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クラウド・スマートデバイスを利用した エンタープライズシステムの事例
平成 24 年度文部科学省委託 「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」 クラウド・スマートデバイスを利用した エンタープライズシステムの事例調査と研究 調査報告書 クラウド・スマートデバイス時代のITビジネスクリエータ育成の教育プログラム開発 目次 はじめに ....................................................................................................................................... 5 本報告書の概要 ............................................................................................................................ 7 事例 A インフォテリア株式会社「Handbook」 ....................................................................... 8 インフォテリア株式会社について............................................................................................ 8 Handbook について ................................................................................................................. 8 Handbook の利用事例 〜 九州大学 〜................................................................................. 12 サービス構成について ............................................................................................................ 13 事例からの学習 ~ クラウドサービス開発 ~...................................................................... 14 PC 向けの Web アプリケーション ..................................................................................... 14 コンテンツ配信とセキュリティ.......................................................................................... 15 事例からの学習 ~ スマートデバイス開発 ~...................................................................... 16 マルチデバイス対応 ............................................................................................................ 16 オフライン対応 ................................................................................................................... 16 ネイティブアプリ開発 ........................................................................................................ 17 HTML5 コンテンツの配信と再生 ...................................................................................... 17 今後望まれる人材について..................................................................................................... 17 本事例より抽出された、今後技術者に必要とされる能力 ..................................................... 18 事例 B 日本インフォメーション株式会社「スマートセッション」 ....................................... 19 日本インフォメーション株式会社について ........................................................................... 19 「スマートセッション」について.......................................................................................... 20 2 「スマートセッション」の利用事例 〜 株式会社 TBS テレビ ............................................ 23 サービス構成について ............................................................................................................ 24 事例からの学習 ~ クラウドサービス開発 ~...................................................................... 26 最新の標準仕様に沿った開発 ............................................................................................. 26 データベースを利用したアプリケーション開発 ................................................................ 26 事例からの学習 〜 スマートデバイス開発 ~...................................................................... 27 ユーザの操作性を重視したアプリケーション開発 ............................................................ 27 オブジェクト指向による抽象化.......................................................................................... 27 今後望まれる人材について..................................................................................................... 27 本事例より抽出された、今後技術者に必要とされる能力 ..................................................... 28 事例 C 株式会社ユビレジ「ユビレジ」 .................................................................................. 29 株式会社ユビレジについて..................................................................................................... 29 「ユビレジ」について ............................................................................................................ 29 「ユビレジ」の利用事例 ........................................................................................................ 32 つばめカフェ(運営:JR 九州) ........................................................................................ 32 蓮沼ウォーターガーデン..................................................................................................... 