al.,1998;Buzsa:ki,2005)(図1)。そして、皮質GABA
性神経伝達の障害は一部の精神神経疾患の病態と関連していることがわかってきた。てんかん
は、罹患率約1%で、生涯に一回のみ発作を呈する孤発性てんかんを含めると7・10%に及ぶ頻
度が高い疾患の一つであり、複雑に絡み合った興奮性と抑制性活動のバランスが乱れ、大脳皮
質神経細胞が過剰に同期して興奮している状態であると考えられ、その病態形成にGABA性神
経伝達の異常が関与しているとの報告がある(Bradford,1995;Olsen and Avoli,1997)。また、
統合失調症は人口の約1%と罹患率が高い疾患であり、最近、背外側前頭前野のParvalbumin
(以下PV)陽性GABA作動性神経細胞の障害との関連が報告されている(Hashimoto et al.,
2003, 2005; Volk and Lewis, 2001).
したがって、もし、生きた成体において大脳皮質局所のGABA性神経伝達を制御する、さら
には多様なGABA作動1生神経細胞のサブタイプもまた限定した形で特異的に制御することがで
きれば、GABA作動性神経細胞が神経回路全体の営みの中で果たしている役割を理解する上で
有用な情報が得られるだろう。また、それに不随する変化は、一部の精神神経疾患の症状と類
似する可能性があり、これらを比較することで未だ明らかになっていない人の精神神経疾患の
病態を理解する手がかりが得られるかもしれない。
神経伝達物質GABAは、 GABA作動性神経細胞軸索終末に特異的に存在するグルタミン面輪
水素酵素glutamate decarboxylase(以下GAD)の働きでグルタミン酸から合成され、小胞性
GABAトランスポーターVGATによりシナプス小胞に取り込まれ、濃縮、貯蔵される。 GABA
作動性神経細胞が脱分極し、神経インパルスが神経終末部に到達してCaイオンが細胞内に流入
すると、貯蔵されていたGABAがシナプス間隙に開口放出される(小胞性GABA放出)(図2)。
これまでに、GABA性神経伝達を不活化する目的で、 GAD67とGAD65のダブルノックアウト
マウス、VGATノックアウトマウスが作製され、中枢神経発達過程におけるGABA性神経伝達
の役割に関する興味深い研究結果が報告されてきた(Fujii et al.,2007)。しかし、これらノッ
クアウトマウスは胎児期に死亡したり、膀帯ヘルニアや口蓋裂を呈し生後すぐに死亡してしま
う(wojcik,2006)ため、成体における解析は不可能であった。 GAD 65ノックアウトマウスは
向てんかん性をしめすことが報告されている(Stork et al.,2000)が、このようなノックアウト
実験は発生過程への影響も考慮する必要があり、解釈が複雑になる。そのため成体における
6
GABA作動1生神経活動について正確に解析するには、成体においてはじめてGA:BA産生あるい
は放出が停止するような実験系が必要であるが、今までにin vivOでのそのような実験は報告さ
れていない。そこで、今回、生きた成体で局所的に大脳皮質GABA性神経伝達を制御すること
を目的とし、2つの実験系を計画した。
まず、実験1では、CreAoxP遺伝子組換え技術を発展させた技術であるタモキシフェン誘導
性CreAoxP遺伝子組換えの手法を用いて、小胞性GABA神経伝達に不可欠であるVGAT遺伝
子を、成体において局所的に不活化することを試みた。実験2では、大脳皮質GABA作動1生神
経細胞サブタイプの中で最も数が多く、興奮性神経細胞の発火タイミングを効果的に制御して
いるPV陽性GABA作動性神経細胞の活動を光照射によって特異的に制御する実験系の作製を
試みた。
7
\ 1 \ i n t e n - t a r gecell
\
A
(glutamate)inpu{s
.
dendrite
狽≠窒№?狽奄
ell @ \
GAB
ABAergic inputs
inhibitory input
endrite・ 窒№?狽奄獅〟@
excitatory input
@「1
ap K junction
aXO-
axonic
xo-
xonic
『=ニ二可
cell
ell
o other cortical and to subcortical areas
roup
l川I GABA
㋽
OM
㋽
㋽
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orphologioal
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S
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IP
handelier
GABA
V
㋽
K
hiok dendrites
㎝ata
B
PY
ynaptio
argets
eurogliaform
F
itial Segment
nedrites
㎝ata
11
㎝P
㎝atostatin
artinoti
OM
SNP
IP
alretinin
PY
hinde降dritio一
ranGhes
㋽
ouble一
endrites
ouquet
㎝ata
rcade
ABA
l
v
B
IP
PY
1.A錐体細胞(P)と軸索投射パターンにより分類した代表的な介在神経細胞(GABA作動性神経細胞)
らなる基本的な皮質神経回路。basket細胞とaxoaxonic(chandeher)細胞は錐体細胞細胞体周囲にシナプス
合し、活動電位発生を効果的に制御する。錐体細胞と介在神経細胞は、ともに回路外の興奮性と抑制性入力
、皮質下領域からのacetylchohne(ACh)、 dopamine(DA)、 norepinephrine(NA)、 serotonin(5-HT,
・hydroxytryptamine)性の入力を受ける。 basket細胞は、錐体細胞と他のbasket細胞にシナプス結合し、
らに互いにgap junctionでつながっている。 Buzsaki et aL Rhythms of the brain l998から引用、改変。
Rat frontal cortexにおけるGABA作動性神経細胞の免疫組織化学的分類。 GABA作動性神経細胞は、含有
る神経ペプチド、カルシウム結合たんぱくにより分類される。calbindn D28k(CB)、 cholecysto㎞in
CCK). calretinin (CR). neuropeptide Y (NPY). parvalbumin (PV). somatostatin (SO)vD. vasoactive
ntestinal polypeptide(VIP)。 Kawaguchi, Cereb Cortex 1997から引用、改変。
新皮質GABA作動性神経細胞の電気生理学的特徴による代表的な分類。脱分極刺激に対する反応の違いに
って大きく3分類される。Parvalbuminは、 FS細胞に存在し、形態的には細胞体と樹状突起にシナプス結合
るBasket細胞と、軸索起始部にシナプス結合するChandelier細胞を含んでいる。 FS, fast-sp iking cell;LF,
ate・spikmg cell;RSNP, regular-spiking nonpyramidsal cell;BSNP, burst・spiking nonpyramidal cell。
awaguchi, Cereb Cortex l997から引用、改変。
VI.実験1
タモキシフェン誘導性Cre遺伝子組換え系を用いた二二皮質局所のVGATコンデイショナル
ノックアウト
VI・1.はじめに
タモキシフェン誘導性CreAoxP遺伝子組換え系
P1ファージDNA組換え酵素Creリコンビナーゼとその認識配列loxPを利用したコンディシ
ョナル遺伝子発現制御法であるCreAoxP組換え系は、神経科学研究分野においてよく用いられ
る手法である(Gaveriaux・Ruff,2007)。しかし、 CreAoxP組換え系でのCre発現はプロモー
タータンパクの発現時期、場所に依存する。GABA神経伝達を成体ではじめて不活化するには、
Creの発現時期を任意にコントロールする必要がある。そのため、 Creの活性を薬物で誘導でき
るように改良したCreERAoxP遺伝子組換え系を用いることにした。 CreERはCreリコンビナ
ーゼとエストロゲンレセプターの融合タンパクであり、リガンドであるタモキシフェン存在下
で核内に移行し誘導的に遺伝子組換えを起こす(図3)。
小胞性GABAトランスポーター(vesicular GABA transporter:VGAT)
GABA神経伝達に関わるタンパクのなかで、 VGATは神経活動に伴うGABA開口放出に不可
欠であり、サブタイプがなく1つの遺伝子ノックアウトでGABA性神経伝達を阻害できる。今
回、VGAT遺伝子エクソン213が2個のloxP配列で挟まれた構造を持つVGATコンディショ
ナノレノックアクAマクヌ(群馬大学 柳川右心夫先生より贈与)と、ユビキタスに発現する遺
伝子、Rosa26の遺伝子座にCreER遺伝子配列を組み込んだRosa26-OreERマクヌを交配し、
VGATX7ifl Rosa26-OreERマクスを作出し、タモキシフェン誘導性にVGATを不活化することに
した(図3)。
嗅内皮質局所のVGATコンディショナルノックアウト
一部の難治性てんかん患者でみられる海馬を含む側頭葉内側の硬化病変(海馬硬化)は、側
頭葉てんかんの焦点として重要であり、薬剤誘発性てんかん動物モデルを用いて、海馬がてん
かん原性を獲得する機序を探る研究が数多くなされている。しかし、海馬外の焦点によりてん
かん発作が生じ、それに伴い、海馬が2次性に障害を受け、最終的に海馬硬化症に至ることも
