Comments
Description
Transcript
横浜動物の森公園整備事業 〔環境創造局〕
平成20年度 横浜市公共事業評価審査委員会 公園部会 (再評価:環創-11) 横浜動物の森公園整備事業 〔環境創造局〕 目 1.横浜動物の森公園整備事業 次 事業別再評価概要資料 2 2.案内図 3 3.公園計画図 4 4.平面図 5 5.事業概要 6 6.事業計画 7 7.事業期間 7 8.事業費 7 9.写真 8 10.費用便益分析結果及び算定方法 9 1 2 案内図 ・所在地:横浜市旭区白根町 1175 番地1ほか ・横浜動物の森公園は、JR横浜線「中山駅」より南西に約4kmの市街化調整区域に位置し ています。 横浜動物の森公園 3 3 公園計画図 緑のリサイクルプラント 4 4 平面図 ・ 公園計画区域 ・ 開園区域 103.3ha 54.1ha 計画区域 開園区域 亜寒帯の森 アラースの谷 アフリカジャングルゾーン入口 5 5 事業概要 (1)上位計画 ・ 横浜動物の森公園は、 「横浜市水と緑の基本計画」で示されている、横浜市緑の 7 大拠 点の一つ「三保・新治地区」にあります。当該地区は、旭区と緑区に広がる緑の拠点を 保全し、自然観察、農体験、キャンプなどが楽しめる場として活用することとしていま す。本公園は、市民のレクリエーションや、緑の拠点となる広域公園として、国内最大 級の動物園と植物公園の整備を進めています。 (2)周囲を取り巻く状況 ・ 本公園は、北側に広がる横浜市緑の 7 大拠点の一つである三保、新治地区の一部に位 置し、市街化調整区域内にあり山林に接するほか、東側は一部ひかりが丘団地に隣接し、 南側は学校と環状3号線(中原街道)に接しています。JR横浜線中山駅から南西約4 kmに位置しています。 JR中山駅 JR中山駅 鶴見川 保土ケ谷BP 計画区域 下川井IC (3)事業の目的・必要性 ・ 子供から大人まで 1 日を楽しく過ごせるレクリエーションの場とするほか、動物の保 護繁殖といった種の保存、繁殖事業や、環境学習の場ともなる動・植物園をあわせもつ 緑の拠点を整備します。 (4)事業内容 ・公園種別 :広域公園 ・公園計画面積:103.3ha ・開園面積 : 54.1ha ・施設内容 :動物園、植物公園 6 (5)整備効果 ・ 豊かな自然となだらかな地形を生かし、市北西部地域でまとまった緑を保全し レクリエーション活動の核となる公園になります。 6 事業計画 (1) 事業計画の経過 ・ 都市計画決定:昭和59年 6月 1日 ・ 事業認可取得:昭和59年10月23日 ・ 工 事 着 手 :昭和62年 ・ 一 部 開 園 :平成11年 4月 ・ 認可区域拡大:昭和61年 平成 ・ 2月 7日 3年 3月26日 事業認可延伸:平成10年 3月31日 平成15年 3月28日 平成20年 3月28日 (2) 事業の進捗状況 ① 事業進捗率(事業費ベース):約81% ② 用地取得率:約94% ③ 供用等の状況:全体面積 103.3ha のうち 54.1ha、約52%が供用済です。 平成19年度に、アフリカジャングルゾーンの一部及び乗馬体験の できるぱかぱか広場 1.4ha について公開しました。 (3) 今後の計画 ・ 未取得の約5ha の用地について鋭意取得を進めます。 ・ 今後の整備は、動物園部分のアフリカサバンナゾーンの早期の完成をめざすととも に、植物園部分の整備に着手してまいります。 7 事業期間 ・ 昭和59年10月23日~平成25年 3月31日 (平成19年末に、平成24年度まで事業認可延伸) 8 事業費 ・ 約 1,035 億円(用地 496 億円 施設 539 億円) 7 9 写真 ① ④ ⑤ ③ ② 計画区域 ① 南入口 ③ ② 駐車場 ころころ広場 ④ ⑤ ぱかぱか広場 オカピ展示場 8 10.費用便益分析結果及び算定方法 10-1.費用便益分析の結果 費用便益分析結果は以下のとおりです。 <算定条件> 事業期間:昭和 59 年度~平成 24 年度 算定期間:2008(H20)年度~2057(H69)年度(部分供用開始から 50 年間) 評価時点:2008(H20)年度 割引率 :4% 2% 改訂第 2 版 大規模公園費用対効果分析手法マニュアルに基づき算定 横浜市再評価審査委資料作成要領に基づき算定 表 費用便益分析結果(割引率 4%ケース) 総便益(単位:百万円) 総事業 総費用(単位:百万円) 残事業 総事業 残事業 直接利用価値(利用) 258,699 105,087 用地費 72,230 4,356 間接利用価値(環境) 97,444 45,709 施設費 74,734 12,774 間接利用価値(防災) 154,348 72,401 維持管理費 45,130 31,049 合計 510,491 223,197 192,094 48,179 表 総事業 合計 費用便益分析結果(各ケース) 割引率 4% 割引率 2% 総便益(百万円) 510,491 733,713 総費用(百万円) 192,094 166,660 費用便益比(B/C) 2.658 4.402 感度分析費用便益比 2.119 3.510 残事業 割引率 4% 割引率 2% 総便益(百万円) 223,197 328,075 総費用(百万円) 48,179 62,161 費用便益比(B/C) 4.633 5.278 感度分析費用便益比 3.760 4.283 9 <検討対象範囲> 本公園は広域公園であり、広範囲からの集客が見込まれます。マニュアルでは広域公園の利用率は、 半径 50km 圏で 86.6%となっており、H15 年の評価時と同様に、誘致圏として半径 40.0km を設定す ることとしました。 <競合公園> 次の条件を満たす公園を競合公園としました。 ・現在供用中の面積 10ha 以上の広域公園のうち、対象範囲からの利用が見込まれる公園 もしくは ・対象範囲からの利用が見込まれる動物園、水族館、植物園 その結果、競合公園(対象公園を含む)は次表のとおりとなりました。 公園名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 横浜動物の森公園 熊谷スポーツ文化公園 大宮公園 さきたま古墳公園 秩父ミューズパーク 羽生水郷公園 所沢航空記念公園 こども動物自然公園 加須はなさき公園 柏の葉公園 幕張海浜公園 青葉の森公園 葛西臨海公園 国営昭和記念公園 野山北・六道山公園 供用面 積(ha) 54.1 28.7 67.8 26.5 182.1 11.6 50.2 46.0 24.9 23.8 53.6 52.5 79.6 137.7 104.4 公園名 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 井の頭公園・井の頭第二公園 野川公園 神代公園 小金井公園 桜ヶ丘公園 こども自然公園 舞岡公園 金沢自然公園 観音崎公園 県立湘南海岸公園 秦野戸川公園 県立七沢森林公園 県立茅ヶ崎里山公園 諏訪の森自然公園 富士山こどもの国 10 供用面 積(ha) 38.4 39.9 47.7 77.1 23.5 46.4 28.5 57.8 62.3 17.3 26.5 64.6 12.4 14.1 84.0 公園名 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 東京都多摩動物公園 東京都上野動物園 東武動物公園 千葉市動物公園 金沢動物園 野毛山動物園 東京都井の頭自然文化園 東京都葛西臨海水族園 横浜・八景島シーパラダイス 新江ノ島水族館 サンシャイン国際水族館 品川水族館 東京都神代植物公園 神奈川県立フラワーセンター大船植物園 新宿御苑 夢の島熱帯植物園 供用面 積(ha) 60.1 53.4 53.0 34.0 12.8 9.7 11.6 1.2 1.9 1.3 0.6 0.4 27.1 6.4 58.3 43.3 10-2.費用便益分析の概要 分析手法は費用便益比を、 「改訂第 2 版 市・地域整備局公園緑地課監修 大規模公園費用対効果分析手法マニュアル」 (国土交通省都 社団法人日本公園緑地協会編集・発行)に基づきつつ、地域性を考慮 して算定しています。 (1) 分析のフロー 分析のフローは以下に示すとおりです。分析は、基礎データの整理を行った上で、便益の算出、費 用の算出、費用対効果の算出と大きく3つのステップからなります。 図 分析のフロー 検討対象公園の設定 基礎データの整理 分析対象エリアの設定 競合公園の抽出 データ収集・整理 ○対象公園データ ○分析対象エリアデータ ○競合公園データ 便益の算出 <直接利用価値の算出> <間接利用価値の算出> ○需要推計モデルの導出 ・各ゾーンの公園別利用選択 率、一人当たり需要(年間 利用回数)の算出 ・ゾーン全体需要の推計 ・対象公園への需要推計 ↓ ○単年度便益の算出 ↓ ○プロジェクトライフ期間の総直接 利用価値の算出 ↓ ●現在価値の算出 (現在価格×割引率) ○効用値算出 ・全体及び環境、防災 ↓ ○満足度算出 ・効用値:公園有―公園無 ↓ ○単年度便益の算出 ↓ ○プロジェクトライフ期間の総間接 利用価値の算出 ↓ ●現在価値の算出 (現在価格×割引率) 総便益・総費用 ○用地費の算出 ○施設費の算出 ○維持管理費の算出 *供用年次から現在まで+ プロジェクトライフ期間 B/Cの算出 11 ↓ ●現在価値の算出 (現在価格×割引率) 費用の算出 費用対効果の算出 ○総便益の算出 (2) 便益の算出 以下の図表に示すとおり、公園を整備することで発生する便益として、直接利用価値(公園を利用 することによって得られる満足感)と間接利用価値(公園があることによる効果)を計測します。 表 公園整備によって生じる価値の体系 価値分類 利用価値 直接利用 価値 意味 機能 直接的に公園を利 用することによっ て生じる価値 健康・レクリ エーション 空間の提供 価値の種類(例) 健康促進 心理的な潤いの場 レクリエーションの場の提供 文化的活動の基礎 教育の場の提供 間接利用 価値 間接的に公園を利 用することによっ て生じる価値 都市環境維 持・改善 緑地の保存 動植物の生息・生育環境の保存 ヒートアイランド現象の緩和 気候緩和 二酸化炭素の吸収 騒音軽減 森林の管理・保全、荒廃の防止 都市景観 季節感を享受できる景観の提供 都市形態規制 都市防災 洪水調整 地下水涵養 災害応急対策施設の確保(貯水槽、トイレ 等) 強固な地盤の提供 火災延焼防止・遅延 防風・防潮機能 災害時の避難地確保 災害時の救援活動の場の確保 復旧・復興の拠点の確保 現在は利用しないが将来の利用を担保することによって発生する価値 非利用価値 存在価値 公園が存在することを認識すること自体に喜びを見いだす価値 遺贈価値 将来世代に残す(将来世代の利用を担保する)ことによって生じる価値 注.「価値の種類」の網掛け( )・・・本調査で便益の計測対象とする範囲 12 1) 直接利用価値の計測 直接利用価値は「旅行費用法」を適用します。 旅行費用法とは、公園までの移動費用(料金、所要時間)を利用して、公園整備の価値を貨幣価値 で評価する手法です。公園利用者は、公園までの移動費用をかけてまでも公園を利用する価値がある と認めているという考えが前提にあります。 計測に当たっては、まず、公園別利用選択率及び一人あたり都市公園需要(年間利用回数)を、公 園の魅力値(公園施設整備内容等から計測)と各地域から公園までの旅行費用(交通費、公園利用料 金、所要時間)及び人口密度を説明変数とする関係式から計測します。次に、これらの結果及び人口 から個別公園の需要(総年間利用回数)を計測します。そして、先に使用した需要関数を用いて消費 者余剰分を計測することにより、単年度便益を計測します。 図 直接利用価値 旅行費用法による直接利用価値の計測イメージ ◆対象公園へのゾーン別個別需要(総年間利用回数)を推計し、旅行費用との 関係性(需要曲線)から、消費者余剰(対象公園を利用するお得感)を算出 したものが「直接利用価値」 *ゾーン=市区町村行政区域 消費者余剰を算出し 直接利用価値を計測 ゾーン別対象公園の需要(総年間利用回数) =年間公園利用回数 × 人口 × 利用選択率 ※各公園の魅力値、各ゾーンから各公園へ の旅行費用から各公園の効用を求める。 