33 サービス構成について ............................................................................................................ 34 事例からの学習 ~ クラウドサービス開発 ~...................................................................... 35 Web サービスのスケールアウト......................................................................................... 35 データベースの運用管理..................................................................................................... 36 Web サービス API の提供 .................................................................................................. 36 データベースを利用した集計処理 ...................................................................................... 36 事例からの学習 ~ スマートデバイス開発 ~...................................................................... 36 オフライン対応 ................................................................................................................... 37 3 今後望まれる人材について..................................................................................................... 37 本事例より抽出された、今後技術者に必要とされる能力 ..................................................... 37 事例 D 株式会社日立ソリューションズ「スマート e-trasus」 ............................................. 39 株式会社日立ソリューションズについて............................................................................... 39 「スマート e-trasus」について ............................................................................................ 39 「スマート e-trasus」の利用事例 〜 機械保守 〜 .............................................................. 43 サービス構成 .......................................................................................................................... 43 事例からの学習 〜 クラウドサービス開発 〜...................................................................... 44 位置情報・地理情報を利用したデータベース・アプリケーション開発............................ 44 大量データの格納と分析..................................................................................................... 45 外部クラウドサービスとの連携.......................................................................................... 45 事例からの学習 〜 スマートデバイス開発 〜...................................................................... 45 GPS センサーを利用したアプリケーション開発 ............................................................... 45 地図情報を利用したアプリケーション開発 ....................................................................... 46 今後望まれる人材について..................................................................................................... 46 本事例より抽出された、今後技術者に必要とされる能力 ..................................................... 46 まとめ ......................................................................................................................................... 48 クラウドコンピューティングについて .................................................................................. 48 スマートデバイスについて..................................................................................................... 49 4 はじめに 本調査報告書は、現在、ビジネスにおいて利用されているクラウドコンピューティング・サー ビスとスマートデバイスを活用したエンタープライズシステムについて、その事例を調査・研 究したものである。 近年、クラウドコンピューティングを利用したサービスは、コンシューマ向けのサービスのみ ならず、エンタープライズ向けシステムにおいても急速に普及が進んでいる。現在、様々な企 業がクラウドコンピューティングを利用したサービスの提供あるいはシステムの構築を開始し ているが、これには近年、クラウドコンピューティングの中にも、SaaS (Software as a Service) のみならず、IaaS(Infrastructure as a Service) や PaaS (Platform as a Service) といった形 でレイヤーに特化したサービスが発展してきており、その提供形態に多様性を増しているとい うことが一因としてある。 このようなクラウドを中心としたシステム開発のあり方は、すでに定着したものとなりつつあ る。そのため、クラウドコンピューティングについての知識および技術は、これからの IT 技術 者を育てる上で欠かせない素養であるといえる。 またその一方、最近利用ユーザが顕著に拡大しているスマートデバイスは、PC による IT 利用 を凌ぐほどの勢いであり、少なくとも数年のうちに中心的な利用形態になることが確実である。 現在、スマートデバイスはコンシューマ向けのアプリケーションを中心に利用されているが、 エンタープライズシステムにおける『コンシューマライゼーション』、つまりコンシューマ向 けサービスで培われた技術及び方法がエンタープライズ向けアプリケーションでも同様に採用 される傾向にあることを考えると、クラウドコンピューティングと同様に、スマートデバイス はエンタープライズシステムにおいても利用領域を拡大することは想像に難くない。実際、す でにいくつかの領域において実績があり、本書においても取り上げている。 5 スマートデバイスを用いた開発方法は、まだ発展途上の段階であるともいえるが、今後、スマ ートデバイスにおける開発そのものの重要性が薄れるということはないであろう。このため、 これからの技術者には積極的に学習を促す必要がある領域であるといえる。 本書では、クラウドコンピューティングおよびスマートデバイスを利用したエンタープライズ システムの構築に必要な技術や知識を抽出して、教育プログラム開発の資料に供するとともに、 今後需要が伸びると思われる適用分野やその発展性を予測する。 6 本報告書の概要 本報告書は、事例調査を中心とし、そのサービスの概要とそのサービス構成をまとめている。 事例の選定には、ユーザへの採用実例を重視しており、できるだけ利用現場に近い声が得られ たものを取り上げている。 