知られている(dual p athology)。この場合、薬剤誘発性モデルは適切な解析対象ではない。嗅
内皮質は連合野からのすべての感覚情報入力を受け、貫通線維束として海馬へ投射するため、
嗅内皮質局所のVGAT不活化によって局所の抑制性神経伝達を阻害すれば、興奮1生神経活動が
促進し、貫通線維を介した海馬への過剰な入力が生じ、その結果、海馬に二次的な形態変化を
誘導できるのではないかと予想した。もし、その二次的変化が海馬硬化と類似し、てんかん発
作を誘導できれば、海馬外病変によって海馬が二次的にてんかん原性を獲得する機序を探る手
がかりとなる。そのため、今回、片側嗅内皮質のVGAT不活化を計画した。
8
CreERAoxP遺伝子組み換え法を用いた幾つかの研究がある(Gaveriaux・Ruff,2007;Slezak
et al.,2007)が、従来のようにリガンドであるタモキシフェンを腹腔内注入した場合、大脳皮
質内で組換えが起きる場所を限定することはできない。今回、局所的にVGAT遺伝子を不活化
するためにタモキシフェン塊を作製し、片側の嗅内皮質脳表に留置する手法をとった。
9
VI・2.方法
動物
使用したマウスは6-8週齢の雄で、遺伝子配列は以下の通りである(図3)。
実験群:VαA”服呪05a26・ereER。コントロール群:Vα、4”儒疵05a26-CreER、 VGA[zveifl。
タモキシフェン塊の作製と脳表への留置と行動観察
タモキシフェン塊はタモキシフェン粉末1.25mgを1%Agar O.05m1で練り固め、乾燥させた
後に16分割して作製した。ベントバルビタールナトリウムを、上記遺伝子を持つマウスの腹腔
内に注射(50mg/kg体重)して深麻酔し、補助イヤバーを装着してステレオタキシスに固定し
た。マウス頭皮を正中切開し、作製したタモキシフェン塊を左側嗅内皮質の脳表に留置すべく、
ブレグマから後方2.5mm、側方4mmの頭蓋骨にバーホールを作製し、そこから腹側方向の骨
と転向の間にタモキシフェン塊を挿入し、留置した(図5A)。
タモキシフェン塊留置後、朝と夕の1日2回、姿勢、移動行動、けいれんなどの異常な動作、
光刺激や音刺激への反応などを観察した。
組織固定
6-8週間後、ベントバルビタールナトリウムの湯腹腔内注射によって深麻酔し、経左心的に生
理食塩水を潅流させ、引き続き10%ホルマリン液を灌流させて固定した。抜脳し10%ホルマリ
ン液で2時間後固定し、その後20%スクロースで溶液交換した。
免疫組織化学分析
凍結ミクロトーム(Cryostat, Leica CM 1850, Germany)で厚さ50μmの前頭面切片を作製
し、フローティング法による免疫染色を行った。PBSで数回洗浄し、反応液で希釈した一次抗
体液内で一晩、室温で反応させた。各抗体の反応液には、PBS-XCD(0.3%(w!v)Triton X・100,
0.25%(w!v)λ一carrageenan,1%(wlv)Noma1 donkey serum and.0.02%(wlv)NaN3 in PBS)を
用いた。使用した抗体は以下の通りである。rabbit anti・VGAT antibody(Synaptic systems;
1:1000). rabbit anti-G/V]A antib ody (Sigm a; 1:2000). rabbit anti’VGLUT I antibody
(Nakmura 2005; 1:1000)mouse anti ’ NeuN monoclonal antibody (Sigma; 1:1000). rabbit
anti-GFP antibody (Tamamaki 2003; 1:500) .
in situハイブリダイゼーション
VGAT遺伝子が不活化されていることを確認するために、 in situハイブリダイゼーションを
用いてVGAT mRNAの検出を行った。
マウスVGAT cDNAに対応するDNA断片(GenBank accession number:MN OO9508;1261
bp・1680 bp)は、以下のプライマーを用いてRT・PCRを行って作製した。 VGAT・1
10
(TCTCAAGGCCGTGTCCAAGT)、VGAT-2(AAGAAGGGCAACGGATAGGA)。PCR産
物はpCRII(lnVitrogen, CA USA)を用いてクn・一ニングした。これらのプラスミドをテンプレ’
一トとして、ジゴキシゲニン(DIG)ラベリングキット(Roche Diagnostics, Mannheim,
Germany)を用いてセンス、アンチセンスシングルストランドRNAプローブを合成した。
マウスを固定液(4%(w/v):Formaldehyde in O.OIM PBS)を用いて灌流固定、抜脳し、同固
定液で一晩固定し、diethylpyrocarbonate処理した30%スクロース溶液を用いて4℃で一晩溶
液置換した。クライオスタットを用いて厚さ18μの前頭面凍結切片を作製しスライドグラス
(MAS・coated glass, Matsunami)に貼り付け、一晩乾燥させた後、・80℃で保存した。切片を
室温にもどし10%ホルマリン液ノPBSで後固定(室温、20分間)し、 PBSで洗浄(5分間を2
回)した。1μ9!ml Prol(!ProKバッファーでプロテアーゼ処理(室温、60分間)し、 PBSで
洗浄した。再度10%ホルマリン液/PBSで後固定(室温、15分間)し、 PBSで洗浄した。次
に、水で軽く洗浄し、無水酢酸10.1Mトリエタノールアミン(pH 8.0)でアセチル化(室温、
10分間)し、PBSで洗浄した。乾燥を防ぐため湿箱(50%ホルムアミド入り)内で、ハイブリ
バッファー(50%ホルムアミド、5×SCC、5×デンハルト溶液、0.25 mg/ml Yeast tRNA、0.5
mg/ml:Fish sperm DNA、 Sigma RNA protect、 DEPC処理水)を用いてプレハイブリダイゼ
ーション(70℃、2時間)し、プローブ溶液(0.5μ91ml)でハイブリダイゼーション(70℃、
16時間)させた。1×SSC/50%ホルムアミドで洗浄(65℃、15分間を1回、30分間を2回)
し、ブロッキング溶液(0.1%TritonX・100、0.2%BSA、1%Donkey serum in PBS)でブロッ
キングした。続いて、抗体反応液(AP-conjugated anti・DIG Ab、1:2000)で抗体反応させた(4℃、
16時間)。MABT溶液で洗浄し(30分間を3回)、アルカリフォスファターゼバッファーで洗
浄し(5分間を2回)、NBTIBCIP溶液を用いて発色反応させ、 PBSで反応を止めた。
CAG-lmRLI7TPI-GII71:P Rosa26-CreER 7クス脳表へのタモキシフェン塊の留置
片側の二字皮質雨滴へのタモキシフェン塊留置は今までに報告がないため、タモキシフェン
誘導1生遺伝子組換えが起こった範囲を確認する必要がある。そのために、Rosa26・CreERマウ
スと、loxP配列部位での遺伝子組換えによってマーカー遺伝子GFPを発現するレポーターマウ
ス(CAG-lmR■TPI-GLI7r:P)の交配によって、ダブルトランスジェニックマウス(()AG-imRLEPI一
σ丑Py Eosa26-CreER)を作出し、6週齢の雄マウスの左側視覚野脳表にタモキシフェン塊を留
置した。タモキシフェン誘導性遺伝子組み換えが起こった範囲はG:FPの発現で確認できる。6
週間後に血流固定し、50μmの前頭断凍結切片を作製し、GFP免疫染色を行い観察した。
11
VI-3.結果
タモキシフェン誘導性遺伝子組換えの程度には個体差があった
今回用いた実験系において、タモキシフェン誘導性遺伝子組換えが起こる範囲を確認するた
めに、予備的実験としてCA G imR17TPI・(辺P詔05a26-Orθ齪マクスヘタモキシフェン塊を留置
した。遺伝子組換えが生じた細胞はG:FPを発現するため、 G:FP免疫染色を行い、その細胞の分
布を調べた。3匹のうちの1匹で、タモキシフェン塊留置部位近辺にG:FP陽性細胞が密集する
領域があった(図4)。しかし、帯状回、視床にも陽性細胞が数個ではあるけれども散在してい
た。別のマウスでは、G:FP陽性細胞が密集する領域はなく、新皮質、帯状回、海馬、視床、線
条体に数個散在する程度であった。このことから、今回用いた実験系では、タモキシフェン誘
導性遺伝子組換えが生じる程度は個体により大きく異なり、また、場所を正確に限定できない
ことがわかった。
VGATIflifl;Rosa26-CreER 7クスで著しい活動性の低下をみとめた
VGA TIf11fl; Rosa26・CreER 7クヌ5匹中2匹で、留置2・4週後から活動性が低下しはじめ(表
1)、4・7週後には、ケージ内の他のマウスから離れ、一カ所に留まる傾向が強くなり、固定し
た姿勢をとるようになった(図5B)。軽く触るなどの刺激では逃避i行動はみられず、幾度か執
拗に指で触ると数歩だけ歩いて向きを変え、再び同じ姿勢をとり続けた。ただし、摂食行動は
保たれ、体重減少はなかった。1日2回の観察時間内においては、てんかん症状のひとつである
痙攣発作はみとめなかった。同様の処置をした他のVGATIffifl; Rosa26-CreERマク,ス、コント
ロール群にはこのような活動性の変化が生じたマウスはいなかった。
タモキシフェン塊留置6・8週間後に灌流固定し、組織学的な評価を行った。タモキシフェン塊
留置部位の肉眼的な損傷は限局性であった(図5C)
in situハイブリダイゼーションによるVGAT mRNA検出
タモキシフェン誘導性VGATノックアウトが局所的に起きているかを調べるために、 in situ
