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特集:Creative Ideas for innovation

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特集:Creative Ideas for innovation
Creative Ideas
for Innovation
特集 1:
クリエーティブインタビュー
プラットフォーム時代における新たな価値の創造
を行ってきました。また新聞社とも、
「電報通信社」として広告業と
「アバブ・ザ・ラインとビロー・ザ・ライン」、あるいは「マス4 媒体と
通信業の一体経営が行われていた1901年の創業以来の結び付き
非マスの媒体」、このような従来型のメディアセグメントは今の時代
があり、現在まで広告枠の獲得に競争優位を保っています。当社グ
において意味を失いつつあります。メディアへのこだわりを前提と
ループが広告主を紹介し、消費者や広告主にとって魅力的な番組や
するのではなく、真のソリューションを提供していくために何が必要
雑誌を企画・提案することにより、媒体社との結び付きは一層強固
かという発想を始点とするクリエーティブが求められています。
なものへと育っていきました。このような歴史的経緯から、媒体社
デジタル・テクノロジーの発展と普及により、生活者、企業、メディア
との広告枠の交渉にあたって圧倒的な優位性を発揮できるのです。
の関係性も大きく変容しました。これまでの枠組みを超えた直接
海外の多くのメガ・エージェンシーが主に買収によって成長し、個々
的なコミュニケーションが生まれ、大きな影響力を持つ新たなコミュ
の関連会社を通じて多種のサービスを提供しているのに対し、電通
ニティが次々とつくられています。ウェブの世界に象徴されるように、
はグループ内で組織を広げ、事業領域を新たに創り出すことで、統
送り手と受け手が逆転するツーウェイのコミュニケーションが当たり
合された組織として広範囲にわたるサービスを提供してきました。
前になり、もはや既成概念でくくれない時代に入ってきています。
我々クリエーティブにとって、メディアはいつの時代も常に身近にあ
電通グループは、そうしたプラットフォーム時代にメディアニュートラ
り、目的に応じてカタチを変えることのできる存在なのです。メディ
ルの概念をいち早く取り入れ、ソリューションを中心に据えた柔軟
アを単に広告スペースとしてとらえるのではなく、消費者や広告主
なクリエーティブを実践しています。クライアントの課題と生活者
へ新たな機能を提供できる強力なコミュニケーションツールとして
の行動を的確にとらえ、マス4 媒体にさまざまなインタラクティブメ
扱えること。これは、メディアニュートラルを実践していく上で我々に
ディアを組み合わせ、一つのゴールへスピーディに到達していく。ク
とって大きな強みになっているといえるでしょう。
ロスメディアを核とした総合的コミュニケーションこそ、今の時代に
コアアイデアを生み出すクリエーティブ力
おける最適なソリューションの導き出し方であると考えます。
デジタル・テクノロジーの発展により、クライアントから広告会社、
媒体と築き上げた強固な関係をベースに
広告会社から生活者という従来型のヒエラルキーは消えつつあり
特定のメディアにとらわれず、ソリューション実現のために柔軟にメ
ます。また、情報共有の在り方も多様化しています。そうしたプラッ
ディアプランを考えるメディアニュートラルは、複雑化したプラット
トフォーム時代の複雑なクロスメディアを成功に導くためには何が
フォーム時代には有効な概念といえます。しかしながら、多くの広
必要でしょうか。私は、その重要な鍵となるのがコアアイデアの創
告会社にとってメディアニュートラルへの変革は容易なことではない
出であると考えています。コアアイデアとはキャンペーンの核となる
でしょう。世界に先駆け、電通グループが新しい時代のクリエーティ
アイデアであり、広告主そのものや商品の魅力や斬新さ、力強さを
ブを体現できるのは、一つには強力なメディア展開力をベースに持
簡潔に伝えるものです。そこには what to say(何を伝えるか)だけ
つことが挙げられます。
ではなく、how to say(どう伝えるか)までが含まれています。一つ
当社グループは、長年にわたり広告主とメディアの仲介役として、あ
のメッセージをターゲットに届けようとする時、メディアごとにアプ
らゆる主要媒体社と密接な関係を発展させてきた歴史があります。
ローチの方法は異なります。新聞とモバイルでは、当然ながらレト
とりわけ、テレビ放送との結び付きは深く、主要な民間放送各社の
リックは違ってくるでしょう。メディアの選択肢が増え、手法が複雑
設立に人材や資金を提供し、営業活動や番組制作についても支援
になるほど、中心に置くアイデアが重要になってきます。すべてのコ
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《プロフィール》