適用分野についても、さまざまなユースケースからピックアップしている。具体的には、本書 では A) e ラーニングシステム B) ペーパーレス会議システム C) POS システム D) 移動体ナビゲーションおよび動態管理システム の4事例をまとめており、それぞれについて以下の調査・研究を行なっている 1. サービスを提供する事業体についての概要 2. サービスについての概要 3. ユーザによる利用事例 4. サービス構成について 5. 事例からの学習(クラウド/デバイスの各領域について) 6. 今後望まれる人材像についてのヒアリング 7. 本事例より抽出された、今後技術者に必要となる能力 最後に、これらの事例調査から得られた内容を元に、今後の技術市場動向について予測し、教 育プログラム構築における資料の一つとして供するべくまとめている。 7 事例 A インフォテリア株式会社「Handbook」 インフォテリア株式会社について インフォテリア株式会社は、1998 年に日本で最初の XML 専業ソフトウェア・メーカーとして 設立され、その後、2007 年には東証マザーズに株式公開を果たした。現在では世界に向けた「つ なぐ」ソフトウェア製品を開発・販売している。 主力製品は、XML 技術をベースとしてデータ連携を行うミドルウェア「ASTERIA」で、その 導入社数は、現在 3,000 社を超え、外資系および国内データ連携ソフト市場において、シェア No.1 の実績を誇る(http://www.infoteria.com/jp/company/about/index.php)。 この「ASTERIA」に代表されるように、データ連携ソフトウェアの印象が大きい同社である が、近年、スマートフォンをはじめとしたスマートデバイスが仕事の現場で当たり前に使われ る時代を予見し、スマートデバイス用の企業向け情報配信・共有サービス「Handbook」を販 売開始した。 Handbook について 図 1: インフォテリア株式会社の提供する「Handbook」 8 「Handbook」とは、企業や教育機関で利用されるドキュメントやファイルなどの様々な情報 を iPad や iPhone、Android 搭載タブレットやスマートフォンに配信し共有できるビジネス、 教育機関向けサービスである。第三者の調査会社の調べによると、スマートデバイス向けファ イル配信サービスとして、数量ベース、金額ベース共に市場シェア No.1 である。なお 2012 年 6 月末で既に 420 社が同製品を採用している。 図 2: 法法人におけるモバイル向け汎用ファイル共有/配信サービス市場 (出典)http://www.infoteria.com/jp/blog/pina/doc/d120927-1400.html Handbook 製品は、配信するドキュメントやファイルを管理するためのクラウドサービスであ る「Handbook Studio」と、配信されたファイルを iPhone や iPad、Android 端末などのスマ ートデバイス上で閲覧するビューワーとしての「Handbook アプリ」から構成されている。 9 Handbook Studio については、同社の運用するクラウド上で提供されるため、利用ユーザは PC ブラウザを用意するだけで使えるというメリットがある。操作についても専門知識を必要 とするようなことはない。 既に所有しているファイルがある場合、Handbook Studio を通じて複数のファイルをまとめて ドラッグ&ドロップでアップロードできる。アップロード後、ファイルコンテンツを選択して ハンドブックを作成する。同 Handbook Studio 内でハンドブックの表示レイアウトをカスタマ イズすることも可能である。 企業向け用途を強く意識していると想定される点として、配信するコンテンツの有効期限を自 由に設定できる機能があげられる。これは、同 Handbook Studio の管理画面より、いつから配 信を開始し、いつまで閲覧を有効化するかの制御が容易に設定できるというものである。これ により、キャンペーン情報など有効期限のある場合などでも、わざわざ手動でコンテンツを差 し替えるといった必要がなくなっている。 また、同じ利用用途のハンドブック単位で「キーコード」と呼ばれるキーを登録し、同一の「キ ーコード」を Handbook ユーザーアカウントにも指定することで、特定のユーザーやユーザー グループにだけハンドブックを見せる/見せないといったアクセスコントロールの設定も可能 となっている。 10 図 3: Handbook Studio Handbook アプリは、この Handbook Studio より配信されるコンテンツを閲覧するためのアプ リであり、無料で配布されている。iPhone、iPad、Android(スマートフォン、およびタブレ ット)に対応している(2012 年 12 月には Windows 8 に対応予定)。PC ブラウザからも閲覧 できる。 特筆すべき点として、単なるファイル閲覧アプリではなく、アンケートの取得や、クイズ/試 験機能を備えており、対話的な利用も可能である点があげられる。 また、電波の届かないエリアや病院内などのオフライン環境でもスムースにコンテンツが閲覧 できるように、ハンドブック単位でダウンロード(「Handbook」アプリ内に保存)すること ができる。オフライン環境で行ったアンケートや試験結果、操作記録は、次回オンライン時に サーバ側へ保存されるようになっている。 11 図 4: Handbook アプリ Handbook の利用事例 〜 九州大学 〜 Web を利用した学習支援システムを必修化する九州大学は、スマートデバイスによる e ラーニ ングシステムの活用を進める計画だが、その運用には一定のスキルが必要なため教職員への負 担が大きく、また学生側もネットワークにつながらない環境下での利用ができないという不満 を抱えていた。だが、インフォテリアの Handbook 活用によってオフラインでの運用も可能に なるとともに、OS に囚われない柔軟な拡張性や初心者でも無理なく使い始められる容易な UI によって、スマートデバイスでの教材コンテンツ活用を大きく前進させようとしている。 具体的には、オフラインでも e ラーニングが活用でき、学生の学習効率が向上したという。自 宅や通学中の地下鉄などネットワークがつながりにくい場所や、大学病院など無線 LAN を利 用できない環境下でも、学習コンテンツをスマートデバイスにダウンロードしておけばいつで も気軽に学習が可能になった。 また、e ラーニングを利用する間口が拡大したことも重要な点である。Handbook は iPhone/iPad の iOS のみならず、Android OS にも対応し、PC での閲覧も可能であるなど多く のモバイル端末で利用できるため、教職員や学生が自らの端末で柔軟に利用できるようになっ ている。 12 九州大学では、インストラクショナルデザイン(教育環境と教育効果を最適化する方法論の設 計)に基づく高度な教材開発も、Handbook で積極的に実践していくつもりだという。同現場 では、Handbook は教材用ツールとしても高い完成度であると評価されている。 <ポイント> 各種スマートデバイスへの対応により持ち込み端末での利用を柔軟に実現 教員や学生が迷わず操作できる洗練された UI でスマートデバイス向け教材開発に最適 オフライン環境下でも e ラーニングの利用が可能になり学生の学習効率が向上 サービス構成について Handbook Studio は、前述のとおり、主に、インフォテリア株式会社が運営するクラウドサー ビスとして提供される。共有環境では Amazon Web Services (AWS) EC2 を IaaS として利用 しており、その上で SaaS としてサービスを提供する形となっている。利用ユーザは共有環境 (マルチテナント)での利用が標準となるが、希望するユーザに対しては専用環境として AWS のインスタンス用意し提供を行うプレミアムサービスもある。さらに、クラウド環境だけでは なく、オンプレミス環境へのライセンス販売も行なっている。 サーバ側の実装言語は PHP を用いている。サーバ側のロジックの一部に既存のインフォテリ ア製品群のライブラリを利用している。 Handbook アプリに関しては、当初は Cocoa(Objective-C)を用いて iPhone をターゲットと して開発を行なっていた。その後、iPad のリリースに伴い iPad 版をリリースした。その一方、 Java を利用して Android 向けネイティブアプリ開発を行い Android 端末にも対応し、さらに Windows 8 についても対応を進めている。 13 Handbook では、PDF や JPEG などの画像ファイルはもちろん、コンテンツとして HTML5 コンテンツも配信可能であるため、わざわざ専用のアプリを開発しなくてもインタラクティブ な学習教材などを配信することができる。 画像, PDF HTML5コンテンツ iPhone/iPad Amazon EC2 Handbook アプリ (Cocoa/Obj-C) Handbook Studio Android Handbook アプリ (Java) PHP Windows 8 Handbook アプリ (.NET) 図 5: Handbook のサービス構成 事例からの学習 ~ クラウドサービス開発 ~ PC 向けの Web アプリケーション 14 Handbook Studio を構成するサーバ側のアプリケーションは純粋に Web アプリケーションで あり、PHP を開発言語として採用しているところからも、PC 上の Web ブラウザを主体とす るアクセスを念頭に入れたものとして開発されている。 