ハイブリダイゼーションによりVGAT mRNA発現パターンを調べた(図6A)。活動性が低下
したVGATIflifi;Rosa26・CreER vク.〉〈では、タモキシフェン塊留置側の面内皮質近辺にVGAT
mRNAシグナルが低下した領域をみとめた。活動1生の変化をみとめなかったVGATIfilfl;
Rosa26-OreERマクヌでは、ある程度の範囲を持ったシグナル低下領域はみとめなかった。コ
ントロール群においても、図6にしめすようなシグナル低下領域はみとめなかった。
このことから、活動1生が低下したVGATIflifl; Rosa26-CreERマクヌでは、局所的なタモキシ
フェン誘導性VGATノックアウトが起きていることがわかった。
VGAT免疫染色
タモキシフェン誘導性遺伝子組換えが生じ、VGATタンパク合成が阻害されているかを、
12
VGAT免疫染色を行って観察した(図6:B)。 VGATタンパクはGABA神経細胞軸索終末に存在
するため、野生型マウスのVGAT免疫染色では点状のboutonとして検出される。活動性が低
下したVα4雨漏Eo8a26-OrθEEマクスでは、嗅内皮質内のVGAT mRNAシグナル低下領域に
ほぼ一致した部位において、陽性boutonの減少、配列の乱れをみとめた。その他のマウスでは
このような領域はみとめなかった。
興味深いことに、活動性が低下したVGATJfiifl; Rosa26・CreERマクヌの海馬における陽性
bouton分布パターンは、他のマウスと異なっていた(図7)。両側歯状回では、民話細胞層に
おける分布が減少し、内側分子層へ不規則に散らばっている印象をうけた。CA1、 CA3領域で
は、錐体細胞層における分布が減少し、むしろ上昇層、放線層へ広がっているようだった。こ
の変化は、てんかん動物モデルで報告されているVGAT免疫染色パターンの変化と類似してい
た(Boulland,2007)。また、扁桃体、新皮質、帯状回におけるVGAT免疫活性陽性bouton
は、他のマウスと比べて配列、分布が変化しているように見え、GABA性神経伝達の変化が推
測された(図7)。
GABA免疫染色
GABA免疫染色を行い、局所的なVGAT不活化に伴うGA:BA性神経伝達の変化の有無を観
察した(図6C、8)。活動性が低下したVGA,Tlfllfl;Rosa26一(>reERマクヌでは、骨内皮質内の
VGAT mRNAシグナル低下領域とほぼ一致した部位で、 GABA免疫活性が低下した領域をみと
めた。活動性が変化しなかったVG 4 Tlflifi; Rosa26-CreERマクス、コントロール群では、この
ような領域はみとめなかった。また、活動1生が低下したVGATIflifi; Rosa26-CreER 7クヌの両
側海馬、扁桃体、嗅内皮質、帯状回、新皮質では、その他のマウスに比べてGABA免疫活性が
増強しているように見え、海馬、扁桃体、嗅内皮質では、神経細胞だけでなく多数のダリア細
胞がGABA免疫活性をしめし、これらは形態的にアストロサイトのようだった。
VGLUT 1免疫染色
グルタミン酸作動性神経細胞軸索終末には小胞性グルタミン酸輸送体(vesicular glutam ate
transporer、以下VGLUT)が存在し、 VGLUT免疫染色では点状のpunctaとして検出され、
グルタミン酸1生神経伝達の活動性評価や軸索投射、シナプス形成部位などの形態的評価に用い
られる(Fremeau et al,2001;2004)。てんかん動物モデルの海馬歯状回では、 VG:LUT 1発現
パターンが特徴的に変化すると報告されている(Bou■and,2007)。今回、嗅内皮質の局所的な
VGAT不活化に伴う興奮性神経回路の形態的変化の有無を観察した(図9)。てんかんモデルで
報告されているような歯状回内分子層における変化はみとめなかったが、他のマウスと比べ、
わずかながら陽性punctaの分布様式が異なっていた。通常、歯状回頼粒細胞層、 CA1、 CA3
錐体細胞層にはVG:LUT陽性軸索終末は存在しないと報告されている(Nakamura,2008)。し
かし、活動性が低下したVG 4 Tlfi/fl; Rosa26-CreER tt7 eスでは、歯状回顯粒細胞層、 CA3、 CA1
錐体細胞層に陽性punctaをみとめた。扁桃体ではコントロール群に比べ免疫活1生が増強し、興
13
奮性神経伝達が促進していることが推測された(図9)。一方、新皮質、帯状回では大きな差を
みとめなかった。
Nissl染色
てんかんの海馬歯』状回門では、一部の脆弱なグルタミン酸作動1生神経細胞、GABA作動1生神
経細胞の消失が知られている。今回、活動性が低下したVG 4Tlffifl; Rosa26・CreERマク,スにお
ける神経細胞の消失の有無を、Nissl染色によって観察した(図10)。他のマウスに比べ活動1生
が低下したVG 4 Tlflifl;Rosa26・CreERマクスでは、歯状回門の神経細胞が減少している印象を
うけた。
14
図2.GABA神経細胞におけるGABA合成、貯蔵、放出機序。
神経伝達物質GABAは、 GABA神経終末でグルタミン酸脱水
素酵素(GAD)によりグルタミン酸から合成され、小胞性
GABAトランスポーター(VGAT)によって小胞内に濃縮、
貯蔵される。活動電位発生により細胞内Ca濃度が上昇する
と、シナプス小胞は細胞膜方向へ移動、細胞膜と癒合し、
GABAがシナプス間隙に開口放出され(小胞性放出)、神経
伝達物質としてGABA受容体に作用する。シナプス間隙の
GABA neuron
あドーρ己〃77ρ H◎
Gln
全
VGAT
VDCC
TCA cycle
春
H+
Ca2+
Ca2+
Xh6cr, GABA S.:一Glu
GAD
SSA
GA
-T T
Na+, Cl-
GABA
GABA
GA・・3
GABA
_慮/認
GABAはGABA輸送体(GAT)により取り込まれる。ダリア
細胞に取り込まれたGABAはGABA分解酵素(GABA-T)に
より分解され、TCA回路を経由しグルタミンとなり再利用
N icr
される。GABA・T, GABA transaminase;GAD, glutamate
Glial cell
ecarboxyrasej GAT, GABA transporter; Gln, glutamin;
Glu, glutamatel SSA, succynil semialdehyde; VDCC,
voltage dependent Ca2’ channel; VGAT, vesicular GABA
GABA receptor
Post synapic cell
transporter.
図3.VGAT遺伝子コンディショナルノックアウトの機序。
VGAT遺伝子エクソン2,3が2つのloxP配列ではさまれた
構造をもつVGATコンディショナルノックアウトマウス
(yα4四物と、ユビキタスに発現するRosa26の遺伝子座
にCreER遺伝子配列がknock inされたRosa26CreERマウス
VGメ17’仰ノ尺osa2δ。Cハeε尺mo〃se
Rosa26 promote!
CreER
@ξ融
(Rosa26-CreER)を交配して作出したVG、4四励丑。εa26-
。8
CrθERマウスを用いた。このマウスではタモキシフェンが
エストロゲン受容体に結合すると、核内でCreリコンビナー
ゼが2つのloxP配列を認識して、遺伝子組i換えを起こし、
VGATエクソン2/3配列が除去され、 VGAT遺伝子発現が
不活化される。
i 一.t一一一“一一一t-tf
i..“.”””’recombination
nucleus
VGA丁遺伝子発現の不活化
CA G-lmRFPI-GFP;Rosa26-CreER
図4.視覚野脳表にタモキシフェン塊を留置した(】AG・imRFPI-
GFP Rosa26-CreERマウスのGFP免疫染色をしめす。この
マウスでは、タモキシフェン誘導性遺伝子組換えが起きた細胞
はGFPを発現する。タモキシフェン塊留置部位近辺の側頭連合
皮質にGFP陽性神経細胞が密集する部位があった。
与 ←
称.語
薦‘
匹」O
Scale bar, 10Qpm.
徽、
噛層 ケ謬.
潔鼠な識、
)
.艶
罐懇『
図5,Aタモキシフェン塊留置の方法。作製したタモキシフェン塊を、嗅内皮質の脳表へ留置するべく、
ブレグマ後方2.5㎜、側方4㎜に開けたバーホールから矢印方向に挿入し、骨と脳表の間に留置した。B
タモキシフェン塊留置後に著しい活動性の低下をみとめたVα4四⑳Eosa26-CreERマウス。7週間後の
様子。Cタモキシフェン塊埋め込み8週間後に取り出した脳の外観。埋め込みに伴う脳損傷は局所にとど
まっている(矢印)。
活動性低下
活動性変化
@あり
@なし
γGメ17瑚1尺osa26-CreεR
2
3
1!GA 7吻響尺osa26-CハeεR
0
2
VGハ7朋
0
4
表1.片側腔内皮質近傍の脳表へのタモキシ
フェン塊留置後の行動変化。
V(拠三三丑08a26-CrθERマクス5匹中2匹
で、2-4週間後から活動性が低下しはじめ、
4・7週間後には、ケージの一カ所に留まる
傾向が強くなり、著しく活動性が低下した。
VGA 7’rM; Rosa26-CreER
VGAT
VGAT mRNA
轡
・十六鴫∵:な∵㌻ ∵・v 触
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’一口鮪鴨・・....
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、・・㍉q隔
塾
していた。周辺嗅内皮質では神経細胞だけでなくアストロ
サイト様細胞がGABA免疫活性をしめしていた(矢頭)。
置
一
V.