効用の総和と人口密度から年間公園利用 回数を、効用の総和と個別公園の効用か ら利用選択率をそれぞれ求める 各ゾーンから各公園を利用する効用 魅力値 ●面積あたり利用人数 ・自然空間系 ・施設系 ・文化活動系 旅行費用 ●交通手段別旅行費用 ・所要時間 ・時間価値 ・移動費用 ●交通手段利用率 ●公園利用料金 ○対象公園の誘致圏 分析対象エリア =魅力値/旅行費用 競合公園 D市 B市 C市 E市 A市 対象公園 G町 13 競合公園 競合公園 競合公園 H市 F市 競合公園 ○分析対象エリアか ら利用が見込まれ る公園 ①旅行費用の算出 ○計測対象ゾーンと対象公園及び競合公園間の旅行費用を、次式により算出します。 旅行費用=交通機関別旅行費用(A)×交通手段利用率(B)+公園利用料金 ○交通機関別旅行費用(A) 各交通機関別旅行費用(A)=交通機関別所要時間(A1)×時間価値(A2)+交通機関別移動費用(A3) 交通機関 徒歩 自転車 自動車 鉄道 所要時間(A1) 経路距離÷4.8km/h 経路距離÷9.6km/h 経路距離÷30km/h 時刻表値 時間価値(A2) 36.6 円/分 36.6 円/分 36.6 円/分 36.6 円/分 移動費用(A3) 無料 無料 ガソリン代:10 円/km 運賃 ※経路距離:各ゾーンの行政中心から公園の地理的中心までの経路距離 ○交通手段利用率(B) 交通手段の利用率は以下のように設定しました。鉄道のアクセスが難しい地域等の場合は利用率 を 0%として設定します。また、移動距離が長く、徒歩、自転車の利用が考えにくい場合は、これ らの利用率を 0%と設定し、それ以外の交通手段のみで利用率が 100%になるように比率を設定し ました。 表 年齢区分 交通手段選択率 徒歩 15 歳未満 15~19 歳 20~29 歳 30~49 歳 50 歳以上 6.27% 9.13% 6.88% 6.27% 10.48% 表 利用率 自転車 鉄道 8.94% 32.70% 11.46% 8.94% 9.32% 自動車 10.38% 25.48% 20.97% 10.38% 14.56% 74.41% 32.70% 60.70% 74.41% 65.65% 徒歩・自転車での移動可能な距離 移動距離 利用可能な移動手段 0km<移動距離≦1km 全ての移動手段(徒歩、自転車、鉄道、自動車)が利用可能 1km<移動距離≦3km 徒歩以外の移動手段(自転車、鉄道、自動車)が利用可能 3km<移動距離 徒歩・自転車以外の移動手段(鉄道、自動車)が利用可能 14 ②各ゾーンの公園別利用選択率の算出 <式 1> 各ゾーンから各公園への利用選択率は、各公園の魅力値と旅行費用及びパラメータから算出され る効用値をもとに算出されます。式及びパラメータは次のとおりです。 exp(Uijk) Pijk= ∑exp(Uijk) ・・・<式1> j Uijk:年齢区分 k のゾーン i から公園 j を利用する効用 √M xj √M yj Uijk=α1× +α2× Vijk √M zj +α3× Vijk Vijk +c×Farej x M j :公園 j の自然空間系の魅力 y M j :公園 j の施設系の魅力 z M j :公園 j の文化活動系の魅力 Vijk :年齢区分 k のゾーン i から公園 j までの旅行費用 Farej:公園 j の料金に対する利用抵抗(=1:有料公園、=0:無料公園) α1,α2,α3,c:パラメータ 表 需要推計モデルのパラメータ 年齢区分1 年齢区分2 年齢区分3 年齢区分4 15 歳~19 歳 20 歳~29 歳 30 歳~49 歳 50 歳以上 自然空間系の魅力 施設系の魅力 文化活動系の魅力 料金に対する利用抵抗 ログサム値 人口密度 α1 α2 α3 c C γ 1.735 0.386 2.004 -0.1838 1.4924 2.6596 2.711 1.506 0.421 -3.7947 1.5443 0.4701 0.797 1.361 0.263 -2.2804 1.8899 4.4003 1.547 0.905 2.644 -1.0860 2.3784 0.4574 注.15 歳未満はファミリーで行動するものとし、年齢区分3と同じモデルとしている ③一人あたり都市公園需要(一人あたり年間利用回数)推計 <式 2> 需要推計のモデル式は、ログサム値と地域の特性を表すゾーン i の年齢区分 k の人口密度で表さ れます。