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286号 - 結核予防会

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286号 - 結核予防会
総裁秋篠宮妃殿下
ご動静
資金寄付者感謝状贈呈式並びに永年勤続職員表彰式
平成14年6月6日 ホテルオークラ
妃殿下は、結核予防事業資金として多額のご寄付を下さった方々に、感謝状をお渡しになりました。
また、式典に続き記念撮影とお茶会が行われ、資金寄付者、永年勤続職員の各テーブルをお回りにな
り、なごやかなひとときを過ごされました。
多額のご寄付を下さった方に感謝状を贈呈
お茶会にて、全国の支部職員とお言葉をかわされる妃殿下
Message
理事長就任にあたって
仲村 英一
なかむら えいいち
結核予防会理事長
平成13年6月から,副会長として結核予防会の仕
事をお手伝いさせて頂いておりましたが,本年3月
の理事会において理事長として互選されました。ご挨
拶が大変遅れて申し訳ありませんでしたが,今後
とも引き続きよろしくお願い致したいと存じます。
申すまでもなく,わが国の結核予防事業は,大き
な大きな転換時期にあるものと考えます。平均寿命
の長さや乳児死亡率の低さ,さらには近年WHOの
言っている健康寿命の長さに関しても,わが国の健
康に関する指標はいずれも世界一の成績であり,戦
後短期間にあの荒廃から立ち直ったことは世界の驚
異でもありました。昭和14年から25年まで死因第1
位を続け,わが国の若者の多くの生命を奪った結核
を近頃の若い医師が診る機会もない程減少させたこ
とも,世界に冠たる成果と言えましょう。
しかし,ここへ来てこと結核に関しては,他の先進
国と比較して罹患率が非常に高く,中まん延状態の
まま低迷しております。厚生労働省は結核緊急事態宣
言を発したり,厚生科学審議会で結核対策の抜本的
見直しをしたりして,戦術の建て直しを計って
おりますが,いわばゲリラ化してしまった相手に対
し,正規軍で対応する過去の戦略では,戦果も上が
るはずもなく極めて非効率な面が多いことに起因し
ているといっても過言でないと考えます。
時あたかも改革の時であり,また財源的にはかつ
てない厳しさではありますが,行政側と相呼応して,
わが結核予防会もキメ細かく活動の方向,形態,内
容を見直して時代に合わせる努力が必要と考えます。
全国支部ともども,役職員総力を結集して,この難
局を乗り切るよう,一致協力をお願い致したいと考
えています。もとより微力ではありますが私も粉骨
砕身,皆様ともども努力して参りたいと考えており
ますので,よろしくご指導,ご鞭撻,ご協力をお願い
する次第です。
目 次
メッセージ
理事長就任にあたって
仲村 英一
1
■
トピック 変わるツベルクリン・BCG・健診
■
∼厚生科学審議会感染症分科会 結核部会・感染症部会の共同調査
2
審議に係る合同委員会報告書まとまる∼
7回日本結核病学会総会 ■第7
成田 友代
3
結核病学会総会に参加して
5
森 亨
会長講演
「社会と結核」
尾身WHO西太平洋地域事務局長招請講演
大角 晃弘
7
「21世紀のアジア結核制圧戦略」
金大韓結核予防会結核研究院前院長招請講演
「現代の薬剤耐性結核の問題とそのコントロールについて」
8
御手洗 聡
11
須知 雅史
シンポジウム「アジアの結核」
■低蔓延国となったオランダ・ドイツの結核対策から学ぶ
14
永田 容子・有馬 和代
―保健師の役割を中心に― ■特対事業 和歌山県結核対策検討委員会 18
岡澤 利彦
∼診査機能強化と3カ月承認∼
21
上田 千里
■ずいひつ 日々是好日
22
島尾 忠男
■第4回世界結核会議
■第28回TSRU会議報告 ∼結核サーベイランス研究会∼ 石川 信克
………24
尾形 英雄 ………26
■平成13年度フィルム評価会報告 ■平成13年度複十字シール運動募金成績…………………28
■ たばこ 健康おきなわ2010 喫煙率目標値設定の経緯 崎山 八郎
………29
世界禁煙デー記念シンポジウム………………30
▽マスコミ資料(結核・たばこ・肺がん関係)……………25・31
▽予防会だより ……………………………………………… …32
〔表 紙〕複十字シール運動ポスター
(平成14年度複十字シール図案)
〔カット〕佐藤奈津江
07/2002 複十字 No.286
1
トピ
変わるツベルクリン・
ック
BCG・健診
∼厚生科学審議会感染症分科会 結核部会・感染症部会の
共同調査審議に係る合同委員会報告書まとまる∼
去る5月29日,標記合同委員会が開催され,3月20日に結核部会より報告された「結核対策の包括的見直しに
関する提言」の中で議論が残されていた「乳幼児及び小中学1年生に対するツ反検査の是非」について,「廃止」
とする最終審議がまとまり,6月5日,感染症分科会に報告書が提出されました。今後は感染症分科会にてさら
に議論を深めていくこととなっています。
定期健診・予防接種に関する制度改正の提言のポイントは下記(表)の通りです。
表 定期健診(ツ反検査含む)・予防接種(BCG)に関する制度改正の提言のポイント
対象
乳幼児
現在
提言
ツ反検査を
行い,陰性
者のみにB
CG接種
(勧奨)
原則として
生後6カ月
までにツ反
検査を省略
したBCG
接種を実施
改正の理由
補完策等