‘
の減少をみとめた。活動1生の変化をみとめなかった他の
㎜鐸励Eosa26-CreERマウスでは、ある範囲をもった
シグナル低下部位をみとめなかった。CAと同じマウスの
嗅内皮質のGABA免疫染色をしめす。 VGAT mRNAシグナ
ル低下領域とほぼ一致する部位で、GABA免疫活性が低下
凝
r ,GABA
學
のVGAT mRNA発現パターンをしめす。嗅内皮質のタモキ
シフェン塊留置部位近辺に、局所的なシグナル低下部位を
みとめた。 (★領域)A’はAの拡大図。BAと同じマウス
の嗅内皮質のVGAT免疫染色をしめす。 VGAT mRNAシグ
ナル低下領域とほぼ一致する部位に、免疫活性陽性bouton
尋脚雌ドρ
・ 幣 ’}
ぞ耀・’t.・
図6.A活動1生が低下した》α4四励丑osa26・CreERマウス
Scale bar, A 100pm; A’,B,C 5Qpm.
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一::,T:.,
VGAT
VGA 7’fiM; Rosa26-CreER
VGA 7,rnt; Rosa 26-CreER
CAI
ML
ML
回
CA3
G
GL
図7.VGAT免疫染色をしめす。
GL
’活動性が低下したVGA 7fi「a; Rasa26-
CreERマウスでは、他のマウスと比
べて、海馬におけるVGAT免疫活性陽
H
性boutonの分布が異なっていた。
歯状回では、穎粒細胞層における分布
_ が減少し、内側分子層へ不規則に散ら
ばっている印象を受け(A,B)。CAl、
CA3領域では、錐体細胞層における分
布が減少し、むしろ上昇層、放射層へ
広がっているように見えた(C-F)。
新皮質では陽性boutonの配列が乱れて
いた(G,H)。
矢印;VGAT免疫活性陽性bouton。
H
- B
A
so
so
U<O
ML, molecular layer; GL, glanular
layeri H, hilusi SO, oriens layeri SP,
sp
pyramidal cell layer; Slu, stratum
,sp
SC ×
lucidumi SR, stratum radiatum.
Scale bar, A-H 10pm
SR
R
sp
E
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ュO
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SO × SP ×i
一罵、 F
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GABA
VGA 7’,7M;尺osa26-CreER
VGA 7,rAAtt;尺osa26-Cre∠…R
ML
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露J、
射が摩 . 繍.∴び
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図8。GABA免疫染色をしめす。活動性が低下したyGA四励丑osa26-CreERマウスは、他のマクスに比べで、
両側海馬、扁桃体、嗅内皮質を中心にGABA免疫活性が増強し、さらに、多数のアストロサイト様細胞が
GABA免疫活性をしめした(A-F)。A’,B’,C’はA,B,Cの拡大図。新皮質、帯状回では、他のマウスに比べて
多くのGABA免疫活性陽性神経細胞をみとめた(G-J)。矢印:GABA免疫活性陽性神経細胞、矢頭:GABA
免疫活性陽性アストロサイト様細胞。ML, molecular layer;GL, glanular layer;H, hilus;SO, oriens layer;
SP, pyramidal cell layer; SR, stratum radiatum; LMo, lacunosum moleculare layer. Scale bar,
A,B,C,D,G,H,1,J 50pm; E,F 3Qpmi A’,B’,D’ 10pm.
VGLUTI
‘
嘘(
’
グ ゴゆむ
・・.ぞ
鼻血
モn曜摸
。。
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ボ ・ず1・・’ゾ〆・,.メ
もぼ ノサレ
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4
リゼづ ル さ ひ
謙.・悔≠蜜
∵望薄渉.
嘱紫、鰯渉講
sp
§ぜ恥、 嘱犠
∵r奪帯避
SR N Slu
・炉 ↓ 〆 潔
Y ■ 遍’
VG,47,rM;尺osa26-Cr(∋ER
VGA 7,7AAtt; Rosa26-CreER
ib
炉 ヤ
撃瞑
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di l
,C
一1:・:“・ P. t・ ’”3 ..
r..
図9. VGLUT I免疫染色をしめす。活動性が低下したVGACIflM;Rosa26・CreERマウスでは、海
馬歯状回、CA3、 CA1領域の細胞層にVGLUT 1免疫活性陽性軸索終末をみとめた(A,B)。扁
桃体では他のマウスに比べVGLUTI免疫活性が増強している印象を受けた(C,D)。一方、新
皮質、帯状回では大きな差をみとめなかった。矢頭;VGLUT 1陽性軸索終末。 SO, oriens
layer; SP, pyramidal cell layer; Slu, stratum lucidum; SR, stratum radiatum. Scale bar, A’D
lQpm.
VGA 7,riwr; Rosa26-CreER
F婦《避
’t
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ヤ‘ム
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』●、博’
VGA 7”M; Rosa26-CreER
・“
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論
魍
輩溜
幣,学
図10.海馬歯状回のNissl染色をしめす。活動性が低下したV(語四劾Eo8a26・CreERマウス
では、他のマウスに比べて歯状回門の神経細胞(矢頭)が減少している印象をうけた。A’,B’
はA,Bの拡大図。 Scale bar, A,B 3Qpm;A’,B’10μm.
VI・4.考察
嗅内皮質局所のVGAT遺伝子不活化と結果のばらつき
タモキシフェン塊を脳表に留置した報告は今までにないために、タモキシフェン誘導性遺伝
子組み換えがどれくらいの範囲で起きるのかを探る必要があったため、G:FPレポーターマウス
を用いた実験を行ったところ、組換えの程度は個体により大きなばらつきがあった。遺伝子的
には局所的なVGATノックアウトが期待されるマウスにもかかわらず、結果にばらつきがあり、
再現効率が悪かったのは、そのためだと思われる。
しかし、VGA出漁Eosa26・CreERマクスのなかに、比内皮質局所にVGAT mRNAシグナル
が低下し、かつ、VGAT免疫活性陽性boutonが減少した領域をみとめたマウスがおり、タモキ
シフェン誘導性VGAT遺伝子ノックアウトが局所的に達成されたことが示された。そしてこの
ような変化がみられたマウスでのみ著しい活動性の低下という行動変化をみとめた。
組織学的解析で明らかになった海馬、扁桃体、新皮質、帯状回の変化
活動性が低下したVGA TIflifi;.Rosa26-CreER 7ク.〉〈の海馬組織像は、他のマウスと明らかに
異なり、二次的な変化が起きていた。てんかん動物モデルの海馬では、脆弱な歯状宮門の大型
油状細胞と一部のGABA作動性神経細胞サブタイプが消失し(Pitkanen and Mclntosh,2006)、
それに伴い歯状回内側分子層に六出線維発芽に代表される興奮性神経回路の再編成が生じると
いわれている(Houser and Esclapez,1996;Kobayashi and Buckmaster,2003)。また、残存
するGABA作動性神経細胞でGADが活性化されGABA合成が充進ずることや(Bau■and,
2007)、穎粒細胞においてGAD活性化によるGABA合成が行われ、 GABA分解酵素(GABA
transaminase)活性低下により顯粒細胞内GABA濃度が増加するとの報告もある(Sperk,
2003)。今回、歯』状翻訳において神経細胞が減少している印象を受けた。また、歯状回内側分
子層において渦状線維発芽を同定することは出来なかったけれども、通常は存在しない
(Nakamura,2005)歯状回穎粒細胞層、 CA1、 CA3錐体細胞層にVG:LUT 1陽性punctaが存
在した。VGAT免疫活性陽性beutonの分布パターンは薬剤誘発性てんかんモデルに類似した変
化をしめした(Baulland,2007)。GABA免疫染色では染色性が増強し多数のアストロサイト
様細胞がGABA免疫活性をしめした。これらの組織学的結果から、海馬外の心内皮質における
GABA性神経伝達の障害は、海馬全体でGABA代謝、神経伝達を変化させることが推測された。
アストロサイトは細胞外GABAを取り込むGABA輸送体(GABA transporter、以下GAT)
を発現し、その発現は神経活動などの周囲環境により変化し、GABA性神経伝達効率を変化さ
せ得ると考えられている(Schousboe,2003)。アストロサイト特異的なGAT阻害薬は高い抗
てんかん作用をしめす(White et al.,2002)ことから、今回、アストロサイト内のGABA濃度
が著しく増加したことが、てんかんの病態と関連するのかどうか、興味深い。
また、GABA性、グルタミン酸性神経伝達の変化をうかがわせる組織学的変化を、海馬だけ
でなく周辺嗅内皮質、扁桃体、新皮質、帯状回でみとめ、二次的影響が脳の広範囲に及んでい
15
ることがわかった。
活動性の低下
海馬、扁桃体に焦点をもつ側頭葉てんかん患者は、てんかん性放電が生じると自動症が発作
症状として生じ、運動野にてんかん活動が達しないため痙攣は生じない。今回、24時間モニタ
リングや脳波などの電気生理学的解析を行っていないため、てんかん発作の有無を判定するこ
とはできなかった。
著しい活動1生の低下は、脳の広範囲でGABA免疫活性が増強し、 GABA性神経伝達が促進し
ていたことと関係するかもしれない。
実1験方法について
今回用いたタモキシフェンは、エストnゲンアンタゴニストである。エストロゲンは神経系
に様々な影響をもたらすことが知られているため、影響は無視できない。また、局所に塊を留
置する方法では、局所の組織損傷は避けられず、外傷に伴う神経回路の変化も考慮する必要が
ある。そして最も問題なのは、当初の予想に反してタモキシフェン誘導性遺伝子組換えが起こ
る場所と範囲を限定できず、効率よく再現性を示すことが困難な実験系だったということであ
る。
今回の実験から、嗅内皮質局所のVGAT不活化によるGABA性神経伝達の障害は、著しい活
動性の低下をもたらし、また、脳の広範囲で興奮性と抑制性神経活動に変化を来たし、海馬に
てんかん動物モデルに一部類似した二次的形態変化を来す可能性があることがしめされた。
16
V皿.実験2
光刺激による大脳皮質Parvalbumin陽性GABA作動性神経細胞活動の一過性制御の試み
VII-1.はじめに
Parvalbumin陽性GABA作動性神経細胞
多様性をもつGABA作動性神経細胞は、含有する神経ペプチド、カルシウム結合タンパクに
よる分類、電気生理学的1生質による分類、軸索の形態による分類(抑制対象による分類)がな
され、その特徴を明らかにしょうとする研究が精力的に進められている(図1)。今までに、こ
れらサブタイプごとに系統立てて活動を制御し解析した報告は見あたらない。
カルシウム結合タンパクであるPVを含有するGABA作動1生神経細胞(以下、 PV神経細胞)
は、大脳皮質GABA神経細胞の約5割を占め、電気生理学的に多くはfast spikng cellに属し、
形態的にはバスケット細胞である(一部シャンデリア細胞もPVを発現している)(Kawaguchi
and Kubota,1997)。個々のPV神経細胞は数百個の錐体細胞の細胞体近位部にシナプスを形成
し、錐体細胞の活動電位発生を効果的に制御すると考えられている(Cobb et a1.,1995)。また、
他のPV神経細胞とシナプス結合(:Fukuda et al.,1996;Sik et al.,1995)、ギャップ結合し
(:Fukuda et al.,2003)、大脳皮質情報処理過程の重要な構成要素である時間的構造をもったリ
ズミカルな神経活動の基盤形成に主要な役割を担っている可能性が報告されている
(Whittin gton et al., 1995).
