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GHz設計,常識・非常識

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GHz設計,常識・非常識
第2章
GHz設計,常識・非常識
∼集中定数による設計と分布定数による設計の
境界線を知る∼
津野 徹
第 1 章では,数百 MHz の信号を扱う際に,GHz に関する知識
が不可欠であることを説明した.ここでは,その GHz 回路に
関するコモンセンスを紹介する.
(編集部)
1 誰が GHz の知識を必要とするのか
現場では誰がどのようなときに GHz の知識を必要とする
のでしょうか.以下に GHz の知識と技術が必要な分野を挙
携帯電話やギガ・ビット Ethernet などに見られる,機
げます.
器の高速化や,それらの機器の無線化など,電子回路技術
者にとって,近年ほど GHz の知識と技術が必要とされてい
る時代はありません.
● FPGA や LSI の開発者および評価技術者
最 近 の LSI は , HDMI( High Definition Multimedia
本稿におけるGHz とは,一般的に300MHz ∼ 3GHz の極
Interface)や PCI Express, HD-SDI( High Definition
超短波帯(UHF),3GHz ∼ 30GHz のマイクロ波帯(SHF),
Serial Digital Interface)など,信号周波数が数百MHz ∼数
30GHz ∼ 300GHz のミリ波帯(EHF)と呼ばれている領域
GHz のシリアル・インターフェースに対応しているものが
の中で,1GHz 近辺,またはそれ以上の周波数とします.
あります.また,DDR2 や DDR3 といったメモリのパラレ
本特集ではこの GHz についての疑問を平易に説明していき
ル・バスも,数百 MHz から数 GHz の信号を扱っています.
ます.
そのため,否応なしに GHz に関する知識を求められます.
● プリント配線板パターン設計者および評価技術者
1GHz 以上の信号を扱う回路は,配線パターンの引き方
出力
や幅,間隔などにおいて,分布定数回路の知識が必要です.
要点としては,
(a)スタブの発生の抑制
(b)配線パターンの 50 Ω化
(c)配線パターン同士の間隔の取り方
入力
(d)パターンの終端の仕方
などを覚えておく必要があります.
図1
10GHz LNA(Low Noise Amplifier)の設計例
あくまでもイメージ,配線パターンの意味を理解できなくても
よい.
KeyWord
28
MMIC,DQPSK トランスポンダ,アンテナ,分布定数回路,集中定数回路,プロードライザ,NOCOIL,
シミュレータ,同軸ケーブル
Design Wave Magazine 2007 November
● 専用 IC 設計者および評価技術者
30GHz)やミリ波帯(30GHz ∼ 300GHz)を使用します.
レーダは,昔ならば導波管,ホーン・アンテナ,マグネト
MMIC(Microwave Monolithic Integrated Circuit)の
設計者も,マイクロ波シミュレータなしでは物作りができ
ロン,クライストロンなどのメカ部品で構成されました.
ません.図 1 に 10GHz LNA(Low Noise Amplifier)の設
現在はプリント基板アレイやパッチ・アンテナ,MMIC で
計例を示します.マイクロ波シミュレータでは,部品実装
構成されています.安価で小型,低消費電力,取り扱いや
も含めたレイアウトができます.
すさなどに優れています.
● ネットワーク機器の設計者および評価技術者
● アンテナ設計者および評価技術者
無線通信においては,搬送波に GHz を使うことが多く,
最近のネットワークは高速化により,40GHz などといっ
た高い周波数を利用するシステムが製品化されています.
必然的に GHz 回路の知識が求められることはいうまでもあ
例として,横河電機の DQPSK トランスポンダが挙げられ
りません.アンテナは 3 次元形状であり,3 次元に電波を
ます.