ゾーン i の全対象公園(分析対象とする公園と競合公園)に対する需要(一人当たり年間 利用回数)は、当該ゾーンのログサム値と人口密度によって表されます。 dik=C×Logsumik+γ×Pi・・・<式2> ここで、Logsumik=ln ∑ exp(Uijk) j Pi:ゾーンiの人口密度(万人/㎞2) C,γ:パラメータ 15 ④ゾーン全体需要(総年間利用回数)推計 <式 3> <式 2>で得られた一人当たり年間利用回数に、ゾーンの年齢階層別人口を乗じることで、ゾー ン全体の需要(総年間利用回数)を算出します。 Dik=dik×Pik・・・<式3> Dik:ゾーン i 年齢区分 k の年間公園需要 dik:ゾーン i 年齢区分 k の一人あたり年間公園利用回数(回/人/年) Pik:ゾーン i 年齢区分 k の人口 ⑤ゾーン別個別公園の需要(総年間利用回数)推計 <式 4> ゾーン別個別公園の需要は、ゾーン全体需要に各ゾーンの公園別利用選択率を乗じて、配分する ことで得られます。 Dijk=Dik×Pijk・・・<式4> Dijk:年齢区分 k の、ゾーン i における公園 j の需要(回/年) Pijk:年齢区分 k の、ゾーン i において公園 j を利用する利用選択率 ⑥単年度直接利用価値の算出 単年度便益は、年齢階層別ゾーン別に、先に公園需要の算出に用いた需要関数により消費者余剰 分を計測し、これらを足し合わせることによって計測します。消費者余剰とは、下記のような需要 曲線の斜線部分に相当します。なお、モデルの特性上、旅行費用の上限値を定める必要があります が、ここではマニュアルに従い、検討対象ゾーンの旅行費用の最大値を上限値とします。 部分供用時と全体供用時における単年度便益をそれぞれ算出します。 図 需要曲線と 生じる便益の範囲 費用 (上限) Yu Y9 Y8 Y7 Y6 Y5 Y4 Y3 Y2 Y1 (実際の費用) Y0 需要曲線 P1 X1 需要(回/年) (実際の需要) 注:消費者余剰とは、消費者が財やサービスの購入に「支払っても良いと思う金額」と「実際に支払う額」の差額である。 例えば、ペンを 200 円支払っても購入したいと考える消費者が、実際には 100 円でペンを購入した場合、消費者余 剰は 100 円となり、その分だけ消費者は得をしたことになる。 16 2) 間接利用価値の計測 間接利用価値の計測には、「効用関数法」を適用します。 効用関数法とは、公園整備を行った場合と行わなかった場合の周辺世帯の持つ望ましさ(効用)の 違いを貨幣価値に換算することで公園整備を評価するものです。 図 効用関数法による間接利用価値の計測イメージ 間接利用価値 「環境価値」と「防災価値」 ●広場の緑地面積 全体価値 : の双方を含む全体の価値 環境価値 :環境の維持・改善、景観の ●防災拠点機能の有無 ●公園の広場面積 ●公園からの距離 ●公園の緑地面積 ●公園からの距離 ●広場の広場面積 ●防災拠点機能の有無 ●公園からの距離 向上に役立つ価値 防災価値 :防災に役立つ価値 効用値→満足度→便益額 *対象公園がある場合とない場合の「全体」の効用値を各公園において算出。これらから世帯満足 度を対象公園の有無別に算出し、その差から単年度便益額を算出。「環境」と「防災」について も同様の方法で単年度便益額を算出し、「全体」の便益額を按分することにより「環境」と「防 災」のそれぞれの価値を求める。 ①効用関数の定義 間接利用価値を計測するための世帯毎の効用を表す効用関数の確定項の線形式は下記の通りです。 なお、間接利用価値全体については「全体」の式を用いるが、「環境」と「防災」の式を用いてそ れぞれの価値を個別に計測し、「全体」の価値を両者の比率で按分することにより、環境価値及び防 災価値の内訳を算出します。 