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古川 隆久 日本大学教授 説明資料(PDF / 187KB)

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古川 隆久 日本大学教授 説明資料(PDF / 187KB)
資料3
天皇の公務の負担軽減等に関する意見
2016/11/07 於首相官邸
天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議ヒアリング
日本大学文理学部教授
古川隆久
1、聴取項目に対する見解
①象徴としての天皇の役割とは、日本国の国家としてのまとまりと長い歴史を、国民主権
という日本国憲法の原則をふまえつつ、目に見える形で示すこと。
②公務のうち、国事行為は憲法で規定された天皇の職務なので維持されるべき。それ以外
の公的行為は義務ではないので、天皇の年齢や健康状態により、減らしたり、取りやめた
り、他の皇族が代行することが可能。なお、国事行為以外の公的行為の質や量については、
皇位継承の安定性を考えると、個々の天皇の人柄や健康状態に応じて範囲が定められるべ
きで、その判断は、現状通り、最終的には内閣の助言と承認によるべき。そのことは、こ
の際、生前退位を認めるか否かにかかわらず明確にするべき。具体案は試案1、2参照。
③国事行為については、国事行為の臨時代行に関する法律を活用して適宜負担軽減をはか
り、医学的に継続的な遂行が困難と認められる状態になった場合は摂政を設ければよい。
それ以外の公的行為については適宜他の皇族が代行すればよい。
④摂政は、その趣旨から考えて、高齢という理由だけでは設置できない。しかし、医学的
に国事行為の遂行が困難と判断される様な状態になった場合には設置できる。
⑤国事行為臨時代行法は、当面の負担軽減策として、時期や項目を限っての活用も可能。
⑥生前退位は、皇位継承の安定性確保のためには避けるべき。しかし、皇位継承の安定性
が多少とも損なわれる可能性を承知の上で、国民の意志として天皇の意向である生前退位
を認めるのであれば、それを否定すべき理由はない。ただし、その場合は、有識者会議が
国民に必要な情報提供を行った上での世論の動向が判断の根拠となるべき。
⑦生前退位を認める場合、典範改正により恒久制度化すべき。特別措置法は、恒久法より
は退位の連鎖は起きにくくなる可能性があるかもしれないが、前例となるため実質は恒久
制度化とあまり変らない。むしろ試案3のような規定にすれば典範改正の方が弊害少。
⑧退位後のご処遇については、憲法の規定に鑑み、国民統合の象徴が退位した方に実質的
に移ることがないような方策を講じるべき。具体案は試案3、4参照。
2、見解に関する説明
⑴基本的な考え方
現代日本の国のあり方は国民主権(天皇主権の旧憲法下の歴史への反省→議会制民主主義)
⇒国民の総意として日本国、日本国民統合の象徴となったのが世襲の天皇→維持が前提
憲法上の天皇→政治的な存在(憲法冒頭で規定、外遊→外交問題)→ただし政治的権能行
使せず(法令制度の改廃・公職の任免に関与しない)→旧憲法の国家理念の欠陥に基づく
1
無謀な戦争への反省(GHQ の押し付けではない→1945 年秋~冬、日本自由党、日本進歩
党の改憲方針→議院内閣制確立・統帥権独立廃止、憲法研究会改憲案→象徴天皇)⇒政治
権力の行使は自由な議論に基づく国民の意志に基づく
⇒今回の「お言葉」→問題提起と捉えないと憲法に抵触の可能性(制度や天皇の具体的な
職務内容について踏み込んだ内容なので)→国民が主体的に検討し判断する過程が必要
※高齢の陛下に対する配慮と、国のあり方の問題は別→天皇は極めて重要な公職(憲法冒