◎乳幼児・学童・生徒の結核罹患率が著しく減少 ・BCG接種率・接種技術
(0∼14歳の結核罹患率(人口10万対)は1962年 を高める
・1歳6カ月児や3歳児健診
:205.1→2000年:1.2に減少)
・乳幼児のツ反のスクリーニングを用いた健康診断は, で瘢痕を確認し,未接種者
患者発見率が極めて低い(0∼3歳の発見率が10万 に は 早 急 に 接 種 を 勧 奨
対1.1。ツ反検査実施者120万人中,発見患者13人)。 ・家族に患者が発生した場
・偽陽性のため不必要な再ツ反・予防内服・精密検査 合等の接触者健診の充実
・他の予防接種との日程調
をすることがなくなる。
・偽陽性のためBCG接種の機会を失うことがなくなる。 整等,実施条件の具体的
・既感染者への接種によるコッホ現象はそれほど強い 整備
ものではない。
・乳児への正しいツ反は技術的に困難。
小学1年生
中学1年生
15歳以上・
40歳未満の
ローリスク層
15歳以上・
40歳未満の
ハイリスク・デ
インジャー層
40歳以上
ツ 反 検 査 を ツ反検査,B ・小1生のツ反のスクリーニングを用いた健康診断は, ・有症状時の早期受診
実 施 し , 陰 CG接種共に 患者発見率が極めて低い。
・喀痰検査の普及を図る
・BCG再接種の医学的効果は明らかになっていない。 ・早期診断(第一線の医療
性 者 に は B 廃止
・再接種によるツベルクリン反応の陽転化が結核感染 機関に結核を積極的に疑
CG接種,
の診断の妨げになっている。
強陽性者等
うよう啓発)
・諸外国では再接種を廃止する国が多くなっている。 ・患者が発生した場合の接
に精密検査
ツ反検査を実 ツ反検査,B ・中1生のツ反のスクリーニングを用いた健康診断は, 触者健診を充実,強化し,
施 し , 陰 性 CG接種共に 患者発見率が極めて低い(10万対1.0。2000年発見患者 感染源や感染経路の究明
21人で,ツ反検査実施者120万人中,発見患者13人)。 や患者接触者の把握等を
者 に は B C 廃止
・すでに2回以上のBCG接種歴を有する者が多いた 目的とした積極的疫学調
G接種,強
め強陽性と判定される割合が高い(不必要な予防内 査を行うことを徹底
陽性者等に
・社会的弱者や基礎疾患合
服・精密検査がなくなる)。
は精密検査
・中1でのツ反がブースター刺激になりその後のツ反 併患者などのハイリスク
が増強するため,接触者健診におけるツ反結果の解 グループや特定地域への
結核の偏在への対策を強
釈が困難となっていた。
化する
1 6 歳 , 1 9 歳 入学時,転入 ・罹患率が減少
以 上 は 年 1 時,就職時, ・患者発見率が低い(平成11年地域保健事業報告によ
回 胸 部 X 線 転勤時など, ると,地域健診患者発見率0.013%,職域健診患者発
節目時のみ胸 見率0.007%)。
検査
部X線検査
年 1 回 胸 部 年1回胸部X ・ハイリスク層については,罹患率が非常に高い。 ・偏見・差別が生じないよ
線検査の確実 ・デインジャー層については,発病すると二次感染 う配慮
X線検査
受 診 率 が 極 な実施
を起こす割合が高い。
・一部職種にはツ反検査
めて低い
年 1 回 胸 部 年1回胸部X ・年齢が高いほど罹患率が高いことから,現行どおり
X線検査
線検査
・寝たきり者等X線診断が
困難な場合は積極的に喀
痰検査
文責 編集部
2
07/2002 複十字 No.286
第77回日本結核病学会総会
結核対策技術の研究と開発のブレイクスルーを求めて
4 月16日・17日/日本都市センター会館(東京都)
第77回日本結核病学会総会は,4月16,17日の2日間の日程により,結核研究所の森亨所長が学会長を務め,
「結核対策技術の研究と開発のブレイクスルーを求めて」をテーマに開催されました。海外から多数の演者を招き,
示説発表形式を取り入れた,特色ある総会となりました。はじめに総会全体の参加報告を,さらに会長講演及び,
海外から招聘した演者の講演・シンポジウムの要旨をご紹介いたします。
第77回日本結核病学会総会に参加して
練馬区保健所予防課長
成田 友代
2002年4月16日,17日の2日間にかけて,第77回日本
結核病学会総会が東京にて開催されました。会場は,国
会議事堂等政治の中心地である永田町に隣接する日本都
市センター会館です。開催中は700人を超える学会員の
方々が集まりました。今回で第77回を数える総会の学会
長は結核予防会結核研究所の森亨所長が務められ,「結
核対策技術の研究と開発のブレイクスルーを求めて」を
テーマに,両日とも結核予防に携わる方々の熱い討論が
繰り広げられました。
本学会の大きな特徴の1つは,要望課題,一般演
題の発表形式が示説となったことです。6階の会場
は色彩豊かなポスターで埋めつくされ,非常に華や
かな印象を受けました。また,今回も,医師,看護
師,保健師,検査技師等多職種の学会員の参加があ
り,結核予防対策は,医療関係者が一丸となって取
り組むべき課題であることを,改めて感じました。
様々な視点での発表がありましたが,すべてをご
紹介するのは不可能ですので,私が参加したプログ
ラムを中心にご報告させていただきます。
シンポジウム・結核対策のブレイクスルー
シンポジウム「結核対策のブレイクスルー」
新しい時代の結核対策を切り開くため,現状のそれ
ぞれの対策について,抜本的な見直しの必要性が示さ
れました。