このように、全体のサービスとしてはスマートデバイスをターゲットとしていながらも、管理 画面などを PC 上の Web ブラウザに対して提供しているケースはまま見受けられる。これは、 多くの企業内の既存資産が PC 上に存在していることや、管理系業務において効率的な操作を 行いたい場合にマウスやキーボードデバイスが最適であるオペレーションが存在しているため であるかと思われる。 そのため、サービスの開発を全体として考えた時、スマートデバイスのみならず PC ブラウザ 向けの開発についても常に考える必要があるだろう。特に、Handbook Studio の例では、ドラ ッグ&ドロップによるファイルの複数登録およびアップロードの機能は、既存資産からの移行 を考えた時にほぼ必須に近い機能であり、故にそのように実装されたものと思われる。 コンテンツ配信とセキュリティ また、サーバ側には編集者が利用する Web インターフェースだけではなく、各端末への配信を 管理するサービスや、ファイルコンテンツを格納するストレージ/データベースも必要である。 配信については、動画のストリーミング配信などとは異なり、画像やドキュメントなどのファ イルコンテンツが主体のためもあり、現状の配信においては帯域制御などの点はそれほど複雑 ではないかもしれない。 一方セキュリティに関しては、有効期限設定付きコンテンツやブックレベルでのアクセスコン トロールなどをサポートする必要があるため、データベースに権限情報を格納しておきその情 報を配信時にチェックするなどの仕組みをアプリケーション側で実装しているものと考えられ る。こういった処理はエンタープライズ・アプリケーションとして特に目新しいものではない かもしれないが、逆に言うならば多くのアプリにおいて要求されることの多いパターンの一つ である。 15 事例からの学習 ~ スマートデバイス開発 ~ マルチデバイス対応 まず、マルチデバイス対応を積極的に行なっている点があげられる。これは、リーチする顧客 の範囲を拡げたいという製品マーケティング側の意思もあるだろうが、多様化するデバイス環 境において、一つの端末のみをターゲットとはしにくいという現状を示唆している。 もちろん、企業環境において同一種類のデバイスを一括購入するといったケースはまだまだ多 いであろうが、近年は従業員が私物の情報端末などを持ち込んで業務で利用する「BYOD (Bring Your Own Device)」を許容する風潮も出てきている。九州大学の事例では、生徒・ 教員ともに各々のデバイスを利用している現状が報告されており、まさにこれを裏付けるもの となっている。 とはいえ、現存するすべてのプラットフォーム/デバイスについて開発リソースを費やすこと ができるケースはそれほど多くはない。実際に Handbook の開発においても、当初は iPhone のみをターゲットとし、Objective-C によるコード開発のみで様子をうかがっていた。その後、 市場での反応を見た上で、Android への対応の幅を拡げていったという。 オフライン対応 モバイルにおけるネットワーク環境は LTE や無線 LAN などの発展により飛躍的に向上してい るが、やはりスマートデバイスはクラウドに常時つながるというわけではないのが現状である。 そのような中で、コンテンツの閲覧に際して随時ダウンロードをおこなうのは、ユーザにスト レスを与える可能性が高い。そのため、オフライン時にはコンテンツをローカルストレージに 16 一時あるいは複製保存するなどの工夫が求められる。Handbook でも、オフライン時の閲覧に 対応している。 ネイティブアプリ開発 複数プラットフォームに対応するために、近年 HTML5 を利用したアプローチが取り沙汰され ている。だが、Handbook においてはそのアプローチを取っていない。これは、タッチの際の アニメーションなど、UI の機微を実現するのにネイティブアプリを用いるのが順当であったた めではないかと思われる。特に、営業向けの用途などに利用される場合では顧客に対して直接 ユーザ・インターフェースを見せる機会も多い。このようにインターフェースを重視するよう な現場ではネイティブアプリ開発に対する要求が依然高いことが伺われる。 HTML5 コンテンツの配信と再生 しかしながら、HTML/CSS を用いて開発可能な HTML5 アプリケーションは、開発効率性の 観点から捨てがたい魅力があるのも事実である。Handbook では、配信するコンテンツに HTML5 コンテンツを採用することにより、システムを利用するユーザ自身が教材開発などで コンテンツを作成できるようになっている。こういったモデルは、スマートデバイス上で動く アプリの開発にかかるコストをコンテンツ作成のレベルにまで引き下げる効果があり、開発の 手間を軽減し、携わることができる開発者の裾野を広げるのに十分なアプローチといえる。 今後望まれる人材について インフォテリア株式会社では、AWS を IaaS として採用しその上で自社のクラウドサービスを 提供しているが、IaaS を利用する前提であっても、サーバ管理の知識は依然必要であり、重要 17 視されている。特に Linux の運用管理能力は重要視されるポイントである。エンタープライズ 分野のサービスは負荷の発生がなかなか読みづらい点もあり、同社では高負荷のサーバ運用な どに長けている人材の獲得が急務であるとしている。 なお、スマートデバイス側については、ネイティブアプリの開発についてはもちろん重要であ るが、今後は HTML/CSS によるコンテンツ開発が増えてくると予想している模様である。そ のため、HTML5 を利用して高度なユーザ・インターフェースが開発できる技術者やクリエー ターの需要が今後伸びてくるのではないかという見解である。 本事例より抽出された、今後技術者に必要とされる能力 管理画面などを構築するための Web アプリケーション開発(PHP) コンテンツ管理やアクセス制御を行うためのデータベース管理 サーバの運用管理(Linux) マルチプラットフォームでのネイティブアプリケーション開発(例 Objective-C, Java, .NET) オフライン対応(各プラットフォームのストレージ API の習得) HTML5 コンテンツの作成・開発 18 事例 B 日本インフォメーション株式会社「スマートセッション」 日本インフォメーション株式会社について 日本インフォメーション株式会社は、愛知県名古屋市に本社を置く情報処理サービス業の会社 である。 会社設立は 1974 年と、同業種としては比較的長い歴史を持っている。主に名古屋周辺地域を 基盤とした情報処理システムの受託開発をメインとして成長してきた。現在では名古屋本社の 他に、東京、大阪、盛岡にオフィス拠点を構えている。 主要な取引先として、日立グループ、日本電気グループ、トヨタグループがあり、オージス総 研、TIS、カゴメ、中部電力グループ、日本ユニシスなどとも取引がある。 現在も顧客先での常駐によるシステム受託開発が売上の大半を占めており、そのため情報処理 ソフトウェアに関するテクノロジーについては多種多様に取り扱っている。 これらのソフトウェア開発のノウハウを活かし、自社製品の開発のために 2011 年4月に製品 開発本部を開設した。 現在同社では iOS 端末(iPhone/iPad)向けの製品を出荷しており、今回事例として取り上げ る「スマートセッション」もそのうちの一つである。 なお、製品開発のターゲットとしてタブレット端末を選んだ経緯として、タブレット端末に将 来性を感じた社長が、米国で iPad が発売された際に自ら現地で購入し、製品開発部に託した のがきっかけだったという。 19 「スマートセッション」について 図 6: スマートセッション 「スマートセッション」とは、サーバ上の仮想会議室に資料(PDF)を格納し、複数の端末から 資料の共有が可能なペーパーレス会議システムである。企業内の会議におけるペーパーレス化 を、タブレット端末を利用して実現する。同社が掲げる電子ドキュメントシステム構想 「eDocSystems」のうち、電子会議システムに必要なパーツをパッケージングしたものと言え る。 製品の特徴として、単なる電子ドキュメントによるペーパーレスの実現というばかりではなく、 通知によって複数端末に対してプレゼンの同期コントロールを行える点があげられる。このた め、特に拠点間の会議や社員研修・セミナーなどに威力を発揮する。また、会議資料はサーバ 上で一元管理されるため、緊急の差し替えが発生しても、サーバにあるファイルの該当箇所を 修正するだけで、直ちに最新の会議資料が提供できる。 同期コントロールの詳細は、次のようになっている。会議に参加しているメンバーのうち、資 料を説明する説明者の画面情報を参加者に通知されることによって、参加者全員が説明者と同 じ画面を閲覧する。また、ページ移動などの操作を行った場合、その操作情報が同様に通知さ れ、ページ移動処理が同期される。 なお、説明者のプレゼンの進行とは別に、各々の参加者が自分の見たいページや資料を自由に 閲覧することも可能である。