鏡 明(かがみ・あきら)
株式会社 電通 執行役員、
グローバル・エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター
(2007年6月就任)
1971年電通入社。マーケティング局、後にクリエーティブ局に配属。
ACC 賞、カンヌ、アドフェストをはじめとする国内外の広告賞で受賞多数、
また審査員を務める。
2002 年、アジア最大の広告賞アドフェストで
アジア人初の審査委員長を務め、2009 年カンヌ国際広告祭では
日本人初の審査委員長に就任。主な作品は、東京海上火災「損害保険シリーズ」、
パナソニック「ルーカスの仲間たち」ほか、
「マックロード」
「ナショナルのあかり」、WOWOW
「走る女」
「BIRD MAN」等。
ミュニケーションの原点となる強いコアアイデアを持つことは、クロ
ではなく、長い時間の中で DNAとして深く刻まれたものなのです。
スメディアを成功させる不可欠な条件といえます。
そこから生まれたソリューション提案力は、グローバル・マーケット
新しいコアアイデアは、CR・マーケでも営業でも媒体担当でも社内
においても先端を行くものであり、世界的な期待とニーズの高まり
の誰から生まれてきても構わないと私は考えます。一人のスタッフ
を肌で感じることができます。
の頭の中でひらめいたアイデアやビジネスモデルを、チームで拾い
上げ、コアアイデアに高めていく。電通グループのクリエーティブに
さまざまなメディアを駆使した生活者へコミュニケーションを通じ
は、セクションや肩書きを超えて社員個々が持っている知識や感性、
て、電通グループがクリエートしていく価値。それは、クライアント
経験を活かしていこうとする自由な空気が流れています。全員がク
のニーズに高次元で応えていくことであり、同時に社会に「喜び」や
リエーティビティを発揮できる環境と言い換えることもできるでしょ
「幸せ」を届けていくことです。プラットフォーム時代を迎えても、
う。それは今に始まったことではなく、コアアイデアにこだわり続け
ベースに流れる考えは何ら変わることがありません。あらゆるメディ
てきた電通ならではの社風と呼べるものかもしれません。
アを駆使した前例のないビジネスモデルを創造することはクリエー
ティブにとって大きなやりがいであり、プラットフォーム時代に与え
グローバル・マーケットにおける電通の可能性
られた我々の重要な使命であると考えます。
今年、電通は国際広告賞の中で特に権威のあるカンヌ国際広告祭
で、
「メディア・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。
電通グループとしても金賞 5、銀賞 2、銅賞4と数多くの賞を受けま
した。私はアウトメディア部門の審査委員長としてこの広告祭に参
加しましたが、メディアニュートラルを牽引する電通グループの先進
性を改めて実感することができました。カンヌだけでなく、国際的
な広告賞を身近に見ることで感じ取れるのは、世界的にクリエー
ティブの概念が潮の変わり目に来ているということです。以前は、
メディアにおける表現クオリティが評価対象の中心でしたが、近年
は「いかにソリューションを提供したか」ということが評価の中心と
なり始めています。コピーライティングやアートディレクションと
いったセグメント自体の意味が低下し、統合的なソリューション全
体の質を評価する傾向は今後ますます強まるでしょう。
海外の多くのメガ・エージェンシーが、これまで専門会社へのアウ
トソーシングによる広告キャンペーンのプランニングを基本として
きたため、メディアニュートラルへのスムーズな変革を果たせずにい
ます。電通グループは、いくつもの広告媒体を自らの手で創り出し、
実践と検証を重ねながら広告手法を進化させてきました。当社グ
ループのクリエーティブにとって、メディアニュートラルは新しい概念
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Creative Ideas
for Innovation
特集 2:
電通式クロスメディア
コミュニケーションの仕掛け
コンセプトは「パラダイム・チェンジ」
YouTubeという新しいプラットフォームの活用
YouTubeを基軸とした新時代の双方向コミュニケーション
本キャンペーンでは、
「パラダイム・チェンジ」をコンセプトに前例の
ないクロスメディア施策を展開しました。
既存の枠にとらわれない新しいアプローチ
プレローンチキャンペーンでは、発 売3カ月前の2008 年 8月より
2008 年11月20日、TOYOTAはクルマづくりの既成概念を覆すマイ
WEB 広告を出稿。10月からは、斬新な OOH(アウト・オブ・ホーム)
クロプレミアムカー『iQ』の発売を開始しました。電通は、まったく新
メディアで注目を集めました。また、動画投稿サイトのYouTube に
しい価値観やライフスタイルを表現する新型車のキャンペーンをプ
『iQ』公式チャンネルを開設。
