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研究報文 ヒト外分泌液中の食品タンパク質特異的IgA およびその免疫

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研究報文 ヒト外分泌液中の食品タンパク質特異的IgA およびその免疫
平 成22年12月(2010年) -5一
研 究 報 文
ヒ ト外 分泌 液 中の食 品 タ ンパ ク質特 異 的IgA
お よびその免 疫複合 体
木 津 久 美 子,廣 瀬 潤 子*,山
Food protein-specific
口(村 上)友
IgAs and their
村 彰 宏**,成
immune complexes
Kumiko Kizu, Junko Hirose*,
Akihiro
貴 絵,木
Kimura**,
田宏 史
in human exocrine
fluids
Yukie Murakami-Yamaguchi,
and Hiroshi
Narita
We have revealed the occurrence of food proteins as immune complexes in human breast milk.
In this
report, we aimed to establish the generality of the fact in human exocrine fluids by analyzing food proteinspecific IgAs and their immune complexes in human saliva and tear.
Food protein-specific IgAs and their immune complexes were able to be determined in human saliva
and tear. The levels were high in order of nursing mothers, adults, and infants. There was no correlation
between total IgA and specific IgAs. On the other hand, negative correlation between serum IgE and salivary
IgA specific to egg white proteins was observed in infants with atopic eczema. Then, it was suggested that
the degree of maturation of mucosal immunity in individual person could be monitored as the anti-allergic
parameter by analyzing food protein-specific IgAs in saliva. Saliva can be easily prepared without pain and
prick. Utility of saliva as a biological material for clinical diagnosis and physiological significance of the food
protein-IgA immune complexes in exocrine fluids were proposed.
1.緒
(Received September 14,2010)
約70∼80%を
言
ヒ トの 生 体 は簡 単 に言 え ば管 腔状 で あ り,外 側 は
唾 液 腺,涙
皮膚,内 側 は粘 膜 面 を介 して外 界 に接 して い る。 そ
す る 。IgAは
の 体 表 総 面 積 の95%以
占 め るIgA産
生 細 胞 が 存 在 し て お り,
ホ ー ミ ン グ現 象 に よ っ て 遠 隔 の 粘 膜 固 有 層 や,乳 腺,
上 を粘 膜 面 が 占 め て お り,
そ の広 さ は約400㎡(120坪)に
も及 ぶ と され る 。我 々
は,「 食べ る 」 「
飲 む」「
吸 う」 と い う生 命 維 持 に必
占 め,そ
腺 な ど の 腺 組 織 へ も移 行 してIgAを
産生
全 免 疫 グ ロ ブ リ ン 産 生 量 の60%以
上 を
の う ち2!3以
泌 型lgA(secretory さ れ,体
上,1日3,000mgに
IgA:sIgA)が
も及 ぶ 分
粘膜 表層 に分泌
内 に侵 入 す る抗 原 や異 物 に対 す る最 前 線 の