また、資料の電子データは事前に端末に配信されており、通知さ 20 れる情報は操作情報のみであるため、ページ切替え表示などの際に待ち時間などのストレスは 発生しない。 図 7: スマートセッションにおける通知と同期 セッションの同期が可能な端末の数として、現在 100 クライアントとの同期をサポートしてい る。なお開発環境においては 256 クライアントまで動作確認をしているという。 セキュリティについても柔軟に設定できるようになっており、たとえば、オンラインの閲覧の みで端末に資料を残さないように設定しておいたり、オフラインでも閲覧可能なようにダウン ロードを可能にする、といった設定ができる。資料の閲覧についても、会議の参加者として登 録されたもののみ、あるいは会議の開催中のみに絞る、といった設定も可能になっている。 21 図 8: スマートセッションのセキュリティ 「スマートセッション」製品のデバイス側で動作するアプリである「eDocReader」は、サーバ を介するセッションの同期のみではなく、単体での動作も可能である。そのため、PDF などの ドキュメントビューアーとしてはもちろん、WiFi もしくは Bluetooth などを経由して端末間の みでセッション同期をおこなう「パーソナルエリア」での会議もサポートしている。これによ り、客先などでサーバが使用できない環境においても複数の iPad を使用したプレゼンテーシ ョンが可能になるため、営業が客先で行う対面説明でも効果的な説明を行うことができる。 22 図 9: パーソナルエリアでのセッション共有 現在、スマートセッションはオンプレミス版とクラウドサービス版の双方を提供しており、ク ラウドサービスでは初期導入費用、月額使用料が必要となる。また、クラウドサービスでは仮 想サーバを 1 企業で専有する「専用タイプ」と複数企業で共有する「共有タイプ」の 2 種類を 提供している。 現在、オンプレミス版、クラウドサービス版あわせて 26 社が同製品を採用している。 「スマートセッション」の利用事例 〜 株式会社 TBS テレビ 株式会社 TBS テレビの技術局では、同局内のメンバーの会議での利用のため、スマートセッシ ョンを 50 ライセンス導入した。 23 スマートセッションを導入する以前、TBS テレビ技術局では、会議の参加者に配布するための 資料の印刷や修正などといった作業に大変時間がかかっていた。そのため、毎回の事前の準備 のために人員リソースが無駄に浪費されてしまっていた。 TBS テレビの担当者は、スマートセッションによるペーパーレス化について、印刷する紙のコ ストの削減だけではなく、むしろ手間や時間といった人にかかっていたコストが削減できたの がうれしい、と語っている。また、印刷せずに配布できるためセキュリティが向上した点につ いても評価している。 現在では当初のスタンダード版から上位バージョンのプロ版へのアップグレードを行っている。 今後、技術局での実績を元に、同社内の他の局へも横展開を目指していくという。 <ポイント> ペーパーレス化による紙コストの削減に加え、事前準備にかかっていた人的コストを削減 印刷された情報の漏えいを防ぎ、セキュリティの向上 サービス構成について スマートセッションは、単体での動作も可能なドキュメントビューアーである「eDocReader」 と呼ばれるデバイス側のアプリケーションと、サーバ側のコンポーネントで構成されている。 サーバ側のコンポーネントとして、仮想会議室および資料を一元管理する「eDocServer」、会 議の準備や資料をアップロードするための Web アプリケーションである「eDocManager」が 稼働している。スマートセッションのサーバ側は、クラウドサービスに加えオンプレミス版で も提供されている。 24 図 10: サービス構成 サーバ側は Java サーブレットを利用して開発されており、現在は Tomcat を使用している。 特徴的な点として、複数クライアントの常時接続を実現するためにノンブロッキングな IO 処 理が必要とされることから、最新のサーブレット API で規定されている非同期処理を扱うため の仕組みを実装に採用している点があげられる。 また仮想会議室などのデータを保存するデータベースとして JavaDB を用いている。JavaDB は JDK に付属している RDBMS であり、個別にインストールなどを行う必要がないため、オ ンプレミス環境でのセットアップの際に効果的であるといえる。 デバイス側のアプリケーションは、Apple 社の iPad で動作するものであり、開発はすべて iOS SDK を利用した Objective-C によるネイティブ開発で行われている。現在、Android 端末に関 しては製品の提供は行われていない。 25 また先に述べた「パーソナルエリア」での会議を実現するために、クラウド⇔デバイス間の通 信だけでなくデバイス×デバイス間でも、さらに WiFi だけでなく Bluetooth にも対応してい る点が特徴的である。なお実は、当初は Bluetooth によるデバイス間の同期のほうが先行して 開発されており、その後サーバを中心とする製品として進化していったという経緯がある。 事例からの学習 ~ クラウドサービス開発 ~ 最新の標準仕様に沿った開発 Java を利用した Web アプリケーション開発では、サーブレット API などの標準仕様を利用す るケースが多く、その知識を習得しておくことは重要であると考えられる。 今回の事例は、Java サーブレットによる Web アプリケーション開発であるという他にも、サ ーブレット 3.0 API に含まれる非同期処理(ノンブロッキング IO)とよばれる比較的先進的な 仕様を利用した形であったが、必要に応じて最新の仕様にも追随していく姿勢が技術者には求 められている。 データベースを利用したアプリケーション開発 Java でサーバサイドアプリケーションを作成する場合、何らかの DBMS を利用するケースが 多い。特に、アクセス制御などのセキュリティ設定が必要とされるアプリケーションでは、構 造化したデータとして情報を格納するためにデータベースを利用することがほとんどである。 今回の事例では DBMS として JavaDB を利用しているが、データベースの種類を問わず、標 準的なアプリケーションの開発手法についての知識が開発者には必要とされている。 26 事例からの学習 〜 スマートデバイス開発 ~ ユーザの操作性を重視したアプリケーション開発 タッチデバイスを利用したアプリケーション全般に言えることであるが、指先で直感的に操作 が可能となっている反面、ちょっとしたもたつきや待ち時間がユーザにストレスを与えること がよくある。そのため、スマートデバイスでのアプリケーション開発者は、細かな操作性や体 感応答性能についても気を使う必要がある。 一例として、スマートセッションではマルチスレッドプログラミングを行い、バックグラウン ドで処理を実行し、ユーザインターフェースをブロックしないような工夫をしている。 オブジェクト指向による抽象化 アプリケーション開発において、プログラミング言語を問わず必要とされる素養として、オブ ジェクト指向の理解は重要である。 今回の事例では、当初は Bluetooth を用いたデバイス間での通信を行うアプリケーションを開 発していたが、ビジネス上の要求によりサーバを中心とする通信方式へと進化した。その際、 もともと通信部分の実装はオブジェクト指向によって抽象化されていたため、中心となるアプ リケーションのロジックはほぼ以前のものを再利用できたという。 今後望まれる人材について 27 日本インフォメーション株式会社において必要とされている人材像についてであるが、まず汎 用性のあるプログラミングにおける考え方を理解していること、という点が挙げられた。ツー ルや IDE が充実している現在では本質的な理解が足らなくても簡単に開発できてしまう面も あるのだが、たとえば、オブジェクト指向についてちゃんと理解しているかどうかによってそ の後に違いが出てくる、という。 それ以外では、プログラミングや技術というよりも、新しいことを自分で見つけて選択できる 力、またそれを応用できる力、といった点を重要視しているという。また、専門以外の分野に も興味を持てる人材が望ましいとのことである。 本事例より抽出された、今後技術者に必要とされる能力 サーブレット API など、標準仕様を理解した Web アプリケーション開発(Java) マルチスレッドプログラミングなど、体感レスポンス速度のチューニング技術 オブジェクト指向などの汎用的なプログラミング技術の理解 最新の技術テーマに追随していくフットワーク 28 事例 C 株式会社ユビレジ「ユビレジ」 株式会社ユビレジについて 株式会社ユビレジは、2009 年 9 月に設立されたベンチャー企業である。同社によって提供され、 また同社の社名にもなっている「ユビレジ」は、iPad 用アプリケーションとして POS(販売 時点情報管理)レジシステムを簡単に導入できるサービスである。 同社は未だスタートアップの段階ではあるが、従来の POS レジよりはるかに低コストで導入・ 運営できることが評価され、すでにサービスのユーザ数は 2000 を超えているという。 また、2012 年 7 月には、米国セールスフォース・ドットコム社と資本業務提携契約を締結した ことを発表した。現在、Voyage Ventures とクロノスファンド、および日本ベンチャーキャピ タルからも出資を受けている。 