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6・7号機における低圧タービン動翼の 損傷事象について

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6・7号機における低圧タービン動翼の 損傷事象について
資料No.2
6・7号機における低圧タービン動翼の
損傷事象について
平成20年11月19日
東京電力株式会社
無断複製・転載禁止 東京電力株式会社
報告・審議の経過
z 平成20年7月31日 損傷事象について点検結果をお知らせ
z 平成20年8月4日 新潟県原子力発電所の安全管理に関する技 術委員会に、発生状況の報告
z 平成20年8月25日、9月8日、12日 専門家による意見聴取会
z 平成20年9月19日 原子力安全・保安院へ原因と対策について報告
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1
蒸気タービン概要
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2
◆蒸気タービン全体図
低圧タービン(C)
:蒸気の流れ
発電機
低圧タービン(B)
低圧タービン(A)
高圧タービン
1356MWe 蒸気タービン
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3
◆低圧タービン抽気概要図
高圧タービンより
第16段
第15段
第14段
組合せ中間弁
(CIV)
抽気ライン
抽気ライン
抽気ライン
抽気ライン
原子炉へ
P
P
給水ポンプ
高圧復水ポンプ
低圧第3
給水加熱器
低圧第4
給水加熱器
低圧第5
給水加熱器
P
復水器
低圧復水ポンプ
低圧第6
給水加熱器
低圧ドレンタンク
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4
◆タービン設備仕様
原子炉熱出力
電気出力
熱効率
タービン型式
柏崎刈羽6,7号機
柏崎刈羽3,4号機
3,926MWt
3,293MWt
約1,356MWe
約1,100MWe
約34.5%
約33.4%
くし型6流排気復水式
(再熱式)
くし形6流排気復水式
最終段翼長さ
52インチ
41インチ
回転数
1,500rpm
1,500rpm
9段
7段
8段
9段
約49.6m
約47.7m
タービン段落数
高圧タービン
低圧タービン
タービン全長
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5
低圧タービン動翼の
損傷事象に関する点検結果
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6
◆6・7号機低圧タービンの構成
・6・7号機低圧タービンは3台の低圧タービンで構成
低圧タービンの翼は第10段∼第16段の7段で構成されており、翼植込み部については鞍
型構造(第10段∼第13段)とフォーク型構造(第14段∼第16段)の 2種類がある
タービン側
発電機側
低圧
低圧
タービン(C)
タービン(C)
発電機
低圧
低圧
タービン(B)
タービン(B)
低圧
低圧
タービン(A)
タービン(A)
高圧
タービン
緑色:静翼(ノズルダイヤフラム)
黄色:動翼(タービンロータ)
静翼
○ :当該翼付根部
動翼
フォーク型翼 (第14段の例)
鞍型構造
フォーク型構造
(第10段∼第13段) (第14段∼第16段)
16
16 段
段
15 段
14 段
発電機側
13 段
12 段
11 段
10 段
10 段 11 段
6・7号機 タービン図
12 段
13 段
14 段
15 段
16 段
タービン側
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7
◆経緯
z 7号機各タービン動翼の翼付け根部及びフォークピン全数を対象に超音波探傷検査(UT)を実施した
z 実施した結果、低圧タービン(C)第14段タービン側翼フォークピンに1箇所の指示が確認された
z フォークピンに指示が確認された翼を抜き取って点検したところ、フォークの折損が確認された
z 同型翼(フォーク型翼)の7号機および6号機※の類似箇所(第14段∼16段翼)の点検(翼の抜取りおよ
び磁粉探傷検査(MT))を実施した
