Comments
Description
Transcript
タブレット PC を活用した 重度重複障害児童生徒の
タブレット PC を活用した 重度重複障害児童生徒の認知力及び コミュニケーション力を高めるための指導 研究推進委員会 1 はじめに 本年度、本校は「公益財団法人教育公務員弘済会」より助成金を受けることとなり、その有効 な活用について研究推進委員会で検討した。その結果、タブレット PC を購入し課題となってい た「重度重複障害児童生徒の認知力及びコミュニケーション力を高めるための指導」に取り組む ことにした。 2 本校の現状と課題及び研究主題 本校は、とちぎリハビリテーションセンターに併設する肢体不自由の特別支援学校であり、 小学部10名・中学部11名合わせて21名の児童生徒が在籍している。教育課程は、小中学 校に準ずる学習を行う通常の課程、その他の障害を併せもつ重複障害児童生徒に対応する課程 1、重度重複障害児童生徒に対応する課程2の3つである。課程1・課程2で学習する児童生 徒は20名で、そのうち課程2で学習している重度重複障害児童生徒は14名とその割合は大 変大きい。課程2の児童生徒は表情・視線・身振り・発声などにより快・不快や簡単な要求を 表出することができるが、教師がその内容を正しく読み取ることは難しく、一部の教師とのや りとりに限られてしまうことが多い。また、課程1の児童生徒は簡単な会話を言葉や身振りサ インで伝えることができるが、必要なことを適切に伝えたり話を正しく理解したり継続して正 しく活動したりすることが難しい。そこで、研究主題を「重度重複障害児生の認知力及びコミ ュニケーション力を高めるための指導」とし、簡単な気持ちや要求を周りの人に伝えたり、活 動内容を十分に理解し充実した学習を進めたりするための教育機器を活用した指導方法につい て研究することにした。 3 研究方法 (1) 研究期間 平成24年7月~平成26年3月 (2) 研究組織 研究推進委員会及び全職員 (3) 研究の進め方 ・研究の方向性及び購入物品の選定については研究推進委員会で検討する。 ・実践研究は推進員による計画に基づいて全職員で当たる。 ・定期的に研究推進委員会を設け共通理解を図りながら進める。 4 研究内容 (1) タブレットPCを使った認知力およびコミュニケーション力を高める指導 (2) スイッチを使った認知力およびコミュニケーション力を高める指導 - 26 - 5 実践内容 (1) 研修会 ① タブレットPCの基本操作 情報教育担当者と協力して、購入したタブレットPCに基本的なアプリを入力し その基本的な操作方法やアプリの活用法などについて研修を行った。取り入れられ る学習場面等が明確になり活用意欲を高めることができた。 ② タブレットPCの基本操作及び有効な活用法 数ヶ月の実践を経て見えてきた課題や疑問を解決し、さらに発展的な活用方法を学 ぶために、那須特別支援学校の菊地先生を招いて研修を行った。紹介していただいた 多くの具体的な活用法を実際に操作することで、タブレットへの苦手意識が減るとと もに今後の取組へのステップとなった。 (2) タブレットを使った取組 ① 「ナゾルート」 「サウンドタッチ」等のアプリケーションを利用した実践事例 自立活動の時間に「ナゾルート」を利用して初期段階の指導を行った。鉛筆を持って机 上学習に取り組むことが苦手な児童も、なぞった軌跡が映像と音声でわかりやすいため、 集中して取り組めるようになっていった。また、「サウンドタッチ」を利用した学習では 動物や楽器を自由に選択し、好きな動物の鳴き声や楽器の音色を楽しむことができ、自分 から積極的に学習に取り組む姿が見られるようになった。 ② タブレットの機動性を生かした実践例 写真機能と手元で見られる機動性を利用して、生活単元学習での「買い物学習」の事前 学習に取り入れた。行く場所や実際に買ってくるものを映像で示すことにより、学習内容 についての理解が深まり見通しをもって活動することができたようだ。 - 27 - ③ 「お絵描きパッド」を利用した年賀状作り 画面上で、①背景を選ぶ、②自分の写真を貼り付ける、③文字を貼り付ける、④飾りを 付ける、この4つの操作を行うことで年賀状づくりに取り組んだ。手指の巧緻性の不十分 さなどから、年賀状などの小さな部分に書き込むことが難しい生徒にとっては、操作位置 を簡単に移動できたり、貼り付ける場所を簡単に拡大できたりするタブレットPCはたい へん有効であった。作成したものを直接パソコンにつなぎ、簡単に印刷まで行えることも 生徒たちの興味関心をおおいにそそったようだ。 ④ その他の取組(アンケートより) 自立活動 ※は課題等 ・予め入力しておいたゲーム(モジルート、ナゾルート、太鼓の達人 など)の中から好きな物を自分で選択させて自由に取り組ませた。 ・始点と終点の認識、直線と曲線のなぞり書きができるようになり数 字やひらがなを書く力につながった。 ※数概念、平仮名等の学習課題にあったソフトがあるとよい。 自立活動 ・動物や楽器のイラストを触り、聞こえてくる鳴き声や音を聞く。 ・モジルートで教師と一緒に線をなぞる。 ・自分から手を伸ばして触りタッチしたりなぞったり楽しんで取り 組んだ。 ※様々な場面で利用し、まずは慣れることが大切である。 生活単元学習 ・買い物学習での活動の手順(絵や写真)をタブレットPCに入力し ておき、活動の前に生徒に見せて確認をしながら学習を進めた。 ・見通しをもってスムーズに活動することができた。 ※画像が鮮明なので分かりやすく、必要な部分を拡大して見せること ができた点がよかった。 ※写真カードのようにすぐに提示できず生徒を待たせる場面が生じて しまった。生徒の活動を妨げないよう事前の準備を十分に行うこと、 教師が使い方を熟知することが大切である。 ※校外学習などで使用するにはもう少し小さく軽いとよい。 - 28 - 日常生活の指導 ・清掃活動の分担や手順の写真をタブレットPCに入力しておき、活 動の前に確認しながら行った。 ・自分の担当について十分に理解し落ち着いて取り組むことができた。 気持ちがそれてしまったときも、タブレットPCで確認することで 再び意欲的に取り組むことができた。 ・タブレットPCの操作にも少しずつ慣れてきて、自分から次の画面 をめくる様子も見られてきている。 ※他の画面に簡単に切り替わらないようにする方法があるとよい。 ※パワーポイントのように図と文字を入れた画面を簡単に切り替える ことができるとよい。 ※より重度な生徒への活用方について研修したい。 算数 ・タッチすると火花や音が出るゲーム教材を「ごほうび(お楽しみ)」 的な位置づけで使用した。 ・自主的に繰り返しなぞったり、軽くたたいたりして取り組む様子が 見られた。 ※数字の学習等につながるような内容に発展させていきたいが、どの ように興味関心をもたせていくかが課題である。 6 まとめと今後の課題 タブレットPC教材は触ると目に見える反応(同じ反応)が返ってくる。それは「反応を期 待して触る」つまり「意思をもって触る」という「代替手段の利用」の基になる活動の練習と しても大変有効であると言える。しかし、今回の取組を見てみるとそれだけでなく、 「認知力と それに関連した動作を引き出す」 「見通しをもたせる(活動内容等の確認) 」 「意欲的な活動を引 き出す」 「上肢や手指の動きを補う」等の取組が実践され、限られた回数の利用の中で、子ども 達はその実態に応じて興味関心を示し意欲的に取り組み、成果をあげていることがわかる。 また、今後取り組んでみたい内容として、社会科(地理の学習で必要なときに必要な視覚教 材を提示する) 、英語科(外国の理解のための視覚教材、ネイティブな発音、英会話)などもあ がっている。これらは今回の研究課題からははずれるが、タブレットPCの有効な活用法の一 つである。現在は様々な規制により実施できないインターネットとの接続が可能になれば、こ れらの活用法も実践することができるので、その方法もさぐっていきたい。 今回は教育機器の選定に時間がかかり、研究実践に十分な時間をとることができなかった。 タブレットPCの教育的利点は計り知れないものがあるが、それを生かすためには十分な研修 と準備が必要であることも痛感した。また、研究実践を深めるためには、研修だけでなくそれ ぞれの学級・学習グループの取組について共通理解を図ることも大切であることがわかった。 これらの反省をふまえて、来年度も研究推進委員会を中心に研究実践を継続していきたいと考 えている。アメリカのハリケーン災害により到着が遅れ十分な取組ができなかったスイッチ教 材についても、引き続き取り組んでいく予定である。 - 29 - 平成23年度 JICA教師海外研修(ラオス)実践報告 栃木県立わかくさ特別支援学校 中学部 角藤千亜紀 ● 実践教科等 総合的な学習の時間 ● 時間数 2時間 ● 対象生徒 肢体不自由特別支援学校 中学部全課程 ● 対象人数 11人 〔1〕単元名 「しあわせってなあに?~ラオスをとおして~」 〔2〕単元の目的/目標(背景を含む) ・第一段階(主に重複障害学級課程2対象) ラオスの音楽や映像・写真などたくさんの刺激を経験し、刺激を受け入れることができる。 ・第二段階(主に重複障害学級課程1対象) ラオスという国があることを知り、興味をもつことができる。ラオスの人々を通して幸せにつ いて考える ことができる。 ・第三段階(主に通常学級対象) ラオスの位置や食文化などについて知り、外国に対して興味をもつきっかけを得る。ラオ スの人々や自分の幸せについて考えることを通して、人に共通する価値観を見つけること ができる。 本校の教育課程 通常学級・・・中学校学習指導要領に準じて教育課程を編成する。また、「自立活動」を加 える。 重複障害学級課程1・・・各教科等を合わせた指導を中心に教育課程を編成。 重複障害学級課程2・・・自立活動の指導を中心に教育課程を編成。 〔3〕単元の構成 時 本時のねらい、テーマ 学習活動・学習内容 使用教材 限 評価 の 観点 1 2 【ラオスはどんな国?】 ラオスという国 があることを 知り、おおまかなイメージをも つ。 ・教 師 が世 界 地 図 、写 真 、実 ・ セ パ タ ク ロ ー ・ 世 界 態度 物 などを提 示 しながら説 明 す 地 図 ・ 国 旗 ・ 写 真 ・ シ 発言 ることを聞く。問いかけに応え ン ・ も ち 米 入 れ ・ ご 飯 る。 茶碗 【ラオスか日 本 かあててみよ う】 ゲーム的 要 素 のある活 動 に 楽 しみながら取 り組 み、ラオ スの食べ物に興味をもつ。 ・ 十 数 枚 の 食 べ 物 カ ー ドを と り、日 本 のものかラオスのも のか当 てる。「日 本 ボード」と 「ラオスボード」に張 り最 後 に 教師と共に正解を確認する。 - 30 - ・ラオスと日 本 の食 べ 物カード・ラオスと日 本 の食 べ物 写 真 ボー ド 【しあわせインタビュー】 ・教 師 がラオスで行 ってきた ラオスの人々がどんなときに 幸せインタビューのスケッチブ 幸せを感じているのか知る。 ックと実際のインタビューの映 像を見る。 ・円 になり音 楽 に合 わせて紙 をまわした後 、インタビューの 結果を読みあう。 【ラオ スの 人 の しあわせ って なあに?】 ラオスの人 々の「しあわせの も と」 は 「 人 との つ なが り 」 で あることを知る。 ・実 際 にインタビュー で使 ったスケッチブッ ク ・プ ラ ズ マテ レビ ・ イ ンタビューの答えが一 人ずつ書かれた紙・ラ オスのCD ・教 師 の提 示 する3つの選 択 ・ 「 し あ わ せ の も と 」 カ 肢カード(おかね・けんこう・人 ード・ 絵 が 描 い てある とのつながり)からラオス人の 3つの選択肢カード 「しあわせのもと」は何 か考 え る。 【わたしたちはどうだろう・・・】 ・感 じたことや考 えたことを挙 活 動 をきっかけに、自 分 にと ・白 紙 のしあわせイン って「しあわせのもと」はなに 手により発表する。 タビューカード(宿題 ・「どんなときが しあわせ です か、これから考えはじめる。 用) か? 」 と書 かれ た 紙 を宿 題 と して持ち帰る。 〔4〕授業の詳細 【ラオスはどんな国?】 ~実物を見せてラオスを紹介する場面の一例~ 教師 「これはどうやって 使うでしょう?」 生徒 「う~ん。 カーテン?」 教師 「こうやって使います。 これは、ラオスのスカートです。 シンといいます。」 【ラオスか日本かあててみよう】 ~生徒がカードを張った後の「日本ボード」と「ラオスボード」~ - 31 - 【しあわせインタビュー】 ~インタビュー結果の例~ 「どんなときがしあわせですか?」 「息子と娘が毎日学校に行って勉強を続けられる」 「友だちとあそぶ」 (村のお父さん) (こどもセンターに通っている小学生) 【ラオスの人のしあわせってなあに?】 ~ラオスの人の「しあわせのもと」はなんでしょう?~ 〔5〕児童・生徒の反応/変化 ●印象に残った授業の一場面● ~主食である「カオニャオ」を手でまるめて食べるジェスチャーをし、日本とラオス の食文化の違いを伝える場面で~ え~!きたない!!! 生徒A でも、日本人だっておにぎりを手で食べるよ ・・・そっか!習慣なんだ! 教師C 生徒B その後の授業者のコメント 「習慣!よくでてきたね。ラオスの人も日本人もそれぞれいつもの食べ方が一番おいしく感 じるよね」 ~子どもたちや授業参加者が自由に発言し、会話の中で発見し、自分たちでマイナスのイ メージからプラスのイメージへ変化させることができた場面。~ - 32 - ●提出してもらった宿題から● 「どんなときがしあわせですか?」 ・かぞくがけんこうでいるとき。ともだちとわらっているとき。 ・てれびであらしをみているときがしあわせです。 ・あいけんとふれあう。 ・おねえさんのカレーをたべたとき。 ・おいしいものをたべているとき。(ぴざ・こーら) ・みんなでゲームをしたりほんをよんだりカラオケをしたりしているとき。 (原文のとおり) ●授業後のやりとりから● 教師(授業者) 「どんなときがしあわせって感じ る?」 生徒(通常学級2年 療育施設から通学) 「人に喜んでもらったときとみんなが喜んで笑ってくれ たときかな。」 「たとえばどんな?」 「本をつくって、幼児さん(療育施設で生活を共にして いる)に読んであげたとき。笑ってくれるから、また本 をつくりたくなるんだ。センター(療 育 施 設のこと)で、 みんなが喜んでくれると嬉しくてまたやってあげようか なって思う。ちっちゃい子を笑わせるのも好き。」 「ラオスと日 本 の同 じところはあると 思う?」 「ええと・・・。他人想いなところかな。」 「私 は人 につくすのが好 きだから、ラオスの人 と同 じ だなって感じたよ。」 〔6〕授業実践の成果と課題 ・授業実践の理由 担当 している重度の生徒 たちとかかわる中 で、教 師には「どんなに障害が重くても通常 の子どもと同じように大切なことを伝える」役割があるのではないかと考えるようになった。 その理由から、あえて中学部全課程での授業展開を行った。 ・一人一人の生徒に応じた課題設定の必要性 通常学級の生徒には、日本とラオスの関係性や国際協力についての課題、重複障害学 級の生徒にはラオスの楽器の音色や食べ物の匂い等、五感で伝えられる課題があった。 生徒たちにとって「しあわせ」の概念はまだ難しかった。「楽しい」「嬉 しい」などの言葉を 加えて説明すると「しあわせ」についてイメージをもちやすかったのではないか。 本校の大半の生徒は療育施設から通学し、家族と共に生活できる生徒はごく少数であ る。生徒たちの成長していく過程や現在生活している環境は多様であり、それに伴って「し あわせ」についての感じ方もそれぞれ違うのではないかということをもっと配慮するべきだっ た。 発達段階や障害に違いのある集団での授業を行う場合、特に実態把握を綿密に行う必 要があると思った。実態 把握において、まずは一 人一人の特性を理解すること、課程など の小集団の実態を理解して「何が分かって何が分からないか」を明確にしておくことが大切 だと感じた。加えて、子どもの生活全体に着目して「どう感じるか」を考えることも実態把握 の一つだということが分かった。 ・教材提示の仕方 今回の授業 実践 では、ラオスに興 味をもってもらうきっかけとして、ラオスと日本の食べ 物を比較する場面を設けた。最も身近である「食べ物」の写真を子どもたちは楽しそうに見 ていて、自分たちで考えながら生き生きと活動することができた。しかし、違う種類の料理や - 33 - 食材 を使ったことで子どもたちにとっての比較 対 象 がぼやけてしまった。今 後は一 人 一人 の実態に合わせて、分かりやすく効果的な教材を精選することが大 切だと感じた。教材 を 精選した上で提示の仕方を工夫していきたい。 ・ティームティーチングの良さを生かす 本校では、ほとんどの授業をティームティーチングによって実施している。ティームティー チングには一人一人に合わせたきめ細やかな指導を実現し、子どもを多角的に捉えること ができるという良さがある。今回 の授 業 実 践 では、他の先 生方 もラオスに興 味をもち協力 的に授業に参加していて、自然に教師と生徒が学び合う雰囲気をつくることができた。しか し、授業 者である私がすべて進行 し、他の先生 方 と十分に共通 理解が図れないまま授 業 を進めてしまったため、ティームティーチングの良さを生かしきることができなかった。 〔7〕参考文献(引用文献・参考資料) ・『平成23年度 学校要覧』 栃木県立わかくさ特別支援学校 ・『平成21年度教師海外研修 授業実践報告集』 JICA地球ひろば ・『JICA ラオス事務所の概要』 ラオス事務所 ・『ICF(国際生活機能分類)の活用の試み-障害のある子どもの支援を中心に-』 国立特別支援教育総合研究所 〔8〕教師海外研修を終えて(感想・今後の展望) 教師海外研修において、地域を越えて校種も経験 年数も職歴も多種多様な10名の先 生方や JICA 職員の方とすべての活動を共にすることで、たくさんの刺激をもらった。この研 修の最も良かった点は視察するごとに参加者全員が分かったことや感じたことを発言し合 った点だと思う。他の方々の話を聞くことで自分一人では決して思い浮かばなかった考えに 触れることができ、自分が今までもてなかった視点から物事を捉えることができた。 国際 理 解 教育 を通して、異文 化やその国の実情 を障 害のある子どもたちにも分かりや すく教えると同時に自分の国や自分自身を見つめるきっかけをつくっていきたい。その上で、 人とのつながりや命の大切さなど、人間として大切なことを伝えられたら良いと思う。 今回の研修 は、授業 づくりを見つめ直す大 変貴 重 な経 験となった。授 業 とは、奥が深く 正解がなく、それ故に大変難しいものだということを再認識できた。自分の教員としての未 熟さを思い知った。今後は、今自分がいる環境を大切に考え、子どもたちに誠実に向き合 い、教師として人間としてじっくり時間をかけて成長していきたい。 - 34 - 平成 24 年度 教職 10 年目研修 課題研究成果発表資料 受講番号 学校名 1 わかくさ特別支援学校 研究テーマ 氏名 川津 美起 所属学部等 68 中3通常 伝える力を高める国語科の指導の工夫 ~実用的な国語の力を育むために~ 2 テーマ設定の理由 本研究で対象とする女子生徒は、本校の通常の学級に在籍し中学校学習指導要領に準ずる学習 を行っている。自力歩行が困難であるため移動には常に車椅子を使用しており、家庭の事情によ り親元を離れてとちぎリハビリテーションセンター内の「こども療育センター」に入所している。 本校卒業後は、特別支援学校高等部進学希望である。本人の将来の希望は「働きながら一人暮ら しをし、庭のある家に住んで花を育てること」である。その希望を叶えるためには、教科の学力 をしっかりと身につけること、特に国語の力(コミュニケーション力)を身につけることが大切 であると考える。日頃の生活の中で教師や友達と会話をしたり、自由に詩を書いたりすることは 好きで問題なく行えているが、国語の学習などで決められた課題に沿って自分の考えを話したり、 書いたりして相手に伝えることに関しては教師の支援を必要とすることが多い。本生徒自身も「何 から考えをまとめていったら良いのかわからず、あまり得意ではない」と言っている。そこで、 国語の学習において、目的や相手に応じて話したり文章を書いたりする表現の仕方を学び、自信 をもって自分の意図する事柄を相手に伝える力を身につけさせたい、と考え本テーマを設定した。 3 対象生徒の実態 (1)身体の状況および生育歴 ・中 3 女子、痙性両まひ ・下肢にまひがあり膝が伸びない。自力歩行が困難で移動には車椅子を使用している。 上肢にまひはなく、手指の操作性には問題がない。 ・生後 10 か月の時に母と死別。 2 歳からこども療育センターに入所して集団生活を送っている。 父親の住む自宅に帰省することはあまりなく、生活上の経験が不足している面がみられる。 ・WISC-Ⅲ 全IQ110 言語性IQ103 動作性IQ115 (平成23年3月実施) - 35 - (2)コミュニケーション面での実態 (話すこと) ・言語を用いて流暢に話すことができる。慣れた相手とであれば自分からよく話すが、初対面や 慣れない相手とでは気おくれして話せないことがある。 ・前もって用意された原稿があれば、堂々と発表することができる。 →発表のもととなる原稿を書く際には教師の支援を必要とする場合が多い。 (聞くこと) ・聴力には問題がない。学校生活における日常での指示理解等にも問題がない。 (書くこと) ・詩を創作したり、友達に手紙を書いたりすることは好きである。 →決められた課題に沿って文章を書くことは苦手である。 (読むこと) ・読書が好きで、文章を読むことに関して苦手意識はない。 (3)本生徒の課題と考えられる事柄 相手に「伝えたい内容・自分の考え」は頭の中にあるが、それをどう表現して良いのかわからな い。文章を書くことに慣れていないために、作文に対する苦手意識があるのではないか。 人前で話したり、文章を書いたりする際の事前の下書き(話す、書く際の構成の仕方、文章の組 み立て方)を作る方法を身につけさせたい。 4 指導目標 (1)発表をしたり文章を書いたりする前にワークシートを作成し、相手に伝えたい内容を簡単 にまとめることができる。 (2)目的や相手への意識をはっきりさせて発表をしたり文章を書いたりすることにより、自分 の考えや気持ちを正確に伝えることができる。 ※「中学校学習指導要領 国語」の目標及び内容とも関連付けて指導にあたる。 「中学校学習指導要領 第2章 第1節 国語 第2 各学年の目標及び内容」 より抜粋 [第3学年] 1 目 標 (1)目的や場面に応じ、社会生活にかかわることなどについて相手や場に応じて話す能力、表現 の工夫を評価して聞く能力、課題の解決に向けて話し合う能力を身に付けさせるとともに、 話したり聞いたりして考えを深めようとする態度を育てる。 (2)目的や意図に応じ、社会生活にかかわることなどについて、論理の展開を工夫して書く能力 を身に付けさせるとともに、文章を書いて考えを深めようとする態度を育てる。 2 内 容 A 話すこと・聞くこと (1)ア 社会生活の中から話題を決め、自分の経験や知識を整理して考えをまとめ、語句や文を 効果的に使い、資料などを活用して説得力のある話をすること。 イ 場の状況や相手の様子に応じて話すとともに、敬語を適切に使うこと。 B 書くこと (1)ア 社会生活の中から課題を決め、取材を繰り返しながら自分の考えを深めるとともに、文 章の形態を選択して適切な構成を工夫すること。 - 36 - 5 指導の手だて 国語科教科書 「新しい国語3」 東京書籍より 単元名 「編集して伝えよう」 (書くことの領域) 「場面に応じて話そう」 (話すことの領域) 「今の思いをまとめよう」 (書くことの領域) (8 時間扱い) 6 月実施 (6 時間扱い) 10 月実施 (7 時間扱い) 12 月実施 上記の単元を、事前にワークシートに取り組ませスモールステップで文章を作成させるこ とにより自分の考えをまとめさせる。 6 指導経過 (1)単元名「編集して伝えよう 『日本文化』のガイドブック」 (6 月実施) ① 単元の指導目標 (太字が課題研究のテーマと特にかかわりのある部分) ・読み手に合わせて、記事の内容や形式を工夫して書く。 ・書いた文章を読み返し、表現を整えて紙面を仕上げる。 ② 指導計画 ・わかりやすく興味をひく記事を書く練習をする。 ・題材を決め、情報を集める。 ・文章の形式・表現方法を考えて下書きをする。 ・表現を整えて清書する。 ③ 公開授業 A にて実施した指導 ア 題材名「紙面構成を考えて記事を書こう」 イ 目標 ウ 生徒の実態と目標及び評価基準 ・ ワークシートに記入し、自分が伝える内容にふさわしい形式や表現方法を選ぶこ とができる。 ・ 記事の目的・読み手を意識して、伝えたい情報をわかりやすい記事にまとめるこ とができる。 生徒の実態 本時の目標 評価基準 概ね満足できる状況に達しなかっ た場合の手立て 自由に文章を書くこと ○ワークシートに記入 ○ワークシートをもと ○親しみをもって読んでもらえる は好きであるが、ある し、自分が伝えたい内 に、読み手の特徴をふ 記事の条件について、教科書の説明 目的をもった文章を書 容にふさわしい形式や まえて、親しみをもっ を読んだりワークシートを振り返 くことに対しては苦手 表現方法を選ぶことが て読める形式(対話形 ったりして再度説明する。 意識をもっている。 できる。 【言語について 式、Q&A 形式等)を選 の知識・理解・技能】 ぶことができている。 生徒会長としての代表 ○記事の目的・相手意 ○読む相手をふまえ、 ○ワークシートを見て、記事を読む 挨拶の言葉も教師の手 識をはっきりさせ、伝 図やイラストを加えた 相手が「海外で日本語を学んでいる を借りて作成すること えたい情報をわかりや りあいまいな表現や難 外国人」であることを再確認する。 が多い。教師の支援が すい記事にまとめるこ 解な語句を避けてわか また、実際の新聞を見せてわかりや あれば自分の気持ちを とができる。 りやすい記事を書こう すい記事の例を振り返る。 言い、文章にすること 【書く能力】 としている。 ができる。 - 37 - ④ 6月実施の公開授業 A 後の課題 ・当日、対象生徒の体調が悪く、授業中に思うような反応が得られなかったことから、教 師が焦ってしまい発問に対する答えを待てなかった。 →生徒との「やりとり」は大切である。授業の形態を明確にし、その流れに乗せて進め る。 ・新聞教材の提示の仕方を考える。 →必要なところを拡大して提示するなどして明確に認識させる ・ワークシートで選んだ文章の形式等の記号に○をつける形は、何を選んだのかがイメー ジできず、その後の「書く」作業に生かしにくかった。 →わかりやすく、書きやすい書式を検討する。 ・プリントと板書や掲示物をどのように使って授業を進めるか検討する。 ・ 「話し方、書き方のポイント」をまとめ、学習の前に確認するようにする。必要に応じて 振り返れるようにする。 ・ワークシートに関して・・・書く手順が簡潔、明確にわかるようなシートを作る。 生徒がうまく書けない原因は何か、つまずいてしまうとこ ろはどこかを予測してそれを補えるようなワークシートを 考える。 (2) 単元名「場面に応じて話そう~条件スピーチ~」 (10 月実施) 1学期に実施した公開授業 A の反省から、 授業中の生徒とのやりとりに留意するとともに、 教材を工夫して公開授業 B(1回目)を実施した。 ① 「学習の流れ」の提示について(資料 1) (資料 1) ・一時間の授業の流れを提示し、「今はどこの部分を学んでいるか」「次は何を学ぶのか」 がすぐにわかるようにし、見通しをもって学習できるようにした。 ② 教材について ・本生徒の実態を考え、スピーチで「話す題材」を身近で話しやすそうな話題に限定した。 - 38 - ◎「話す題材一覧」 ・・・授業で提示する話題 (これ以外に、本人が自分で話したい内容があがれば、そちらを優先する。 ) (紹介) 「わかくさ特別支援学校を紹介します。 」 「私の好きなことを紹介します。 」 (報告) 「修学旅行を振り返って」 「障害者スポーツ大会に参加して」 「小・中学校生活の思い出」 (面接) 「高等部進学のための面接」 「絵本の読み聞かせボランティアを決めるための面接」 ・授業の導入部分では、次の内容を本人に声に出して読み上げさせて確認した。 (資料 2,3) 【話す前の準備のポイント】 「何を どのように ↓ ↓ ☆内容 ☆表現 話すか?」→「 場にふさわしい内容と話し方 」をしよう ☆内容・・話し手「○○について伝えたい」 聞き手「○○について知りたい」→聞き手の知りたいことを想像し、応えればよい! ☆表現・・・聞き手によって変わる(聞き手が小学生か大人か?など)→言葉遣い、話し方など 【話し方のポイント】 ①声の大きさ、速さ、抑揚 → メモの棒読みにならないように! ②聞き手の表情を見ながら話す。 ③聞き手にわかりやすい語句を選んで話す。 ④話の途中で問いかけたり、質問を促したりして聞き手の理解を深める。 ⑤間違った敬語・くだけすぎた言葉は遣わない。 ⑥話し始めの言葉、終わりの言葉を決めておくと良い。 (資料 2) (資料 3) - 39 - 【発想の方法】 (資料4) 〈話す材料メモ〉 DJ 体験 眺めが最高! 緊張した ウェビング 東京タワー キッザニア フォトカメラマン体験 宿泊ホテル 例:修学旅行を 振り返って バスの中で 水上バスで 国会議事堂 いたた 大隈重信 板垣退助 い板垣退 伊藤博文 大隈重信 スピーチで話したい部分を決めて 参 議 院 と さらに詳しく内容を書き出す。 助 板垣退助 伊藤博文 衆議院 終 中 は 〈スピーチメモ〉として わ じ 使用する。 (資料 5) り め (資料 4) ③ (資料 5) 授業中の生徒の様子 ・ 「学習の流れ」にそって自分が今、何をすべきかがわかり主体的に学習に参加していた。 ・スピーチメモの作成に、普段よりも積極的に取り組んでいた。 (→考える時間を十分に取り、教師からの働きかけ(補足説明等)は極力控えた。 ) ・スピーチに関しては、まだ練習が十分でなく自信がない様子だった。 (→良いところを具体的に挙げて誉め、自信をもたせるようにした。 ) - 40 - ④ 公開授業 B(1回目)後の反省 ・話すポイントをよりわかりやすくし、生徒の頭に残るように短いキーワードで提示する。 ・一目でわかりやすく、視覚的に見やすい教材を作る。 (資料 6-1,2) ⑤ 公開授業 B(2回目) 「 『高等部進学のための面接』の場でスピーチをしよう」 話す目的 ・・・自分のことを知ってもらう。 聞き手の関心・・・校長先生、教頭先生、高等部の先生 聞き手は面接をとおしてどんなことを知りたいだろうか? → 志望理由、高等部でどんなことがしたいか。将来の希望について等 話す内容 ・・・ 〈スピーチメモ〉による 話し方の注意点・・聞き手は先生(大人) 。丁寧な言葉で話す。 声の大きさ(はっきりと聞こえる大きさで)速さ(ゆっくりと話す)に注意! (資料 6-1) 6 (資料 6-2) 授業後の生徒の感想 ・教材が見やすく、大切なことが覚えやすかった。 ・スピーチに少し慣れてきたが、本番の面接までに練習して上手に話せるようになりたい。 (3) 単元名「今の思いをまとめよう」 (書くことの領域)12 月実施 ① 今までの授業で活用してきた「話す手順」の教材を今回は「書く手順」に置き換え、同じ 方法を使って自分の考えや思いをメモに書き出す。 (資料 7) (資料 8) - 41 - ② 文章に書きたい順にメモを並べ替える。→「書く材料メモ」 (資料 9) ③ ②で作成した「書く材料メモ」をもとに下書きをする。推敲の後、清書。 ④ 授業中の生徒の様子 ・話す学習で用いた教材のベースを書く学習でも使用したので、学習の手順が分かりやす くスムーズにやるべきことに取り組んでいた。 ・学習の題材が「十年後の自分に宛てて手紙を書く」内容であったので、生徒にとって書 きやすく、意欲的に学習し便箋 4 枚分にわたり自分の思いを書くことができた。 ⑤ 授業後の生徒の感想 ・将来の自分の姿をイメージしながら書いた。十年後に読むのが楽しみだ。 (4) 教科書の単元以外での「話す・書く」指導の実践 ① 生徒代表あいさつのメモ作成(資料 10)→メモを参考に話す学習 ・事前に付箋を利用してメモを作成しておく。 (メモには、はじめ→中→終わりの順に話すこ とを書いておく)→後から気付いた内容があれば、その場で加えて話すように指導した。 (資料 10) - 42 - ② 学校行事でお世話になった方へ礼状を書く学習 ・手紙文の基本的な形式を「書くポイント」として提示する。 →本文のところに「一番自分が伝えたい内容」=「たくさんメモ書きが書けた内容」を 書くように指導することで、手紙文の形式が整った礼状をスムーズに書くことができた。 7 研究の成果と今後の課題 (1)研究の成果 ・ 「話す・書く」両方の学習において同じ「学習の流れ」を用いたことで、生徒は見通しをもちや すくなり「次に何を行うか」がわかり主体的に学んでいた。 →生徒本人が自分でやるべきことを理解した結果、研究当初と比較して、教師が必要以上に説 明を加えなくとも自分で考えて学習に取り組めるようになった。 ・ 「学習の流れ」の表の中で、最初に、話す(書く) 「目的」と「相手」を確認してから学習に入 ることにより「目的と相手」をしっかりと意識した文章が作成できた。 ・自分の頭の中にある「相手に伝えたい事柄」を付箋紙にたくさん書き「話す(書く)材料メモ」 にて整理する、という構成の仕方を何度も繰り返すうちに、メモを書き出すまでの時間が短く なり、たくさんのメモを書けるようになった。 (作文に対する苦手意識が少し払拭されたようで ある。 )「自分でも書ける」という自信が出てきて生徒代表のあいさつの文章も教師に頼らずに 自分で用意できるようになってきた。 (2)今後の課題 ・話すこと、書くことに苦手意識をもっていた生徒であったため、研究ではごく初歩的な、 自分にとって身近な題材を選んで「話す・書く」学習を行ってきたが、少しずつ他のいろ いろな課題(自分のこと以外の社会的な内容など)についても取り組ませ、意見をもって 話したり書いたりできるようにしていきたい。 ・スピーチの指導は定期的に続け、話すことに慣れるようにさらに指導していきたい。 ・視覚的にわかりやすく、記憶に残る教材と生徒が見通しをもち安心して授業に取り組める ような教材の工夫に続けて取り組んでいきたい。 【参考資料】 「新しい国語 教師用指導書 研究編 上」 東京書籍 「中学校学習指導要領解説 国語編」 - 43 - 関節可動域(ROM)測定法と実際の活用 中 村 仁 司 昨 年 度 、 栃 木 県 大 田 原 市 に あ る 国 際 医 療 福 祉 大 学 の 理 学 療 法 学 科 に 一 年 間 内 留 で お 世話 に な り ま し た 。 そ こ で 教 え て い た だ い た 関 節 可 動 域の 測 定 方 法 と 今 年 度 そ の 測 定 を ど のよ うに学校で生徒に実施、活用できたかを以下にまとめました。 Ⅰ 関節可動域(ROM)測定法 1.はじめに 関 節 可 動 域 ( R O M : Range Of Motion 「 ロム 」 と 読 ん で は い け な い そ う で す → 「 アー ルオーエム」と読みます)は身体機能評価のための重要な測定で、理学療法士(PT: Physical Therapist) の 先 生 方 は 、 こ の 値 を 見 れ ば 大 体 の 子 ど も の イ メ ー ジ が 頭 に 浮 かぶ そ う で す 。 ま た リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の 経 過 を正 確 に 評 価 す る こ と が 可 能 に な る 、 基 本 的で 重 要 な 計 測 値 だ そ う で す 。 測 定 方 法 の 説 明 で は、 専 門 用 語 が 多 く 、 一 般 に は 測 定 が 難 しそ う な 感 じ が し ま す が 、 コ ツ さ え 理 解 で き れ ば、 誰 で も 測 定 で き る そ う で す 。 イ ン タ ー ネッ ト や 本 で も 調 べ ま し た が 、 わ か り や す く 書 か れ て い る も の は 、 ほ と ん ど あ り ま せ ん 。 そこ で 、 専 門 的 な 知 識 が な い 一 般 の 者 で も 測 定 で き る よ う なマ ニ ュ ア ル を 作 成 し よ う と 考 えま し た 。 そ れ で も 、必 要 と 思 わ れ る 専 門 的 な 言 葉 は 残 っ て し ま い ま し た の で、 説 明 書 き や図 をつけました。 R O M の 値 を 正 確 に 計 測 す る こ と は 重 要 で す が 、 最 初 か ら 正 確 に 測 定 は で き な い と 思い ま す 。 で き な く て も 、 測 定 し よ う と す る 過 程で 、 身 体 の 骨 の 場 所 や 筋 肉 の 位 置 、 関 節 の動 き 方 に つ い て の 理 解 が 深 ま る と 同 時 に 、 児 童 生 徒 の 日 常 の 生 活 で は 見 ら れ な い 関 節 や 身体 の 動 き な ど 新 た な 発 見 が 必 ず あ る と 思 い ま す。 R O M の 値 の 大 小 や 増 減 だ け で な く 、 児童 生 徒 の 苦 手 だ っ た 動 き の 理 由 が わ か っ た り 、装 着 し て い る 装 具 の 重 要 性 が わ か っ た り 、よ り 深 い 児 童 生 徒 理 解 が で き る と 思 い 、 R O M に つ い て 以 下 に ま と め ま し た。 2.身体の関節の運動 関 節 の 運 動 は 、 原 則 と し て 直 交 す る 三 平 面 を 基 本 面 と す る 運 動 と し て 考 え ま す 。 こ の三 平 面 と 関 節 の 運 動 に つ い て説 明 し ま す 。 ※ 正 確 に は 三 平 面 と そ れ に 対 応 す る 3 つ の 運 動 軸 に よ り 起 こ る 運 動 と 考 え ま す が 、 複 雑に なってしまうため、ここでは割愛します。 (1) 運動面 基本運動面とは、次の三つです。 前額面 ①前 額 ( ぜ ん が く )面 直立した姿勢で身体を前後に分ける 水平面 垂 直 面。 ②矢 状 ( し じ ょ う )面 直 立 し た姿 勢 で 身 体 を 前 か ら 後 ろ に 矢状面 向かって左右に分ける垂直な面。 ③水 平 面 身体を上下に分ける水平面。 - 44 - (2)関節の運動の種類 関節の運動の種類は、基本的に3種類の対で計6つです。 ①屈曲と伸展 多 く は 矢 状 面 の 運 動 で 、基 本 肢 位 に あ る 隣 接 す る 二 つ の 部 位 が 近 づ く 動 き が 屈 曲、 遠 ざ か る 動 き が 伸 展 で す 。 但 し 、 肩 関 節 、 頸部 ・ 体 幹 に 関 し て は 前方 へ の 動 き が 屈 曲 、 後 方 へ の 動 き が 伸展 で す 。 ま た 、 手 関 節、 足 関 節 に 関 し て は 、手 掌 ま た は 足 底 へ の 動 き が屈 曲 、 手 背 ま た は 足 背 へ の動 き が 伸 展 で す 。 足 関 節 の場 合 、 足 の 裏 側 に 曲 げ る 運 動 は 、 足 と す ね が ま っ す ぐ に な る の で 、 感 覚 的には伸展の運動で、足の甲を上に反らす運動が屈曲のように感じてしまうので、 足 底 の 側 に 曲 げ る 動 き ( 屈 曲 ) を 「 底 屈 」、 足 背 の 側 に 曲 げ る 動 き ( 伸 展 ) を 「 背 屈 」と 呼 び 、同 様 の 理 由 で 、手 関 節 に つ い て は 手 掌 の 側 に 曲 げ る 動 き( 屈 曲 )を「 掌 屈 」、 手 背 の 側 に 曲 げ る 動 き ( 伸 展 ) を 「 背 屈 」 と 呼 ん で よ い こ と に な っ て い る そ うです。 ②外転と内転 多 く は 前 額 面の 運 動 で 、 体 幹 や 手 指 の 軸 か ら 遠 ざ か る動 き が 外 転 、 近 づ く 動 きが 内 転 で す。 ③外旋と内旋 肩関節及び股関節に関しては、上腕骨または大腿骨を軸の中心として、外側へ回 旋 す る 動 き が 外 旋 、 内 側 に 回 旋 す る 動き が 内 旋 で す 。 前腕の回旋運動は前腕の2本の骨(橈骨と尺骨)が交差することで起こるため、 ね じ る 意 味 の 外 旋 、内 旋 と い う 言 葉 を 使 え ず 、内 旋 の こ と を 回 内( 手 掌 が 下 向 き )、 外旋のことを回外(手掌が上向き)といいます。 ④その他 測 定 の 実 施 に 記 載 し た 一 覧 表 の と こ ろ で 、上 記 の 運 動 名 称 の 他 に も 、 い ろ い ろ な 名 称 が で て き ま す 。 説 明 が 長 く な っ て し ま う の で 、そ れ ぞ れ の 表 の 所 で 付 記 す る こ とにしました。 