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Slide Master - 第 23回日本放射線腫瘍学会学術大会

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Slide Master - 第 23回日本放射線腫瘍学会学術大会
症例
前立線癌
新潟大学
放射線科
阿部 英輔
76歳男性
検診でPSA高値を指摘され泌尿器科を受診。
前立腺生検を行い、前立腺癌と診断。症状なし。
どんな治療をしますか?
①手術
②ホルモン治療
③放射線治療 ・・・ 外照射? 小線源治療?
でもその前に・・・
なぜ、前立腺癌を治療しないといけないのでしょうか?
どうやって治療方法を決めればいいのでしょうか?
前立腺の解剖
本日のABC:前立腺癌
A 前立腺癌の “住処” と “生涯”
~ 解剖、症状、自然史 ~
B 癌の “性格” を如何に判断するか
膀胱
中心領域( 5%)
移行領域(25%)
辺縁領域(70%)
~ 検査と診断・リスク分類 ~
C “悩む” 治療選択
前立腺の働き:
前立腺液を分泌。
精子の運動・保護に関与
精嚢
前部線維筋性間質
射精管
(
):前立腺癌発生頻度
~ 多彩な治療方法 ~
癌ができやすいのは 辺縁領域
前立腺癌の症状
癌と診断されて何も治療を行わないと・・・
前立腺癌の自然史
前立腺に1個の癌細胞が発生
27年後 癌の直径 0.5cm
精嚢
早期癌の多くは無症状
36年後 直径 1cm
進行すると
39年後 直径 2cm
(症状が現れ病院を受診)
→癌が増大して尿道を圧迫、閉塞
膀胱
→排尿困難、残尿感、頻尿、血尿、尿閉
さらに進行すると
癌
前部線維筋性間質
→リンパ節転移、骨転移 (胸腰椎、骨盤骨)
→腰痛、下肢のむくみ、背部痛
その5年後に 直径 5~6cm
(この頃に癌死)
前立腺癌の自然史は45年
診断がつくまでに約40年が経過
最終的には癌死に至る
臨床放射線別冊
前立腺癌 放射線治療のすべて (金原出版)
1
前立腺癌の自然史
振り返って・・・
76歳男性 症状のない前立腺癌。
仮に寿命が86歳であるならば・・・
あと10年生きられる。
前立腺癌の疫学
部位別がん死亡率の推移
日本国内では肺癌、胃癌、肝癌、
大腸・直腸癌に次いで5番目に多い。
あと10年間、前立腺癌があまり大きく
ならなければ症状も出ないし、前立腺
癌で死ぬこともない。
であるならば、、、、
前立腺癌を治療する必要はないかも
しれない???
臨床放射線別冊
前立腺癌 放射線治療のすべて (金原出版)
2020年には2000年に比べて2.8倍、
肺癌に次いで男性癌の2番目になると
予測されている。
国立がん研究センターがん対策情報センターHP
本日のABC:前立腺癌
前立腺癌には、
・積極的に治療を行わなくてもいい癌 (経過観察を行い治療時期を見極める)
・積極的に治療を行った方がいい癌
がありそうだ。
A 前立腺癌の “住処” と “生涯”
~ 解剖、症状、自然史 ~
B 癌の “性格” を如何に判断するか
では、どうやってそれらを見分けるのか?