要 な生 理 行 動 に伴 い,こ の 広 大 な粘 膜 面 を介 して
感 染 防 御 に 重 要 な 役 割 を果 た し て い る 。IgAに
様 々な異 物 を体 内 に取 り込 む。 その 中 で も,腸 管粘
清 型IgAとsIgAが
膜 は全 粘 膜 面 の 約80%を
sIgAは
占 め て お り,そ こ に は 自
血 清 型IgA二
あ り,血
清 型lgAは
分 子 に 糖 タ ン パ ク 質 のJ鎖
然 免疫 と獲 得 免疫 か らなる 巧妙 な生体 防御 機 構 が存
secretory component(SC)が
在 す る1)。
の 免 疫 グ ロ ブ リ ン の 主 役 はIgGで, 腸 管 の粘 膜 固 有 層 に は全 身 に存 在 す る形 質 細 胞 の
ぎ な い が,粘
し,sIgAが
京都 女子 大学 家政学 部食物 栄養学 科食 品学 第一研 究室
8滋 賀県 立大学 人 間文化学 部生 活栄養 学科
脚いた や どク リニ ック小 児科
は血
単 量 体 で,
と
結 合 して い る 。循 環 系
IgAは
脇役 に 過
膜 局 所 に おい て は そ の位 置 関係 は逆 転
主 要 な 役 割 を 担 う2)。
こ れ ま でslgAの
ほ と ん どが 微 生 物 や ハ ウ ス ダ ス
トに 対 す る も の で あ る ど報 告 さ れ,食
物 抗 原 に対 す
る も の は 注 目 さ れ て い な か っ た が,我
々 は,ヒ
ト母
一6一
食物 学 会 誌 ・第65号(2010年)
乳 中 に 主要 食 物 ア レルゲ ンで あ る卵 白 オ ボ ム コ イ ド
ク 質 ・IgA免 疫 複 合 体 を サ ン ド イ ッ チELISA,食
が 特 異 的slgAと
タ ンパ ク 質 特 異 的lgAを
の 免 疫 複 合 体 と して存 在 して い る
こ と を発 見 した3)。Corthesyら が,腸 管M細
胞 に発
現 され たIgA受 容 体 がIgA免 疫 複 合 体 を積 極 的 に取
2-1)総lgAの
PBS(IOmM い る こ とか ら4,5),我 々は,「 母乳 中 のlgA免 疫 複 合
で5μg!mlに
体 を介 した離 乳 あ る い は経 口 免疫 寛 容 」 な る母 乳 の
で96穴
新 た な生 理 機 能 を提 唱 し,母 乳哺 育 の 重 要 性 に言 及
し,1%BSA/PBSに
Laboratories社
NaPi,0.15M 希 釈 し,そ
れ をPBSで3回
し くは4℃
一 晩)。PBSで3回
洗浄
洗 浄 後,一
反 応 と し て 唾 液 も し く は 涙 試 料 を37℃
応 さ せ,続
ず 外 分 泌 液 にお け る これ らの 存在 の普 遍 性 を確 認 し
Saline:TBS,10mM た。 また,唾 液 は,性,年
pH7.4)で1回,0.05%Tween20入
い て,ト
で1時
Tris-HαBuffer,0.15M 注 目 され てお り,母 乳 と異 な り研 究対 象 を大 き く広
溶 液 で0.1μg!mlに
げ る こ とが可 能 にな る。 これ らの 唾液 の 利 点 を生 か
タ ー ゼ 標 識 抗 ヒ トlgA(α)(American し,唾 液 中 の 食物 抗 原 特 異 的IgAに よる 食 物 ア レ ル
Antibodies社
NaCl,
ギー 評価 系 の確 立 を 目指 し解析 を行 っ た。
せ た 。TBSで1回, 洗 浄 後,0.1%BSA!T-TBS
希釈 したアル カ リフ ォスフ ァ
製)50μL/wellを37℃
Qualex
で1時
T-TBS溶
間 反応 さ
液 で5回, TBSで1
一 ニ トロ フ ェ ニ ル リ ン 酸 ニ ナ ト リ
ウ ム を 基 質 と し て 反 応 さ せ,405nmに
おける吸光
度 を マ イ ク ロ プ レ ー ト リ ー ダ ー(Model 製)を
間反
りTBS(T-TBS)
溶 液 で5回,TBSで1回
回 洗 浄 し た 後,ρ
次
リ ス 緩 衝 食 塩 溶 液(Tris Buffer
侵 襲 か つ 連続 的 に容 易 に採 取 で きる生 体 試 料 と して
1)唾 液 お よび 涙 の採 取 お よび 処 理
間
よ り ブ ロ ッ キ ン グ した(37℃1
IgAお よびIgA免 疫 複 合 体 を解 析 し,母 乳 の み な ら
皿.試 料 お よ び方 法
7.4)
の50μLを37℃,1時
本 研 究 で は,唾 液 お よ び 涙 中 の 食 物 抗 原 特 異 的
齢 に 関係 な く,無 痛,無
製)を
NaCI,0.02%NaNs,pH プ レ ー トに 固 相 化 後,こ
時 間,も
品
よ り測 定 した 。
