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説明×連想×発信による松山城改善案~(PDF:226KB)

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説明×連想×発信による松山城改善案~(PDF:226KB)
第 13 回 入賞論文
アイデア賞
松山甲冑隊の創出を!
~説明×連想×発信による松山城改善案~
要約
松山城はロープウェイ・リフトの利用者数からもわかるように、市内で最も観光客の訪
れる観光地である。しかし、市街地の中心に位置する松山城は、受動的な観光地としてし
か機能しておらず、松山城の魅力を積極的に伝えようとする姿勢では力不足な感が否めな
い。そこで私は松山城に「松山甲冑隊」を創出することで、松山城の魅力を積極的に伝え
ると共に、松山城を他の観光資源のアピール役も担う場として機能させることを提案す
る!
1.はじめに
8 月上旬、私は東京からバスに乗り、生まれて初めて愛媛県松山市を訪れた。その際最初
観光した場所が松山城であった。今回は、初めて松山市に訪れた「よそもの」の視点から、
このようにすれば松山城がもう少し良くなるのではないかという提案をさせていただく。
2.松山城について
松山城は松山市の中心部に位置する観光資源である。松山城ロープウェイ・リフトの利
用者数が平成 20 年には 871,297 人、平成 21 年には 987,526 人、そして平成 22 年には
998,169 人と、松山市内の観光地の中でも群を抜いた来訪者数を誇る点からも、松山城が非
常に魅力的な観光資源であることは言うまでもない。また、市の中心部にあるため他の観
光地へのアクセスも容易であることを考えると、受動的な「観光地」としてではなく、松
山市の観光資源を積極的にアピールする「観光発信地」としての機能も十分に担うことが
できると考える。
3.観光資源としての欠点
そんな松山城であるが、3つの欠点がある。一つ目は、松山城についての「説明不足」、
二つ目は他の観光資源との関連による「連想力不足」、そして三つ目は多くの観光客が来る
ことと立地を利用した「発信力不足」である。
① 説明不足
松山城は、当時の人々が描いた侍の似顔絵が城の柱に残っていることや日本で最も高い
位置にある天守閣であること、夜間のライトアップというように、非常にユニークで魅力
的な要素が詰まっている。また、松山城はイベントも多彩であり、夏には「松山城光の城」
があり、定期的に「
“お伽座”の昔語り」や「お城の舞」を行っている。しかし、以上の情
報を観光客が事前に下調べをしたうえで来訪する場合は良いのだが、特に松山城に関して
第 13 回 入賞論文
アイデア賞
何も調べずに来た場合は、松山城の特徴やイベントを知ることなく観光を終え、松山城の
魅力を十分に楽しむことなく終わってしまうケースが多いように感じる。
② 連想力不足
松山城は他の観光資源とも深いかかわりを持つ。例えば、松山市の銘菓である「タルト」
は城の藩主である松平定行が持ち込んだ点で両者に関連性があり、蒲生忠知にまつわる祟
り話は松山城二之丸史跡庭園と関連している。また、正岡子規は松山城について「春や昔
十五万石の城下哉」という句を詠んでいる。松山城から他の観光地を連想させることで、
その場に行く動機を与えることとなり、かつ観光客がその観光地をより深く楽しむことが
できるようになる。しかし、以上のような話はよそものである私が旅行を終えてから初め
て知った話であり、松山城を観光中にはそのような話を聞くことはなかった。
③ 発信力不足
松山城は松山市において最も観光客が来る場であり、かつ市街地の中心部に位置するた
め、他の観光資源の売り込みをしてもよさそうなものである。しかし、実際に松山城に足
を運んでみると、特に城を観光している際にそのことをアピールするものは見受けられな
かった。
この「説明」と「連想」「発信」は観光戦略としては極めて重要である。「説明」につい
ては、
「城の舞」などのイベントを見たいと考えれば、観光客自身がリピーターとして再び
松山城を訪れることもある。また、観光客に以上の特徴を伝えることで、観光客一人一人
が松山市の観光大使として機能し、他の観光客の呼び込みに貢献することもあるだろう。
「連想」
「発信」については、松山市の他の観光資源の魅力を引き出すことにつながり、
観光客も一定の繋がりを持ちつつ様々な地点を観光することができ、
「松山市」をより深く
楽しめるようになることが期待される。
図 観光地のアピール能力
説明
力
能動
性
連想
力
発信
力
第 13 回 入賞論文
アイデア賞
最も、以上の情報をパンフレットなどの乗せておけばいいのではないかという意見もあ
るだろう。確かに情報が手に入る状況を作ることは大切であるが、観光客に伝えたいこと
が伝わらなければ意味がない。また、近年は「見る観光地」よりも「体験型=対話型観光
地」の方が人気が高くなってきているといわれる。つまりは、観光客が能動的に参加する
ことができる形が求められてきている。