BCG接種について,再接種はメリットよりもデ
メリットの方が大きく,早急に中止を検討すべきで
ポスターを使っての要望課題、一般演題の説明には多くの参加者が集まり、
活発な質疑が行われた。
あること,また,結核罹患率の地域格差から,地域
ごとにBCG接種そのものを見直す必要性がある等
の提言がありました。
患者発見については,結核定期健診の患者発見率の低
07/2002 複十字 No.286
3
第77回日本結核病学会総会に参加して
さから,40歳未満の胸部健診は入学時,就職時,転職時
などに限定するという定期化案が示されました。その補
完として,定期外健診の強化が求められます。
治療に関しては,日本の耐性頻度,特に獲得耐性が上
昇していることから,標準化短期化学療法を徹底すると
ともに,医療・行政サイドの「確実に治すという強い意
志」が重要であることを改めて考えさせられました。
また,現行の結核予防法に人権を尊重した行政手
続,発生動向調査等を盛り込む必要性があること,
結核のまん延状況や結核対策の質に地域格差がある
ことから,結核対策も地方分権のメリットを取り入
れるべきであるなどの発言がありました。
結核対策は,今まさに変革の時期を迎えています。
その他,コホート観察簿の活用やコホート検討会など,
治療成績向上に取り組み,それを組織的に評価して
いる保健所での活動が紹介され,各保健所でも同様
に取り組む必要性があることを強く認識しました。最
後に,DOTSの費用対効果についての追加発言が
あり,DOTSの効率性が示されました。今後のD
OTSのますますの広がりが期待されます。
シンポジウム・困難な条件下での結核対策
合併症の存在は結核を難治化させます。本シンポ
ジウムでは高齢者・透析患者の結核,糖尿病や肝機
能障害の合併,妊娠中及び授乳中の結核治療,小児
結核に焦点を当て,それぞれの状況下での結核治療
について発表がありました。各演者から,治療経験
に基づく具体的な対処法が示され,フロアからも積
極的な発言が相次ぎ,大いに盛り上がりました。
シンポジウム・結核治療の成功のために
治療成績を上
げるために,今
何が必要である
か,各演者から
様々な活動上の
工夫について発
言がなされまし
た。まず,院内
DOTSについ
シンポジウム「結核治療の成功のために」座長の2人 てですが,実施
群と非実施群について比較をしたところ,実施群で
は入院中の飲み忘れはなく,さらに退院後の服薬に
ついても飲み忘れが少ないという結果が示されたと
のことです。院内DOTSは確実な効果が見られて
います。次に,退院後のDOTSとして,大阪の
「ふれあいDOTS」が紹介されました。入院中に,病
院訪問により患者との関係づくりを図っていくこと,医
療機関との退院後の服薬支援に向けた情報の共有化な
ど,入院時からのきめ細かな対応が印象的でした。
4
07/2002 複十字 No.286
シンポジウム「結核治療の成功のために」シンポジストたち
最後に,要望課題,一般演題について少し触れたい
と思います。今回は,示説ということもあり,各会場
で参加者が演者に熱心に質問をするといった場面がよ
く見られました。各会場とも,時間を延長しての熱心
な質疑応答が繰り広げられていたようです。
以上,シンポジウムを中心に第77回結核病学会総
会のご報告をさせて頂きました。特に印象的であった
のは,医療機関と保健所の連携下に治療成功に向けた
様々な取り組みがなされているということです。地域
の現状に応じて,全国的に展開されていくことが強く
望まれます。参加された方々もさらに取り組みへの意
欲を増して,会場を後にされたことと思います。
次回,第78回結核病学会総会は岡山にて開催され
ます。
第77回日本結核病学会総会
会長講演「社会と結核」
らである。「治せる」ようになったといってもまだそ
の力が十分でなかったころも,そうだったと思う。公
衆衛生対策の面でも然り,1953年の第1回結核実態調
査の調査項目には,世帯別収入や耕作面積といった社
会経済要因が含まれていた(1987年以来の電算化結核
サーベイランス事業では,患者の職業すらまともに調
べにくくなっている)。
健康不平等としての結核
講演・執筆
結核研究所長 森 亨
結核が他の病気にまさって社会と密接につながっ
た病気であることは,時代を問わず(少なくとも近
世以降は),洋の東西を問わず広く受け入れられて
いる。ベトナムには公衆衛生上「社会病」という病
気のカテゴリーがあり,結核はその中心的存在であ
る(この概念は資本主義国にこそあっていいはずだ
が,ベトナムだという点が何となく面白い)。
社会病としての結核
どうしてこのような認識が広まっているのだろう
か。まず,結核はどの国においても産業革命や都市化
といった大きな社会変革と共に消長する病気であっ
た,ということがある。その中で慢性疾患として,ま
た最流行時には生産年齢人口を襲う病気として,社
会経済的なインパクトが大きい病気という意味もあ
ったことであろう。日本の戦前の「亡国病」という
ネーミングからは,この問題に対する為政者のいら
だちすら感じられる。
また,不潔な生活環境が感染の機会を大きくし,
乏しい栄養や厳しい労働条件が発病リスクを大きく
し,臨床経過を悪化させる,また,化学療法の時代
には医療費負担に耐えられない,といったことから
「貧乏病」としての性格が社会と結核の結び付けを
強めている,というむきもある。