放射,吸収するので,3 次元電磁界シミュレータの出番と
システムのコンポーネント設計には,マイクロ波シミュ
なります.例えば,携帯電話は人体による電波吸収などの
レータが不可欠です.このようなシステムは 100kHz ∼
影響により,通常のホイップ・アンテナだけでは送受信感
40GHz という超広帯域で信号を処理しなければならないの
度が得られません.2 本目の逆 F 型アンテナやチップ・ア
で,最高に設計が難しい分野です.図 2 に MMIC の回路例
ンテナを追加して,総合的な送受信感度を得るように設計
を示します.このIC は電子の遅延を伝送線路で保証しなが
されています.
アンテナ形状は無限にあり,今でも新型アンテナが次々
ら,多段で増幅回路を構成します.ちょうどトランジスタ
と発表されています.このようなアンテナ設計は,3 次元
も含めたゲインのある 50 Ω伝送線路という設計思想です.
的にクリエイティブな発想をする能力が必要です.図 3(a)
● 自動車など衝突防止レーダの設計者および評価技術者
に筆者の設計した 2.5GHz 4 素子パッチ・アンテナの基板
を,図 3(b)にその電波放射パターンを示します.
自動車の場合,レーダの周波数はマイクロ波帯(3GHz ∼
IND
ID=L1
L=1000nH
入力側伝送線路
PORT_PS1
P=1
Z=50 0hm
PStart=−6 dBm
PStop=9 dBm
PStop=3 dBm
入力
TLIN
ID=TL1
ZO=zg1 0hm
EL=eg1 Deg
F0=f GHz
CAP
ID=CC
C=cc pf
TLIN
ID=TL1
ZO=zg1 0hm
EL=eg1 Deg
F0=f GHz
DCVS
ID=V1
V=−0.15V
入力伝送線路用
終端抵抗
TLIN
ID=TL1
ZO=zg1 0hm
EL=eg1 Deg
F0=f GHz
TLIN
ID=TL1
ZO=zg1 0hm
EL=eg1 Deg
F0=f GHz
CURTICE
ID=NEC710
AFAC=1
NFING=1
TLIN
ID=TL1
ZO=zg1 0hm
EL=eg1 Deg
F0=f GHz
FET
CAP
ID=CC
C=cc pf
RES
ID=Rload
R=50 0hm
CURTICE
ID=NEC710
AFAC=1
NFING=1
TLIN
ID=TL2
ZO=zd1 0hm
EL=ed1 Deg
F0=f GHz
出力側
伝送線路
TLIN
ID=TL3
ZO=zdrain 0hm
EL=edrain Deg
F0=f GHz
CURTICE
ID=NEC710
AFAC=1
NFING=1
TLIN
ID=TL2
ZO=zd1 0hm
EL=ed1 Deg
F0=f GHz
出力整合用
伝送線路
出力伝送線路用
終端抵抗
図2
入力バイアス用電源
入力信号
除去用
チョーク・
コイル
TLIN
ID=TL3
ZO=zdrain 0hm
EL=edrain Deg
F0=f GHz
IND
ID=L1
L=1000nH
CURTICE
ID=NEC710
AFAC=1
NFING=1
TLIN
ID=TL3
ZO=zdrain 0hm
EL=edrain Deg
F0=f GHz
TLIN
ID=TL2
ZO=zd1 0hm
EL=ed1 Deg
F0=f GHz
入力信号除去用
チョーク・コイル
TLIN
ID=TL2
ZO=zd1 0hm
EL=ed1 Deg
F0=f GHz
TLIN
ID=TL3
ZO=zdrain 0hm
EL=edrain Deg
F0=f GHz
CAP
ID=CC
C=cc pf
RES
ID=Rload
R=50 0hm
出力
CAP
ID=CC
C=cc pf
PORT
P=2
Z=50 0hm
TLIN
ID=TL2
ZO=zd1 0hm
EL=ed1 Deg
F0=f GHz
直流除去
コンデンサ
DCVS
ID=V1
V=3V
回路用電源
MMIC の回路例
あくまでもイメージ,実際これを設計できなくてもよい.
Design Wave Magazine 2007 November
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