z なお、第10段∼第13段の鞍型翼について翼付け根部の外観点検および超音波探傷検査(UT)を実施
した結果、異常は確認されなかった
(※同様の構造の翼を採用しているプラントは、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(ABWR)のみ)
No.1 No.2 No.3
No.4 No.5
低圧タービン(C) 第14段翼折損状況(119枚目)
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8
◆6号機 低圧タービン点検結果
:点検範囲
低圧タービン(A)
低圧タービン(B)
13
1312
1110 10 11 12
低圧タービン(C)
1312
13
1110 10 11 12
1312
13
1110 10 11 12
高圧
タービン
発電機
16
15 14
14 15
(タービン側)
16
(発電機側)
16
15 14
14 15
(タービン側)
16
(発電機側)
16
15 14
14 15
(タービン側)
16
(発電機側)
■第14段
■合計
0枚/912枚(総数)
折 損
0枚
/ 152
0枚
/ 152
0枚
/ 152
0枚
/ 152
0枚
/ 152
0枚
/ 152
指示模様
12枚
/ 152
0枚
/ 152
63枚
/ 152
28枚
/ 152
1枚
/ 152
33枚
/ 152
137枚/912枚(総数)
折 損
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚/756枚(総数)
指示模様
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚/756枚(総数)
折 損
0枚
/ 130
0枚
/ 130
0枚
/ 130
0枚
/ 130
0枚
/ 130
0枚
/ 130
0枚/780枚(総数)
指示模様
0枚
/ 130
0枚
/ 130
1枚
/ 130
0枚
/ 130
4枚
/ 130
0枚
/ 130
5枚/780枚(総数)
■第15段
■第16段
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9
◆7号機 低圧タービン点検結果
:点検範囲
低圧タービン(A)
低圧タービン(B)
13
1312
1110 10 11 12
低圧タービン(C)
1312
13
1110 10 11 12
1312
13
1110 10 11 12
高圧
タービン
発電機
16
15 14
14 15
(タービン側)
16
(発電機側)
16
15 14
14 15
(タービン側)
16
(発電機側)
16
15 14
14 15
(タービン側)
16
(発電機側)
■第14段
■合計
折 損
0枚
/152
0枚
/ 152
1枚
/ 152
0枚
/ 152
1枚
/ 152
0枚
/ 152
2枚/ 912枚(総数)
指示模様
1枚
/ 152
0枚
/ 152
50枚
/ 152
22枚
/ 152
17枚
/ 152
0枚
/ 152
90枚/ 912枚(総数)
折 損
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚/756枚(総数)
指示模様
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
0枚
/ 126
※/ 126
0枚
/ 126
1枚/756枚(総数)
折 損
0枚
/ 130
0枚
/ 130
0枚
/ 130
0枚
/ 130
0枚
/ 130
0枚
/ 130
0枚/780枚(総数)
指示模様
1枚
/ 130
18枚
/ 130
19枚
/ 130
18枚
/ 130
9枚
/ 130
31枚
/ 130
96枚/780枚(総数)
■第15段
1枚
■第16段
※第15段は指示が微小であり、かつ、系統的な指示模様の発生が見られず第14段および第16段と様相が 異なる。製造過程や翼の取り外し作業等に伴って生じたものと考えられる。
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10
◆第14段,第16段の磁粉指示模様の発生状況
第16段磁粉指示模様
第14段磁粉指示模様
背側
腹側
腹側
約17mm
外ピン穴
外ピン穴
MT指示模様
蒸気出口側
