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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System
熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
コーピングと抑うつ・不安の関連についての心理学的研
究
Author(s)
鹿井, 典子
Citation
Issue date
2008-03-25
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/12089
Right
学位 論 文
1)octorgs Thesis
コーピングと抑うつ・不安の関連についての
心理学的研究
(Psycbological stHdy on the rdationships between stress coping,
α叩ression anαanxiety)
鹿井典子
Noriko Shikai
熊本大学大学院医学研究科博士課程
脳・免疫統合科学系専攻脳病態学
指導:北村 俊則 教授
2008年3月
学 位 論 文
Doctor’s Thesis
論文題名:コーピングと抑うつ・不安の関連についての心理学的研究
(Psycbological stuαy on the relationships between stress coping,
depression and anxi晦)
著者名:
鹿井 典子
Noriko Shi㎞i
指導教員名:
熊本大学大学院医学研究科博士課程
脳・免疫統合科学系専攻 脳病態学
北村 俊則 教授
審査委員名:
環境保健医学担当教授 上田厚
生命倫理学担当教授 浅井篤
脳機能病態学担当教授
2008年3月
池田 学
目 次
要旨………………・・………………1・・……・……・……・・………………1
参考論文リスト.........................................._.....................3
謝辞.........................................................................の.......5
略語一覧........................の..................................................6
第1章 序論...._.._..__.__..____..._...._.____..7
L1.背景
7
1.2.ストレスとは
8
1.3.コーヒ。ングとは 10
L4.コーピングの分類 12
15.コーピングと抑うつ、不安に関する先行研究
1.6.コーピングに影響を与える要因 17
L7。セルフ・エフィカシーとは
i
18
15
第2章コーピングとセルフ・エフィカシーの抑うつ、不安の
関連(研究3)..................................................20
2⊥背景と目的
2.2.方法
20
22
2.2.1.対象と手続き
2.2.2.尺度
23
2.2.3.統計解析
2.3.結果
25
2.4.考察
28
22
24
第3章 コーピングとライフ・イベント、抑うつ、不安の関連
(研究2)._........................................................31
5・1・背景と目的
31
3.2.方法 36
3.2.1.対象
36
3.2.2.尺度
37
3.2.3.手続き 37
3.2.4統計解析
38
3.3.結果 38
3.3.1.臨床実習前と臨床実習6ヶ月後の気分の変化
38
3.3.2.臨床実習前の抑うつ、不安、実習6ヵ月後の抑うつ、不安、実
習中のストレスフルなライフ・イベントに対する脅威度、そしてコ
ーピンの2変数間の関連
40
ii
3.3.3.6ヶ月間の臨床実習終了後の気分の予測
40
3.34.仮説モデルに基づく共分散構造分析 44
3.4.考察
44
第4章 コーピングとパーソナリィティの関連
(研究3)..............,..............φ._.............................48
4.1.背景と目的
48
4.1。1.パーソナリィティ理論の展開 48
4。1.2.Clo血gefの気質と性格の7次元モデル 50
4.1.3.コーピングとパーソナリィティに関する先行研究 52
4.1.4.Tempefam㎝t and Character hwe批ory(TCI:1993)
4.2.方法
53
54
4.2.1.対象
54
4.2.2.尺度
55
4.2.3.手続き
55
4.2.4.統計解析
4.3.結果
58
4.4.考察
60
56
第5章 結論_..__..__..._._._..____.____.__62
参考文献...._................._...........二...D.........................._砧
使用調査票.____..__..._..__._.__......_..___._95
iii
要旨
近年、ストレスと抑うつや不安との関連が、臨床面や研究面ばかりでなく、日常的にもクロー
ズアップされている。精神科領域においては、ストレスと抑うつ、不安との関連の理解は非常に
重要な視点であり、多面的な研究の展開が期待されている。
本論文では、認知的ストレス理論に基づいた「コーピング」という概念を主たるテーマとした。
ストレスフルなライフ・イベントが負荷されたときに、結果として云うつや不安といった不快感
情が発生する。両者の関係に介在するのが「コーピング」である。本研究は、臣一ビングの有効
性に影響を与える要因とされている「セルフ・エフィカシー」、「パーソナリティ」、「ストレスフ
ルなライフ・イベントの脅威度」とコーピングとがどのような関係にあるのかを検証した。
まず、ストレスとは何か、謙一ビングとは何かを説明した(第1章)後に、看護学生を対象に
して、ストレスが大きいと想定される臨床実習の前と実習開始後6ヶ月の2時点で縦断的に、自
己記入式質問紙による調査を行った。この調査データをもとに3つの研究を行った。
研究1(第2章)では、横断面調査での共分散構造分析の結果、(Dセルフ・エフィカシーが
低い人ほど情動優先コーピングを取りやすく、敵うつ感情を呈しやすい(2)情動優先コーピン
グをとりやすい傾向の人はそうでない人よりも、抑うつ感情を呈しやすく、不安にもなりやすい
(3)回避優先コーピングを上手に使うほど論うつ的になりにくいということが示唆された。
研究2(第3章)では、継歯的にデータを解析し、臨床実習6ヶ月経過時(T2)抑うっ的であ
った人は、そうでない人よりも、臨床実習前(T1)に抑うつ的であり、実習中のストレスフルな
ライフ・イベントをより脅威と受け止めやすいようだということが明らかになった。一方で、
T2に不安であった人というのは、そうでない人よりも、 T1に不安であった人であり、ストレ
スフルなライフ・イベントをより脅威に受け止めやすく、そして情動優先ほ一ビングを取る傾向
が高かったということが明らかになった。
研究3(第4章)では、コーピングのスタイルを規定するパーソナリティ要因を検討した。パ
ーソナリティの評価にTemperam鱗and Character hlventoly(TCI)を用いた。その結果、(1)損害
1
回避が高く、自己志向性が低い人ほど、情動優先コーピングをとりやすい(2)新奇性探求が低
く、自己超越性が高く、協調性が高い人ほど、課題優先ロービングを取りやすい(3)報酬依存
が高い人ほど、回避優先ロービングをとりやすいということが明らかになった。
一連の結果から、(1)情動優先灘一ビングが抑うつ・不安に対して果たす役割の重要性、(2)情
動優先灘一ビングに与えるセルフ・エフィカシーの抑制的機能、(3)自己志向的パーソナリティ
傾向が情動優先ほ一ビングに抑制的効果を与える可能性、が示唆された。
2
参考論文リスト
① 関連論文
Shikai, N., Uji, M., Chen, Z., Hiramura, H., Tanaka, N., Shono, M., & Kitamura, T. (2007). The role of
coping styles and self-efficacy in the development of dysphoric mood among nursing students.
Journal of Psychopathology and Behaviorl Assessment, 29, 241-248.
② その他の論文
Tanaka, N., Hasui, C., Uji, M., Hiramura, T., Chen, Z., Shikai, N., & Kitamura, T. (2008). Correlates of
the categories of adolescent attachment styles: Perceived rearing, family function, early life
events, and personality. Psychiatry and Clinical Neurosciences, 62, 65-74.
鹿井典子 (2007). コーピング. 北村俊則(編)周産期メンタルヘルスケアの理論―産後うつ病発
症のメカニズムの理解のために―. 医学書院
Chen, Z., Tanaka, N., Uji, M., Hiramura, H., Shikai, N., Fujihara, S., & Kitamura, T. (2007). The role of
personality for marital adjustment of Japanese couples. Social Behavior and Personality, 35,
561-572.
Uji, M., Shono, M., Shikai, N., Hiramura, T. & Kitamura, T.(2007). Rape Myth Scale: Factor structure
and its relationship with the gender egalitarianism among Japanese professionals. Psychiatry
and Clinical neurosciences, 61, 392-400.
Uji, M., Shikai, N., Shono, M. & Kitamura, T. (2007). Case illustrations of negative sexual experiences
among university women in Japan: victimization disclosure and reactions of the confidant.
International Journal of Offender Therapy and Comparative Criminology, 51, 227-242.
Uji, M., Shono, M., Shikai, N., & Kitamura, T. (2007). The contribution of shame and attribution style in
developing PTSD among Japanese university women with negative sexual experiences.
Archives of Women’s Mental Health, 10, 111-120.
Matsuoka, N., Uji, M., Hiramura, H., Chen, Z., Shikai, N., Kishida, Y. & Kitamura, T. (2006).
Adolescents’ attachment style and early experiences: A gender difference. Archives of
3
〃b〃28〃盆1レゴ診〃頚α1五飴α1孟海9;23口29,
鹿井典子(2006).抑うつとストレス・コーピング上里一郎(監修)北村俊則(編).抑うつと現
代的諸相一心理的・社会的側面から科学する一.ゆまに書房
Tanaka, N,{巧i, M, Hiram臓H., Che恥Z,, Shikai N.,&Kitamuf亀丁(2006>Cognitive paUems and
depression:a study of a J紅panese university student popu藍ation. Pミソ01πα〃ツα㍑J C〃η’6α1
1>診π眉050’θηoθ禺60,358−364.
局i,M, Hiramura, T, Shikal N, Shono, M,&Kitamur嬬丁(2006). Eg田itarian sex role a賃itudes in
Japan:Acon丘mlatory factor analytic study. Pミy助1αのノαη4α加’oα1.梅πm50’θ〃。ε萌60,
296−302.
陳孜・岸田泰子・松岡奈緒・宇治雅代・鹿井典子・平村英寿・北村俊則(2004).思春期の危険な
性行動を規定する心理社会的要因.人間関係の希薄化がもたらした精神保健問題に関
する研究.平成15年度厚生労働科学研究補助金(こころの健康科学研究事業)総括・
分担報告書,60−66.
平村英寿・宇治雅代・鹿井典子・陳孜・松岡奈緒・北村俊則(2004).児のパーソナリティおよび
親のパーソナリティと養育態度についての研究平成15年度厚生労働科学研究補助
金(こころの健康科学研究事業)総括・分担報告書,42−49.
松岡奈緒・岸田泰子・宇治雅代・鹿井典子・陳孜・平村英寿・北村俊剥(2004).アタッチメント・
スタイルとパーソナリティ,被養育体験,および性行動、・性意識との関連に関する
研究.人間関係の希薄化がもたらした精神保健問題に関する研究.平成15年度厚生労
働科学研究補助金(こころの健康科学研究事業)総括・分担報告警,4−12.
鹿井典子・宇治雅代・陳孜・平村英寿・松岡奈緒・北村俊則(2004).パーソナリィティと養育環
境に関する研究平成15年度厚生労働科学研究補助金(こころの健康科学研究事業)
総括・分担報告書,36−41.
4
謝辞
本研究を進めるにあたり、貴重な挑戦の機会をいただき、今日に至るまで、懇切丁寧な御指導
と御教示を賜りました、熊本大学大学院医学薬学研究部臨床行動科学分野教授北村俊則先生に、
深く感謝申し上げます。同分野の平村先生、宇治先生、田中先生、陳先生には、大学院生として、
研究場面での新鮮な刺激と心細かな御支援をいただきました。ここに厚くお礼を申し上げます。
弓削病院、庄野昌博先生には統計解析についての適切な助言をいただき、感謝申し上げます。
最後に、多大の寛容と忍耐をもってこの挑戦の道筋を伴走し、惜しまぬ支援を続けてくれた夫
鹿井功に、そして無謀とも思える試みに、終始暖かい応援を送ってくれた、息子干城、娘史子に
心から感謝の意を表します。
5
ws il.4-ee
ws.nd
pm;thIS
AIC
Akaikeinformationcriterion
AGFI
adjustedgoodness-offitindex
BDI
BeckDepressionInventory
CFI
comparativefitindex
CISS
CopinginventoryforStressfu1Situations
GFI
goodness-offitindex
HAD
RMSEA
HospitalAnxietyandDepressionScale
SES
Self-efficacyScale
TCI
TemperamentandCharacterlnventory
rootmeansquareerrorofapproximation
6
第1章
序論
1.1.背景
ストレスと囲うつ、不安との関連の検証は、重要な精神科医療の担う現代的課題である。
「ストレスの時代」といわれるようになって久しい。ストレスという言葉は知らない人はいな
いほどに鮮血的になっており、身体的・精神的な疾患とストレス、過労死や突然死、自殺、犯罪、
殺人というような社会的問題とストレス、不登校、出勤拒否そして引きこもりというような行動
上の問題とストレス、思春期・青年期、周産期、更年期、老年期というようなライフ・サイクル
や時間軸的な役割とストレスというように、ストレスにまつわる情報をあげるときりがないほど
である(アントノフスキー,2001;岩永・横山,2003;:NHK,2003;神庭,1999;小杉他,2002;高橋,
2004;野村,2006;橋本剛,2005;服部ら,2006;本明,1994;森本,1997)。ストレスに関連する状況
はこの時代の避けて通ることのできない要素であり、とりわけ医療の領域においてはストレスと
身体的・精神的疾患との関連は臨床的、実証的、現実的に大きなトピックのひとつであるといえ
よう。日本における年間の自殺者の数は9年連続で3万人を超えており、その数字はいっこうに
減少の気配をみせない。その中には事前の掬うっの発症が大きく関与している可能性が指摘され
ている。不登校や閉じこもり、職場放棄・失業、殺人などの事件の裏に抑うつや不安の存在が示
唆されている。このような時代背景を考えると、ストレスはどのように抑うつや不安を引き起こ
すのか、どうずればストレスをコントロールできるのか、どうずれば抑うっや不安を予防し、治
療できるのかということは世の中の大きな関心事の1つであるといえよう(牛凝,2006;中野,
2005;野村,2006)。そのような意味では、ストレスと抑うつ・不安の間で、何がどのように関連
しているのかを検証することは、時代の要請にかなう作業であると考えられる。
本論文では、認知的ストレス研究において抑うつ、不安の発症のメカニズムを説明するときの
重要な関連要因の1つと考えられている、「コーピング」という概念を主たるテーマに、コーピ
ングとコーピングの効果に影響を与える要因とされる「セルフ・エフィカシー」、fストレスフル
7
なライフ・イベント」、「パーソナリィティ」が抑うつ、不安の発症過程でどのように関連してい
るのかを検証することを目的にして、3っの研究を行った。論文の構成は5章からなっている。
知らない人はいないのではないかと思われるほどに日常的に使われるストレスという言葉では
あるが、曖昧なままに使われている現実がある。したがって、まずは第1章で心理的なストレス
とはなにか、ストレス・コーピングとはなにかについて説明する。そして、第2章では、研究1
「諏一ヒ。ングとセルフ・エフィカシーが抑うつ、不安におよぼす役割の検討」について、第3章
では、研究2 「コーピングとストレスフルなライフ・イベントの脅威度と抑うつ、不安との関
連」について、第4章では研究3 「ほ一ビングとパーソナリィティの関連について」を、そし
て第5章で結論を述べる。
L2.ストレスとは
心理的ストレスとは、「ある個人の資源に重荷を負わせる、ないし資源を超えると評定された
要求である」(Lazams&Folkman,1984)と説明されている。
ストレス研究は、時代を反映した歴史的必要性の中で盛んになってきた領域であり、心理的・
社会的・生理的な多方向からのアプローチが展開されてきた(Bro職&i{a㎡s,1978;Brown,
Bifblco,&Hards,1987;林,1999;Homes&Rahe,1967;Lazarus&Folkman,1984;Selye,1936;杉ら
訳,1988)。
この中で心理的な側面を重視するストレス研究においては、1960年代以降の認知理論(Beck,
1964;1967;1972;1976;Beck, Rush, Sha罵&Eme鵬1979)の展開に伴い、個人の「認知(自己、他
者、および出来事:を知覚し解釈する)」を基礎においた理論が今目一般的である1。認知心理学的
なストレス理論においては、心理的・個人的なストレスとはおおよそ次のような、個人の内面で
展開される心理的なプロセスとして説明されている。最初に、潜在的な「ストレッサー」がスト
レスを引き起こす可能性のあるもの、誘因となるものという意味で、環境的に存在する。これら
は、特定の出来事(例えば、離婚・親しい人との死別・解雇・転居等々)や日常生活の中でのさ
さやかな出来事(隣人との:葛藤・姑嫁の葛藤・上司との高い)や慢性的な有害刺激(持続する残
1精神医学領域で「認知という用語は2つの概念を表す言葉として使われている。ひとつは本
論で用いているBeckらの言うような、自己、周囲、将来などの知覚・解釈の様式である。い
まひとつは、記憶、記銘、知能、計算などの能力を指す場合で、こうした定義の認知の障害には
痴呆(認知症)、健忘などが含まれる。
8
業・親の介護・近隣の騒音・自身や家族の病気等々)というような広義のライフ・イベントであ
る。
そしてそのストレッサーをある人が自身の持ち合わせる能力と比べた時に、大変だとか、負担
だとか、脅威だとか、挑戦しなければならないとういう程度に受け止める、これを、「認知的な
評価」(◎ognitive appraisa藍)という、次に、それではその状況を調整するために、何をすべきか、
いつどのように行動すべきか、どのような行動が効果的かなどと、実際に対処・処理をする前の
段階で、心の中での色々な認知評価が行われる。この一連の心理的過程を「ストレスまたはスト
レスの状況」という。
つまり、ある状況がストレス源となるには、ある状況がある個人によってストレスであると認
識される必要がある。ストレスになるか否かは、ある出来事をその人がどう認識するかによって
決まる主観的な体験である。そして、その状況をどう受け止めるかの決定には、その人自身の持
ち合わせている様々な能力や資質、その人の環境に含まれる量的・質的要因が影響を与えること
になる。
例えば、“近隣のオートバイの騒音”という次のような例で考えてみよう。
Aさん宅の長男は、不登校が続いた後、高校を中退し引きこもりが続いていたが、3ヶ月くら
い前から、バイトに出られるようになった。バイトで稼いだお金でオートバイを買った。夕刻に
出勤し、帰宅は深夜12時過ぎ。出入りの騒音はかなりのものである。Aさん夫婦、オートバイ
の運転は危険だから心配だし、ご近所にはうるさくて申し訳ないと思う反面、引きこもっていた
息子が活動的になったことにホットしている。隣家のBさん夫婦、Aさん一家とは、付き合い
があるし、事情も聞いていた。ずいぶんうるさい音だとは思うが、それより引きこもりから抜け
て、バイトにも出られるようになって良かったと考えている。一方、Aさんのお向かいの70代
のCさん、数年前にご主人を亡くして一人住まい。近所づきあいはあまりない。三目早目の夕
食を済ませて、9時には床に就くことにしている。深夜のオートバイの音で目が覚めるようにな
り、ここしばらくは、出て行く音を聞いただけでも、イライラする。頭痛や耳鳴りもするように
なってきた。Aさん宅へ相談にいったものか、警察に苦情の申し立てをしようかとも考える。“オ
ートバイの騒音”という刺激は、Aさん、 Bさん、 Cさんに対して、それまでの生活環境にはな
かった快適ではない変化をもたらしている。しかし、ストレスの状態にあるのは、Cさんのみで
ある。Cさんにとっては、オートバイの騒音は、ストレッサーとして働いた。そして現在の状況
9
は大きな心理的負担として認知されているようであり、ストレスまたはストレスの状態に置かれ
ているといえよう。
ストレッサーによって引き起こされたストレスが認識されると、人はなにかしらのやり方でそ’
の状況を調整しようとしたり、変えようとしたり、避けたりしてストレスに対処しようとする。
これをストレスに対する「:コーピング」といい、心身の健康を左右する重要な概念である。
1.3. コーピングとは
「コーピング」という言葉は、新しいものではなく、精神分析の分野では、Anna Freud(1936)が
不安に対する無意識の防衛機制として、使ったとされている。しかし、1970年に入り、社会的、
環境的な側面の影響が重視されるようになり、ライフ・イベンツ研究(Brown, Bi釦1◎o,&Ha㎡s,
1987;Brown, Ha㎡s,&Eales,1993)が展開されるようになると、環境的・外的な側面から影響を
受けるストレスに対して、個人がとる意識的な対処行動としてとらえられるようになってきた。
このような変化の背景には、認知的ストレス理論に基づく地㎝sとFolkmanの研究(Fo1㎞鴫
&Lazarus,1980,1985;Lazarus,&Folkman,1984)が大きな影響を与えたといわれている。1970年
