...

第2章 レポートの作成

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第2章 レポートの作成
7
第2章
レポートの作成
この章では LATEX を使って普通のレポートを作成するために必要となる最小限の機能を紹介します.
この章に書かれていることだけでは,不足を感じることもあるかもしれません.LATEX のもつ拡張性・
柔軟性を考えるとたいていの要望は解決できるはずですが,それなりに時間と労力が必要になります.
LATEX をさらに活用するためのヒントは第 3 章で取り上げられますが,慣れないうちは,ここで取り上
げられた機能で実現できることだけを使ってレポートを作成するように心がけましょう.
2.1 文書の構成
■文書の構造
文書は,多数のセンテンス(文)から成り立っています.そして,ひとつ以上のセンテン
スが,まとまった意味内容をもつパラグラフ(段落)をつくり,それが集まってセクション(節)
・チャプ
ター(章)をつくっていくというように,階層的な構造をなしています.LATEX においては,こうした構
造にしたがってドキュメントクラスとよばれるいくつかの文書の型を定義しています.
■ドキュメントクラス
LATEX で用意されている代表的なドキュメントクラスに jarticle, jreport,
jbook があります.それぞれ文字通り,雑誌記事,レポート,書籍を想定したものになっています.表 2.1
に,これらのドキュメントクラスで利用できる構造を示しました.詳しくはすぐこの後に説明がありま
す.この表からは jreport と jbook に違いが見られませんが,両者の違いは,両面印刷して製本するか
否かすなわち偶数ページと奇数ページのレイアウトを区別するか否かといった点などにあります.また,
jbook, jreport, jarticle のかわりに,それぞれ tbook, treport, tarticle とすると,縦書きの文書
を作成することができます.以下,本書では横書き文書を前提に記述します.Y
=documentclass のオプ
ション指定など詳しくは第 3 章を参照してください.
■パラグラフ 普通の文書では,パラグラフ(段落)の先頭の行は 1 文字分下げて始めます.これをパラ
グラフインデントといいます.LATEX においては,ソースファイルに空行をつくることによって,パラグ
ラフインデントを実現します.
... 前の段落はここまでです.
次の段落がここからはじまります....
... 前の段落はここまでです.
次の段落がここからはじまります....
図 2.1 パラグラフ
■見出し語
セクション(節)などには通常,見出し語をつけます.LATEX においては,このために専
=documentclass)
用の命令があります.利用可能なものは,表 2.1 のように,ドキュメントクラス(Y
によって少し違います.この表にあるものから適宜必要なものを選んで利用します. Y
=paragraph{} や
8
第2章
レポートの作成
Y
=subparagraph{} を使えば,パラグラフにも見出し語をつけることができます.書体や文字の大きさは
見出しのレベルに応じて決まります.Y
=chapter{} や Y
=section{} などの見出し語の直後は空行がなく
てもパラグラフのインデントが行なわれますが,Y
=paragraph{} や Y
=subparagraph{} では,見出し語
の後,改行なしに本文が続きます.
表 2.1
レベル
■番号の自動化
documentclass と階層レベル
jbook
jreport
jarticle
1
=part{}
Y
=part{}
Y
=part{}
Y
2
=chapter{}
Y
=chapter{}
Y
3
=section{}
Y
=section{}
Y
=section{}
Y
4
=subsection{}
Y
Y
=subsection{}
Y
=subsection{}
5
=subsubsection{}
Y
Y
=subsubsection{}
Y
=subsubsection{}
6
=paragraph{}
Y
=paragraph{}
Y
=paragraph{}
Y
7
=subparagraph{}
Y
Y
=subparagraph{}
Y
=subparagraph{}
Y
=section{} や Y
=chapter{} を使うと,見出しの文字は,それにふさわしい書体やサ
イズで出力されますが*1 ,それと同時に見出しには番号が自動的に割り振られます.
次の例文を作成して確かめましょう.例文では,ドキュメントクラスを jarticle として,Y
=section{}
を使っています.パラグラフの区切りのために空行を使っていることにも注意してください.
=documentclass{jarticle}
Y
=begin{document}
Y
=section{Y
Y
=LaTeX の由来}
=TeX はスタンフォード大学の Donald Knuth 教授によって
Y
開発されたフリーソフトです.Y
=TeX は非常に強力かつ柔軟な
システムであるがゆえに,初めて使う人には敷居が高く感じられる部分があります.
当時,SRI International に所属していた Leslie Lamport 氏はこの点を考慮して,
=TeX を使いやすくするためのマクロパッケージを開発しました.
Y
このマクロパッケージを含めたシステムを Y
=LaTeX とよんでいます.
...
=section{Y
Y
=LaTeX のツールと関連ソフト}
=LaTeX (Y
Y
=TeX) のシステムは多数のツールから成り立っています.
