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アールシーコア - 株式会社フィスコ

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アールシーコア - 株式会社フィスコ
2015 年 7 月 27 日
アールシーコア
[ JASDAQ-S 7837 ]
CORPORATE RESEARCH
×
2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
CORPORATE RESEARCH
C
×
O
N
T
E
N
T
S
サマリー
・・・・・・・・
2
第 1 部 定性情報
・・・・・・・・
3
第 2 部 前年度決算と経営環境
・・・・・・・・
9
第3部
2015 年度決算見込みと幾つかの考察
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 15
決算データ等経営指標
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 21
会社情報及びバリュエーション
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 22
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2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
CORPORATE RESEARCH
アールシーコア〔7837〕
14 年度下期の契約高に明るい兆し。
営業員の確保が喫緊の課題
リサーチアナリスト
スプリングキャピタル株式会社
井上
哲男
株式会社アールシーコア(以下「RCC 社」、「同社」)はログハウス、木
をふんだんに使用した自然派個性住宅の製造、販売を行う。会社設立
は 1985 年。翌年からログハウスの輸入・販売を手掛け、1989 年からはロ
グハウス以外の一般住宅にも進出。現在の商品ラインナップはログハウス
5 シリーズ、ログハウス以外の住宅(「エポックス」)3 シリーズ。商品ブランド
名は「BESS」。ログハウスの国内シェアは 2014 年度ベースで約半数を
占めている。
単独展示場形式を採用して展開。単独展示場数は 2015 年 3 月末時
点で 43 拠点(186 棟)、平均すると 1 拠点あたり 4.3 棟の BESS の家が
展示されている。展示場数の内訳は、パートナーシップ契約(フランチャイ
ズ契約)を結んだ販社による運営が 39 か所、経営不振であった販社の
経営を引き継ぐ形で株式会社 BESS パートナーズ社(RCC 社の 100%
子会社、以下「BP 社」)が運営するものが札幌と岐阜の 2 か所、RCC 社
が直販部門として直接運営するものが代官山(東京都)と藤沢(神奈川
県)の 2 か所。この「単独展示場運営」、「農耕型営業」による「感性マー
ケティング」、「住宅購入者の嗜好の一致」が同社の強固なビジネス・フ
レームワークとして機能してきた。
2014 年度の決算を発表。営業員の採用・教育のために予定していた
戦略的な費用の投下が行われなかったことから、期初見込みの大幅な
減益とはならなかったが、販社部門の不振が響き減収減益に。しかし、
2014 年 12 月、2015 年 3 月と期中に 2 回、月間での過去最高契約棟
数を記録したことから消費増税前の駆け込み需要の影響が一巡し、今後
に明るい兆しが見えてきた。
2012 年に終期を 2017 年 3 月として定めた中期 5 カ年計画「“異端で
メジャー”ステージアップ 5 ヵ年計画」のうち、営業員数と契約目標棟数を
下方修正。その他の項目についての修正は行っていない。
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2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
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-第1部- 定性情報
事業内容
株式会社アールシーコア(以下「RCC 社」、「同社」)はログハウス、木をふんだんに
使用した自然派個性住宅の製造、販売を行う。会社設立は 1985 年。翌年からログハ
ウスの輸入・販売を手掛け、1989 年からはログハウス以外の一般住宅にも進出。現在
の商品ラインナップはログハウス 5 シリーズ、ログハウス以外の住宅(「エポックス」)3 シ
リーズ。商品ブランド名は「BESS」。ログハウスの国内シェアは、同社が国土交通省の
「丸太組構法建築確認統計」を用いて算出した数字によると、2014 年 7 月-12 月
ベースで 55%を占めている。また、同社の商品は外観等から別荘向けと思われがちで
あるが、2014 年度の同社集計で自宅用途が 94%を占める。
7series
G-LOG
2014 年 11 月発売
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CORPORATE RESEARCH
沿 革
1985 年 8 月
創業 主事業は企画コンサルティング業
「まずは会社を作ることから始めた。何をするかはノーアイデア。楽しいことを提案するコンサルティングと
いうイメージだけで出発」(二木社長)
1986 年 3 月
「ハンドヒューンログハウス」の輸入・販売を開始
1989 年 3 月
「ドームハウス」の輸入・販売を開始し一般住宅部門に進出
~
「カントリーログハウス」、「ファインカットログハウス」の輸入・企画・販売開始
1995 年 4 月
カナダに BIG FOOT MANUFACTURING INC.を設立
1999 年 1 月
総合展示場「ビッグフットスクエア」を東京都府中市から東京都目黒区青葉台に移転
2004 年 10 月
同年に販売を開始した「ワンダーデバイス」が 2004 年度グッドデザイン賞を受賞
2005 年 2 月
ジャスダック市場上場
~
「ジャパネスクハウス 程々の家」販売開始、山中湖にて「フェザント事業」を開始
2007 年 11 月
「BESS 街区」で「ビッグフット」による街づくりを企画・開発
2008 年 4 月
ブランド名を「ビッグフット」から「BESS」に変更
2009 年 1 月
BP 社に札幌販社事業を譲渡して分社化
2009 年 12 月
累計契約棟数 1 万棟を達成
2010 年 9 月
国産材による「あきつログハウス 季感の家」の販売を開始