年齢、体力、予想される余命、生活状況・・・
癌の進展範囲 (TNM分類)
~ 検査と診断・リスク分類 ~
C “悩む” 治療選択
~ 多彩な治療方法 ~
PSA (血液検査で測定する腫瘍マーカー)
Gleason score (生検の病理結果)
前立腺癌の診断
前立腺癌の診断
① PSA : Prostate specific antigen (前立腺特異抗原)
② 直腸診
・前立腺から分泌されるセリンプロテアーゼ(セリン蛋白分解酵素)。
精漿中のゼリー状の蛋白成分を分解して精子の運動性を高める。
肛門の中に指を挿入し、前立腺を触診。
前立腺癌は癌の部分が硬く触れるのが
特徴。
・PSA値は前立腺癌の局所進展や
転移とよく相関。治療効果の判定、
再発の診断などに有用。
・前立腺肥大症や前立腺炎でも
PSA値が高値になることもある。
PSA値が高値でも、前立腺癌で
あるとは限らない。
肥大症では全体が軟らかく触れるので
両者を触診で区別できる。
医療情報サービス事業 Minds HP
2
前立腺癌の診断
TNM分類
経直腸的前立腺超音波検査
③ 画像検査
骨シンチ
CT
TNM分類(UICC2009年改訂第7版)をもとに模式化
T:原発腫瘍 N:リンパ節転移 M:遠隔転移
偶発 or 触知不能
限局性
局所浸潤
外科的処置で偶然発見
前立腺に限局して存在
前立腺被膜を越えて進展
T1a
T2a
T3a
被膜
片葉の50%以内
切除組織の≦5%
T1b
T2b
被膜外への進展
T3b
精嚢
MRI
切除組織の>5%
がん情報サイト PDQ日本語版 HP
④ 前立腺生検
片葉の50%を超えるが
両葉には及ばない
T1c
経直腸的前立腺超音波検査で前立腺
内部を観察しながら、細い針を刺して
前立腺を組織を採取。
10か所以上の生検が推奨される。
前立腺癌の診断
T2c
触診や画像では診断できず、
PSA上昇等による針生検で確認
精嚢に浸潤
T4
両葉へ進展する
精嚢以外の隣接組織に
固定または浸潤
前立腺癌の診断
Gleason score (グリーソンスコア)
腺の構造と増殖パターンにより5段階に分類
❶
❷
❸
❹
❺
←正常な腺構造に近い
悪性度が高い→
• 癌の進展範囲 (TNM分類)
• PSA (血液検査で測定する腫瘍マーカー)
• Gleason score (生検の病理結果)
この3項目からリスク分類を行う。
高リスク群 (悪性度の高い癌)
中リスク群
低リスク群 (悪性度の低い癌)
→ リスクに応じて治療方針が変わってくる。
本邦規約分類
高分化
中分化
低分化
※ 面積の広い 2 つの組織像をスコア化。 9 段階に分類
例:3+4=7
リスク分類
本日のABC:前立腺癌
A 前立腺癌の “住処” と “生涯”
D’ Amico らのリスク分類
低リスク群
中間リスク群
高リスク群
T1c - T2a
T2b
T2c
and
and/or
and/or
Gleason Score ≦ 6
Gleason Score = 7
8 ≦ Gleason Score
and
and/or
and/or
PSA ≦ 10 (ng/ml)
10 < PSA ≦ 20 (ng/ml)
20 (ng/ml) < PSA
~ 解剖、症状、自然史 ~
B 癌の “性格” を如何に判断するか
~ 検査と診断・リスク分類 ~
C “悩む” 治療選択
~ 多彩な治療方法 ~
3
手術
治療方法の多様性
根治治療
開放手術
前立腺摘出術
理想的な適応基準
切除範囲
PSA<10ng/ml
Gleason score 7以下
T1c-T2b
体腔鏡手術
(海綿体神経温存 / 非温存手術)
期待余命10年以上
放射線治療
切除するもの
三次元原体照射
外部照射
膀胱
・前立腺および精嚢
・骨盤リンパ節(病状に応じて)
強度変調放射線治療
陽子線 / 重粒子線治療
組織内照射
吻合する部位
直腸
密封小線源永久挿入
・膀胱頸部と膜様部尿道を吻合し