代以降のコーピング研究においては、被験者自身が自分の意識化されたロービング・スタイルを
自己評価し報告するという形をとるようになり(Cohen, Kess1鵯&Gordon,1997;McCrae,1984)、
無意識の防衛機制を、意識化するということの必要性がなくなった(鴨11ant,1976)。
Laz蜘s and Fol㎞an(1984, p 141)はコーピングとは、個人の資源(resources)に負荷を与えた
り、その資源を超えると評価された、外的ないしは内的要請を処理するために行う認知二二動的
努力で、その努力は常に変化するものである。個人がストレスフルであると評価する、人間対環
境の関係から起こっている要求と、そこから生じる感情とを、個人が処理していく過程のことで
あると定義している。ここには、3つの特徴が含まれている。1つはコーピングが絶えず変化し
ているプロセスであるということ。2つ目は、コーピングはストレスの状況に適応するために行
われるということ。3品目は、コーピングが意識的・主観的・行動的な努力であるということで
ある。
人はストレスフルな状況を認識すると、居心地の悪さや、不快感,落ち着きのなさ、苦痛など
を経験する。そうなるとストレスの状況に対応・対処をして、ストレスの軽減を図ったり調整を
することにより、以前の平穏な気分の状態に戻そうとしたりストレスを引き起こした直接の問題
10
を解決しようとすることで、そのストレス状況を適応できるように変えようとする。心身の平衡
を取り戻そうと努力する。冬トレス状況を切り抜けるために人はいろいろなやり方で対処しよう
とする。人に相談する人、1人で知恵を絞る人、問題から逃げ出す人と様々である。ストレス状
況へのコーピングは人により異なり、それぞれ特有の傾向があるのである。
例えば次の様な状況を想像してみよう。木曜目、会社員の速雄さん、早朝に間違い電話で2
度も起こされた。その後すっかり眠り込んでしまい、目覚まし時計の音に気づかず寝坊をしてし
まった。慌てて満員電車に飛び乗ったものの、日頃は始業時間30分前には机についているのに、
予定されていた朝礼に間に合わず、部長に遅刻をとがめられた。気を取り直して、いざ仕事を始
めようとしたが、悪いことは重なるもので、コンピューターが作動しない。手に負えないので、
コンピューター会社に点検以来をして待つことにした。ほっとしたのもっかの間、週末締め切り
の報告書を課長に届けに行ったところ、「丁度よかった、これ週末までに作ってくれ」と課長自
身のプレゼン用のパワーポイントを頼まれた。.相変わらず、部下をこき使う、それも自分の仕事
を押し付ける悪い癖がある。このところ、残業で退社は10時を回る日が続いていた。この週末
は半年前から計画していた友人との約束を入れており、久々にゆっくりした時間を過ごしたいと
思って楽しみにしている。いつもなら出勤する土曜日もこの週末は年休を早くから申請していた
速雄さん。ほかにもたくさんの仕事も抱えているのにと愕然とする。
このような状況は、だれにとっても愉快な気分ではないはず、限られた時間内で、課長から頼
まれた仕事をどうするか、週末までをどう切り抜けるか、気分の苛立ちをどうしたものか。何を
どう処理すれば急場を乗り切れるか。なんとかしなければならない。しかし、この状況にどう対
処するかは、一人ひとり違うはずである。以下に、考えられそうなコーピングをあげてみよう。
(1)こう雷う時こそが、力の見せ所、これをいかに乗り越えるかが自分の危機管理能力
を鍛えるチャンスと時間内で最善策をとる。
(2)この上司には、冷静に対応するしかないと考え、具体的に現実的な週末までの、段
取りを考えなおす。
(3)嘱しなければならないこど、できることについて、優先順位を考える。
(4)仕事の時間的な配分を考えなおす。
(5)週末の休みを楽しみに、限られた時間内でできるだけのことをする。
(6)カーツとしていい加減にしてください、と怒る。
(7)イライラして、物に当たる。
11
(8)全ては朝、寝過ごした自分が悪かったと後悔する。
(9)一日中不快な気分でいる。
(10)報告書は週末ぎりぎりに出せばよかった、早くだしたのは失敗だったと悔やむ。
(11)いやな気分を忘れるためにお酒やタバコで紛らわす。
(12)いやな気分や課長のことを同僚、家人や友人にぐちる。
(13)前の上司の時は良かったと考える。
(14)知ったことかと、食事に出かける。
(15)気分を変えるために近くの公園に出かける。
同じような状況でもコーピングの仕方や組み合わせかたは人によって異なるのである。そして
とりやすいロービングの傾向には個人差がある。
ストレッサーがストレスを引き起こし、ストレスに曝された状況を調整、改善しようとしてコ
ーピングが行われる。つまり,ロービングはストレスフルな状況とストレス反応とを媒介する要
因として働く。このコーピングのプロセスが適切で効果的に働けば、短期的なストレス反応は軽
減されたり緩和されて、長期的な心理的・身体的・行動的な健康の問題は起こらないか、または
起きたとしても程度が低くてすむと考えられている。ストレスに遭遇したときに、ニーピングが
有効に働いて、ストレスフルな状況をロントロールしたり、乗り越えたりできれば、その経験は
自信や自尊心、自己効力感(セルフ・エフィカシーse1£ef巨cacy)というような自分自身に対す
る自己評価を高めることにつながり、より良い自己実現を可能にすることになる。しかし,コー
ピングに失敗すると、精神的・生理的・身体的・行動的ストレス反応を経験することになり、そ
の状態が長期化・持続化すると様々な身体的・精神的疾患の発症につながることとなる。
1.4. コーピングの分類
灘一ビングは、実際はかなり複雑な概念である。その分類も研究者によって微妙に異なってい
る。例えば、Lazarus and Fo1㎞an(1984)はコーピングを問題焦点コーピング(problem fbcused
coping)と情動焦点コーピング(emotional fbcused coping)という2つに分類している。Endler and
Parker(1990b)は、情動的なコーピングの中から回避的なコーピング方法を分けることで、課題
優先コーピング(task−o飴nted◎oping),情動優先コーピング(emot量on−odented coping)、回避優先
:コーピング(avoidance−oriented◎oping)の3因子モデルを提唱し、 Coping Inventory fbr Stress釦夏
12
Situations(CISS:Endleち&Parkeら1990a)というコーピング測定尺度の開発を行った。 Kendleら
.Kess1鑑Heath, Neale, and Eaves(1991)は、 CISSの因子分析から3つの因子を抽出し、それぞれ
他者への援助希求tuming to others、問題解決努力problem sdvlng、否認de1亘alと命名している。
これら、コーピングのカテゴリーの中でも、Endler and Parker(1990a)の3因子モデルは、心理
測定論から見てもっとも強固な理論である(W611s,&Matthews,1994)。ここでは、 Endler and
Parker(1990a)の3因子モデルに基づいてコーピングの内容を考えてみよう。
理論や評価尺度の違いにもかかわらず、これらのモデルと尺度は共通の基準となる特徴を共有
している。理論は一般的に2つないしは3つの主たるコーピング戦略、つまり問題的、情動的、
そして回避的に特有な行動を含んでおり、そして調査表は重複する内容の項目からなるこれらの
構成概念を測定するためにデザインされている。
以上、3つのコーピングについては、日本語版CISSの具体的な代表例を表14に示した。
表1−1目本語版CISSの代表項目
課題優先コーピング
情動優先コーピング
もっと上手に時間の予定を立
こんな状況におちいったこと
トる
ナ自分を非難する
問題に焦点を当てて、どうず
何をしようか心配する
黷ホ解決できるのかを考える
何を優先すべきかをはっきり
回避優先コーピング
友人に電話をする
以前の良かった頃のことを考
ヲる
人にやつあたりする
寝ようとする
自分の力量不足に焦点を当て
なにか買い物をする
なにか反応する前に問題を分
身がすくんで、何をすべきか
休みや休息をとって、状況か
ヘする
墲ゥらなくなる
逞」れる
行動の方針をたてて、それに
体のアチ諏チが痛いことにと
食事や喫茶に外出する
]う
轤墲黷
物事を成し遂げるためにより
怒ったり、腹をたてたりする
ウせる
自分がベストだと思うことを
キる
齣w努力する
13
テレビを見る
課題優先コーーピング(伽恥oriented coping)
課題優先ロービングとは苦悩や苦痛を起こしている問題そのものを統制したり変化させたり
して解決を図ろうとする具体的な努力をさしている。前記の例では、1∼5の対応である。この
形のコーピングは有害であるとか、脅威であるとか、挑戦だとかと受け止められた環境の状況を、
変えることができると評価されたときに、より多く使われやすい。問題解決のための情報を収集
する、優先順位を考え実行計画を立てる、具体的に行動を実行するなどのように、ストレスフル
な状況そのものを解決しようとする具体的な努力を意味している。このコーピングは個人と環境
との相互の関係を変化させることを目的としており、自分以外の外部の環境に向けられるものと
自分自身の内面に向けられるものの両方向があり、相互に影響を与えていると考えられる。課題
優先ロービング・スタイルは適応的な健康変数と関連があるとされているが(Endler&P雛keら
1990a;1990b;Elld1賦Park銘&Butche4993;Mi11既Brody;&Summerton,1988;Parkes,1990)、関連
はないとの報告もある(EndleちParkeち&Butcheら19931Enns,&Cox,2003)。
情動優先コーピング(emotion−oriented coping)
一方で、情動優先コーピングは苦悩を引き起こしている問題そのものではなく、問題によって
引き起こされた感清的な反応の方を調整することに注意が向けられる。この雛一ビングρ形は、
ある人が、有害だとか、脅威だとか挑戦だとかと受け止めた環境からの状況を加減できないとか
変えることができないと受け止めた時に、より多く使われやすい(Folkman&Lazarus,1980;
BiUings, Cronkite,&Moos,1983;Endler&Parkeら1990a;1990b;EndleらParkeら&Butcheら1993;
McWilliams, Cox,&Enns,2003;Vbllrath, A重naes,&Torgersen,1994)。前記の例では6∼10の対応で
ある。情動優先的コーピングは抑うつや不安、身体的な疾患からの回復の悪さというようなネガ
ティブな健康変数との関連があることが、示唆されてきた(Billings, Cropkite,&Moos,1983;
Endler&Parkeら1990a;1990b;Endk犠Parkeら&Butcheち1993;McWilliams, Cox,&E㎜s,2003;
Vbllrath, Alnaes,&Torgersen,1994)。
回避優先コーピング(avoid3nc{トoriented coping)
ストレスフルな状況を回避するコーピングボこれにあてはまる。このコーピングには体を動か
したり、運動をしたりするとか、問題となっている状況から遠ざかってみたり、注意をそらして
14
みる、他の人を訪問したり、脅威となる状況を意図的に無視したり、回避して他の関係のない行
動をおこなったり、他者からの助けを得ようとしたりするというような方法が含まれる。前記の
例では11∼15の対応である。回避優先コーピングは不適応的な健康変数と関連があると報告さ
れている(Cronkite, Moos, TwoheX Cohen,&Swi亘dle,1998;Endler&Parkeら1990a;Holaha且&
Moos,1987;Krantz&Moss,1988;McCrae&Costa,1986)一方で、 Park and Adler(2003)は、不適
応との関連はなかったと報告している。
ところで、この3種類のコーピングは相互に独立して行なわれるものではない。ストレス状況
に至れば人はさまざまな対応を試みるものである。先ほどの速雄さんの例を思い起こしてみよう。
挙げた対処メニューの少なくともいくつかの選択肢を人は取るであろう。課題優先コーピング、
情動優先コーピング、回避優先コーピングとは互いに促進したり、抑制したりの関係にあり、人
はこれらを様々に使い分けていると考えられている。では、コーピングと抑うつ・不安の関連は
先行研究では、どのように報告されているのであろうか。
15,コーピングと銘うつ・不安に関する先行研究
まず、先行研究の中から、コーピングと抑うつ・不安の関連をみてみる。
Endler and P訂ker(1990b)は328名の若者を対象にして行った研究の結果、課題優先コーピン
グを多くとる人ほど抑うつが低く、情動優先コーピングを多く使う人ほど抑うつが高いと報告し
ている。さらに彼らはいくつかの他の研究のなかでも課題優先コーピングをより多く使う人ほど
抑うつはより低く、情動優先コーピングをより多く使う人ほど抑うつが高いという結果を報告し
ている(Endleち&Parked 990a,1990b;EndleちPark既&Butcheら1993)。 Billings and Moos(1984)
は、問題焦点コーピングは抑うつの程度と反比例の関係にあるとの報告をしている。Rohde,
Lewinsohn, TUson, and Seely(1990)は、742名の高齢者を対象とした2年間にわたる、縦断
研究を行った。その結果、現実逃避型のコーピングはその後の抑うつを予測していたとしている。
Nolen・Hoeksema, Morfow, and Fredrickson(1993)は、 Folkman, Lazarusや、 Moos、 Billlngsら
のいう情動焦点コーピングの中でも、繰り返し、消極的に不調な気分や身体的な症状にばかり焦
点をあてるような部分を反窃的コーピング(ruminative coping∠rumi且ation)と定義した。そしてい
くつかの研究で、反読的なコーピングを多く使う人はそうでない人よりも抑うつ的であることを
報告していう(Nolen−H:oeksem亀2000;Nden−Hoekse鵬Morro罵&Freddckson,1993;
15
No韮en−Hoeksema, Parkeち&工arson,1994)。 Mo㎡son and O℃onnor(2005)は、大学生を対象に2時
点での縦断的な研究で、ストレスと反甥コーーピングの相互作用が窺うつを予測するとしている。
掬うつ・不安とコーピングの関連と同時に、コーピングに影響を与える要因との関連を調べた
研究がある。McW皿iams, Cox, and Enns(2003)は、大うっ病性障害の外来患者298名を対象
に、CISSを使って、パーソナリィティ傾向、コーピングと抑うつの関連を調べた。情動優先コ
ーピングと神経症的なパーソナリィティ傾向とは、抑うつと有意にポジティブな関連にあり、外
向性のパーソナリィティ傾向は抑うつとネガティブに関連していたと報告している。Nezu,}曙ezu
and Pe㎡(1989)は、レビューによって、うつ病の発症を、生活上の否定的な出来事、旧常的な
諸問題、問題解決によるコーピングとの相互作用だとした。そして、問題解決による識一ビング
方法の結果が否定的(問題解決の朱敗)であれば抑うつになりやすく、一方問題解決によって効
果的な解決策が生まれるときには、否定的な感情状態が長期的に持続する可能性を低く見積もる
ことができるとしている。Hon凱Benne就, and Morgan(2003)は、認知的評価、灘一ビング、子育
てストレスの頻度とうつ病(エジンバラ産後うつ病評価尺度得点が13点以上をうつ病と定義)
の関連を、妊産婦306名を対象に縦断的な研究(妊娠後期,出産後6週目)を行った。産後うつ
状態の群はそうでない群に比較して、より多くの回避的なコーピングを使っていたことを報告し
ている。
Cos砥La跡ouche, Ddtsa, and Brender(2000)は、妊娠中と産後の抑うつ気分と、母親のストレス、
ソーシャル・サポート、コーピング・スタイルとの関連を検討した研究で、妊娠中のみ抑うつ気
分があった女性、産後に抑うつ気分があった女性、妊娠中も産後も抑うつ気分があった女性の3
群は、妊娠申、産後の両方ともに抑うつ気分がなかった群に比べて、妊娠中により多くの情動焦
点コーピングと高い不安傾向・不安状態を報告したとしている。
Ter吼Mayocchi, and Hynes(1996)の研究は、妊娠後期と産後4週目、産後5ヶ月の3時点での
うつ症状とストレス、コーピング資源、コーピング方法、コーピング効果との関連について、産
後うつ病のストレスモデルを検証した。その結果、産後4週、5ヶ月のうつ症状を予測したのは
情動焦点ロービングの中のwishfbl think玉ng、つまり「内わくばこのようにあって欲しい」と現
実を回避するコーピングであり、またロービングに影響を与えていたのは、自己評価が低いこと
と、ファミリーサポートが少ないことであり、これらの要因は5、ゲ月時のうつ症状を予測した。
つまり、情動焦点コーピングが産後うつ病の引き金になっているが、そうしたコーピング・スタ
イルを生起させているのは家族のサポートの希薄さなのである。このように、産後うつ病に限ら
16
ずうつ病全般について、単独の危険因子が発症に関与するというより、多くの危険要因が相互に
影響しあいながらうつ病の発症に至るというモデルのほうが現実に合致しているのであろう。ま
た,産後の現実的な課題は長期に持続するために、回避的なコーピングは有効でないのかもしれ
ない。
これらの先行研究の報告の中では、例えば、パーソナリィティ、自己評価やソーシャル・サポ
ートというような要因が、コーピングの有効性と関連していることが述べられている。ではこれ
らのコーピングにたいする影響因子はどのように説明されているであろうか。
1.6.コーピングの効果に影響を与える要因
コーピングのプロセスに影響を与える要因は大きく2つに分けて考えられている。個人的内的
なもの(その入自身に属するもの)と環境的外的なもの(外部に属するもの)である。
個人的な要因
個人的な要因には,心身の健康状態の良し悪し、エネルギーがあるか否か、問題解決能力が高
いか低いか、自己効力感(セルフ・エフィカシーsel鋭鐙cacy)や自尊心が高いか低いか、ソー
シャル・スキルに恵まれているか否か、職業、年齢、性別、様々な能力の如何、パーソナリィテ
ィ、過去のストレス体験へどのように対処したかの経験、職場での地位・社会的立場・価値観な
どその人自身にまつわるさまざまな量的・質的要因が含まれる。
環境的な要因
環境的な要因には、ソーシャル・サポート、家族の支援に恵まれているか否か、家族構成とそ
の力関係の状態、社会的・文化的な背景、人間関係の影響、社会的経済的状態、などがあげられ
る。これらもまたロービングの過程でダイナミックに影響をあたえあう要因となる。例えば
Teny, Rawle, and Ca1豆an(1995)とTerry, Mayocchl, and Hynes(1996)は,ソーシャル・サポートが良
好なほど問題焦点コーピングが増し、情動焦点ロービングが低下することを報告している。
Shikai, Shono, Naga砥and Kitamura(2007b)は大学生を対象にして行った研究において、児童期に
ネグレクトを受けた経験があるほど情動優先灘一ビングを取りやすいことを報告している。
17
研究1では、これらのうち、個人的な要因であり諏一ビング選択をする際の有力な予測因子と
いわれているセルフ・エフィカシーとコーピングに焦点を当てて、これらが抑うつ気分、不安と
どのように関連しているかを検証した。ではセルフ・エフィカシーとは、どのような自己概念と
して説明されているのだろうか。
1.7.セルフ・エフィカシーとは
適応的なコーピングを取るには、それが出来るという「自信」が存在しなければならない。個
人に属する要因の中でセルフ・エフィカシーは臨床的にも実践的にも重要な概念である
(Bandura,1977)。人は、「自分は社交性的でない」「自分は人間関係が苦手だ」「自分は運動神経
が鈍い」「私は個性的でない」等々というように、自分自身の性格や能力、行動などを他人の評価
ではなく、自分自身で評価しているものである。このように自分で自分を評価し、自己のさまざ
まな側面に関する自己評価の結果、自分自身についての知識やイメージ℃あるところの自己概念
を持っている。この自己概念の中の1つがセルフ・エフィカシーである。セルフ・エフィカシー
が高いと、「思いがけなく突然に起こった問題でもうまく処理できると思う」「会いたい人を見か
けたら自分からその人のところへ行く」「自分がたてた計画はうまく出来る自信がある」というよ
うに自分自身を認識している。セルフ・エフィカシーが低い人ほど、自分がそのようであるとは
思わないし、「人生で起きる問題の多くは処理できるとは思わない」「人の集まりでは,自分はう
まく振舞えない、友達になりたい人でも友達になるのが大変ならすぐに諦めてしまう」というよ
うに自分自身を認識している。このようにセルフ・エフィカシーとはある状況において必要な行
動を自分自身が効果的に遂行できるという信念のことである。このセルフ・エフィカシーには2
つのレベル、(1)特定の場面や課題で行動に影響を及ぼす場面特定的なセルフ・エフィカシーと、
(2)具体的な個々の課題や状況には依存しないより長期的により一般化した目常の場面における
行動に影響する一般的なセルフ・エフィカシーがあるとされている(Bandu臓1977)。後者の一
般的なセルフ・エフィカシーを測定するために、Sherer and Adams(1982)が作成した、セルフ・
エフィカシー尺度(Se10e岱cacy Scale SES;Sher鉱&Ada鵬1983)があり、①行動を起こす意奉、
②行動を完了しようと努力する意志、③逆境における忍耐などから構成されている。弓師語版セ
ルフ・エフィカシー尺度は成田・下仲・中里・河合・佐藤・長田(1995)によって作成されてい
る。代表項目を表1・2に提示した。
18
表1−2日本語版一般的セルフ・エフィカシー尺度の代表項目
項目
自分が立てた計画はうまくできる自信がある
会いたい人を見かけたら、向こうからくるのを待たないでその人のところへ行く
何かをしょうと思ったら、すぐにとりかかる
最初は友達になる気がしない人でも、すぐに諦めないで友達になろうとする
失敗すると一生懸命やろうと思う
人に頼らない方だ
初めはうまくいかない仕事でも、できるまでやり続ける
私は自分から友達を作るのがうまい
逆転項目
しなければならないことがあっても、なかなかとりかからない
新しい友達を作るのが苦手だ
重要な目標を決めても、めったに成功しない
何かを終える前に諦めてしまう
非常にややこしく見えることには、手をだそうとは思わない
思いがけない問題が起こった時、それをうまく処理できない
人生で起きる問題の多くは処理できるとは思えない
難しそうなことは、新たに学ぼうとは思わない
19
第2章
コーピングとセルフ・エフイカシーが抑うつ、
不安におよぼす役割の検討(研究1)
2.1.目的と背景
うつ・不安の発症要因の研究において、コーピングとセルフ・エフィカシーの2つは重要な心
理的概念と考えられている。この2つの要因の関係は抑うつの発症を説明する中で研究されてき
た(Bandura,1997;Benight&Ba面ura,2004;Mac幼ewski, Prigerson,&Mazure,2000;Ste飽n,
McKibbin, Zeiss, Gallagther−Thompson,&Ba且dura,2002)。
コーピングについては、精神的・身体的両側面から研究が盛んに行われてきた(Cronkite, Moos,
Twohe又Cohen,&Swindle,1998;Franken, Hendrlks, Ha出nans,&Meeち2001;Marlowe,1998;Park&
Adleち2003;Somerfield&McCrae,2000;Stew飢, Harve第&、Evans,2001;Vbllrath, AInaes,&
Toi8ersen,1994;1996)。また、灘一ビングはストレスフルな状況において、健康的な生活(well