光刺激による神経細胞活動制御
最近、微生物が持つチャンネルロドプシン(channelrhodopsin・2:以下ChR2)とハロロド
プシン(halorhodopsin:以下NpHR)という2つのロドプシンタンパクの性質を応用し、ほ乳
類の脳内を光で照らして脳活動をコントロールするという画期的な技術が開発されている(図
11)。ChR2は、広く淡水や海水に存在する藻の仲間Chlamydomonas reinhardthが持ってい
るnドプシンタンパクであり、青色光を受けると(最大活性は470nm)1価と2価の陽イオン
(主にNaイオン)を通す性質を持つイオンチャンネルである(Nagel, G. et al.2003)。一方、
NpHRはエジプト、ケニアなどの塩湖に生息する極限環境微生物(古細菌)が持っているロド
プシンタンパクであり、黄色光を受けると(最大活性は580nm)構造変化し、クロライドイオ
ンを細胞外から細胞質内へ取り入れる性質を持つクロライドポンプである。
これらのタンパクをほ乳類の神経細胞に発現させ、発現した神経細胞に対して青色光を照射
するとChR2の作用によってNaイオンが濃度勾配に従って細胞内に流入し、その結果神経細胞
は脱分極する。また、黄色光を照射するとNpHRの作用によってClイオンが細胞内へ移動し、
その結果膜電位は過分極して神経活動が抑制される。
この技術を用いれば、in vivoにおいて、調べたい特定の神経細胞の活動を時間と空間を任意
に限定して、かつ可逆的に制御することが可能である。そして、従来の電極を用いた電気刺激
17
実験よりも正確に目的を達成できると考えられる。実際に、NpH:RとChR2を海馬神経細胞に
発現させ、活動電位の発生と抑制を任意にコントn一一一ルすることができたとの報告があり
(Zhang, et al.2007)(図11C)、他にもいくつかの研究成果が報告されはじめている。
そこで今回、我々は、上述のように大脳皮質情報処理過程において重要な役割を担っている
ことが予想されるPV神経細胞の活動を光照射によって任意にコントロールできる実験系の作
製を試みた。
まず、nドプシンタンパクNpHRとChR2を培養細胞に発現させ、解析を行った(図12、13)。
次に、PV発現細胞特異的にロドプシンタンパクChR2とNpHRを発現させるために、図14B
に示すごとく、CreAoxP遺伝子組換え系とtet!off遺伝子発現制御(図14A参照)を利用した
実験系を計画した。tet・off/ Creレポーターマウスは、 Cre発現細胞においてテトラサイクリン
制御性トランス活性化因子(以下tTA)を発現する。発現したtTAはドキシサイクリン非存在
下でテトラサイクリン応答因子(以下TRE)に結合し、それによってTRE・CMVプnモーター
制御下にChR2-mCherryとNpH:R-YFPタンパク合成が活性化される計画である。現在、トラ
ンスジェニックマウス作製の途中であり、本論文では、PVプロモー・・一丸ー発現制御下にCre遺伝
子読換え酵素を発現するPV’Creトランスジェニックマウスの作製と解析結果を報告する。
大脳皮質におけるPV陽性錐体細胞
光刺激実験を開始する前にPV発現細胞の種類を明確にする必要がある。というのは、 PVは
GABA作動性神経細胞のみに存在するわけではなく、新皮質第V層にはPV陽性錐体細胞が少
数存在することが最近わかってきたからである(Jinno,2004)。マウスにおけるPV陽性錐体細
胞の分布はまだ明確ではなく、PV免疫染色では形態観察が不十分なPV陽性細胞が存在する。
これは、PV発現レベル、細胞内分布の違いによる現象だと推測される。したがって、 PV陽性
錐体細胞の分布を明らかにするために、作製したPV-CreトランスジェニックマウスとGFP発
現C■eレポーターマウスを交配させ、PV陽性細胞を全か無の様式で検出し、その形態を詳細に
観察できるようにした(図15)。
VII・2. Halorhodopsin,channelrhodopsin発現プラスミドの作製と培養細胞による発現解析
遺伝子コンストラクトの作製
2種類のロドプシンタンパクを同時に発現する遺伝子コンストラクションを作製するために、
脳心筋ウイルス(ECMV)由来のIRES(lnternal Ribosomal Entry Site)を用いた。 IRESは
キャップ非依存的翻訳開始を促進する配列で、タンデムに連結したタンパク質コード領域の間
に挿入することで、単独のmRNAからポリシストロニックな翻訳が可能になる。リボゾームは
バイシストロン性mRNAの5’末端から侵入して目的遺伝子を翻訳するだけでなく、IRESの位
18
置からもレポーター遺伝子を翻訳する。
まず、Chlamydomonas reinh ar dniから、光作動性イオンチャンネルとして報告されている
野生型channelrhodopsin(coP4)cDNAをクローニングした(GenBank accession number:
A:F461397)。 Chlamydomonas reinhardtiiからtotal RNAを調製し、 Rq}PCRを行ってcDNA
を合成し、プライマーcop4・up(ATGGATTATGGAGGCGCCCT)、cop4-low
(TTATGGGACCGCGCCAGCCTCGG)を用いたPCRでcoP4 cDNA断片を得た。
Natronomonas pharaonisからクu・一ニングしたhalorhodopsin(Wild NpHR)cDNAは北
海道大学出村先生より贈与をうけ、CAGプロモーター下にこれら2種類のロドプシンタンパク
とGYFPがIRESでつながれた構造をもつプラスミドベクター(】A(}一wild
NpHR-IRES-cop4-IRES一(I YIIPを作成した(図12)。
また、野生型ロドプシンタンパクと同様のアミノ酸配列を持つが、ほ乳類に合わせたコドン
に最適化した合成DNAであるchannelrhodopsin(ChR2)とhalorhodopsin(synthesis NpHR)
の贈与をうけ、同様に、(】AG・syn th esis NpHR’IRES一(]hR2-IRES-GYI71)も作製した(図12)。
培養細胞での発現解析
目的遺伝子コンストラクトの機能発現を、まず培養細胞への遺伝子導入によって確認した(図
13)o
およそ10%コンフルエンス状態の293細胞に、Trans:Fast [Eransfection Regent(Promega)
を用いたりポフェクション法により、作製した野生型と合成型の2種類の遺伝子コンストラク
トを導入した。リポフェクションの48時間後、野生型と合成型コンストラクト共にGFP蛍光
を呈する細胞を認めた。
〈RT-PCR>
培養細胞においてcoP4と野生型Np且R、 ChR2と合成型NpHR mRNAが実際に発現してい
ることRT-PCRを行って確認した。 coP4、 ChR2、野生型NpHR、合成型NpHRいずれのmRNA
も確認することができた(図13B)。
<電気生理学的解析>
coρ4・勉ild NpHR-GY17P、 ChR2-syn th esis IVpHR・G}V7 TPを発現する細胞が、実際に光照射に
よって膜電位変化を起こすかを電気生理学的に調べた(熊本大学、知覚生理)。リポフェクショ
ンの48時間後にG:FP蛍光を呈した細胞に対し、470 nm波長の青色光照射と580 nm波長の黄
色光照射を行い、同時にそれぞれの場合の膜電位変化を電位固定によるパッチクランプ法を用
いて記録した。
青色光照射によって内向き電流が発生し、この電流はカチオン電流、つまりチャンネルロド
プシンによる電流であると考えられた。したがって、青色光照射で膜電位は上昇することがわ
かった。また、黄色光照射によって外向き電流が発生し、この電流はアニオン電流、つまりハ
19
ロロドプシンによる電流であると考えられ、黄色光照射で膜電位は減少することがわかった(図
13C).
