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オムロン - 京都府
オムロン(マレーシア) 制御機器事業や電子部品事業、ヘルスケア事業などを展開する世界的企業 オムロン OMRON ~京都企業のアジア進出に向けた取組について~ 報告者:安 田 1 概 守 要 オムロンは、制御機器事業、電子部品事業やヘルスケア事業などをグローバルに展開する企業 であり、2012 年度の売上高 6505 億円のうち、海外での売上高が半分以上を占めている。 オムロンマレーシアは、オムロンの中でも早い時期となる 1973 年に海外工場としてマレーシアの セランゴール州に設立された。リレーの生産及びその部品と金型の製作を事業範囲としている。 企業がマレーシアに投資する要因として、継続的な経済成長、友好的で公平な政府、育成レベ ルの高い人材、充実したインフラの整備、税制上の優遇措置、低いカントリーリスクなどが指摘 された。 2 説 明 者 オムロンマレーシア 社長 江崎 雅彦 氏 同 秘書 ジョアン 氏 [Secretary Ms. Joanne] 3 主 な説 明 内 容 オムロンマレーシアは、マレーシアにおけるインダストリアルオートメーションコンポーネントおよび システムの販売・マーケティング会社である。 オムロンマレーシアは、オムロンリレーアンドデバイス株式会社の運営下にあり、主にリレー(電磁 継電器のことで、電気信号を受けて機械的な動きに変える電磁石と電気を開閉するスイッチで構成さ れる)を生産している。リレーはマレーシアだけではなく、欧州や韓国、中国、インドネシアでも生産さ れているが、それぞれの会社により販売地域が分けられている。具体的な生産品は日本から移管さ れた商品の他に、日本との共同開発商品、また現地での改良商品、開発商品などがある。人員構成 は、女性が約 63%(ローカル管理職では男性が 77%)で、61%がマレー系である。売り上げは上昇傾 向にあり、特に中国、日本向けの売り上げ割合が上昇中である。 オムロン(マレーシア) 製品は工場での組み立てだけではなく、CAD システムによる製品設計、金型設計、金型製作など を行っている。また製品にバラツキが出ないように生産システムは自動化されており、製品完成後も、 各種試験器(うなり、電気的寿命、ヒートショック、TV、機械的寿命等)や分析装置(顕微鏡、拡大鏡等) で製品チェックが行われている。 オムロンマレーシアの現在とこれからの展開については、まず「”ものづくり”技術の深化の展開」 である。つまり、すりあわせ技術(金型・部品・設備・組み立て)で、”ものづくり”を深化し、海外拠点で 展開するとともに、蓄積した”ものづくり”技術と新技術による自動生産にて高いパフォーマンスを実 現する。次に「”ものづくり”人材の育成」であり、”ものづくり”のコアとなる「金型/部品加工技術人材 の育成」と「製造現場力づくり」を進め、異常を予知でき改善できる能力を持つ設備に強い人材を育成 することにより、IE/QC などの手法を盛り込み深化した活動を展開できるようにする。このことにより、 高効率生産ラインを追求できることになる。また先輩や上司からの指導と量産の中での実戦訓練に より多くの技能人材を育成し、技能を次世代に継承できるようにしている。 オムロンマレーシアでの説明聴取の様子 4 質 疑 ○ 企業の海外進出先としてのマレーシアのアドバンテージについて。 → 大きな災害や過激な労働運動などがなく、カントリーリスクが低いこと、賃金上昇が常識的な範 囲に収まっていること、英語を話せる国民が多いことである。グローバルな顧客と直接接して、コ ミュニケーションするには英語が必要となるが、日本よりもマレーシアの方が英語を話せる方が 多い。 → 安ければどこでもいい品物ならコストの安い地域で作ればよいが、ある程度の熟練が必要な産 業であれば、社会インフラなどが重要になってくる。その点で、マレーシアは産業集積が進んで おり、不自由はない。 ○ 金型の設計や制作には熟練の技術が必要だが、そのような高い技術を持った人材もマレーシア で育てることができているか。 オムロン(マレーシア) → できている。例えば、部品の部門のトップは 30 年勤めているベテランで、後継者を育てている。 新しい技術は日本から持ってくるが、一度入れた技術はオムロンマレーシアの中で引き継いで いっている。 また、新しいことをやるときに、オムロンマレーシアの従業員を日本に研修に行かせて、勉強 させたりもしている。 ○ 従業員に誇りを持たせるための人材登用の考え方について → 技術者は2倍3倍の給与でリクルートされることもあり、給与だけでつなぎ止めることは難しい ので、モチベーションを高めるため、課長のポストを用意したりしている。 ○ これから東南アジアへ進出しようとする企業に対するアドバイスについて → どのような事業をするかを踏まえ、立地条件を考える必要がある。従業員が入れ替わっても 構わないなら、都会に工場を作った方が求人しやすいだろうが、従業員に技術をしっかり教え 込んで育成する場合は、あえて田舎に工場を作るというやり方もある。 オムロンマレーシアでの説明聴取・質疑応答の様子 ○ オムロンマレーシアで日本式教育を取り入れているか。 → マレーシアは日本とは風土が違うのは事実であり、どこまで求めるかというのはあるが、勤務 時間はルーズではなく厳格にしている。 ある程度、日本式のやり方は持ち込んでいる。39 年間この地で操業しているので、30 年以上 勤務しているマレーシア人のベテランがおり、若手を指導してくれたりするので、あつれきは感じ ない。PDCAやカイゼン、5S、品質第一など、日本の習慣を持ち込んで教えている。 ○ マレーシア人にとっての日本人のイメージはどうか。 → 日本の企業で働きたいと思っているマレーシア人は多い。 オムロン(マレーシア) 5 所 感 オムロンは関連子会社を含め、3 万 5 千人余りの従 業員を抱える京都を代表する企業である。その事業は 多岐にわたり、オムロンマレーシアが含まれる制御機 器・FA システム事業をはじめ、電子部品事業、車載電 装部品事業、社会システム事業、健康医療機器・サー ビス事業 、環境関連機器・ソリューション事業、組み込 みシステム・PC 周辺機器事業などを展開されている。 グローバル市場での競争環境は激しさを増す一方で、 ビジネスチャンスも存在しており、新興国における人口 増大と中間層、富裕層の増加による経済成長が見込まれる中、新興国の消費増大は世界中のもの づくり需要を活性化させ、工場自動化機器や電子部品の領域においてグローバルで市場は拡大する との考えである。 日本の企業が海外展開(いわゆる生産拠点の移動など)する場合、その企業の下請けなどの関連 会社が移転を余儀なくされる場合もあり、国内の産業が空洞化すると言われている。特に昨今では 自動車や電機といった大企業だけでなく、技術の蓄積がある中小企業の機械・設備から技術者まで が移転してしまい、日本の空洞化が危惧されている。 オムロンマレーシアでもこのような傾向にあるのではないかと考えていたが、実際には日本から移 転してきた下請けなどの関連会社は無く、自社で金型の設計から制作、更にはプレス機器の使用な ども含めて、部品を組み立てるだけの会社ではなく、部品を作る金型から部品の生産、更には自動 化設備を使っての製品の組み立てまでの、いわゆる自己完結型の生産設備を有している。本来なら ば日本での生産が望ましいことはもちろんであるが、世界市場で活躍するグローバルな企業にとって、 コスト削減と価格競争はやむを得ない。府内に本社があり世界進出を図る企業の中でも、地元の下 請けや関連企業への影響を最小限にするなかで、京都の雇用と経済を支える企業は京都府としても 支援していくべきである。 ただし、同じ物を大量生産する企業の海外移転はやむを得ないが、中小企業をはじめ、消費者の ニーズに合わせた少量生産品などは、いわゆる労働コスト以外で京都府としても支援できることがあ るので(地代・水光熱費・税制面など)、今後も府内で事業を展開できるように様々な施策を考えねば ならない。