being)や心理的な適応の維持をするための調整にとっての、重要な資源であると考えられてい
る(CoopeちKatona, Orren,&Livingston,2006;Enns&Co)∼2005;VbUrath et al.,1994,1996)。
コーヒ。ングが心理的な適応に影響を与えるという事実は、研究者をして、このようなコーピン
グ行動を規定する心理的決定因子を検証することに、導いている。コーピング行動を決定する重
要な因子の1つはセルフ・エフィカシーである。Bandura(1997,1982)は、コーピングの努力が
どれくらい発揮されるかどうかに加えて、セルフ・エフィカシーの個人的なセンスが、ロービン
グ行動を起こすことができるか維持できるかどうかを決定すると提唱している。彼はセルフ・エ
フィカシーには特定的なレベルと一般的なレベルの2っのレベルがあるとしている。Bandura
(1997,1982)によってセルフ・エフィカシーの概念が導:入されて以来、多くの研究がセルフ・エ
フィカシーと抑うつとの関連を検証している(Ba皿dura,1997;Bandura, Caprara, Barbaranelli,
Gerbino,&Pastorelli,2003)。これらの研究では状況に特定的なセルフ・エフィカシー尺度が使わ
れている。例えば、Cutorona and Troutman(1986)は、育児におけるセルフ・エフィカシーと産
20
後うつ病との関連を検証している。McFa鷲lane, BeHiss血10, and No㎜an(1995)は、高校生の
中の問うつに対する社会的なセルフ・エフィカシーの影響を研究した。「方で、一般的なレベル
のセルフ・エフィカシーは、心理的行動療法の変容の過程の成功を同定する1つの有用な補助的
尺度であるだろう(Sherer&Adams,1983;Shereちet aL,1982)。 Banduraらによる経験的な研究で
は(舳d鵬1997;B鋤d鵬Ad・鵬&B・y・ら‘ P977;B・nd雛睡d・m岬晦&H。w・ll亀1980)、治療
1こよる行動上の変容はセルフ・エフィカシーの変容の後に起こることを明らかにしている。これ
ら状況特定的なセルフ・エフィカジーと抑うつとの関連を検証した研究は多く行われているけれ
ども、一般的なセルフ・エフィカシーと抑うつとの関連性についての研究は少ない。例えば、
Maciejelvski, P血gerson, and〕Mazure(2000)は、大規模なサンプル(N篇2858)を使って、一
般的なセルフ・エフィカシーと抑うつ症状との関連を検証し、一般的なセルフ・エフィカシーが
低い人というのは深刻な抑うつ症状に発展するリスクがあると示唆した。彼らは高いレベルの一
般的なセルフ・エフィカシーを確立、維持するための努力による成果は、将来の抑うつへの長期
間の抵抗力(耐性)を作り上げる助けになるかもしれないと述べている。
Baadura(1995)はエフィカシーの信念というものが頴一ビング行動におけるそれらの影響を
通してストレスと不安を調節するということに注目した。ストレスフルな状況の性質と量は諏一
ビング・スタイルの選択を潜在的に決定する(Fol㎞an&Lazarus,1980)。 Lazarus and Fo㎞an
(1984)は、コーピング・スタイルは資源(resoμrces)から徐々に発展し、資源は諏一ビングに先
行し、コーピングに影響を与えると考えた。彼らはまたストレスフルな状況を、前向きに評価す
る人々というのは彼らの環境をよりょくほントロールするようだと主張している。このことは
Bandura(1977)が、エフィカシー期待感(e缶cacy expectancies)と呼んでいるものと大変類似し
ている。エフィカシー;期待感はある人のコーピング努力と維持力を決定する(Bandura,1982)。
資源についてのその理論的重要性にもかかわらず、自己に関する信念がコーピングのプロセスに
実際にはどのように現れるのかという研究は少ない。さらにコーピングとセルフ・エフィカシー
の関連については抑うつか、不安のどちらか一方との関連についてである。
本研究は目本人の大学生の抑うっと不安という2つのタイプの不快感情におけるコーピング
と一般的なセルフ・エフィカシーの影響に焦点をあてている。精神医学的に見て、学生集団には
臨床症状を呈するものが少なからず存在することが示唆されている(GotiHb,1984;Mordson&
(yCo㎜o¢005;Tomo砥Mod, Kimu凧Takahashi,&Kitamura,2000)。これらの中でも看護学生は仕
事量の多さ、勉強のプレッシャー、臨床場面の経験、競争的な環境、余暇活動の時間の限界など
21
にさらされているゆえに、特に抑うつや不安に対するリスクが大きいと考えられる((hay・To食,
&A血derson,1981a,1981b;Sawatzk弘1998)。
上記の議論は様々な研究課題や問題点につながっている。第一に、文献では情動優先コーピン
グが一貫して心理的不適応に結びついている。しかし回避優先臣一ビングと、低い課題優先臣一
ビングは必ずしも心理的な不適応とリンクしているわけではない。これらの関連は日本人の集団
では明らかにされていない。二つめに、高いセルフ・エフィカシーを持った目本人は心理的不適
応に苦しむことが少ないかもしれない。そうだとすればその効果は直接に、またはコーピングス
タイルによって媒介されるのかもしれない。高い一般的なセルフ・エフィカシーは適応的なコー
ピングスタイル、例えば、高い課題優洗コーピング、低い情動優先コーピング、低い回避優先諏
一ビングを導くかもしれない。最後に二つの不快感情である抑うつと不安という不快な気分の2
つのタイプは因果関係を示す経路が異なるパターンを示すかもしれないことが予測された。
この研究における、検証課題は以下のように要約される。
(1)抑うつや不安を伴う人々というのは、情動優先コーピングをより多く使うであろう。
(2)高い一般的なセルフ・エフィカシーを持っている人々は貰うつ、不安の心配が少ない
であろう。
(3)ロービング・スタイルは添うつ、不安における、一般的なセルフ・エフィカシーの効
力を媒介するであろう。
(4)闘うつと不安に対するセルフ・エフィカシーとコーピングからの影響には違いがある。
2.2.方法
2.2.1.対象と手続き
熊本県内の2つの看護学校の学生を対象にした。質問項目を含めたアンケート用紙を教室内で
配布、終了時にその場で回収した。参加は任意であり、匿名で行われた。166名の該当する学生
の中151名(90.9%)が参加。解析に使われたのは、欠損値のあったデータを除き、最終的に146
名(男15、女131)であり、その平均年齢は20.7歳(SD=2.2)であった。インフォームド・
コンセントは質問紙の一部で全員から得られている。本研究は熊本大学大学院医学薬学研究部倫
理委員会の承認を受けた。
22
2。2。2.尺度
不快気分
弔うつと不安の測定にはHospital Anxiety and Depression Scale(HAD;Zigmond&Snaith,1983)
を使った。この尺度は抑うつ、不安それぞれ7項目合計14項目からなり、各項目は1から4点
で採点される。下位尺度は項目得点の合計点で算出され、高得点ほど抑うつ、不安が強いことを
示す。項目内容は掬うつや不安の認知的部分に関するものであり、身体症状による修飾を受けに
くいと考えられるる信頼性・妥当性の検討は十分に実証されており(βjelland, Dahl, Haug,&
Neckehnann,2002;He㎜ann,1997)、 HADは臨床場面でも研究場面においても広範に使用されて
いる(Fukui, et a1.,2001;Hirai, Suzuk孟, Tsuneto, Ikenaga, Hosaka,&Kashiwagi,2002;Matsubayashi,
H◎saka, Izumi, Suz面, Kond◎,&Makino,2004;Matsudaira&Kitamura,2006;Tak節atsu, F両ii, Oht亀
&Nakamura,2003)。 HADは原著者の許可を受け、再英訳の確認を原著者に行うという手続きの
後にKitamura(1993)により日本語に翻訳された。本研究でのCronbach’s alpha係数は抑うつ .67、
不安 .84であった。
コーピング
コーピングの測定には、Coping lnv戯ory fbr Stressfbl Situations(CISS;Endler&Parkeら1990a)を
使った。CISSはストレス状況に対する被験者の典型的な対処スタイルを信頼性と妥当性の高い
方法で測定するために開発された自己式調査票で、課題優先コーピング、情動優先コーピング、
回避優先認一ビングの3尺度、各16項目合計48項目を1から5までの段階で評価する。各下位
尺度は16から80のスコアーの巾をとり、高いスコアーをとるほど、該当するコーピング・スタ
イルをより多く使うということを示している。因子構造は確認されており(Rafhsson, Sm頷,
Windle, Mears,&Endle¢006)、日本語版CISSは古川・鈴木・斎藤・濱中(1993)によって、翻
訳され、信頼性、妥当性の検討が行われている。本研究でのCronbach’s alpha係数は情動優先コ
ーピングで.86、課題優先誕一ビングで.90、回避優先コーピングで.80であった。
セルフ・エブィカシー
セルフ・エフィカシーはSel紐fEcacy Scale(SES;Shereらet a1.1982)を使って測定された。 SES
は原著者の許可を得て、成田・下仲・中里・河合・佐藤・長田(1995)により日本語に翻訳され、
23
信頼性・妥当性の検討が検証されている。SES日本語版は23項目、1から5までの5段階
評価で、23点から115点までの巾を取り、より高いス:コアはより大きなセルフ・エフィカシ
ーの認識があることを示す。本研究におけるCronbach’s alpha係数は.82であった。
2.2.3.統計解析
基礎統計量と相関係数を調べた後に、図2−1の仮説モデルについて、変数間の直接・間接効果、
モデルの適合度を求めるために、共分散構造分析を行った。この仮説モデルではHADの抑う
つと不安のス灘アの両方がCISSの3つの下位尺度によって影響を受ける、そしてCISSの3
つの下位尺度はセルフ・.エフィカシーに影響されると想定している。モデルの適合度指標は、
X2/df㍉good貧ess of fit三ndex(GFI)、 a(嚇usted good盤ess of fit index(AGFI)、 comparative負t index(CFD、
root mean square erfor of approximation(RMSEA)、 Akaike infbrmatioh critedon(AIC)を使用した。
これらの解析にはSPSS 10.0(SPSS,1999)とAMOS 4.0.(SmallWaters,1999)が使われた。
抑うつ
課題優先コーピング
セルフ・エフィカシー
情動優先コーピング
回避優先コーピング
不安
図2−1セルフ・エフィカシー、コーピング、抑うつ、不安の関連を示す仮説モデル
24
2.3.結果
男子学生に比べて女子学生の数が多かったために、それぞれの変数について男女間の差を検証
したが、有意な差は見られなかった。従って、男女合わせたデータを解析に使用した。本研究で
使用した変数の記述統計量および相関係数を表2.1に提示している。
予測したようにHADの抑うつ得点と不安得点は相互に緩やかな相関関係にあった。 HAD抑
うつと且AD不安は情動優先コーピングと正の相関があり、セルフ・エフィカシーとは負の相関
があった。課題優先ロービングと情動優先コーピングの間、そして情動優先コーピングと回避優
先コーピングの問に有意な相関がみられた。セルフ・エフィカシーと情動優先コーピングと間に
は:負の相関があった。そこで次に、仮説モデル(図2−1)に基づいて共分散構造分析を行った。
仮説モデルがリジェクトされたために、有意でないパス係数を削除する方法でモデルの改良を
行った。
表2−1.各変数の平均値、標準偏差、相関係数
相関係数
変数
平均
S.D
α係数
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(7)
(6)
(1)性差
男:女
;15;B1
20.7
2.15
(3)HAD匿うつ
6.4
3.41
0,67
一.12
.10
(4)HAD不安
7,9
4.08
0,83
一.03
.04
(5)課題優先的コーピング
46.2
10.94
0,90
一.19
.01
(6)情動優先的コーピング
41.9
10.91
0.86
一.13
.08
(7)回避優先的コーピング
45,7
9,50
0、80
.08
一.04
..17
(8)セルフ・エブィカシー
68,5
10.71
0.82
,18
一.06
一.42串**
(男性=1;女性=2)
(2)年齢
一.10
註**p<.01;***p<.001
25
.59***
・.07
.34*串*
,11
.49**宰
22串*
.04
,14
.28***
.14
一.43***
・.29串*寧
一.03
最終のモデル(図2−2)ではHADの抑うつと不安の両方が、情動優先コーピングによって予
測され、低い回避優先コーピングは抑うつのみを予測した。セルフ・エフィカシーは抑うつと情
動優先コーピングを予測した。このモデルの適合度は非常によかった(chi−squ肛ed=.343,げ=2,ρ
編.843;GFI=.999;AGFI=.992;CFI篇1.000;RMSEA躍.000)。 AICによって検証された改善の度合
いは初期のモデルが42.0、最:終のモデルは38.3であった。女子のみのグループにつレ〉ても同じ
解析を行ったが、結果は結合のデータから得られたのとほとんど同じであった。
特に高いセルフ・エフィカシーは低い抑うつと関連していた。セルフ・エフィカシーから抑うつ
への直接効果は一.276であり、情動優先コーヒ。ングを経由した間接効果は一.143であり、セル
フ・エフィカシーから抑うつへの総合効果は一.419であった。それゆえ、抑うつにおいてはセル
フ・エフィカシーからの直接効果の方が問接効果よりも大きかった。一方、不安についてはセル
フ・エフィカシーからの直接効果は一.089であり、情動優先コーピングを経由したセルフ・エ
フィカシーからの不安に対する間接効果は一.203であった。セルフ・エフィカシーからの不安
に対する総合効果は一.292であった。従って、不安においては間接効果のほうが直接効果より
も大きかった。
抑うつ
一.28糖
.31十両
一.26鼎
課題優先コーピング
セルフ・エフイカシー
惰動優先コーピング
一.43需無
回避優先コーピング
47漁鶴
不安
図2−2セルフ・エフィカシー、コーピング、抑うつ、不安の関連を説明するパス図
26
介在因子(mediator)についてβaron㎝d Kemy(1986)は次のように論じている。もしもファ
クターBがファクターAとファクターCの介在因子であるとすれば、次の4つの基準を満たす必
要がある。
(1)ファクターAスコアーはファクターCスロアーと有意な関連がある。
(2)ファクターBのス認アーはファクターCのスコアーと有意な関係にある。
(3)ファクターAのスコアーはファクターBのスコアーと有意に関連している。
(4)ファクターAス諏アーはファクターBが投入されると、ファクターCとの関連がな
くなり、しかしファクター盈スコアーはファクターCスコアーとの有意な関連を残し
ている。
FACTOR A
FACTOR B
FACTOR C
今回のモデルにこれらの基準を当てはめると、ファクターAはセルフ・エフィカシー、ファク
ターBは情動優先コー「ビング、ファクターCがHADの抑うつあるいは不安ということになる。
セルフ・エフィカシー、情動優i先コーピング、抑うつ、不安の間のPearsonの相関係数がモ
デルの最初の3つの基準を満たしているかどうかを検証したところ(表2.1)、最初の3つの基
準に合致した。次に従属変数をそれぞれHAD不安とHAD拗うつにした、2つの階層的回帰分
析を行った。最初の回帰分析においては、HAD不安得点に対して、まず情動優先直轄ビングの
スコアを投入(標準化係数=.441,P<.001)、次にセルフ・エフィカシーのスコアを(標準化
係数=一.101,p NS)投入した。 HAD養うつ得点を従属変数とした2つめの回帰分析では、情
動優先コーピングのス諏ア(標準化係数=.200,p<.05)を投入、次にセルフ・エフィカシース
ロア(標準化係数r一.328,p<.001)を投入した。この結果から、情動優先コーピングはセルフ・
エフィカシーと不安の間にだけ、介在変数としての基準をみたしていることが明らかになった。
抑うつに関しては、セルフ・エフィカシーは直接的な予測因子として残った。同様に、共分散構
造分析においても、低いセルフ・エフィカシーは情動優先的コーピングを仲介して、不快気分に
27
影響すること、直接的には抑うつのみに影響することが確認された。
2.4. 考察
本研究では、もし情動優先コーピング行動をより多く使うと、学生は抑うつや不安を経験しや
すく、一方で回避優先コーピング行動を使わなければ、抑うつのみを経験しやすいであろうとい
うことが明らかになった。そしてまた低い一般的なセルフ・エフィカシーは情動優先コーピング
を通して、間接的に抑うつ・不安の両方を予測すること、さらに低い一般的セルフ・エフィカシ
ーは直接的にも抑うつを予測することが明らかになった。
情動優先コーピングは不快感情と関連し、その一方で課題優先コーピングは関連していないと
いう研究結果は、過去の報告と一致する (Endler & Parker, 1993)。回避優先コーピング・スタイ
ルは不適応な健康状態としばしばリンクしているとされている。予想に反して、今回の結果では、
回避優先コーピングは低い抑うつとリンクしていることが指摘された。回避コーピングを取るほ
うが抑うつ感情は軽度であった。回避優先コーピングには散歩をする、テレビを観る、寝る、映
画を観に行く、ショッピングをするとかというような気晴らし行動が含まれている。このような
活動は抑うつ気分を伴う人の気持ちを紛らわすことができるのかもしれない。Nolen-Hoeksem
(1991)は、症状や症状を引き起こした原因や結果に精神を集中して、繰り返し反芻して考えこむ
ような反応を反芻的なコーピング・スタイル (ruminative coping style) と定義して、死別を経験
した人々の中で繰り返し反芻するような反応にとらわれている人々は、長引く深刻な抑うつを経
験しやすいようだと述べている(Nolen-Hoeksema & Davis, 1999; Nolen-Hoeksema, Parker, & Larson,
1994)。このことは、日本人でも、死別を体験した人について確認されている (Ito, Tomita, Hasui,
Otsuka, Katayama, Kawamura, Muraoka, Miwa, Sakamoto, Agari, & Kitamura, 2003)。回避優先コーピ
ングと抑うつの負の関連は、このようなメカニズムで説明されるのかもしれない。別の解釈とし
ては、回避優先コーピング行動をとることで、人はネガティブな考えや感情から遠ざかることや、
距離をおくことができ、その結果、客観的に自分自身を知ることができるというようなこととつ
ながっているのかもしれない。このような現象は mindfulness と呼ばれ、近年、抑うつやストレ
スの認知療法における心理的な研究のトピックである (Broderick, 2005; Carlson, Ursuliak, Goodey,
Angen, & Speca, 2001; Speca, Carlson, Goodey, & Angen, 2000)。Bandura (1977) によると、セルフ・
エフィカシーというのは、ある人がストレスフルな状況を伴う目的や対処を効果的に処理するた
28
めに、ある確かな方法でいかに上手に行動することができるかという判断である。高いセルフ・
エフィカシーは例えば、ストレスの過程の調整力や、高い自尊感情、より良い健康状態、より良
い適応、より良い身体的状態、急性・慢性の疾患からの回復力などと関連している(Bandu臓1997;
Karademas,2006)。反対に、低いセルフ・エフィカシーは抑うつや不安の症状の強さと関連して
いる(Bandura, Caprara, BarbaraneUi, Gerbino,&Pastorelli,2003;Maci{加wski, Prigerson,&Mazure,
2000)。本研究ではこれらの予想される可能性が目本人の学生の中でも部分的に確認された。例
えば、高い∼般的なセルフ・エフィカシーというのは直接的に低い抑うつとリンクしており、ま
た情動優先コーピングを用いる可能性が低いこととリンクしていた。しかしながら、不安につい
ては低い一般的なセルフ・エフィカシーの直接的な影響はなかった。課題優先コーピングと回避
優先コーピングのどちらも、一般的なセルフ・エフィカシーとはリンクしていなかった。
このように、Banduraの仮説は少なくとも部分的には支持された。つまりセルフ・エフィカシ
ーの程度は、ある個人がどのコーピング・スタイルを選択するだろうかということを決定する。
一般的なセルフ・エフィカシーは課題優先コーピングや回避優先コーピングに対する決定因子で
はなかった。しかしながら、情動優先コーピングは抑うつと不安の両方にリンクしていた。情動
優先同一ビングと直接にリンクするセルフ・エフィカシーのレベルは、研究、臨床の両側面から
重要な論点である。心理的な介入の効果が灘一ビングのストレス緩和要因によって引き出された
ことが報告されている(Billings&Moos,1984)。高いレベルの一般的なセルフ・エフィカシーを
確立し維持するための努力は、カウンセリングやストレス・マネジメント・プログラムを通して、
将来起こるかもしれない羽うつ・不安に対する耐性を形成するだろうと考えられている
(Maci句ewski, Pdgerson,&Mazure,2000)。今後の研究トピックとして残されているものは、コー
ピング・スタイルの選択や程度に関するその他の決定要因であろう。
今回の研究では様々な限界がある。第一に、小さなサンプルサイズであったことは変数問の関
連を見つけるにパワーの限界があった。一方で、この小さなサンプルにおけるコーピング、一般
的なセルフ・エフィカシー、戦うつ、不安の間の有意な関連の研究結果はこれらが比較的に強固
な関連性にあることを示唆している。二つ目にこの研究での男女の分布のかたよりは性差の影響
を評価することができなかった。抑うっの有病率は男性よりも女性に多いことはよく知られてい
る。男性と女性では、同じようなタイプの不幸な嵐来事に対して、異なるコーピング・スタイル
を使って、反応するのかも知れない。セルフ・エフィカシーとコーピング・スタイルの間の関連
も二つの性では違っているかもしれない。
29
今回の研究では一般的なセルフ・エフィカシー、コーピング・スタイル、そして不快な気分の
関連に焦点を当てている。不快気分の発症の大変重要な予測因子のひとつがストレスフルなライ
フ・イベントである。目常的な状況の中での諏一ビング・スタイルの選択は関係する出来事のタ
イプや本質によって多くが決定されるのかもしれない。将来の研究ではこの論点に焦点を当てる
べきである。最後に尺度は横断的な自己報告式であった。今回使用された尺度はお互いに混同し
た要素があるという批判がある。将来の研究ではもっと客観的な心理的な指標を使うことでこれ
らの論点を検証すべきであろう。横断的な研究では、単に相関的なデータを提供するのみである。
この論点は全ての変数が少なくとも2時点で測定されるような長期的な追跡調査をもって解明
されるべきであろう。今回の研究結果の一般化は単に2つの看護学校の学生から編成されたサン
プルであるために、限界がある。
これらの限界にもかかわらず、今回の結果は看護学生の中の抑うつや不安の決定にコーピン
グ・スタイルと一般的なセルフ・エフィカシーがもたらす有意な役割が示唆された。横断的な研
究においては、低い一般的なセルフ・エフィカシーは情動優先コーピングを通して抑うつと不安
に影響すること、同時に低い一般的なセルフ・エフィカシーは抑うつに対しては直接的に影響す
ることが明らかになった。
30
第3章
抑うつ、不安とコーピング、ストレスフルなう才フ・イベ
ントに対する脅威度との関連、(研究2)
3.1.