代表的なものは,フォントを生成する metafont,索引を作成する mendex,
文献データベースから参考文献表を作成するための bibtex です.
=LaTeX では Postscript グラフィクスを標準的に扱います.
Y
そのため,Postscript のビューアである Ghostscript も Y
=LaTeX と
一緒にインストールされ,広く使われています.
生成された dvi ファイルを表示するためのソフトウエアも必要になるでしょう.
*1
マークアップではこれらの出力形式を直接指定しているわけではなく,
「節の見出し語」のような意味づけをしているのだと
いうことを再度注意しておきます.
2.1 文書の構成
9
dvi ファイルのビューアとして Windows の環境では dviout が使われます.
また,dvi ファイルを Postscript や PDF に変換するツールもあります.
...
Y
=section{Y
=LaTeX の勧め}
Y
=TeX を開発した D. Knuth 教授は数学者であったため,数式の扱いには特に定評があります.
このため,理工系の研究者を中心に利用されていますが,文書の構造化という特徴を
考えれば,すべての分野の人にお勧めできるものだといえるでしょう.
また,フリーソフトであること,Windows をはじめ,Linux, Macintosh など多くの
プラットフォーム上で利用できることなども重要な特徴です.
...
Y
=end{document}
このドキュメントの処理結果をビューアで確認すると,図 2.2 のようになります*2 .番号の割り振りは
LATEX の処理の都度おこなわれるので,編集によって節の出現順が入れ替わっても問題ありません.
LATEX の由来
1
TEX はスタンフォード大学の Donald Knuth 教授によって開発されたフリーソフトです.TEX
は非常に強力かつ柔軟なシステムであるがゆえに,初めて使う人には敷居が高く感じられる部分が
あります.
当時,SRI International に所属していた Leslie Lamport 氏はこの点を考慮して,TEX を使い
やすくするためのマクロパッケージを開発しました.このマクロパッケージを含めたシステムを
LATEX とよんでいます....
LATEX のツールと関連ソフト
2
LATEX(TEX) のシステムは多数のツールから成り立っています.代表的なものは,フォントを
生成する metafont,索引を作成する mendex,文献データベースから参考文献表を作成するため
の bibtex です.LATEX では Postscript グラフィクスを標準的に扱います.そのため Postscript の
ビューアである Ghostscript も LATEX と一緒にインストールされ,広く使われています.
生成された dvi ファイルを表示するためのソフトウエアも必要になるでしょう.dvi ファイルの
ビューアとして Windows の環境では dviout が使われます.また,dvi ファイルを Postscript や
PDF に変換するツールもあります....
LATEX の勧め
3
TEX を開発した D. Knuth 教授は数学者であったため,数式の扱いには特に定評があります.こ
のため,理工系の研究者を中心に利用されていますが,文書の構造化という特徴を考えれば,すべ
ての分野の人にお勧めできるものだといえるでしょう.
また,フリーソフトであること,Windows をはじめ,Linux, Macintosh など多くのプラット
フォーム上で利用できることなども重要な特徴です....
図 2.2
*2
サンプル文書
ここでは文書の幅を標準とは異なる設定をしているため,行の折り返し位置が少し違っているはずです.
10
第2章
■目次
レポートの作成
レポートなどの文書では,全体的な整合性のもとに各部分の記述が配置されなければなりませ
ん.LATEX では,目次を確認しながら,パラグラフのような小さい構造から章などといった大局構造まで
を広く見渡して文書を構築することができます.目次は読者だけではなく,著者のためにも役に立つもの
なのです.
LATEX では,文書に含まれる Y
=chapter{} や Y
=section{} 命令にもとづいて,目次を自動的に生成す
る機能を備えています.LATEX のソースファイル中,目次を出力したい場所で Y
=tableofcontents と入
力してください.
たとえば,書きたいこと,思いついたことなどどんどん書いていく,それと同時に目次をつくり,構成
を確認するといった手順でレポートを作成することができます.
■タイトル
レポートのタイトル等を出力するためには次のようにします.最後の Y
=maketitle で実際
に出力されます.
=title{レポート作成入門}
Y
=author{北山 恭一}
Y
=date{2010 年 2 月 16 日}
Y
=maketitle
Y
共著者がいる場合,著者名を Y
=and で区切って続けます.所属などを書く時は,Y
=thanks を使います.
Y
=thanks の内容はページ下部に表示されます.
=author{
Y
南田 京一 Y
=thanks{南京大学理学部}
=and
Y
西田 京一 Y
=thanks{西京大学法学部}
}
日付の部分を Y
=today とすることによって処理された年月日を自動的に設定することもできます.
=date{Y
Y
=today}
日本語の LATEX では,年号を使って表示されますが,これを西暦で表示するには Y
= 西暦{Y
=today} と
します.