中ピン穴
蒸気入口側
約10 mm
蒸気出口側
外側ピン→
中側ピン→
背側
蒸気入口側
腹側
背側
蒸気出口側
蒸気入口側
腹側
背側
外側ピン→
中側ピン→
内側ピン→
内側ピン→
No1 No2 No3 No4 No5
No1 No2 No3 No4 No5 No6 No7
■第14段については動翼2本のフォークの一部に折損が確認された
■第16段のクラックは第14段と比較して小さいクラックであった
(第14段:平均約13mm、第16段:平均約2mm)
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11
◆6,7号機 第14段動翼フォーク部磁粉指示模様検出箇所
蒸気入口側に多くの磁粉指示模様を確認:外側ピンに集中
蒸気出口側は中側及び内側ピンに磁粉指示模様を確認
蒸気出口側
蒸気入口側
腹側
背側
外側ピン→
中側ピン→
内側ピン→
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5
○点検の結果、7号機において2枚の動翼フォーク部の折損を確認した
○6・7号機共に磁粉探傷試験において磁粉指示模様を確認した
(第14段:磁粉指示模様及び損傷:229枚/1824枚(6・7号機総数))
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12
◆6,7号機 第16段動翼フォーク部磁粉指示模様検出箇所
蒸気出口側
蒸気入口側
腹側
背側
外側ピン→
中側ピン→
内側ピン→
No1 No2 No3 No4 No5 No6 No7
蒸気出口側に磁粉指示模様が集中している
外側ピンに磁粉指示模様が集中している
○点検の結果、動翼フォーク部の折損は確認されなかった
○点検の結果、6・7号機共に磁粉探傷試験において磁粉指示模様を確認した
(第16段:磁粉指示模様:101枚/1560枚(6・7号機総数))
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13
◆低圧タービン第14段動翼フォーク部の調査結果(折損箇所)
z 低圧タービン第14段の折損した動翼フォーク部について破面調査を行った結果、高サイクル疲労破面
に見られるような縞状の模様(ビーチマークおよびストライエーション状模様)が確認された。また、破 面には酸化皮膜が形成されていた。これらのことから、今回のプラント停止(新潟県中越沖地震発生) 以前に高サイクル疲労により損傷に至ったものと考えられる
蒸気
出口側
蒸気
入口側
蒸気
出口側
腹側
調査結果
金属調査実施項目
破断箇所
蒸気
入口側
・ビーチマークを確認
・酸化皮膜を確認
・破面観察(走査型
電子顕微鏡)
・ストライエーション状模様を
確認
電子顕微鏡による破面観察
No.1 No.2 No.3
(調査箇所)
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5
・外観調査
No.4 No.5
2μm
フォーク破断面
蒸気
出口側
7号機低圧タービン(C) 第14段 タービン側 119枚目
外観調査
蒸気
入口側
ストライエーション状模様
No.4
外観調査
蒸気
出口側
1mm
蒸気
入口側
ビーチマーク
No.5
1mm
酸化皮膜
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14
◆低圧タービン第14段動翼フォーク部の調査結果(折損箇所)酸化皮膜分析
・破面上の酸化皮膜について分析を実施した結果,高温(運転中)において形成するマグネタイト(Fe3O4)
等が検出された。このことから,今回のプラント停止(地震発生)以前に損傷に至ったものと推定される
7号機 LPC 第14段 タービン側 119枚目(代表例)
80000
分析位置:1∼4
Fe3O4の存在を示すピーク
4
1
3
2
60000
x5
1
酸化皮膜除去後
カウント
き裂進展方向
2
40000
3
X0.5
4
20000
Fe2O3(参考データ)
Fe3O4(参考データ)
ビーチマーク(縞状の模様)から推定されるき裂進展
方向(赤矢印)
0
200
400 600
800 1000 1200 1400 1600 1800
ラマンシフト(cm-1)
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15