背景と目的
第3章では、コーピングとストレスフルなライフ・イベントは、掬うつ、不安に対して、どの
ように関連しているのかを検証する。
近年、抑うつ、不安に関する誘因や発症のメカニズムについての多面的な研究が展開されてき
たことにより、掬うつ、不安の発現に関連する多様な因子が示唆されている。これらの因子の中
でも、大きなテーマとなるのが、第1章で述べたコーピングと、そしてストレスフルなライフ・
イベントである。
ストレスフルなライフ・イベントと抑う?、不安との関連については、説得力のある重要な研
究がなされτきた(Brown, B血藍co,&Ha㎡亀1987;Bro鵬Ha㎡s,&Eales,1993;Edwards,&Clarke,
2004;FillIay−Jones,&Brown,1981;Kendle鴎HetteIna, Butera, Gardner&Prescott,2003;Kendleち
Thomton,&Prescott,2001;KessleらTuneら&House,1987;Maci句ewski, Prigerson,&Mazure,2000;
Paykel&Dowlatashi,1988;Warheit,1979)。しかしながら、コーヒ。ング、ライフ・イベントそして
言うつ・不安との三者の関連を検証した研究は比較的に少ない。
KendleらKessleら且ea瓜Neale, and Eaves(1991)は,一般人口の女性のみの双子827名を対象に
した自己報告によるデータから、コーピング、ライフ・イベントと抑うつ・不安の症状を、横断
的な(cross−sectionaDデザインで検証している。コーピングを測定する尺度の1っである、 Ways
of Copi捻g Checklist(WCC;Folkman&正azζn凪1980)の7尺度(68項目)を短縮した尺度を使い、
得られたデータを因子分析して3尺度を構成、それぞれ否認(denial)、他者への援助希求(れ㎜ing
to others)、問題解決努力(problem soivlng).と命名レた。抑うつと不安のレベルに対して、他者へ
の援助希求と問題解決努力は負の関連が、否認は正の関連があったと報告している。しかしこの
31
研究に関しては、使用した尺度:がWCCの項目を修正、削除してい1るという点、 W¢Cは原著:者
らが提唱する項目や尺度が一定していないという点、WCCを検討した研究者らが得た因子構造
がまちまちであるとの点から、使用した尺度についての批鞠がある(古川・鈴木・斎藤・濱中,
1993)。また、Kehdler e掘.(1991)自身が、研究の横断的なデザインを限界点としてあげている。
ところで、ライフ・イベントと抑うつ・不安の関連については2つの方向性がある。1つはラ
イフ・イベントがストレッサーとして働き、抑うつや不安を引き起こすという論点であり、この
点に関しては非常に多くの研究がなされてきた(Brown, Bifhlco,&Ha㎡s,1987;Brow几Ha㎡s,&
Eales,1993;Edwards,&C藍arke,2004;Finlay−Joぬes,&Brow恥1981;KendleらHettema, Butera, G掘dner
&Pres◎otち2003;KendleろThomton,&Presoo坑2001;Kess1鉱Tuneち&House,珍87)。もう1つは、
抑うつや不安の状態にある人の多くは、ストレスフルなライフ・イベントを経験しやすいようだ
という論点である。この点については、ストレスフルなライフ・イベントと抑うつの関係を説明
するには、ライフ・イベント原因論だけでは説明できない部分があると指摘している研究
(Paykel,1978;Kendler et記,1999)や、抑うつが後のストレスフルなライフ・イベントへの経験に
対する脆弱性を引き起こすということを示唆した研究がある(Hamme隅1991)。ストレスフルな
ライフ・イベントは、纏うつ、不安を引き起こす原因であるかもしれないし、または抑うつ的な
状態や不安な状態の人は、ストレスフルなライフ・イベントを感じやすい、または引き起こしや
すいのかもしれない。(図3−1)
ストレスフル・
ストレスフル・
ライフ・イへ.ント
ライフ・イへ●ント
不快気分
不快気分
図3−1ライフ・イベントと不快気分発生の仮説モデル
32
ストレスフルなライフ・イベントの測定方法について考えてみると、それぞれの研究者が重視
する特徴によって違いがある。それは、①ストレスフルなライフ・イベントが引き起こす変化の
程度なのか、それとも②ヌトレスフルなライフ・イベントが損失または損失の脅威を被調査者に
もたらす程度なのか、または③ストレスフルなライフ・イベントやその解決手段を被調査者がコ
ントロールできる程度なのかという、ストレスフルなライフ・イベントを測定する際に研究者が
重要視する論点の違いがあるからである。
従来の研究では、ライフ・イベントの測定には、多くのあらかじめ決められた係数か、または、
状況に特定的・文脈的な脅威によって重み付けされた特定のライフ・イベントの数を数えてその
合計点を測定し、ストレスフルなライフ・イベントが引き起こす変化の程度を測定していた。例
えば、Ho血es and Rahe(1967)は、ライフ・イベントにともなう生活変化とそれが要求する心理
社会的適応の大きさをストレスと定義して、43のライフ・イベントについてその影響力の強さ
を尺度化し、有名な社会的再適応評定尺度(Social Rea(恥stment Rat董ng Scale;SRRS)を作成した
(表3−1)。
SRRSの研究をきっかけに、ライフ・イベントに関するストレス研究は爆発的に増加して、ス
トレス研究の展開に大きな影響を与えた。しかし、同じライフ・イベントでも人によってその受
け止め方は違う。それゆえに、重みづけを客観的に決めることは難しい。例えば、SRRSで最も
ストレス度が強いライフ・イベントとされる配偶者の死について考えてみよう。小さな子どもが
おり、夫婦仲が良く、夫に頼りきりであった妻にとって、突然の夫の自動車事故死は非常に大き
なストレスをもたらすであろう。一方、子どもたちを育て上げ、豊かな老年期を夫婦仲良く過ご
し、数年の介護をした後に、天寿を全うした夫を見送ったおおらかな性格の妻にとっては、夫の
死はまた異なる意味をもたらすのかもしれない。また日頃から夫の飲酒と暴力に耐え兼ねて、夫
の顔色をうかがいながら、子どもを連れて隙を見て家を出るタイミングを見計らっていた妻にと
って、夫の泥酔による転落死はまた別の意味をもっかもしれない。このようなことを考えると、
同じライフ・イベントを経験したとしても、その人自身がどう受け止めたかという主観的な評価
が重要となる。
33
表3−1社会的再適応評定尺度(Social Rea(加stment Rating Scale)
ライフ・イベント
生活変化指数
ライフ・イベント
配偶者の死
100
子どもが家を離れる
離婚
73
65
63
妻の就職や離職
近親者の死
63
入学、卒業
自分の病気やけが
53
25
24
引越し
家族の健康状態の変化
23
労働条件の変化
45
44
転校
40
20
20
20
余暇活動の変化
3g
新しい家族が加わる
39
仕事の再調整
39
19
宗教活動の変化
19
社会活動の変化
18
小額の借金
経済状態の変化
38
睡眠習慣の変化
親しい友人の死
37
同居家族数の変化
36
17
16
15
食習慣の変化
配偶者との口論の増加
高額の借金
26
上司とのトラブル
45
定年(退職)
転職
26
個人的な生活習慣の変更
47
性的な問題
28
生活条件の変化
50
配偶者との和解
妊娠
29
特別な成功
受刑、服役
失業、解雇
29
姻戚とのトラブル
配偶者との別居
結婚
生活変化指数
35
休暇
31
クリスマス
抵当やローンが流れる
30
仕事上の責任の変化
29
軽い法律:違反
34
15
13
12
11
主観的な苦痛は、起こ.つたイベントの数やイベントの重み付けされた客観的な影響よりも、よ
り強く心理的な症状に関連しているとの報告がある(Cohen, Kamard∼&Mermelste砥1983;
Tennant,&Andrews,1978)。そのような視点を考慮するならば、ストレスフルなライフ・イベン
トが損失または損失の脅威を被調査者にもたらす程度を、被調査者本人によって自己評価しても
らうことは、妥当な評価方法といえよう。
今回の研究では、臨床実習を課される看護学生を対象として選んだ。看護学生にとって臨床実
習は重大なライフ・イベントである。臨床実習先の看護師や医師との人間関係、学生同士の人間
関係、患者との人間関係、実習報告や課題、自由時問の激減等々、実習が始まる前と始まってか
らでは段違いの環境の変化にさらされることになる。老してこれらのこどは、学生に通常よりよ
り大きなストレス状況を生じさせる可能性があり、抑うつ、不安に対するリスクは特別であろう
と考えられる(Wells,&Matthews,1994)。
研究方法について考えると、コーピング、ストレスフルなライフ・イベント、ライフ・イベン
トが起こる前の惑うつ、不安、そして結果としての耳うつ、不安の関連を因果関係から検証する
ためには、縦断的な研究デザインが必要である。さらに、抑うつと不安の2つの結果変数をいく
つもの説明変数で同時に検証するためには、解析方法の選択を必要とする。
ζれらの文脈から、われわれは、唄うつや不安な状態にある人はストレスフルなライフ・イベ
ントの脅威度をそうでない人よりも強く感じやすいであろう。そして、ストレスフルなライフ・
イベントの脅威度を強く感じる人というのはそうでない人よりも効果的でない灘一ビングを取
りやすく、コーピングが有効に働かないためにその後の抑うつや不安を強めるまたは起こしやす
い。またストレスフルなライフ・イベントの脅威度を強く感じた人ほどそうでない人より抑う
つ・不安になりやすいと仮定した。
この仮説を検証するために、看護学生にとっては重大な出来事である長期間(6ヶ月)の臨床
実習に焦点を当てて、実習の前後2回の調査を行い、実習が始まる前の抑うっ、不安と、実習中
に実際に経験したストレスフルなライフ・イベントに対する脅威の程度と、そのライフ・イベン
トに対してとったほ一ビング、そして臨床実習終了後の抑うつ、不安とを縦断的に評価し、これ
らの変数間の仮説モデル図(図3−2)を作成して、共分散構造分析による解析を行った。
35
臨床実習前
臨床実習中
臨床実習後
ライフ・イベント
抑うつ
抑うつ
不安
不安
課題優先コーピング
情動優先コーピング
回避優先コーピング
図3−2実習前の抑うつ、不安、実習中のストレスフルなライフ・イベントに対する脅威度、そのストレス
フルな状況に対してとったコーピングと臨床実習後の卜うつ、不安の関連についての仮説モデル
3.2.方法
3.2.1.対象
対象は日本の2つの看護学校の学生である。1時点目(Tpは臨床実習前で、その参加資格者
は166名、参加者は151(90.9%)名。2時点目(T2)は6ヶ月間の臨床実習終了後であり、そ
の参加資格者は163名、参加者は148名(90。7%)。欠損値のあるものを除いて、1時点と2時点
の照合ができた最終的な対象者は103名(男6名、女97名)である。対象者の大部分が女子学
生であったために、全変数間で男女差がないことを確認した後に、女子のみ97名を本研究の対
象とした。2時点での、平均年齢21.2歳、標準偏差2.1歳、年齢の分布は19から32歳であ
る。
36
3.2.2.尺度
抑うつと不安の測定
抑うつと不安はHospita夏Amdety and depression Scale(HAD;Zimond&Snaith,1983)で測定し
た。今回の研究では、alpha係数は、それぞれT2抑うつ.72、 T2不安.82、 T l抑うつ.67、 T 1
不安.84であった。
コーピングの測定
コーピング測定にはCoping Invento取fbr Stress蝕l Situatio且s(CISS;Endler&Park賦1990)を使
用した。臨床実習6ヶ月間に実際に体験したストレスフルな状況を思い出して、そのときに実際
に用いたコーピングについて答えてもらった。この研究でのalpha係数は、情動優先コーヒ。ング、
課題優先諏一ビング、回避優先コーピングはそれぞれが.85、.88、.81であった。
ライフ・イベントの脅威度の測定
臨床実習中6ヶ月の問に経験したストレスフルなライフ・イベントの脅威度について、0か
ら100までで答えてもらった。「この6ヶ月間に体験したイやなこと、困ったこと、悪いこと、
苦しかったり、悲しかったりしたことを思い出して、あなたにどれほどの影響を与えたかを考え
てください。悪い影響がなかったら0点、悪い影響があったほど点数が高くなるとして0点か
ら100点の間で点数をつけてください。」という質問項目で評価した。
3.2.3.手続き
対象者は2つの時点で、質問紙を完成した。1時点(T1)は臨床実習が始まる前であり、2時
点(T2)は臨床実習6ヶ,月の終了時点である。1時点(T 1)では、 HADを、2時点(T2)では
HAD,過去6ヶ月間に経験したストレスフルなライフ・イベントの脅威度、そしてそのストレ
スフルな状況に対して取った諏一ビングについてCISSで評価をした。質問紙はクラス内で配
布し、記入後は手渡しで回収した。インフォームド・諏ンセントは質問紙の中で、全ての対象者
から得た。この研究計画は熊本大学大学院医学薬学研究部等倫理委員会により承認を得た。
37
3.2ん統計解析
最初に、全変数間の相関分析を行い、各変数間の相関関係を調べ、2時点の抑うつと不安に対
して有意な変数を確認した。次に、T2 HAD一抑うつとT2 HAD一不安をそれぞれ従属変数とし、
CISSの3つの下位尺度、課題優先コーピング、情動優先コーピング、回避優先コーピング、 Tl
HAD一州うつ、 T l HAD一不安そしてストレスフルなライフ・イベントの脅威度のすべてを独立変
数として、2つの階層的な重回帰分析を行い、T2 HAD一抑うっとT2 HAD一不安の予測に有意な関
連を示した変数を確認した。その後、これら有意な変数のみについての仮説モデルを作成し、こ
のモデルに基づき、変数間の直接的、間接的な影響と、モデルの適合度指標を評価するために、
共分散構造分析を行った。モデルの適合度は、chi−sqared/d£CFI、 GFI, AGF、 RMSEA、 AICを
使って確かめた。通常の基準に従えば、適切な適合度はchi−sqared!df<2, GFI>o.90, AGFI>
0.90,CFI>0.97, RMSEA<0。05(BentleU 990;Sche㎜elleh−Engel, Moosb!ugger,&M翻er,2003)と
されている。AICに関しては、異なるモデルを比較してあるモデルのAICが少なくとも、2
ポイント低ければそのモデルはより良いモデルとみなされる。これらの解析にはSPSS 10.0
(SPSS,1999)とAMOS 4。0(Small恥tα・s,1999)を使った。
3.3結果
各変数の平均値、標準偏差、変数間の相関係数、α係数は、表3.2.のとおりである。
3.3.1臨床実習前(T1)と臨床実習6ヶ月終了後(T2)の気分の変化
平均値をみると、臨床実習前よりも臨床実習6ヶ月終了後の方が、HAD一抑うつ(5.9−6.0)、
㎜一不安(7.6−8,5)ともにわずかに増加していた。2っの時点での差を確認するためにt検定
を行った結果では、HAD不安については、2つの時点で有意な差(ρ<.05)が認められたが、
HAD一個うつについては、有意な差は認められなかった(ρr766)。
38
表3−2.女子看護学生97名における,各変数の平均値、標準偏差,α係数,相関係数
相関係数:
変数
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(1)T2 HADS 抑うつ
(2)T2 HADS不安
.701***
(3)TI HADS抑うつ
.403***
.353***
(4)Tl HADS不安
.305***
.458***
(5)T2ストレスフルなライフ・イベントの
.474***
.516***
.248
.211
.394***
.560***
.299**
.329**
脅威度
L667***
㌦
(6)情動優先的コーピング
,462***
(7)課題優先的コーピング
馴.221
一.106
一、058
048
一.137
.122
(8)回避優先的コーピング
一.190
一.015
一.155
一.008
一.078
.311**
平均値
6.08
標準偏差値:
3.66
α係数
.72
.323**
5.97
7.67
62.25 1
40,49
43.65
40.94
4.15
336
3.94
25.09
10.32
10.12
10.22
。82
.67
.84
NA
.88
.81
8.57
.85
註 HADS=Hospital Amdety and Depression Scale. T l=臨床実習前. T2=臨床実習6ヶ月終了後**p<.01.***p<.001.