=date{Y
Y
= 西暦{Y
=today}}
■概要
レポートには,はじめに全体の概要を記述しておくことがあります.レポートを手に取った人に
とって,それが読むに値するものであるかどうかを判断することになります.概要の出力には abstract
環境を使います.
タイトル・目次・概要といった基本的な要素を含む入力例を示しておきます.
=documentclass{jarticle}
Y
=title{レポートの表題}
Y
=author{著者名}
Y
=date{Y
Y
=today}
2.1 文書の構成
11
Y
=begin{document}
Y
=maketitle
Y
=begin{abstract}
Y
=end{abstract}
Y
=tableofcontents
Y
=section{はじめの節}
...
Y
=end{document}
■引用
他の資料からの引用をおこなう場合,著作権の侵害にならないよう注意が必要です.引用部分の
出典を明記すること,原著の全体を引用するのではなく一部にとどめること,表現を忠実に再現すること
は最低限守るべきでしょう.出典の示し方は 2.7 節でとりあげます.
LATEX では,短い引用のために quote 環境が,複数のパラグラフにわたる引用のために quotation 環
境が用意されています.いずれも引用部分全体にわたって左右の余白を大きくとって表示します. quote
環境ではパラグラフのインデントが 0 になっています.
20 世紀の哲学者 Chris Plaintail は次のように言っている.
Y
=begin{quote}
塵はいくら積もっても塵の山に過ぎない.
Y
=end{quote}
彼によれば,努力は一定の水準を超えなければ結果に結びつかないのである.
20 世紀の哲学者 Chris Plaintail は次のように言っている.
塵はいくら積もっても塵の山に過ぎない.
彼によれば,努力は一定の水準を超えなければ結果に結びつかないのである.
図 2.3
quote 環境
引用があまり長くなるような場合は,要旨を書くことも考慮するべきでしょう.
■注釈
レポートの作成過程で,自分自身の作業のために注釈を書き込みたいときには % 記号を使いま
す.LAT
EX のテキストファイルに含まれる % 記号から行末までは出力に反映されません.
5
5% と入力すると 5 だけが出力される.
% 記号を出力するためには Y
=% と入力します.
5Y
=% と入力すると大丈夫 % ここから後は注釈となる.
5% と入力すると大丈夫
■脚注 文章の流れを中断しないように説明を補う工夫に,脚注をつかう方法があります.LATEX におい
ては Y
=footnote{...} を使います.これによって {...} の内容がページ下部に配置されます.
■箇条書き
箇条書きをするには itemize 環境を使います.箇条書きの各項目に番号をつけるときには
itemize の代わりに enumerate を使います.次に enumerate の使用例を示します.
12
第2章
レポートの作成
他の資料を引用するときには
他の資料を引用するときには
=begin{enumerate}
Y
=item 引用部分の出典を明記すること
Y
1. 引用部分の出典を明記すること
=item 原著の一部にとどめること
Y
2. 原著の一部にとどめること
=item 表現を忠実に引用すること
Y
3. 表現を忠実に引用すること
=end{enumerate}
Y
といった注意が必要でしょう.
といった注意が必要でしょう.
=item の下に別の箇条書き環境を挿入して多重化することもできます.その際,先頭に表示される文字
Y
や記号は階層によって変わります.また,これを自分の好みのものに変更することもできます.その方法
は,3.4 節で解説します.
2.2 文字と数式
■文字の種類
和文のレポート・論文などは一般に明朝体で書かれますが,強調部分や見出し語などには
ゴシック体が使われます.明朝体は,図 2.4 のように線の端に三角形の飾り(鱗)や撥ねなどをもつ書体
で,縦線が横線よりもやや太くなっています.ゴシック体は,図 2.5 のように線の太さが一定で,飾りも
ありません.一般に明朝体より太い線が使われることが多いので,すべての文字をゴシック体で表示する
と重たく強迫的な印象を与えます.
明朝体
ゴシック体
図 2.4
図 2.5
明朝体
ゴシック体
これに対して,欧文には多数の書体がありますが,和文の書体と同様に,線に飾り(セリフ)をもつセ
リフ書体と飾りを持たないサンセリフ書体に分類されます.セリフ書体の代表は Times です.サンセリ
フ書体には Helvetica や Arial があります.いずれの書体にも基本書体(立体, ローマン体)の他,イタ
リック体や線を太くしたボールドフェイスがあります.
欧文の文書においては,一般的にセリフ書体のローマン体を使い,強調部分には,同じ書体のイタリッ
ク体が使われることが多いようです.また,見出し語の文字にはボールドフェイスのイタリック体やサン
セリフ書体が使われることが一般的です.
Times Roman
図 2.6 Times (Roman)
2.2 文字と数式
13
Times Italic
Helvetica
図 2.7
図 2.8
Times (Italic)
Helvetica (Roman)
LATEX 文書中 Y
=emph{} で強調される部分は,和文ではゴシック体,欧文ではイタリック体になります.