測定
抗 ヒ トIgA(α)(Zymed り込 ん で 抗 原特 異 的IgA産 生 を誘導 す る と報 告 して
して きた6・7・8・9)。
固 相ELISAに
3550, Bio
唾 液 試料 へ の食事 残 渣 の 混 入 を防 ぐため に,唾 液
-Rad社
用 い て測 定 した。 この 時
採 取 は食 後 を避 けて行 うこ と と した。 さ ら に,唾 液
は ヒ トsIgA(CapPel, 採 取 前 に は研 磨 剤 を付 けず に約3分 間,舌 下 も含 め
一 次 反 応 時 に0∼200ng/mLの
て 出血 しな い よ うに歯 を磨 い た後,水 道 水 で 十分 う
ら れ た 検 量 線 を用 い て 試 料 中 の 濃 度 を求 め た 。
MP Biomedicals社
標準品に
製)を
用 い,
濃 度 で 反 応 さ せ ,得
が い を し た。 うが い 後 は 水 道 水 に よ っ て 唾 液 が 薄
2-2)食
ま って い る の で,す ぐに唾 液 採取 を 開始 せ ず しば ら
卵 白 タ ン パ ク 質 で あ る オ ボ ア ル ブ ミ ン(ova),
く待 ち,き れ い に洗 っ た手 で 脱 脂 綿 を折 りた た ん で
品 タ ン パ ク 質 ・IgA免
オ ボ ム コ イ ド(OM),お
よ び 牛 乳 タ ン パ ク質 で あ
舌 下 に入 れ た。3分 後,唾 液 を吸 収 した脱 脂 綿 を き
る カ ゼ イ ン に つ い て のIgA免
れ い な手 で取 り出 し,15mL遠
す な わ ち,抗OVAポ
直 ち に凍 結 し,IgA測
心 チ ュ ー ブ に入 れ て
定 まで 一20℃ で保 存 した 。測
定 時 に試 料 を緩 慢 解 凍 し15mL遠
心 チ ュ ー ブ の蓋 に
脱 脂 綿 を か ませ た状 態 で,10,000g×10分,4℃
で
抗OMポ
ロ ッキ ング され てい
るELISAプ
レ ー ト(森
の 後 は,総lgAの
涙 採 取 は,目 頭 に0.5mLサ
IgA免
10,000g×10分,4℃
こ の際
で遠 心 し,上清 を涙 試料 と した。
ほ とん ど残 渣 は見 られ な か っ た。
て,本
し,37℃
永 生 科 学 研 究 所 よ り供 与)
で1時
量 線 も総IgAと
研 究 で 示 すIgA免
同 じ条件 で作 製 した 。 よ っ
疫 複 合 体 量 はsIgA当
短 期 大 学 部 臨 床研 究 倫 理 審 査 委 員 会 の 許 可 を得 た
OVA(京
品 タ ン パ ク 質 特 異 的lgAの
ml,50μL!wellで
2)試
ロ ッ キ ン グ した 。 そ の 後 は ,IgA免
素 免 疫 吸 着 測 定 法:
Enzyme Linked Immunosorbent Assay)
唾 液 お よ び涙 試 料 中 の 総IgA,お
よび 食 品 タ ンパ
量 と し て 示 して い る 。
一 化 成),
そ れ ぞ れ5オg/
固 相 化 し,1%BSAIPBSに
と 同 様 に 行 っ た 。 よ っ て,本
sIgA当
測定
都 大 学 北 畠 研 究 室), OM(第
も し く は α 一 カ ゼ イ ン(SIGMA)を
解 と研 究協 力 の 同意 を得 て行 った 。
測 定(酵
量 で示
して い る 。
2-3)食
料 中 のIgAの
間 反 応 させ た。 そ
測 定 と 同 様 に 行 っ た 。 ま た,各
疫 複 合 体 の 標 準 品 は 市 販 品 と して 存 在 し な い
た め,検
以 上 の 試料 採 取 は,京 都 女 子 大 学 ・京 都 女 子 大学
上,協 力 者 に研 究 の趣 旨 を説 明 し,十 分 な研 究 の理
し くは
リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 が 固 相 化,ブ
に 試 料 を50オL供
ンプ リ ン グチ ュー ブ を
リ ク ロ ー ナ ル 抗 体,も
し くは抗 カゼ イ ンポ
を除 い た 上清 を唾 液 試料 と した 。
れ 出 た 涙 を 採 取 し た 。 得 ら れ た 涙 は,
疫 複 合 体 を測 定 した。
リ ク ロ ー ナ ル 抗 体,も
遠 心 す る こ とに よ り唾液 を 回収 し,沈 殿 した爽雑 物
あ て,流
疫 複 合体 の 測 定
よ りブ
疫 複 合体 の測 定
研 究 で は 特 異 的IgAも
一7一
平 成22年12月(2010年)
3)統
計処 理
液 採 取毎 に歯 磨 き,お よび うが い を行 っ た場 合 で も
統 計 学 的 な有 意 差 を検 定 す る 際,母 集 団 の デ ー タ