夏 休 み に 近 所 で 小 学 生 た ち が 、 朝 ラ ジ オ 体 操 を し て い ま し た が 、 日 本 中 で 愛 さ れ てい る ラ ジ オ 体 操 の 動 き の 多 く は 、 こ の 身 体 の 関 節 の 動 き を 取 り 入 れ た 体 操 だ っ た と 新しい 発 見 を し た 気 持 ち に な り ま し た。 (3)方向の表現 解 剖 学 に お け る 方 向 の 表 現 は 、 日 常 の 表 現と 異 な り 、 独 特 の 表 現 を 使 う の で 、 以 下に 簡 単 に ま と め ま し た。 ① 解剖学的正位 手 掌 を 正 面( 顔 の 向 いて い る 方 )に 向 け て まっ す ぐ立 っ た 姿 勢 で 、方 向 の 表 現 の 基準になります。 ② 内側と外側 人 体 を 左 右 対 称 と 考 え た と き 、 対 称 軸 と な る位 置 を 正 中 ( せ い ち ゅ う ) と い い 、 正 中 に 近 い 方 が 内 側 、 遠 い方 が 外 側 と な り ま す 。 - 45 - ③ 近 位 と遠 位 体幹に近い側が近位、遠い側が遠位となります。 3.身体の計測ポイント 計測するときに覚えておかなければならないポイントで、 「 測 定 の 実 施 」の と こ ろ で も 出 て く る 言 葉 で す 。 触 診 し や す く 、 重 要 な 場 所で 、 普 段 で も よ く 耳 に す る ポ イ ン ト の 名 前と 場所です。 文 章 だ け だ と 分 か り づ ら い の で、 昔 学 校 の 理 科 室 に よ く あ っ た 、 ち ょ っ と 薄 気 味 悪 かっ た全身の骨格の図を載せます。 肩甲骨 上腕骨 胸 骨 尺 骨 橈 骨 寛 骨 大腿骨 ●上肢 (1) 肩甲骨(けんこうこつ) 身 体 の 肩 に 一 対 あ る 骨 で 、 背 側 面 か ら 肋 骨 を 覆 っ て い る 三 角 形 状 を し た 大 型 の 骨 で す。 ① 肩峰(けんぽう) 肩 甲 骨 を 背 中 か ら 触 っ て み る と 、 肩 甲 骨 上 を ほ ぼ 水 平 に 走 る 隆 起 し て い る 部 分 がわ か り ま す 。 こ れ を 肩 甲 棘 ( け ん こ う き ょ く) と い い 、 肩 甲 棘 を 肩 の 端 ま で た ど っ てい っ た 最 も 上 の 部 分 が 大 き く や や 三 角 型 あ る い は 楕 円 形 の 突 起 と な っ て い ま す 。 こ こが 肩 峰 で す 。 肩 を 首 か ら た ど っ て い く と 最 初の 骨 の 出 っ 張 り が 、 鎖 骨 端 で そ の 先 の 骨を 感じる部分の端が肩峰です。 ( 2 ) 上 腕 骨 ( じ ょ う わ ん こ つ) 肩 関 節 と 肘 関 節 の 間 の 部 分 に あ る 長 管 状 骨 ( 円 筒 状 の 骨 ) で 、 両 端 で 太 く 中 央 が や や細 - 46 - い骨です。 ① 上腕骨外側上顆(じょうわんこつがいそくじょうか) 手掌を前面に向けた状態で上腕骨の肘関節外側にある隆起した部分。内側上顆に比 べると突出は軽度です。 ド ア の ノ ブ を 回 す 時 や 雑 巾 を 絞 る 時 に 痛 むテ ニ ス 肘 と 呼 ば れ て い る 病 気 は 上 腕 骨 外 側上顆炎というのが正式な病名だそうです。 ② 上腕骨内側上顆(じょうわんこつないそくじょうか) 手 掌 を 前 面 に 向 け た 状 態 で 上 腕 骨 の 肘 関 節 内 側 に あ る 隆 起 し た 部 分 。 内 側 上 顆 は指 先でつまめるほどの大きな突出でわかりやすいです。 (3) 胸骨(きょうこつ) 胸 の 前 面 の 中 央 に あ る 平 ら の 骨 。 首 の 下 部 、 鎖 骨 間 の く ぼ み ( 胸 骨 上 窩 ) の 下 に あ りま す 。 心 肺 蘇 生 法 で 心 臓 マ ッ サ ー ジ を 実 施 す る際 、 手 の 付 け 根 部 分 を 置 く 場 所 で す 。 (4) 尺骨(しゃっこつ) 肘 関 節 と 手 関 節 の 間 ( 前 腕 ) に あ る 長 管 状 骨 で 、 肘 関 節 部 分 で 太 く 、 手 関 節 に 近 づ くに 従 っ て 細 く な っ て い き ま す 。 先 端 に 尺 骨 茎 状 突 起 が あ り ま す 。 前 腕 に は ( 5 ) で 出 て くる 橈 骨と 2 本 の 骨 が あ り 、手 掌 を 前 面 に 向 け た 状 態 で 小 指 側( 内 側 )に あ る ほ う が 尺 骨 で す 。 ① 肘頭(ちゅうとう) 肘の後ろの突起部分です。プロレス技でエルボードロップとして昔はよく使われて い ま し た 。尺 骨 の 上 端 で 、 ( 2 )で 出 て き た 上 腕 骨 内 側 上 顆 と 外 側 上 顆 と こ の 肘 頭 が 肘 関 節 伸 展 時 は 一 直 線 に な り ま す 。( こ れ を Huter 線 と い う そ う で す ) ② 尺骨茎状突起(しゃっこつけいじょうとっき) 手首の小指側にある突出部分。尺骨の下端部分にあ ります。すぐ近くにある手首背 側 ( 手 の 甲 側 ) に あ る 大 き な 突 出 部 分 は 、 尺 骨 の 末 端 部 分 の 尺 骨 頭 。 尺 骨で は 頭 と よ ば れ る 部 分 が 、 下 端に あ り ま す 。 (5) 橈骨(とうこつ) 尺 骨 の 隣 に あ る 長 管 状 骨 で 、 尺 骨 と 逆 に 肘 関 節 部 分 は 細 く 、 手 関 節 に 近 づ く に 従 っ て太 く な っ て い き ま す 。先 端 に 橈 骨 茎 状 突 起 が あ り ま す。手 掌 を 前 面 に 向 け た 状 態 で 母 指 側( 外 側)にあるほうが橈骨です。 ① 橈 骨 茎 状 突 起 ( と う こ つ け い じ ょ う と っ き) 尺骨茎状突起の反対側、手首の母指側にある突出部分です。 ( 6 ) 第 5 中 手 骨 ( だ い 5 ち ゅ う し ゅ こ つ )、第 3 中 手 骨 ( だ い 3 ち ゅ う し ゅ こ つ ) 手 の 骨 は 、 手 関 節 な ど を 構 成 す る 手 根 骨 と 手 の 甲 を 構 成 す る 中 手 骨 、 手 の指 を 構 成 する 指 骨 か ら な っ て い ま す 。 母 指 側 か ら 小 指 側 へ向 け て 第 1 か ら 第 5 と 呼 ば れ て い る の で 、第 5 中 手 骨 は 小 指 側 の 手 の 甲 に あ る 骨 で す 。 第3 中 手 骨 は 中 指 の 近 位 、 手 の 甲 の 中 央 に ある 骨 で す。 中 手 骨 は 細 長 い 管 状 骨 で 、第 1 中 手 骨 が 最 も 短 く 、最 も 太 い 骨 で 、第 2 中 手 骨 が 最 も 長 い 骨 で す 。第 5 中 手 骨 は 力 道 山 で 有 名 な 空 手 チ ョ ッ プ に 使 う 手 掌 の 横 の 部 分 に あ る 骨 で す。 手 指 の R O M を 測 定 す る 場 合 、細 か い 骨 や関 節 が 多 い の で 、図 に し て み ま し た 。 「測定の 実 施 」 の 中 で 一 覧 表 に 以 下の 用 語 が で て き ま す 。 - 47 - 手指の骨・関節(右手掌側) 末節骨 D I P (遠 位 指 節 間 関 節 ) 指骨 I P (指 節 間 関 節 ) 中節骨 P I P (近 位 指 節 間 関 節 ) 基節骨 MCP (中 手 指 節 関 節 ) 有頭骨 中手骨 手根骨 三角骨 尺骨 橈骨 ●下肢 ( 1 ) 骨 盤 ( こ つ ば ん )、 寛 骨 ( か ん こ つ ) 骨 盤 は 、左 右 1 対 の 寛 骨 、 仙 骨 、 尾 骨 で 構 成 さ れ て お り 、 こ れ ら の骨 は い ず れ も 成 長と と も に 癒 合 し ま す 。 寛 骨 は 、 腸 骨 、 坐 骨 、 恥 骨 が 1 7 歳 頃 に 一 体 化 し て 1 個 の 寛 骨 と なり ます。 ① 上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく 略してASIS) 横 か ら 骨 盤 を 見 た と き に 一 番 前 の 位 置 に あ る、 少 し 出 っ 張 っ て い る 腸 骨 の 一 部 が 上 前腸骨棘です。 腰 の 横 を 触 診 す る と 骨 盤 の 上 端 で あ る 腸 骨 の へ り が す ぐ わ か り ま す が 、 そ こ を 前に た ど り 、 最 前 部 に あ る の が 上 前 腸 骨 棘 で す。 背 臥 位 に な っ た と き 、 腸 骨 で 一 番 飛 び出 している部分なのでわかりやすいです。 ズ ボ ン を は い て い れ ば 、 前 ポ ケ ッ ト の 中 で 触 診 で き る ポ イ ン ト で す 。 こ こ か ら 、足 に つ な が る 長 い 筋 肉 で あ る 大 腿 筋 膜 張 筋 (だ い た い き ん ま く ち ょ う き ん : 移 植 手 術に よ く 使 わ れ る 筋 肉 )と 縫 工 筋( ほ う こ う き ん:あ ぐ ら を か く 筋 肉 )が 起 始 し て い ま す 。 (2)大腿骨(だいたいこつ) 大 腿 骨 は 、 人 体 の 骨 の な か で 最 長 の 長 管 状 骨 で 、 き わ め て 頑 丈 だ そ う で す 。 大 腿 骨 は骨 盤と下腿骨とを連結し、大腿の中軸となっています。 大 腿 骨 の 骨 盤 側 の 端 は 大 腿 骨 頸 ( だ い た い こ つ け い ) と い っ て 、 骨 体 と 大 腿 骨 頸 の なす 角 度 は 1 2 0 °~ 1 3 0 °で 、 骨 の 頭 が 骨 盤 の 方 に お じ ぎ し て い る 感 じ で す 。 生 ま れ た 時 は 、 1 5 0 °位 で 、 成 長 と と も に 頭 が 下 が っ て い く感 じ で 、 1 5 才 で 1 3 3 °位 に な る そ う で す 。 ま た 大 腿 骨 頸 は 前 方 に 1 0°位 捻 じ れ て い ま す 。 骨 の 頭 が 骨 盤 の 方 だ け で な く、 前 に も お じ ぎ を し て い る 感 じ で す 。 生 ま れ た ば か り は 、 こ の 角 度は 5 0 °位 で 、 成 長 と と も に 角 度 が 小 さ く な り 、 1 6 才 位で 1 0 °にな る そ う で す 。 - 48 - 大 腿 骨 頸 は と く に 老 年 者 で は 骨 折 を お こ し や す く 、 臨 床 上 、 老 人 骨 折 の 代 表 的 部 分 とさ れています。転んで骨折したという話を身近でも聞くときがあります。 大 腿 骨 頸 の 先 の 大 腿 骨 頭 が 骨 盤 に は ま り 股 関 節 を 構 成 し ま す 。 股 関 節 は 身 体 の 中 で 最強 の 靭 帯 に 覆 わ れ て い ま す が 、 骨 盤 の 大 腿 骨 頭を 覆 う 部 分 で あ る 臼 蓋 ( き ゅ う が い ) が 、き ち ん と 形 成 さ れ て い な い と 脱 臼 し て し ま う こ と が あ り 、 注 意 が 必 要 で す 。 内 転 、 内 旋 、屈 曲 位 は 特 に 注 意 が必 要 で す 。 股 関 節 脱 臼 の 心 配 が あ る 場 合 、 内 転 、 内 旋 、 屈 曲 位 の 測 定は 行 い 1 1 ま せ ん。 大腿骨の下端は太くなり、脛骨(けいこつ)との膝関節を構成します。 大 腿 骨 の 長 さ は 身 長 に 比 例 す る と い わ れ て い る そ う で す 。 成 人 男 子で 平 均 約 4 1 c m位 だそうです。 ① 大 転 子 ( だ い て ん し) 大 転 子 は 大 腿 骨 上 部 の 外 側 の 出 っ 張 り 部 分 で 、 側 臥 位 に な っ た と き に 、 股 関 節 の外 側に一番突き出してくる骨の部分であり、わかりやすいポイントです。また背臥位で 股関節を外転させると股関節横に凹んだ部分ができ、そのくぼみの中で大転子を触診 で き ま す。 大転子は、中殿筋(ちゅうでんきん:足を外側に広げる作用のある大切な筋肉で、 n 腰 痛 は こ の 筋 肉 の 周 辺 が 弱 っ て い る ケ ー スが 多 い ) や 他 の 深 層 筋 群 ( 身 体 の 深 層 部 にある筋肉=インナーマッスル)の停止部になっています。 ② 外 側 顆 ( 外 側 上 顆 )( が い そ く か ( が い そ く じ ょ う か)) 大腿骨の下端は大きく膨らんでおり、内側の隆起が内側顆、外側の隆起が外側顆で す。外側顆は内 側顆よ り外側への膨らみが小さ く、大腿骨体の外側面からほとんど出 ていません。外側面後上方で外側へ突出している部分が外側上顆です。 ( 3 ) 膝 蓋 骨 ( し つ が い こ つ 、 Patella) 膝 蓋 骨 は 、 三 角 形 の 骨 で 、 大 腿 骨 に 繋 が っ て お り 、 膝 の 前 面 を 保 護 し て い ま す。 人 体の 中 で は 最 も 大 き な 種 子 骨 で す 。 そ の 形 状 か ら 、 膝 の 皿 と も 呼 ば れ て い ま す 。 膝 か ら 張 り出 ているため、わかりやすいです。 (4)腓骨(ひこつ) 腓 骨 は 脛 骨 と 対 に な っ て い る 下 腿 の 骨 で 、 共 に 同 じ 位 の 長 さ が あ り ま す。 