また,見出し語については,それぞれゴシック体,サンセリフ書体が使われます.
和文での Y
=emph{強調} と Y
=emph{emphasize} in English.
和文での強調 と emphasize in English.
図 2.9
和文と英文における強調
■特殊文字 ドイツ語フランス語などで使われるアクセントや特殊記号の中でよく使われそうなものをあ
げておきます.
表 2.2 特殊文字 (1)
入力
=ss
Y
Y
=ae
=AE
Y
=oe
Y
Y
=OE
=aa
Y
Y
=AA
Y
=o
=O
Y
Y
=‘o
=’o
Y
Y
=^o
Y
="o
出力
ß
æ
Æ
œ
Œ
å
Å
ø
Ø
ò
ó
ô
ö
表 2.3 特殊文字 (2)
入力
=~o
Y
Y
==o
Y
=.o
=u{o}
Y
Y
=v{o}
Y
=H{o}
=t{oo}
Y
=c{o}
Y
Y
=d{o}
=b{o}
Y
出力
õ
ō
ȯ
ŏ
ǒ
ő
oÄ o
o̧
o.
o
¯
単語の中で使われるときには {} が必要になることがあります.次の例を参考にしてください.
表 2.4
■数式
特殊文字の使用例
入力
出力
Anders Jonas {Y
=AA}ngstr{Y
="o}m
Anders Jonas Ångström
Ole Christensen R{Y
=o}mer
Ole Christensen Rømer
RenY
=’e Descartes
René Descartes
数式中にあらわれる変数を表す文字には数式イタリック体という特別の書体が用いられます.
LATEX では数式環境の中におかれたアルファベットは自動的に数式イタリック書体で表されます.次のよ
うに $ を使うと数式環境が指定されます.
関数 $y=ax^2+bx+c$ において...
上付き・下付き文字はそれぞれ ^ _ を使います.
関数 y = ax2 + bx + c において...
14
第2章
レポートの作成
関数 y = a0 + a1 x + a2 x2 において...
関数 $y=a_0+a_1x+a_2x^2$ において...
sin のような関数は表 2.5 のように指定します.書体に注意してください.
表 2.5 関数
入力
出力
入力
出力
入力
出力
入力
出力
入力
出力
Y
=lim
lim
=sin
Y
sin
Y
=arcsin
arcsin
=sinh
Y
sinh
Y
=log
log
Y
=max
max
=cos
Y
cos
Y
=arccos
arccos
=cosh
Y
cosh
Y
=ln
ln
Y
=min
min
=tan
Y
tan
Y
=arctan
arctan
=tanh
Y
tanh
Y
=exp
exp
次のように使います.
三角関数 sin θ において...
三角関数 $Y
=sin Y
=theta$ において...
ギリシャ文字の小文字は表 2.6 のように入力します.基本的にイタリック体になっています.
表 2.6
入力
出力
入力
出力
ギリシャ文字(小文字)
入力
出力
入力
出力
入力
出力
=
Yalpha
α
=eta
Y
η
Y
=nu
ν
=tau
Y
τ
=varepsilon
Y
ε
=
Ybeta
β
=theta
Y
θ
Y
=xi
ξ
=upsilon
Y
υ
=vartheta
Y
ϑ
=
Ygamma
γ
=iota
Y
ι
o
o
=phi
Y
ϕ
=varpi
Y
ϖ
=
Ydelta
δ
=kappa
Y
κ
Y
=pi
π
=pi
Y
π
=varrho
Y
ϱ
=
Yepsilon
ϵ
=lambda
Y
λ
Y
=rho
ρ
=psi
Y
ψ
=varsigma
Y
ς
=
Yzeta
ζ
=mu
Y
µ
Y
=sigma
σ
=omega
Y
ω
=varphi
Y
φ
ギリシャ文字の大文字は表 2.7 のように入力します.基本的に立体になっています.
表 2.7
ギリシャ文字(大文字)
入力
出力
入力
出力
入力
出力
入力
出力
Y
=Gamma
Γ
=Lambda
Y
Λ
=Sigma
Y
Σ
Y
=Psi
Ψ
Y
=Delta
∆
=Xi
Y
Ξ
=Upsilon
Y
Υ
Y
=Omega
Ω
Y
=Theta
Θ
=Pi
Y
Π
=Phi
Y
Φ
物理量の単位にはローマン体を使います.数式環境の中でローマン体を指定するには次の例のように
Y
=mathrm{} を用います.