同 様 の結 果 が 得 られ た こ とか らも,免 疫 複 合 体 が そ
が正 規 分布 で ない 場 合 はマ ン ・ホ イ ッ トニ検 定(両
の ま ま唾 液 中 に分 泌 され て い る もの と考 え られ る。
側 検 定)に
よ っ て確 認 し,p<0.05で
有意差 あ りと
ま た,以 下 に述 べ る よ う に,OMや
牛 乳 カゼ イ ンの
判 断 した 。
母 集 団の デ ー タが 正 規 分布 に従 って お り,
免 疫 複 合体 も唾 液 中 に確 認 され た。
2群 の 分 散 が等 しい と仮 定 で き る場 合 はス チ ュ ー デ
2)涙
ン トのt検 定 を,2群
次 に,平 均 年 齢22.6±0.5歳 成 人女 性14名(A∼L)
の分 散 が 等 しい と仮 定 で きな
中の 食 品 タ ンパ ク質 ・lgA免 疫 複 合体
い場 合 は ウェ ルチ のt検 定 を行 った。 ソ フ トは,4
に協 力 を頂 き,食 後 を避 けた 自由 な時 間 に涙 と唾 液
Stepsエ クセ ル 統 計 第2版(オ
の 同時 採 取 を1週 間 に3回 行 った 。 個 人 の 中 で も,
ー エ ム エ ス 出 版)付
3回 の 採取 試 料 にお け る検 出 レベ ル にば らつ きの 大
属 エ クセ ル ア ドイ ン ソフ トStatcel2を用 い た 。
きい もの が 多 か っ たが,両 外 分泌 液 中 に カゼ イ ン ・
皿.結 果 お よ び考 察
1.外
IgA免 疫 複 合 体 が 同 レ ベ ル(唾 液45.6±37.3ng/
分 泌 液 中 に お け る食 品 タ ンパ ク質 ・lgA免 疫
液 中 の食 品 タ ンパ ク質 ・lgA免 疫複 合 体
平 均 年 齢22.6±0.5歳 成 人男 女12名 か ら,3分
きに5回 唾 液 採 取 を行 い,OVAとIgAと
体(OVA・IgA免
検 出 で きた(図2-
1)。 また,両 外 分 泌 液 中 のlgA免 疫 複 合 体 量 は,
複 合 体 の存 在
1)唾
ml,涙 液 47.3±43.5ng!m1)で
疫 複 合 体)お
総IgA量
お
の 免 疫 複合
よびOVA特
異 的IgA
の 約1万 分 の1で あ っ た(図2-1,2)。
他 の食 品 タ ンパ ク質 ・IgA免 疫 複 合 体 お よ び特 異 的
IgAに 関 して も,同 様 の 結 果 が 得 られ た 。以 前,同
時採 取 した 唾 液 と母 乳 中のIgA免 疫 複合 体 お よ び特
を測 定 し,両 者 の 経 時 的 濃 度 変 化 を見 た 。 す る と,
異 的IgAを 解 析 した とこ ろ,唾 液 の方 が 母乳 の約10
OVA・IgA免
疫 複 合 体 と特 異 的IgAの 両 者 が 測 定 で
倍 高値 を示 し,母 乳 と唾 液 で は 両 者 のlgA濃 度 に相
き,唾 液 中に も母 乳 同 様 に 食 品 タ ンパ ク質 特 異 的 な
関が 見 られ た。 しか し,唾 液 と涙液 にお け る 食 品 タ
IgAお よ びIgA免 疫 複 合体 が 存 在 す る こ とが確 認 で
ンパ ク 質 特 異 的IgA濃 度 に は 相 関 関係 は 見 られ な
きた(図1)。
こ こで 測 定 され たlgA免 疫 複 合 体 が
口 腔 内 に残 っ た 食 事 残 渣 のOVAと
れ たOVA特
唾 液 中 に分 泌 さ
異 的IgAと の 免疫 複 合 体 の 可 能性 も考 え
か っ た。
以上 の 結 果 よ り,食品 タ ンパ ク質が 涙 中 に存在 し,
これがIgA免 疫 複 合 体 を形 成 してい る こ とか ら,外
られ る が,こ の 場 合,唾 液 の分 泌 と特 異 的IgAに よ
分泌 液 中 にIgA免 疫 複 合体 が分 泌 され る こ とは,個
る 中和 に よ りOVA・IgA免
体,食 品 タ ンパ ク質,外 分 泌 液 の違 い に依 存 しな い
疫 複 合 体 は経 時 的 に減 少
す る こ とが 予 想 さ れ る。 しか しな が ら,OVA・IgA
普 遍 的事 実 で あ る こ とが 明 らか とな っ た。 食 事後 血
免 疫 複 合 体 とOVA特
中 に 食 品 タ ンパ ク質 が 検 出 され る こ と10)や,外
異 的IgAの 比 率 は ほ ぼ 一 定 で
あ った こ とか ら,OVA・IgA免
分
疫複合体は免疫複合
泌 液 中 にlgAが 多 く存 在 す る こ とは今 まで に報 告 さ
体 と して唾 液 中 に分 泌 され て い る と考 え られ た。 唾