2011 年 2 月
BP 社が岐阜地区で営業を開始
2012 年 4 月
リノベーション事業「NEWIT」を販売開始
2013 年 1 月
直販部門において「BESS 藤沢展示場」を開設
2014 年 11 月
広い軒下を持つ新世代ログハウス「G-LOG」の販売開始
出所:会社資料
セグメント
「BESS」の単一事業としているが、具体的には「BESS」ブランドに関わる事業、山中
湖に RCC 社が保有するタイムシェア別荘(フェザント山中湖)の販売・運営管理、カナ
ダの BIG FOOT MANUFACTURING INC.(同社の 100%子会社)(以下「BFM 社」)
による北米事業に分けられる。売上高に占める構成は「BESS」ブランドに関わる事業が
98%程度を占めており、他の2つの事業はそれぞれ 1%程度である。同社は単一事業
である「BESS 事業」を 4 つの部門に区分して売上高を開示している。
直販部門
RCC 社が直接運営する部門の売上。拠点(展示場)は、代官山(東京都)にある
「BESS スクエア」と藤沢(神奈川県)にある「BESS 藤沢展示場」の 2 つ。「BESS スク
エア」は「BESS」ブランド発信基地として全国展示場のフラッグシップとしての役割を、
また、2013 年 1 月にオープンした藤沢(神奈川県)にある「BESS 藤沢展示場」はエリ
ア販売拠点、及び全国地区販社に対する現実的な経営モデルのプロトタイプとしての
役割を担っている。直販部門の事業は東京圏の顧客に向けた BESS ブランドのキット
販売及び施工(工事請負)、メンテナンス及び一般リフォーム事業の請負、タイムシェア
別荘(フェザント山中湖)の販売・運営管理等である。
2015 年 3 月期におけるセグメント売上高は 3,528 百万円、売上高構成比率は
29.5%で、前期の 24.9%から 4.6pt 増加した。
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販社部門
RCC 社とパートナー契約(フランチャイズ契約)を結んだ販社の売上高。RCC 社は
販社に BESS ブランドのキット(部材)を販売する。また、施工はそれぞれの販社が行う
ことから RCC 社の売上ではない。RCC 社は販社と契約を結ぶ際に、多くのフランチャ
イズ制度で求められる加盟金の類いを一切取らず、その代わり、専用拠点(展示場)を
作ることを条件としている。
2015 年 3 月期におけるセグメント売上高は 7,321 百万円、売上高構成比率は
55.7%で、前期の 60.7%から 5.0pt 減少した。
BP社部門
経営不振となった販社から引き継ぐ形で同社が経営しており、札幌、岐阜の拠点
(展示場)の運営業務と、直販部門同様、顧客と直接に工事元請契約を結ぶことから
施工も行う。
2015 年 3 月期におけるセグメント売上高は 1,709 百万円、売上高構成比率は
14.2%で、前期の 13.8%から 0.4pt 上昇した。2013 年度に初めてセグメント利益が単
独で黒字となり、2014 年度も 59 百万円の利益を確保した。
北米部門
BFM 社が行う北米事業。ログハウスの構造躯体であるログシェル等の製造・販売を
行っているが、その売上の 90%以上が RCC 社向けである。
RCC 社は 2014 年度第 2 四半期決算発表において、同社株式の全てをカナダのロ
グハウス製造・販売持株会社である AAA CLH HOLDINGS LTD.(以下「AAA 社」)に
売却する旨の発表を行ったが、AAA 社が資金調達に時間を要していることから、2015
年 2 月に、同月中旬に予定していた株式譲渡実行日を同年 3 月末日まで延長するこ
とを発表し、さらに、3 月 13 日に本株式譲渡を一旦中止する旨を発表した。
2015 年 3 月期におけるセグメント売上高は 623 百万円、売上高構成比率は 0.6%
で前期の 0.6%から変動はない。
展示場
拠点(展示場)は全て単独展示場であり、いわゆる合同の住宅展示場、住宅公園な
どに「BESS」の家はない。
2015 年 3 月末時点での拠点(展示場)数は 43。内訳は、直販部門が前述の
「BESS スクエア」、「BESS 藤沢展示場」の 2 つ、BP 社が同じく前述の札幌、岐阜の 2
つで、残りの 39 が販社の拠点である。2014 年度に増加したのは、何れも販社拠点の
4 ヶ所で、所在地は香川県高松市、千葉県柏市、新潟県新潟市、静岡県吉田町であ
る。また、43 の拠点に展示されているログハウス・自然派住宅は 186 棟で1拠点あたり
の平均棟数は 4.3 となる。
この拠点(展示場)数 43 という数字が大きいか小さいかの判断についてであるが、
SC 社としては同業内で占める売上高比率との相対的な比較で十分に大きいものと考
えている。
SC 社の調べによると全国の合同住宅展示場数は 2014 年 4 月末時点で全国に
401 か所(うち全国住宅展示場協議会加盟は 216 か所)存在するが、そのうち 37 か
所は棟数が 1 棟であり、実際に合同展示場と認識できるのは 364 か所である。
「BESS」の 43 拠点という数字はその 12%程度に相当する。また都道府県のカバー率
であるが、合同展示場は 47 都道府県のうち 45 都道府県に存在するが、RCC 社の展
示場も既に 33 都道府県をカバーしている。因みに、同じく 2014 年 4 月末時点での合
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同展示場への住宅販売大手 3 社の出展棟数は、SC 社の集計によると、大和ハウス
223 棟(うち、木造 14 棟)、積水ハウス 287 棟(うち、木造 127 棟)、住友林業 296 棟
(全て木造)となっており、RCC 社の 186 棟という数字の大きさが分かる。
また、2013 年度にそれまでの小規模販社を意味した特約店制度を廃止し、特約店
についても拠点における棟数増加などを条件に販社への格上げを推進している。これ
は、販社の営業体質強化、効率強化を意図したものである。
<展示場拠点マップ>
藤沢展示場
総合展示場「BESS」スクエア
保証制度
同社は法律や他の住宅販売会社に先駆けて、完成保証、受け渡し後の瑕疵保証と
いう保証制度の充実を図ってきた歴史がある。
保証制度の沿革
1991 年 RCC 社が責任施工を行った住宅に対して、構造躯体の「10 年保証」を開始
1996 年 RCC 社及び販社が責任施工を行った住宅に対して、構造躯体の「20 年保証」を開始
1999 年 ビッグフット共済会を設け「(建物の完成に関する)完成保証」を開始