頭で規定)、世襲(継承できる人は非常に限定)、現行制度でも高齢化への対応可能
⑵聴取項目に即して
①◎象徴→歴史的経緯としては意味曖昧、学校教育でも教えられず→客観的に見ると→日
本という国のまとまりを具体的に示す
◎世襲→日本の歴史の長さを端的に示す
※皇室は、民意を先導するのではなく、民意を反映した国家意志を行動や発言で示す存在
②③公務→国事行為以外の公的行為→現実的には個々の天皇の裁量の範囲大→最終的には
内閣の助言と承認(外遊)⇒公務のあり方の最終的な決定権は民意の委託を受けた内閣⇒
生前退位を認めるか否かにかかわらずそのことは明確化しておくべき→試案1
※理由
世襲の天皇→血筋のつながり必要な公職(基本的人権一部制限→そのかわり優遇
〔敬意〕)→継げる人は少数→国事行為可能ならば皇位継承しないと継続困難(国事行為不
能なら継承順位変更可→典範第4条)→「お言葉」→現状の過重な公務の質量を基準に皇
位継承→能力主義導入→以後の天皇のあり方を制約→皇位継承者に負担→象徴天皇制維持
の阻害要因→事実上の退位強制、退位の連鎖、政争の具
⇒天皇の意見によって皇位継承の条件に能力主義導入→皇位継承の安定性阻害→国政へ
の権能行使同然→憲法に抵触の可能性
※公務軽減の具体策→総量規制が公平で実現可能性・持続可能性大→試案2
⑥現行制度は皇位継承の不安定要因皆無、現行制度でも天皇の公務負担軽減可能(国事行
為臨時代行法、摂政、公的行為→他の皇族)⇒象徴天皇制の安定的継続には最適
※ただし生前退位を認める余地がないわけではない→現在の諸外国の王室で生前退位の
実例あり、人権制限緩和の余地皆無ではない、皇位継承の具体策は法律事項(改憲不要)
※現行法制で生前退位なし→政争の具となる可能性配慮(昭和天皇の戦争責任問題)
※大日本帝国憲法下の皇室典範→国民統合の手段として天皇を超越的・絶対的な存在とし
たため理念的に上皇不可(←伊藤博文が仏教の影響に言及)→現状の参考にはならず
⇒生前退位認める場合→有識者会議が国民の検討・判断に必要な情報(公務負担軽減の選
択肢、各選択肢の長所短所)提示→その上での民意(リスク承知で可)が根拠となるべき
それでも⇒公務の質量の現状維持を前提とするような理由づけは不可(理由は前述)
※認めた場合の影響→他の皇族の「引退」は?、女性天皇問題(皇位継承早まる)
⑦特措法→退位の連鎖防ぐかもしれないが、急ぐことを理由→憲法に抵触(他にも負担軽
減策の選択肢あり→結果的に天皇の政治的権能の行使)、前例となるのは典範改正と同じ
2
⇒典範改正が上策(試案3)→本人の意志必須、憲法抵触・政治問題化回避→高齢のみを
理由・皇室会議で3分の2議決(摂政の例)、連鎖防止→年齢制限・代替わりの制限(上限)
※70 歳の根拠→継承者限定のため高め←大学教員、最高裁判事、一部の党の国会議員
※国会議決→本案の場合、理由が高齢のみなので不要
⑧退位後の処遇→天皇の上にさらに象徴的存在→憲法に抵触→高齢による引退であるべき
→皇籍離脱も選択肢→皇族にとどまる場合も、天皇より上位であるかのような呼称は避け、
皇位継承権や摂政就任権、国事行為等の権能なし、公的行為も最小限(試案3、4)
⑶今後の議論の進め方
有識者会議→名称・段取り予定は適切(結論ありきは憲法抵触の可能性)⇒論点整理の公
表、以後の段取りとその必要性の提示→世論動向の見きわめ(世論調査、国会での意見交
換、パブリックコメント、タウンミーティングなど)→その上で有識者会議の提言
⇒国民が判断材料を得られる状態で議論し結論を出すのが公明正大な議会制民主主義
※もし決着に時間がかかるなら→陛下には現行制度の対応で休養していただくこと可能
※世論・国会→「全会一致」不要(国民の総意は世襲天皇が国民統合の象徴という点→皇