少なくとも私よりも前の時代に結核屋になられた先
生方の中には,結核のこのような性格に興味を持ち,
問題意識を刺激された方が少なくないはずである。
結核が基本的に「治せない」病気だった時代の医師
は,結核と結びついている「社会」の方にいやでも
対峙させられることが多かったのだからなおさ
それでは比較的簡単に病気が「治せる」ようになり,
またそれを支える下部組織も整った現在では結核は社
会病ではなくなったか。「ノー」,新たな状況が浮上
してきた。それは1つの見方からは健康をめぐる「不
平等」と要約できるかも知れない。
結核を含めた健康の不平等の最たるものが「南北格
差」,つまり先進国と途上国の間の隔たりであろう。
世界の結核発生の95%,結核死亡の98%が途上国(人
口は70%)に集中していることからも明かである。
「治せる」結核に対するこの不平等の原因は?これま
での議論では,人口爆発(結核にもろい思春期人口が増
えた),都市化,HIV流行などが挙げられているが,
基本的な原因は「有効な結核対策が行われなかった」つ
まり「治そうとしなかった」と総括されている。そして
その最重要の関連要因(原因であり,結果でもある)が
「貧困」だ,というのが,今年の世界結核デーの統一
標語(Stop TB, Fight poverty,ストップ結核で貧困
を無くそう)の背景であった。グローバルにみた途上
国の結核問題を貧困だけに帰するのは少し図式的に過ぎ
るし,先進国の貧困問題とはまた違う見方が必要だが,
いずれにせよこれは現代の社会病としての結核の1つ
の重大な側面を象徴している。
世界の貧困対策としての結核対策
また同じ認識から,途上国の感染症(エイズ,マラ
リア,結核)の対策に先進国が積極的にコミットしよ
うというアナン国連事務総長の呼びかけに応えて,エ
イズ・結核・マラリア対策世界基金(Global fund to
fight AIDS, Tuberculosis Malaria,〈GFATM〉,
URL: http://www.globalfundatm.org)が昨年旗揚げ
し,本年から本格的な活動に入った。これは先進国の
官民の資金を大動員(年間何十億円の単位)し,これ
らの病気の対策に資金援助をしようというもので,既
に第1回の配分が始まりつつある。これに先立ち日本
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5
会長講演「社会と結核」
政府は,一昨年九州沖縄G8サミットで,感染症(上記
3疾患のほか寄生虫症を含む)対策に対して5年間で3000
億円の拠出を公約した。このように結核社会(貧困)病
論は,いまや具体的な世界の健康対策の基本原理となっ
ていることは間違いない。なお,ネットフォーラム
(Stop-TB Forum,URL: http://www.hdnet.org)で
は,世界結核デー前後から「結核と貧困」をテーマ
とした討論が行われている。
先進国での階級間格差
もう1つ,「健康不平等」は少しミクロに,古典
的には「階級間格差」といわれるもので,最近の私
たちの言い方では社会経済弱者,健康管理の機会に
恵まれない人々の結核問題である。その極端な例が
ホームレスであり,これは欧米でも日本でも際立っ
て高い罹患率,致命率を見せている。またそれほど
ではないが,零細企業従業者,生活保護世帯,外国
人労働者,建設現場の労働者などにも見られる問題
である。「治せる」病気がどうしてここに吹きだま
ったのか。やはりここでも「貧困」が重要な役割を
演じており,その点では途上国や女工哀史の時代の
日本と共通のものもあるが,どぎつい「不平等」で
あるという点で決定的に異なる。たとえばホームレ
スの結核罹患率は,日本でも一般人口の50倍,欧米
では100倍にもなる。その原因について,結核と同様
に階級間の健康格差をより一般的に調べた英国の
1
2
Black Reportは, 格差見せかけ論, 社会的・自
3
4
然淘汰論, 唯物論的説明, 文化的・行動的説明,
2
などを掲げて議論し,最も確実な説明として を指
摘している。つまり,問題は自然抵抗力の弱い人は
社会的にも成功しにくいとか,不衛生な生活習慣の
人は収入の高い職業には就けないとか,ではなく,貧
困が結核に導く機序があるはずだということである。
一見常識的だが,きちんと科学的に説明されている
わけではない。疫学的な観察はいろいろあるものの
生物学,特に分子のレベルで説明がなされているの
はこのメカニズムのほんの一部でしかない。とくに
栄養やストレスが結核の感染,発病,進展にどのよ
うに働くのか,新しい免疫学や病理学,また遺伝学
による説明をぜひとも聞きたい。
医療体制崩壊と結核増加
結核がいかに社会病か,について貧困や貧困にか
6
07/2002 複十字 No.286
かる不平等の面から述べたが,近年見られたもう1つ
の社会病ぶりは,旧社会主義諸国での結核の増加に見
ることができる。旧ソ連邦の多くの国々(ロシア,エ
ストニアなど),ルーマニア,ハンガリーなどでは
1990年以後の体制崩壊の後,数年を経ずして結核逆転
に見舞われた。貧富格差の増幅とそれまでの医療サー
ビスの混迷が原因とされるが,私には特に後者の影響
が印象的だった。これらの多くの国で特に薬剤耐性結
核が増加したことも,この印象をさらに深めた。
☆ ☆ ☆
この学会で会長として勝手なことを話す機会を頂