◆低圧タービン第14段動翼フォーク部の調査結果(磁粉探傷試験による指示模様部)
z 低圧タービン第14段の磁粉探傷試験による指示模様部について破面調査を行った結果、高サイク 疲労破面に見られるようなビーチマークおよびストライエーション状模様が確認された。また、破面 には酸化皮膜が形成されていた。これらのことから、今回のプラント停止(新潟県中越沖地震発生)
以前に高サイクル疲労により損傷に至ったものと考えられる
磁粉探傷試験による
指示模様部
ピン穴
磁粉探傷試験(MT)
10mm
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5
7号機低圧タービン(C) 第14段 タービン側 120枚目(代表例)
電子顕微鏡による破面観察
黒色部は亀裂破面
(酸化皮膜が形成)
化学成分分析
酸素を確認
100μm
ストライエーション状模様を確認
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16
◆低圧タービン第16段動翼フォーク部の調査結果(磁粉探傷試験による指示模様部)
・低圧タービン第16段の磁粉指示模様部について破面調査を行った結果、高サイクル疲労破面に見ら
れるようなビーチマークが確認された。また、破面には酸化皮膜が形成されていた。これらのことから今
回のプラント停止(地震発生)以前に高サイクル疲労により発生したものと考えられる
磁粉探傷検査(MT)
破面観察
ピン穴径 : 約17mm
200μm
No.7
No.6
No.5
No.4
No.3
No.2
蒸気流れ
蒸気流れ
ビーチマークを確認
No.1
7号機 LPB 第16段タービン側102 枚目
(代表例)
化学成分分析
200μm
酸素を確認
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17
◆折損及び指示模様発生翼の破面観察まとめ
第14段及び16段の翼フォーク部の折損部及び磁粉指示模様部に ついて破面の調査した結果
○高サイクル疲労破面に見られるようなビーチマーク及びストラ
イエーション状模様が確認された
○破面観察において酸化皮膜が確認された。また、破面上の酸
化皮膜について分析を実施した結果、高温(運転中)において 形成するマグネタイト(Fe3O4)等が検出された
今回のプラント停止(地震発生)以前に損傷に至ったもの
と推定される
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18
低圧タービン動翼の損傷事象に関する
推定要因及び今後の対策
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19
◆要因分析
低圧タービン第14段、第16段動翼損傷に関して原因究明のため、寸法調査・設計調査・
材料調査・運転実績調査・水質環境調査を実施した
調査項目
実施結果
寸法調査
加工時の寸法異常の有無を確認するため、動翼・ロータ・フォークピン・タイワイヤ関係箇所の寸法測
定を実施し評価した結果、問題ないことを確認した
設計調査
設計時想定した疲労強度、平均応力、振動応力が本事象の要因になっていないかを確認するため、
設計の再評価を実施した。その結果
・FEM解析をした結果、フォークピン穴端部に許容範囲内ではあるものの平均応力の数倍程度の
応力集中が発生している
・第14段にて負荷遮断に伴う給水加熱器からのフラッシュバックにより励振が発生している
・第16段において低負荷運転時のランダム振動が発生している
材料調査
使用された材料・素材の種類・特性等の異常有無を確認するため、各種材料調査を実施した結果異
常は確認されなかった
運転実績
調査
運転実績が本事象の要因になっていないかを確認するため、運転時間・起動回数・負荷パターンを
調査した結果、
・試運転時にはフラッシュバックが発生する負荷遮断試験を多数経験している
(負荷遮断イベント 6号機:13回 7号機:12回)
・試運転及び通常運転時にて低負荷運転(無負荷及び初負荷運転)を実施している
(6・7号機では各号機において約240時間の低負荷運転を実施)
水質環境
調査
腐食環境が本事象の要因になっていないかを確認するため、水質環境調査を実施した結果、異常と
なる事象は確認されなかった
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20