れ て きたが,母 乳 同 様食 品 タ ンパ ク質 がlgAと の免
OVA・ 江gA免 疫 複 合 体
OVA特 異 的夏gA
疫 複合 体 と して 唾液 や 涙 に存 在 す る こ とは,世 界初
の 発見 で あ る。 ま た,両 外 分 泌 液 の 成 人1日 に お け
る分 泌 量 が 唾 液 約1.5∼2L,涙
約2∼3mLで
あるこ
と を考 え る と,涙 中 に分 泌 され る絶 対 量 と して の
IgA免 疫 複 合 体 の分 泌 量 は微 々 た る もの で あ が,涙
中の 食 品 タ ンパ ク質 ・IgA免 疫 複 合 体 の 存 在 は,食
品 タ ンパ ク 質特 異 的lgA産 生前 駆 細 胞 の ホー ミ ング
に組織 選 択 性 が 無 い こ と を示 唆 して い る。
2.ラ
イ フ ス テー ジ に よ る唾 液 中のIgAお
よ びlgA
免 疫 複 合 体 の濃 度 変 化
図1 唾 液 中 のIgA免 疫 複 合体 お よび
次 に,0∼12カ
月(平 均5.4±3.8ヵ
食 品 タ ンパ ク質 特異 的IgA
康 な 乳児13名,成
人男 女12名(平
成 人男 女12名 か ら3分 お き に3分 ず つ 唾 液 を採 取
し、 唾 液 中 のova・IgA免
疫 複 合 体 お よ びOVA特
異 的lgAを 測 定 した 。 グ ラ フ に は 代 表 的 な1名 の
結 果 を示 して い る。
授 乳 婦16名(平
均31.8±3.8歳)か
OVA特 異 的lgA及 びOVA・IgA免
月齢)の 健
均22.6±0.5歳),
ら唾 液 を採 取 し,
疫 複 合体 を測 定 し
た とこ ろ,両 者 共 に乳 児 よ り成 人(特 異 的lgA:p
一g一
食物 学 会誌 ・第65号(2010年)
【涙
】
【唾 液 】
図2-1
【涙 】
【唾 液 】
図2-2
図2 涙 お よび唾 液 中 のIgA免
成 人女 性14名
疫 複 合体 と総IgA
か ら涙 と唾 液 の 同 時採 取 を ラ ンダ ム に1週 間 に3回 行 い 、 両外 分 泌 液 中 の カゼ イ ン ・IgA免 疫
複合 体(図2-1)お
よび総IgAを
〈0.01,免疫複 合 体:p<0.01),成
異 的IgA:p<0.05,免
を示 した(図3)。
測 定 した(図2-2)。
人 よ り授 乳 婦(特
の抗 原 刺 激 に よ り個 々の 特 異 的lgA産 生 が 獲 得 され
疫 複 合 体:p<0.01)で
高値
て い くた め だ と考 え られ る。 その 上,小 児 で はIgA
乳 児 の 唾 液 で も,IgA免
疫複 合
系 の発 達 の個 人差 が 著 しい と言 わ れて い る た め,こ
体 と特 異 的IgAの 両 者 の 存在 が確 認 で きた が,検 出
の時 期 の 唾 液 中 のlgAを モニ タ リ ングす る こ と に よ
レベ ル は 約50ng/ml程 度 と成 人 に 比べ 低 か っ た こ と
り,粘 膜 免疫 系 の 成 熟 の程 度,裏 を返 せ ば 食物 ア レ
か ら,乳 児 期 は成 人 の よ うに安 定 したIgA産 生 へ 至
ル ギ ー にな りに くい か否 か の 判 定 に も利 用 で きるか
る ま で の 過 渡 期 的 状 態 で あ る こ と を示 して い る 。
も しれ な い 。
IgA系 の 発 達 は, IgG, IgM系 に比 べ て 遅 い と言 わ れ,
一 般 的 に 血 清 型IgA値 が 成 人 値 に 達 す る の は15歳
一 方,唾 液 中 の総IgAは 成 人 レベ ル に 達 す る とそ
以 後 で あ る と され る。 血 清 型IgAとsIgAの
に は有 意 に上昇 す る こ とが 報 告 され てい る12)。我 々
解 離 が 見 られ,sIgAの
成 熟 は 血 清 型lgAよ
出現 には
り早 く,
の 後 は 大 き く変 化 しない がll),妊 娠 後 期 や 授 乳 中
の結 果 にお い て も,図3に
示 す よ うに成 人 男女 よ り
生 後約 半年 か ら1年 後 には 成 人 レベ ル に 達す る と言
授乳 婦 にお い てOVA特
われ て い る2)。 唾 液 中のOVA特
体 が 高値 を示 した 。 したが って,授 乳婦 で はIgA免
異 的IgAが1歳
近い
乳 児 に お いて も成 人 レベ ル に至 っ てい る ものが い な
異 的IgAお よび その 免 疫複 合
疫複 合 体 も分 泌 されや す い環 境 が 整 え られ て い る よ
いの は,特 異 的IgA産 生 が 単 な る腸 管免 疫 系 の成 熟