「ユビレジ」について 図 11: iPad 向け POS レジシステム「ユビレジ」 29 iPad 向けの POS レジシステム「ユビレジ」は、月額 5,000 円という低コストで POS システム を構築できるのが特徴のサービスである。高額な POS レジを導入できない中小店舗などが主な ターゲットとなっている。 会計の入力はタッチインターフェースをあらかじめ念頭に入れて設計されており、商品の入力 や、個数の変更・取り消し、値引きの設定なども簡単に操作ができる。 図 12: ユビレジ iPad アプリ また、入力した会計情報はユビレジの運営するクラウドサービス上へ自動的にアップロードさ れる。提供されているダッシュボード Web アプリにアクセスすることで、最近の売上と客数、 会計数などの分析結果をグラフで閲覧することもできる。 30 図 13: ダッシュボード Web アプリ また、オフライン環境での使用にも対応しており、オフライン時での会計処理は一時的にロー カルに保存され、通信環境が整い次第サーバに送信される仕組みとなっている。 レシートの印刷については iOS 標準の機能である AirPrint にも対応しているが、「ユビレジ エクステンション」とよばれる、レシートプリンタとユビレジアプリが連携するためのハード ウェアを開発している。ユビレジエクステンションとその対応機器を利用することで、ユビレ ジとレシートプリンタ、キャッシュドロア、バーコードリーダーの接続・連携が可能になって いる。 31 図 14: ユビレジエクステンション 「ユビレジ」の利用事例 つばめカフェ(運営:JR 九州) JR 九州は、2011 年 3 月、博多駅の開業に合わせ駅構内に「つばめカフェ」をオープンしたが、 「お店の雰囲気をこわさないレジ」としてオープン時よりユビレジを導入している。一日 400 人以上の来店が見込まれる中、 売上分析も含めしっかり対応できる POS レジとして効率的な販 売促進戦略に活用されてきた。 つばめカフェでは、カフェの雰囲気にあわせた利用を考え、全体デザインの際「カウンターま わりにはできるだけ物を置かず、すっきりとした店内にする」という考えがあったという。従 来型のレジスターはそれに反するものであるため、iPad で売上もしっかり管理できるユビレジ の導入を決めた。一日 400 人以上の来店が見込まれる中で、効率的に売上を集計・分析を行い、 特にピークタイムの把握による業務効率化等に利用している。 32 その後、同じく JR 九州が運営する飲食店舗「えきのカフェ」(大分駅)に採用され導入を開始。 今後、各駅ナカ店舗へユビレジの導入が広がることが予想されている。また、スペースが限ら れ、固定回線の配線に制限のある駅ナカ店舗と iPad の携帯電話回線や Wi-Fi ネットワークを 利用可能なユビレジとの親和性は高く、九州内に留まらず全国的に駅ナカにて iPad レジが広 がっていく可能性がある。 蓮沼ウォーターガーデン 千葉県九十九里浜の海沿いにある蓮沼海浜公園内に昭和 50 年オープンした蓮沼ウォーターガ ーデンは、毎年7月中旬から8月末まで営業している千葉県最大級の屋外大型プールである。 ユビレジは、“iPad だけ”のシンプルさ、タッチパネルで軽快に操作することから、入園券を 販売する券売所に導入を決定した。 ユビレジ導入前はレジがなく、電卓で販売や集計を行っていた。しかし、割引券の種類が非常 に多く、入園者も 1 日に 1 万人を超えることもあるため、会計に時間がかかっていた。 改善のために POS レジを導入するに当たり、他と比較して圧倒的に安いこと、狭い券売所にも ってこいの“iPad だけ”のシンプルさ、タッチパネルで多種多様な割引券を瞬時に探せる軽快 な操作性等が決め手となった。 プールで販売する焼きそば等の軽食をどのくらい作ればよいかを判断するために、入園者数を リアルタイムで把握する必要がある。導入前は手作業で集計していたが、ユビレジは自動的に 集計し、Web で見ることが出来るので、非常に楽になった。また、集計が手作業から自動集計 になることで労働時間が大幅に短縮され、人件費の削減となっている。 33 サービス構成について ユビレジは、店舗で使う iPad とそのアプリ、およびレジの入力データを集積し分析する Web サービスの二つの要素で構成されている。 ユビレジアプリは iPad 専用アプリとして提供されており、iOS SDK を利用したネイティブア プリとして開発されている。 ユビレジ Web サービスは、開発言語としては Ruby を用いており、Ruby on Rails をフレーム ワークとして採用している。また、サーバサイドのデータベースとして、MySQL を採用して いる。 これらのアプリケーションは、現在は国内のプロバイダが提供する VPS サービス上に構築され ている。ただ、現在順調にサービス利用者数が伸びていることから、簡単にスケールアウトが 可能なアプリケーション・プラットフォームを模索しており、セールスフォース・ドットコム が提供する Heroku などの PaaS(Platform as a Service)を利用する可能性について検討して いるという。 端末から入力データのサーバへの送信は、通常、会計処理を行う都度行われるが、通信環境が 良好でない場合を想定して、サービスへの接続が困難な場合には一旦ローカルで記録を残して おき、接続が復旧した場合にまとめて送信するという仕組みとなっている。 特筆すべき点として、在庫管理や会計システムといった企業内の既存のシステムとの連携のた め、Web サービス API を公開し、開発者への提供を積極的に行なっている、という点が挙げら れる。この Web サービス API は、そのまま iPad 上のユビレジアプリとの通信にも利用されて いるという。 34 図 15: サービス構成 事例からの学習 ~ クラウドサービス開発 ~ Web サービスのスケールアウト 利用者数が増加した際にスケールアウトを可能にするサービスの設計・構成は、エンタープラ イズ向けクラウドサービスの間でも特に多数のユーザを抱えるサービスにおいて重要視されて きている。スケールアウト可能なサーバ構成を独自で構築するという他に、Heroku など、ス ケールアウトが用意な PaaS を利用するという選択肢もある。 現在、ユビレジサービスは今後のユーザ数増加をにらみ、サービスのスケールアウトが可能な 構成を模索している。 35 データベースの運用管理 企業向けのクラウドサービスでは、データの取扱いに細心の注意が求められることが多い。ユ ビレジでは、顧客の取引データを扱うため、データベースの運用管理は慎重に行なっている。 特にバックアップについてはかなり頻繁に行なっているという。 Web サービス API の提供 現在、外部連携を実現するために Web サービス API の提供を行なっているクラウドサービス は少なくないが、スマートデバイス×クラウドのサービスでは、本事例でとりあげているユビ レジのように、デバイス側アプリケーションと Web サービス間の通信にも同じ API を利用す るケースが多い。このため、単なる Web アプリケーションのみならず、Web サービスの API を設計し開発する能力についても次第に重要になってきている。 データベースを利用した集計処理 ユビレジでは、最近の売上と客数、会計数などのデータを分析するために、データベースを利 用した集計処理をおこなっている。このように、リアルタイムで集計が必要とされるアプリケ ーションの開発を行うためには、あらかじめ集計処理に最適なデータベース設計を行い、また アプリケーション開発時には効率の良いデータベース・クエリを記述する能力が求められる。 事例からの学習 ~ スマートデバイス開発 ~ 36 オフライン対応 ネットワーク環境は LTE や無線 LAN などの発展により飛躍的に向上しているが、やはりスマ ートデバイスはクラウドに常時つながるというわけではないのが現状である。そのような中で、 常時接続を必要とする POS レジシステムであっては、ネットワークの切断が販売業務の停止に なってしまいかねない。 ユビレジでは、サービスへの接続が困難な場合には一旦ローカルで記録を残しておき、接続が 復旧した場合にまとめて送信するという仕組みを実装している。これは、ネットワークの障害 時のみならず、ユビレジサービス自体の障害時にも継続して業務を行える仕組みであるといえ、 サービスの信頼性を補うのに寄与している。 今後望まれる人材について ユビレジ株式会社では、自社サービスに関するネイティブアプリの開発、およびサーバアプリ ケーションの開発に携わることのできる技術者を継続的に求めているが、その中でも、ユーザ エクスペリエンスを設計できかつ実装ができる人材は貴重である、としている。アプリケーシ ョンを頻繁に更新する必要があるため、モックアップなどの作成を通して開発の方向性を決め ることが多いが、その作成の際にもある程度実装が念頭にあることが大事だという。 本事例より抽出された、今後技術者に必要とされる能力 スケールアウトを意識したサービスの構成(PaaS の利活用) バックアップ/リストアなどのデータベース運用管理(MySQL) Web サービス API の設計および開発(Ruby on Rails 等のウェブフレームワーク) 37 ローカルストレージの活用によるオフライン対応(デバイスネイティブの SDK) 集計を用いるデータベース・アプリケーションの開発(MySQL) 38 事例 D 株式会社日立ソリューションズ「スマート e-trasus」 株式会社日立ソリューションズについて 日立グループのシステムインテグレーターである株式会社日立ソリューションズは、旧・日立 ソフトウェアエンジニアリング株式会社と旧・株式会社日立システムアンドサービスとが合併 する形で、2010 年 10 月に発足した。 