重力加速度の値 $g=9.8Y
=; Y
=mathrm{m/s^2}$
重力加速度の値 g = 9.8 m/s2
この例のように数値と単位の間に空白を挿入すると見やすくなります.Y
=, Y
=; Y
=quad Y
=qquad はいずれも
空白を与えます.また,重力加速度 g のように物理定数を表す文字はイタリック体です.一方,円周率や
自然対数の底,虚数単位などの数学定数や微分演算子の d にはローマン体を使うことになっていますが,
実際にはイタリック体 π, e, i, d が使われることが多いようです.
別行立ての数式には $...$ とする代わりに,次のように Y
=[ と Y
=] を使います.最初の式では,見やす
くするために Y
=[ と Y
=] を独立した行にしていますが,2 番目の式のように書いても結果は同じです.
2.2 文字と数式
15
三角関数 $Y
=sin x$ は
Y
=[
Y
=sin x = x -Y
=frac{1}{3!}x^3+Y
=frac{1}{5!}x^5- Y
=cdots
Y
=]
とテイラー展開される.一方,関数 $Y
=delta (x)$ が次のように与えられるものとしよう.
Y
=[ Y
=delta (x)=Y
=frac{1}{2Y
=pi} Y
=int _{-Y
=infty}^{Y
=infty}e^{ipx}dp Y
=]
結果は次のようになります.
三角関数 sin x は
sin x = x −
1 3
1
x + x5 − · · ·
3!
5!
とテイラー展開される.一方,関数 δ(x) が次のように与えられるものとしよう.
1
δ(x) =
2π
Z
∞
eipx dp
−∞
数式はセンタリングされますが,Y
=documentclass[fleqn]{jarticle} のようにドキュメントクラス
の宣言で [fleqn] オプションをつけると左端から一定のインデントをもって配置されます.
数式に番号をつけるには Y
=begin{equation}, Y
=end{equation} を使います.
Y
=begin{equation}
Y
=frac{d}{dx} Y
=sin x = Y
=cos x
Y
=end{equation}
Y
=begin{equation}
Y
=exp x = Y
=sum_{n=0}^{Y
=infty}Y
=frac{1}{n!}x^n
Y
=end{equation}
結果は次の通りです.数式番号の形式はドキュメントクラスによって異なります.jbook などでは,こ
の例のように章ごとに連番がつけられます.
d
sin x = cos x
dx
exp x =
∞
X
1 n
x
n!
n=0
上の例ですでに紹介されているものも含めて,代表的な数学記号を表 2.8 に与えておきます.
表 2.8
数学記号
(2.1)
(2.2)
16
第2章
入力
出力
入力
出力
入力
出力
レポートの作成
入力
出力
Y
=circ
◦
Y
=cdot
·
Y
=dots
...
Y
=cdots
···
Y
=pm
±
Y
=mp
∓
Y
=times
×
Y
=odot
⊙
Y
=simeq
≃
Y
=sim
∼
Y
=equiv
≡
Y
=propto
∝
Y
=approx
≈
Y
=neq
̸=
Y
=parallel
∥
Y
=perp
⊥
Y
=ge
≥
Y
=le
≤
Y
=gg
≫
Y
=ll
≪
Y
=infty
∞
Y
=hbar
h̄
Y
=Re
ℜ
Y
=Im
ℑ
̸
Y
=triangle
△
Y
=partial
∂
Y
=nabla
∇
Y
=angle
Y
=forall
∀
Y
=exists
∃
Y
=emptyset
∅
Y
=aleph
ℵ
Y
=rightarrow
→
Y
=leftarrow
←
Y
=Rightarrow
⇒
Y
=Leftarrow
⇐
ベクトルなどは表 2.9 のようにあらわします.
表 2.9 ベクトルなど
入力
出力
入力
Y
=overline{A}
A
Y
=overbrace{x+y}
Y
=underline{x}
x
Y
=underbrace{x+y}
出力
z }| {
x+y
x+y
| {z }
入力
出力
=overrightarrow{Y
Y
=mathrm{OP}}
−→
OP
←−
OP
=overleftarrow{Y
Y
=mathrm{OP}}
行列をあらわすときは array 環境を使います.
Y
=[ Y
=left(
Y
=begin{array}{ccc}
a_{11} & a_{12} & a_{13} Y
=Y
=
a_{21} & a_{22} & a_{33} Y
=Y
=
a_{31} & a_{32} & a_{33} Y
=Y
=
Y
=end{array}

a11
 a21
a31
a12
a22
a32

a13
a33 
a33
Y
=right) Y
=]
2.3 相互参照
■相互参照
これまで取り上げてきた Y
=chapter{}, Y
=section{} などの命令や enumerate, equation
などの環境を使うと番号が自動的に割り振られましたが,このような番号を他の個所から参照することも
できます.これを実現するのが,Y
=label{...} と Y
=ref{...} です.次の例をみましょう.
=documentclass{jarticle}
Y
=begin{document}
Y
=section{コンピュータの基本}Y
Y
=label{basics}
本節ではコンピュータによる情報処理の原理を学び,
基本的な処理をおこなうソフトウエア OS が提供する機能を理解する.