2002 年 RCC 社及び販社が責任施工を行った住宅に対して、構造躯体の「30 年保証」を開始
同年
「完成保証」と「30 年保証」を併せた「ビッグフット安心総合保証」を開始、国土交通省認定性能評価機関に
よる工事検査を全責任施工住宅に適用
同年 「ビッグフット安心総合保証」が第 9 回日本不動産学会業績賞を受賞
2008 年 構造躯体の「30 年保証」を 50 年に延長
2012 年 住宅フランチャイズでは初めてエスクロー制度(注)を導入
出所:同社資料
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(注) 新築住宅の売り主に 10 年間の瑕疵担保責任を負うことを義務づけた所謂「品
確法」の施行は 2000 年、この確実な履行のために、売り主に対して保険加入や
供託の義務を負うことを定めた「履行確保法」の施行は 2009 年であり、それよりも
前から同社が保証制度の充実に真摯に取組んできたことが分かる。また、エスク
ロー制度とは顧客が請負契約代金を同社ではなく、中立的な第三者機関が管理
する信託銀行などの口座に預託し、工事の進捗状況に応じて第三者機関が口座
から施工業者に支払う制度であり、欧米では一般的なものを日本に適用したもの
である。
営業姿勢
RCC 社の営業姿勢は、合同住宅展示場にモデルハウスを構える同業他社のアプ
ローチと全く異なる。単独展示場に足を運んだ家族が、その家の中での暮らし、生活と
いうものを十分にイメージして「ここで暮らしたい」と思い、営業員に相談したところからそ
れは始まる。同社の 2014 年度の契約客調査によると、「BESS」契約者の 42%が同
社の展示場を訪れた時点では「(住宅購入の)計画はあるがかなり先」と考えていたとい
う。また、「計画はないが関心あり」も 18%、つまり、およそ 6 割の契約者は具体的な購
入計画のないままに“展示場に遊びに来た人”であったということになる。
また、同社の契約に至るリードタイムはとても長い。同じく 2014 年度の契約客調査に
よると、初めて展示場を訪れてから成約までに至るリードタイムが 2 年以上かかった契
約者が 21%、1 年超~2 年以内の契約者が 14%いたという。「初めて展示場を訪れて
から 1 ヶ月が勝負」と考えている他社では考えられないこのリードタイムの長さを RCC 社
自身は何も問題としていない。同社の別の調査によると、初めて単独展示場を訪れた
人に対して商談を行うよりも、2 回目以降に訪れた人に対して行った方が契約率で 2.5
倍も高かったという。「感性マーケティング」、「農耕型営業」と同社が掲げる営業スタイ
ルの有効性がこの数字に表れている。また、このことが単独展示場に拘る理由であると
も考えられる。
ログハウスなど BESS の自然派個性住宅を木々や草花が取り囲む展示場は、テー
マパークのような趣(おもむき)がある。その中に建つ BESS の提唱する家を好きになる
かどうかという「感性」の判断が全てであると同社は考えている。
合同展示場とはつまるところ、「住宅の比較をしに行く場所」である。そのため、営業
員はその機能性、細部の他社との差別化をアピールすることに注力する。しかし、RCC
社は他社との相対的な比較や細部の機能説明というアプローチを行うことは同社の営
業スタイルではないということを、教育を通じて営業員に教えている。単独展示場は比
較をする場所ではない。そこに流れる全体的な雰囲気・時間を訪問者が好きになれる
か、この家で暮らしを楽しむイメージが湧いてくるかが最も重要なことになる。実際に
2014 年度の同社の調査によると約 6 割の契約者が、「(住宅購入に際して)他社と比
較しなかった」と答えている。
この営業スタイルは結果的に営業員一人あたりの高い生産性に結びついている。同
社の資料に掲載されている住宅産業研究所の調査によると、2013 年度の住宅販売
メーカーの営業 1 人あたりの平均契約棟数は 5.0 棟となっているが、「BESS」の数字は
2013 年度が 7.0 棟、2014 年度が 6.2 棟と、それを上回るものとなっている。
ビジネス・フレームワーク
ここに、①単独の拠点(展示場)を増やし、新規来場者数を増加させる→②そこで
「農耕型営業」を行う→③RCC 社が提唱する「機能主義ではなく、生活を楽しむという
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価値観」に共感する人間が新規来場者数の中に一定割合で存在し、契約に結びつく、
という非常にシンプルなビジネス・モデルが確立していることが窺える。事実、同社の資
料によると 2013 年度では約 6 割、2014 年度では約 5 割の契約者がメンテナンスに手
間のかかる薪ストーブをオプションで購入しているという。これは同社が提唱するスタイ
ルに共感した結果が契約に結びついていることを示す好例と思われる。また、拠点に展
示されているログハウス、住宅に契約者が非常に満足していることが、2013 年度、
2014 年度ともに、カタログに掲載されている標準モデルの採用率が 99%と高いことから
分かる。
BESS の家は、商品ラインナップそれぞれが土地の広さに応じられるよう、3~5 種類
のバリエーションがあるが、それらの標準価格がカタログに記されている。他のハウスメー
カーにおいても「規格商品」として土地の間取りに合わせたさまざまなバリュエーションを
坪当たりの価格別に分けてカタログに載せているところが多い。しかし、標準仕様からフ
ローリング、壁紙、キッチンや浴室回りを変更することにより、結局は予定していた金額
を大きく超過してしまう場合が多いが、同社の商品は、商品カタログのラインナップの中
からユーザーに選んでもらう規格商品が中心(「ワンダーデバイス」についてはデバイス
の組み合わせが可能)であり、「標準モデル」の採用により、変更の余地があまりない。
そのため、予定していた金額と最終の出来上がり価格に差が生じないという価格の透明
性が非常に高いカタログとなっている。この標準仕様の採用率が高いということは、展示
場のログハウス、住宅に対する満足度が高いことの表れである。
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-第2部- 前年度決算と経営環境
前年度決算 ~概況~
RCC 社が発表した前期(2015 年 3 月期)の決算は、売上高が前期比△146 百万
円(△1.2%)の 11,941 百万円、営業利益が同△220 百万円(△24.5%)の 677 百万
