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光ストレージ市場と業界の 2004 年回顧と 2005 年見通し
市 場 動 向 光ストレージ市場と業界の 2004 年回顧と 2005 年見通し 藤原卓利 ( ふじわらロスチャイルドリミテッド ) ( まえがき ) 光ストレージ市場および業界の 2004 年に於ける状況を総括し、かつ 2005 年の状況の予測を試みる。光ストレージを パソコン用光ドライブ分野、民生 AV 分野および記録型光メディア分野に分けて分析する。 ( 全体概況 ) 2004 年の光ストレージ分野は、全体としては市場は伸び続けて好調であったが、夏前頃からほぼ全分野に渡って OEM 価格デフレが進行した為、下期にはメーカの事業採算が苦しさを増した。特に追記型 CD/DVD メディア・メーカは、OEM 価格の大幅な低下に加えて、ポリカーポネート樹脂値上がりの板挟みにあって採算的に極めて苦しい状況に陥った。 パソコン用光ドライブでは、コンビ・ドライブと記録型 DVD ドライブ市場が伸びたが、台湾メーカの記録型 DVD ドラ イブ生産が軌道に乗ってきた為、夏以降 OEM 価格低下が著しかった。記録スピード競争が加速し 2004 年下期には実 質的な限界スピードに達してしまった。次世代のブルーレーザ系光ドライブ市場が本格的に立ち上がるのは早くても 2 年以上先であることから、それまでの間は性能向上により価格を維持する手段が底をついた状況を余儀なくされる。 このため 2005 年は更に価格競争が激化する可能性が高い。記録型 DVD ドライブのフォーマット競争は、1 台のドライ ブで複数フォーマットをサポートする傾向が、2004 年にますます加速し、2004 年末までには単一フォーマットのみ をサポートした PC 用光ドライブは完全に姿を消す。2005 年には既に飽和したスピード競争に替わってフォーマット ・サポート競争が始まる可能性がある。その結果として総てのフォーマットをサポートしたスーパーマルチ・ドライブ が世界的に主流になる可能性が高まっている。 民生 AV 機器では、過去 3 年以上に渡って好調に伸びてきた米国の DVD プレーヤ市場が飽和現象を示し始めたため、 中国メーカが多数事業撤退を余儀なくされている。DVD ビデオ・レコーダは、日本市場では極めて好調な伸びが続い ている。ただし好調なのは日本市場のみであって、他の世界市場は芳しくない。特に米国市場に於いては、DVD+RW ベ ースのエントリー製品の実勢価格が年初の半分程度まで値下がりしたにも拘わらず、需要が伸びる気配が全くと言っ て良いほどに見られない。2005 年にはブロード・キャスト・フラッグ・システムがスタートし、DTV の録画はますます 難しくなる方向なので、需要が急増する見通しは全くない。DVD プレーヤの後継事業の位置づけを狙って DVD+RW ビデ オ・レコーダ分野に参入した台湾や中国メーカは、本命の米国市場で売れないため事業的に苦況に陥っている。また、 この新興メーカの立ち上がりを期待して生産した DVD+RW メディアの過剰在庫が発生し、2004 年秋には DVD+RW メディ アのみが極端な値下がりを示した。 記録型光メディアは、2004 年春に大幅な供給過剰体制となったことから OEM 価格が急落した。加えて原油価格の高騰 が原因で、ディスク製造コストの 50% 前後を占めるポリカーボネート樹脂の価格が上昇したため、CD-R メディア、追 記型 DVD メディア共に採算的に極めて厳しい状況となった。このため零細メーカの操業停止や事業撤退が相次ぎ、ま た追記型 DVD メディアの生産設備増強計画の見直しや発注済み設備のキャンセルが相次いだ。このため生産設備メー カまでもが 2004 年下期には事業的苦しさが増した。 以下に各製品分野毎に更に詳しく状況を記載する。 ( パソコン用光ドライブ分野の状況 ) 2004 年のパソコン自体の世界需要は年初に予想されていたよりは堅調であった為、特に上期はパソコン用光ドライブ 市場は比較的堅調であった。コンビ・ドライブと記録型 DVD ドライブの需要が伸び、その他のドライブは減少気味で あったため、メーカの生産は記録型 DVD に集中する傾向が強まった。昨年足かせとなった半導体レーザや光ピックア ップの供給不足問題が解消し、かつ台湾メーカの生産能力が整ってきたことから各メーカの生産が増加し OEM 価格競 争が激化した。最新製品である 16x 速度記録型 DVD ドライブでも OEM 価格は年初の半分程度の US$50 台まで値下がり IDEMA Japan News No.64 1 市 場 動 向 した。 予測 W rit able D V D M a 200 r k e t C om bi C D-R W S i 100 z e D V D -R O M C D-R O M 0 (M Units ) 1 9 9 9 2000 2001 2002 2003 2004 2005 図 1 パソコン用光ドライブの生産実績および 2005 年予測 また 2004 年以降は相対的にノート PC 市場が伸びることが予想されて居たため、主要メーカは比較的採算性の良いス リム・タイプ光ドライブの生産を増やした。