39
3.3.2臨床実習前の抑うつ、不安、実習後の抑うつ、不安、実習中のストレスフ
ルなライフ・イベントに対する脅威度、コーピングの関連
CISSの3つの諏一ビングのうち、情動優先コーピングのみが、臨床実習終了時点(T2)の
HAD一抑うつ、HAD一不安と有意な相関関係があった。 T2 HAD一抑うっと有意な相関があったのは、
T2 HAD一不安(r=.701)、臨床実習前のTI HAD一抑うつ(rr403)、 TI HAD・不安(F,305)、ス
トレスフルなライフ・イベントの脅威度(rゴ.474)、情動優先コーピング(rr394)であった。
T2 HAD一不安と有意な相関があったのは、 T2 HAD一抑うつ(r=.701)、臨床実習前のTI HAD一抑
うつ(F.353)、TI HAD一不安(r=.458)、ストレスフルなライフ・イベントの脅威度(r=.516)、
情動優先コーピング(r=.560)であった。TI HAD一抑うつと有意な相関関係があったのは、 TI
HAD一不安(F.667)、情動優先諏一ビング(F.299)であった。 T l HAD一不安とは、 T2 H:AD一不
安(F.458)、TI HAD一抑うつ(F.667)、情動優先コーピング(F 329)が有意に相関、コーピ
ングについては、情動優先:コーピングは回避優先コーピング(r概311)、ストレスフルなライフ・
イベントの脅威度(r=.462)と関連していた。回避優先コーピングは情動優先コーピング(r
=.311)、課題優先識一ビング(r鴇.323)と、課題優先コーピングは回避優先コーピング(F,323)
とそれぞれ有意な相関があった。
3.3.3.6ヶ月間の臨床実習終了後の気分の予測(表3−3)
階層的な重回帰分析の結果、CISSの3つの下位尺度のうち、情動優先コーピングのみが、
臨床実習後のT2 HAD一不安に対し有意な予測力を示し、課題優先コーピング、回避優先コーピ
ングはT2 HAD一不安、 T2 HAD一抑うつのどちらとも、有意な予測力を示さなかった。臨床実習
終了後のT2−HAD一抑うつを有意に予測した変数は、 T2 HAD一不安とTI HAD一三うっであり、臨
床実習終了後のT2 HAD・不安を有意に予測した変数は、T2 HAD一抑うつと臨床実習が始まる前の
Tl HAD一不安そして、情動優先:コーピングであった。
40
表3−3T2の㎜一Dと}m−Aを従属変数とし,年齢, T2の㎜抑うつとT2の弘D不安それぞれ,
CISSの3つのコーピングを独立変数とした階層的重回帰分析結果
T2 HAD不安
T2 HAD抑うつ
R2cha血ge
Step 1
.007
.007
Fchange
Beta
.700
年忌
Step2
.487
90,519
R2change
.003
.003
Fchange
.253
.489
90.519
.504禽鼎
.613畑禽
.542
.049
4.837
.569
TI HAD一抑うつ
.077
8.189
一.154
.233禽
TI HAD一不安
.297舘
一.160
552
.010
2.042
.606
ストレスフルなライフ・イベ
Beta
一.062
.492
共分散(T2不安:T2抑うつ)
Step4
R2
.085
.494
Step3
ストレスライフ・イベントの脅威度,
,038
8.736
.137
。093
ントの脅威度
577
Step5
,025
1。701
.652
課題優先的駆一ビング
一.090
情動優先的ロービング
.034
回避優先的ローピング
一,121
註 HAD=Hospital A漉ety and Depression Scale;Beta=標準化beta係数;*pく.05.**p<.Ol.***p<.001
41
.046
3.854
一.024
263禽需
一.003
これらの結果から、課題優先コーピングと回避優先コーピングは除外して、残りの変数につい
てパスモデルを作成し(図3・2)、このモデルに従い共分散構造分析を行った。
このモデルでは、(1)臨床実習前にすでに抑うつ気分、不安気分が高いと、実習中に起こっ
たストレスフルなライフ・イベントに対する脅威度を高く見積もりやすい。(2)そうすると情動
優先コーピングを多く使うことになり、情動優先コーピングを経由して臨床実習6ヶ月終了時点
での、抑うつ気分、不安気分が高くなる。(3)ストレスフルなライフ・イベントに対する脅威度
が高いということは、直接的にも、臨床実習6ヶ月終了時点での、抑うつ気分、不安気分に影響
を与える。(4)臨床実習前に抑うっ気分、不安気分が高いということは、情動優先コーピングを
とりやすいと同時に、直接的にも臨床実習6ヶ月終了時点の抑うつ気分、不安気分に影響を与え
るであろうと仮定した。そして、抑うつ、不安の共分散を設定した。
臨床実習前
T1抑うつ
臨床実習後
臨床実習中
ライフ・イベント
T2抑うつ
τ1不安
情動優先コーピング
T2不安
図3−2抑うつ、不安にいたる、ライフ・イベント、情動優先コーピングの仮説モデル
42
3.3.4.仮説モデルに基づく共分散構造分析
共分散構造分析を行ったところ、オリジナルのモデル(図3−2)は棄却されたので、有意で
ない標準回帰係数を削除する方法によって、モデルの修正を行った。有意なパス係数のみの最終
のモデル(図3・3)によって、次のような結果を得た。
予測されたようにT2の唱うつ・不安は、 T1の抑うつ・不安からそれぞれ中程度の影響を受
けていた。さらにT2の抑うつは、ストレスフルなライフ・イベントの脅威度によって予測され、
T2の不安はストレスフルなライフ・イベントの脅威度、情動優先コーピングによって予測され
た。ストレスフルなライフ・イベントの脅威度はTl挿うっにのみ予測され、情動優先コーピン
グはT1の不安とストレスフルなライフ・イベントの脅威度によって予測されるという結果であ
り、抑うつと不安で構成される不快気分というものは相互に大きな影響を与えていた。これらの
パス係数は全てp<.05で有意な関連にあった。この最終モデルの適合度指標は非常に良く、
CMIN/DF=0.668、 p鵠0.648、 GFI躍0.989、 AGFIコ0.953、 CFI d,000、 RMSEA=0.000であ
り、AICの指標は仮説モデルの42.00から、最終モデルの35.34へと改善した。
臨床案晶晶
T1抑う
臨床実習中
臨床実習後
.25歯
ライフ・イベント
40触禽
.31寧再
τ2抑うつ
。41需禽禽
刊 不安
.30鼎禽
.35鼎禽
.24勲
τ2不安
情動優先コーピング
.25蝋
図3−3抑うつ、不安にいたる、ライフ・イベント、情動優先コーピングの関連
43
3.4.考察
今回の研究の結果から、ある時点の雇うつと不安の程度は、その6ヶ月前に測定しておいた
憂うつと不安の程度によって予測されることが明らかになった。この結果は先行研究に一致する
(Maci句ewski, Pdgerson,&Mazu∫e,2000)。同時に強い共分散があるにもかかわらず、抑うつと不
安は、それぞれ他の変数との間で異なる関連性を示した。ストレスフルなライフ・イベントの脅
威度が払うつと不安の両方を予測した一方面、情動優先諏一ビングは不安だけを予測したのであ
る。
抑うつと不安の間の堅固な共分散は多くの研究者によって報告されている。たとえば、不安
や掬うつを測定する自己記入式尺度(たとえば、状態一特性不安尺度とB㏄kうつ病評価尺度)
では、相関係数は.60∼.80、臨床他者評価尺度(たとえば、Hamiltonの不安尺度とEamiltonう
つ病尺度)では.40∼50と、不安と抑うつめ相関は非常に高いことが報告されている(Clark&
Watson 1991;Kendall&Watson,1989)。また、診断に関する研究では、不安障害とうつ病性障害の
合併診断は多く、不安障害とうつ病性障害の合併の生涯有病率は、3.6∼8.6%程度であることが
報告されている(KessleらNelson, McGonable, Liu, Swartz,&Blazeら1996)。しかしながら、これら
2つが同じ心理的な能力を意味するかどうかの議論がないわけではない。不安障害の診断がうつ
病性障害の診断に先行する方がその逆の場合よりも多いことや、抑うつ症状のない不安障害は比
較的よく認められるものの、不安症状のないうつ病性障害はほとんど認められないことも報告さ
れている(αark,1989)。この論点について、 Clark and Watson(1991)は、レビューに基づき、3
構造モデルを提唱して、抑うつと不安の共通部分とそれぞれに特性的な症状を区別、説明してい
る。3構造とは、(1)否定的感情:心配、易刺激性、緊張など。(2)肯定的感情:楽しみながら
環境に関与する程度、快活、社交性、エネルギー、熱意など。(3)自律神経の過覚醒:心悸充進、
息切れ感、震えなどである。否定感情は不安および気分障害に共通した特徴であり(つまり、緊
張、心配、易刺激性などの症状は不安と抑うつの双方に起こる)、自律神経の過覚醒は不安に特
定してみられ、肯定的感情の欠如は気分障害に特有なもので不安障害にはなく、不安障害と気分
障害を区別する特徴であるとしている。
今回のわれわれの研究結果では、看護臨床実習6ヶ月終了時点の抑うつは臨床実習前の抑う
つによっては予測されたが、実習前の不安には予測されなかった。臨床実習6ヶ月終了時点の不
44
安は実習前の不安によって予測されたが、実習前の抑うっには予測されなかった。不快な気分は
実習前の同タイプの気分にのみ予測されもう一方のタイプの気分では、予測されなかったのであ
る。このことは、揮うつと不安は相当の共分散を共有しているけれども、横断的には独立した現
象であるということを示唆している。Fergusson, Horwooa, and Boden(2006)は、953人の児
童を25年間追跡調査し、大うつ病、全般性不安障害、恐怖症、パニック障害といういわゆる内
向性症状の内的構造の一貫性を横断的及び縦断的に確認した。その結果、これらの内向性症状は
ひとつの潜在変数を形成し、この潜在変数が縦断的(継時的)に一貫していることに加え、誓う
つ病と恐怖症が独自に縦断的(即時的)一貫性を示していることを報告している。今回の研究は
非常に短時日の間隔を置いた場合の卜うつと不安の内的構造を見たものである。内向性症状は一
定のまとまりを見せるものの、それを構成する各要素が独自の振る舞いを示すことを、
Fe■gusson et al.(2006)の長期追跡調査も今回のわれわれの短期追跡調査も共に示している。
こうした抑うつ・不安複合体の複雑な振る舞いは今後さらに実証研究を行う価値のある主題であ
ろう。
ストレスフルなライフ・イベントの脅威度と識一ビングとの関連についてみると、抑うつと不
安では異なったパターンを示した。ストレスフルなライフ・イベントの脅威度は、実習終了後の
抑うつと不安の両方に同程度の影響力を与えていた。しかしながら、ストレスフルなライフ・イ
ベントの脅威度をコントロールした後は、情動優先コーピングは不安のみを予測し、抑うつを予
測するものではなかった。先行研究では、情動優先コーピングは心理的な不適応と関連している
と報告されているけれども(Billings, Cronkite,&Moos,1983, Endler&Parkeら1990亀1990b;Endleち
Park賦&Butcheろ1993;McWiniams, Cox,&Enns,2003;Vblkath et a1.,1994)、抑うっ、不安におけ
るこのコーピングの影響の違いやコーピングとストレスフルなライフ・イベントとの問の相互作
用に注意をはらっている研究は少ない。先行研究で報告されている情動優先ロービングと抑うつ
との関連は、抑うつと有意な分散を共有する不安と情動優先灘一ビングとの関連とを混同するこ
とによって説明されていたのかも知れない。これらの論点については異なる集団を使ってのさら
なる研究が必要であろう。
この研究で明らかになった、他の重要な点はストレスフルなライフ・イベントの脅威度は6
ヶ月前の抑うつでのみ予測されたことである。抑うつ度が高かった学生はストレスフルなライ
フ・イベントを引き起こしやすいということがあるかもしれないし、または抑うつ的であった学
生はライフ・イベントをより有害に感じやすいという事かも知れない。Hammen(1991)は、健
45
康な女性に比較して、単極問うつ病の女性は、彼らの症状、行動、性格、社会的な状況によって、
ストレスフルな状態を引き起こしやすい、さらにそのことがまた揮うつをつくり出すようだと報
告している。不安がストレスフルな状態を引き起こしやすいという報告はみあたらない。しかし、
PTSDと診断されたレープ被害者が、被害現場に戻り、同じ被害を複数回経験しやすいというよ
うな経験的な観察は、不安がさらなるストレス状況を作りやすいということなのかもしれない。
前者の、抑うつ状態の人はストレスフルなライフ・イベントを引き起こしやすいという想定は、
ネガティブなライフ・イベントは神経症傾向(neuroticism)というようなパーソナリィティ傾向
の人々によって増大するという経験的な報告によって支持されるのかもしれない㊤olgeら&
Sc短Uing,1991;D晦Ha㎜en, Davila,&Burge,1998)。これらのパーソナリィティ働はしばし
ば抑うつと関連があるために、抑うつ状態にある人の間ではストレスフルなライフ・イベントの
発生がそうでない人よりも起こりやすいのかもしれない(Hammen,1991)ρ後者の想定、すなわ
ち抑うつ状態にある人はライフ・イベントを有害に感じやすいという点については、抑うつ気分
の原因を探索する趨勢(Brown,&HI面s,1978)や、錯乱と抑うつというような気分の状態にある
学生は、試験に対する低い自己効力感を予測し、その結果悪い成績に終わったという、Thelwell,
Lane, and W¢ston(2007)の近年の研究とも一致するものである。
灘一ビング行動の依拠するところはまた、人口統計的な特徴(McCrae,1982;Murp取Jo㎞so鶏
&Lohan,2003;Po群er&Stone,1995)に加えて、遺伝(KendleろKlessleちHeath, Neale,&Eaves,1991)
や、パーソナリィティ(Andrews,&Brown,1988;Brown,1978;Eokenrode,1983;Ghazino凱Richteら
&Eisemann,2003;HookeちFrazier,&Mo臓aha鶏1994;Johnson, Sheahan,&Chard,2003;McCrae&
Costa,1986)や、個人がコーピング行動を選択する時のライフ・イベントのタイプの違い(Carveら
Scheieち&Weintraub,1989;McCrae,1984;0’Brien&DeLongis,1996)というような領域とコーピ
ング行動との関係についての注意深い研究が必要となろう。
今回の研究にはさまざまな限界がある。第1に、サンプルサイズが小さいということは変数間
の関連を見つけるにはパワーに限界があった。一方で、この小さなサンプルの中で、ストレスフ
ルなライフ・イベント、情動優先コーピング、抑うっ、不安の間に有意な関連があるとの発見は、
これらが相対的に確固とした関連にあるということを示唆している。
2番目に、我々は女子学生のみを解析に使ったために、性差の影響を評価することが出来なか
った。適うつは、男性よりも女性に起こりやすいということが西欧の国々でも(例えば、磁)ung,
Fogg, Sche伽羅Klell鵯&Fawcett,1990)、そして日本においても(Klaw謡(ami, Shimizu, Haratani,
46
Iwata,&Kitamu臓2004;Kitamura, F両ihara, Iwa砥Tomoda,&Klawakami,1999)よく認識されてい
る。ストレスフルなライフ・イベントにさらされたときの比率と結果としての深刻度との関連に
おける性の違いが報告されている(KendleちKuhn, Vittu亀Pres◎ott,&Ri1賜2005;KendleろTronton,
&Pres◎ott,2001)。男性と女性では同じようなタイプの逆境に対して、異なるコーーピング行動を
使って反応するのかも知れない。ストレスフルなライフ・イベントとコーピング行動の間の関連
もまた、男女の間では異なるのかも知れない。したがって、将来の研究では、男女を含むべきで
あろう。
これらの限界にもかかわらず、情動優先コーピングとストレスフルなライフ・イベントの脅威
度との関連は、抑うつ、不安を理解するための理論的な枠組みを提起する仮説を説明するであろ
う。また情動優先コーピングとストレスフルなライフ・イベントの脅威度を評価することは、抑
うつ、不安を予測することに有用であるかもしれない。精神療法の点から考えると、認知療法
α,utgendorf;Antoni, Ironson, StarらCostello, Zuckerman, Klimas, Fletche鴫&Schneiderman,1998)や、
その他の療法(Brodedck,2005;Carlson, Ursuliak, Goodey;Angen&Speca,2001;Spec亀Carlso1㍉
Good暢&Angen,2000)を通して、患者やクライアントが情動優先雛一ヒ。ングを減らすような手
助けができるかもしれない。また患者やクライアントが、脆弱なコーピング行動に対する自らの
認識を高めることに有用であるかもしれない。さらに、それらのネガティブな影響を減らすため
の諏一ビングスキルの回数を増やすとか、展開するとかという方向のステップのひとつとして、
脆弱なコーピングのスタイルに対する患者やクライアントの意識を高めることは効果的かもし
れない。
今回の研究の結果では、情動優先コーピングとストレスフルなライフ・イベントの脅威度が、
看護学生における、抑うつと不安の決定要因として有意な役割を果たしていることが明らかにな
った。これらの研究成果は情動優先コーピングとストレスフルなライフ・イベントの脅威度によ
って、結果としての抑うつと不安が説明できるのかも知れない。さらなる研究においては、より
多くの多面的なアプローチを考慮に入れるべきであろう。
コーピング行動、特に情動優先ロービングと、心理社会的な要因との交互作用に注意を向ける
ことが、抑うつ・不安の将来の研究を確かなものにする。介入・治療時の注意点として、ストレ
スフルなライフ・イベントに対して情動優先コーピングが行われているときには注意深い対応が
必要である。謡うつ、不安の症状、ライフ・イベントの効果的な処理、そして有効なコーピング
が実行されるような注意深い臨床的な注目が適切な治療・介入に導くのかもしれない。
47
第4章
コーピングとパ轡ソナリィティの関連(研究3)
4.1.背景と目的
第4章では、コーピングと、コーピングに対する重要な影響因子の1つであるパーソナリ
ィティとの関連を検証する。灘一ビングを、パーソナリィティ理論から説明すると、どのような
予測ができるであろうか。
パーソナリィティは、目常的には性格や人格という言葉で使われることが多い。そして具体的
には、あの人は神経質だ、悲観的だ、倹約家だ、飽きっぽい、シャイだ、1人でいるのがすきだ、
思いやりのある人だ、大雑把だ、新しいのもの好きだ、自分中心的だとかというように、人の感
じ方や表現の仕方、行動などを表現するものとして、断片的に使われていることが多い。しかし、
それらの傾向をよくみてみると、それぞれの人で、一定のその人特有の傾向があることに気づく。
そしてまた、まったく異なる状況におかれたとして、状況は変わっても、その人特有の感情や行
動にはなにかしらの一貫した点がみられる。また同じような状況におかれたとしても、人によっ
て、それぞれ感情や行動の一貫性の中には違いがある。このような点を考えてみると、その人に
特有な傾向を示す背景には、個人の行動を規定している何かがあるのだろうということが推測さ
れる。この何か、人の思考、感情、行動などに、あるていど一貫した傾向をもたらしていると考
えられるのが、パーソナリィティである(北村,2003)。つまり、時間横断的にも状況横断的に
も一定した、人間の心理的行動的個性が人格である(Lenze皿wege4999)。
4.1.1。パーソナリィティ理論の展開
パーソナリィティを記述する理論に関しては、方法論や背景にある理論の違いによって、さま
ざまな研究が展開されてきた(細port&Odb鍍,1936;Ca批e11,1943;Eysenck,1947,1990;McCrae&
Cos篭1986)。代表的な理論をあげると、ユングやクレッチュマーに代表されるパーソナリィテ
48
イの類型論、これは一定の基準で人をタイプに分けて記述している。ギルフォードのパーソナリ
ィティ因子論では、いろいろなパーソナリィティテストを再検討し、因子分析して、パーソナリ
ィティ特性をまとめている。キャッテルの因子論では、パーソナリィティにかかわる多くの情報
を集め、因子分析によって、根源的な重要因子16個にまとめている。Eysenckの因子論的類型
論では、テストや実験の客観的なデータと因子分析を用いて因子をまとめ、それをさらに類型化
して、因子同士の関係を構造化している。Eysenckは3因子(外向性extraversion、神経症傾向
neuroticism、精神病傾向psychoticism)モデルで、類型と生物学的基盤との関係を理論化し、
Eysenck Personality Questionnaire(EPQ;Eysenck&Eysend∼1975)尺度を開発した。 EPQを使用し
ては、数多くの理論検証研究が行われている(Eysenck,1990)。これらの研究が多様に展開され
てきた結果、類型論と因子論は対立するものではなく、パーソナリィティを階層的にとらえ、互
いに補いあうものとして、近年はパーソナリィティを5つの因子で記述できるという5因子理論
に収束してきた。
5因子モデルを代表するのが、Costa a礁d McCrae(1985)である。5因子とは、神経症傾向
(neuroticism)、外向性(ex raversion)、協調性(agreeableness)、勤勉誠実性(◎onscientiousness)、
経験への開放性(ope㎜ess to experience)である。 Costa(1996)は、パーソナリィティの特性を5
因子構造とし、そのすべてが先天的・遺伝的に規定される気質で説明されるとした。5因子は
環境的な要因に影響されることなく、発達のすべての段階で、パーソナリィティの基本的な次
元として、行動の基本的な枠組みとして機能する。そして環境要因はパーソナリィティの表現
系にのみ影響を与えると考えた。
これら5因子を測定するために、NEO Person組ity Inventory(NEO−PI;Costa&McCrae,1985)と