全体:V=a1 √ Ag+a4d2+a5δ+a6(I-x) Ag+a4d2+a6(I-x) 環境:V=a2 √ 防災:V=a3 √ Ao+a4d2+a5δ+a6(I-x) V A Ag Ao d δ I x a1~a5 :効用関数の確定項 :公園の緑地面積+広場面積(ha) :公園の緑地面積(ha) :公園の広場面積(ha) :公園からの距離(km) :防災拠点機能の有無(あり=1,なし=0) :所得 :世帯の負担額(円/月) :パラメータ 17 表 価値種別 a1(緑地+広場)面積 a2緑地面積 (√ha) (√ha) パラメータ a3広場面積 a4距離 (√ha) (km×km) a5防災拠点 機能 a6負担金 (円/月) 全体価値 0.0234962 - - -0.0006795 0.6070674 0.0004354 環境価値 - 0.1134198 - -0.0011004 - 0.0007764 防災価値 - - 0.0526422 -0.0007343 0.4713709 0.0005315 ②効用関数を利用した満足度の定義 公園の利用可能性に対する世帯の満足度は下記で示され、世帯が公園aと公園bからなる選択肢集 合より得られる「最大効用の期待値」をあらわしています。 公園の数と満足度(S0)の関係は次のようになります。 表 周辺の公園の数 の状況 公園の数と満足度の関係 関係式 結果 全く存在しない S0=V0=0 公園が一つだけ 存在する S1=ln{exp(V0)+exp(V1)} =ln{1+exp(V1) } 公園が複数箇所 存在する Sn=ln{exp(V0)+exp(V1)+ ・・・+exp(Vn-1)+exp(Vn) } =ln{exp(Sn-1)+exp(Vn) } 時間も費用も消費せず、満足度は「0」 仮に「存在しない」より効用の低い公園 であっても満足度は「公園が存在しない 場合よりも増大」する 公園を利用しないか、複数の内のいずれ かの公園を選択する行動になる。 「Sn> Sn-1」となるため、「どんな公園でも、 無いよりはよい」ことになる ③世帯便益の計測 新たに公園が整備されたことによる世帯月間便益EVは、等価的偏差(Equivalent Variation:公 園整備などの変化を諦めるために世帯が必要と考える最小補償額)の考え方に基づき、次式で与えら れます。 EV= Sn-Sn-1 a6 *a6:世帯の負担金のパラメータ ④年間総便益額の計測 世帯毎の月間便益額を対象地域内の全世帯に対して集計し、12 倍することにより年間総便益額を計 測します。 18 (3) 費用 公園整備事業に係る費用には、用地取得費、施設整備費、公園の維持管理費に分けられます。これ らの費用をそれぞれ算定し、年度ごとの公園整備事業の費用を求めます。 (4) 費用対効果の計測 単年度便益及び年度ごとの費用を計測した上で、プロジェクトライフ期間中に発生する便益と費用 の総額をそれぞれ計測します。本計測ではマニュアルに基づき、プロジェクトライフ期間を 50 年間 と設定しました。 このとき、過去及び将来時点における便益や費用は、現在の貨幣価値に補正する必要があります。 具体的には、社会的割引率を用いて過去及び将来時点の便益、費用を現在価値に割り戻した上でそれ ぞれ合計し、総便益及び総費用を求め、これらから費用便益比(B/C)を求めます。本計測では割引 率を、マニュアルに基づく 4%及び横浜市再評価審査委資料作成要領に基づく 2%の 2 ケースを設定 しました。 費用便益比の数字が 1 よりも大きい場合、発生する便益の方が費用よりも大きいこととなり、事業 の実行可能性があると言えます。 便益(B) 直接利用価値+間接利用価値 = 整備費用(用地費+施設費)+維持管理費用 費用(C) 〔費用〕 〔便益〕 B= bn ∑(1+r) n C= (n-n0) cn ∑(1+r) n (n-n0) B:総便益(n0年価値) C:総費用(n0年価値) bn:n年の便益 cn:n年の費用 n:年次 n:年次 n0:計算実施年次 n0:計算実施年次 r:割引率(4%、2%) r:割引率(4%、2%) 19