しかしながら、2004 年前半に伸びたのは民生マルチメディア用ではなく 企業用パソコンの買い換え需要であったため、上期にはスリム・タイプ記録型ドライブが大幅な供給過剰状態となっ た。下期からマルチメディア・タイプのノート PC 市場が立ち上がり始めているので、スリム記録型光ドライブの対す る今後の需要見通しは比較的明るい。但し、値下がりしすぎたハーフ・ハイト CD-ROM、CD-RW、DVD-ROM ドライブ等の 生産を諦めスリム・ドライブに生産をシフトする台湾メーカが多いことから、スリム・コンビおよびスリム記録型 DVD ドライブの OEM 価格競争は 2005 年にますます激化する方向である。 記録型 DVD のフォーマット競争面では、2003 年から始まったマルチ・フォーマット・サポートの傾向が 2004 年にはま すます進展し、日本市場ではスーパ・マルチ、その他の世界市場では Dual RW DVD ドライブが主流となった。DVD-RAM や DVD-RW に引き続き、最後まで残っていた DVD+RW を含め単一フォーマットのみをサポートした PC 用光ドライブは 2004 年中に総て姿を消す事となる。しかしながらフォーマット競争はここで終わる訳ではなく、最終的には総てのド ライブが総てのフォーマットをサポートする方向に向かう可能性が高いと見られる。その理由は、自社製品を差別化 し価格を維持する為のスピード競争が飽和化してしまった為に残される差別化手段としては、ユーザがフォーマット を気にせずにドライブを購入できる " 総てをサポートしたドライブ " の方向に向かう可能性が高いからである。あ れだけメーカが死闘を繰り広げたフォーマット競争の結末は結局、総てのメーカが余計な開発負担とコスト負担を負 わされることで決着する可能性が高い。 片面 2 層追記型 DVD メディア (DL メディア ) の記録をサポートしたドライブは、ファームウエアの変更だけで対応 可能であるため、2004 年下期には殆どの記録型 DVD ドライブが DL DVD+R メディア記録をサポートした。また DVD フ ォーラムが DL DVD-R メディア規格を成立したため、2005 年初から DL DVD-R もサポートされる方向であり、最早 DL 追記型 DVD のサポートはドライブにとって差別化要素では無くなりつつある。寧ろ DL 追記型 DVD メディアの価格が 相変わらず単層追記型 DVD メディアの数倍〜 10 倍程度と高いことから、DL 追記型 DVD メディアのサポートをやめる 動きも出ている。 何れにしてもパソコン用光ドライブ業界は 2005 年〜 2006 年に極めて厳しい時期を迎える。特に価格抵抗力が弱い日 本メーカの事業に打撃が大きいものと判断される。業界全体で事業撤退や再編成が起こるものと思われる。この状況 はパソコン・メーカにとっても同じであり、パソコンを差別化する手段の空洞化を迎えることになる。この意味でも 次世代のブルー・レーザ系光ドライブ市場を少しでも早急に立ち上げる必要性が高まっている。この様な状況下での 新たなフォーマット競争は愚の骨頂と言える。 IDEMA Japan News No.64 2 市 場 動 向 ( 民生 DVD 製品分野の状況 ) この分野では DVD プレーヤと DVD ビデオ・レコーダが 2 大主要製品である。DVD プレーヤ市場は過去 3 〜 4 年間米国を 中心に極めて好調な伸びを続けて、年間 1 億台以上の市場規模になったが 2004 年春頃から ITC 提訴問題もあって米 国市場向け輸出が変調を示し始めた。2004 年クリスマス商戦をみても、米国の DVD プレーヤ市場は既に明らかに飽 和化し始めていると言える。このため既に中国メーカが 40 〜 50 社も倒産したと言われている。DVD プレーヤ用光ピ ックアップの OEM 価格も大幅に値下がりし、主として製造している日本メーカにも大きな影響が出始めている。また DVD プレーヤ用半導体チップ・メーカの数はますます増えており、2005 年に掛けてチップの OEM 価格はますます下が ると見られている。 150 予測 DVD DV C M a r 100 k e t S i z e D V D R eco rder 50 D V D P lay er 0 (単 位:M 台 ) 1 9 9 9 2000 2001 2002 2003 2004 2005 図 2 民生 DVD 製品の生産実績および 2005 年予測 発展途上市場では相変わらず年間 7,000 万台ものビデオ CD プレーヤが売られており、これらは何れは DVD プレーヤ にシフトしてくると思われるので、DVD プレーヤ市場は世界的に見ればまだ暫くは成長を続ける見通しである。但し 価格的には日本メーカには利益が期待できない水準で推移する見通しである。発展途上市場でプレーヤ価格差が差ほ ど無いにも拘わらず相変わらず画質が悪いビデオ CD の人気が高い背景は、安くなった CD-R メディアを使用して極め て安価なビデオ・タイトルが入手出来る為である。日本や韓国の人気 TV ドラマの 1 年分が数百円相当で売られている。 しかしながら 2004 年に追記型 DVD メディアの OEM 価格が一気に数分の 1 の水準まで値下がりしたことから、今後ビ デオ CD から DVD へシフトが進展する可能性が高い。 