“amazing films”と題した走行性をア
ランニングするにあたり、
『iQ』の購入ターゲットと利用者層が合致
ピールするプロモーションムービーを配信し話題を喚起したほか、
するYouTubeを巧みに活用したキャンペーンを立案、展開。これま
ライブイベントやファッションイベントに協賛し、情報感度が高い
でにない双方向コミュニケーションの仕組みを作り出し、新型車に
ターゲット層へ向けて認知を高めました。
ローンチキャンペーンで は、YouTubeで 先 行 配 信した“amazing
対する興味・理解を促すことに成功しました。
films”をTVCM・WEB 広告で連動させて展開。発売当日には、全国
時代が求めるクロスメディアコミュニケーション
紙15 段広告で、
「2008-2009 カー・オブ・ザ・イヤー」受賞を大々
テクノロジー・メディアの進展により、消費者のメディアへのかかわ
的に告知し、潜在ニーズを掘り起こしています。
り方が多様化しています。個人により重視するメディアは異なり、情
WEBでは、理解促進を図るためのスペシャルサイトを開設し、また、
報のはんらんから消費者が情報バリアを張る傾向も強まっていま
2009 年2月からは
『iQ』
をテーマにしたオリジナル映像を投稿できる
す。電通は、そうした新しい時代に適した新しいコミュニケーション
ユーザー参加型コンテンツによりファン化を図る等、ユニークな発想
の形を『iQ』のキャンペーンにおいてプランニングし、具現化しまし
の施策を組み合わせることによって相乗効果を生み出しています。
た。それが、クロスメディアコミュニケーションです。
クロスメディアとは「ターゲットを動かすためのシナリオづくり」のこ
高い成果と評価を獲得した最先端のクロスメディア戦略
とで、
「ターゲットに到達するためのメディア配分」を考える従来の
YouTube に開設した『iQ』公式チャンネルの再生回数は、100万回
「メディアミックス」とは異なります。優れたシナリオは「コアアイデ
を突破(2008 年12月末時点)。動画投稿サイトを活用して話題を
ア」と「シナリオアイデア」によって構成されます。プランニングを行
喚起するという異例の販売促進策が奏功し、新車発表から発売ま
での1カ月間の受注台数は予想を大きく上回りました。
う際に重要な「キャンペーンの核となるアイデア」、それが「コアアイ
『iQ』キャンペーンは、消費者とブランドを結ぶコンタクトポイントが
デア」です。
「シナリオアイデア」とは、
「コアアイデアを実現していく
仕組みのアイデア」を指します。ターゲットを動かすエンジンとなる
多様化する中で、伝えたいメッセージを多くのターゲットへと届け、
コアをまず創出し、複数のコンタクトポイント(消費者とブランドを
心をとらえることに成功した画期的な事例です。電通が打ち出す
結ぶ接点)を効果的に掛け合わせてコミュニケーションの動線を組
クロスメディアコミュニケーションにおける新しい考え方、それ自体
み立てていく。これら2つのアイデアを両輪とすることで、消費者の
の正しさの一つの証明といえるものです。
心をとらえ、そして動かすことが可能になります。
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『パラダイム・チェンジ』キャンペーンの構造と仕掛け
プレローンチ期(2008.8.19 ∼ 2008.11.19): YouTubeでのムービー配信、斬新な手法の OOH 展開で話題喚起
OOH:既成概念を覆す斬新な手法で注目喚起
YouTube:話題喚起
イベント協賛:認知度向上
● 銀座ソニービル
●
『iQ』公式チャンネル
● ライブイベント
● アートエキシビジョン
“amazing films”と題したプロモーションムービーで『iQ』の 走 行
YouTube ユーザー 2,000 名を招待
ファッションブランド
「SOMARTA」
性 能をアピールしたほか、銀 座ソニービルでの空中ダンスパフォー
したライブイベントに 冠 ス ポン
と共 催。革 新 的 な 両 ブランドの
マンスの様 子なども動画で 配信。
サーとして協賛。
コラボレーションを通じて、
『 iQ』
銀 座ソニービルでは、壁面を利用した車の垂直 展示や、空中ダンス
パフォーマンスを披露し、通行人の注目を集めた。
の新しいコンセプト価値を発信。
ローンチ期(2008.11.20 ∼): スペシャルサイトとYouTubeを連動させた双方向コミュニケーションの仕組みでファン化
商品広告:ニーズ喚起
● TVCM
「iQ amazing films」
スペシャルサイト:興味喚起・理解促進
● WEB 広告
●
「NEW
●
「iQ
WAY iQ World」
amazing films」
YouTube:ファン化
● iQ
Visual Mix Contest
「iQ amazing films」
YouTubeで 先 行 配 信した“amazing films”を、T VCM・WEB 広 告
D E S I G N / I N N O VAT I O N / “amazing films”の動画を公開。