VII・3. BACトランスジェニック法を用いたPV-Creマウスの作製
VII-3・1.方法
BACトランスジェニック法
Bacterial artificial chromosome(以下BAC)は、大腸菌プラスミド:F因子の複製系を利用
した環状ベクターであり、およそ300:kbまでの外来遺伝子断片をクローニング部位に挿入でき
る。クローン化した遺伝子の構造の二次的変化が少なく、きわめて安定に操作できるという特
徴を持つことから、トランスジェニックマウス作製において発現ベクターとして利用される。
外来遺伝子を、導入したい目的の細胞において特異性高く発現している遺伝子を選択し、その
発現制御領域(プロモーター)を含むできるだけ長いゲノムDNAをもつBACクn一ンを選び、
その下流に、発現させたい外来遺伝子を連結させることによって、より正確に目的の細胞で外
来遺伝子を発現させることができる(図15)。
この方法を用いて、PV遺伝子の発現制御領域の下流にCre遺伝子を連結させた組換えBAC
ベクターを作製し、受精卵核に注入してPV-Creトランスジェニックマウスを作製した。
マウスPV遺伝子は15番染色体上に存在し、長さ約130:kbpで5つのエクソンと4つのイン
トロンからなる(図15)。バイオインフォマティクスデータベース(UCSC Genome Browser)
を利用し、PV遺伝子のタンパク質コード領域の上流約50 kbと下流約15 kbとイントロン領域
とを十分に含んだBACクローンを選択して購入した。
まず、大腸菌相同組換えによって、pBeloBAC 11内の2っの10xP配列を各々SceIとpPol配
列に置i旧した(Gong et a1.,2002)。
また、BACクローンをテンプレートとしてPCRで増幅した断片A(以下、 fA)及び断片B
(以下、fB)、並びに核移行シグナル(nuclea■locaHzation signa1、以下nls)が結合したCre
を、pCR II(lnVitrogen, CA USA)にサブクローニングした。なお、 fAはPV開始コドンから
上流500bpまでのPCR増幅産物であり、fBは開始コドンの19塩基下流から始まり、500 bp
下流までのPCR産物である。 PCR増幅には以下のプライマーを用いた。 fA upper primer:
ATTCAGATTTTTCGCGGCAT. fA lower primer: CCTGCAACTGTTTGAGCGGG. fB upper
primer: GCGCTGAGGACATCAAGAAG, fl] lower primer: ATGCAGAAAGGTCACTGTGC.
次に、シャトルベクターであるpSV 1.RecAのSa11サイトに、 fA-nls・Cre・Bの組み換えカセ
ットをサブクローニングした。このコンストラクトにはpolyadenylation signal(以下polyA)
は含まれず、Cre RNA翻訳の終止はPVゲノム内のpolyAを利用している。
そして、大腸菌相同組換えによって、PV遺伝子開始コドン(ATG)以下22塩基配列がnls・Cre
20
遺伝子配列に置換された、組換えBAC DNAを作製した。
BAC導入遺伝子をもつ三体を、クロラムフェニコールを含む:LB培地を用いて、37℃で一晩
振塗培養し、得られた魚体29からNucleoBond BAC 100(Macherey-Nagel;Germany)を用い
てBAC DNAを回収した。
得られたBAC DNA 3μ9を37℃で一晩1-pPoI制限酵素消化して直鎖化し、一部をパルスフ
ィールドゲル電気泳動(Palsed field gel electrophoresis、以下P:FGE)してBAC DNAのサイ
ズとスメアがないこと確認した。直鎖化した残りのBAC DNA 1μ9分を透析チューブに入れ、
透析緩衝液1/10TEを用いて4℃で13時間透析して塩を除去した。透析後のBAC DNA溶液の
一部をパルスフィールドゲル電気泳動しスメアがないことを確認し、さらにミニゲル電気泳動
で濃度を確認した(約10ng/μ1)。
BAC DNAの受精卵への注入は、日本エスエルシー株式会社に依頼し、マイクロインジェク
ション法により行った。0.7μ9/mlのBAC DNAをBD:F 1マウス受精卵雄性前核に注入し、仮
親マウスの卵管開口部に注入した。
得られたマウスの中から、導入したBAC DNAが組み込まれたマウスを選別するために、挿
入遺伝子CreのPCRを以下のプライマーを用いて行った。 Cre upper pt ner:
TCGATGCAACGAGTGATGAG. Cre lower primer : TTCGGCTATACGTAACAGGG.
得られたPV-Creマウスは親マウス(progenitor mouse)として、 C57B:L/6マウスと交配さ
せ、:F1世代のマウスを得た。
Creレポーターマウスの作製
PV陽性細胞にGFPを発現させるために、G:FPを発現するCreレポーターマウスを作製した。
ubiquitous chick actin(以下CA)promoterの下流にloxP配列で挟まれたmodified red
fluorescent protein(以下mR:FP)cDNAがあり、その下流にG:FP cDNAとpolyAが配置され
た遺伝子コンストラクションをもつプラスミドベクターをクローニングした(図15)。遺伝子コ
ンストラクトを取り出すために、プラスミドをSa1・1で制限酵素処理し、ゲル電気泳動を行って、
上記の遺伝子コンストラクトを分離した。分離したDNAはフェノールクロロホルム処理、エタ
ノール沈殿によって精製したのち、TE(0.1mM)に溶解した。
受精卵への注入は、日本エスエルシー株式会社に依頼し、マイクuインジェクション法によ
り行った。2.7μ9/mlのDNA溶液をBD:F 1マウス受精卵雄性前核に注入し、仮親マウス卵管開
口部に注入した。目的の遺伝子コンストラクトが導入されたマウスの選別は、以下のプライマ
ーを用いたG:FPのPCRによって行った。G:FP upper primer(ACGGCAAGCTGACCCTGAAG)、
GFP lower primer (CTTGTGCCCCAGGATGTTGC).
トランスジェニックマウスの免疫組織化学分析
4週齢のマウス5匹を固定液(4%(w!v):Formaldehyde in O.01M PBS)を用いて面諭固定し、
室温で2時間後固定した。その後、cryoprotective buf〔br(20%(w/v)Sucrose in PBS)に溶液を
21
置換して4℃で一晩おき、凍結ミクロトーム(Cryostat,:Leica CM 1850, Germany)で厚さ50
μmの前頭面切片を作製し、フローティング法による免疫染色を行った。
PBSで数回洗浄し、反応液で希釈した一次抗体液内で一晩、室温で反応させた。各抗体の反
応液には、PBS-XCD(0.3%(wlv)[[biton X・100,0.25%(wlv)λ一carrageenan,1%(w!v)Nomal
don:key serum and O.02%(w!v)NaN3 in PBS)を用いた。各免疫染色において使用した一次抗
体は、anti-calretinin(CR)rabbit serum(1:2000;SWANT, SWitzerland), anti・Cre mouse
monoclonal antibody (1:1000; Chemiconl MAB 3120), antiCre !abbit serum (1:5000; Novagen,
69050-3 Lot MOOOOOO94), anti’GFP rabbit serum, anti-GFP gunea pig serum (Tamamaki et
al. 2003), anti’PV mouse monoclonal antibody (1:2000; Sigma, P’3171, mouse ascites fluid
clone PA-235, Lot 043H4814), anti’GABA r abbit serum (1:2000; rabbit p olyclonal antibody,
Segma, St.Louis, MO; A2052, Lot 023K4814), anti’somatostatin (SS) rabbit serum (1:1000;
Peninsula, Belmont, CA;:Lot O31337-2)である。各洗浄ステップは、 PBSを用いて10分間を3
回繰り返した。2次抗体反応は、PVとCreの二重染色の際は、 PV染色に対しては、 Alexa
488-conjugated donkey anti・mouse IgG抗体(1:100;Molecular Probes, Eugene, OR)を用い、
Cre染色に対しては、 biotinylated anti’rabbit IgG donkey抗体(1:100;Chemicon
international)を用い、室温で2時間行った。次に、Alexa 594・conjugated streptavidin(1:100;
Molecular probes, Eugene, OR)を用いて、室温で2時間発色反応した。同様に、 GFPとCre
の二重染色の際は、G:FPに対してAlexa 488-conjugated donkey antiTabbit IgG抗体(1:100;
Molecular Probes, USA)、 Creに対してCye5・conjugated donkey anti・mouse IgG(1:100;
Jackson Laboratory, USA)を用いた。抗体反応を終えた切片をスライドグラス(A:PS・coated
glass, Matsunami)に貼り付け、軽く乾燥させた後に、蛍光観察用封入剤を用いて封入した。
共焦点レーザー顕微鏡(LSM Pasca1;Zeiss)で観察し、直ちに写真撮影した。
