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スマートメータ導入に関する米国の動向と わが国における便益評価の課題

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スマートメータ導入に関する米国の動向と わが国における便益評価の課題
電力中央研究所報告
経
営
報告書番号: Y 0 9 0 2 8
スマートメータ導入に関する米国の動向と
わが国における便益評価の課題
背
景
近年、諸外国でスマートグリッド(注1)に関する取組みが活発化している。先行し
ている米国では、スマートメータ(注2)を、スマートグリッドを構築する重要な構成
要素の一つと位置付けており、その導入が進められている。一方、わが国において
も、スマートグリッド関連の議論が活発化する中、将来におけるスマートメータの
適用可能性について検討する必要性が出てきている。
目
的
米国におけるスマートメータ導入に期待される便益と現状の課題について調査を
行い、わが国においてこれらの便益を評価する上での課題を明らかにする。
主な成果
米国のスマートメータに関する文献調査を行い、以下のことを明らかにした。
1.米国におけるスマートメータ導入に期待される便益
米国におけるスマートメータ導入に期待される便益は、「社会的便益」「電力会社
の便益」
「消費者の便益」に整理できる(表 1)。
「電力会社の便益」のみで費用を上
回る場合、消費者に新たな費用負担は発生しない。しかし、費用が便益を上回る場
合、消費者の費用負担の正当性を明確にするため、
「社会的便益」を正確に見積もる
ことが重要となる。期待される社会的便益としては、①供給力不足の解消、②供給
信頼度の向上、③再生可能エネルギー電源と電気自動車等普及への対応、④省エネ
効果などが含まれる(表2)。しかし、③に対応する具体的手段が明らかではなく、
また各便益の定量的評価手法が確立されている訳ではないことが分かった。
2.わが国におけるスマートメータの便益評価の課題
わが国の電力系統は、エネルギー情勢の悪化など安定供給の阻害リスクが存在し、
負荷率向上の余地もあるため、需要調整の必要性は否定できない。スマートメータ
の適用も考えられるが、デマンドレスポンスの効果を把握しておらず、今後、実証
試験等により明らかにする必要があることが分かった。
今後の展開
スマートメータを使用したデマンドレスポンスの効果などを明らかにしたうえで、
スマートメータを使用しない代替手段も考慮しながら費用対効果を分析する。
表1
米国におけるスマートメータ導入に期待される便益
社会的便益
①供給力不足の解消
②供給信頼度・電力品質の向上
③ 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 電 源 と EV
(電気自動車)/PHEV(プラグイ
ンハイブリッド電気自動車)の普
及への対応
④省エネ効果
表2
社会的便益
①供給力不足
の解消
電力会社の便益
⑤設備の利用率向上、アセットマネ
ジメントの最適化
⑥検針業務の効率化
⑦操作業務の効率化
⑧盗電防止
⑨料金関連業務の改善
⑩新たなる料金メニュー適用時の
対応が可能
米国で期待されるスマートメータの社会的便益とわが国の現状・課題
米国の期待と現状・課題
わが国の現状・課題
長期的に需給逼迫の見通し。
長期的にも供給力不足は発生しない見通し。
デマンドレスポンスプログラムや電力使用実
態の「見える化」の推進、需給調整の高度化
等による分散型電源の普及促進により、特に
ピーク時間帯を中心とした需要の抑制が可能
になるものと期待している。
しかし、エネルギー情勢の悪化など安定供給
の阻害リスクが存在し、負荷率向上の余地も
あることから、需要調整の必要性については
否定できない。
現時点では、デマンドレスポンス、分散型電
源の普及率は低い。デマンドレスポンスの正
確な評価手法の確立や系統連系基準の整備な
どの課題が見受けられる。
②供給信頼度・
電力品質の
向上
消費者の便益
⑪選択可能な料金メニュー(価格、
サービス)の多様化
スマートメータを適用した対応も考えられる
が、デマンドレスポンス導入による効果を把
握しておらず、今後、実証試験等を通じて明
らかにする必要がある。
供給信頼度は低下傾向で配電自動化率も低
い。
配電自動化の進展等により、高い供給信頼
度・電力品質を維持している。
需要家単位に受電状態を監視することによ
り、停電事故や異常状態の把握から事故点の
特定、復旧までの迅速な対応が実現できるも
のと期待している。
スマートメータの導入により、低圧停電事故
の自動検知が可能となるため早期復旧が期待
できる。今後、この便益を定量的に評価する
必要がある。
スマートメータ導入箇所では既に供給信頼度
の向上に利用されているところもある。
③再生可能エ
ネルギー電
電 源 と
EV/PHEV の
普及への対
応
需給調整の高度化等により、再生可能エネル
ギー電源と EV/PHEV の大量連系への対応が
可能になるものと期待している。
しかし、現時点では、再生可能エネルギー電
源や EV/PHEV の普及率はいずれも低く、ま
た、大量連系時のシステム技術については研
究・開発段階であり、明らかになっていない。
電力使用実態の「見える化」やスマート家電
機器の制御を可能にすることにより、省エネ
の推進に期待している。
④省エネ効果
現在、スマート家電機器の普及促進に向け、
研究がなされている。
太陽光発電の大量連系が予想され、系統の安
定性等に対する悪影響の発生が懸念される。
特に「余剰電力の発生」が懸念され、この抑
制手段として、スマートメータを介して制御
情報を通信する手法も考えられる。今後、ス
マートメータを使用しない代替方策も考慮の
うえ、実現方法の検討や便益の評価が必要で
ある。
エネルギー資源に乏しいわが国にとって省エ
ネは必要不可欠の取組みである。
スマートメータを使用した電気使用実態の
「見える化」等を実現することにより、更な
る省エネが期待できる。スマートメータを使
用しない代替方策も考慮のうえ、実現方法等
の検討が必要である。
(注1) スマートグリッド:数多くの様々なデジタルコンピューティングや通信技術、サービスを電力供給イン
フラに追加して先進的な電力系統を構築する概念。
(注2) スマートメータ :時間帯別料金の適用を可能にするインターバル検針機能と、メータと電力会社間の
双方向通信機能を有するメータのこと。
調査報告
Y09028
担 当 者
連 絡 先
[非売品・不許複製]
キーワード:スマートメータ,スマートグリッド,分散型電源,太陽光発電,
費用便益
高山
正俊(社会経済研究所
エネルギー技術政策領域)
(財)電力中央研究所 社会経済研究所
Tel. 03-3480-2111(代)
E-mail : [email protected]
©財団法人電力中央研究所
平成22年5月
09−020
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