ここでの理解は第 Y
=ref{freesoftware} 節で取り上げるフリーソフトのダウンロードや
インストールのためにも必要とされるものである....
=section{フリーソフトの活用}Y
Y
=label{freesoftware}
2.3 相互参照
第 Y
=ref{basics} 節の理解の上に,フリーソフトの利用法を紹介する.
この中には,第 Y
=ref{report} 節で取り上げられるレポート作成に
利用される Y
=LaTeX などが含まれる....
Y
=section{レポートの作成}Y
=label{report}
フリーソフトウエア Y
=LaTeX をつかったレポートの作成法を紹介する.
Y
=LaTeX のダウンロードおよびインストールに関しては,
すでに第 Y
=ref{freesoftware} 節で説明されているので,
ここでは Y
=LaTeX がインストールされた環境を前提に話を進める....
Y
=end{document}
結果は次の通りです.
1
コンピュータの基本
本節ではコンピュータによる情報処理の原理を学び,基本的な処理をおこなうソフトウエア OS
が提供する機能を理解する.ここでの理解は第 2 節で取り上げるフリーソフトのダウンロードやイ
ンストールのためにも必要とされるものである....
2
フリーソフトの活用
第 1 節の理解の上に,フリーソフトの利用法を紹介する.この中には,第 3 節で取り上げられる
レポート作成に利用される LATEX などが含まれる....
3
レポートの作成
フリーソフトウエア LATEX をつかったレポートの作成法を紹介する.LATEX のダウンロードおよ
びインストールに関しては,すでに第 2 節で説明されているので,ここでは LATEX がインストール
された環境を前提に話を進める....
このように,Y
=label{...} を使って参照したい番号にラベルをつけ,Y
=ref{...} によってそれをよび
だす,という仕組みになっています.具体的には,Y
=section{...} の直後に置かれた Y
=label{basics},
Y
=label{freesoftware}, Y
=label{report} がそれぞれ対応する節の番号 (1, 2, 3) を保存します.{...}
内のキーワードは自分でわかりやすいものをつけてかまいません.参照内容を反映するようなものにすれ
ばよいでしょう.日本語の文字でも結構です.ただし同じキーワードをもつ Y
=label{...} が 2 回以上
現れないように注意しましょう.
この番号を呼び出すのが Y
=ref{...} です.こちらは同じキーワードをもつものが何度現れてもかまい
ません.
数式の番号を保存するときには,Y
=begin{equation} の直後に Y
=label{...} をおきます.番号の呼
び出しは Y
=section{...} のときと同様に Y
=ref{...} を使います.このあと紹介する図表につけられる
キャプション番号についてもまったく同様に参照することができます.
また,ページ番号を参照するときには,Y
=ref{...} のかわりに Y
=pageref{...} を使います.
相互参照を含む LATEX 文書を処理するとき,補助ファイル(拡張子 .aux)が使われます.初めて処理
するときには .aux ファイルが作られますが,この相互参照の情報が結果に反映されるためには,何度か
処理を行なう必要があります.処理の際に現れるメッセージに注意してください.
LaTeX Warning : There were undefined references.
LaTeX Warning : Label(s) may have changed. Rerun to get cross-references right.
17
18
第2章
レポートの作成
のようなメッセージが出なくなるまで処理を繰り返してください.
2.4 表組み
表組みには tabular 環境を使います.例として,5 行 4 列の表を示します.
Y
=begin{tabular}{|c|rrr|}
Y
=hline
都道府県名 &
人口
& 面積
& 人口密度 Y
=Y
=
Y
=hline
北海道
&
東京都
& 12,310 &
2,102.39 & 5,855.4 Y
=Y
=
大阪府
&
8,816 &
1,893.73 & 4,655.1 Y
=Y
=
沖縄県
&
1,349 &
2,273.41 &
都道府県名
人口
面積
人口密度
北海道
5,659
78,418.57
72.2
東京都
12,310
2,102.39
5,855.4
大阪府
8,816
1,893.73
4,655.1
沖縄県
1,349
2,273.41
593.4
5,659 & 78,418.57 &
72.2 Y
=Y
=
593.4 Y
=Y
=
Y
=hline
Y
=end{tabular}
フィールド(列)の数は Y
=begin{tabular} に続く{|c|rrr|} の部分で定義します.ここに含まれる
l, c, r の総数がフィールド(列)の数を表します.文字 l,c,r はそれぞれ,フィールド内で左寄せ,
中央ぞろえ,右寄せをおこなう指示になっています.縦罫線の位置は | であらわします.この例では表
全体の左右両側および第 1 と第 2 のフィールド間のみに罫線を入れています.