うに思 われ る。 こ れは 、 母親 が 自 ら分 泌 す る唾 液 中
だ けで は な く,母 乳 哺育 時 お よび離 乳 期 か らの各 々
のIgA免 疫 複 合 体 に よ っ て, IgA産 生 を充 進 させ る
一g一
平 成22年12月(2010年)
OVA特
トす る た め,IgA産 生 が 充 進 さ れ る と考 え ら れ る
15)。 しか し,Widerstromら が 月 経 周 期 間(月 経 期,
異 的1gA
OVA・lgA免
疫 複 合体
卵 胞 期,黄 体 期)のIgA産
生 変 動 につ い て解 析 した
が,統 計 学 的 に有 意 な 差 に は到 ら なか っ た12)。そ
こ で,高 温期 と低 温 期 の あ る成 人女 性2名 か ら1ヶ
月 間,毎 朝 起 床 直 後 に 唾 液 を採 取 し,総IgA及
OM特
異 的IgAお よびOM・IgA免
び
疫 複 合 体 を測 定 し
た。 唾 液 中 の 総IgA濃 度 の 月 内変 動 を見 て み る と,
高温 相(黄 体 期)に 総IgA産 生 が 充 進 す る傾 向が あ
図3 0か
ラ イ フ ス テ ー ジ に よ るIgA濃
ら12ヶ
月 齢 の 健 康 な 乳 児(n-13)、
23歳 成 人 男 女(n=12)、
の 唾 液 中 のOVA・IgA免
IgAを
平 均 年 齢32歳
る よ う に思 わ れ たが,や は り顕 著 な変 動 は 見 られ な
度の 変 化
平均年 齢
授 乳 婦(n=16)
疫 複 合 体 とOVA特
か っ た 。 ま た,OM特
異 的IgAお よ びlgA免 疫 複 合
体 と月経 周期 に は特 定 の 関係 は 見 られ なか っ た。(図
異 的
4)さ
ら に,総IgAと
特 異 的IgA及 びIgA免 疫 複 合
測 定 し た 。(***p<0.01,**p<0.05)
体 に も相 関 関 係 は 見 られ なか った 。特 異 的IgAは そ
の 名 の とお り抗 原 特 異 的 な刺 激 に よ りB細 胞 が 活 性
こ とに よ り,母 乳 中 のIgA免 疫 複 合 体 の 分 泌 量 を増
され て産 生 され る。 したが って,特 異 的IgA産 生 は
加 させ,我 が 子 の食 物 ア レル ギ ー予 防 を促 進 して い
ホ ルモ ン制御 よ りも,抗 原 刺 激 に よる影 響 が大 きい
るの か も しれ な い。 しか しな が ら,妊 娠 期 や授 乳 期
と考 え られ る。
にお け る 唾液 中のIgA濃 度 上 昇 の メ カニ ズ ムは まだ
4.唾
分 か っ て いな い 。
ン グの可 能 性
3.唾
液 中 の総IgAお
よ び 特 異 的IgA, lgA免 疫 複
液 中のlgAに
よ る食 物 ア レル ギー の モ ニ タ リ
腸 管 免 疫 系 は,IgA産
生 お よび経 口 免疫 寛 容 を支
合 体 の 相 関 お よび 月 内変 化
配 し て い る。 腸 管 免 疫 系 が 正 常 に 機 能 す る と き,
免疫 系 に対 す る性 ホル モ ンの影 響 は 多 数報 告 され
IgAは 産 生 さ れ, IgE産 生 は 抑 制 さ れ る とい っ た 逆
て い る13)14)。基 礎 体 温 は 通 常 高 温 相 と低 温 相 に 分
向 きの抗 体 産生 制 御 機構 が 働 い て い る。 従 来,腸 内
か れ,高 温 相 で は プ ロゲ ス テ ロ ンが,低 温 相 で はエ
の 寄生 虫 に対 して作 られ て い たIgEが,衛
ス トロ ゲ ンが 多 く分 泌 され る。 一 般 的 に,高 エ ス ト
理 が徹 底 され る よ う にな っ た現 在 に おい て,そ の標
ロゲ ン環 境 下 で はTh2細 胞 が 活 性 化 され ,種 々 の
的 を食 物 や 花粉,ハ
IgA産 生 サ イ トカ イ ンが産 生 さ れや す い 状 態 に シ フ
た 。そ して,こ のIgE産 生 が暴 走 す る こ とに よ り,種 々
(排 卵 期)(黄
体 期)
高温相
OM・lgA免
OM特
図4 総IgAお
ウス ダ ス トに 向 け る よ うに な っ
(生 理 期)(卵
胞 期)
低温相
疫複 合体
異 的lgA
よ びOM特
異 的IgA、 IgA免 疫 複 合 体 の 月 内変 動
20歳 代 女性 か ら1ヶ 月 間 毎朝 起 床時 に基 礎 体 温 を 測 る と 同時 に唾 液 を採 取 し、 総IgAお
OM・IgA免
疫 複 合 体 を測 定 した 。
生 的 な管
よびOM特
異 的IgA、
一10一
食物 学 会 誌 ・第65号(2010年)
OM(U/mL)
患 児ID.