腓 骨 は 長 管状 骨 の う ち で 最 も 細 長 い 骨 で 、 脛 骨 の 外 側 に あ り ま す 。 上 端 は 脛 骨 の 後 下 方 に あ り 、 膝 関節 には関わっていません。冗談で教授曰く、なくてもよい骨だそうです。 ① 腓 骨 頭 ( ひ こ つ と う) 腓 骨 の 上 端 の や や 球 状 に 隆 起 し た 部 分 が 腓 骨 頭 で 、 膝 を 9 0 °屈 曲 し た と き 、 膝 外 側 下 の 腱 ( 大 腿 二 頭 筋 腱 ( だ い た い に と う き ん け ん)) の す ぐ 先 の 出 っ 張 っ た 部 分 で、 わかりやすいです。下腿を内旋させると更に明らかになります。 ② 外 果 ( が い か) 腓 骨 の 下 端 は 膨 ら ん で お り 、 そ の 外 側 面 が外 果 で す 。 足 関 節 の 外 側 を 触 る と 大 き く 突出しているのですぐわかります。外くるぶしと一般的には呼ばれています。内側に あ る 内 果よ り 低 い 位 置 に あ り 、 内 果 下 端 と 外 果 を 結 ん だ 線 が 足 関 節 の 軸 に な り ま す 。 (5)第5中足骨(だい5ちゅうそくこつ) 足 の 骨 は 、 踵 や 足 関 節 な ど を 構 成 す る 足 根 骨 と 足 の 甲 を 構 成 す る 中 足 骨 、 足 の 指 を 構成 - 49 - す る 指 骨 か ら な っ て い ま す 。 内 側 か ら 外 側 へ向 け て 第 1 か ら 第 5 と 呼 ば れ て い る の で 、第 5 中 足 骨 は 小 指 側 の 足 の 甲 に あ る 骨 で す 。 調べ て み る と 、 骨 折 症 例 が 多 く 、 特 に サ ッ カー 選 手 の 骨 折 が 多 い よ う で す 。理 由 は 第 五 中 足 骨 に 付 着 し て い る 短 腓 骨 筋( た ん ひ こ つ き ん: 足関節の外反、底屈に働く)の疲労が主な原因だそうです。 足 の 小 指 側 の 縁を 触 診 す る と す ぐ わ か り ま す 。 踵 側 の 中 足 骨 底 は 膨 ら ん で い ま す 。 足指の骨や関節は下図のとおりです。 「 測 定の 実 施 」の 中 で 一 覧 表 に 以 下 の 用 語 が で て き ます。 足の関節(右背面) 末節骨 中節骨 IP D I P (遠 位 指 節 間 関 節 ) (指 節 間 関 節 ) P I P (近 位 指 節 間 関 節 ) 指骨 MTP (中 足 指 節 関 節 ) 基節骨 中足骨 踵骨 足根骨 (6)ハムストリングス 大 腿 部 後 面 を 縦 に 走 行 し て い る 筋 肉 群 の 総 称 で 、 大 腿 二 頭 筋 、 半 腱 様 筋 、 半 膜 様 筋 から な り ま す 。 膝 の 後 ろ を触 っ て み る と 内 外 に 2 本 の 腱 ( 筋 肉 が 骨 に 付 着す る た め 、 繊 維 質で 固 く な っ た 組 織 、 人 体 の 中 で 最 大 の 腱 が ア キ レ ス 腱 ) が 通 っ て い る の が 、 は っ き り と わか り ま す が 、 こ の 内 側 の 方 が 半 腱 様 筋 の 腱で 、 外 側 の 方 が 大 腿 二 頭 筋 の 腱 で す 。 下 肢 の 動 き 作 り や 運 動 能 力 に 大 き く 影 響 す る 筋 肉 で 、 鍛 え る こ と が 難 し く 、 拘 縮 し やす い 特 徴 が あ り 、 拘 縮 す る と 膝 に 痛 み が 出 て き ま す 。 ま ひ す る と 歩 行 す る 時 、 振 り 出 し た足 のブレーキがきかなくなるので、足を投げ出す歩行になります。 自 立 活 動 が ま だ 養 護 ・ 訓 練 と 呼 ば れ て い た 時 代 に 、 ハ ム ス ト リ ン グ ス の 意 味 も 知 ら ず、 個 別 の 目 標 に よ く 「 ハ ム ス ト リ ン グ ス の 拘 縮の 改 善 」 と 書 い て い た こ と を 思 い 出 し ま す。 (7) 腸腰筋 ハ ム ス ト リ ン グ ス の 主 要 な 拮 抗 筋( き っ こ う き ん:筋 肉 の 働 き で 反 対 の 動 き を す る 筋 肉、 筋 肉 が 硬 直 し て 手 足 の 運 動 が で き な い 痙 性 ま ひ は 主 動 筋 と 拮 抗 筋 の 過 剰 収 縮 に よ っ て 起こ り ま す ) で 、 腸 骨 筋 、 大 腰 筋 、 小 腰 筋 か ら な り ま す。 身 体 の 中 心 部 を 支 え る 筋 肉 で 、 腰椎 と 骨 盤 を 結 ん で い ま す 。 身 体 の 内 部に あ る イ ン ナ ー マ ッ ス ル で す 。 - 50 - 4.測定方法 (1)角度計の使用 測 定 道 具 と し て角 度 計( Goniometer)が 必 要で す 。一 般 的 に ゴ ニ オメ ー タ ー( Gonia=ギ リ シ ャ 語 の 角 度と い う 意 味 ) と 呼 ば れ て い て 、 金 属 製 の 高 価 な も の も あ り ま す 。 分 度 器の よ う な 半 円 形 が 付 い た 固 定 ア ー ム と 可 動 ア ー ムか ら で き て い ま す 。 固 定 ア ー ム を 指 定 され た 場 所 ( 基 本 軸 ) に 置い て 、 可 動 ア ー ム ( 移 動 軸 ) を 動 か し 、 指 し た 目 盛り を 読 む こ とに よ り 測 定 し ま す 。 目 盛 り の 間 隔 は 、 ゴ ニ オ メ ー タ ーの 種 類 に よ っ て 1 °~ 1 0 °ま で 様 々 で す が 、 計 測 は 、 5 °単 位 で 測 定 す る こ と に な っ て い ま す 。 近 い 方 の 数 値 を 採 用 し ま す 。 ゴ ニ オ メ ー タ ー は 高 価 で 、 専 門 的 な 店 で し か 販 売 さ れ て い な い の で、 代 替 品 と し て 無印 良 品 で 売 ら れ て い る 「 ダ ブ ル 定 規 」( 2 9 4 円 ) で も 角 度 が測 れ ま す 。 (2)運動の種類 自 動 関 節 可 動 域( Active ROM)は 、被 験 者 が介 助 な し に 随 意 運 動を 行 っ た 時 に 得 ら れ る 関 節 運 動 範 囲 の こ と で、他 動 関 節 可 動 域( Passive ROM)は 、検 査 す る 者 が関 節 を 動 か す こ と に よ っ て 得 ら れ る 運 動 の 範 囲 で す 。 普 通 、他 動 関 節 可 動 域 は 自 動 関 節 可 動 域 よ り 少 し大 き な 値 に な り ま す 。 共 に 重 要 な 測 定 値 で す が 、 原 則 と し て他 動 関 節 可 動 域 に よ る 測 定 値を 計 測 し ま す 。自 動 運 動 に よ る 場 合 は そ の 旨 を 明 記 す る こ と に な っ て い ま す 。(強 い 痛 み や 危 険が伴う場合等) ま た 足 関 節 背 屈 の よ う に 自 動 及 び 他 動 可 動 域 を 比 較 す る こ と が 重 要 な 場 合 も あ る そ うで す。 (3)測定の基本 測 定 に あ た っ て は 、 以 下 の こ と に注 意 が 必 要 で す 。 ・何をするのか簡単に説明してから行う。 ・対象者が楽な肢位で行う。 ・検査者が計りやすい肢位で行う。 ・対象者を観察できる位置で行う。 ・声をかけてからさわる、動かすようにする。 ・ つ か ま な い 、 握 ら な い 、 点 で 圧 迫 し な い 、持 ち 替 え を 極 力 少 な く な ど 、 さ わ り 方 に 注意 する。 ※具体的な留意点 ・関節が回転軸を中心にして動いているか確認する。 ・代 償 が 出 な い よ う に 無 理 に 押 さ え つ け て い な い か 確 認 す る 。 (計測時に固定部位から手を 離したときに代償が出てしまうようでは押さえすぎ) ・無理なく動かせる程度まで動かせば充分。 ・ 計 測 が 終 わ っ た ら 一 度 楽 な 肢 位 に 戻 す 。( 長 時 間 苦 し い 肢 位 を 持 続 さ せ る 事 は 避 け る ) ・おおよその角度の見当をつけてゴニオメーターを予めその角度にあわせておく。 ・基本軸、移動軸を触診により確認する。 ・部位を動かしながらゴニオメーターを動かす。 ・ゴニオメーターは正面から確認する。 ・ 角 度 は そ の 場 で 読 む 。( 移 動 さ せ る こ と で誤 差 が 生 じ や す い ) - 51 - 5.測定の実施 ●上肢の測定 問 題 の な い 関 節 可 動 域 の 測 定 は 省 略 さ れ る の で 、 下 記 の 中 か ら 必 要 な 測 定 を 選 択 し て実 施します。 (1) 肩関節 肩関節屈曲 基 本 軸:胸郭の外側中央線(腋窩中央線) 移 動 軸 : 上 腕 骨 外 側 上 顆 を 目 安に 上 腕 骨 の 外 側 中 央 線 回 転 軸:肩峰 測 定 肢 位 : 背 臥 位( 立 位 、 座 位 ) 注 意: ・ 腰 椎 の 彎 曲 ( わ ん き ょ く) を な く す た め に 膝 関 節 屈 曲の 背 臥 位 で 行 う 。 ・前腕は手掌を体幹の方に向ける。 参考可動域 180° 肩関節伸展 基 本 軸:胸郭の外側中央線(腋窩中央線) 移 動 軸 : 上 腕 骨 外 側 上 顆 を 目 安に 上 腕 骨 の 外 側 中 央 線 回 転 軸:肩峰 測定肢位:腹臥位(立位、座位、側臥位) 注 意: ・顔は測定する肩と反対の方向を向き、頭の下に枕は使 用 し な い。 ・前腕は手掌を体幹の方に向ける。 ・ 上 腕 二 頭 筋 の 緊 張 で 運 動 が制 限 さ れ な い よ う 、 肘 関 節 は 軽 度 屈 曲 位に す る 。 参考可動域 50° 肩関節外転 基 本 軸:胸骨前面線に平行な線 移 動 軸 : 上 腕 骨 内 側 上 顆 を 目 安に 上 腕 骨 の 内 側 中 央 線 回 転 軸:肩峰前面 測定肢位:背臥位(立位、座位、腹臥位) 注 意: ・ 手 掌 が 前 面 を向 く よ う に 前 腕 回 外 位 に す る。 - 52 - ・運動が制限されないよう、肘関節は伸展位にする。 ・ 背 臥 位 は 被 験 者 の 身 体 が 台 に 支 え ら れ て い る た め、 他 の 肢 位 よ り も 測 定 が 容 易 。 参考可動域 180° 肩関節内転 基 本 軸:胸骨前面線に平行な線 移 動 軸 : 上 腕 骨 内 側 上 顆 を 目 安に 上 腕 骨 の 内 側 中 央 線 回 転 軸:肩峰前面 測 定 肢 位 : 背 臥 位( 立 位 、 座 位 ) 注 意: ・ 手 掌 が 前 面 を向 く よ う に 前 腕 回 外 位 に す る。 ・ 運 動 が 制 限 さ れ な い よ う 、 肘 関 節 は 伸 展 位に す る 。 参 考 可 動 域 0° 肩関節外旋 基 本 軸 : 床 に 垂 直 ま た は平 行 な 線 移 動 軸:肘頭と尺骨茎状突起を目安に尺骨 回 転 軸:肘頭 測 定 肢 位 : 背 臥 位( 立 位 、 座 位 ) 注 意: ・ 肩 関 節 外 転 9 0 °、肘 関 節 9 0 °屈 曲 位 で、 前 腕 は 台 に 対して垂直にする。 ・上腕骨が肩峰と同じ高さになるよう、上腕の下にタオル を敷く。 ・手掌を前面にした前腕回内位。 ・前腕を後方に傾斜して測定する。 ・ 測 定 側 の 肘 を 検 査 台 か ら 出 し 、 片 方 のア ー ム は 床 に 垂 直 に な る よ う に す る 。 ・ 台 の 上 で の 測 定 が 難 し い 場 合 、 ア ー ム を 床 に 平 行に し て 測 定 す る 。 ・ 立 位 、 座 位 の 場 合 、 検 査 方 法 が 異な り 、 参 考 可 動 域 は 6 0 °と なる 。 参考可動域 90° 肩関節内旋 基 本 軸 : 床 に 垂 直 ま た は平 行 な 線 移 動 軸:肘頭と尺骨茎状突起を目安に尺骨 回 転 軸:肘頭 測 定 肢 位 : 背 臥 位( 立 位 、 座 位 ) - 53 - 注 意: ・ 肩 関 節 外 転 9 0 °、肘 関 節 9 0 °屈 曲 位 で、 前 腕 は 台 に 対して垂直にする。 ・上腕骨が肩峰と同じ高さになるよう、上腕の下にタオル を敷く。 ・手掌を前面にした前腕回内位。 ・肩関節を外転位に保つため、片手で肘を固定する。 ・ 前 腕 を 前 に 傾 斜 し て測 定 す る 。 ・ 測 定 側 の 肘 を 検 査 台 か ら 出 し 、 片 方 のア ー ム は 床 に 垂 直 に な る よ う に す る 。 ・台の上での測定が難しい場合、アームを床に平行にして測定する。 ・ 立 位 、 座 位 の 場 合 、 検 査 方 法 が 異 な り 、 参 考 可 動 域 8 0 °と な る。 参考可動域 70° (2) 肘関節・前腕 肘関節屈曲 基 本 軸:肩峰を目安に上腕骨外側中央線 移 動 軸:橈骨茎状突起を目安に橈骨外側中央線 回 転 軸:上腕骨外側上顆 測 定 肢 位 : 背 臥 位( 立 位 、 座 位 ) 注 意: ・腕を体側にぴったりとつける。 ・ 手 掌 は 手 掌 面 が 天 井 を 向 く よ う に 前 腕 回 外 位。 ・上腕骨遠位端の下にタオルを敷く。 ・前腕を肩に付けるように屈曲させ測定する。 参考可動域 145° 肘関節伸展 基 本 軸:肩峰を目安に上腕骨外側中央線 移 動 軸:橈骨茎状突起を目安に橈骨外側中央線 回 転 軸:上腕骨外側上顆 測 定 肢 位 : 背 臥 位( 立 位 、 座 位 ) 注 意: ・腕を体側にぴったりとつける。 ・ 手 掌 は 手 掌 面 が 天 井 を 向 く よ う に 前 腕 回 外 位。 ・ 肘 関 節 を 完 全 伸 展 さ せ る た め に、 上 腕 骨 遠 位 端 の 下にタオルを敷く。 ・前腕を伸ばす感じで伸展させ測定する。 ・肘が水平まで伸展しない場合、マイナスの角度で記録する。 - 54 - ・参考可動域以上伸展する場合、過伸展といい、女性の方に多いそうです。 参 考 可 動 域 5° 前腕回外 基 本 軸:上腕骨の前面中央線に平行 移 動 軸:尺骨茎状突起より少し近位の手首の掌側面 回 転 軸 : 尺 骨 茎 状 突 起 線 上の 手 首 の 掌 側 面 上 測 定 肢 位 : 座 位、 立 位 注 意: ・腕を体側にぴったりとつける。 ・ 肘 関 節 は 9 0 °屈 曲さ せ 、 前 腕 は 母 指 が 上 を 向 く よ う す る 。 ・手指を持つのではなく、橈骨を持って手掌が上を向くよう 前腕を回転し、抵抗を感じたときが最終可動域。 参 考 可 動 域 9 0° 前腕回内 基 本 軸:上腕骨の前面中央線に平行 移 動 軸:尺骨茎状突起より少し近位の手首の背側面 (もっとも平らで筋腹のない部分) 回 転 軸:尺骨茎状突起の外側 測 定 肢 位 : 座 位、 立 位 注 意: ・腕を体側にぴったりとつける。 ・ 肘 関 節 は 9 0 °屈 曲さ せ 、 前 腕 は 母 指 が 上 を 向 く よ う す る 。 ・手指を持つのではなく、橈骨を持って手掌が下を向くよう 前腕を回転し、抵抗を感じたときが最終可動域。 参考可動域 90° (3) 手関節 手関節屈曲(掌屈) 基 本 軸:肘頭を目安に尺骨外側中央線 移 動 軸:第5中手骨外側中央線 回 転 軸:手関節の外側面(三角骨) 測定肢位:手を台の上等 注 意: - 55 - ・前腕は台の上に置くが、手は自由に動かせるようにしておく。 ・伸筋の緊張で運動が制限されるため、手指は屈曲させない。 ・前腕の回外・回内を防ぐため、前腕を固定する。 ・最終可動域まで動かすために、手の背側全体を押す。 参考可動域 90° 手関節伸展(背屈) 基 本 軸:肘頭を目安に尺骨外側中央線 移 動 軸:第5中手骨外側中央線 回 転 軸:手関節の外側面(三角骨) 測定肢位:手を台の上等 注 意: ・前腕は台の上に置くが、手は自由に動かせるようにしておく。 ・屈筋の緊張で運動が制限されるため、手指は伸展させない。 ・前腕の回外・回内を防ぐため、前腕を固定する。 ・最終可動域まで動かすために、手掌側全体を押す。 参考可動域 70° 手関節橈屈 基 本 軸:上腕骨外側上顆に向かった前腕の背面中央線 移 動 軸:第3中手骨の背面中央線 回 転 軸:手関節背面の中央(有頭骨) 測定肢位:手を台の上等 注 意: ・ 肩 関 節 外 転 9 0 °、肘 関 節 屈 曲 9 0 °、 前腕 回 内 で 腕 は テ ー ブ ル 等 で支 え る 。 ・ 肘 関 節 が 9 0 °以 上屈 曲 し な い よ う に 前 腕 を 固 定 す る 。 ・中手骨をつかむ感じで母指側に手を曲げる。 ・ 肩 関 節 が 9 0 °ま で外 転 で き な い 場 合、 肩 関 節 内 転 位 で 行 っ て も よ い 。 参考可動域 25° 手関節尺屈 基 本 軸:上腕骨外側上顆に向かった前腕の背面中央線 移 動 軸:第3中手骨の背面中央線 回 転 軸:手関節背面の中央(有頭骨) 測定肢位:手を台の上等 注 意: - 56 - ・ 肩 関 節 外 転 9 0 °、肘 関 節 屈 曲 9 0 °、 前腕 回 内 で 腕 は テ ー ブ ル 等 で 支 え る 。 ・ 肘 関 節 が 9 0 °以 上屈 曲 し な い よ う に 前 腕 を 固 定 す る 。 ・中手骨をつかむ感じで子指側に手を曲げる。 ・ 肩 関 節 が 9 0 °ま で外 転 で き な い 場 合、 肩 関 節 内 転 位 で 行 っ て も よ い 。 参考可動域 55° そ の 他 の 上 肢 測 定 は 、 簡 単に 一 覧 表 に ま と め ま し た 。 必 要 が あ る 場 合 は 行 う こ と に なり ます。 部位名 運動方向 参考可動域 屈曲 20° 伸展 20° 挙上 20° 基本軸 移動軸 両側の肩峰 頭頂と肩峰 を結ぶ線 を結ぶ線 注意点 参考図 肩甲帯 下制(引き下 げ) 水平屈曲 10° 135° 肩 両側の肩峰 を結ぶ線 30° 上縁を結ぶ 線 肩峰を通る 矢状面への 水平伸展 肩峰と胸骨 垂直線 背面から測 定する 肩関節を 上腕骨 9 0 °外 転 位とする ※挙上と下制(引き下げ) 肩甲骨の前額面の運動で、上方への動きを挙上、下方への動きを下制(引き下げ)といいます。 ※水平屈曲と水平伸展 水 平 面 の 運 動 で 、 肩 関 節 を 9 0 °外 転 し て 、 前 方 へ の 動 き を 水 平 屈 曲 、後 方 へ の 動 き を 水 平 伸 展 と い います。 - 57 - ●手指の測定 手 指 に は 関 節 が た く さ ん あ り 、 関 節 可 動 域の 測 定 の 種 類 も 多 い で す 。 最 近 こ の分 野 は、 作 業 療 法 士 ( O T : Occupational Therapist) の 分 野 と 考 え ら れ る 傾 向 に あ る そ う で 、O T の 方 が 測 定 す る 場 合 も 多 い そ う で す 。 児 童 生 徒 の 個 別 目 標 に よ く 記 載 す る 「 手 先 の 巧緻 性の向上」に大きく関与する測定です。 部位名 運動方向 参考可動域 橈側外転 60° 尺側内転 0° 掌側外転 90° 掌側内転 0° 母指 母指以外の 指 屈 曲 (M C P ) 60° 伸 展 (M C P ) 10° 屈 曲 (I P ) 80° 伸 展 (I P ) 10° 屈 曲 (M C P ) 90° 伸 展 (M C P ) 45° 屈 曲 (P I P ) 100° 伸 展 (P I P ) 0° 屈 曲 (D I P ) 80° 伸 展 (D I P ) 基本軸 示 指( 橈 骨 移動軸 注意点 参考図 母指 の延長上) 第1中手 第1基節骨 骨 第1基節 第1末節骨 骨 第2~5 第2~5 中手骨 基節骨 第2~5 第2~5 基節骨 中節骨 第2~5 第2~5 1 0 °の 過 中節骨 末節骨 伸展をとり 0° うる ※母指の橈側外転と尺側内転、掌側外転と掌側内転 母 指 の 手 掌 面 の 運 動 で 、母 指 の 基 本 軸 か ら 遠 ざ か る 動 き を 橈 側 外 転 、近 づ く 動 き を 尺 側 内 転 と い い ま す。また、母指の手掌面に垂直な平面の運動で、母指の基本軸から遠ざかる動き(手掌方向への動き) を掌側外転、基本軸に近づく動き(背側方向への動き)を掌側内転といいます。 実 際 に 自 分 の 手 指 を 動 か し て 、 参 考 可 動 域 と 比 べ て み て く だ さ い 。 指 の 動 き が 理 解 でき る と 思 い ま す 。 自 分 の 場 合 、 脳 が 指 の 動 き で と て も刺 激 さ れ た よ う な 感 じ が し ま し た 。 ●下肢の測定 C P 両 ま ひ の 場 合 、 下 肢 だ け の 測 定 の 場 合 も 多 い そ う で す 。 上 肢 同 様 、 問 題 の な い 肢 位の 測定は省略します。 (1)股関節 股関節屈曲 - 58 - 基 本 軸:体幹と平行な線(骨盤の外側中央線) 移 動 軸 : 大 腿 骨 大 転 子 と 外 側 上 顆を 結 ぶ 線 ( 大 腿 骨 ) 回 転 軸:大腿骨大転子 測 定 肢 位 : 背 臥 位、 膝 屈 曲 注 意: ・ 股 関 節 脱 臼 に 対 す る 配 慮 が 必 要な 児 童 生 徒 に は 実 施 し な い 。 ・ 骨 盤 と 脊 柱 を 十 分 固 定 す る 。 片 手で 骨 盤 を し っ か り と 押 さ え る 。 ・膝関節を胸に近づける感じで股関節を屈曲させる。 ・骨盤が動き始めたら最終可動域。 ・屈曲していない反対側の足の膝がひとりでに曲がる、トーマス サ イ ン ( 後 述 ) が で る こ と が あ る 。( 反 対 側 の 股 関 節 は 屈 曲 位 で も 可 ) 参考可動域 125° 股関節伸展 基 本 軸 : 体 幹 と 平 行 な 線 ( 骨 盤の 外 側 中 央 線 ) 移 動 軸 : 大 腿 骨 大 転 子 と 外 側 上 顆を 結 ぶ 線 ( 大 腿 骨 ) 回 転 軸:大腿骨大転子 測定肢位:腹臥位、膝伸展。 注 意: ・枕は楽になるよう腹部の下に置いてもよいが、頭の 下に置いてはならない。 ・片手で膝関節周辺、もう一方の手で上前腸骨棘の位置で骨盤をつかむ。 ・計測側の膝は伸展させておく。 ・ 膝 関 節 を 上 に持 ち 上 げ 、 骨 盤 が 動 き 始 め た ら最 終 可 動 域 。 ※ 腹 臥 位 が 体 幹 の 回 旋 等 で 測 定 が 難 し い 場 合、 側 臥 位 で 計 測 す る こ と も で き る 。 測定の際、体幹の回旋を防ぐため、骨盤に自分の膝をあて固定する。 参考可動域 15° 股関節外転 基 本 軸 : 両 側の 上 前 腸 骨 棘 を 結 ぶ線 ( ヤ コ ブ 線 ) 移 動 軸:上前腸骨棘より膝蓋骨中心を結ぶ線 (大腿骨中央線) 回 転 軸:測定する側の上前腸骨棘上 測定肢位:背臥位 注 意: ・膝関節は伸展させておく。 ・片手で骨盤を固定して、下肢は回旋しないようにする。 ・もう一方の手で足関節を把持し、足を外側に開くように移動させる。 - 59 - ・骨盤が動き始めたら最終可動域。 ・ 角 度 計 が 9 0 °を 指 す 肢 位 か ら 始 め る の で 、 実 際 の 測 定 値 か ら 9 0 °を 引 い た 値 が外 転 の測定値となる。 参考可動域 45° 股関節内転 基 本 軸 : 両 側の 上 前 腸 骨 棘 を 結 ぶ線 ( ヤ コ ブ 線 ) 移 動 軸:上前腸骨棘より膝蓋骨中心を結ぶ線 (大腿骨中央線) 回 転 軸:測定する側の上前腸骨棘上 測定肢位:背臥位 注 意: ・ 股 関 節 脱 臼 に 対 す る 配 慮 が 必 要な 児 童 生 徒 に は 実 施 し な い 。 ・対側の股関節を外転し、内転が計測できるようにする。 ・片手で骨盤を固定して、下肢は回旋しないようにする。 ・ も う 一 方 の 手 で 足 関 節 を 股 関 節 が 回 旋 し な い よ う把 持 し 、 内 側 に 移 動 さ せ る 。 ・ 骨 盤 が 動 き 始 め た ら 最 終 可 動 域。 ・ 角 度 計 が 9 0 °を 指 す 肢 位 か ら 始 め る の で 、9 0 °か ら 実 際 の 測 定 値 を 引 い た 値 が 内 転 の測定値となる。 参考可動域 20° 股関節外旋 基 本 軸:膝蓋骨より下ろした垂直線 移 動 軸 : 膝 蓋 骨 中 央 よ り 足 関 節 内 外 果 中 央を 結 ん だ 線 ( 下 腿 中 央 線) 回 転 軸:膝蓋骨前面上 測 定 肢 位 : 端 坐 位 で 膝 関 節 9 0 °屈 曲 位 。 注 意: ・ 大 腿 骨 を 水 平 に 保 つ た め 、タ オ ル 等 を 丸 め て 、 大 腿 骨 遠位部の下に敷く。 ・ 床 面 に 足 が 届 か な い肢 位 で 実 施 す る 。 ・股関節の屈曲、内転を防ぐため、検者の片手を大腿骨遠位部に当てる。 ・ 測 定 し な い 方 の 膝 関 節 は 9 0 °以 上 屈 曲 し、 外 旋 の 邪 魔 に な ら な い よ う に す る 。 ・基本軸アームは自由に動く状態で、移動アームは下腿中央線に沿って計測する。 ・下肢の動きが脊柱の側屈(横に移動する)をおこした時が最終可動域。 参考可動域 45° ※ 座 位 保 持 が 難 し い 場 合 、 背 臥 位ま た は 腹 臥 位 で 測 定 を 行 う 。 ・ 背 臥 位 の 場 合 は 、 股 関 節 と 膝 関 節 9 0 °屈曲 位 で 測 定 を 行 う 。 ・測定側の下肢を自分の大腿部(膝立ち姿勢)で支えて測定する。 - 60 - ・基本軸は体幹と平行に当て、そこから移動させない。 ・ 腹 臥 位 の 場 合 は 、 膝 関 節 9 0 °屈 曲 位 で 行う 。 ・ 骨 盤 の 挙 上 、 股 関 節 の 外 転 を 防 ぐ た め、 大 腿 骨 遠 位 部 を 固 定 す る 。 股関節内旋 基 本 軸:膝蓋骨より下ろした垂直線 移 動 軸 : 膝 蓋 骨 中 央 よ り 足 関 節 内 外 果 中 央を 結 ん だ 線 ( 下 腿 中 央 線) 回 転 軸:膝蓋骨前面上 測 定 肢 位 : 端 坐 位 で 膝 関 節 9 0 °屈 曲 位 。 注 意: ・ 股 関 節 脱 臼 に 対 す る 配 慮 が必 要 な 児 童 生 徒 に は 実 施 し ない。 ・ 大 腿 骨 を 水 平 に 保 つ た め 、タ オ ル 等 を 丸 め て 、 大 腿 骨 遠位部の下に敷く。 ・ 床 面 に 足 が 届 か な い肢 位 で 実 施 す る 。 ・ 股 関 節 の 屈 曲 、 外 転 を 防 ぐ た め、 検 者 の 片 手 を 大 腿 骨 遠 位 部 に 当 て る。 ・基本軸アームは自由に動く状態で、移動アームは下腿中央線に沿って計測する。 ・下肢の動きが脊柱の側屈をおこした時が最終可動域。 参考可動域 45° ※ 座 位 保 持 が 難 し い 場 合 、 背 臥 位ま た は 腹 臥 位 で 測 定 を 行 う 。 ・ 背 臥 位 の 場 合 は 、 股 関 節 と 膝 関 節 9 0 °屈曲 位 で 測 定 を 行 う 。 ・測定側の下肢を自分の大腿部(膝立ち姿勢)で支えて測定する。 ・基本軸は体幹と平行に当て、そこから移動させない。 ・ 腹 臥 位 の 場 合 は 、 膝 関 節 9 0 °屈 曲 位 で 行う 。 ・骨盤の挙上を防ぐため、反対側骨盤を片手で押さえる。 (2) 膝関節 膝関節屈曲 基 本 軸:大腿骨大転子と外側顆を結ぶ線(大腿の外側中央線) 移 動 軸:腓骨頭と外果を結ぶ線(腓骨外側中央線) 回 転 軸:大腿骨外側上顆 測定肢位:背臥位 注 意: ・ 股 関 節 の 回 旋 、 屈 曲 、 伸 展 を 防ぐ た め 、 大 腿 骨 を 固 定 す る 。 ・足部を骨盤の方向に滑らすように移動させ、測定する。 ※腹臥位での測定も可能だが、その場合、大腿直筋の緊張に よって可動域が制限されてしまう。 - 61 - 参考可動域 130° 膝関節伸展 基 本 軸:大腿骨大転子と外側顆を結ぶ線(大腿の外側中央線) 移 動 軸:腓骨頭と外果を結ぶ線(腓骨外側中央線) 回 転 軸:大腿骨外側上顆 測定肢位:背臥位 注 意: ・ 膝 を 伸 展 位 に す る た め に 、 計 測 側の 足 関 節 の 下 に タ オ ル を 置 く 。 ・膝の上部に適度な力を加え、完全に膝関節を伸展させる。 ・ 角 度 計 が V 字 に な る 時 ( 計 測 値 は プ ラ ス の 度 数 )、 こ れ を 過 伸 展 と い う 。 ※ 腹 臥 位 で の 測 定 も 可 能 。 そ の 場 合 大 腿 前 面に タ オ ル を 置 く 。 参 考 可 動 域 0° (3) 足関節 足関節屈曲(底屈) 基 本 軸:腓骨頭と外果を結ぶ線(腓骨外側中央線) 移 動 軸:第5中足骨外側面と平行 回 転 軸:足関節外果(外くるぶし) 測定肢位:背臥位(端坐位) 注 意: ・膝関節屈曲位で膝の下にクッション等を入れ、足関節が自由に動くようにする。 ・膝関節の屈曲運動を防ぐため、下腿の側部を片手で保持する。 ・ も う 一 方 の 手 で 足 背 を 下 方に 押 し 底 屈 さ せ る 。 ・ 足 背 を 押 す 際 、 内 反 、 外 反 方 向に 押 さ な い よ う に 注 意 す る 。 ・ 角 度 計 が 9 0 °を 指 す 肢 位 か ら 始 め る の で 、9 0 °か ら 実 際 の 測 定 値 を 引 い た 値 が 底 屈 の測定値となる。 参考可動域 45° 足関節伸展(背屈) 基 本 軸:腓骨頭と外果を結ぶ線(腓骨外側中央線) 移 動 軸:第5中足骨外側面と平行 回 転 軸:足関節外果(外くるぶし) 測定肢位:背臥位(端坐位) 注 意: ・ 膝 関 節 屈 曲 位 で 膝 の 下 にク ッ シ ョ ン 等 を 入 れ 、 足 関節が自由に動くようにする。 ・ 膝 関 節 の 運 動 を 防 ぐ た め、 下 腿 の 遠 位 部 を 片 手 で 保 持 す る。 ・もう一方の手で足底面を上方に押して背屈させる。 - 62 - ・足底面を押す際、足指を押さないように注意する。 ・ 角 度 計 が 9 0 °を 指 す 肢 位 か ら 始 め る の で 、 実 際 の 測 定 値 か ら 9 0 °を 引 い た 値 が 背 屈 の測定値となる。 参考可動域 20° そ の 他 の 下 肢 測 定 は 、 簡 単 に 一 覧 表 に ま と め た。 必 要 が あ る 場 合 は 行 う こ と に な る 。 部位名 運動方向 外がえし 参考可動域 20° 基本軸 下腿軸への 移動軸 足底面 垂直線 足部 内がえし 30° 外転 10° 内転 20° 注意点 参考図 膝関節を屈 曲 位 で 行 う。 第1、第2 第1、第2 足底で足の外 中足骨の間 中足骨の間 縁または内縁 の中央線 の中央線 で行うことも ある。 屈曲(MT P) 伸展(MT 母指 P) 60° 伸 展 (I P ) 0° P) 伸展(MT P) 屈曲(PI P) 伸展(PI P) 屈曲(DI P) 伸展(DI P) 第1中足骨 第1基節骨 第1基節骨 第1末節骨 第2~5中 第2~5基 足骨 節骨 第2~5基 第2~5中 節骨 節骨 第2~5中 第2~5末 節骨 節骨 60° 屈 曲 (I P ) 屈曲(MT 足指 35° 35° 40° 35° 0° 50° 0° ※外がえしと内がえし 足 部 の 運 動 で 、足 底 が 外 方 を 向 く 動 き を 外 が え し 、足 底 が 内 方 を 向 く 動 き を 内 が え し と い い ま す 。ま た 、外 反 、内 反 と い う 用 語 も 用 い ま す が 、 こ れ ら は 足 部 の 変 形 を 意 味 し て お り 、関 節 運 動 の 名 称 と し て は使用しません。 ●体幹の測定 体 幹 の 測 定 に は 、 立 位 、 座 位 が し っ か り と と れ る 必 要 が あ る た め 、 該 当 す る 児 童 ・ 生徒 は少ないと思われます。簡単に一覧表にまとめました。 - 63 - 部位名 運動方向 参考可動域 屈曲(前屈) 60° 基本軸 移動軸 注意点 肩峰を通る 外耳孔と頭 頭部体幹の 床への垂直 頂を結ぶ線 側 面 で 行 線 参考図 う。原則と して腰かけ 伸展(後屈) 50° 座 位 と す る。 左 回 頸部 回旋 60° 旋 両側の肩峰 鼻梁と後頭 腰かけ座位 を結ぶ線へ 結節を結ぶ で行う。 の垂直線 線 第7頸椎棘 頭頂と第7 体幹の背面 右 回 60° 旋 左 側 側屈 突起と第1 頸椎棘突起 で行う。腰 屈 仙椎の棘突 を結ぶ線 かけ座位で 右 起を結ぶ線 側 50° 行う。 50° 屈 仙骨後面 屈曲(前屈) 45° 第1胸椎棘 立 位 、腰 か け 突起と第5 座位または 腰椎棘突起 側臥位で体 を結ぶ線 幹側面より 行 う 。股 関 節 伸展(後屈) 30° の運動が入 らないよう に行う。 左 回 胸腰部 回旋 40° 旋 両側の後上 両側の肩峰 座位で骨盤 腸骨棘を結 を結ぶ線 を固定して ぶ線 行う。 右 回 40° 旋 左 第1胸椎棘 体幹の背面 稜を結ぶ線 突起と第5 で行う。 屈 (Jaco 腰椎棘突起 腰かけ座位 右 by線)の を結ぶ線 または立位 側 側屈 両側の腸骨 側 屈 50° 50° 中点にたて で行う。 た垂直線 ※前屈と後屈 頸部、胸腰部の矢 状面の 運動で 、前方へ動 き(屈曲)を前 屈、後方 への動 き( 伸展)を後 屈と いいま す。 - 64 - ※右側屈と左側屈 頸部、体幹の前額面の運動で右方向への動きを右側屈、左方向への動きを左側屈といいます。 ※右回旋と左回旋 頸部と胸腰部の運動で、右方に回旋する動きを右回旋、左方に回旋する動きを左回旋といいます。 ●測定値の記載上の注意点 ( 1 )関 節 可 動 域 の 測 定 値 は 、 基 本 肢 位を 0 °と し て 記 載 し ま す 。 ( 2 ) 関 節 可 動 域 の 測 定 に 際 し 、 事 情 に よ り 異 な る 測 定 法 を 用 い る 場 合 や 、 そ の 他 関 節可 動 域 に 影 響 を 与 え る 特 記 す べ き事 項 が あ る 場 合 は 、測 定 値 と と も に そ の 旨 併 記 し ま す。 ① 自 動 運 動 を 用 い て測 定 す る 場 合 は 、そ の 測 定 値 を ( )で 囲 ん で 表 示 す る か 、 「 自 動」 ま た は「 active」 な ど と 明 記 し ま す 。 ② 身 体 の 変 形 、 拘 縮な ど で 、 記 載 と 異 な る 肢 位 を 用 い て 測 定 す る 場 合 は 、「 背 臥 位」 「座位」などと具体的に肢位を明記します。 ③ 多関節筋を緊張させた肢位を用いて測定す る場合は、その測定値を 〈 〉で囲ん で 表 示 す る か 、「 膝 伸 展 位 」 な ど と 具 体 的 に 明 記 し ま す 。( 股 関 節 、 膝 関 節 屈 曲 時 など) ④ 疼 痛 ( 痛 み ) な ど が 測 定 値 に 影 響 を 与 え る 場 合 は 、「 痛 み 」「 pain」 な ど と 明 記 し ます。 ⑤ 拘 縮 が あ り 、一 定 の 値 以 上 可 動 し な い 場 合 は 、「 c 」「 contracture」な ど と 明 記 し ます。 ( 3 ) 関 節 可 動 域 は 年 齢 、 性 、 肢 位 、 個 人 に よ る 変 動 が 大 き い の で 、 正 常 値 は 定め ず 参考 可 動 域 と し て 記 載さ れ て い ま す 。 6.その他の検査測定方法 SLR ( Straight Leg Raising)( 下 肢 伸 展 挙 上 検 査 ) 検 査 概 要:背 臥 位 。膝 を 伸 ば し た 状 態 で、下肢 を ゆ っ く り 9 0 °か 痛 み が 現 れ る 位 置 ま で 挙 上 ( 屈 曲 ) し 、 そ の 角 度 を 計 測 し ま す 。 股 関 節 を 伸 展 さ せ る 筋 肉 ( ハ ム ス ト リ ン グ ス )が 拘 縮 し て い る か い な い か の判 断 材 料 と な り ま す 。 基 本 軸 : 体 幹 と 平 行 な 線 ( 骨 盤の 外 側 中 央 線 ) 移 動 軸:大腿骨大転子と外側顆を結ぶ線(大腿骨) 回 転 軸:大腿骨大転子 測 定 肢 位 : 背 臥 位、 膝 伸 展 注 意: ・この計測を正確に行うためには、もうひとり補助者 が必要。 ・検者は足首と膝関節に手を当て、膝関節の伸展が保 てるようにする。 ・筋肉性の硬い抵抗を感じるまで股関節を屈曲し、保 持する。 - 65 - ・補助者が度数計により測定する。 ・ 反 対 側 の 足 の 膝 関 節 は 完 全 伸 展 位を 保 持 す る 。 ト ー マ ス テ ス ト( Thomas Test) 検 査 概 要 : 背 臥 位。 片 方 ず つ 膝 を 曲 げ な が ら、 胸 に 近 づ け ま す 。 膝 を か か え た と き に 、 も う 一 方 の 伸 ば し た 側 の 膝 が ひ と り で に 曲 が れ ば ( 膝 が 持 ち 上 がれ ば ) 陽 性 で、 股 関 節 を 屈 曲 さ せ る 筋 肉 ( 腸 腰 筋 ) が 拘 縮 し て い る こ と を 示 し て い ま す 。 7.おわりに ま と め て い て 、 専 門 用 語 ば か り が多 く な っ て し ま い 、 何 度 も 書 き 直し ま し た 。 R O Mと いう専門的な内容を素人がまとめることの難しさを感じました。 ま た 説 明 さ れ て い る本 も 、 基 本 は 同 じ で し た が 、 主 に 説 明 さ れ て い る 測 定 の 肢 位 や 注意 事項などに違いがあり、判断が難しい内容もありました。 こ れ ら の 測 定 方 法 が 、 実 際 に 学 校 で 使 用 で き る 内 容 か ど う か も わ か り ま せ ん が、 実 施し てみてもっと使いやすい内容に直していこうと思っております。 参考図書 関 節 可 動 域 ・ 筋 長 検 査 法 監 修 奈 良 勲 2005 年 医 歯 薬 出 版 株 式 会 社 関 節 可 動 域 測 定 法 改 定 第2 版 監 訳 木 村 哲 彦 2004 年 協 同 医 書 出 版 社 R O Mナ ビ 動 画 で 学 ぶ 関 節 可 動 域 測 定 法 監 修 青 木 主 税 2007 年 メ デ ィ カ ル プ レ ス 筋 骨 格 系 の 触 診マ ニ ュ ア ル 監 修 丸 山 仁 司 2011 年 産 調 出 版 Ⅱ 関節可動域測定の実際の活用 1 . 学 校 で の 活 用 方 法に つ い て 学 校 で の 活 用 方 法と し て 、 自 分 な り に 期 待 し て い た点 は 以 下 の 四 点 で し た 。 ( 1 ) 児 童 生 徒 の 関 節可 動 域 を 測 定 す る こ と を と お し て 、 児 童 生 徒の 身 体 の 状 態 を 全 体 的 に把握することができる。 ( 2 ) 測 定 を と お し て 、 具 体 的 な 児 童 生 徒 の動 き の 制 限 を 知 る こ と に よ り 、 生 活 上 の 問題 点 、 課 題 の 背 景 を 発 見 、 理 解 す る こ と が で き 、 そ の動 き の 制 限 を ど の よ う な 方 法で 代替、援助していけばよいか総合的に考える良い機会が得られる。 ( 3 ) デ ー タ を 学 校 全 体 で 共 有 で き 、 共 通 認 識 と し て 集 団 、 個 別 の 自 立 活 動 に 生 か す こと ができる。 ( 4 ) 一 日 一 回 固 く な り つ つ あ る 関 節 を 可 動 域 ま で 動 か す こ と は 、 と て も 大 切 な こ と であ り、筋肉の拘縮を予防することができる。 ( そ の 際 、可 動 域 ま で の ス ト レ ッ チ 運 動を 1 分 以 上 保 持 す る こ と が 重 要 だ そ う で す 。そ れ は 筋 肉 か ら の 運 動 の 指 令 が 脳 に 到 達 す る ま で に 時 間 が か か る か ら だ そ う で す 。) 2.