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ヨシエビの種苗生産
岡山県農林水産総合センター水産研究所種苗生産概要(平成23年度) ヨシエビの種苗生産 岩本俊樹・小見山秀樹・小橋啓介 栽 培 漁 業 推 進 の た め の 放 流 用 種 苗 と し て, 平 均 全 長 で加温し,M期以降は自然水温とした。飼育期間中の水 15mmのヨシエビ4,000千尾を目標に種苗生産を行った。 温は25~28.3℃であった。通気は水面が少し盛り上がる 程度とし,アジテータ(攪拌機)をN幼生期から0.5回転 生産方法と結果 /分で運転させ,ポストラーバ2~16期(以下,ポストラ ーバn期をP n期とする)までは1回転/分としたが,中心部 親エビ及び産卵・ふ化 2011年7月6日及び7日に,備 へ の 残餌 の 集積 が 著 しく 多 くなっ たた め, P 1 7 期 以降 は 前市日生町地先の小型定置網で漁獲され,日生町漁業協 0.75回転/分,P 28期以降は0.5回転/分とした。照度は遮 同組合に水揚げされたヨシエビの成熟個体の中から生殖 光幕を用い調節し,M 1期までは飼育水に添加したテトラ 腺が十分発達したものを購入し産卵用親エビとした。酸 セルミス,キートセラス 素通気及びエアレーションを施した0.5k l ポリタンクを ラス トラックに載せ,当水産研究所まで約40分間かけて輸送 開とした。また,これら植物プランクトンを増殖させる した。搬入後は流水下の1k l 水槽に収容し,当日の夕方 必要がなくなったM 2期以降は全閉とした。 に飼育水槽(屋内120k l )に設置したナイロン製モジ網 カルシトランス及びキートセ グラシリスの増殖を維持させるために半開から全 餌料 初期の餌料として約400千cells/m l のテトラセ 生簀(160経,1.2×2.4×深さ1.0m)に7月6日は133尾, ルミスを各水槽に8~10k l 添加した。テトラセスミスが 7月7日は136尾収容して産卵させた。飼育水槽の水温は 十分添加できなかった水槽には,ヤンマー株式会社製の 産卵促進のため25℃に加温した。収容翌朝に親エビを全 生物餌料キートセラス て取上げて産卵状況を確認し,ふ化幼生数を計数した。 を各水槽12l ずつ添加した。 カルシトランス及びグラシリス 次亜 塩素 酸ナトリウ ム溶液(有効塩 素量12%)を1m l / l また,モジ網を撤去後,水槽底に堆積した糞や死卵をサ イフォンで除去した。 添加した砂ろ過海水に北米産アルテミア耐久卵を投入し 産卵結果を表1に示した。7月7日には親エビ133尾のう て殺菌し,そのままの状態で2時間通気した後,水道水 ち84尾が産卵し,21,600千尾のノープリウス幼生(以下, で十分に洗浄したものをM期以降P 10期までヨシエビ飼育 N幼生とする)を得た。また,7月8日には親エビ136尾の 水槽に直接投入して飼育水槽内でふ化させた。 うち84尾が産卵し,18,630千尾のN幼生を得た。 微粒 子 配 合 飼 料 (プ ロ グ ロ ス 1及 び プロ グ レ ッシ ョ ン 2;ソルトクリーク社製)をZ期からM期にかけて1日2回給 表1 収容 採捕月日 収容尾数 産卵尾数 回次 (月/日) (尾) (尾) 1 7/6 133 2 7/7 計(平均) 産卵結果 餌した。プログレッション3(ソルトクリーク社製)をP 1 ノープリウス数 平均産卵率 (千尾) (%) 63.2 親エビの平均値 全長(cm) 体重(g) 84 21,600 13.4 136 84 18,630 61.8 13.5 22.1 269 168 40,230 (62.5) (13.5) (21.5) ~P 4 期1日2回給餌した。給餌方法は,プログロス1と同 様の方法とした。P5期以降は,クルマエビ用配合飼料(ヒ 20.9 ガシマルK.K)を1日4回に分けて手撒きで給餌した。なお, 配合飼料は成長に合わせ各粒径のものを給餌した。 飼育には屋内120k l 水槽6面を使用した。すなわ 飼育 PAV検査 PAV(クルマエビ類の急性ウイルス血症)の ち,ふ化が終了したN幼生期の7月7日及び8日にサイフォ 防疫対策として,産卵した親エビから各日60尾ずつ,出 ンにより分槽し,それぞれ2水槽ずつ追加して合計6水槽 荷前の稚エビは各水槽60尾ずつについて,PCR法による とした。飼育水には砂ろ過海水を使用し,分槽後,真菌 PRDV(PAV原因ウイルス)遺伝子の検査を行った。