第14段の推定要因及び今後の対策
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21
◆フラッシュバックの挙動
第14段の推定要因は,負荷遮断時に発生する給水加熱器
からのフラッシュバックによる振動であると考えられる
通常運転時の蒸気の流れ
フラッシュバック時の蒸気の流れ
蒸気流れ
抽気流れ
フラッシュバック
による逆流
第14段抽気
(第6給水加熱器へ)
L-2
第13段抽気
(第5給水加熱器へ)
L-3
第5給水加熱器より
第12段抽気
(第4給水加熱器へ)
第11段抽気
L-4
(第3給水加熱器へ)
L-5
L-5
第6給水加熱器より
抽気逆止弁により蒸気の
逆流は発生しない
蒸気が遮断
または急減
L-4
L-3
L-2
L-1
第11段動翼第12段動翼第13段動翼 第14段動翼 第15段動翼
L-5
L-4
L-3
L-2
L-1
第11段動翼 第12段動翼 第13段動翼 第14段動翼 第15段動翼
フラッシュバックの挙動
①蒸気量が急減または蒸気が遮断
②タービン内の圧力が低下
③給水加熱器の圧力が低下し、加熱器内で減圧沸騰が発生し、蒸気が高速で逆流する
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22
◆CFD解析によるフラッシュバック時の蒸気流れ調査
■フラッシュバック蒸気による第14段動翼先端部における逆流
100%負荷遮断のケース(アニメーション)
マッハナンバー
第6給水加熱器より
第5給水加熱器より
圧力:14psi
温度:210F(約99℃)
圧力5psi
温度:162F(約72℃)
逆流域
蒸気入口側
蒸気出口側
背側
No.5 No.4 No.3 No.2 No.1
静翼
動翼
14段(L-2)
静翼
動翼
15段(L-1)
※1psi≒7kPa
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23
◆推定原因(第14段)
流れ解析の結果等から負荷遮断時の抽気系(第5・6給水加熱器)からの逆
流(フラッシュバック)により第14段動翼先端部が不安定な蒸気の逆流域とな
り、第14段動翼に振動させる力を発生させたものと推定した
•
マッハナンバー
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
第6給水加熱器より
逆流域
蒸気入口側
第5給水加熱器より
蒸気出口側
背側
静翼
動翼
第14段(L-2)
静翼
動翼
第15段(L-1)
静翼
No.5 No.4 No.3 No.2 No.1
第16段(L-0)
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24
◆フォーク破面(ビーチマーク)からの振動応力の推定
実機ビーチマークに基づくき裂進展カーブと疲労進展解析結果に基づくき裂推定カーブを
比較し、実機に作用した振動応力を推定
※1 ksi ≒7MPa
クラック長さ(インチ/1000)
折損翼
50ksiの推定カーブ
き裂進展カーブ
折損翼
7号機LP(B)
タービン側80枚目
破面観察方向
40ksiの推定カーブ
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5
ビーチマーク
折損翼 7号機LP(B)タービン側80枚目
振動応力は約40∼50ksiと推定される
1cm
同様な解析を他の翼き裂(典型例)破面にも実施した結果、振動応力は約30∼40ksiと推
定された
よって、14段動翼のき裂を進展させた振動応力は約30∼50ksiと推定された
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25
◆推定振動応力からの初期き裂の発生可能性
■振動応力から初期き裂の発生可能性について考察
実測のき裂進展実測カーブと疲労進展解析によるき裂進展推定カーブを比較した結
果、き裂を進展させた振動応力は約30∼50ksiであると推定されるため、グッドマン
線図を用いてこの応力による初期き裂の発生可能性を確認した
振動応力(ksi)
※1 ksi ≒7MPa
き裂発生の可能性あり
50ksi
き裂発生の可能性なし
30ksi
3
2
4
1
No.1 No.2 No.3
No.4
1:
2:
3:
4:
No.5
No.5
No.4 No.3 No.2
No.1
蒸気入口側 背側
蒸気入口側 腹側
蒸気出口側 腹側
蒸気出口側 背側
静応力(ksi)
グッドマン線図(イメージ)
推定される振動応力(30∼50ksi)はグッドマン線図における疲労限を超えており、
初期き裂を発生させる可能性がある
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26
◆推定原因(第14段)まとめ
負荷遮断時のフラッシュバック蒸気の逆流により、第14段動翼
の先端部に逆流域が生じ、約30ksi∼50ksi(約210Mpa∼35
0Mpa)の振動応力が発生したことにより初期き裂が発生した。
その後もフラッシュバックが発生した際に、き裂が進展していっ
たものと推定される
(参考)
負荷遮断イベントについて調査した結果、運転開始後10年間では7号機12
回、6号機13回発生しており、営業運転中に発生した回数は各号機とも2回
発生した
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◆第14段の対策
要因となるフラッシュバックの対策としては設備面、運用面において下記対策を講じる
対策
備考
設備面
全数、同設計の新翼に交換
運用面
負荷遮断が起こらなければ傷は発生せず、ほとんど進展もしな
いと考えられることから、これまでの負荷遮断回数(約12回)お
よびフォーク部の損傷状況を考慮し、負荷遮断が4回に達した
時点で点検を計画する
負荷遮断回数が4回に達しない場合にあっても、最も傷が多く
確認された低圧車室(B)タービンの開放点検※に合わせて、動
翼フォーク部の点検(サンプリング率を翼数の20%程度とする)
を行い、本事象に対する原因・対策の妥当性を検証する
翼フォーク部
の疲労におけ
る余寿命の適
切な管理が可
能
フラッシュバック発生時のタービンの挙動を正確に把握するため
、プラントパラメータをモニタリングする
(発電機出力、タービン回転数、給水加熱器圧力、復水器真空
度、タービン軸振動など)
※タービン開放点検頻度は、
・ 累積運転時間が10万時間以上であれば最長3年毎に1回実施
・ 累積運転時間が10万時間未満であれば最長4年毎に1回実施
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◆第14段の対策(負荷遮断数回数の管理)
■負荷遮断回数とき裂進展との関係(折損翼の例)
折損翼
7号機LP(B)タービン側80枚目
クラック長さ(インチ/1000)
折損翼
折損
負荷遮断12回で折損
直前(1.8インチ)まで
き裂が進展。
負荷遮断8回で2/3
(1.2インチ)まで進展。
折損翼
7号機LP(B)タービン側80枚目
折損
負荷遮断4回で1/3
(0.6インチ)まで進展。
1cm
ビーチマーク
折損翼には約12個のビーチマークが確認されている。負荷遮断回数が4回に達した時点で
タービン点検(UT等)時期の検討を実施することで、余寿命は十分に確保できると考えられ
る。なお、き裂の検出性を向上させるため、フォーク部のフェーズドアレイUTの技術開発を今
後進めていく
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◆第14段の対策(フラッシュバックのモニタリング)
負荷遮断時のフラッシュバックがき裂発生・進展の要因であり、
そのときの挙動を把握することでフラッシュバック発生時間の推
定が可能であることから、関係する運転パラメータについてモ
ニタリングすることを検討する
■モニタリング設備の設置
フラッシュバック
発生時間
モニタリング
■モニタリング項目(例)
発電機負荷
①発電機負荷
②タービン回転数
タービン回転数
③給水加熱器圧力
給水加熱器圧力
④復水器真空度
臨界圧力
復水器圧力
真空度
時間
負荷遮断
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◆第14段の対策案(フェイズドアレイUT手法の検討)
◎ き裂検出の可能性を示すデータを採取。 なお、実機での適用に際しては、感度や検出レベルの設定 検出限界の確認など、今後、実機翼を利用した追加試験が必要
《アレイ探傷設定(外側ピンの例)》
・5MHz−16エレメントアレイプローブ(シュー付き)
《実機翼を利用した試験結果》
翼No.