いう質問紙が作成されており、現在は改訂版である、M三〇一PI−R(Costa&McCrae,1992)が標準的
な質問紙として使われている。
しかし、5因子理論に対しては批判もある。Eysenck(1990)は、5因子が、観察や評価測定の結
果によって得られたもので、生物学的な根拠にかけること、協調性や勤勉誠実性はEysenckの
類型を組み合わせたものにすぎないこと、パーソナリィティとは関係のない認知的な側面を評価
する第5因子経験への開放性が含まれることなどを理由に、5因子モデルに異を唱えている。ま
た、C。sta自身も述べているように、遺伝子によって気質のすべてが規定されるわけではない
(Costa,1996)。このような論点を考え合わせると、パーソナリィティには、気質によって説明さ
れる以外の、環境や発達過程での要因に影響を受ける後天的な特性もありうるということを考え
49
る必要がある。
Costaのモデルとは異なり、パーソナリィティの特性を、先天的に遺伝によって規定される気
質と、環境要因、発達の展開要因や文化的な要因の影響によって後天的に形成される性格との両
側面から説明するモデルとして、Cloning{鴻Svrakic, Imd Przybe。k(1993)の7次元気質
(temperament)・性格(charac er)モデル演ある(図4−1)。
4.1.2.Cloningerの気質(temperament)と性格(ch劉racter)の7次元モデル
Cloniageちet al.(1993)は、パーソナリィティを先天的な要素が強い4つの気質(temperament)と
後天的な要素が強い3つの性格(chara㏄er)から構成されると考えた。気質は遺伝性であり、発
達の初期から認められる特性であるとして、(1)新奇性追求(novelty seekihg)、(2)損害回避
(harm avddange)、(3)報酬依存(rew肛d dependence)、(4)固執(persist㎝ce)の4つの次元で
説明されている。
パーソナリィティ
性格
気質
新奇性探求
損害回避
報酬依存
持続
図4−1C塁on韮ngerの7因子モデル
50
自己志向性
協調性
自己超越性
新奇性探求は神経伝達物質のドーパミンの分泌と代謝に依存した中枢神経系の行動の活性化
に関係しており,損害回避は墨縄トニンに依存した行動の制止に関連,受動的な回避や反応の消
去を引き起こすとされ,報酬依存はノルエピネフリンに依存した行動の維持に関連しているとさ
れている。この3つの次元はそれぞれ独立したものであるが,その機能は複合的にも働いて、新
奇や危険や報酬に対する適応行動の基本的なパターンを形成する。固執の次元は、元来は報酬依
存の下位尺度の1つであったものが、研究の進展の中で、報酬依存の下位尺度とは独立した,行
動を持続させる傾向として、加えられた。固執尺度は、他の報酬依存の下位尺度との相関が低く、
因子分析の結果から独立した因子あることが指摘されている(Stallings, Hevi就, Cloni且geらHeath,
&Eaves,1996;Sato, N面ta,正野rano, Klusunoki, Goto, Sakado, Uehara,2001)。生得的な特性である「気
質」は人生初期の経験の質や範囲をある程度まで規定する。したがって、自己の経験を情報処理
して後天的に体系化される自己概念にも、ある程度の影響を与えると考えられる。しかし経験は、
気質的な行動特性と、自然の環境や日照的・文化的な環境との相互作用の中で成立するものであ
るので、自己概念は気質によって規定されるだけでなく、経験から取り入れられた価値観などに
も影響を受けて構築される。このようにして形成された自己概念は、当然のことながら、一定の
行動傾向を生じさせる。Cloninger e{al.の「性格」はこのような概念だと考えられる。
彼らは、性格を(1)自己志向性(se1套directedness)(2)協調性(cooperativeness)(3)自
己超越性(se1鼻transcendeace)の3つに分けた。その違いは自己と自己自身、自己と他者、ある
いは自己と宇宙との関係によって説明している。自己自身の価値や目標に関与した自己概念が形
成されると、自己を自立的個人と見る自己志向性が強くなる。これは自己受容や自己尊:重に関連
する次元であり、自己決定と意志の力を基本とする(Wa11er et aL,1991;W就zel et al.,1992)。たと
えば、自己志向性が高い人は、責任感が強く、目的に向かって行動し、自分自身を肯定的に受け
止めている。そして、臨機応変に行動できる。一方、自己志向性が低い人というのは、責任感に
乏しく、なにかと人のせいにする。自分自身の目標がなかったり、目標が低かったり、そして、
いざというときに臨機応変な対応ができない。
他者を確認したり、受容したりという、他者の人間性に対して同一化した自己概念をもっと、
他者との受容的関係を重視する協調性が形成される。これは仲間との関係性(Cl面nger et a藍.,
1988;Sigvardsson et al.,1987)や,攻撃性(Waller et田.,1991)や、敵意(Sv囲dc et a1.,1992)など
の点で、他者受容的か否かに関連する次元である。たとえば、協調性が高い人というのは、人に
51
対して寛容で、共感的、協力的である。また他人の権利に対する関心や平等観があり、自尊心の
高さと高い相関がある。一方、協調性が低い人というのは、他人に対して不寛容で無関心、非協
力的で復讐心や利己主義が特徴的である。協調性の協力性や共感性は、発達心理学的には、人の
発達とともに獲得されていくものであり、成熟のサインであるとみなされている。
全宇宙の本質と、自己同一化した自己概念をもつと、宇宙や超越的なものとの一体感をもつ自
己超越性が形成される。人は瞑想や祈りをすることによって、人生の満足感を高めたり、個人の
有効性を高めたりすることができる。特に、人が年齢を重ね、成熟すると、自己や他者というも
のを超えて、物や雑事に対するとらわれから開放される、自然を確認し受容し、霊的な感覚が存
在することも認めることができるようになる。人は自然や宇宙と一体であり、宇宙の統合的な一
部分にすぎないと意識できるようになる。自己超越性とはこのような部分を想定している。熱中
や忘我的・受動的な集中などの自己超越をもたらす次元であり、この部分は35歳以上の成人に
とって、その人の適応の度合いと人生の満足度を知る上で、重要であると指摘されている
(Cloningeちet田,1993)。 Cloningerは,これらの3つの次元が成人における自己同一性の程度の違
いを表しており,自己概念の発達によって形成される性格の次元であるとしている。
ところで、先行研究では、コーヒ。ングとパーソナリィティの関連については、どのように説明
されているのであろうか。
4.1.3.コーピングとパーソナリィティに関する先行研究
パーソナリィティ特性とコーピングの関係を予測できるという結果を出している研究は、多
くが神経症傾向と雛一ビングについての関連である。神経症傾向の強い人は、情動優先諏一ビン
グと回避優先コーピングを使いやすいことが知られている(Dom&M誠hews,1992;Endler&
Park既1990;McCrae&Cos砥1986)。また、神経症傾向の強い人は、効果がないようなコーピン
グを使うことも知られている(McCrae,&Costa,1986)。神経症傾向の人は、ライフ・イベントの
影響を受けやすい傾向があるが、それはこうしたコーピングの特徴によるのかも知れない
(Denny&Frisch,1981)。 McWilliams, Cox, and Enns(2003)は、パーソナリィティ、コーピング、
抑うつ不安との関連を検証するために、298名の大うつ病性障害の外来患者を対象として、コー
ピングをInventory fbr Stress餌Situations(CISS, Endler&Parkeら1990)で、抑うつ症状をB㏄k
52
Depression Inventoly(BDI, Beck et al,,1961)で、不安の状態をState−Trait Anxiety h1ventory
(STAI−S;Sp董elbergeらGorssuch&Lushene,1970)で、パーソナリィティをNEO−Five Factor
Inve蜘!y(NEO−FFI;Costa&McCrae,1992)で測定して、これらの関連を調べた。その結果、情動
優先コーピングと神経症的なパーソナリィティ傾向、回避優先ロービングの中の社交的なコー
ピング(socia蓋coping)と外向性との問に大きな相関関係があったと報告している。神経症的な
パーソナリィティ傾向が高く、情動優先コーピングをとりやすく、外向性が低いと抑うつ症状を
起こしやすい。神経症的な傾向が高い人は、情動優先コーピングをとりやすく、そのために不安
症状を起こしやすいと述づている。パーソナリィティと抑うっ・不安との関連は、直接的な影響
と同時に謙一ビングを通じての間接的な影響をも含めた総合的な影響の結果が、抑うつ不安を予
測すると考えられる。神経症傾向と損害回避とは、強い関連があることが知られている(Sheち
Bartholow&Wbod,2000;Zuckemla益&Cloningeち1996)。
Cloningerらのモデルを使った研究は、近年飛躍的に数が多くなっている(Gh晒no凱Richter,
Ema戯,&Eisemamち2003;(油G鷹Przybeck, Clonigeら2005)。しかし、モデルが新しいこともあり、
このモデルとコーピングとの関連を検討した研究は少ない。その中で、Ghazinouろ磁ch三teund
Eisemann(2003)は、戦争にホるトラウマを経験し、イランから亡命したスエーデン在住の難民
100名を対象にして行った研究で、パーソナリィティ、コーピング、ソーシャル・サポート、そ
して、抑うつ症状の関連を調べている。その結果、兵士としての経験からトラウマティクな状態
にある人の中で、BDIで評価した抑うつ症状が低かった賜いうのは、損害回避が低く、自己志
向性と協調性が高い人であった。また、トラウマティクな状態からの立ち直りが早かった人とい
うのは、十分なソーシャル・サポートを得られるような効果的なコーピング戦略が展開できるこ
と、それに深刻なトラウマに対しての耐性を可能にするような、低い損害回避と高い自己志向性、
高い協調性という特性があったと報告している。
4.1.4。Clo皿ingerらのIb撮perament and Ch班3cter hventory(TCD
CIoni∬gerの気質と性格の7次元モデルに基づいて、パーソナリィティ構造を評価するための
自己記入式質問紙Temperameat and Ch肛acter Ihventory(TCI:Clonbg磯Svrakic,&Przybeck,1993)
は,開発されて以来、各国で翻訳され(Pelissob, mallet, Baleyte, Miche1, Cloniageら躍1ilaire,&
Jouvent,2005;Fossati,αoningeい刷豆a,Borroni, Grazioli, Giaro11i, Batta錘ia,&Ma舳i,2007;Sung, K:im,
53
楠雌g,Abrams,&Lyoo,2002;磁mse㎜e, Delhez,&Cloninge4005)、パーソナリィティと抑うつ、
不安(CloningeらBayon,&Svraldc,1998;F㎜eちMahmood, Redman, Ha㎡s, Sadleち&McGu伍n,
2003;Grucza, Przybec瓦Spitznage1,&αonhlgeろ2003;M3tsudaira&Kitamura,2006;Sato, Na謡ta,
Hirano, Kusunoki, Goto, Sakado,&Uehara,2001;Smith, Duf取, Stew繊, M1血,&Blackwood,2005)、パ
ーソナリィティと自殺((hucza, Przybeck,&Clonige¢005)、パーソナリィティと養育(平村英寿,
宇治雅代,鹿西典子,細細,松岡奈緒,北村俊則,2004;鹿井典子,宇治雅代,相槍,平村英寿,松
岡奈緒,北村俊則,2004,RichteちKreckloW&Eisemann,2002;Ruchkin, Eiseman1ちHagglo£&
Cloningeら1998)、パーソナリィティとPTSD(GhazinouちRic姓teらEmami,&Eiseman籍2003)、パー
ソナリィティと人格障害(Joyce, McK:enzie, Lu競MuldeらC麟eちSullivan,&Cloningeら2002)とい
うように、TCIはさまざまな領城で活用され、研究が盛んに行われている。日本でも、目本語に
翻訳、再英訳による確認作業の後に、目本語版TCIが作成されている。目本人を対象にして、
信頼性、妥当性の検定が行われ、高い内的肇合性、構成概念妥当性が確認されている(木島・斉
藤・竹内・吉野・大野・加藤・北村,1996;To!識i砥Aoyam亀Kitamu鴫Sekiguc風Muraち&Matu砥2000)。
研究3では、信頼性、妥当性に優れ、近年多くの興味深い研究で注目を集めている、パーソナ
リィティ評価尺度TCIとコーピングの評価尺度CISSを使い、パーソナリィティとコーピングの
関連を調べた。この研究の目的は、随一ビングとパーソナリィティの気質、性格とがどのように
関連しているかを検証することである。われわれは、コーピングは気質と性格によって予測され
るだろうと、仮定した。
4.2.方法
4.2.1.対象
対象は研究1および研究2と同じ、熊本県下の2つの看護学校の学生である。1時点目は(Tl)
臨床実習前で、その参加資格者は166名、参加者は151(90。9%)・名。2時点目は(T2)6ヶ月間、
の臨床実習終了後であり、その参加資格者は163名、参加者は148名.(90.7%)。欠損値:のある
ものを除いて、1時点と2時点の照合ができた最終的な対象者は120名(男11名、女109名)
である。対象者の大部分が女子学生であったために、全変数間で、女子のみのグループと男女合
計のグループとの差がないことを確認した後に、女子のみ109・名を本研究の対象とした。2時点
での、平均年齢21.10歳、標準偏差1.98歳、年齢の分布は19から32歳である。
54
4.2.2.尺度
諏一ビング
コーピング測定にはCoping Invento!y fbr Stress距1 Situations(CISS;Endler&Parkeら1990)を使用
した。臨床実習6ヶ月間に実際に体験したストレスフルな状況を思い出して、そのときに実際に
用いたコーピングについて答えてもらった。
パーソナリィティ
パーソォリィティの測定には≦Temperament and Character lnventory(TCI;Clo!丘血ger et a1.,1993)
の目線語版、130項目(木島ら,1996)を使用した。TCIはパーソナリィティの気質の4次元、新
奇探求(Novelty S㏄kin8::NS)20項目、損害回避(H㎜Avoidance:HA)20項臥報酬依存(Reward
Dependenc≒:RD)15項目、持続(Persistence:P)10項目と、性格の3次元、自己志向性
(Se膿D姪ectedness:SD)25項目、協調性(Cooperativeness:C)25項目、自己超越性
(Se15Trans。endence:ST)15項目を、4段階で評価する自己記入式質問紙である。内的整合性およ
び構成概念妥当性は十分確認されている(木島ら,1996,K輯ima, Tanaka, Suzuki, Higuchi,&
Kitamura,2000)。
4.2.3.手続き
対象者は2つの時点で、質問紙を完成した。1時点(Tl)にTCIを記入した。2時点(T2)で、
過去6ヶ,月間に経験した具体的なストレスフルな状況に対して取ったロービングについて、CISS
で評価をした。質問紙はクラス内で配布し、記入後は手渡しで回収した。インフォームド・コン
セントは質問紙の中で、全ての対象者から得た。この研究計画は熊本大学大学院医学薬学研究部
等倫理委員会により承認を得た。
55
4.2.4.統計解析
まず全変数問の相関分析を行った。次に、仮説モデル(図4−2)を作成し、このモデルに基づ
き、コーピングと気質、性格の7次元との因果関係を明らかにするために、共分散構造分析を行
った。モデルの適合度は、chi・sqaredldf、 CFI、 GFI, AGF、 RMSEA、 AICを使って確かめた。
新奇性探求
自己志向性
課題優先コーピング
損害回避
持続
報酬依存
協調性
情動優先コーピング
自己超越性
回避優先コーピング
コーピング
図4−2 気質、性格とコーピングの関連を仮定したモデル
56
表4−2 各変数:の平均値、標準偏差、α係数、相関係i数(n=109)
変数
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(9)
(10)
(1)課題優先コーピング
(2)情動優先コーヒ。ング
、125
(3)回避優先コーピング
.330***
.284**
(4)新奇性探求
一.256**
.062
.105
(5)損害回避
,109
.438***
.064
一,410***
(6)報酬依存
.069
.100
.286**‘
一.013
.088
(7)持続
.269**
.151
.132
一.393***
.346***
.386***
(8)自己志向性
.201
一.397***
.007
一.143
一.428***
,02り・
.049
(9)強調性
.287**
一.130
.026
一.186
.071
.383***
.228
.326**
(10)自己超越性
.385***
.076
.232
.067
.008
.244
.202
.02篁
.179
平均
42.67
39.88
40.73
26.84
36.57
3L87
16.91
36.88
50.08
16.40
標準偏差
10.72
10,74
10。28
7。44
7。88
6,09
395
8.61
7.61
5、71
,79
.82
。73
.68
.80
.80
.75
α係数
,89
.86
.82
言主 **p〈.01。***p〈.001
57
4.3.結果
表4−2は、女子学生109名についての、CISSとTCI各尺度の平均値、標準偏差、α係数、相
関係数を示している。α係数はCISSの3因子、 TCIの7因子ともに高く、課題優先コーピング
は.89、情動優先コーピングは.86、回避i優先的コーピングは.82であり、TCIの気質の下位
尺度は、それぞれ新奇探求は.79、損害回避は.82、報酬依存は.73、持続は.68であり、性格
の下位尺度については、自己志向性は,80、協調性は.80、自己超越性は.75であった。
相関関係をみると、課題優先コーピングは、回避優先コーピングと正の関連があり、気質の新
奇性探求とは負の相関が、性格の自己超越性、協調性、持続とは正の相関があった。情動優先コ
ーピングは、回避優先コーピングと正の相関が、損害回避とは正の相関があり、自己志向性と負
の相関があった。回避優先コーピングについては、課題優先灘一ビング、情動優先コーピングの
両方と正の相関があった。回避優先コーピングは、気質の報酬依存と正の相関関係があり、性格
の部分との相関はなかった。
パーソナリィティの気質と性格の関連については、損害回避と新奇探求の間に有意な負の相関
があった。』これは、Matsud掘ra and Kitamura(2006)の結果と一致する。また一般人口でも、患者
群でも同じような結果が報告されているように、損害回避と自己志向性との間には高い負の相関
があった(CloningeらSvrakic,&Przybeck,1993;Sato, Nadta, Hirano, Kusunoki, Goto, Sakado,&
Uehara,2001)。予想に反して、持続は、新奇探求性と負の相関が、損害回避、報酬依存とは正の
相関があった。この結果は先行研究(Cloning賦et a1.1993;Matsudaira et a1.2006;Sato e a1.2001)
とは異なる。協調性は、自己志向性、報酬依存と正の関連があった。これは、先行研究に一致す
るものである(Cloninger et a1.1993;Matsudaira et a1.2006)。
図4−2に基づく共分散構造分析の結果、仮説モデルの適合度は、chi−sqaredldf翼2.009、∫F O.074、
GFI=0.982、 AGFI=0.802、 CFI=0.977、 RMSEA=0.097、 AIC=110.04であったので、有意な
パス係数のみまでモデルの修正を行い、図4−3の結果を得た。
58
新奇性探求
損害回避
報酬依存
閣.27糊
、21禽
.40禽費禽
.24禽禽
黶D38禽禽
@
・.59費禽倉,
自己志向性
自己超越性
協醐姓
.29諏禽禽
、28畑
.29舶
30禽禽
一.29勲倉
ラ倉
課題優先コーピング
情動優先コーピング
回避優先コーピング
コーピング
7
図4・3コーピングと気質、性格の関連
コーピングとパーソナリィティの因果関係
3つのコーピングを予測したのは、次のような結果である。情動優先コーピングは、高い損害
回避iと低い自己志向性によって有意な予測がなされた。課題優先コーピングは、低い新奇性探求
と高い自己超越性、高い協調性と有意な関連が予測された。回避優先コーピングは、高い報酬
依存によって予測されている。
気質と性格の関連
性格に対する気質の影響をみると、自己志向性は、低い損害回避、低い新奇探求に予測された。
協調性は、高い報酬依存と低い新奇性探求、低い損害回避によって、自己超越性は、高い報酬依
存に予測されている。持続は、性格、コーピングを予測する有意な関連はなかった。これらのパ
ス係数は全てpく05で有意な関連にあり、この最終モデルの適合度指標は、ch童一sqared/df=1.216、
p=0.200、GFI=0.940、 AGFI=0.882、 CFI掌0.972、 RMSEA=0.045 であり、 AICの指標は
仮説モデルの110.04から、最終モデルの88、03へと改善した
59
4.4.考察
この研究の結果から、情動優先コーピングが損害回避と自己志向性によって予測されるという
大きな発見があった。損害回避が高いことは、直接的にもまた一部は自己志向性を経由しても、
情動優先コーピングをとりやすいことが推定された。ストレスフルな状況に遭遇したとき、損害
回避が高い人はより情動優先コーピング行動をとりやすい。また損害回避が高い人は自己志向性
が低い、そのために損害回避は一部自己志向性を仲:介して情動優先コーピング行動をとりやすく