検査部 1)2) 症対策 として淡水を徐々に注水し,ゾエア1期(以下, 位は,親エビでは血リンパとし,稚エビでは体全体とし ゾエアn期をZ n期とする)までに塩分を約22まで低下させ た。親エビは5尾を1検体とし,稚エビでは60尾を1検体 止水飼育とした。ミシス期(以下,ミシスn期をM n期とす とした。なお,稚エビについては,保菌検査の前日から る)以降は0.5回転/日で海水を注水し,飼育後期には3~ 餌止めを行った。それぞれの検査結果はいずれも陰性で 3.5回転/日まで増加させた。水温はZ期まで27℃程度ま あった。 - 1 - 間引き放流 放流した。平均生残率は,間引き放流も死亡に含め平均 密度が高く,小型個体が多く観られた3 で約20%(13~27%)であった。 水槽(水槽番号G1~3)の稚エビの全長を均一にする目的 で,P 2期及びP 8期に水槽内の飼育海水1/3~1/2を強制排 稚エビ100千尾当たりの給餌量は,テトラセルミスが 718 l ,キートセラス 水し,間引き放流を行った。 飼育結果 カルシトランス及びグラシリスが 0.48 l ,微粒子配合飼料が110g,アルテミア卵が150g, 疾病や斃死はみられず,飼育は順調であっ た。毎日午前8時に水温及びpHを携行型水温pHメータ 配合飼料が7.5kgであった。 種苗の出荷内訳を表3に示した。輸送用ポリタンクへ ーD-53(HORIBA,ltd.)で,塩分を携行用マルチ水質測定 の収容密度は例年どおり16kg/k lとした。 器Multi3410(WTW社製)で測定した。飼育期間中のpHは 7.65~8.6,塩分は21.6~30.9であった。各飼育水槽の 尾数は,N幼生期,Z 3期,M 3期に,エアーが吹き出してい 文 献 る付近3カ所程度の飼育水500m l に存在する種苗を計数し 推定した。 1) 広島県水産試験場,1988:病害対策研究,広水試事報,52-53. 飼育結果を表2に示した。7月7,8日~9月7日の間飼育 2) 近藤正美・杉野博之・池田善平,1996:希釈海水によるヨシ し た 結 果 , 平 均 全 長 17.8mm(5.9~ 49.3mm)の 稚エ ビ を エビの種苗生産,岡山水試報,11,115-116. 6,108千尾生産し,中間育成用として出荷した。また, 3) 増成伸文・池田善平・樫東裕子,2006:ヨシエビの種苗生 7月8日~9月9日の間飼育した結果,平均全長15.4mm(5.6 産,岡山水試報,21,108-112. ~41.5mm)の稚エビを1,415千尾を生産し牛窓地先に直接 表2 水槽 水槽 No. G-1 G-2 G-3 G-6 G-7 G-8 G1~8計(平均) 開始時 終了時 尾数 密度 容積 月日 (kl ) (月/日) (千尾) (千尾/kl ) 120 120 120 120 120 120 720 飼育結果 7/7 〃 〃 7/6 〃 〃 7,200 7,600 7,300 5,100 6,500 6,700 40,400 60.0 63.3 60.8 42.5 54.2 55.8 (56.1) 月日 総重量 (月/日) (kg) 9/7 〃 9/9 9/7 〃 〃 平均体重 尾数 (mg/尾) (千尾) 93.3 66.6 90.5 117.4 89.7 130.7 588.2 *:間引き放流分も,死亡として計算した. 表3 出荷 出荷先 月日 9/7 尻海増殖場 9/9 牛窓町地先海面 合計(平均) 種苗の出荷内訳 総重量 平均全長 尾数 用途 (kg) (mm) (千尾) 497.7 17.8±6.67 6,108 中間育成 90.5 15.4±5.16 1,415 直接放流 588.2 (17.4±6.46) 7,523 - 2 - 91.8 66.4 63.9 85.5 89.3 76.4 (78.9) 1,016 1,003 1,415 1,374 1,005 1,711 7,523 平均全長 (mm) 密度 (kg/kl ) (千尾/kl ) 18.1±6.03 0.78 17.0±5.35 0.55 15.4±5.16 0.75 18.2±6.79 0.98 19.8±8.40 0.75 16.2±7.24 1.09 (17.4±6.46) (0.8) 飼育 日数 (日) 8.5 60 8.4 60 11.8 62 11.4 61 8.4 61 14.3 61 (10.4) 60~62 生残率* (%) 14.1 13.2 19.4 26.9 15.5 25.5 (19.1)