尿道を再建
高線量率組織内照射
(内分泌療法の併用)
内分泌療法単独
待機療法
・恥骨後式前立腺全摘術
最も一般的な術式
・会陰式前立腺全摘術
低侵襲。リンパ節郭清が困難。
・腹腔鏡下前立腺摘除術
低侵襲。難易度が高い。
手術
内分泌療法
抗アンドロゲン剤
術中合併症
・出血
・直腸損傷:0.05-3%
・尿管損傷:0.05-0.2%
・開腹術一般に生じ得るもの: 創感染・鼡径ヘルニア・肺梗塞など
・その他: 横紋筋融解症、neurapraxia(一過性の神経障害)
(会陰式に特有 強い砕石位に起因)
術後合併症
・尿失禁: 術後早期には高率に生じ、1年程度かけて改善。
持続するのは10%程度。
・勃起障害: 神経温存術による勃起能の回復は30-70%。
ACTH
視
床
下
部
副
腎
副腎性
アンドロゲン
ア
ン
ド
ロ
ゲ
ン
受
容
体
CRH
下
垂
体
エストロゲン剤
D
H
T
LH-RH
LH
LH-RH アゴニスト
精
巣
テストステロン
腫
瘍
細
胞
の
増
殖
前立腺癌細胞
精巣摘出術 (去勢術)
内分泌療法
D
H
T
受
容
体
複
合
体
*DHT:ジヒドロテストステロン
内分泌療法
エストロゲン剤 (ホンバン、プロセキソール)
精巣摘除術(去勢術)
睾丸を摘出することにより、テストステロン分泌を低下させる。
LH-RH アゴニスト (リュープリン、ゾラデックス)
LH-RHに似た構造の薬剤。
下垂体でのLH-RHの受容体への結合を阻害し、下垂体からの
LHの分泌を抑制する。
副作用: ほてり、性機能の低下など。一過性に腫瘍増悪反応
(骨の痛み、排尿困難など)が起こることがある。
下垂体に作用し、LHの分泌を抑制する。
副作用: 浮腫、女性化乳房、性機能の低下、肝機能障害など。
心筋梗塞や脳血管障害、肺塞栓症などの重篤な副作用のために
欧米ではほとんど用いられない。
抗アンドロゲン剤
前立腺癌細胞内にて、DHTのアンドロゲン受容体との結合を阻害し、
腫瘍細胞の増殖を抑える。
非ステロイド性(オダイン、カソデックス)とステロイド性(プロスタール)
があり、後者には下垂体からのLH分泌を抑制する作用もある。
副作用: 女性化乳房、ほてり、性機能の低下、下痢、肝機能障害など。
4
放射線治療 (外照射)
治療計画用CTを撮影してCT画像を放射線治療
計画装置に取り込み、
前立腺部に対して体の外から放射線を照射。
注射不要。
治療台の上で寝ているだけ。
外来通院で治療できる。
→
放射線治療 (外照射)
標的とリスク臓器の位置関係を三次元的に構築
することで立体的に把握。
計画装置上で線量分布を表示できる。
低侵襲
前立腺
放射線治療装置(リニアック)
前立腺部に対して4方向から照射
直腸
振子原体照射
放射線治療 (外照射)
放射線治療 (外照射)
累積全死亡率
治療法別 (生化学的) 非再発率
内分泌療法単独
内分泌療法+放射線治療
T1-T3 N0 M0 (T3: 78%)
PSA<70
T1-T2
Lancet 373(9660):301-308, 2009
放射線治療 (外照射)
(生化学的) 非再発率
EB: 外照射, PI: 密封小線源永久挿入療法(LDR), COMB: EB+PI,
RP: 根治的前立腺摘出術
IJROBP 58: 25-33, 2004
放射線治療の合併症
急性期有害事象 (照射中~終了後3ヵ月以内に発生)
排便時痛、排便時出血、頻尿・尿勢低下、排尿時痛 など
晩期有害事象 (照射終了後3ヵ月以降に発生。難治性。)
放射線直腸炎(直腸出血)、尿道狭窄、血尿・膀胱出血、二次発癌 など
放射線治療にはこれらの有害事象が生じうるが、、、、
手術と比較した場合の放射線治療の利点:
男性機能、尿路系機能に対する副作用が少なく、
総じて放射線治療の方がQOLを高く保つことができることである。
T2b-T2c N0 M0
GS≧7 or PSA>10