なる。情動優先ほ一ビングをとりやすいという傾向は、先行研究において、抑うつや不安、身体
的な疾患からの回復の悪さというようなネガティブな健康変数との関連があることが、明らかに
されている(Billings, Cronkite,&MoQs,1983, Ehdler&Parkeら1990a,1990b;EndleらParkeろ&
Butche4993;McWilliams, Cox,&Enns,2003;Vbllrath et al.,1994)。また高い損害回避と低い自己
志向性の組み合わせば、詠うつや不安と関連のあることが、一般人口を対象とした研究でも、患
者群を対象にした研究でも、指摘されている(Ma sudaira et a1.2006;Sato et田。2001;Sm辻h, Du戯
Stew飢, Mu瓦&Blackwoo¢2005)。先行研究の結果は、これらパーソナリィティの変数とコーピ
ングの変数の直接間接の影響を含んでいたのかもしれない。特に自己志向性の低さは多くの研究
で共通してうつ病など心理的不適応の危険因子として広く認められている。しかし、パーソナリ
ティの特徴が心理的不適応を起こすメカニズムについては明らかにされてこなかった。本研究は、
自己志向性の低さというパーソナリティ特徴を持つ個人が、ストレスに暴露された際に、不適切
なコーピング行動を取ることによって状況をさらに悪化させ、やがては心理的不適応状態に至る
可能性を示唆した。これは今までにない報告であり、今後追認すべき価値のある所見である。
課題優先コーヒ。ングは、低い新奇性探求と高い自己超越性、高い協調性とによって有意な関連
が予測された。低い新奇性探求は熟考や組織化を特徴とする、また高い自己超越性は成熟したパ
ーソナリィティが有する特徴とされており、人生の満足度や適応状態の高さを特徴とする。また
高い協調性は社会的な協調性、社会的受容野、寛容性が高いということであり、これらの特徴が
課題優先コーピングを予測しているといえる。先行研究において、課題優先コーピング・スタイ
ルは、適応的な健康変数と関連があるとされてきた(Endler&P訂keら1990a;1990b;EndleらParkeら
&Butcheら1993;MilleらBrod購Su㎜e鵬1988;P訂kes,1990)。一方で、自己志向性は、掬うっ、
不安と負の関係がある(Matsudaira et al.2006)。これらのことから、われわれは、自己志向性が
高いほど課題優先コーピング・スタイルをより使いやすいであろうと予想していたが、この予想
60
は否定された。今回のデータでは自己志向性と課題優先コーピングとに有意な関連はなかった。
従って、心理的不適応を惹起する要因は、「課題優先コーピングを使わない」ことではなく、む
しろ「情緒優先コーピングを使う」ことであると推測できる。
ところで、回避優先コーピングは、高い報酬依存によって予測された。回避優先コーピング
については、たとえば、友人を訪問するとか、友人に電話をするとか、信頼する人に相談すると
かというような社会的な気晴らしや気分転換(social diversion−odented coping)のコーピング行
動を含んでいるために、愛着や思いやりや依存的というような、報酬依存の傾向が高い人の方が、
そうでない人よりもこのコーピング・スタイルをとりやすいのかも知れない。
自己志向性が環境で規定されるとするCloningerらの当初の仮説を信じれば、次に解明すべき
点は、これまでの人生の環境のどの部分が、低い自己志向性や情動優先コーピングを導いている
かである。われわれはすでに、児童;期にうけたneglectが情動優先コーピングに関連しているこ
とを見出した(Shikai, Shono,:Naga砥&Kitamura,2007b)。また、自己志向性が児童期の被養育体
験で規定されているという研究も多い(Kitamur亀&Kishida,2qO5;Kitamura, Tomo砥珊ima,
Sakamoto, Ta鍛aka,&Iwata,2002;Ono, Ybshimura, Mizushima, Manki, Yagi, K:anb亀Nat㎞,&Asai,
1999;Re i, Samuels, Eaton, Bienvenu, Costa,&Nestadt,2002;Ruchkin, Eisema㎜, Hagg16£&
Cloninge坦998)。また、被養育体験が成人になってからの親密な関係の維持に寄与していること
も報告されている(Truant, Herscovitch,&Lohrenz,1987;Levy, Blatt,&Shaveら1998;Ponce,
williams,&Allen,2004)。児童期の各種の体験が、どのような経路で、パーソナリティ、コーピ
ング、そしてストレス下での心理的不適応に至るかについての総合的研究は緒についたところで
ある。また、3つのコーピング・スタイルがそれぞれ気質により、規定されているという点は非
常に興味深い。同時に情動優先コーピングが低い自己志向性、課題優先コーピングが高い協調性
と高い自己超越性に予測されるという結果は、たとえば、認知行動療法(Lutgendor£Anto1オ,
丘onson, Sta∬, Costeno, Zucke㎜an, Klimas, Fletch賦&Sc㎞eidemlan,1998)や対人関係療法
(Zlotnick, Joh血so!ちMi11eらPealstein,&Howard,2001)、マインドフルネス認知療法(Brodedck,2005;
Carlson, Ursuliak, Goodey;Angen&Speca,2001;Spaega, Carlso穐Good{私&Ange穐2000)というよ
うな治療技法によって、情動優先:コーピングを少なくしたり、課題優先コーヒ。ングを多く使える
ような操作をすることによって、抑うつや不安に対する介入や治療、予防の効果をあげることが
可能であるといえるかもしれない。ロービング・スタイルとパーソナリィティの関係をよく理解
することは、介入、治療における重要な視点のひとつといえよう。
61
第5章
結論
本論文では、認知的なストレス理論に基づくコーピングの概念に焦点を当てて、コーピングと、
セルフ・エフィカシー、ストレスフルなライフ・イベント、パーソナリィティが、喰うつ、不安
とどのように関連しているのかを調べることを目的に3つの研究を行い、その検証・考察を行っ
た。それらの結果を要約すると図5・・1のようになる。
従来から指摘されているように、情動優先コーピングが抑うつと不安に対して大きな影響を持
つことが明らかになった。また情動優先コーピングに対して、セルフ・エフィカシーが抑制効果
をもつこと、ストレスフルなライフ・イベントに対する脅威の程度は情動優先:コーピングを予測
すること、情動優先コーピングはパーソナリィティの気質部分である損害回避と、性格の部分自
己志向性に規定されていることが明らかになった。加えて、結果としての抑うつと不安に至る過
程は異なっており、その類似性と相違性が議論された。
第2章で報告した研究1では、セルフ・エフィカシーとコーピングが抑うつ、不安とどのよう
な関係にあるのかをみた。セルフ・エフィカシーが低い人は、そうでない人よりも情動優先コー
ピングを取りやすい。そのために情動優先諏一ビングを経由して抑うつ的であり、不安な状態に
あること、また直接的にも、抑うつを起こしやすいことが明らかになった。
第3章で報告した研究2では、コーピング、ストレスフルなライフ・イベントに対する脅威度
と、抑うつ・不安との関連性を検証した。同じようなライフ・イベントが起こったときに、より
ストレス度が強いと受け止めた人ほど、情動優先コーピングを取りやすく、その結果不安を引き
起こしやすく、抑うつ気分を起こしやすいことが明らかになった。また出来事が起こる前にすで
に抑うつ気分があると、ライフ・イベントはよりストレスフルに感じやすく、ライフ・イベント
が起こったあとの抑うつ気分も強くなる。ライフ・イベントが起こる前に不安である人は、ライ
フ・イベントにさらされた後も不安であり、情動優先コーピングを取りやすい、そしてそのコー
ピングをとるがゆえに不安になるということが明らかになっている。
62
ストレスフル
ライフ・イベント
抑うつ
抑うつ
損害回避
動優先コーピング
不快気分
自己志向性
コーピング行動
セルフ・エフィカシ
回避優先コーピング
不安
不安
図5−1本研究の要約
63
第4章で報告した研究3では、コーピングと、パーソナリィティの気質と性格部分との関連性
が検討された。損害回避が高く、自己志向性が低いと情動優先コーピングを取りやすいことが示
唆され、新奇性探求が低く、強調性が高く、自己超越性が高いと、課題優先コーピングをとりや
すいことが明らかになっている。回避優先コーピングは報酬依存と関連があった。
このようにパーソナリィティの気質部分がそれぞれ3っのコーピングと関連していたこと、そ
してまた後天的に成長していくと考えられている、性格部分の自己志向性と、情動優先コーピン
グとが関連していることは大変に興味深い結果である。われわれは、すでに親の養育態度と思春
期のこどもの自己志向性とが関連しているとの報告を行っている。養育環境や社会的な教育環境、
治療や介入の環境整備を通して、自己志向性を高め、情動優先コーピングを減らせるような操作
が可能になり、抑うつや不安という問題を減らせるのかもしれない。
今回の研究にはいくつかの限界がある。1つはサンプルサイズが小さかったこと、特に縦断的
に2時点の照合をすることが困難なケースが多くあった点である。2つめに、看護学生を対象に
したことから、男女の分布に偏りがあり、研究2と3では、女性のみを対象にした。このことか
ら性差の影響を検証することができなかった。3つめは、今回使用した尺度には、相互に混同し
た項目が含まれるという批判があることである。今後のコーピングと抑うつ、不安の研究には、
大きなサンプルサイズ、臨床、非臨床を含めた多様なサンプルの検討、男女差の検討、洗練され
た尺度の検討、先行研究や臨床結果をふまえた、ストレスと情動の定義の明確化、コーピング過
程に関するより多くの因子の多変量的な研究、そして社会的・心理的・生理生物的な統合理論モ
デルの検討が期待される。
概観してきたように、心理的ストレス・コーピングの過程は大変複雑で多面的である。しかし、
この過程の検討は、意識化ができること、変容が可能であること、環境との関係性を資源として
使えるという3点において、治療、介入に有効性・有用性を発揮するだけでなく、疾病予防の視
点からも有望であると考えられる。
64
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80
使用調査票
(第1波)
ストレス対処に関する調査
アンケートのお願い
厳しく困難な出来事に出会った時、対処の方法は個々人で違います。困難な出来事に
対して上手に対処することによって自己を深める人もいれば、反対に心理的に気分の問
題を引き起こす人もいます。気分の問題を引き起こすことなくより良い対処をするには
何が大事なのかを調べるために、看護学生の方々に臨床実習の前後の2回にわたりアン
ケートをお願いいたします。
臨床実習では学内での授業とは違い多様な心理的社会的な対応が要求されますが、そ
れらに対処をするときにこころは様々に変化をします。個々人によって異なる対処の結
果こころの変化にも差が表れます。こころに不調をきたすことなく、臨床実習を充実し
た有意義な体験にするには何が影響するのかを探る大切な調査です。是非とも皆様のご
協力を頂きたく、アンケートへの参加をお願い申し上げます。
アンケートの結果は厳重に管理をし、本研究以外で使用されることはありません。学
校当局に個人情報を開示することはありません。参加に同意をいただいた方には2時点
で記入をお願いするために学生番号をお書きいただきますが、傾向を見るためのもので
あり個人の特定をするものではありませんのでご安心ください。
不参加であっても不利益が生じることはございませんので、アンケートの参加、不参
加は自由にお決めください。
熊本大学大学院 医学薬学研究部
環境社会医学専攻 環境生態学講座
臨床行動科学分野.
鹿井 典子
北村 俊則
連絡先:熊本市本荘1−1−1
E−mail shikal h er ocn ne‘
82
ストレス対処に関する調査
アンケートに参加の方、不参加の方ともに、以下の項目にご記入をお願いいたします。
1. あなたの性別は?
1.男性
2,女性
2. あなたの年齢は? (
3, コーヒーは1日 (
4, タバコは1日 (
)才
)杯
)本
5. アルコールは (時々、
毎日 ) 何を (
)m1
6. アンケートの参加に
1.同意します。
2.同意しません。
同意していただいた方は学生番号を下記に記入のうえ、次のページへお進みください。
学生番号 1
】
83
最近のご様子について
最初に次の20の質問について4つの答えのうち、あなたのこの1週 の様子に最も近い数字に。印を
つけて下さい。
あなたはこの1週間...
Z緊張感を感じる。
1
2
ほとんどいつも
3
たいてい
4
ときどき
全くない
2以前楽しんでいたことが今でも楽しい。
1
以前と全く同じ位
以前ほどには
2
yしい
少ししか
3
4
yしくない
yしくない
全く楽しくない
3.まるで何かひどいことが今にも起こりそうなおそろしい感じがある。
1
非常にはっきりあっ
あるが、ひどくは
2
3
ネい
ト、かなりひどい
わずかにあるが、
4
Cにならない
全くない
4.笑うことができる。いろいろなことのおかしい面が理解できる。
1
いつもと同じ程度にで
2
ォる
今は以前ほどには
3
ナきない
明らかに今は以前
4
ルどできない
全くできな
「
5.くよくよした考えが心に浮かぶ。
1
2
ほとんどいつも
時折りあるが、
3
たいてい
4
p繁にはない
ほんの時々しかない
6機嫌(きげん)が良い。
1
全くそうではない
2
しばしば
3
4
時々そうだ
サうではない
ほとんどいつもそう
セ
Zのんびり腰かけて、そしてくつろぐことができる。
1
2
必ずできる
たいていできる
全くできな
3
しばしばできない
4
3
ときどき
4
全くない
4
とても頻繁に
「
&まるで考えや反応がおそくなったように感じる。
1
2
ほとんどいつも
とても頻繁に
免胃が気持ち悪くなるような一種おそろしい感じがする。
1
2
全くない
3
ときどき
かなり頻繁に
10,自分の身なりに興味を失っている。
1
明らかにそ
うだ
自分の身なりに充
自分の身なりに充
2
分な注意を払って
分な注意を払って
3
いないかもしれな
いない
い
84
自分の身なりに今まで
4
と同じ程度に充分な注
意を払っている
皿まるで始終動きまわっていなければならないほど落ちつきがない。
1
2
非常にそうだ
余りそうではな
3
かなりそうだ
4
「
全くそうではない
12,これからのことを楽しみにしている。
1
以前と同じ程度に楽
以前よりは
2
オみにしている
明らかに以前よ
3
竄竢ュない
闖ュない
かなり頻繁に
3
ほとんど楽しみに
4
オていない
13.急に不安に襲われる。
1
2
とても頻繁に
ごくたまにしかな
4
「
全くない
14良い本やラジオやテレビの番組を楽しめる。
1
2
たいてい楽しめる
たまにしか楽しめ
3
ときどき楽しめる
ネい
4
めったに楽
オめない
1工のんびり腰かけて、そしてくつろぐことができない。
1
2
必ずできる
3
たいていできる
しばしばできない
4
全くできない
16以前楽しんでいたことが今では楽しくない。
1
以前と全く同じ
以前ほどには
2
ハ楽しい
少ししか
3
4
yしくない
yしくない
全く楽しくない
1Z笑うことができない。いろいろなことのおかしいさが理解できない。
1
いつもと同じ
度にできる
2
今は以前ほどには
3
ナきない
萌らかに今は以前
4
ルどできない
全くできない
1&機嫌(きげん)が悪い。
1
2
全くそうではない
しばしばそう
3
時々そうだ
ナはない
4
ほとんどいつもそうだ
玖これからのことを楽しみにしていない。
1
以前と同じ程度に楽
以前よりは
2
明らかに以前よ
3
竄竢ュない
オみにしている
闖ュない
4
ほとんど楽しみに
オていない
2a良い本やラジオやテレビの番組を楽しめない。
1
たいてい楽しめる
2
ときどき楽しめる
85
3
たまにしか楽しめな
「
4
めったに楽し
゚ない
普段のあなたのご様子について
以下には、みなさんがご自分の態度、考え方、関心のあること、その他の個人的な感情を表すため
に使うことのある文が記載されています。これらの文に、あなたがどのくらいあてはまるかを4つ
の答から1つ選んで、その数字を○で囲んで下さい。正しい答えとか間違った答えはありません。あ
なた自身の意見と感じ方をお答え下さい
全然
?トはまらない
1
あまり
?トはまらない
少し
とても
?トはまる
2
?トはまる
3
4
1
時間を無駄にしても、スリルのために新しいことをやってみる
1
2
3
4
2
他の人が心配するような状況にあっても、私には金て上手くゆくだろうという
1
2
3
4
自信がある
3
まわりの環境のせいで、自分が犠牲になっていると感じることがある
1
2
3
4
4
自分とはかなり違うタイプの人のことをありのまま受け入れることができる
1
2
3
4
5
私を傷つけた人に、仕返しをするのは楽しい
1
2
3
4
6
自分の人生には臼的や意味がほとんどないと感じることがある
1
2
3
4
7
皆のためになるような問題の解決策を見つける手助けをすることが好きだ
1
2
3
4
8
今よりもっと頑張れるだろうけれど、それほど一生懸命やる必要はないと思う
1
2
3
4
9
慣れない環境では緊張したり心配したりする
1
2
3
4
やり方を決めるときは、以前にどうやって決めたかを考えずその時の気分で決
1
2
3
4
10
める
11
人の希望に従うよりも、自分自身のやり方で物事を進める
1
2
3
4
12
自分と違う考えをもっている人々はあまり好きではない
1
2
3
4
13
たとえ古くからの友達の信頼を失うとしても、自分が金持ちや有名になるため
韮
3
4
2
には、法に触れないかぎり何でもする
14
どちらかというと控えめで落ち着いている
1
2
3
4
15
自分の経験や感情を自分の中にしまい込むよりオープンに友達と話し合うこと
1
2
3
4
が好きだ
16
17
精力がなく、人よりも早く疲れてしまう
「自分のしたいことができる自由」というものをめったに感じない
1
3
1
3
18
自分のことと同じくらい他の人の気持ちを考える
1
3
19
初対面の人はどうも信用できないので、面識のない人に会うのをな
1
3
るべく避けている
86
20
出来るだけ人を喜ばすことが好きだ
1
2
3
4
21
「自分が他の人よりも頭が良かったらなあ」と思うことがある
1
2
3
4
22
他の人がとっくにあきらめるようなときでも一度始めたことは辛抱強く続ける
1
2
3
4
23
自分の問題を解決してくれる人が現れないかと期待することがある
1
2
3
4
24
現金をすっかり使い果してしまうことがある
1
2
3
4
25
リラックスしているときに、不意に良いアイデアが浮かぶことがある
1
2
3
4
26
他の人が私をどう思うかあまり気にかけない
1
2
3
4
27
すべての人を満足させることは無理なので、他の人の希望にかかわらず自分自
1
2
3
4
身が欲しいものを手に入れる努力をしている
28
私の考え方を受け入れない人には我慢できない
1
2
3
4
29
あらゆるものが、一つの生命体の一部であると思えるほど、自分が自然と大変
1
2
3
4
強く結びついていると感じることがある
30
面識のない人と会う時には、他の人よりも恥ずかしがり屋であると思う
1
2
3
4
31
他の人よりも情にもろい
1
2
3
4
32
私にはこれから何が起ころうとしているのかがわかるときがある
i
2
3
4
33
誰かが、どんな方法にせよ、わたしのことを傷つければ、仕返しをするように
1
2
3
4
している
34
私の態度はコントロールできない力によって決められている
1
2
3
4
35
他の誰よりも強かったらなあと思うことがある
1
2
3
4
36
物事を決める前には良く考えるようにしている
1
2
3
4
37
たいていの入よりも努力するほうだ
1
2
3
4
38
身の危険を感じるような時でも、たいてい落ち着いていられる
1
2
3
4
39
自分のことを自分でできないような人を助けることは賢明だと思わない
1
2
3
4
40
他の人が自分に不公平に接しているからといって、自分もその人を不公平に扱
1
2
3
4
3
4
ったなら、心の平和は保てない
41
まわりの人が自分の気持ちを私に話してくれる
匪
42
自分のことを、何かもっと大きなものの一部のように感じることがある
1
2
3
4
43
言葉では説明できないような、他の人との精神的なつながりを感じる
1
2
3
4
44
規則などないままで物事を進められると良い
1
2
3
4
45
初封面の人と会うとき、たとえその人が親切でないと人から聞いていても、私
笠
3
4
2
2
はいつものように振る舞えるだろう
46
起きるかもしれないトラブルについて他の人よりも心配している
2
3
4
47
決心する前にあらゆる事柄を十分に検討する方だ
2
3
4
48
スーパーマンのような特別な力があったらなあと思うことがある
2
3
4
49
他の人が私をコントロールしすぎている
2
3
4
87
50
自分那学んできたことを他の人と分かち合うことが好きだ
1
2
3
4
51
私の嘘や誇張を他の人に信用させることが出来る
1
2
3
4
52
私の人生はどんな人間よりも強い霊的な力に導かれていると感じることがある
1
2
3
4
53
現実的で、感情では行動しない人間だと言われている
1
2
3
4
54
情に訴えられると弱い方だ
1
2
3
4
55
物事を出来る限り立派にやりたいので、たいていの人よりも一生懸命やってい
.1
2
3
4
る
56
私には欠点がとても多いので、自分のことを大好きにはなれない
1
2
3
4
57
時間がないので、自分の問題を長い臼で見た解決方法を見つけられない
1
2
3
4
58
どうしていいのかわからずに、問題を処理できないことがある
1
2
3
4
59
お金は貯めるよりも使うほうが好きだ
1
2
3
4
60
話を大きくして、面白くしたり、人をからかったりするのが得意である
1
2
3
4
61
人前でうろたえるようなことや、屈辱を受けたりするようなことがあっても、
1
2
3
4
1
2
3
4
すぐそれを忘れてしまう
62
いつものやり方を変えようとすると、緊張したり、疲れたり、心配になったり
するので、とても変えられない
63
きちんとした理由がなければ今までのやり方を変えない.