各行内のデータは & 記号で区切られます.また,各行の区切りには Y
=Y
= 記号を使います.横罫線を入れ
る場所には Y
=hline を挿入します.
2.5 グラフィクス
■画像ファイル
LATEX で扱うことのできる画像ファイルはビューワによりますが,どんな環境でも対
応できるのは Encapsulated Postscript (EPS) 形式です.デジタルカメラで撮影された写真はたいてい
JPEG ファイルに保存されますが,たとえば GIMP のようなソフトウエアを使えば,EPS ファイルに変
換して保存することができます.以下では,EPS ファイルを LATEX 文書に挿入する方法を紹介します.
■gracphicx パ ッ ケ ー ジ
LATEX で 画 像 を 読 み 込 む に は プ リ ア ン プ ル(Y
=documentclass{...} と
Y
=begin{document} の間)で graphicx パッケージを指定しておく必要があります.
=usepackage{graphicx}
Y
2.6 図表の配置
■画像ファイルの読み込み
19
画像ファイルの読み込みには Y
=includegraphics{...} を使います.具体
的には,パッケージの読み込みと合わせて次のようになります.
Y
=documentclass{jarticle}
Y
=usepackage{graphicx}
Y
=begin{document}
...
Y
=includegraphics[width=5cm]{graphicsample.eps}
...
Y
=end{document}
この例では,EPS ファイル graphicsample.eps を読み込んで幅を 5 cm にして描画しています.
2.6 図表の配置
■図表の扱い tabular でつくられた表や Y
=includegraphics で読み込まれた画像は全体が大きなひと
つの文字のように扱われます.これを Y
=begin{center} と Y
=end{center} で挟めば,中央ぞろえして配
置することができますが,さらに,表は table 環境,図は figure 環境を使うとレイアウトが自動的に
おこなわれます.
Y
=begin{table}[h]
Y
=begin{center}
Y
=begin{tabular}{|c|lrl|}
Y
=hline
あ & いうえ & お & かきくけこ Y
=Y
=
さしす & せ & そたち & つてと Y
=Y
=
Y
=hline
Y
=end{tabular}
Y
=end{center}
Y
=end{table}
Y
=begin{table} に続く [ ] に入る文字には次のような意味があります.
h
可能な限り tabular の出現位置に配置する
t
可能な限りページの上端に配置する
b
可能な限りページの下端に配置する
p
独立した図表のページを作成する
上記 h を指定しても tabular の出現位置に配置できないこともあります.どうしても tabular 出現
位置に配置したいときには,[h] の代わりに [!h] を試してください.それでもうまく行かない場合に
は,float パッケージを使って table 環境で [H] オプションを使います.
20
第2章
レポートの作成
=usepackage{float}
Y
...
=begin{table}[H]
Y
...
=end{table}
Y
■キャプションと番号の参照
図表にキャプションをつけるためには,Y
=caption{...} を使います.こ
のためには,表の場合 tabular 環境を table 環境の中に,図の場合,includegraphics を figure 環
境の中におかなければなりません.入力例を次に示します.
表 Y
=ref{table-example} に表組みの例を示した.
=begin{table}[h]
Y
=caption{表組みの例}Y
Y
=label{table-example}
=begin{center}
Y
=begin{tabular}{|c|lrl|}
Y
=hline
Y
あ & いうえ & お & かきくけこ Y
=Y
=
さしす & せ & そたち & つてと Y
=Y
=
=hline
Y
=end{tabular}
Y
=end{center}
Y
=end{table}
Y
このようにキャプションには自動的に番号がつけられます.形式はドキュメントクラスによって異な
ります.この番号を本文中などで参照する方法は,節・章や数式番号の参照と同様で,Y
=label{...} と
Y
=ref{...} を使います.結果は次の通りです.
表 1 に表組みの例を示した.
表 1 表組みの例
あ
さしす
いうえ
せ
お
そたち
かきくけこ
つてと
普通,表に対するキャプションは表の上に,図に対するキャプションは図の下にします.
=documentclass{jarticle}
Y
=usepackage{graphicx}
Y
=begin{document}
Y
...
図 Y
=ref{fig-example} にグラフィクスの例を示す.
=begin{figure}[h]
Y
=begin{center}
Y
=includegraphics[width=5cm]{graphic-example.eps}
Y
2.7 参考資料
21
Y
=caption{グラフィクスの例}Y
=label{fig-example}
Y
=end{center}
Y
=end{figure}
...
Y
=end{document}
wrapfig パッケージを使うと,図の周囲に文章を回り込ませることができます.対象となる図を
wrapfigure 環境の中に入れます.Y
=begin{wrapfigure}{位置}{幅} の「位置」には r(図を右に配置)
または l(図を左に配置)を指定します.
Y
=documentclass{jarticle}
Y
=usepackage{graphicx}
Y
=usepackage{wrapfig}
Y
=begin{document}
...