いたので,結核に対する私の年来の思い入れを,
「貧困」をキーワードとして,日本を題材としてま
とめてみました。本稿ではそこからあふれた部分を
述べて,少し補いをつけたいと思いました。
結核予防会役職員が会長を務めた
結核病学会総会
日本結核病学会総会は今年で77回目という長
い歴史を持ちますが,これまでの総会で結核予
防会役職員(主に歴代の結核研究所長)が会長
を務めた学会総会は,今回を含め下記の通り8
回となっています。
開催年
会長名
職名(当時)
1
第23回
勝俣 稔
(昭和23年)
3
第32回
隈部 英雄
(昭和32年)
結核研究所長
4
第43回
岩崎 龍郎
(昭和43年)
結核研究所長
5
第57回
島尾 忠男
(昭和57年)
結核研究所長
結核予防会
副会長
(兼)
理事長
結核予防会理事
第28回
岡 治道
2
(前結核研究所長)
(昭和28年)
第62回
木野智慧光
(昭和62年)
第68回
7
青木 正和
(平成5年)
6
8
第77回
森 亨
(平成14年)
結核研究所付属
病院長
結核研究所長
結核研究所長
第77回日本結核病学会総会
招請講演「21世紀のアジア結核制圧戦略
世界保健機関 西太平洋地域事務局長
(WHO/WPRO Regional Director)
尾身 茂
プロフィール
1978
: 自治医科大学卒業
1978-86 : 東京都衛生局医務部医系技官
1986-89 : 自治医科大学予防生態学教室助手
1989-90 : 厚生省保険局医療課 医療指導監査室
特別医療指導監査官
1990-93 : WHO西太平洋地域事務局 拡大予防接種
計画課課長補佐
1993-95 : 同事務局 拡大予防接種計画課長
1995
: 同事務局 感染症対策部長
1998
: 自治医科大学 公衆衛生学教授に就任
1999
: 第5代WHO西太平洋地域事務局長に就任
かに対応すべきか,そして第4に,現状のニーズに適応した必
講演要旨
要財源の確保をいかにすべきかという事柄である。
結核研究所国際協力部
企画調査科
大角 晃弘
世界の結核の現状と西太平洋地域における結核
対策に関する戦略 (Stop TB special project in WPRO)
後半は,結核に関する問題について,世界と西太平洋との2
尾身事務局長は,前半に「変化する世界の状況に対応す
つの視点で話をされた。今世界中で毎秒1人の新結核患者が発
るための公衆衛生分野における課題」,後半に「世界の結
生し,その約8割は23カ国の結核高負担国で発生している。ま
核の現状と西太平洋地域における結核対策に関する戦略
た毎日約5,000人の結核患者が死亡し,この約98%は開発途上国
(Stop TB Special Project in WPRO) 」の内容で,2部に分
で起こっている。さらに1994年から98年までの期間に72カ国で
けて講演を行われた。
実施された結核菌薬剤感受性調査の結果では,そのうち63カ国
変化する世界の状況に対応するための
公衆衛生分野における課題
で多剤耐性菌が認められていた等の,世界の結核に関する現状
をまとめて話された。
次に,西太平洋地域における結核の現状については,同地域
本テーマでは,第1に,世界人口の急激な増加,人口の急
における15歳以上65歳未満の年齢層において,結核が感染症に
激な高齢化,世界的規模の人口移動等の,人口に関する変化
よるDALY (Disability-adjusted life year)損失及び死亡の主な原
に対して私たちがいかに対応すべきかという課題,第2に,
因であることを指摘しておられた。さらに,「貧困問題が結核
疾患の内容が感染症から慢性疾患へ移行しつつある疾病の疫
まん延を助長し,結核まん延状況が貧困問題を増大させる」と
学的変化に対して,私たちがいかに対応すべきかという課
いう貧困問題と結核問題の密接な関係を指摘し,その根拠とし
題,第3に,都市化の進行と地球温暖化等の社会経済と環境
て,都市貧困層では結核患者発生がそれ以外の地域の約2倍で
の変化に対して,私たちがいかに対応すべきかという課題を
あること,貧困層の人々は保健サービスに結びつきにくいこ
挙げておられた。
と,結核は患者家族の年間総収入の2割から3割を減少させる
また新しい課題として,以下の4つを挙げておられた。第1
等の情報を紹介されていた。
に,人権擁護の視点の重要化,地方分権の進行,NGOの役割
このような大きな社会問題である結核に対する手法としては
の重要化,公的機関から私的機関への役割移行等に対していか
DOTS戦略があり,本戦略を導入することによって,中国で
に対応すべきか,第2に,予防サービスを軽視した治療中心の
は結核患者有病率の減少が顕著に認められたことを話された
保健サービスから,疾病予防を中心とした保健サービスへの移
(DOTS戦略導入地域では36.8%の減少,非導入地域では
行という流れに対していかに対応すべきか,第3に,一般住民
3. 2%の減少)。またDOTS戦略を柱とする結核対策は,費
が保健サービスに求める質が高度化しつつあることに対してい
用対効果分析によると最も効率的な対策の1つであることが
07/2002 複十字 No.286
7
招請講演「21世紀のアジア結核制圧戦略」
示されていることも話され,DOTS戦略が実際の結核患者
結核危機」を宣言して,結核対策をこの地域における特別計画
減少効果の面や経済効率の面からも高く評価されていること