関節可動域のデータについて 対象生徒 A君 - 66 - 基礎情報 医学的情報 年齢:13歳 性別:男 身長:153cm 体重:30.8kg 診断名:脳外傷後遺症 状況:左上下肢麻痺、てんかん、左股関節脱臼 右 〃 〃 〃 1月 9月 4月 氏名 A 検査者名 中 村 日付 関節 ※ 男・女 仁 13才 司 年・月 運動 参考可動域 左 〃 〃 〃 4月 9月 1月 測定肢位 180 180 180 屈曲 180 背臥位 130 170 170 50 55 45 伸展 50 腹臥位 45 45 45 180 180 180 外転 180 背臥位 160 160 160 0 0 0 内転 0 背臥位 0 0 0 90 90 90 外旋 90 背臥位 70 70 55 70 70 70 内旋 70 背臥位 50 60 70 145 145 145 屈曲 145 背臥位 145 150 145 5 5 5 伸展 5 背臥位 - 15 -5 - 10 90 90 85 回内 90 座 位 90 90 90 90 90 90 回外 90 座 位 0 15 15 90 90 85 掌屈 90 135 135 140 70 70 65 背屈 70 - 20 - 20 - 25 25 25 15 橈屈 25 0 5 5 45 45 40 尺屈 55 50 20 20 135 140 135 屈曲 125 背臥位 - - - 10 5 10 伸展 15 腹臥位 - 40 - 45 - 35 45 40 45 外転 45 背臥位 35 40 35 20 20 20 内転 20 背臥位 - - - 60 60 60 外旋 45 端座位背臥位 45 30 25 60 60 60 内旋 45 端座位背臥位 - - - 140 150 145 屈曲 130 背臥位 145 145 135 - 10 - 20 - 20 伸展 0 背臥位 - 50 - 60 - 55 45 50 45 底屈 45 背臥位 45 40 35 10 15 10 背屈 20 背臥位 0 0 0 肩 肘 前腕 手 股 膝 足 左股関節脱臼のため左股関節の屈曲、内転、内旋は計測しませんでしたが、車いすの姿勢を見ると 股 関 節 屈 曲 9 0 °以 上 は あ る と 思 い ま す 。 3.関節可動域測定の問題点 測 定 し た 値 の 信 用 性 に つ い て 確 認 し よ う と 思 い 、 A 君 の 過 去 の 関 節 可 動 域 の 測 定 値 を探 - 67 - しましたが、得られることはできませんでした。 測 定 し て い て 感 じ た こ と は 、 当 た り 前 の こ と で す が 、「 生 徒 は 動 い て し ま う 」 と い う こ と で 、 Ⅰ の 関 節 可 動 域 測 定 の 実 施 の 絵 の よ う に静 か に 待 っ て い て く れ は し な い と い う こと で し た。 ま た、代 償 動 作( 動 か な い 関 節 の 代 わ り に 他 の 関 節 を 動 か す こ と で 動 作 を 完 了 す る こ と) の 影 響 を 削 除 し き れ て い な い と い う こ と を 強 く 感 じ ま し た 。 絶 え ず 動 き が あ り 、 加 え て嫌 が っ て い る 場 合は 特 に 代 償 動 作 が 起 こ り や す い と 感 じ ま し た 。測 定 に あ た っ て の 注 意 に「何 を す る の か 簡 単 に 説 明 し て か ら 行 う 」 や 「 さ わ り 方に 注 意 」 と あ り ま し た が 、 生 徒 は 何を さ れ る か 不 安 で 、 力 が 入 っ て し ま う 場 合 が 多 く 、 そ れ に 応 じ て こ ち ら の 触 れ 方 も 強 く なっ てしまう場合が多かったように思います。 表 の 測 定 値 も そ の よ う な 状 態 で 測 定 し た 値 が 多 く 含 ま れ て い る と 思 わ れ ま す 。 一 人で測 定 す る の は と て も 難 し い と 感 じ ま し た 。 し か し 、 二 人 の 測 定 も 実 際 に は 難 し く 、 生 徒は余 計力が入ってしまい、自然な動きを阻害してしまうという状況でした。 そ れ 以 外 に も 、 ゴ ニ オ メ ー タ ーの 当 て 方 、 基 本 軸 ・ 移 動 軸 の見 分 け 方 等 も 実 際 の 測 定で は曖昧になってしまう場合が多かったように感じました。 学 校 で の 活 用 目 標 の 一 つ 「 デ ー タ を 学 校 全 体で 共 有 で き 、 共 通 認 識と し て 集 団 、 個 別 の 自 立 活 動 に 生 か す こ と が で き る 」は 測 定 課 題 が 多 く 、す ぐ に は 実 現 で き な い と 感 じ ま し た。 た だ 、 客 観 的 な 測 定 値と し て 残 す こ と は 難 し く て も、 表 の 数 字 の 並び 方 、 数 字 の 変 化 、 参 考 可 動 域 と の 差 な ど の 数 値 は 、 他 の 活 用 目 標で あ る 「 児 童 生 徒 の 身 体 の 状 態 を 全 体 的 に 把 握することができる」にはかなり役立っていると思いました。 4.測定をとおして得られたこと A君の関節可動域の測定をとおして得られたこともたくさんありました。 ( 1 ) 自 信 を も っ て 身 体 を 動 か す こ と が で き る よ う に な っ た。 関節の動き方、動く方向の種類が分かっているというのは自立活動における「身体 の 動 き 」を 行 う 際 、と て も 心 強 い こ と で し た 。今 ま で は 、身 体 を 動か す と い っ て も 、ど う 動 か し て い い か 分 か り ま せ ん で し た 。ま た 、骨 が 折 れ て し ま っ た ら ど う し よ う な どと 考えて、十分に関節を動かすことができませんでした。 A 君 は 、股 関 節 脱 臼 が あ る た め 股 関 節 屈 曲 、内 転 、内 旋 に は 制 限 が あ り ま す が 、関 節 を 動 か す に あ た っ て 、そ れ 以 外 の 特 別 な 配 慮 事 項 は な か っ た の で 、本 人 の 表 情 を 見 なが ら 余 裕 を も っ て 行 う こ と が で き ま し た 。表 情 の 変 化 で A 君 の「 こ と ば」が 少 し ず つ 分 か ってきました。 (2)関節可動域の制限が少なかった。 関 節 可 動 域 の 表 か ら も 分 か る よ う に 、 実 際 に 測 定 し て み る と 、 関 節 可 動 域 の 制 限が ある動きは、全体の動きの中のごく一部だけであるということに気付きました。逆に 制 限 の 強 い 動 き が ク ロ ー ズ ア ッ プで き ま し た 。自 立 活 動 で 行 う 関 節 の 動 き を 絞 り 込 み、 それらの動きを毎日行うことで、動きの変化を敏感に感じることができるようになり ました。季節による変化や、身長の増加による変化、夏季・冬季休業後の変化など分 かるようになってきました。 (3)生徒理解が深まった。 実 際 の 測 定 や そ れ に 関 連 し た 動 き の 中 で 、 A 君 の い ろ い ろ な 部 分 が 見 え て き て 、そ - 68 - れ と 関 係 す る 動 き や 動 き の 理 由 、 他 の 事 柄 と の 関 係 な ど 、 裾 野 を 広 げ て 理 解 す る こと が で き ま し た。 ①上前腸骨棘の位置と新しい車いす Ⅰ の 「 身 体 の 計 測 ポ イ ン ト 」 に も 記 載し た 上 前 腸 骨 棘 は 触 診 で 簡 単 に 見 つ か る ポイ ン ト で、 A 君 の 骨 盤 の 左 右 差 を 視 覚 的 に は っ き り と確 認 す る こ と が で き ま し た 。 ここ か ら 左 右 の 足 の 長 さ の 違 い が 生 じ 、 そ れ が 新 し い 車 い す の シ ー ト の 形 に 反 映 さ れ てい るということが良く理解できました。 ※ 親指の爪の位置が上前腸骨棘です。 ※シートに切り込みが入って脚長差を補正 しています。 ②踵骨の大きさと歩行 足 関 節 を 動 か す 時 や ア キ レ ス 腱 を 伸 ば す 時 に 触 れ る 足 の 踵 の 大 き い 骨 が 踵 骨 で す。 A 君 の 足 底 を 触 っ て い て 、 こ の 骨 が 他 の 骨 格 と 比 べ 相 対 的 に 小 さ い こ と に 気 付 き まし た 。 A 君 は ず っ と 車 い す 使 用 で 歩 行 し た経 験 が あ り ま せ ん 。 そ の た め 他 の 骨 格 に 比べ 発 達 が 遅 か っ た と 思 わ れ ま す。 歩 行 が 困 難 な 生 徒 に と っ て、 足 底 を 床 に 付 け る と いう こ と は と て も 重 要 な こ と で あ り 、そ こ に 体 重 が 乗 せ ら れ れ ば 更 に 言 う こ と あ り ま せ ん。 A 君 は 立 位 の 運 動 は 困 難 で も 、 で き る 限 り 足 底 を 床 に 付 け る 運 動を 多 く 取 り 入 れ るよ う心掛けました。 ※踵を手で包み込むように触るとよく分か ります。 ※ ク ッ シ ョ ン チ エ ア ー で も 角 度 を 調 節 して 床に足を着く機会を増やしました。 - 69 - ③膝の可動域と長座位の姿勢 左 右 の 膝 関 節 は 計 測 し て み る と 、 か な り 伸 展 で き る こ と が 分 か り ま し た 。 屈 筋 に力 が 入 っ て し ま う と 膝 関 節 は 曲 が っ た ま ま の状 態 で す が 、 上 手 に 力 を 抜 く と か な り 伸展 す る こ と が わ か り ま し た。 そ こ で 、 膝 関 節 が 伸 展 し て い る 時 、 長 座 位 を 試 み ま し た 。 A 君 は 今 ま で自 ら 座 位 や 片 膝 立 ち を す る こ と は あ り ま し た が 、 長 座 位 の 姿 勢 は ほ と ん ど 見 た こ と が あ り ま せん で し た 。 膝 関 節 が あ ま り 伸 展 し て い な い 状 態 で は 、 重 心 が 骨 盤 ( 坐 骨) に 乗 ら ず 、後 方 に 倒 れ て し ま い ま す が 、 膝 が 可 動 域 ま で 伸 展 し て い る と長 座 位 を 比 較 的 長 い 時 間保 持することができるようになりました。 ※短下肢装具を装着していると膝関節の角 度が安定します。 ※腰と足に段差があった方が安定します。 他 に も 足 底 か ら の 感 覚 刺 激 に 対 す る 反 応 な ど 関 節 可 動 域 測 定を と お し て 新 た に 気 付 いた 点 が い く つ か あ る の で 、 関 節 可 動 域 測 定 方 法 と 共 に 、 今 後 ま と め て い き た い と 思 っ て おり ます。 5 . 今 後の 課 題 国際医療福祉大学でまとめたⅠの最後は、 「 こ れ ら の 測 定 方 法 が 、実際 に 学 校 で 使 用 で き る 内 容 か ど う か も わ か り ま せ ん が 、 実 施 し て み て も っ と使 い や す い 内 容 に 直 し て い こ うと 思 っ て お り ま す 。」 で し た 。 う ま く い か な か っ た 点 は 、「 3 . 関 節 可 動 域 測 定 の 問 題 点 」で 詳 し く 述 べ ま し た。 講 義 で 聴い て 、 本 や D V D で 調 べ て 、 先 生 に 教 え て い た だ い た 関 節 可 動 域 の 測 定 法 は、 本 校 の 児 童 生 徒 に と っ て は 困 難 な 点 が 多 か っ た よ う に 思 い ま す 。 し か し 、 こ れ ら の 内 容を 無 駄 に し な い た め に 、 本 校 の 児 童 生 徒 に あ っ た 内 容 に 変 え て い き た い と 思 っ て お り ま す。 6 . 最 後に 学 校 で の 生 活 は 、 児 童 生 徒 に と っ て 限 ら れ た 時 間で 、 長 い 人 生 上 で 考 え れ ば 、 ほ ん の一 部の期間にしかすぎません。 し か し 、 支 援 の 必 要 な 児 童 生 徒 に と っ て 第 二 次 性 徴 期 を い か に 上 手 に 乗 り 切 る か が 身体 発 達 上、 一 番 大 切 な こ と で あ り 、 そ の 一 番 大 切 な 時 期 を 学 校 と い う 場 で 過 ご し て い ま す。 自 分 た ち 教 師 の 児 童 生 徒 に 対 す る 関 わ り が い か に 大 切 で あ る か を 痛 感 い た し ま し た 。卒 業 後の QOL に 貢 献 でき る 支 援 を 今 後 も 心 掛 け て い き た い と 思 っ て お り ま す 。 - 70 - 編 集 後 記 教 頭 上野 光一 日増しに春を感じる今日この頃、平成 24 年度実践集「わかたけ」第7号をお届け いたします。 本校は肢体不自由教育特別支援学校として日々児童生徒の教育にあたっておりま が、年々児童生徒数の減少、障害の重度・重複化が進んでおります。こうした児童生 徒の実態の変化は教育課程の根底に関わる重要な問題であり、従来の教育内容・方法 等だけでは対応できない様々な課題が浮き彫りになってくるものと考えられます。 従いまして 、これらの変化に対応するためには 、これまでの教育実践を見直したり 、 新たな教育内容・方法等を導入したりすることはとても重要なことと思われます。 今回は「自立活動」の教育方法の見直し、日々の授業の充実に向けた研究授業・授 業研究会の見直しとタブレット PC を利用した新たな指導の導入などに取り組みまし た。こうした取組を通して本校教育の充実を図っていきたいと考えております。 最後になりましたが、本校の取組を御覧いただきまして御指導、御助言を賜れば幸 いに存じます。 -1-