円、経常利益が同△227 百万円(△24.9%)の 681 百万円、最終利益が同△154 百
万円(△26.8%)の 422 百万円であった。
前々期(2014 年 3 月期)は売上高で 2 期連続の過去最高を記録し、営業利益・
経常利益も 3 期連続、また、最終利益についても 2 期連続で過去最高を更新したが、
前期は前々期に示現した消費増税前の駆け込み需要の反動が大きく表れた数字と
なった。
しかし、2014 年 12 月、2015 年 3 月と月間契約戸数が過去最高を更新したことか
ら、消費増税前の駆け込み需要、及びその反動による落ち込みの影響は一巡したと考
えられ、第 3 四半期以降の経営指標は、今後に期待を抱かせるものであった。
同社の決算数値を検証する前に、「消費増税と業界動向」、「住宅関連マクロ指標」
及び「住宅販売会社の売上高」について述べることとする。
消費増税と業界動向
住宅販売会社に大きな影響を与えた消費税を巡る動きをまとめると、2012 年 8 月
に当時の民主党野田政権が早期の衆議院解散・総選挙を前提に自民党・公明党との
合意にこぎつけたことにより国会において可決され、その後、自民党安倍首相が 2013
年 10 月 1 日に 2014 年 4 月からの税率引き上げを正式に表明した。
この間の住宅販売会社の動向としては、野田政権での法案通過後、緩やかに受注
件数の増加が始まり、安倍政権下での 2013 年 4 月以降にさらに増加ペースが高まり、
大手社の受注金額は対前年同月比で+20%程度にまで増加した水準となった。その
後、増税を安倍首相が決断したとマスコミにおいて盛んに報道されるようになった 2013
年 8 月、9 月に駆込み需要は一気に高まり、各社は大きく受注金額を増加させたが、
10 月以降はその反動で受注金額が一転して減少し、各社ともに 2013 年 10 月-
2014 年 3 月(2013 会計年度下期)は大きく受注・契約高が減少した。
また、国民に信を問う形で 2014 年末に安倍政権が衆院を解散し、行われた選挙で
与党が圧勝した結果、2015 年度税制改正関連法案が 2015 年 3 月 31 日に参院本
会議でも可決され、2017 年 4 月から消費税率が 10%へと再度引き上げられることが
確定した。
住宅販売を巡るマクロ指
標の推移
国土交通省が発表している 2014 年度の新設住宅着工件数は 882 千戸となり、前
年度の 987 千戸から減少し、その減少率も 10.6%と大きなものとなった。因みに 2013
年度の対前年度増加率も 10.6%であったことを考えると、2014 年度は 2012 年度より
も着工件数が少なかったことになる。単月着工件数も 2014 年 3 月から 2015 年 2 月
までのちょうど 1 年間にわたり対前年同月比の数字を下回る状態が続き、2015 年 3 月
に同数値は+0.7%と 13 ヶ月ぶりにプラスに転じた。
新設住宅着工件数は、実は月による季節性が高い。そのため、野田政権で消費税
率引き上げが閣議決定された 2012 年 8 月以前の月別の 5 年平均戸数を算出し、そ
の後の新設住宅着工件数が月別 5 年平均をどのくらい上回るペースであったのかをグ
ラフにしたのが図表 1 である
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図表 1:
消費増税閣議決定後の月別着工新設住宅件数増率(%)
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
-5.0
15年03月
15年01月
14年11月
14年09月
14年07月
14年05月
14年03月
14年01月
13年11月
13年09月
13年07月
13年05月
13年03月
13年01月
12年11月
12年09月
-10.0
(国土交通省「住宅着工統計」より SC 社が加工・作成)
(住宅着工統計_新設5グラフ)
これにより住宅販売会社が 2014 年度、非常に厳しい経営環境にあったことが分かる
が、RCC 社の経営環境については、同省が発表する月別着工新設住宅(持家・木
造・総計)(戸数)(以下、「新設木造戸建持家」)の方がより的確に反映している。
この、新設木造戸建持家戸数は、2014 年度 235 千戸と前年度の 298 千戸から
63 千戸も減少し、減少率は 21.3%と新設住宅着工件数の減少率 10.6%よりも大きな
ものとなった。月別の対前年同月比も 2015 年 3 月現在で 13 ヶ月連続のマイナスと
なっている。この着工件数の推移を表したものが図表 2 であり、
図表 2:
新設木造戸建持家戸数 (戸)
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
07年03月
07年06月
07年09月
07年12月
08年03月
08年06月
08年09月
08年12月
09年03月
09年06月
09年09月
09年12月
10年03月
10年06月
10年09月
10年12月
11年03月
11年06月
11年09月
11年12月
12年03月
12年06月
12年09月
12年12月
13年03月
13年06月
13年09月
13年12月
14年03月
14年06月
14年09月
14年12月
15年03月
5,000
(国土交通省「住宅着工統計」:「着工新設住宅:利用関係別、構造別」)
これを、新設住宅着工件数と同じく、野田政権で消費税率引き上げが閣議決定さ
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れた 2012 年 8 月以前の月別の 5 年平均との比較を行ったグラフが図表 3 となる。
図表 3:
消費増税閣議決定後の月別新設木造戸建持家戸数 増率(%)
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
-10.0
15年03月
15年01月
14年11月
14年09月
14年07月
14年05月
14年03月
14年01月
13年11月
13年09月
13年07月
13年05月
13年03月
13年01月
12年11月
12年09月
-20.0
(国土交通省「住宅着工統計」より SC 社が加工・作成)
これにより、2014 年度の RCC 社を巡るマクロ環境は同業の住宅販売会社よりも厳し
かったことが窺える。
この 2 つの指標と同社の契約高、売上高、2008 年度以降の決算を発表している同
業 24 社の売上高をまとめたのが図表 4 であるが、同社の 2014 年度の契約高の落ち