in situハイブリダイゼL一一ション
マウスPV cDNA(GenBank accession number:NM O 13645)に対応するDNA断片は、以下
のプライマーを用いてRT・PCRを行って作成した。 PV-5(GGGCCTGAAGAAAAAGAACC)、
PV-6(AGTACCAAGCAGGCAGGAGA)。 Creに対応するDNA断片は、Cre-3
(ATGTCCAATTTACTGACCGT)、 Cre・4(CTAATCGCCATCTTCCAGCA)を用いてPCRを行
って作成した。PCR産物はpCRII(lnVitrogen, CA USA)を用いてクn一一一ニングした。これらの
プラスミドをテンプレートとして、ジゴキシゲニン(DIG)ラベリングキット(Roche Diagnostics,
Mannheim, Germany)を用いてセンス、アンチセンスシングルストランドRNAプローブを合
成した。
成体PV・Creマウスを用いてPV mRNAとCre mRNAの検出を行った。以降のin situハイ
ブリダイゼーションの方法は、実験1と同様であり、記載は省略する。
22
VII・3-3.結果
BAC DNAの受精卵への注入によって39匹のマウスが生まれ、 PCRスクリーニングの結果、
トランスジーン陽性マウスは4匹だった。
免疫組織化学分析、in situハイブリダイゼーションによるPV’Creトランスジェニックマウス
の解析
PV’Creマウスでは、 PV陽性細胞に一致してCreを発現する
このマウスの特徴は、PV発現神経細胞が同時に遺伝子組み換えタンパクCreを発現すること
であるため、その共在を免疫組織化学、in situハイブリダイゼーションを用いて解析した。 PV
とCreの二重免疫染色で、PV免疫活性陽性細胞とCre免疫活性陽性細胞はほとんどの場所で共
在していた(表2)。しかし、新皮質第V層ではCre陽性の細胞におけるPV免疫染色パターン
は一様ではなかった(図16A)。また、海馬放線層ではCre免疫活性陽性PV免疫活性陰性の細
胞が存在し(図16B)。視床リレー神経核(背外側核:LD)は、細胞体ではなく多数の線維がPV
免疫活性を示し、Cre陽性細胞体との共在を明らかにすることが困難だった(図16D)。これら
の結果の一部にはPV抗体による検出感度の違いが影響している可能性があるため、次に、 PV
とCreの共在をmRNAレベルで解析した。
PV mRNA発現の分布は既存の報告と一致した(Seto・Oshima et al.,1989;A■en Brain
Atlas)(図17)。 PVとCreの蛍光二重染色で、 PV免疫染色パターンが一様でなかった新皮質
第V層、Cre陽性PV陰性の細胞が存在した海馬放線層、 PV免疫活性陽性細胞体の同定ができ
なかった視床リレー神経核(:LD)を特に注意深く観察し、 PV mRNA陽性細胞とCre mRNA
陽性細胞の分布を比較したところ、ほぼ一致することがわかった(図17)。
以上から、今回作成したPV-Creトランスジェニックマウスは、 PV陽性細胞に一致してCre
を発現していることが確認できた。そして、抗PV抗体を用いたPV免疫染色では、新皮質第V
層PV陽性錐体細胞を形態的に同定することは不可能であることが改めてわかった。
G:FP発現Creレポーターを用いて明らかになった新皮質第V層PV陽性錐体細胞の分布様式
抗PV抗体を用いたPV免疫染色では明らかにされてこなかった新皮質第V層PV陽性錐体細
胞の分布様式をとらえるために、PV一 CreトランスジェニックマウスとG:FP発現Creレポータ
ーマウスの交配で得られたダブルトランスジェニックマウスを用いて解析を行った。G:FPとPV
の蛍光二重染色を行い、その共在を調べたところ、観察した領域において、GFP陽性PV免疫
活性陰1生細胞が散在し、Cre陽性PV免疫活性陰性細胞よりも数が多かった(図18、黒抜き矢
印)。これは、発達過程において一時的にPVを発現し、その後発現が止まった細胞が含まれて
いるためだと考えられる。新皮質では、GFP染色によってはじめて形態が明瞭になった、長く
太い尖状樹状突起を持つ第V層深層G:FP陽性錐体細胞はすべてPV免疫活性陽性であり(図
23
18A)、細胞体周囲に限局したPV免疫染色パターンをしめしていた(図16A参照)。新皮質全
体におけるこれらの細胞の分布を調べた結果、一次感覚野(9.2/104μm2)、一次運動野、視覚
野に多く、以前の報告よりも広範囲に存在することがわかった(図19)。そして、周辺領域にい
くにしたがい、徐々に減少していった。
これらの結果から、BACトランスジェニック法を用いて作製したPV-Creトランスジェニッ
クマウスは、PVとCreが共在し、 PV陽性細胞に一致してCreAoxP遺伝子組換えが起こること
が確認できた。さらに、新皮質感覚野、運動野、視覚野において、PV陽性細胞はGABA作動
性神経細胞のみならず興奮性錐体細胞にも少数存在することが明らかになった。したがって、
前頭部や尾側側頭部では、PV陽性細胞はGABA作動性神経細胞のみであるので、PV陽性GABA
作動1生神経細胞をターゲットとした光刺激実験が可能であることが確認できた。
24
VII・4.今後の展望
3種類のトランスジェニックマウスの作製が終了し、PV陽性細胞特異的に2つのロドプシン
タンパクを発現させることができ、また、実際に光照射によって膜電位変化を誘導することが
できれば、その神経活動制御様式は、従来の電極を用いた電気刺激実験:よりも正確にPV陽性細
胞に限定されたものになる(図20)。そのため、図1にあげた大脳皮質の複雑に絡み合った神経
回路内でも、PV陽性のGABA作動性神経細胞だけを、瞬時に、興奮させたり、抑制させたり
することができる。しかも、調べたい脳の領域に光照射の部位を限局させることで、いろいろ
な解析が行えると考えられる。例えば、統合失調症と前頭前野PV神経細胞の障害が報告されて
いるため、そこを標的とした光照射によって統合失調症の症状に類似した変化が観察されるか
もしれない。また、興奮性神経細胞の発火タイミングを効果的に制御している皮質PV神経細胞
の障害は、てんかんを誘導する可能性があり、実験1で再現効率が悪かった実験も、この方法
を使えば、新たな情報が得られるかもしれない。
皮質局所のPV陽性神経細胞活動の可逆的制御によって、関連する領域にどのような電気生理
学的変化が生じるのか、また、正常な情報処理が行えなくなったマウスはどのような行動変化
を示すのか、これらの観察から得られる情報は、大脳皮質PV陽性GABA作動性神経細胞が担
う役割を神経回路レベルで理解するための有用な情報となるだろう。
25
A blue tight
図ll. Aチャンネルロドプシン(ChR2)とハロロ
ドプシン(NpHR)の構造模式図。 ChR2は青色
光を受けると主にNaイオンを通すイオンチャネ
Yellow light
ChR2
伝
NpHR
(K’)
レ儀
富璽=「1.ユ1
ビピ, ■,「阯「‘’
ルであり、NpHRは黄色光を受けると構造変化を
起こし、Clイオンを細胞内にくみ込む性質をもつ
イオンポンプである。BChR2とNpHRの各最大
活性波長。ChR2の最大活1生は約470 nmの励起光
で生じ、NpHRの最大活性は約580 nmの励起光
で生じ、最大活性波長は約100nmずれているた
め、理論上、2種類の光を用いて神経細胞活動の
オンとオフをコントロールすることが可能である
㎡ぴン=x,ん丈,・
圏ドビi』㌧=『
rYYY感ズズ
Yゴ1ダ.ビズ
ジ㍉ 虚『..r’r’口
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C CI
B
4。㌦ 帽識
劃
i’ 1,
」 昏
//.,., ,f,“
@ik
(Hausser, M Nature Rev. Neurosci., 2007,
446,617-619から引用)。CChR2とNpHRを海
__上し
L e’ k,
臥
一 ’be-che
‘.1’. ㌧∠『 {,’し !ゐ
t e t l e - t l - t
㌔ヤa・・een8+伯m〕
CAG promotermu IRES N tRES
馬神経細胞に発現させ、パッチクランプ法で解析
した結果、青色光照射によって活動電位が誘発さ
れ、さらに、黄色光の追加照射によって活動電位
の発生が抑制されている(Zhang, F. Nature
Rev. Neurosci.2007,446,633-639から引用)。
一 polyA .
(sNpHR) (ChR2)
pL5
図12.作成したハロロドプシン(NpHR)とチャンネルロドプシン(coP4/ChR2)発現プラスミドの構造。野生
型コドン配列を使用したコンストラクトと合成型コドン配列を使用したコンストラクトの2種類を作成した。
CAG: ubiquitous chicken actin, wNpHR: wild type halorhodopsin. sNpHR: synthesized halorhodopsin.
IRES: internal ribosome entry site. GYFP: G’protein fused to yellow fluorescent protein. polyA:
polyadenylation signal
A
C パッチクランプ法(電位固定法)による解析
黄色光または青色光
cop4
wild
NpHR
ChR2
synth
NpHR
mm
(<εだ①」」コO
B
O臓噸顧町制 一繭鯉戸口輸
醤 ぞ
一き∋
Mue 1igtu
・mRNA発現解析
・電気生理学的解析
内向き電流→脱分極
一3
RT 一 + .. + + 一
十 願
3
4
〉釧“w鴫瞬
。」闘南部繭鹸㌔醐嶋
・ハU
bp bp bp
878
bp
2
2
1 0 醤
933 878 933
1
禰
㌦tt,、鵡齢灘・・’1趨.紗
o
ξ⊂)倒。Φ」きO
鱒餉6
冒邑
. G.