きず発生位置 / きずサイズ(PT・MT結果)
PAUT検出結果
スリット
実機きず
出口側 背側 外側ピン / 2×1 45°
○
117
出口側 腹側 外側ピン / 2×1 45°
○
95
入口側 背側 外側ピン / L 10
○
112
入口側 背側 外側ピン / L 27
○
136
入口側 背側 外側ピン / L 27
○
144
入口側 背側 外側ピン / L 20
○
50.44
蒸気流れ
きず指示
No.5
43.55
蒸気流れ
No.4
No.3
No.2
スリット
45°2×1
No.1
フェイズドアレイUTによる試験
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第16段の推定要因及び今後の対策
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◆ランダム振動
第16段の推定原因として、流れ解析の結果等から、低負荷時(蒸
気流量が少ない段階でタービンを定格回転数で運転している状態:
FSNL(Full Speed No Load))に第16段動翼付近に蒸気の
逆流域が発生し、これが、第16段動翼に振動させる力(ランダム振
動)を発生させたものと推定
流れ解析結果
動翼
静翼
動翼
静翼
蒸
気
入
口
側
逆流域
第14段
第15段
第16段
100%負荷時
第14段
第15段
背側
蒸
気
出
口
側
第16段
5%負荷時
No.7 No.6 No.5 No.4 No.3 No.2 No.1
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◆応力算出結果
実破面からの振動応力の推定
振動応力(ksi)
真空度が低いと振動応力が増加し、
疲労限を超える可能性がある
FSNL運転時
Vac 700mmHg
高真空にすると振動応力が低減
通常運転時
Vac 735mmHg
ビーチマーク幅( inch ×1000)
真空度に伴う応力の変化
推定カーブ
き裂進展カーブ
静応力(ksi)
グッドマン線図(イメージ)
ビーチマーク番号
◆き裂進展時の発生応力 : 24∼30ksi
通常の復水器真空度(700mmHg)のFSNL運転時
に発生する振動応力では、破面のビーチマークが
示すようなき裂進展には至らないと推定されるが、
試運転時を含め700mmHgより復水器真空度が低
い状態の時には、初期き裂が発生する可能性があ
る
破面観察結果が示すようなき裂進展をするため
には24∼30ksiの振動応力が必要である
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◆推定原因(第16段)まとめ
復水器真空度が低下した状態で低負荷運転をした際に、蒸気の
逆流によりランダム振動が発生し、初期き裂を発生させた その後、約24ksi∼約30ksi(約170Mpa∼210Mpa)の振動応力
が発生したことによりき裂が進展していったものと推定される。
また、通常の復水器真空度での低負荷運転ではき裂の進展する
可能性は現段階の評価において殆どないと推定される事から、殆
どが試運転時に進展していったものと推定される
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◆第16段の対策
■今回確認したき裂は非常に小さく、翼に及ぼす振動応力もき裂進展しきい値以下
であることから、従来の運転方法で今後運転したとしてもき裂が進展することはな
いと考えられるが、信頼性に万全を期すために対策を講じる
対策
備考
設備面
現行翼の蒸気入口及び出口側の外側ピン穴端
部に面取り加工実施する
発生したき裂の除去が可能
応力集中の緩和が可能
運用面
起動時の復水器真空度を高く設定する
FSNL運転時に発生する振動応力の低
減効果
FSNL運転時間の短縮する
低負荷時の逆流が発生する時間の低減
FSNL運転時のランダム振動に関係する運転
パラメータのモニタリングを実施する
低真空でのFSNL運転を避けるための
適切な管理が可能
FSNL運転時間が80時間に達する前に点検を
実施
翼フォーク部の疲労における余寿命の
適切な管理が可能
FSNL運転時間が80時間に達しなくても、7号機
低圧 車室(B)タービンの開放点検に合わせて
動翼フォーク部点検(サンプリング率は翼数の
20%程度)を行う
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◆面取り加工とは
■第16段動翼は傷がごく小さいことから面取り加工により全ての傷を除去する
■面取り加工は全ての翼の蒸気入口および出口側の外側(上部)ピン穴端部に対して
行い、 これにより傷の除去に加えてピン穴への応力集中低減を図ることができる
傷を除去することが可能
外側(上部)ピンのみ実施
外側フォークのみ実施
MT指示模様
0.125in (約3mm) 45°
の面取り加工
蒸気出口側
面取り加工イメージ
面取り加工実施位置