として位置付け,2000年2月には第1回結核対策専門家諮問委
を指摘しておられた。
員会(TAG)を開催して,2010年までに結核の罹患や死亡を半
このように結核まん延状況と有効な戦略とが存在している中
減させることを目標とした地域戦略(Regional Strategic Plan)
で,西太平洋地域事務局では,1)この地域で世界全体の約3
を策定。さらに,現在この戦略を基にして作成された結核高負
割の結核患者が発生していること,2)結核が貧困問題と密接
担国の5カ年計画に沿って,地域内におけるDOTS拡大を加
に関連しておりその経済的負の影響が大きいこと,3)費用対
速している状況であることを紹介しておられた。
効果が大きく経済的に効率的な結核対策手法(DOTS戦略)
最後に,次世代の子供たちにどのような世界を残すのかは,
が確立していること,4)西太平洋地域内共通の大きな問題で
今生きている私たちの重大な責任であり,世界中で最大規模の
あること,5)20世紀以降現在に至るまで未解決な重要課題で
感染症である結核に対して,DOTS戦略を柱とする確固たる
あること等を鑑みて,結核対策を最重要課題と位置付け,重点
結核対策をすべての国で実行していくことが,将来を担う子供
的に対策を実施するように所属国に働きかけている。また西太
たちに対する私たちの果たすべき重大な任務であることを指摘
平洋地域事務局としては,99年9月に「西太平洋地域における
して,講演を終えられた。
招請講演「現代の薬剤耐性結核の問題と
そのコントロールについて」
-Current Problems of Drug-Resistant Tuberculosis and its Control-
大韓結核予防会
結核研究院前院長
プロフィール
1964
: Master of Science
金 尚材
1966
: Bachelor of Public Health
1972
: Doctor of Science
(Sang Jae Kim)
1972-74
: 米国N I H客員研究員
1976-79
: 米国FDA 客員研究員
1979-96
: 大韓結核予防会結核研究院細菌学教室主任
1996-98
: 大韓結核予防会結核研究院副院長
Former Director, Korean
Institute of Tuberculosis,
Korean National
Tuberculosis Association
1999-2001 : 大韓結核予防会結核研究院院長
世界保健機関及び同西太平洋地域における結核対策技術顧問
結核予防会結核研究所結核対策トレーニングコース講師
1700万人が罹患しており,200万人が死亡している。結核の現
講演内容邦訳・要約
況は徐々に悪化しており,多くの発展途上国では効果的な
結核研究所疫学研究部
結核対策の欠如のため,結核のまん延をコントロールでき
臨床学科
ないでいる。また,効果的でない対策はかえって多剤耐性
御手洗 聡
結核を生み出してしまう。薬剤耐性結核は特に治療が困難
であり,耐性結核を作り出し,かつ拡散・まん延させてし
非常に低い多剤耐性結核の治癒率
現在世界では毎年約800万人の新規結核患者が発生し,
8
07/2002 複十字 No.286
まうサイクルが完成してしまうと多剤耐性結核患者を増加
させることになる。
実際に短期化学療法では,初回治療でも再治療でも,
第77回日本結核病学会総会
招請講演「現代の薬剤耐性結核の問題とそのコントロールについて」
耐性薬剤数が増加するに従って治癒率が低下することが示
各抗結核薬は結核菌の細胞壁・細胞膜を通過して,それぞ
されている。薬剤耐性がない初回治療患者では85.0%が治癒
れの標的部位に作用する。菌体内に入った薬剤を外に汲み
するが,4剤耐性では50.8%まで低下する。特に再治療例で4
出す機構や,薬剤の活性化を阻害する機構,さらには標的
剤に耐性がある場合には,治癒率は24.5%にすぎない。
となる物質を変化させて作用を回避する機構などが分かっ
ここで言う短期化学療法は,イソニコチン酸ヒドラジド
ており,それぞれに対応する遺伝子なども解析が進んでい
(INH),リファンピシン(RFP),ピラジナミド
る。しかし責任遺伝子が特定されていない耐性機構も未だ
(PZA)及びエタンブトール(EB)(あるいはストレ
存在し,今後の研究が期待される。
プトマイシン(SM))による6カ月あるいは8カ月治療
薬剤感受性検査
を標準とする。少なくともINHとRFPに耐性を有する
多剤耐性結核の場合,治療は極めて困難であり,しばしば
薬剤感受性検査そのものについて言うと,INHとRFP
慢性化する。初回治療多剤耐性の6∼8カ月の治療期間で
については結果の信頼性は極めて高いと言える。しかし,
は治癒率は27∼52%程度であり,再治療ではさらに悪い成
いくつかの薬剤(特に二次薬)では耐性の基準がはっきり
績である。このように,多剤耐性結核は1度成立してしま
していない,あるいは物理的化学的環境による結果の不確
うと治療が困難であり,しかるにいかなる状況下でも多剤
定性がある等の理由から,結果が信頼できるとは言えない
耐性結核を作らないことが最も重要となる。
場合がある。
薬剤耐性基準を設定するのは容易ではないが,もしその
薬剤耐性の機構
基準が臨床病態を反映していなければ検査は無意味である。
薬剤耐性はいつでもどこでも発生しうる。図1に薬剤耐
