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HDMIの基礎知識 HDMIの基礎知識
第2章 機器開発を始める前に知っておきたい HDMIの基礎知識 ―――― 柴田 修 ビデオとオーディオおよび各種パケットのデータは, 本稿では HDMI 仕様の概要,TMDS 物理層の仕組み,サポー トしているビデオやオーディオのフォーマット,著作権保護方 TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)と 式などについて解説する.また HDMI では 2006 年 11 月に 呼ばれる方式で伝送されます.TMDS は米国 Silicon Version1.3a がリリースされた.HDMI 1.3 において追加さ Image 社 が 開 発 し VESA( Video Electronics Standard れた,いくつかの機能について紹介する. Association)が標準化した映像用の伝送方式です.データ (編集部) を3 チャネルとクロックを1 チャネル備えています.TMDS クロックは,TMDS デコーダがデータを再生する際のリ 1.HDMI 仕様の概要 ファレンス・クロックとして使用されます. TMDS エンコーダは,データの 8b/10b 符号化(8 ビット HDMI のシステム構成は大きく分けて,ソース(Source) 機器,シンク(Sink)機器,ケーブルの三つのデバイスに → 10 ビット)を行うことで DC(直流)成分を最小化します. よって定義されます(図 1). また,8b/10b 符号化を用いることで,ビデオ・データ区間 シンク機器の構成や状態などの情報は DDC(Display のデータ信号の 1/0 の遷移を少なくして,高周波成分を抑 Data Channel)信号を使って認証されます.さらに HDMI えます.逆にブランキング区間は 1/0 の遷移を多くするこ は CEC(Consumer Electronics Control)ラインを装備し とで,シリアル・パターンや映像データの境界検出を容易 ています.CEC により機器間の複雑な制御が行えます. にしています. HDMI送信機(ソース) 音声/制御 パケット 処理 ピクセル・クロック TMDSチャネル HDMI受信機(シンク) パケット 処理 データ0 映像 水平/垂直同期 ケーブル TMDS エンコーダ データ1 音声/制御 映像 TMDS デコーダ データ2 H/V同期 ピクセル・クロック クロック 図1 HDMI ブロック・ダイアグラム ディスプレイ・データ・チャネル(DDC) HDMI は高速な TMDS チャネルと 低速な制御チャネルで構成される. コンシューマ・エレクトロニクス・コントロール(CEC) EDID ホット・プラグ・ディテクト(HPD) HDMI 1.3a,ソース,シンク,TMDS,DDC,CEC,8b/10b,RGB,YCbCr4 : 2 : 2,YCbCr4 : 4 : 4, IEC 60958,クロック PLL,リファレンス・イコライザ,E-EDID,ディープ・カラー・モード,TERC4 Design Wave Magazine 2008 April 73 ビデオ・データの標準の色分解能は RGB 各 8 ビット,合 駆動します.リファレンス電圧 AVcc は,シングルエンド波 計 24 ビットです.ビデオ・データは通常,ピクセル・レー 形の“H”レベルに設定されます.振幅値(Vswing)は Tx の電 トと同じクロック・レートで伝送されます.色分解能(ビッ 流源とRx の終端抵抗によって決定されます.終端抵抗(RT) ト数)は 24/30/36/48 から選べますが,30 ビット以上の場 とケーブルの特性インピーダンスは整合しなければなりま 合は,クロック・レートがピクセル・レートよりも高く設 せん. 定されます.各ピクセルの表色系(ビデオ・ピクセル)とし TMDS ペアの P チャネル,N チャネルのシングルエンド ては,RGB,YCbCr4 : 2 : 2,YCbCr4 : 4 : 4 に対応し 波形は図 3 のようになります. “H”レベルは AVcc , “L”レ ています. ベルは AVcc − Vswing です.差動信号の波形は図 4 のように TMDS はオーディオと各種補助データを伝送するために なります.振幅は P チャネルと N チャネルのシングルエン パケット構造を使用しています.オーディオと各種補助 ド波形の振幅の差分を取った値になります.またTMDS は, データについては,高い信頼性が必要です.TMDS では, 一般的なプッシュプル・タイプの完全差動方式ではなく, ECC(Error Correcting Code)で保護すると同時に,今回 オープン・ドレイン・タイプの疑似差動方式になります. 新たに導入した 4b/10b 方式(4 ビット→ 10 ビット)の 1)TMDS Rx の PHY アーキテクチャ HDMI の TMDS Rx 部は図 5 のようなモデルで示されま TMDS エラー・リダクション・コーディング(TERC4)で 10 ビット化します. す.実際の製品はモデルと異なっていても構いません.こ オーディオは基本的に国際標準規格 IEC 60958 に定義さ のモデルは,ある特定のフィルタ特性を持つクロック PLL れた L-PCM(Linear Pulse Code Modulation)ストリーム と,ある特定のインパルス応答を持つリファレンス・イコ からなります.対応しているサンプル・レートは 32kHz, ライザが特徴です. 44.1kHz,48kHz です.任意で,8 チャネルまでの 192kHz HDMI の物理層仕様はソース,シンクともに,この基本 も選べます.HDMI は IEC 61937 で定義された圧縮オー 構成の PLL とイコライザが持つパラメータを基準に定義さ ディオや 8 チャネルの 1 ビット・オーディオ信号も伝送可 れています.コンプライアンス・テストの際には,これら 能です. パラメータの整合に注意しなければなりません. 2)クロック PLL(CRU) TMDS のジッタとアイ・ダイヤグラムの仕様は理想ク 2.TMDS PHY 層の基礎知識 ロックによって規定されます.理想クロックは TMDS ク 図 2 は TMDS 差動ペア 1 組の概念図です.TMDS は低 ロックを基に,図 6 に示すような伝達関数を有する理想 電圧差動信号を生成するために,DC 結合の伝送路を電流 PLL,すなわちCRU(Clock Recovery Unit)によって生成 トランスミッタ D D RT AVCC RT 電圧 リファレンス電圧 +Vswing 終端抵抗 特性インピ ーダンスZ0 図4 −Vswing TMDS 差動波形 電流源 レシーバ 図2 TMDS チャネル 電圧 TMDS Rx TMDSデータ “H”レベル Vswing AVcc TMDS Tx TMDSクロック 図3 TMDS シングル エンド波形 74 “L”レベル: AVcc − Vswing Design Wave Magazine 2008 April 図5 リファレンス・ イコライザ TMDSデータ TMDSクロック リファレンス・ イコライザ PLL TMDS Rx のブロック・ダイヤグラム サンプラ 内部クロック