DVD ビデオ・レコーダは、日本市場のみが特異な活況を呈している。日本以外の市場では余り伸びて居らず、2004 年 市場規模予測は軒並み下方修正を余儀なくされている。2004 年春頃から 20 社以上の中国や台湾の新興メーカが、 DVD+RW ベースのエントリー・レベル DVD ビデオ・レコーダを一斉に米国市場に投入したが、全く売れないか売れても 直ぐに返品される状態である。同製品の実勢価格は当初の US$300 程度から約半値程度まで値下がりしたが、それで も米国市場で人気化する気配は全く出ていない。米国、韓国、台湾等ではもともと TV 番組の録画習慣が希薄なこと がこの理由として指摘されている。また米国市場向けとしては価格がまだ割高であること、また使いこなすことが難 しい事等も指摘されているが、DVD レンタルや HDD ベースの PVR (Personal Video Recorder) 等との競合の影響を受 けている事も考えられる。2005 年 7 月からは米国でも日本の CPRM と同様な DTV 番組の録画制限システム (Broadcast Flag) がスタートし、只でさえ買い控えに繋がるフォーマット問題に加え、ますます複雑なコピープロテクション問 題が絡んでくるので、この販売不振状況が急速に改善される見通しは全くない。 価格が相対的に安い DVD ビデオ・レコーダでさえこの状況であることから、次世代ブルー・レーザ系 HDTV ビデオ・レコ ーダの市場は当面日本のみに限定される見通しである。次世代光ディスクは、HDTV 番組の録画用デバイスとしてより は、HD 映画タイトルの再生環境作りから始まり数年掛けて記録型ドライブへ発展してゆくシナリオが最も現実的であ る。 IDEMA Japan News No.64 3 市 場 動 向 ( 記録型光メディア分野の状況 ) 記録型光メディア市場自体はコンスタントに伸び続けているが、メーカ側の生産設備状況に振り回されて OEM 価格が 大幅に変動していると言える。数量ベースでは 90 数 % を占める CD-R メディアと追記型 DVD メディアの事業は 2003 年に極めて好調であった。CD-R メディアの OEM 価格は年間を通じて上昇傾向を辿り 20¢ / 枚を上回るまでになった。 また追記型 DVD メディアは OEM 価格が US$1 以上を保ち利益率が 50% 以上を謳歌したメディア・メーカが多かった。こ の高収益を当て込んで 2004 年には大手メーカの大型生産設備が続々と立ち上がり、また高収益に刺激された新規参 入や生産再開した香港や台湾の中小メーカが導入した設備が一斉に立ち上がった為に、2004 年春頃から CD-R メディ アと追記型 DVD メディアの OEM 価格が急落を始めた。中小メーカの OEM 価格は、CD-R メディアが 8 〜 9¢ / 枚に、追 記型 DVD メディアが 15 〜 20¢ / 枚の水準まで落ち込んだ。同時に原油価格の高騰を背景にポリカーボネート樹脂価格 が値上がりしたため、CD-R メディアに至っては大手メーカでも採算割れ、追記型 DVD メディアで採算ぎりぎりの状況 となった。このため台湾の大手メーカは 2004 年秋に生産調整を行い若干の受給関係の改善傾向が見られている。今 後は下がりすぎた OEM 価格の修正努力が続くものと見られる。また、追記型 DVD メディアの OEM 価格が大幅に下がっ た事により、海賊を含む複製市場が大幅に伸び、追記型 DVD メディア市場は今後ますます増大するものと判断される。 20,00 0 予 測 R ew rit able D V D M a r k e t W r it e-Onc e D V D C D-R W 10,00 0 S i z e C D-R 0 (U n i t: M) 199 9 200 0 200 1 200 2 200 3 200 4 200 5 図 3 記録型光メディア市場枚数規模実績および 2005 年予測 光ドライブの性能アップに較べると記録型光メディアの性能アップは遅れ気味であるため、記録型光メディア分野に 於いては性能向上競争はまだ飽和化していない。記録型 DVD ドライブは殆どが 16x 速度になったが、追記型 DVD メデ ィアの 16x 速度化はまだこれからである。また DL 追記型 DVD メディアの生産歩留まり向上と大幅コスト低減および スピード・アップ等々、まだこれから挑戦すべき課題が多く残されているため、パソコン用光ドライブ分野に見られ る様な性能面での 2005 年問題は現在の処存在していない。追記型光メディア分野に於ける最大の問題は、市場や技 術問題ではなく、多数のメーカが存在しすぎる事による設備過剰問題である。 書換型光メディアでは、CD-RW メディアは 2004 年以降既に下降トレンドに入っており数年内に市場がほぼ消滅する見 通しである。CD-RW メディアと比較すると、書換型 DVD メディアは DVD ビデオ・レコーダでの需要がある為、比較的堅 調な市場がある。但し追記型 DVD メディアに較べると数分の 1 の市場規模である。前述の様に DVD+RW ベース DVD ビ デオ・レコーダの状況に振り回されて、DVD+RW メディアは 2004 年秋に大幅な過剰在庫問題を抱え、価格が大幅に下が っている。 IDEMA Japan News No.64 4