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◆ランダム振動の低減対策
通常の真空度(700mmHg)のFSNL運転で発生する振動応力は疲労限以下、且
つ、き裂進展のしきい値以下の応力である。従って、現状の通り運転してもき裂
は発生・進展することはないと推定される
ランダム振動に伴う振動応力を更に低減し、き裂を発生させない対策を検討
■FSNL運転時に発生するランダム振動応力の低減対策について
◆振動応力を低減するために、通常起動時において復水器真空度を高真空に
て起動することを検討
→ランダム振動で発生する振動応力が低減され、疲労限に対してマージンが増える
◆ランダム振動による発生応力を最小限に抑えるために、FSNL運転時間を
極力短くする運用を検討
→ランダム振動が発生する時間が低減されることにより、想定外の振動応力発生を防ぐ
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◆監視の強化
真空度が極度に悪い状態でなければ、FSNL運転時におけるき裂の発生及び進
展がないことが考えられるため、今後の起動等のFSNL運転時のランダム振動に
関連する運転パラメータについてモニタリング可能とすることを検討していく
■モニタリング設備の設置
■モニタリング項目(例)
①復水器真空度
②FSNL運転時間
③タービン排気室温度 等
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今後の対策のまとめ
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◆更なる信頼性向上への取り組み
„ 今回損傷が確認された第14段および第16段については動翼の交換および傷の
除去、フォーク部の点検、プラントパラメータのモニタリング等により、健全性を
確保できるものと考えられるが、これらの点検やモニタリングの結果を適宜、分
析・評価し、今回の対策の有効性を確認していくこととする
„ 7号機低圧(B)タービン第16段動翼のフォーク部点検に合わせ、7号機低圧ター
ビン(B)に対し第15段動翼フォーク部の点検(サンプリング率を翼数の20%程度
とする)を行い、今後の知見拡充に努める
„ 将来的なタービン翼付け根部(フォーク部)の検査技術として、フェイズドアレイU
Tによる欠陥検出性の検証を行い、信頼性向上を図る
„ 第15段(L−1)翼への非定常流の影響評価などを中期的な課題として整理し、
継続して詳細評価を進めるとともに、今後のタービン設計・開発段階においては、
今回事象の原因となった負荷遮断時のフラッシュバックや低負荷運転時の非定
常な蒸気流れによってタービン翼に発生する応力について詳細な評価を行って
いく。 また、今回の6、7号機についてもこれらの知見にもとづき、フォーク部に
発生する振動応力が一層低減するような設計改良について、これまでの運転実
績も考慮し、10年程度以内の実用化を目標に検討していく。なお、これらの評価
にあたっては学識者からによる客観的なレビューを反映していくことを検討する
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◆対策・更なる信頼性向上への取り組み(まとめ)
■対策
第14段
設計
運用
点検
第16段
・全ての翼を、同設計の新翼に交換
・全ての翼の所定のピン穴端部に面取り加工を実施し、
傷を除去
・プラントパラメータのモニタリング
(フラッシュバック発生時)
・起動時の復水器真空度を高く設定
・FSNL運転時間を可能な限り短縮
・プラントパラメータのモニタリング
・負荷遮断が4回に達した時点で点検を計画
・負荷遮断が4回に達しなくても、6,7号低圧車室
(B)タービンの開放点検に合わせて動翼フォーク
部点検(サンプリング率は翼数の20%程度)を行う
・FSNL運転時間が80時間に達する前に点検を実施
・FSNL運転時間が80時間に達しなくても、7号機低圧
車室(B)タービンの開放点検に合わせて動翼フォー
ク部点検(サンプリング率は翼数の20%程度)を行う
■更なる信頼性向上への取り組み
項目
取り組み事項
運用
・第14段および第16段についての点検やモニタリング結果を適宜、分析・評価し、今回の 対策の有効性を確認する
・タービン動翼フォーク部の検査技術として、超音波探傷試験(UT)の信頼性向上を図る
短期的
点検
長期的
設計
・7号機低圧(B)タービン第16段動翼のフォーク部点検に合わせて、第15段動翼のフォー
ク部点検(サンプリング率は翼数の20%程度)を行い、今後の知見拡充に努める
・負荷遮断時のフラッシュバックや低負荷運転時のタービン動翼に発生する応力について
詳細な評価を行う
・フォーク部に発生する振動応力が一層低減するような設計改良について10年程度以内 の実用化を目標に検討する
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