INHでは,臨床経過等から感受性と思われる菌株と,耐
性結核の発生機序を示しているが,最初に自然に発生した
性と思われる菌株のそれぞれについて最小発育阻止濃度(M
薬剤耐性変異株が,不適当・不定期な治療によって選択さ
IC)を測定すると,濃度が0.2μg/mlでそれらの2種類の
れる。これは獲得耐性であるが,やがてその耐性株は他者
株を区別する力(discrimination power)が最大になる。言
に新たな感染を引き起こし,初回耐性患者を発生させる。
い換えれば,その濃度で検査を行えば,感受性か耐性かを
これがさらに次に伝搬すると,耐性菌感染の拡散が始まる
最も効率良く区別することができることになる。また,この
ことになる。結核患者の管理の失敗や診断・治療の遅れが
濃度でのそれぞれの耐性の比率をみると,1.0%において最
これを助長する。
も効率よく両者を区別することが可能となる。SMでも同
次に,結核菌の薬剤耐性機構はどうなっているであろうか。
様のことが言える。
図1. 薬剤耐性の発生機序及びその伝搬
薬剤耐性結核
発生と拡散
(2)
新規患者
初回耐性
(新規患者の
薬剤耐性)
新規患者 薬剤耐性変異
薬剤耐性選択
不適切な治療
プロトコール
不規則な治療
治療失敗例
発
生
不適切な
患者管理
(1)
獲得耐性
(治療歴のあ る薬剤耐性)
結核対策の
不備
診断治療の
遅れ
拡散
診断治療の
遅れ
拡
散
複合薬剤耐性
=(1)+(2)
(2)
単剤耐性
初回耐性
複数薬剤耐性:
(新規患者の
多剤耐性
薬剤耐性) 新規患者 (INH+RFPに耐性)
07/2002 複十字 No.286
9
招請講演「現代の薬剤耐性結核の問題とそのコントロールについて」
しかしEBのように,2つの検査室の間で基準とすべき濃
多剤耐性頻度の中にあり,再治療患者における薬剤耐性は,
度が異なる場合がある(図2)。
それが全体を正しく反映しているものであれば,結核対策
の有効性を評価する良い指標となる。結核対策が有効に機
図2.EBにおける薬剤耐性基準の検査室間での相違
100
90
80
70
60
累
積 50
百 40
分 30
20
10
0
能していれば再治療のほとんどは再発であり,耐性頻度は
低くあるべきである。しかし,プログラムがうまく機能し
ていない場合は治療失敗が増加し,再治療例が増加する。
38.8
41.9
効果的な対策はDOTS
では,薬剤耐性の問題にはどのような対策が最も効果的
KPS(104strains)
HKPS(333strains)
0
1.4
2
2.8
4
5.6
8
であり,その発生を抑えるのに有効であるか。対策は極めて
単純であり,要するに治癒率を高めればよい。これには直接
16
最小発育阻止濃度(mcg/ml)
監視下療法(DOTS)が有効であり,Weisらの報告では,
KPS=推定感受性韓国株;BPR=推定耐性英国株;HKPS=推定感受性香港株
DOTS採用以前には20.9%あった治療失敗・再発がDOT
レ−ベンシュタイン・イエンセン培地による絶対濃度法
S採用により5.5%にまで低下し,これに伴って獲得耐性も
10.3%から1.4%にまで低下している。同様の報告は数多くあ
このように,薬剤感受性検査は環境によって変化すること
り,これからの結核対策で何をなすべきかは明白である。
があることを知るべきである。また,INHでは
韓国における実際例を示す(図3)。1980年までは薬剤
discrimination powerが大きいのに比べて,EBではそれが
耐性率は増加傾向にあったが,その後は塗抹陽性患者発生
小さいことも特徴の1つである。これは,INHやRFP
数とともに持続的に低下している。この理由は治癒率の上
では実際の薬剤血中濃度(最大値)はMICの80∼100倍で
昇を見れば明らかで,75年には27%に過ぎなかった治癒率
あり,薬剤感受性結果は信頼性が高いのに対して,EBや
が,短期化学療法の採用と患者管理の改善により,90年代
ニューキノロンでは薬剤血中濃度がMICに近いためであ
にはほぼ80%に達している。このように治癒率を上げる以
る。
上に効果的な薬剤耐性コントロールはないと言える。
世界の疫学的状況
図3.韓国における患者管理の改善と薬剤耐性に及ぼす影響
薬剤耐性結核の疫学的状況を知るため,世界保健機関
(WHO)と国際結核肺疾患予防連合(IUATLD)が1984
年に世界規模の薬剤耐性サーベイランスを企画し,実施の
110
ためのガイドラインを作成した。これに従ってこれまで72
100
カ国でサーベイランスが実施され,97年と2000年に結果が発
表されている。
初回治療患者の場合
それによると,初回治療患者においてINH,RFP,
EB及びSMのいずれか1剤でも耐性を有する結核菌は1.7∼
40.6%(平均11.1%)に認められており,多剤耐性菌は0∼
獲得多剤耐性率
治癒率
塗抹陽性患者/100,000
初回耐性率
獲得耐性率
106
90
百
分
率
/
実
数
/
10
万
83
80
80
74.1
60
治癒率
60
56
20
23.9
70
80
76
20.1
75
0
4.3
80
79
79
64
55.8
51
46.8
38
30
19.8
1.1 1.2
65
74
30.6
27
30
のの,一般的には1剤でも耐性を示す薬剤耐性(any
77
70
42
40
0
77
63