1
2
3
4
64
他の人が心配そうにしているときでも、いつも気楽でリラックスしている
1
2
3
4
65
悲しい歌や映画はとても退屈だ
1
2
3
4
66
自分の意志に反することをするよう強いられることがある
董
2
3
4
67
誰かに傷つけられたとき、その人に仕返しするよりも親切にしたい
1
2
3
4
68
自分のしていることに夢中になりすぎて、まわりが全く気にならなくなること
1
2
3
4
がある
69
私の人生には意義がないと思う
1
2
3
4
70
他の人が危険を感じないような場合でさえ、慣れない状況では緊張し心配して
1
2
3
4
たいていは物事をあまり深く考えず、直感に従う
1
2
3
4
η
私は独立心が強すぎると思われることがある
1
2
3
4
ぢ
自分の周りの全ての人との精神的、あるいは情緒的な強いっながりを感じるこ
1
2
3
4
1
2
3
4
しまう
・
とがある
η
相手の立場になって考えるようにしているので、その入の立場を本当に理解す
ること溺できる
88
75
私の人生において、公正さとか誠実さというようなことはあまり役に立たない
1
2
3
4
76
他の人より金を貯めるのが上手だ
1
2
3
4
77
何でもきちんと秩序正しく物事をやることにこだわる方だ
1
2
3
4
78
ほとんどすべての社会的な状況下でやっていける自信がある
1
2
3
4
79
自分の内心をめったに人に教えないので、私の気持ちは友達でさえ理解しにく
1
2
3
4
いだろう
80
敵の苦しむ様子を想像するのが好きだ
1
2
3
4
81
人よりも精力に溢れていて疲れにくい
1
2
3
4
82
友達から「全てうまく行くよ」と言われても、心配になって、やっていること
1
2
3
4
を途中で中止することがある
83
他の人よりも周囲への影響力があればいいのにと思う
1
2
3
4
84
チームのメンバーは、自分の正当な分け前をめったにもらえないものだ
1
2
3
4
85
他の人を喜ばせるために特に努力しようという気はない
1
2
3
4
86
初対面の人と会うのは全く恥ずかしくない
1
2
3
4
87
自分の時間のほとんどを、私にとってはそれほど重要ではないが必要なことを
1
2
3
4
するのに費やしている
88
道徳上の善悪が、ビジネスに関する決定に大きな影響力を及ぼすとは思わない
1
2
3
4
89
他の人の経験をより良く理解するために、自分自身の判断は考えないようにし
1
2
3
4
ている
go
私のいつものやり方では、価値のある目的を達成するのが難しい
1
2
3
4
91
世界をより良くするため、戦争や貧困、不正を防ぐよう努力をしている
1
2
3
4
92
誰かが先頭に立って物事を進めるのを待っているのが好きだ
1
2
3
4
93
他の人の意見をいつも尊重する
1
2
3
4
94
私は、自分で定めたいくつかの目的に沿った行動をしている
1
2
3
4
95
他の人の成功を手助けすることは馬鹿げている
1
2
3
4
96
私は深い付き合いを好まない
1
2
3
4
97
悲しい映画を見ると、他の人よりも泣いてしまいやすい
1
2
3
4
98
軽い病気やストレスから回復するのが人よりも早い
1
2
3
4
99
うまく逃げ切れそうだと思えば規則や取り決めなどは無視すること
1
2
3
4
1
2
3
4
㌧
がある
100
誘惑の多い状況でも自分を信用できるように、良い習慣を培う訓練
が必要だ
101
他の人が今ほど話をしなければいいのに思うときがある
1
2
3
4
102
たとえ、その人がとるにたらないか、悪い人間にみえたとしても、
1
2
3
4
1
2
3
4
誰もが尊厳や尊敬をもって扱われるべきである
103
やるべきことが出来るように早く決定を下すことが好きだ
89
104
他の人が危険と考えるようなことでも簡単にやってみせる自信がある
1
2
3
4
105
新しい方法を探し求めることが野きだ
1
2
3
4
106
遊びのためにお金を使うよりも、お金を貯め込むほうが好きだ
1
2
3
4
107
神聖ですばらしい霊的なカに触れたように感じた経験がある
重
3
4
108
存在する全てのものと一体感を感じ、大いなる喜びの瞬間を経験したことがあ
1
2』 3
4
2
る
109
たいていの人は私より物事に対処するのが上手だ
1
2
3
4
110
自分が全ての生命の源である霊的な力の一部分であると感じることがある
1
2
3
4
111
友達と一緒にいる時でも、あまり心を開きすぎないほうが良い
1
2
3
4
112
私の振る舞いは、今では自分の主義と目的に沿っていると思う
1
2
3
4
113
全ての生物は、完全には説明できない何か霊的な秩序やカに依拠していると信
1
2
3
4
1
2
3
4
じている
114
「ありふれたものを見ているときに、まるでそれを初めて新鮮に見ているよう
な気がする」というような素敵なことが起こることがある
115
慣れない事をする場合はたいてい緊張したり心配したりする
1
2
3
4
116
自分の能力以上にやり遂げようとすることがある
1
2
3
4
117
たとえ、結果的に自分が苦しむことになると分かっていても、強い誘惑に打ち
1
2
3
4
かつことはできない
118
誰かが苦しんでいるのを見るのは嫌だ
1
2
3
4
119
取り乱している時は、一入でいるよりも友達がそばにいる方が良い
1
2
3
4
120
誰よりも外見が良かったらなあと思う
】L
2
3
4
121
古い友達に再会するのと同じくらい、春に花が咲くのがうれしい
1
2
3
4
122
私は難しい局面を私にとっての挑戦や好機だとみなしている
1
2
3
4
123
私のまわりの人は、私のやり方を学ばなくてはならない
1
2
3
4
124
軽い病気やストレスの後でさえも、たいていQ人より元気がある
1
2
3
4
125
スリルがあることを探し求めることが好きだ
1
2
3
4
126
長い間あまりうまく行かない場合でも、よく何遍も同じことを繰り返してやる
1
2
3
4
127
自分でやったことの結果に満足しており、別にこれ以上立派にやりたいとは思
1
2
3
4
っていない
128
取り乱したりフラストレーションを感ずることはまずない。何かうまく行かな
1
2
3
4
い時にはすぐ別のことに切りかえている
129
自分カミ思ったよりも多くの時間がかかりすぎるなら、仕事
1 2 3 4
を放り出してしまうことが多い
130
1 2 3 4
たいていの人に比べて完全主義者だ
90
対処方法について
いろいろな出来事について対応のしかたは人によってさまざまです。苦しくて、つらい出来事が起こったときのいろいろ
な対処方法のリストを下に掲げました。苦しくて、つらい状況が起こったときに、それぞれの対処方法を自分がどれくら
い用いるか、もっともあなたに当てはまる番号ひとつに。をつけてください。
湾もそεている
1
もっと上手に時間の予定を立てる
1
2
3
4
5
2
問題に焦点を当てて、どうすれば解決できるかを考える
1
2
3
4
5
3
以前の良かった頃のことを考える
1
2
3
4
5
4
他の人と一緒にいるようにする
1
2
3
4
5
5
グズグズしていることで自分を非難する
1
2
3
4
5
6
自分がベストだと思うことをする
1
2
3
4
5
7
体のアチコチ溺痛いことにとらわれる
1
2
3
4
5
8
こんな状況におちいったことで自分を非難する
1
2
3
4
5
9
ウインドウ・ショッピングする
1
2
3
4
5
10
何を優先すべきかをはっきりさせる
1
2
3
4
5
11
寝ようとする
1
2
3
4
5
12
好物の食べ物やスナックを買う
1
2
3
4
5
13
うまく対処できないのではないかと不安に思う
1
2
3
4
5
14
非常に緊張する
1
2
3
4
5
15
類似の問題を今までどのように解決してきたかを考ネる
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
16
17
問題は本当は自分に起こっていないのだと自分に言いきかせ
謔、とする
今の状況について余りに感情的になっていると自分を非難
キる
18
食事か喫茶に外出する
1
2
3
4
5
19
腹が立っ
1
2
3
4
5
20
何か買い物をする
1
2
3
4
5
21
行動の方針をたてて、それに従う
1
2
3
4
5
91
22
何をすべきかわかっていないことで、自分を非難する
1
2
3
4
5
23
パーティに出かける
1
2
3
4
5
24
状況を理解しようと努力する
1
2
3
4
5
25
身がすくんで、何をすべきかわからなくなる
1
2
3
4
5
26
直ちに改善策をとる
1
2
3
4
5
27
出来事をふりかえり、失敗から学ぶ
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
28
何が起こったか、あるいは自分がどう感じたかを変更でき
黷ホと望む
29
友人を訪問する
1
2
3
4
5
30
何をしようか心配する
1
2
3
4
5
31
特別な人と時間を過ごす
1
2
3
4
5
32
散歩する
1
2
3
4
5
33
そんなことは2度と起こらないと自分に言い聞かせる
1
2
3
4
5
34
自分の力量不足に焦点を当てる
1
2
3
4
5
35
自分が尊重できる助言をくれる人に話す
1
2
3
4
5
36
何か反応する前に問題を分析する
1
2
3
4
5
37
友人に電話する
1
2
3
4
5
38
怒る
1
2
3
4
5
39
物事の優先順位を修正する
1
2
3
4
5
40
映画を見る
1
2
3
4
5
41
状況を支配下に置く
1
2
3
4
5
42
43
物事をなしとげるためにより一層努力する
1
2
3
4
5
問題に対していくつかの異なった解決を考える
1
2
3
4
5
44
45
休みや休憩をとって、状況から離れる
1
2
3
4
5
人にやつあたりする
1
2
3
4
5
46
自分はできるのだと証明するために状況を利用する
1
2
3
4
5
47
48
事態を掌握できるように、考えを整理する
1
2
3
4
5
テレビを見る
1
2
3
4
5
92
考え方について
この文章は一般的な考えを表しています。それがどのくらいあてはまるかを教えて下さい。4つ
の答えから1つを選んで、その数字を。で囲んでください。
そう思う
そう思わない
自分が立てた計画はうまくできる自信がある。
1
2
3
4
5
しなければならないことがあっても,なかなかとりかからない。
1
2
3
4
5
3
初めはうまくいかない仕事でも,できるまでやり続ける。
1
2
3
4
5
4
新しい友達を作るのが苦手だ。
1
2
3
4
5
5
重要な目標を決めても,めったに成功しない。
1
2
3
4
5
6
何かを終える前にあきらめてしまう。
1
2
3
4
5
1
’2
3
4
5
1
.2
7
会いたい人を見かけたら、向こうから来るのを待たないでその人
フところへ行く。
8
困難に出合うのを避ける。
1
2
3
4
5
9
非常にややこしく見えることには、手を出そうとは思わない。
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
10
友達になりたい人でも.友達になるのが大変ならばすぐに止めて
オまう。
11
面白くないことをする時でも、それが終わるまでがんばる。
1
2,
3
4
5
12
何かをしょうと思ったら、すぐにとりかかる。
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
13
新しいことを始めようと決めても、出だしでつまつくとすぐにあ
ォらめてしまう。
14
最初は友達になる気がしない人でも、すぐにあきらめないで友達
ノなろうとする。
15
思いがけない問題が起こった時、それをうまく処理できない。
1
2
3
4
5
16
難しそうなことは、新たに学ぼうとは思わない。
1
2
3
4
5
17
失敗すると一生懸命やろうと思う。
1
2
3
4
5
93
18
人の集まりの中では、うまく振る舞えない。
1
2
3
4
5
19
何かしょうとする時、自分にそれが出来るかどうか不安になる。
1
2
3
4
5
20
入に頼らない方だ。
1
2
3
4
5
21
私は自分から友達を作るのがうまい。
1
2
3
4
5
22
すぐにあきらめてしまう。
1
2
3
4
5
23
人生の中で起こる闇題の多くは処理できるとは思えない。
1
2
3
4
5
このアンケートについてのご感想を自由にお書きください
以上で終わりです。
ご協力を心より感謝申し上げます。
94
(第2波)
ストレス対処に関する調査(2)
アンケートのお願い
前回は大変多くのアンケート項目にもかかわらず、熱心にお答えを頂きましたことに
心よりお礼を申し上げます。数ヶ月に及ぶ長期の臨床実習が終わり、各々に様々な感慨
をお持ちの事と思います。今回のアンケートは実習の体験を通して起こった変化の有様
を探るために、実習前の1回目のアンケートと一連で意味をなしており、大変貴重な資
料となりうるものです。是非とも皆様のご協力を頂きたく、アンケートへの参加をお願
い申し上げる次第です。同意をいただいた方には学生番号をお書きいただきますが2回
のアンケートを照合するものであり、個人を特定するものではありませんのでご安心く
ださい。アンケートの結果は厳重に管理をし、本研究以外で使用されることはありませ
ん。学校当局に個人情報を開示することはありません。不参加であっても不利益が生じ
ることはありませんので、アンケートの参加、不参加は自由にお決めください。
熊本大学大学院 医学薬学研究部
環境社会医学専攻 環境生態学講座
臨床行動科学分野
鹿井 典子
北村 俊則
連絡先:熊本市本荘1−1−1
E印mail shikal h er ocn ne
95
アンケートに参加の方、不参加の方ともに、以下の項目にご記入をお願いいたします。
1. あなたの性別は?
(1)男性
2, あなたの年齢は?
(
(2)女性
)才
3. アンケートの参加に
(1) 同意します。
(2)同意しません。
同意していただいた方は学生番号を下記に記入のうえ、次へお進みください。
学生番号 【
]1
この6ゲ月間の出来事について
1.
この6ヶ月間にあなたが体験したイやなこと、困ったこと、悪いこと、苦しかったり、
悲しかったりした事を思い出して、あなたにどれほどの影響を与えたかを考えてくださ
い。悪い影響がなかったら0点、悪い影響があったほど点数が高くなるとして0点から
100点の間で点数をつけてください。
(
)点。
2. 上記で0点以外の点をつけた方におたずねします。その内容はどのようなものですか。
(あてはまるものすべて数字にOをつけてください。)
(1) 学校や実習での人間関係。(2)家族関係。(3)自由にできる時間がない。(4)
学業、授業や成績のこと。(5)自分の健康、病気など。(6)家族の健康、病
気のこと(7)将来に関すること、生きがいなど。(8)経済的なこと。(9)
その他。
3. さしつかえなければ、上記の出来事を具体的にお書きください。
96
最近のご様子について
最初に次の20の質問について4つの答えのうち、あなたのこの1週間の様子に最も近い数字
に。印をつけて下さい。
あなたはこの1週間.。.
1.緊張感を感じる。
1
2
ほとんどいつも
3
たいてい
4
ときどき
全くない
λ以前楽しんでいたことが今でも楽しい。
1
以前と全く同じ位
以前ほどには
2
yしい
少ししか
3
yしくない
全く楽しくな
4
yしくない
「
ユまるで何かひどいことが今にも起こりそうなおそろしい感じがある。
1
非常にはっきりあっ
あるが、ひどく
2
わずかにあるが、
3
ヘない
ト、かなりひどい
全くな
4
Cにならない
「
4笑うことができる。いろいろなことのおかしい面が理解できる。
1
いつもと同じ程度
2
今は以前ほどに
明らかに今は以
3
ヘできない
ノできる
Oほどできない
4
全くできな
「
5くよくよした考えが心に浮かぶ。
1
2
ほとんどいつも
時折りあるが、
3
たいてい
ほんの時々しかな
4
p繁にはない
「
6機嫌(きげん)が良い。
1
全くそうではな
「
2
しばしば
3
Dそうではない
ほとんどいつもそ
4
時々そうだ
、だ
Zのんびり腰かけて、そしてくつろぐことができる。
1
2
必ずできる
3
たいていできる
しばしばできな
「
4
全くできな
「
&まるで考えや反応がおそくなったように感じる。
1
ほとんどいつも
2
3
とても頻繁に
4
ときどき
全くない
凱胃が気持ち悪くなるような一種おそろしい感じがする。
1
2
全くない
3
ときどき
かなり頻繁に
4
とても頻繁
ノ
1a自分の身なりに興味を失っている。
1
明らかに
そうだ
自分の身なりに
自分の身なりに
2
充分な注意を払
充分な注意を払
3
っていないかも
っていない
しれない
97
自分の身なりに今ま
4
でと同じ程度に充分
な注意を払っている
11.まるで始終動きまわっていなければならないほど落ちっきがない。
1
2
非常にそうだ
余りそうでは
3
かなりそうだ
全くそうではな
4
ネい
「
1λこれからのことを楽しみにしている。
1
以前と同じ程度}と
以前よりは
2
yしみにしている
明らかに以前
3
竄竢ュない
謔闖ュない
かなり頻繁に
3
ほとんど楽しみ
4
ノしていない
13,急に不安に襲われる。
1
2
とても頻繁に
ごくたまにしか
4
ネい
全くない
14良い本やラジオやテレビの番組を楽しめる。
1
たいてい楽しめ
ときどき楽しめ
2
3
たまにしか楽し
゚ない
めったに楽
4
オめない
1iのんびり腰かけて、そしてくつろぐことができない。
1
2
必ずできる
3
たいていできる
しばしばできな
4
「
全くできな
「
16以前楽しんでいたことが今では楽しくない。
1
以前と全く同
カ位楽しい
以前ほどには
2
少ししか
3
4
yしくない
yしくない
全く楽しくない
1Z笑うことができない。いろいろなことのおかしいさが理解できない。
1
いつもと同
じ程度にで
2
きる
今は以前ほどに
3
明らかに今は以
4
前ほどできない
はできない
全くできない
1&機嫌(きげん)が悪い。
1
2
全くそうではない
しばしばそ
3
時々そうだ
、ではない
ほとんどいつもそう
4
セ
1皇これからのことを楽しみにしていない。
1
以前と同じ程度に
以前よりは
2
明らかに以前
3
謔闖ュない
yしみにしている
竄竢ュない
2a良い本やラジオやデレビの番組を楽しめない。
1
たいてい楽しめる
2
ときどき楽しめ
3
たまにしか楽しめ
ネい
98
4
ほとんど楽しみ
ノしていない
4
めったに楽
オめない
対処方法について
いろいろな出来事について対応のしかたは人によってさまざまです。苦しくて、つらい出来事が起こったときのいろいろ
な対処方法のリストを下に掲げました。苦しくて、つらい状況が起こったときに、それぞれの対処方法を自分がどれくら
い用いるか、もっともあなたに当てはまる番号ひとつに○をつけてください。
1
もっと上手に時間の予定を立てる
1
2
3
4
5
2
問題に焦点を当てて、どうすれば解決できるかを考える
1
2
3
4
5
3
以前の良かった頃のことを考える
1
2
3
4
5
4
他の人と一緒にいるようにする
1
2
3
4
5
5
グズグズしていることで自分を非難する
1
2
3
4
5
6
自分がベストだと思うことをする
1
2
3
4
5
7
体のアチコチが痛いことにとらわれる
1
2
3
4
5
8
こんな状況におちいったことで自分を非難する
1
2
3
4
5 ・
9
ウインドウ・ショッピングする
1
2
3
4
5
10
何を優先すべきかをはっきりさせる
1
2
3
4
5
11
寝ようとする
1
2
3
4
5
12
好物の食べ物やスナックを買う .
1
2
3
4
5
13
うまく対処できないのではないかと不安に思う
1
2
3
4
5
14
非常に緊張する
1
2
3
4
5
15
類似の問題を今までどのように解決してきたかを考える
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
16
17
問題は本当は自分に起こっていないのだと自分に言いき.かせ
謔、とする
今の状況について余りに感情的になっていると自分を非難
キる
18
食事か喫茶に外出する
1
2
3
4
5
19
腹力泣っ
1
2
3
4
5
20
何か買い物をする
1
2
3
4
5
21
行動の方針をたてて、それに従う
1
2
3
4
5
99
22
何をすべきかわかっていないことで、自分を非難する
1
2
3
4
5
23
パーティに出かける
1
2
3
4
5
24
25
26
27
状況を理解しようと努力する
1
2
3
4
5
身がすくんで、何をすべきかわからなくなる
1
2
3
4
5
直ちに改善策をとる
1
2
3
4
5
出来事をふりかえ’閨A失敗から学ぶ
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
28
何が起こったか、あるいは自分がどう感じたかを変更でき
黷ホと望む
29
友人を訪問する
1
2
3
4
5
30
何をしようか心配する
1
2
3
4
5
31
特別な人と時間を過ごす
1
2
3
4
5
32
33
散歩する
1
2
3
4
5
そんなことは2度と起こらないと自分に言い聞かせる
1
3
4
5
34
自分の力量不足に焦点を当てる
1
2
3
4
5
35
自分が尊重できる助言をくれる人に話す
1
2
3
4
5
36
何か反応する前に問題を分析する
1
2
3
4
5
37
友人に電話する
1
2
3
4
5
38
怒る
1
2
3
4
5
39
物事の優先順位を修正する
1
2
3
4
5
40
映画を見る
1
2
3
4
5
41
状況を支配下に置く
1
2
3
4
5
42
43
44
45
46
47
48
物事をなしとげるためにより一層努力する
1
2
3
4
5
問題に対していくつかの異なった解決を考える
1
2
3
4
5
休みや休憩をとって、状況から離れる
1
2
3
4
5
人にやつあたりする
1
2
3
4
5
自分はできるのだと証明するために状況を利用する
1
2
3
4
5
事態を掌握できるように、考えを整理する
1
2
3
4
5
テレビを見る
1
2
3
4
5
.
100
F 2
考え方について
この文章は一般的な考えを表しています。それがどのくらいあてはまるかを教えて下さい。4つ
の答えから1つを選んで、その数字を。で囲んでください。
そう思う
そう思わない
まあそう思う
1
自分が立てた計画はうまくできる自信がある。
1
2
3
4
5
2
しなければならないことがあっても,なかなかとりかからない。
1
2
3
4
5
3
初めはうまくいかない仕事でも,できるまでやり続ける。
1
2
3
4
5
4
新しい友達を作るのが苦手だ。
1
2
3
4
5
5
重要な目標を決めても,めったに成功しない。
1
2
3
4
5
6
何かを終える前にあきらめてしまう。
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
7
会いたい人を見かけたら、向こうから来るのを待たないでその人
フところへ行く。
8
困難に出合うのを避ける。
1
2
3
4
5
9
非常にややこしく見えることには、手を出そうとは思わない。
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
10
友達になりたい人でも友達になるのが大変ならばすぐに止めて
オまう。
11
面白くないことをする時でも、それが終わるまでがんばる。
1
2
3
4
5
12
何かをしょうと思ったら、すぐにとりかかる。
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
13
新しいことを始めようと決めても、出だしでつまつくとすぐにあ
ォらめてしまう。
14
最初は友達になる気がしない人でも、すぐにあきらめないで友達
ノなろうとする。
15
思いがけない問題溺起こった時、それをうまく処理できない。
1
2
3
4
5
16
難しそうなことは、新たに学ぼうとは思わない。
1
2
3
4
5
17
失敗すると一生懸命やろうと思う。
1
2
3
4
5
18
人の集まりの中では、うまく振る舞えない。
1
2
3
4
5
101
19
何かしょうとする時、自分にそれが出来るかどうか不安になる。
1
2
3
4
5
20
人に頼らない方だ。
1
2
3
4
5
21
私は自分から友達を作るのがうまい。
1
2
3
4
5
22
すぐにあきらめてしまう。
1
2
3
4
5
23
人生で起きる問題の多くは処理できるとは思えない。
1
2
3
4
5
このアンケートについてのご感想を自由にお書きください
以上で終わりです。
ご協力を心より感謝申し上げます。
102
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