込みは、新設戸建持家戸数全体の落ち込みよりは軽微であり、全体の新設住宅着工
並みであったことが分かる。
図表 4:
対前年度増減率(%)
新設住宅 うち木造
着工数
戸建持家
2009A/C
-25.4
-7.6
×
RCC社
契約高
4.7
RCC社 同業24社
売上高
売上高
-7.3
-8.3
2010A/C
5.6
8.0
3.4
21.1
5.7
2011A/C
2.7
-1.2
26.1
6.2
5.7
2012A/C
6.2
4.2
11.1
8.3
6.0
2013A/C
10.6
13.5
11.9
18.2
19.0
2014A/C
-10.6
-21.3
-10.2
-1.2
3.3
11
2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
住宅販売会社の売上高
CORPORATE RESEARCH
ここで、住宅販売会社の売上高について説明する必要がある。住宅会社の契約高
及び契約残高、売上高の関係を示すと以下のようになる。
図表 5:
契約と売上の関係(イメージ)
前期末契約残高
+
今期契約高
-
今期販売額
=
今期末契約残高
今期売上高
つまり、今期の売上高とは、前期末に契約残高として残った物件と今期契約を行っ
た物件のうち、今期に住宅を完成させて販売された部分を表している。そのため、他業
種との比較を行う際には注意が必要である。
前年度決算 ~概況~
同社の直近 4 期と今期の決算見込みをまとめたのが図表 6 である。
図表 6:
業績推移
2011A/C
実績
9,446
2012A/C
実績
10,230
2013A/C
実績
12,087
2014A/C
実績
11,941
2015A/C
見込み
13,300
営業利益
経常利益
最終利益
662
646
298
688
676
396
897
908
576
677
681
422
450
430
260
営業利益率
経常利益率
最終利益率
7.0
6.8
3.2
6.7
6.6
3.9
7.4
7.5
4.8
5.7
5.7
3.5
3.4
3.2
2.0
売上高
(単位:百万円、%)
また、同社の売上高と営業利益の推移を 2003 年度に遡ってグラフ化したものが図
表 7 である。
×
12
2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
CORPORATE RESEARCH
図表 7:
年度別売上高、営業利益推移 (単位:百万円)
13,000
1,000
12,000
900
11,000
800
700
10,000
600
9,000
500
8,000
400
7,000
300
売上高(左目盛)
2015A/C
2014A/C
2013A/C
2012A/C
2011A/C
2010A/C
2009A/C
2008A/C
2007A/C
2006A/C
0
2005A/C
100
4,000
2004A/C
200
5,000
2003A/C
6,000
営業利益(右目盛)
このグラフからも、前年度(2014 年度)は、売上高の増加に営業利益の増加がリンク
していた 2010 年度から 2013 年度までと様相が違うことが視覚的に分かるが、売上高
営業利益率の推移を同社、同業他社、東証 33 業種から金融 4 業種を除いた 29 業
種合計で表すと図表 8 となる。
数字は、同業他社:5.80%、29 業種:5.48%、RCC 社:5.67%であり、2014 年度に
同社は 6 期ぶりに利益率が同業他社を下回ったことになる。
図表 8:
年度別営業利益率推移 (単位:%)
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
同業他社
RCC
2014A/C
2013A/C
2012A/C
2011A/C
2010A/C
2009A/C
2008A/C
0.0
29業種
(上場会社決算発表数値を SC 社加工)
営業利益の対 2013 年度
比較
×
そのため 2014 年度においては対前期比で営業利益が 897 百万円から 677 百万円
と 220 百万円減少したことの要因分析が必要となる。
まずは販売費及び一般管理費についてであるが、2014 年度に本社を移転した影響
と直販部門の広告宣伝・販売促進費の合計などにより、費用が対前期比で 62 百万円
増加している。
しかし、肝要なのはこの部分を除いた 158 百万円の減少要因分析である。なぜなら
ば、この部分が、契約、販売に関わる同社の根幹に関わる部分だからである。
13
2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
CORPORATE RESEARCH
まずは、昨年度のレポートにおいて 80 百万円から 100 百万円程度の減益懸念を示
した円安による為替要因であるが、結果的に、ユーロ、米ドルについては円安による減
益が生じたものの、カナダドルの予約が奏功して同通貨は対前期比で増益となり、トータ
ルでも 20 百万円程度の増益となった模様である。
同社は、「直販部門」、「販社部門」、「BP 社」の別に、「売上高の増減が営業利益
にもたらした効果」と「利益率の変動による効果」、及びその「合計」の管理を行ってい
る。為替の影響については、この「利益率の変動による効果」に内包されると考えられ
る。
ここで、図表 5 で示したフローによって同社の営業利益を説明すると、「直販部門」、
「BP 社」は実際に工事を行うため、「今期販売額」が営業利益に影響を及ぼす。工事
にあたる職方の不足、その人件費の上昇は特に「直販部門」の地盤である東京圏でそ
の傾向が強いものの、好調な売上高に支えられる形で、「直販部門」の「合計」は 62 百
万円程度の増益、同じく「BP 社」も 30 百万円程度の増益となっている。
となると、問題は「販社部門」である。「販社部門」の営業利益要因は、図表 5 の「今
期契約(高)」の段階でまずはブランドロイヤルティが発生し、RCC 社の利益となる。ま
た、実際の「販売」段階で、同社から住宅のキットを購入することから同じく同社の利益
となる。つまり、タイムラグを置いて二段階で利益が発生するのであるが、契約が落ち込
んだ場合は、ブランドロイヤルティとその後のキット販売の両方が落ち込むことになる。
2014 年度の「販社部門」はこのブランドロイヤルティが対前期比で 70 百万円落ち込ん
でおり、キット販売も 210 百万円落ち込んでいる。その他要因も含めた「販社部門」の
「合計」は前期比 227 百万円の減益となっていることが最大にして唯一の同社減益要
因として鮮明となる。
×
14