4.政策
以上の「説明」「連想」「発信」、そして「体験型=対話型観光地」という観点を踏まえ、
かつ観光客にも能動性を与えることができる観光戦略として、私は「松山甲冑隊」を提案
する。
「松山甲冑隊」の概要と業務は以下の通りである。
・概要
松山城の案内役として、甲冑を来た男性のユニットである。具体的には、加藤嘉明、蒲
生忠知、松平定行をモデルとした人々を中心とし、足軽を 3 人配置する。松山の方言を身
に着けさせ、来訪者に「松山らしさ」を実感してもらう。また、各人の来歴を知ってもら
い、その人物にあった形振りをしてもらう。
・業務
①観光案内
主な業務は観光案内である。ここで先に示した「説明」「連想」「発信」に重点を置いた
観光案内をしてもらう。
・説明
松山城の入り口付近に駐在し、松山城に訪れた人に積極的に声をかける。侍の似顔絵や
天丸とまつ姫など、松山城について観光客に対話形式で説明を行う。また、
“お伽座”の昔
語りや城の舞、夜間のライトアップといった松山城に関連するイベントを告知することで、
見て回る観光地から、交流のある観光地へ変化させるとともに、イベントの時期にまた来
たくなるようにすることでリピーターを増やすことができる。
・連想
松山城の説明の合間に、加藤嘉明の城建設のエピソードや蒲生忠知の二之丸史跡庭園に
まつわる怪奇話、松平定行が松山銘菓の「タルト」を広めた話、正岡子規の俳句などを紹
介する。松山城は市街地の中心部にあるため、それらの観光地とそれほど距離があるわけ
ではない。松山城からどのように行けば関連した観光地につくことができるかを具体的に
示すことで、観光客にそれらの観光地に行く動機を与えることができる。
・発信
松山市の特産品を携帯し、松山市全体の観光資源をアピールする。例えば、タオルを首
に巻いたり、竹籠を利用することで、松山市の特産品がタオルや竹細工であることあるこ
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とをアピールする。最も観光客の集まる観光地で松山市の特産品の認知度を上げることで、
市の特産品の購入を促進することが出来る。
②イベント参加
道後温泉での夏祭りや「松山城城の光」に参加し、それらのイベントを盛り上げる機能
も果たすようにする。
③遠征
他県の城にも名称は様々であれ、独自のユニットが存在している。有名なものとしては、
名古屋城の「おもてなし武将隊」
、松江城の「まつえ若武者隊」「まつえ舞姫隊」、仙台城の
「伊達武将隊」が挙げられる。
これらの武将隊同士は交流があるので、松山甲冑隊もこれらのグループと共同でイベン
トに参加することで、県外地域での松山城の知名度を上げることができるとともに、松山
城をきっかけとして、道後温泉や坂の上の雲といった観光資源と結びつけることができる。
5.街角案内人との区分け
現時点では本丸広場に「はかま姿」の女性や「書生風」の男性が街角案内人としている。
彼らから連想されるものは明治初期の日本の姿である。しかし、松山城域内で似合うもの
は、やはり甲冑姿の人間といえるであろう。
この両者を共存させるために、本丸広場を二つの区域に分割する。そして入口から手前
側を従来の街角案内人の区画、そしてそれ以降を松山甲冑隊の区画とする。本丸広場は極
めて広いため、このように区分けすることで観光客と案内役の人々との距離を縮め、双方
が近づきやすい存在とする。また、松山甲冑隊は自身たちと交流した観光客を「はかま姿」
の女性や「書生風」の男性の方に誘導することにより、観光客がスムーズに松山市を観光
することを助けることとなる。
6.まとめ
松山市は「坂の上の雲」を中心とするフィールドミュージアム構想を軸に観光戦略を打
ち立てている。しかし、松山市の魅力は「坂の上の雲」だけではない。松山市は道後温泉
や正岡子規など、多種多様なイメージであふれている。そしてその中でも「坂の上の雲」
にまつわる文学の街としてではなく、城下町としての松山という新しいイメージを観光客
に与えることが出来る。
俳人である正岡子規が「松山や秋より高き天主閣」や「春や昔十五万石の城下哉」とい
う句を詠み、松山市を見下ろし、そして見守る存在としての「松山城」。今回は、能動性を
中心とした「説明」
「連想」「発信」による「対話型」観光案内としての「松山甲冑隊」を
第 13 回 入賞論文
アイデア賞
提示した。松山城の魅力を引き出すことは、道後温泉や「坂の上の雲」ミュージアムとい
った他の観光資源の活性化、ひいては「松山市」の魅力を引き出すことにつながる。この
政策が、松山市をよりよい都市にする一助となることを願う。
7.参考文献
松山市 HP http://www.city.matsuyama.ehime.jp/index.html
松山城 HP http://www.matsuyamajo.jp/
四国運輸局 HP http://wwwtb.mlit.go.jp/shikoku/bunya/toukei/index.html
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