J Clin Oncol 20: 3376-3385, 2002
5
強度変調放射線治療
放射線治療の合併症
IMRT: intensity-modurated radiotherapy
放射線直腸炎
前立腺
前立腺癌の制御には前立腺局所への十分な
線量増加が重要であるが、単純に線量増加を
行うと直腸線量も同時に増加してしまう。
治療計画の際には直腸線量を可能な限り
抑制することが求められる。
3D-CRT
(4門照射)
IMRT
•
各照射野の強度は、3D-CRTが均一な分布であるのに対し、IMRTではモ
ザイク状の不均一な強度になっている。
•
注:腹臥位にて撮影
直腸壁
照射法による線量分布の比較
4門照射
前立腺
各治療法の比較
利点
IMRT
手術
内分泌治療
放射線治療
(外照射)
直腸壁
欠点
根治切除できる
リンパ節転移を確認できる
尿失禁、男性機能低下 (QOL低下)
全身麻酔必要
低侵襲
外来で治療可能
医療費が高い
低侵襲
外来で治療可能
男性機能の温存が期待できる
尿失禁を来たす確率が低い
治療期間が長い (約2ヵ月)
直腸出血の可能性
男性機能喪失、ホットフラッシュなどの
合併症
1~数年で癌の再燃の危険あり
IMRTは標的体積の形状に一致した線量分布を実現できる
粒子線治療
X線 6 門
小線源治療
陽子線 2 門
密封小線源永久挿入療法 (LDR)
ヨード線源
I-125
(4.5mm×0.8mm)
粒子線は X線 とは大きく
異なる線質を持つ。
X線 IMRT 5 門
陽子線 IMRT 5 門
144Gy
その生物学的・物理学的
特性を生かすことでX線と
異なる治療効果と線量分布
をもたらす。
200Gy
6
小線源治療
小線源治療の合併症
高線量率組織内照射 (HDR)
急性期有害事象
尿道刺激・閉塞症状
治療直後には約半数でみられるが、1年後にはほぼ消失。
慢性期有害事象
尿道障害(重篤なものは0.5%以下)
直腸障害(重篤なものは0.5%以下)
勃起障害(25-60%。大半はバイアグラRによく反応。)
放射性イリジウム
Ir-192
RALS
(Remotely-controlled Afterloading System)
組織内照射では放射性線源(ヨードやイリジウム)を用いて組織内へ直接放射線を
照射するため、より限局した照射が可能。治療期間が短い。
前立腺癌の治療方針
前立腺癌の治療方針
T1/T2 N0 M0 前立腺内に限局した癌
根治治療
年齢、体力、予想される余命、生活状況・・・
開放手術
前立腺摘出術
体腔鏡手術
放射線治療
癌の進展範囲 (TNM分類)
PSA (血液検査で測定する腫瘍マーカー)
三次元原体照射
外部照射
リスク分類
強度変調放射線治療
陽子線 / 重粒子線治療
Gleason score (生検の病理結果)
密封小線源永久挿入
組織内照射
高線量率組織内照射
内分泌療法
待機療法
前立腺癌の治療方針
T3 N0 M0
放射線治療
外部照射
2001
microSelectron HDR
局所浸潤癌
根治治療
放射線治療装置の進歩
1995
IMRT
2007
Novalis
三次元原体照射
強度変調放射線治療
陽子線 / 重粒子線治療
組織内照射
密封小線源永久挿入
CyberKnife
Tomotherapy
高線量率組織内照射
(内分泌療法の併用)
内分泌療法
7
放射線治療装置の進歩
2007
Varian:Trilogy
2010
まとめ
三菱重工
前立腺癌に対する治療法は多彩である。
医学的な判断をもとに、患者の生活状況や希望をふまえて適切な
治療法を選択する。
技術の進歩により、放射線治療は高い効果と安全性を実現できる
治療法となった。
Elekta:Synergy
高精度放射線治療の普及により線量増加の傾向が強まるが、
放射線直腸炎など合併症には十分に注意を。
8
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