位継承は法律事項)→戦後皇室典範審議時(帝国議会)は貴衆両院とも全会一致ではない
※天皇の葬送儀礼(「お言葉」)→今回の問題決着後に有識者会議(日本前近代史、宗教学、
民俗学専門家)→政府指針提示(法的措置不要だが結論ありきは避けるべき←憲法抵触)
むすび
今回の問題→国民主権、象徴天皇制が継続できるか否かの試金石→タブーなき議論が必要
「象徴としてのお務めについての天皇陛下お言葉」(2016 年 8 月 8 日)、拙著
参考文献
『昭和天皇』
(中央公論新社、2011 年)、同『昭和史』
(筑摩書房、2016 年)、奥平康弘『「萬
世一系」の研究』
(岩波書店、2005 年)、竹前栄治・岡部史信『日本国憲法・検証
論点
第一巻
憲法制定史』
(小学館
2000 年)、高橋紘編『同
第二巻
(同、同年)、澤大洋「日本進歩党の結党とその政策」(『東海大学紀要
資料と
象徴天皇と皇室』
政治経済学部』
27、1995 年)、帝国議会議事録
★試案
試案1
国事行為を除く天皇等の公的行為等に関する法律(または閣議決定)の要綱
①憲法第3条の規定を準用し、国事行為を除く天皇の公的行為は内閣の助言と承認のもと
で行なわれる。
②国事行為を除く天皇の公的行為は、個々の天皇の人柄や健康状態によってその範囲が定
められる。
③皇族の公的行為についても前条(前項)の規定を準用する。
3
試案2
天皇の公務負担に関する閣議決定の要綱
①天皇の公務は週 40 時間以内とする。ただし、天皇の年齢や健康状態によっては、内閣
の助言と承認により、さらに短縮することができる。
②緊急性の高い国事行為に限り、内閣の助言と承認により、月 5 時間以内、年間 60 時間
以内まで、公務時間の超過が認められる。ただし、天皇の年齢や健康状態によっては、内
閣の助言と承認により、さらに短縮することができる。
③他の皇族の公務についても、これに準じる。
試案3
皇室典範改正案
第二条
改正せず(皇位継承順位に入れない)
※第四条のあとに以下の条文を挿入する(第五条~第七条)
第五条
天皇は、第六条の規定にもとづき、皇室会議の議により、第二条に定めた順序に
従って譲位することができる。
第六条
以下の要件をすべて満たした場合、内閣総理大臣は皇室会議に天皇の譲位を発議
することができる。
一
高齢のみが理由であることを証明できること。
二
年齢が満七十歳を越えていること。
三
天皇自身が発意したことを証明できること。
四
元天皇および元皇后の称号を持つ皇族がいないこと。
第七条
譲位した天皇は前天皇となり、皇后は前皇后となる。
さらに次代の天皇が譲位した場合、前天皇は元天皇となり、前皇后は元皇后となる。
第八条(現第五条、語句の削除と追加)
皇后
元天皇、元皇后、前天皇、前皇后、親王
〔中略〕を皇族とする。(皇太后、太皇太后は削除)
第二十条(現第十七条)
摂政就任順位から「四
皇太后
五
太皇太后」削除(六を四
に繰上げ)(摂政に就任しない)
第三十一条(現第二十八条、皇室会議議員の規定に第四項を追加)
ただし、前天皇、前皇后、元天皇、元皇后は議員になることができない。
第三十八条(現第三十五条、語句追加) 皇室会議の議事は、第三条、第六条、
〔中略〕の
場合には、出席した議員の三分の二以上の多数でこれを決し、〔中略〕。
試案4
前天皇、前皇后、元天皇、元皇后の公的行為等に関する法律(または閣議決定)
の要綱
①前天皇、前皇后、元天皇、元皇后は、公的行為は行なわない。ただし、皇族全員あるい
は成年皇族全員が参加することが慣例となっている儀式や行事には参加してもよい。
②前天皇、前皇后、元天皇、元皇后は、名誉職等の役職には就任しない。
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