2015 年 7 月 27 日
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CORPORATE RESEARCH
-第3部- 2015 年度決算見込みと幾つかの考察
2015 年度決算見込みと営
業員施策について
第 2 部において同社の販社部門の不振が 2014 年度の営業利益が低迷した理由
であると述べたが、同社は図表 6 に示したように、2015 年度の決算見込みについて、
売上高を 13,300 百万円(対前期 1,359 百万円の増収)とした一方で、営業利益を
450 百万円(対前期 227 百万円の減益)、経常利益を同じく 430 百万円(対前期
251 百万円の減益)、最終利益を 260 百万円(対前期 162 百万円の減益)のそれぞ
れ減益見込みとした。
この減益見込みの理由として、同社は短信において、「積極的に成長のための諸施
策への費用投下」を謳っている。そして、その具体的な施策として、「新販社の開拓に
よる拠点拡大の積極推進」、「既存拠点における移転や演出強化を含めた展示場の
魅力向上のための指導・支援」、「営業員の採用(低迷)と定着率の低さという課題を
本部主導で販社を巻き込み、質重視の採用活動を活性化させる」と挙げているが、こ
のなかで注目すべきは、最後の「営業員の採用(低迷)と定着率の低さという課題を本
部主導で販社を巻き込み、質重視の採用活動を活性化させる」であろう。
同社は昨年、2013 年度決算発表において、同年度下期の販社部門の不振を重
大な問題と考え、営業員の本社採用や販社のバックアップを目的とした総額 500 百
万円もの戦略的費用を投じることを明言し、2014 年度の決算見込みを微増収、大幅
な減益とした経緯がある。
結果的に 2014 年度の決算は利益項目(期初見込み→実値)において、営業利
益:300 百万円→677 百万円、経常利益:300 百万円→681 百万円、最終利益:
180 百万円→422 百万円と大きく見込みよりも増益となったものの、営業員の採用が
計画通りに進まなかったことにより戦略的費用を投下できなかったことがこの背景にあ
る。
同社の最大の特徴は FC である販社制度にある。この販社部門を持つ最大のメリッ
トは、同社はキット販売により収益を受けるものの、工事に関わる部分のリスクをとらな
いということである。また、前述のように、販社部門の契約は、ブランドロイヤルティとこの
キット販売という二段階での利益を同社にもたらす。この販社制度そのものが、これま
での同社の高い利益率の源泉であることを昨年のレポートにおいても筆者は指摘した。
そのため、拠点(展示場)を訪れる新規来場者数に対する契約率を高位に保つこと
と、拠点数を増やして新規来場者を増加させることが、これからも同社が成長していく
ための重要なドライバーであることは確かであるが、その新規(及び再度の)来場者に
対応する営業員の質・量の不足という事態は看過できないところまできていると同社自
身も認識している。
その営業員数であるが、2013 年度末 154 名、2014 年第 2 四半期終了時点では
157 名であったものが、2014 年度末には 140 名と、年度を通じて 14 名減、2013 年
度下期だけで見れば 17 名減と厳しい状況となっている。2014 年度の期初見込みにお
いて、同社は年度で 100 名近い営業員の増加を目標として掲げた。筆者はその数字
の大きさから固定費用につながる可能性のある急激な営業員数の増加に対してはや
×
15
2015 年 7 月 27 日
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CORPORATE RESEARCH
や否定的な見方を採っていたが、年度で減員となったことについては大きな問題であ
ると考えている。
このことについて同社は当然大きな問題意識を持ち、2014 年度の期中において本
社主導の営業員獲得に注力することから、販社における営業員減少を食い止めること
に方向転換し、2015 年 4 月より営業員に採用・教育に関する専門部署としてH&A推
進室を新設すること、BESS の統一基準を明示してやる気のある営業員の定着を目
指す「ホームナビゲーター(営業員)資格制度」を策定することにより、資格制度、新研
修カリキュラムの立ち上げを行った。
これにより、今後は、販社における営業員の定着率を高めるとともに、本部主導で営
業員の新規獲得を行うという戦略の並存を進めることとなった。
しかし、厳しい言い方ではあるが、まずは、昨年度の減員及び新規の営業員を予定
とおりに採用できなかったことの原因の精査を行うことが必要であると思われる。
現在、日本は雇用環境の改善から需給が逼迫し、各社人材確保に躍起になってい
る。東京圏の外食産業やコンビニエンスストアが日本人の若年層の取り込みに窮する
状況となって 3 年以上が経過している。人材を雇用できないことがそのまま事業の衰
退を意味する業種として、その最たるものが「人材派遣業・労働紹介業」であるが、同
業種において 1 人雇用するために要する広告・宣伝費等を含む採用コストが、3 年前
の 12 万円台が現在は 16 万円台にまで上昇している。また、人材の流動化も激しい。
より高給で自己実現が可能な職場へと人材が流出している。
人材確保という日本企業が現在共通して抱えている問題を克服するためには、入り
口の広告掲載文章に応募者が不安を抱くような文言が無かったかのチェック、本社・
東京主導ではなく、営業員が必要な販社が存在する地方都市において、本社主催の
説明会・採用活動を行う有効性の議論など、細部に亘る検証が必要であろう。
そして、営業員採用に関する根本的な問題は、同社と販社は強固な繋がりがあって
も、資本の違う他社であるという本質的な部分である。営業員の雇用は、現状では販
社の固定費の増加となる。営業員、及び販社に対する販売インセンティブの在り方も
含めて、同社と販社が一体となって問題意識を共有し、それを打破する施策を細やか
に作り上げる努力が必要である。今後の決算発表においても、この営業員の増減状況
は最も注目すべき項目である。
×
16
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アールシーコア[7837]
展示場新規来場者数と契
約高
CORPORATE RESEARCH
ここまで営業員数に拘る理由は、展示場新規来場件数の伸びが契約高の伸びにつ
ながりにくくなっているという 2013 年度下期以降の課題が 2014 年度も継続したことに