同社の事業は、オンプレミス・クラウド連携を始めとする豊富なソリューションを、顧客の全 体最適の視点で組み合わせ、ワンストップで提供する『ハイブリッドインテグレーション』を 実現することを主軸としている。具体的には、コンサルティング、システム開発、運用・保守、 製品・サービス提供などを組み合わせて、IT ガバナンス、システム開発・運用管理、セキュリ ティ、業務対応、業種対応といった幅広いソリューションを提供している。 「スマート e-trasus」について 39 図 16: スマート e-trasus 日立ソリューションズが提供する「スマート e-trasus」は、タブレット PC やスマートフォン といったスマートデバイスの GPS センサと通信機能を使用し、インターネットを介してスマー トデバイスを持つ車両やスタッフの位置、ステータス等を把握することで、ヒト、クルマ、モ ノといった資産を最適に配置・活用し、業務効率化を実現する動態管理ソリューションである。 移動体に対して携帯電話などの移動体通信システムを利用してサービスを提供するという点で いわゆる「テレマティクスサービス」に分類されるが、据付型車載器を利用していた従来のサ ービスとは異なり、社会に広く普及しているスマートデバイスを車載器として導入するのが特 徴である。そのため、スマートデバイスをハブとして、動態管理だけではなく、顧客情報など を把握するための営業支援ツールとしても活用できる。 このスマート e-trasus では、 システム基盤からサービスまでをクラウドで提供することにより、 初期投資を必要最小限に抑制した上で短期間での導入を可能としている。また提供するサービ スは顧客のニーズに合わせて自由に選択することが可能であるという。 40 クラウドサービスを提供するセンターには、サービスを利用する顧客の事務所内の管理端末か ら Web ブラウザを経由してアクセスできる。このセンター側では各車輌の走行軌跡、位置、ス テータスなどが集積され、管理端末内の地図上にタイムリーに表示される。このため、配送、 訪問遅延等の状況を把握してお客様からの問合せに迅速に回答したり、 緊急リクエストが入っ た場合にも近くにいるスタッフをアサインするなどといった対応を行うことができる。また、 車載端末から取得した運行実績データを元として、運転・運行日報情報を画面/帳票出力するこ とも可能である。 図 17:動態管理サービス またセンター側でオリジナル POI(Point of Interest)を登録・配信することが可能で、例え ばヒヤリハット地点、走行回避箇所の登録、顧客の位置情報等、ユーザ独自のニーズに応じた POI を管理端末上で登録し、全ての車載端末に同情報を配信することができる。さらに SFA/ CRM システムと連携して、取引先情報を地図情報にマッピングして表示することもできる。 41 図 18:オリジナル POI 登録・配信サービス 図 19: CRM/SFA 連携サービス なお移動体のテレマティクスサービスにおいては地図ナビゲーションの機能は欠かせないもの であるが、競合の他社のサービスとは異なり、スマート e-trasus では地図情報及びナビゲーシ ョンのエンジンをすべてスマートデバイスに格納している。このため、通信環境に左右される ことなく、スムースなナビゲーションが実現できるという利点がある。 42 「スマート e-trasus」の利用事例 〜 機械保守 〜 機械保守業務を事業として営む B 社は、同サービス業務を行うため現在 350 台の車両を保有し ている。 B 社では、車両の事故が稼働率を下げる原因となること、また事故発生時にはブランドイメー ジが失墜するリスクがあることから、安心安全でエコロジーな運転を推進し、各車両のドライ バーの安心安全運転をフォローする必要性を感じていた。 そこで、スマート e-trasus を導入し、機械保守サービスを行う車両の動態管理を開始した。そ の際、スマート e-trasus の持つオリジナル POI 登録サービスを活用し、ヒヤリハット地点の 情報共有を行ったところ、各車両のドライバーの安心安全運転への意識が向上したため、事故 の発生率を低減できたという。 また、事故率が低減したことから、事故修理対応の車両入庫の必要がなくなったため、必然的 に車両の稼働率が向上した点が効果として大きい。そして、事故発生によるブランドイメージ の失墜を未然防止できた点も重要であるという。 <ポイント> オリジナル POI 配信機能を使った安全情報の共有により、車両の事故率を低減し、車両の 稼働率を引き上げた。 事故率を低減し、事故発生によるブランドイメージの失墜を未然に防止した。 サービス構成 43 スマート e-trasus のクラウドサービスは、複数の顧客でサーバ・インスタンスを共有するマル チテナント環境でサービスを提供しているが、特別に必要がある顧客に対してはプライベート クラウドについても個別案件として対応しているという。なお、サービスの基盤としては国内 のクラウドベンダーが提供している IaaS を採用している。 サーバ側の開発言語は Java で、Java サーブレットを利用して管理画面などの Web アプリを 提供している。データベースには MySQL と PostgresSQL の両方を利用しており、地理情報 など格納するデータの種類および目的に応じて使い分けている。 デバイス側のアプリケーションは、現在 Android OS 向けにのみ提供されいる。アプリの UI については Java で書かれているが、ナビゲーションエンジン、経路検索および地図表示など 速度が要求される処理については C 言語でプログラムの記述を行なっている。また地図情報に ついては、ゼンリンから提供されているものであるが、オフラインでも使えるようにアプリ内 にデータを格納している。 なお現在、Android 以外の OS にも対応が進められており、iOS 版、HTML5 を使った Web ア プリ版も予定されているという。ただしこれらにはナビ機能については当初は含まれない模様 である。 事例からの学習 〜 クラウドサービス開発 〜 位置情報・地理情報を利用したデータベース・アプリケーション開発 スマートデバイスには GPS などのセンサーが搭載されていることから、必然的にデータとして 位置情報・地理情報を扱う機会が多くなる。このため、これらの位置情報データを適切にデー タベースに格納し、効率的に検索するアプリケーションの開発が重要になってくる。 今回の事例では、具体的には、車両の近隣に位置する POI を検索し配信するなどといった場合 が相当する。 44 大量データの格納と分析 動態管理サービスにおいては、各車両から頻繁に走行情報データが送信されるため、結果とし て大量のデータがセンターに集積されることになる。この情報を適切に分析することによって、 活動エリアの重複や運転時間の過多などを導き出すことができる。 このように、クラウドサービス側に大量の情報が集積される場合においては、大量の情報から 効率的にデータを分析し結果を導出する技術、いわゆるデータサイエンスの知識が重要になっ てくる。 外部クラウドサービスとの連携 企業内で利用するデータは一つのサービスのみではなく、複数の既存のシステムにまたがって 保管されている場合が多い。これらのシステムがクラウドサービスとして提供されている場合 は、API を利用して連携することが考えられる。 今回の事例では顧客情報を SFA/CRM サービスから API を利用して取得し、データに含まれる 位置情報をオリジナル POI として配信するサービスを提供している。 事例からの学習 〜 スマートデバイス開発 〜 GPS センサーを利用したアプリケーション開発 スマートデバイスには通常カメラや加速度センサーなどの各種センサーが付属しているが、そ の中でも GPS センサーは特に活用されることの多いセンサーのうちの一つである。スマートデ バイスの OS ではデバイスの現在位置を GPS などによって特定するための API を開発者に提 供しており、この API を使って開発者は地図情報と絡めたアプリケーションを開発することが 可能となる。 45 本事例では地図情報、経路検索やナビゲーションエンジンと絡めて、動態管理を実現するアプ リケーションの枢軸機能として有効活用されている。 地図情報を利用したアプリケーション開発 スマートデバイスの OS には、地図情報を表示する API が備えられている場合がある。この場 合、前述した GPS によって取得したデバイスの現在位置、あるいはサーバから配信された POI 情報などを地図上にマッピングするアプリケーションを簡単に開発することができる。 本事例では、Android の提供する地図サービス(Google マップ)については利用せず、独自に 契約した地図データをデバイス内のローカルに保存する形式をとっているが、いずれにせよ地 図情報と位置情報を組み合わせたアプリケーションを開発することは非常に多いと考えられる。 今後望まれる人材について 日立ソリューションズにおける製品開発の現場においては、プログラム技術ももちろんではあ るが、HTML5 といった最先端技術に興味を持ち、継続して学べるような人材が望ましいと考 えられている。