で連 動させて展開。1台分の駐車スペースに、2 台の『iQ』が同 時に
S A F E T Y / P E R FO R M A N C E
駐 車するといったユニークな表 現アイデ アで、走 行 性 能 の 高さを
/ EC O LO GY という
『iQ』の 5つ
アピール。
の訴求ポイントをFlash ムービー
● 参加型コンテンツ
などのリッチコンテンツで 紹介。
『i Q』をテーマにオリジナル映像を自作 ⇒ YouTube に
投 稿し、コンテストに参 加 ⇒ YouTube 上でユーザー
投票、優勝者には『i Q』をプレゼント。
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Creative Ideas
for Innovation
特集 3:
「メディア・ニュートラル」
―クリエーティブが考えるメディアの活用法
「東京」という街を使った、豊富なスタイリングの表現
ナップ、スナップ時に同時に撮 影したパーカで東京の街をつなぐ
Google Maps とも連動した1,000人のリレームービー
「パーカリレームービー」、Google Mapsを活用した東京の地図の3
つで構成され、その街を行き交う人々のファッション特性、撮影地
東京のリアルクローズをグローバル発信
を Google Maps 上で確認することもできます。メディア同士を斬新
2009 年春、ユニクロはさまざまなカラーやマテリアルを持つパー
に組み合わせ、それぞれのメディアの広告媒体としての新しい可能
カ・シリーズを発表しました。それに合わせて電通はカラフルなパー
性を引き出しました。
カを着こなすための1000 のスタイリングを紹介するキャンペーン
「UNIQLO PARKA STYLE 1000」を始 動。電 通に与えられた課 題
コンテンツを駆使して新たなメディアをデザインする
は、パーカのプロダクトバリエーションを伝えつつ、それによりさま
単なる広告ではなく魅力のある「コンテンツ」をつくること。さらに
ざまに広がるコーディネートを訴求し、かつ、国内のみならず海外で
クリエーティブのパワーでメディアを増強すること。これら電通のア
も話題にされるキャンペーンを実施することでした。
イデアは、Webと雑誌、街と街というコミュニケーションの場を行き
このキャンペーンでは、東京という街を舞台に、パーカの圧倒的なカ
来し、生活者と遠く離れた場所からマス広告で知らせるのではなく、
ラー数、デザイン、素材のバリエーション、豊富なスタイリングテイス
生活者に寄り添ったプロモーションという形で実現しました。
トを表現しています。さまざまな特徴を持つ東京の街―山の手・下
「TOKYO FASHION MAP」は多くの海外メディアでニュース化され、
町・若者の街・ビジネス街・オタクの街…において、その街ごとのテ
話題を喚起しました。また、パーカの売上も、前年に比べ大幅に増
イストに応じたリアルなコーディネートを行い、街と人とファッション
加しました。
を伝えることで、ユニクロのパーカを、ひいては東京という街ならで
また、今年の「カンヌ国際広告祭」では、サイバー部門でゴールドラ
はのファッションを国内外に向けて魅力的に紹介する新しい企画
イオン賞、メディア部門でブロンズ・ライオン賞を獲得しました。こ
れはユニクロのブランドコンセプトである「コンポーネントウェア」
「TOKYO FASHION MAP」を立案しました。
が老若男女を問わず表現されていることに加え、雑誌のタイアップ
プロモーションが生み出す新たなメディア
とも異なる活用方法とそれに連動したWeb 展開の新しさ、東京とい
東京を舞台にした史上最大のコーディネートトライアルキャンペー
う街のガイドブック的機能を世界に示したことが高い評価を得たも
ン、史上最大のファッションスナップコレクション、史上最大のスト
のです。
リートジャックを敢行した「TOKYO FASHION MAP」はストリートス
ナップを得意とする雑誌「東京グラフィティ」
(株式会社グラフィティ
マガジンズ社刊)とのコラボレーションによって生みだされました。
東京の街で出会った1,000人に声をかけ、ユニクロのパーカを実際
に 着ていただき、1000スタイリングすべてを 紹 介した「TOKYO
FASHION MAP with UNIQLO」を全国の書店、コンビニエンススト
ア、国内外のユニクロ店舗で販売し、さらにその1,000人のスナッ
プ写真をWeb上で連動展開し、東京という街をファッションで紹介
する地図づくりを実施。そのコンテンツは、1,000人のストリートス
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TOKYO FASHION MAP
雑誌 TOKYO FASHION MAP with UNIQLO
「パーカリレームービー」サイト画面
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