ある。図表 9 は年度別の展示場新規来場件数と契約高のグラフであるが、2014 年度
は展示場新規来場件数が 29,036 件と、前期の 26,567 件から 9.3%伸びたものの、
契約高は前期に消費増税前の駆け込み需要が生じた影響もあるが、10,489 百万円
と前期の 11,676 百万円から 10.2%減少している。
図表 9:
展示場新規来場件数と契約高の推移
14,000
33,000
30,000
27,000
24,000
21,000
18,000
15,000
12,000
9,000
6,000
3,000
0
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
契約高(左:百万円)
新規来場件数(右:件)
(同社資料よりSC社作成)
また、この 2003 年度から 2014 年度までの 12 期における両数値を分布図にして近
似線を求めたものが図表 10 であるが、これにより 2014 年度は大きくそれまでの傾向よ
りも低い契約率となったことが分かる。
図表 10:
14,000
y = 0.3101x + 2593.7
R² = 0.822
12,000
10,000
8,000
2014年度
6,000
4,000
横軸 : 展示場新規来場件数(件)
縦軸 : 契約高(百万円)
2,000
0
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
35,000
(同社資料よりSC社作成)
また、この X の係数である 0.3101 という数字は、2013 年度に計測した 0.3967 より
も 20%以上低く、過去からのヒストリカル・データを押し下げたことになる。ここからも、展
示場を訪れる人が増えても、それに応える、受け皿となる営業員が数的に足りていな
×
17
2015 年 7 月 27 日
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CORPORATE RESEARCH
いのではという疑問が湧く。
契約残高
図表 11 は年度末の契約残高のグラフである。2014 年度は前期末に比べて 377
百万円減少し、6,355 百万円となった。この数字が大きいということは、図表 5 で示した
ように翌期の売上高の元となる部分が大きいことを示すとともに、一方で、今契約して
もその完成までに時間がかかることを意味している。2013 年度末の段階でのヒアリング
で、この引渡しにかかる期間として、直販で 9 ヶ月程度、販社で 6 ヶ月程度と同社は回
答しているが、2014 年度末段階ではそれぞれ約 1 ヶ月程度はその期間が短縮されて
いることが期待される。
図表 11:
年度末契約残高 (単位:百万円)
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
2007A/C 2008A/C 2009A/C 2010A/C 2011A/C 2012A/C 2013A/C 2014A/C
(同社資料よりSC社作成)
しかし、その引き渡しまでにかかる期間が同業他社に比べて相対的に長いということ
は確かである。それは主に同社の住宅が木材を使用しており、プレカット化を進めては
いるが、どうしても現場で行わなくてはならない躯体に関わる作業が発生するという部
分が大きい。
図表 12 は、国土交通省が発表している建設技能労働者過不足率であるが、この
グラフから全国的に見ると、2014 年になる頃から急激にその不足感が減少したことが
分かるが、それでも依然として不足の状態が続いている。
また、同社が施工部分を請け負う、直販部門、BP 社部門のうち、直販部門は東京
圏の施工を行うが、この建設技能労働者の不足感は東京圏で強い。これは、長期に
亘り安定的な雇用が約束される五輪関係、公共投資に職方が流れている影響が大き
く、直販部門の職方不足、同費用の高騰はまだ暫く構造的な要因として同社は認識
する必要があると思われる。
×
18
2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
CORPORATE RESEARCH
図表 12:
建設技能労働者過不足率(季節調整済:6職種計)
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
08年01月
08年04月
08年07月
08年10月
09年01月
09年04月
09年07月
09年10月
10年01月
10年04月
10年07月
10年10月
11年01月
11年04月
11年07月
11年10月
12年01月
12年04月
12年07月
12年10月
13年01月
13年04月
13年07月
13年10月
14年01月
14年04月
14年07月
14年10月
15年01月
-4.0
中期経営計画
図表 6 は、2011 年度以降の同社の決算短信発表ベースに準じた契約高及び契約
高とは関係が無いが、半期ベースの営業利益率、年度の営業利益率を再掲したもの
である。
同社は 2012 年に 2017 年 3 月までの中期 5 カ年計画「“異端でメジャー”ステージ
アップ 5 ヵ年計画」を発表し、今期はその 4 期目となる。
具体的な経営指標の最終目標として、当初は連結売上高 180 億円、営業利益率
8%、ROE18%、その計画遂行の為の体制(受け皿)として、展示場数 50 拠点、営業
員 250 名、前提条件として展示場新規来場者数 3 万 3 千件、契約棟数 1,900 棟を
掲げていたが、2014 年度の決算を受けて、営業員数を 250 名から 220 名に、契約棟
数を 1,900 棟から 1,600 棟にそれぞれ引き下げたが、その他の項目については修正を
行っていない。
筆者は昨年度より、この中期 5 カ年計画に同社は拘泥すべきではないという立場
を採ってきた。それは、消費増税という計画策定時にはなかった要因が生じたこと、そ
の駆け込み需要により、本来は何れかの時期に同社の展示場を訪れ、BESS のファン
になったかもしれない潜在顧客の一部が「増税前に住宅を取得する」という目的のため
に総合展示場での比較により住宅を取得してしまったことによる「潜在需要の一部刈り
取りの発生」を危惧したものであった。
現在、筆者は販社の営業員態勢の再整備が急務であるという同社の経営戦略に
全く異論がない。この施策が実際に奏功するかは、消費税の再増税の駆け込みとその
落ち込みを考慮すると、2019 年 3 月期以降のことと考えている。第 1 章で述べた、同
社が築いてきた、シンプルなビジネス・モデル(①単独の拠点(展示場)を増やし、新規