月齢(ケ 月)
1
5
44
13.70
3.53
2
6
10
1.11
0.06
湿疹症状
顔
顔
3
7
44
1.43
2.32
なし
4
10
307
48.10
15.60
なし
5
10
72
2.94
1.97
6
11
37
8.62
3.93
顔
足
表1 総IgE(U!mL) 卵 白 ア レ ル ギ ー 患 児 の 月 齢 お よ び 特 異 的lgE抗
ア レ ル ギ ー 診 断 に お け る 特 異 的IgE判
る17)。
血 中OM特
卵 白 (U!mL)
定 基 準 値 は 、0.35>
陰 性 、0.35-0.69:疑
異 的lgE[U/mL]
OVA特
異 的IgAと
6名 全 体(グ
の 唾 液 中 のOM特
血 中 の 卵 白 特 異 的IgEに
ラ フ 上 全 て の 点)の
上 陽性 と され て い
血 中 卵 白特異 的lgE[U/mL]
図5 卵 ア レル ギー患 児 の唾 液 中 の特 異 的lgAと
卵 白 ア レ ル ギ ー と 診 断 さ れ た 乳 児6名
体価
陽 性 、0.70以
異 的lgAと
血 中特 異 的lgE
血 中 のOM特
異 的IgE、
お よ び唾 液 中 の
逆 相 関 関 係 が あ る か 検 証 した 。
近 時 曲 線 を 点 線 、 湿 疹 症 状 の あ る 患 児4名
のみ の 値 で の近 時 曲線 を実 線 で示
した。
6名 全 体 で も相 関 は 見 ら れ た が(OM:r-0.676、
湿 疹 の あ る 乳 児4名
のみでは、両者に強い
の ア レル ギ ー症 状 が 引 き起 こ され る の は周 知 の通 り
IgEお よ び,唾 液 中のOVA特
異 的lgA vs血 中の 卵 白
で あ る。小 児 のlgA欠 損 症 で は,約 半 数が ア レル ギ ー
特 異 的lgEの 相 関 を見 た 。
OVAは 卵 白 中 の 約5割 を
性 鼻 炎,喘 息,奪 麻 疹,ア
占 め る た め,卵 白特 異 的lgEはOVA特
逆 相 関 関 係 が 見 ら れ た(OM:r=0.996、
OVA:r-0.602)、
OVA:r=0.917)。
トピー性 湿 疹 を伴 っ て お
異 的IgEの 値
り,こ れ らの合 併 率 は正 常 児 の3倍 に も至 る と され
と相 関 す る と考 え られ てい る。患 児 の 月齢 お よ び臨
る2)。 ま た,Ludvikssonら
床 デ ー タは 表1に 示 す とお りで あ る 。 唾液 中のOM
は,ア
レル ギ ー性 鼻 炎 や
ア トピー 性 湿疹 の症 状 を持 つ 乳 幼 児 に おい て 唾 液 中
特 異 的IgA vs血 中OMの
のIgAが 低 下 して い る こ とを報 告 して い る16)。これ
特 異 的IgA vs血 中 の 卵 白 特 異 的IgE共 に,全 患 児6
らの こ とか ら,IgAの
存 在 が ア レル ギ ー に対 して予
名 で も相 関 関係 が 見 られた が,湿 疹 症 状 を有 す る患
防 的 に機 能 して い る こ とが うか が え る 。現 在,免 疫
児4名 に絞 っ て 見 て み る と,高 い 負 の相 関 関係 が 見
力 の 指標 と して 総IgEと 並 んで 総IgAが 測 定 さ れ る
られ た(図5-1,2)。RASTと
よ うに な って きてい る。一方,個 々の 食物 ア レル ギ ー
を評 価 す る た め に特 異 的IgEが 測 定 され る が,特 異
な いの は,臨 床 の 現場 で よ く経験 され る事 実で あ る
18)。 そ れ は1型 ア レル ギー の 一 連 の機 序 が,す べ て
的IgAの 測 定 に は至 っ て い ない 。 上 述 の よ うに,
IgEだ け で 回 っ て い る わ け で は な い か らで あ る。 す
唾 液 は性,年 齢 を問 わ ず,連 続 的 に容易 に採 取 可 能
な わ ちIgEが 高 濃 度 で あ って も,好 塩 基 球 や 肥 満 細
な生 体 試 料 で あ り,唾 液 に よって 食 物 ア レルギ ー を
胞 の数
モ ニ タ リ ン グ出来 れ ば,無 痛,無 侵 襲 に,か つ 医療
ミン な ど化学 物 質 の量,組 織 の 感受 性,血 流,さ
従事 者 に限 らず試 験 を行 うこ とが 可 能 に な る。
に は過 剰 反応 に対 す る抑 制 機 構 の 関与 な ど,臨 床 症
そ こで,卵 ア レルギ ー と診 断 され た 乳児6名 の 唾
状 と して 現 れ る には さま ざ まな 因子 を考 慮 す る必 要
液 中 のOM特
が あ る。 しか しなが ら,こ れ らすべ て を検査 す るの
異 的IgAお よ びOVA特
し,唾 液 中 のOM特
異 的IgAを 測 定
異 的IgA vs血 中 のOM特
異的
特 異 的IgE,唾
液 中 のOVA
臨床症状が一致 し
局所 分 布,細 胞 機 能 な どの反 応 性,ヒ ス タ
ら
は大 変 面 倒 で あ る。 上述 の試 験 は少 ない 検体 数 で は
一11一
平 成22年12月(2010年)
あ るが,唾 液 中 の 特 異 的lgAと 血 中の 特 異 的IgEを
質 の取 り込 み 口 にな っ てい る ので は な い か と想 像 さ
同時 に測 定 し,そ の比 率 な どを考 察 す る こ とが アル
れ る。 しか しなが ら,取 り込 まれ た タ ンパ ク質 が 免
ルギ ー の軽 重 や 治療 の指 標,素 因の検 索 に役 立 つ こ