また、ちゃんとした設計技術を学べるような機会が人材の育成には重要ではな いかという。 技術以外の面では、個人レベルではない製品開発を行う必要があるという観点から、コミュニ ケーション技法について学んだり、共同作業を行うといった訓練が必要なのではないかという 意見である。 本事例より抽出された、今後技術者に必要とされる能力 位置情報を活用したデータベース・アプリケーション開発(MySQL/PostgresSQL) 46 外部サービスとの連携(Web サービス API) センサーを利用したアプリケーション開発(GPS) 地図を利用したアプリケーション開発(マップ API 等) 47 まとめ 今回の事例調査の結果、すでに多くの事業者がクラウドコンピューティングサービスとスマー トデバイスを掛けあわせたビジネスを提供していることがわかった。今後、スマートデバイス およびクラウドに関わる情報処理技術者を育成する上で参考となるよう、以下に調査内容をま とめて分析し、記載する。 クラウドコンピューティングについて クラウドコンピューティングが急速にエンタープライズシステムに普及している原動力として、 近年の IaaS(Infrastructure as a Service) および PaaS (Platform as a Service) の発展がある。 これにより、企業ユーザは、従来の技術資産(ソフトウェアおよび人的なものも含む)を活か したまま、クラウドコンピューティングサービスを提供できるようになった。また、基盤部分 を他社サービスに委託することで、新規開発の際にもサービス開発のみに注力しておけるとい うメリットもある。 実際に、事例調査で取り扱った数社においても、バックエンドを他社の提供する IaaS に委託 しているケースは多く、また今後 PaaS への移行を検討している事例もあった。 このような状況から、今後、クラウドコンピューティングサービスの提供に関わる低レベルレ イヤーの知識や技術については、従来ほど必要とされなくなるのではないかという予想がある。 具体的には、IaaS の普及によってネットワーク配線やディスク管理などをするインフラ専門の 技術者が、そして PaaS の普及によって OS およびミドルウェアの管理者が、それぞれ不要に なるというものである。 これについては幾分か信憑性はあるが、現場の声を聞く限りはそのまま不要論が適用されるよ うな形にはならないだろう、というのが本調査における結論である。 48 これには、以下の理由がある。まず、専門の管理者の不必要性は、そのまま知識の不必要性と イコールではないということである。特に、すぐ下のレイヤーが何をしてくれているか、ある いは何をできないか、といったことを把握しておくことは、クラウドコンピューティングにお けるスケーラビリティの実現においては常に必要とされるものである。実際、今回調査した複 数事例において、OS レイヤーの管理能力やデータベース運用の知識は技術者に必須であると している。 さらに、アプリケーション開発者がインフラ管理業務を兼ねることが多くなっている、という 状況がある。これは、前述の IaaS/PaaS によってインフラ寄りのレイヤーの管理負担が軽減し たためであるといえる。今後は、アプリケーション開発だけでなくサービスの運用管理能力も 同時に持ち合わせている技術者が重宝される傾向が強くなるだろう。なお、こういった傾向は 「DevOps」という名前ですでに現象として認知されつつある。 以上のことを考えると、これからの技術者に対しては「アプリケーション開発専門」や「運用 管理専門」などの専門家(スペシャリスト)である以上に、複数の技術領域にまたがったマル チプレイヤーを目指すように促すべきかもしれない。 しかしながら、もちろんのことであるが、IaaS および PaaS を運営する事業者そのものにおい ては、低レベルなレイヤーからプラットフォームとなるサービスを組み立てることができる高 度な技術力が必要とされる。そのため、このレイヤーのスペシャリストはこれらの事業者から は大変重宝される人材になるだろう。ただ、プラットフォーム事業は寡占であることから、該 当分野のスペシャリストとして認知されるためには熾烈な競争に晒されることになるのは間違 いない。 なお、近年では、PaaS から更に発展して、BaaS(Backend as a Service)と呼ばれるサービス形 態も普及の兆しを見せている。今回は残念ながら事例として適切なものは得られなかったが、 今後念頭に入れておくべき動向であるといえる。 スマートデバイスについて 49 スマートデバイスについては、既に携帯電話市場において主流を獲得しているスマートフォン に加え、タブレット型デバイスの一般への普及が著しい。特に、エンタープライズシステムに おいては、このタブレットデバイスをターゲットとするサービスが急速に発展していることが、 今回の事例調査からもわかる。 これは、タブレットデバイスがビジネスを遂行する上で十分な性能と画面領域を持ち、ポスト PC として有力と考えられるからであろう。もちろん、未だ PC が得意とする領域は多い。事例 中でも管理画面を PC ブラウザ向け Web アプリケーションとした開発は多く行われていた。た だ、本事例にとりあげられたような利用シーンにおいてはタブレットデバイスに優位性があり、 今後もより多くのケースに利用されていくことが予想される。 しかしながら、スマートデバイスのアプリケーション開発を取り囲む状況については、未だ発 展段階であると捉えておかなければならないだろう。特に、スマートデバイスの OS に関して は依然流動的である。現在は iOS デバイスを想定した開発がリードしており、Android OS が それに続いているが、その他のプレイヤーも参入を開始している。また、OS の違いのみなら ず、ネイティブアプリケーション開発か HTML5 での開発か、あるいはそのハイブリッドか、 といった点もいまだ多くの議論の余地が残されており、各社試行錯誤の状態である。 事例調査のヒアリングをした現場では、それぞれのネイティブ OS のアプリを開発できる人材 が希少であるため、ネイティブ OS の開発ができる人材は即戦力として重宝されているが、上 記の事を考えると現時点で主流の OS のみに特化した教育プログラムを行うのは尚早であると 見ることができる。 長い目で見た場合には、特定のデバイスに特化した知識を身につけるより は、スマートデバイス全般に通用する知識を身につけたほうがよりよい。具体的にはタッチ操 作中心のアプリケーションのユーザーインターフェース設計、サーバとの通信方法、ローカル ストレージの利用方法、および各種デバイスセンサの取り扱いなどがあげられる。 特に、入社後の教育プログラムを充実させている企業などでは、必要な技術はその場で身につ けさせ、むしろ学びを消化するコアとなるものがあるかどうかを重視する傾向にある。あえて 言うならば、技術トレンドの流動性をしっかりと意識して、前向きに技術の最新動向にキャッ チアップしていくフットワークのようなものを育む必要性があるのではないだろうか。 50 51 平成 24 年度文部科学省 「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」 クラウド・スマートデバイス時代のITビジネスクリエータ育成の教育プログラム開発 ■実施委員会 ◎吉田 松雄 秋庭 英一 山本 匡 岩谷 大介 栗原 寛隆 高橋 秀也 南方 克也 大礒 洋明 大曽根 周一 清水 岡山 大園 飯塚 亮 保美 博美 正成 ■分科会 ◎岡山 保美 大園 博美 冨田 慎一 菅野 崇行 谷口 鈴木 吉岡 美由紀 研史 正勝 学校法人吉田学園 理事長 学校法人秋庭学園 理事長 学校法人小山学園 理事長 岩谷学園テクノビジネス専門学校 学校法人栗原学園 北見情報ビジネス専門学校 理事長 大阪市立大学 教授 株式会社ケイ・オプティコム 法人・公共事業推進本部 部長 コーデトーイズ株式会社 代表取締役 株式会社日立ソリューションズ 営業統括本部 流通営業本部 営業第2部 部長 株式会社ユビキタスエンターテインメント 代表取締役 株式会社KEIアドバンス 代表取締役 有限会社Aries 代表 一般社団法人全国専門学校情報教育協会 専務理事 株式会社KEIアドバンス 代表取締役 有限会社Aries 代表 株式会社マッシュマトリックス 代表取締役社長 吉田学園情報ビジネス専門学校 情報システム学科 スマートフォン・クラウド学科 有限会社Aries 株式会社KEIアドバンス 事業開発部 部長 一般社団法人全国専門学校情報教育協会 平成 24 年度文部科学省委託 「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」 クラウド・スマートデバイス時代のITビジネスクリエータ育成の教育プログラム開発 クラウド・スマートデバイスを利用した エンタープライズシステムの事例調査と研究 調査報告書 平成 25 年 3 月 学校法人吉田学園(吉田学園情報ビジネス専門学校) 〒065-0015 札幌市東区北 15 条東 6-231-2 問合せ先 一般社団法人全国専門学校情報教育協会 〒164-0003 東京都中野区東中野 1-57-8 辻沢ビル 3F 電話:03-5332-5081 FAX 03-5332-5083 ●本書の内容を無断で転記、掲載することは禁じます。 52