来場者数を増加させる→②そこで「農耕型営業」を行う→③RCC 社が提唱する「機能
主義ではなく、生活を楽しむという価値観」に共感する人間が新規来場者数の中に一
定割合で存在し、契約に結びつく)を維持したうえで、これまでの利益率の高さを支え
てきた販社との強固な営業の連携態勢を再構築し、さらに強いものとすることが同社に
とって何よりも肝要であり、現段階で中期経営計画の達成について蓋然性を含めて述
×
19
2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
CORPORATE RESEARCH
べることに何ら意味を感じない。
Ω(オメガ)戦略室とその
他
同社は法人や公共団体等、各方面との新規のコラボレーション事業の企画・推進の
部署としてΩ戦略室を立ち上げ、2015 年 10 月より本格的にさまざまな分野との事業
の可能性を探ることを発表した。既に多くの企業や地方自治体から、BESS の持つ、
木の柔らかな風合いを活かせないかという引き合いがあり、今後、同戦略室の事業展
開が新たな同社の成長ドライバーを見つける可能性もあり、その進捗については常に
感度高く見ていきたいと思う。
×
20
2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
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会社発表決算データに基づくスプリングキャピタル社試算経営指標等
決算期
2011/03
2012/03
2013/03
(金額単位:百万円)
2014/03
2015/03
情報元
有報
有報
有報
有報
有報
連結・単独
連結
連結
連結
連結
連結
流動資産
3,637
4,711
3,845
4,878
4,947
固定資産
4,189
4,181
4,666
5,134
5,000
7,827
8,893
8,511
10,013
9,948
流動負債
2,975
3,967
3,090
3,672
3,226
固定負債
2,005
1,892
1,894
2,328
2,457
4,980
5,860
4,985
6,000
5,683
自己資本
2,846
3,028
3,507
3,995
4,253
(資本剰余金)
(618)
(618)
(618)
(656)
(682)
(利益剰余金)
(1,628)
(1,860)
(2,148)
(2,600)
(2,830)
2,847
3,033
3,626
4,013
4,265
8,898
9,446
10,230
12,087
11,941
■貸借対照表
資産の部
繰延資産
資産合計
負債の部
負債合計
純資産の部
純資産合計
■損益計算書
売上高
(販売費及び一般管理費)
(2,457)
(2,576)
(2,849)
(3,236)
(3,298)
営業利益
573
662
688
897
677
経常利益
576
646
676
908
681
当期純利益
389
298
396
576
422
852
951
-519
799
490
投資活動によるキャッシュ・フロー
-85
-178
-555
-251
-310
財務活動によるキャッシュ・フロー
-153
309
-174
168
-116
(2,522)
(3,582)
(2,371)
(3,096)
(3,183)
(735)
(802)
(855)
(1,112)
(929)
流動比率(%)
122.25
118.75
124.43
132.84
153.35
当座比率(%)
94.66
100.50
97.12
109.37
129.76
固定比率(%)
147.19
138.08
133.05
128.51
117.56
36.36
34.05
41.21
39.90
42.75
174.98
193.53
142.14
150.19
133.62
デットエクイティレシオ(%)
72.21
80.94
68.43
66.06
63.11
インタレストカバレッジレシオ(倍)
12.57
16.73
16.57
23.18
16.31
財務レバレッジ(倍)
2.75
2.94
2.43
2.51
2.34
売上高営業利益率
6.44
7.01
6.73
7.42
5.67
売上高経常利益率
6.47
6.84
6.61
7.51
5.70
売上高当期純利益率
4.37
3.15
3.87
4.77
3.53
ROE
14.11
10.15
12.12
15.36
10.23
ROA
7.43
8.00
8.00
9.76
6.86
■キャッシュ・フロー計算書
営業活動によるキャッシュ・フロー
(現金及び現金同等物の期末残高)
(EBITDA)
自己資本比率(%)
負債比率(%)
×
21
2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
会社情報
CORPORATE RESEARCH
2015 年 7 月 10 日 現在
証券コード
7837
社名
株式会社アールシーコア
本社事務所所在地
東京都渋谷区神泉町22-2 神泉風來ビル
主要取引市場
東証 JASDAQ スタンダード
東証業種区分
その他製品
代表取締役社長
二木 浩三
売買単位
100 株
資本金
624 百万円
最低売買代金
104,600 円
時価総額
4,611 百万円
上場日
2005/02/23
売買代金 25 日平均
4,161 千円
登記上設立日
1985/08/26
(2015 年 3 月末時価総額)
4,487 百万円
決算月日
3 月末日
(2014 年度平均売買代金)
1,830 千円
浮動株比率
20.0%
2014 年度末従業員数
195 人
大株主所有割合
58.7%
バリュエーション及び市場データ
終値
1,046 円
年初来高値
1,070 円
2014/01/23
予想PER
17.73倍
年初来安値
950円
2014/10/22
実績PER
10.93 倍
6 ヶ月騰落率
6.9%
(TOPIX)
14.7%
実績PBR
1.08倍
12 ヶ月騰落率
3.8%
(TOPIX)
25.8%
実績配当利回り
4.02%
12 ヶ月ヒストリカル・ボラティリティ
23.2%
(TOPIX)
16.1%
EV/EBITDA
4.43倍
予想PSR
0.35倍
実績PSR
0.39倍
×
22
2015 年 7 月 27 日
アールシーコア[7837]
CORPORATE RESEARCH
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