疫系 を感作 せ ず に体 内 を巡 り体 外 に分泌 され る まで
とが 推測 され る。
の過 程 には,ま だ何 か驚 くべ きメ カニ ズ ムが 隠 され
また 最 近 で は,「 ア レル ギ ー コ ンポ ー ネ ン ト」 と
て い るか も しれ ない 。 こ う して取 り込 ま れ た食 事 由
い って,同
来 タ ンパ ク質 を リサ イ クル して外 分 泌 液 中 にIgA免
じ食 品 に対 す るア レルギ ー を持 つ患 者 で
も,ア レルゲ ン とな る食 品 中 の個 々の タ ンパ ク質 に
疫複 合 体 と して分 泌 し,常 に 自ら免 疫系 の活 性 化 を
対 す る 反応 性 は多 種 多様 で あ る こ とが報 告 され て い
行 う機 構 が 本来 我 々 に は備 わ っ てい るの で は ない だ
る。 た とえ ば,小 麦製 品 を食べ て2時 間以 内 に食 物
ろ うか。 今 後,母 乳 お よ び唾 液 中のIgA免 疫 複 合 体
依 存 性 運動 誘 発 ア ナ フ ィ ラキ シ ー を起 こす 患 者 にお
が,我 が 子 お よび 自分 自身 の た めの 食 物 ア レルギ ー
い て,従 来 のRAST法
予 防 の天 然 の飲 む ワク チ ンで あ る こ との 証明 を 目指
で は小 麦 陰 性 とで る こ とが
あ った が,ω グ リア ジ ン陽 性 の者 が 多 い こ とが 判 っ
て きて い る19)。同 様 の ア レ ル ゲ ン と して 小 麦 以 外
に も,大豆,桃 な どが 問題 視 され て い る。そ こ で,個 々
して い きた い と考 えて い る。
謝辞
の ア レル ゲ ン特 異 的 な抗 体 の 診 断へ の 重要 性や,臨
本研 究 を遂行 す るに あ た り,ご 協 力 頂 い た池 田美
床 症 状 と合 致 した 検査 方 法 の 需要 が 高 まっ て きてい
紀 さん,間 嶋 由貴 さん に深 謝 い た します 。
る。 今 後 は,唾 液 中特 異 的IgAと 臨床 症 状 の有 無 や
程 度 と の関 係 を解 析 し,血 中特 異 的IgEよ りも臨 床
症 状 と合致 す るか につ い て も検 討 したい 。
N.今
引用文献
1)清
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後 に向けて
2)寺
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免 疫 複 合体 が 母 乳 の み な らず 外分 泌 液 中 に 普遍 的 に
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(2002)
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食 品 を摂 取 して か ら外 分 泌 液 中 にIgA免 疫 複合 体 と
27-32. (2007)
して分 泌 さ れ る まで の 過程 につ い て も興 味 が持 たれ
6)成
る。 一 般 に,栄 養 学 的 に は経 口摂 取 した タ ンパ ク質
は ジペ プチ ドあ るい は ア ミノ酸 まで分 解 され て吸 収
7)廣
さ れ る と言 わ れて い るが,免 疫学 的 に は経 口摂 取 さ
れ た 食 品 タ ンパ ク 質 の約10万 分 の1量 が 未 消 化 の
8)成
ま ま体 内 に取 り込 ま れ る こ とが 報 告 され て い る2°)。
ル ギ ー の 治 療 と 管 理 」(改 訂 第2版),診
腸 管 上 皮 の バ イ エ ル板M細
胞 は元 よ り高 分 子 の物
田 宏 史,廣
瀬 潤 子,北
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畠 直 文:日
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田 宏 史:小
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断 と治
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質 を トラ ンスサ イ トー シ ス に よ り体 内 に取 り込 む細
9)木
胞 で あ る。IgA免 疫 複 合 体 を効 率 よ く取 り込 む鍵 と
成 田 宏 史:本
な るIgA受 容 体 を発 現 してい る こ のバ イエ ル板M細
10) MatsubaraT, et al. : Biosci Biotechnol Biochem.72
胞 は,そ の 細 胞 直 下 に免 疫 系 を有 す る5)。 この ため
取 り込 まれ た タ ンパ ク質 は抗 原提 示 細 胞 に よっ て分
解 され て 提示 され,速 や か に免 疫 の活 性 化 に使 われ
る。 これ に対 して 近 年,Jangら
胞 を発 見 した21)。絨 毛M細
は,絨 毛 に もM細
胞 下 に は 免疫 系 が な く、
津 久 美 子,廣
瀬 潤 子,山
口(村
上)友
貴 絵,
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胞 は細 菌 を も通 す と言 わ れ て お り,こ
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