Y
=begin{wrapfigure}{r}{5cm}
Y
=includegraphics[width=5cm]{graphicsample.eps}
Y
=caption{回り込みの例}
Y
=end{wrapfigure}
この図のまわりに文章が配置される....
Y
=end{document}
表の周囲に文章を回りこませるときには,wraptable 環境を使います.使い方は wrapfigure 環境と
同様です.
2.7 参考資料
■資料の検索
レポート等を書くときに,基礎データや参考とするべき文献などが必要となることがあり
ます.こうした資料を検索するために,まず図書館を利用することになるでしょう.現在ほとんどの図
書館には OPAC (Online Public Access Catalog) とよばれるシステムが導入されています.簡単なキー
ワードで検索したり,著者や出版年などを組み合わせた詳細な検索も可能になっています.
また,国立情報学研究所では,国内の図書館で所蔵されている資料を検索する webcat というサービス
が提供されています.国立国会図書館や国立大学の図書館などでは,一般の利用者が閲覧ができるように
なっています.また,私立大学の図書館などでも相互利用などのサービスが受けられることがあります.
こうした利用に関する情報も webcat から得られます.
■書誌情報 資料を特定するために必要な情報を書誌情報とよびます.資料を検索したり,自分のレポー
ト等の中で参考文献表を作成する目的でつかわれます.主たる情報源についてだいたい次のようなものが
あげられます.
図書
著者(編者・訳者)名・書名(版)・出版社・出版地・出版年月・(参照箇所:ページ)
雑誌(論文) 著者名・標題・雑誌名・巻・号・ページ範囲・出版年
新聞記事
新聞名・朝夕刊の別・版・紙面(ページ)
22
第2章
■インターネット上の情報
レポートの作成
また,ウェブサイトも重要な情報源になりえますが,利用には注意が必要で
す.記述の信頼度はサイトによって千差万別といってよいでしょう.また,ウェブサイトの内容は時とと
もに変化することも珍しくありません.時にはサイトそのものがなくなってしまうこともあります.つま
りレポートや論文を読んだ人が指定された参考資料にたどり着けなくなる恐れがあります.こうした点を
踏まえたうえで参考資料として利用する場合には,ウェブサイトの URL 以外に閲覧した日(時)および
サイトの著者(個人・団体)を記しておくとよいでしょう.
サイトによっては URL の表現が長くなって行内にうまくおさまらなくなることがあります.このよう
な事態を避けるには,次のように hyperref パッケージをつかうとよいでしょう.たとえば dviout の
ような対応ビューワを使えば LATEX 文書にウェブサイトのようなハイパーリンク機能が実現されます.
=usepackage[hypertex]{hyperref}
Y
本文中 URL を記述する場所で次のようにします.
=url{http://www.xxx.yyy.zzz/~aaa/bbb/ccc/ddd/eee/index.html}
Y
■参考文献表
LATEX で参考文献表をつくる環境は thebibliography です.この環境の中で各文献ご
とに Y
=bibitem を使って記述します.Y
=bibitem に続く {} 中のキーワードは,本文で引用するときに
Y
=cite{...} の中で使われます.
この章は,主として文献 Y
=cite{bibunsho} を参考にして書かれている.
...
=TeX に関しては文献 Y
Y
=cite{TeXBook} が参考になろう....
=begin{thebibliography}{9}
Y
=bibitem{bibunsho}
Y
奥村晴彦『[改訂版] Y
=LaTeXe 美文書作成入門』(技術評論社, 2000)
=bibitem{TeXBook}
Y
D. E. Knuth, "The {Y
=TeX}book", Addson-Wesley (1984)
=end{thebibliography}
Y
このように入力すると次のような出力が得られます.
この章は,主として文献 [1] を参考にして書かれている....
TEX に関しては文献 [2] が参考になろう....
参考文献
[1] 奥村晴彦『[改訂版] LATEX 2ε 美文書作成入門』(技術評論社, 2000)
[2] D. E. Knuth, ”The TEXbook”, Addson-Wesley (1984)
参考文献
レポートの書き方に関して,理科系学生用には
2.7 参考資料
[1] 木下是雄 : 理科系の作文技術(中公新書 624)中央公論新社, 1981 年 1 月
文科系学生用には,
[2] 木下是雄, レポートの組み立て方(ちくま文芸文庫)筑摩書房, 1994 年 2 月
が参考になるでしょう.
LATEX に慣れないうちは,本章に書かれていることだけを利用してレポートを作り上げるように割り切
ることが大切ですが,どうしても解決したい LATEX に関する技術的な事柄が発生したときには,
[3] 奥村晴彦, LATEX 2ε 美文書作成入門(改訂第 4 版), 技術評論社, 2006 年 12 月
が力強いバイブルになるでしょう.本書の執筆においても同書を参考にしています.
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