外向き電流→過分極
1
2 3
4
Time (sec)
図13.293細胞を用いた作成遺伝子コンストラクトの発現解析。A293細胞にリポフェクションにより遺伝子
導入し、48時間後にYFP蛍光を呈する細胞が観察された。 B RT・PCRを行い、野生型コンストラクトと合成
型コンストラクト導入293細胞におけるmRNA発現を解析した。野生型、合成型、ともにmRNAが検出され
た。C野生型コンストラクトを導入してYFP蛍光を呈した細胞の光照射に対する反応をパッチクランプ法
(電位固定法)を用いて電気生理学的に解析した。青色光照射によって内向き電流が流れ、膜電位は脱分極
した。黄色光照射によて外向き電流が流れ、膜電位は過分極した。
A
PminCMV
Do
TRE
X
-5×
/脚
PCMV mu//llillVF ・1
P
目的遺伝子
B
(D PV-Cre
のノ〈
@ tet-off / Cre-reporter
@ ChR2-mCherry, HR-YFP / tet-off reporter
(1) PV-Cre
PV promoter
@ tet-off / cre一.reporter lcre
CAG promoter
isrz:
CFP
polyA Hou
...・“”一
ム polyA
窒?モ盾高b奄獅≠狽奄盾
←
tTA expression
CAG promoter
・ 瞬
M polyA
仏
@ ChR2-mCherry, HR-YFP / tet-off reporter
polyA
mCherry
x;
一 YFP
polyA
PV陽性細胞特異的にNpHRとChR2が発現する
図14.PV陽1生細胞特異的にNpHRとChR2を発現させる方法。 A. Tet-offシステム。 Ecoliテトラサイクリン
耐性オペロンから得られた2種類の調節性因子、Tetレプレッサータンパク(TetR)とTetオペレーターDNA
配列(tetO)を基にしたシステムであり、TetRとVP 16活性化ドメイン(AD)からなる融合タンパクである
テトラサイクリン制御性トランス活性化因子(tTA)を使用する。発現したtTAはドキシサイクリン非存在下
でテトラサイクリン応答因子(以下TRE)に結合し、 TRE-CMVプロモーター制御下に標的遺伝子の転写を
活性化する。B. CreAoxP遺伝子組換え法とtet-of[遺伝子発現制御を用いたNpHR、 ChR2発現機序。 PV-Cre
マウスとtet-off/Cre・reporterマウスとChR2-mCherry, HR-YFP/tet-off reporterマウスの交配で得られた
マウスは、PV陽性細胞特異的にCre/loxP遺伝子組み換えが生じ、 tTAタンパクを発現する。そしてtTAタン
パクはテトラサイクリン非存在下でTRE-Bi(lirectional minimum CMVプロモーター(Pbi-1)へ結合し、
ChR2とmCherry、 HR(NpHR)とChR2が発現する。
PV-Cre
ATG
rgt
exl
ex2H ex3Hex
ex5
BAC
nls
コ
剛 ↓Cre
GFP Cre・reporter
GFP expression
一・^一・.顔∵ 戟m陣.剛^
ゆ
CA prol恥。ねr ..G「?.一一’ 閃lyA ・
図15.組換えBAC遺伝子の構造とGFP発現機序をしめす。マウスParvalbumin遺伝子は15番染色体に
存在し、130kb、5つのエクソンで構成される(Schleef et al.,1992)。組換えBAC遺伝子はPV遺伝子の
ATG開始配列以下12塩基配列をnls-Cre配列に置き換えている。 PVプロモーター制御下に発現したCre
組換え酵素は、GFP発現CreレポーターマウスのloxP配列で挟まれたmRFP遺伝子配列を除去する。その
結果、その細胞はCAプロモーター制御下に永続的にGFPを発現するようになる。 nls, nuclear localization
signal; Cre, Cre recombinase; CAG, ubiquitous chick actinl mRFP, modjfied red fluorescent protein
cDNAI GFP, green fluorescent protein cDNA; polyA, polyadenylation signal
PV-IR
Cre-IR
Merged
新皮質
178
178
178
帯状回
154
154
154
梨状皮質
34
42
34
海馬
58
71
58
基底核
44
49
44
視床網様核
85
85
85
表2.PV-Creトランスジェニックマウスの
PVとCreの蛍光二重染色の結果。
ほとんどの場所でPVとCreの発現は一致した。
図16.PV・CreトランスジェニックマウスのPV(緑)
とCre(赤)の蛍光二重染色。 Aは新皮質における
共在を示す。PVとCreは共在したが、細胞体における
PVの染色パターンは一様ではなかった。黒抜き矢印
は大きな細胞体をもつPV陽性Cre陽性細胞を指す。
矢印はPV陰性かっCre陰性と判断した細胞を指す。
Bは海馬CA 1における共在をしめす。錐i体細胞層内と
放線層との境界に存在する細胞は共在したが、放線回
内のCre陽性細胞でPV免疫活1生をみとめることはでき
なかった(黒抜き矢印)。Cは視床網様核での共在を
しめす。Dは視床リレー細胞核(LD)での共在をしめ
す。細胞体よりも神経線維が強いPV免疫活性をしめ
している。Cx, neocortex;Hip;hippocampus;LD,
lateral-dosal nucleus; Rt, reticular thalamic nucleusj
SO, str.oriensl SP, str. pyramidale; SR, str.
radiatum; Scale bar, 50pm (A-D) .
A D ’x
図17.in situ hybri(lizationによる、 PV・Creトランス
. C翼 M目b
ジェニックマウスにおけるPV mRNAとCre mRNAの
検出。Aは新皮質と海馬におけるPV mRNAシグナルを
しめす。Bは海馬のPV mRNAシグナルをしめし、矢印
は、PV免疫染色では検出できなかった放線層における
PV陽性細胞を指す。 Cは海馬のCre mRNAシグナルを
㌃
Hゆ tiボ
「、 舶
habenular nucleus; MHb, medial habenular nucleus;
Rt, reticular thalamic nucleus;VPL, ventro-postero
講エ
Hip, hippocampus; LD, lateral dorsalisj LHb, lateral
りかダボ ニへ ひ
、喩
caudo’putamen; Cx, neocortex; GP, globus pallidus;
滋.・.’
農、
しめし、矢印は放線層Cre mRNA陽性細胞を指す。 D
は視床におけるPV mRNAシグナルをしめす。 Eは視床
と線条体におけるPV mRNAシグナルをしめす。 CPU,
燃:淘
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t . ’, ’LHb
∫妙鵠豪’ ,
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8
lateralis; VPM, ventro’postero medialis. Scale bar,
300pm (A,D,E)100pm (B,C).
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GFP
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merged
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一
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図18.PV-CreトランスジェニックマウスとGFP発現Creレポーターマウスの交配で得られたダブル
トランスジェニックマウスにおけるGFP(緑)とPV(赤)の蛍光二重染色。新皮質におけるGFPと
PVの共在をしめす。 PV免疫染色では形態が不明瞭な細胞(白矢印)は、 GFP免疫染色によって、
大きな細胞体と太く長い尖状樹状突起をもつ錐体細胞であることが明らかになっている。第V層深層
のGFP陽性錐体細胞はすべてPV・IR陽性であった。黒抜き矢印はGFP陽性PV・IR陰性細胞を指す。
発達過程において一時的にPVを発現し、その後発現が止まった細胞であると考えられる。
舳聯汗B 図19・・GFP免疫染色によってはじめて明らかになった
A
新皮質第V層におけるPV陽性錐体細胞。 Aは第V層
響
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・”一’.一r.
噸!
略●
GFP陽性錐体細胞のDAB染色像。矢印は、錐体細胞に
特徴的な細胞体と尖状樹状突起を指す。BはGFP免疫
染色によって明瞭に可視化された太い尖状樹状突起を
持つGFP陽性錐体細胞の分布を示した図。個々の線は
5Qpm切片において観察されたGFP陽性錐体細胞を示
している。一次感覚野(92/104pm2)、一次運動野、
視覚野に多く、以前の報告よりも広範囲に存在するこ
とがわかった。そして、周辺領域にいくにしたがい、
徐々に減少していった。帯状回深層にもGFP陽性錐体
細胞が存在した。しかし海馬にはGFP陽性錐体細胞は
尋
みとめなかった。
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骨
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PV陰性細胞
大脳皮質
活動に影響を受けない
図20 光照射によって大脳皮質局所のPV陽性GABA作動性神経細胞の活動を制御する。 A PV陽性細胞特
異的にハロロドプシン(HR)とチャネルロドプシン(ChR2)を発現させることが出来れば、複雑な神経
回路内で、電気刺激実験よりも正確に、PV陽性細胞の活動だけを制御できる。 B作製したトランスジェ
ニックマウスに光ファイバーをセッティングする方法。活動を制御したい脳領域に照射部位を合わせる。
VIII.結語
大脳皮質GABA性神経伝達を生きた成体において局所的に阻害するために、2つの実験を計
画した。
タモキシフェン誘導性Cre遺伝子組換え系を用いた嗅内皮質局所のVGAT遺伝子不活化実験
では、嗅内皮質局所でVGAT不活化を誘導:することができた。その結果、嗅内皮質局所のVGAT
不活化に伴うGABA性神経伝達の障害によって、著しくマウスの活動1生が低下し、組織学的に
は、広く海馬、扁桃体、新皮質、帯状回において二次的に興奮性と抑制性神経活動が変化した
ことをうかがわせる結果が得られ、また、海馬にてんかんモデルに一部類似した変化が生じた。
生きた成体マウスの複雑な神経回路において、局所のPV陽性GABA作動性神経細胞活動だ
けを制御するために、光照射によって膜電位を変化させ得る2つのロドプシンタンパクNpHR、
ChR2を、 PV陽性細胞特異的に発現させる実験を計画した。2つのロドプシンタンパクは、培
養細胞でうまく機能した。作製予定の3種類のトランスジェニックマウスのうち、PV’Creトラ
ンスジェニックマウスでは、PV陽性細胞に一致して遺伝子組換えタンパクCreが発現した。そ
して、PV-Creマウスを用いて、大脳皮質に少数存在するPV陽性錐体細胞の分布様式を確認す
ることができ、その結果、前頭部と尾側側頭部ではPV陽性GABA作動性神経細胞をターゲッ
トとした光刺激実験が可能であることがわかった。
26
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