63
55.2
50
10
83
75.4
70.0
70
14.1%(平均1.1%)存在している。いくつかの例外はあるも
resistance)と多剤耐性率は相関している。エストニアや中
初回多剤耐性率
17.4
2.5
85
15.0
14.5
0
90
25.0
17.9
10.5
1.6 1.9
95
25 22
21.9
10.6
7.1
2.2
98
調査年
国の河南省などは,耐性が高率に認められる地域である。
10
INH耐性が最も頻繁に認められ,SM耐性がそれに続い
最終的に,薬剤耐性の問題はいかにそれを解決するかで
ている。これは,それらの薬剤が最も広く使用された結果で
はなく,いかにその発生を予防するかである。現時点では,
ある。
多剤耐性菌の問題は,新たな感染による拡散(初回耐性)
再治療患者の場合
よりも,新たな耐性菌の発生(獲得耐性)によるところが
再治療患者では,1剤でも耐性を有する結核菌の頻度は
大きいと信じられている。従って,耐性患者の発見と可能な
8.3∼68.5%(平均25.2%)と極めて高く,多剤耐性は0∼
限りの治療は当然であるが,それ以上に我々は新たな耐性
48.2%(平均8.7%)である。80%の国々が3.1∼28.1%の
菌を作り出さないことに最大の努力を注がねばならない。
07/2002 複十字 No.286
第77回日本結核病学会総会
シンポジウム「アジアの結核」
座長・執筆
地域からであった。喀痰塗抹陽性結核では推計患者発生数の
結核研究所国際協力部副部長
40%,約153万人が報告され,そのうち102万人,推計患者発
須知 雅史
生数の27%がDOTS地域からであった。99年に発見された
新・喀痰塗抹陽性患者の治療成功率は80%であった。 また,参加者の理解を容易にするため,患者発見率(報
はじめに
告数/喀痰塗抹陽性推計患者発生数)及びDOTS患者発
総会初日の午後,シンポジウム「アジアの結核」が行わ
れた。本シンポジウムでは,世界の結核患者発生数の60%
見率(DOTS地域からの報告数/喀痰塗抹陽性推計患者
発生数)の定義について確認が行われた。
以上を占めるアジアのフィリピン,ネパール,カンボディ
ア,中国,ベトナムの5カ国の結核対策責任者を招き,各
フィリピン:パイロット地域の構築と拡大,維持
国における結核の現状とその対策の実際,WHOの推奨す
る結核対策戦略であるDOTS戦略の進展,そして,それ
ぞれの結核対策の特徴に焦点が当てられた。
世界の結核とその対策の現状
クリスティーナ・B・ギャンゴ氏(フィリピン)
まず,フィリピン共和国セブ州衛生部のクリスティーナ・
B・ギャンゴ技術課長より,パイロット地域活動に焦点を
当てた報告があった。フィリピンでは,1968年から結核対
座長の建野氏(右),須知氏(筆者)
策が一般保健医療サービス(特に保健所)において実施さ
建野正毅座長(国立国際医療センター)による挨拶の後,
れていたが,93年に実施されたWHOによる外部評価にお
共同座長の筆者から,DOTS戦略のおさらい,世界の結核
いてその問題点を指摘され,診断精度,患者管理,そして
の現状とその対策の実際が報告された。2000年では,148の
対策の評価のための記録・報告の向上を目指した対策指針
国と地域においてDOTS戦略が採用され,世界人口の55%
の改定を行った。94年から,日本の国際協力事業団(JI
がDOTSサービスを受けることができる地域に居住してい
CA)の協力のもとにセブ州においてその試行が行われた。
た。全結核推計患者発生数の42%,約367万人がWHOに報
その施行に先立ち,地方自治体への詳細な説明,保健医療
告され,そのうち198万人がDOTS戦略を実施している
施設の現状分析,必要資機材の提供,すべての医療従事者
07/2002 複十字 No.286
11
に対する研修が注意深く実施された。その結果,3回の喀
民指導者,医療従事者,ジャーナリスト,教師や,地方自
痰塗抹検査実施の導入(90%に),有症状被検者中の高い
治体,NGO,医学教育機関の代表,そして結核患者など
塗抹陽性率(3%から10%に),そして高い治癒率(50%
を含む,やる気のある人々から構成される組織である。こ
から80%に)が示され,この新しい対策指針はセブ州全域
の組織はどの治療センターにも設立され,診療所や病院な
に段階的に拡大されることとなったことなどを報告した。
どのあらゆる政府系医療機関,そしてNGOや私的医療機
新しい指針の導入以降,上記の良好な成績は維持・向上
関,難民キャンプをも巻き込んだ広範な施設において服薬
され,3回の喀痰塗抹検査の実施は97%,有症状被検者中
確認の実施を可能とした。これらの活動のために,日本を
の塗抹陽性率は19%,治癒率は90%を超え,塗抹陽性患者
はじめとする支援国,現地NGOや国際NGO,婦人会な
届出率(人口10万対)は99年の98.5をピークに減少に転じ,
どの積極的な取り組みが重要であったことも報告した。
01年には81.2となった。さらに,服薬確認のために地域の
そして,これらの取り組みにより人口の85%がDOTS
保健ボランティアが訓練され,85%の患者の服薬確認がボ
戦略の恩恵を受けることが可能で,患者発見率は69%,治
ランティアによってなされている。95年からは塗抹スライ
療成功率は90%に達するまでになった。しかし,今後の課
ドの質を含む喀痰塗抹検査の精度管理が導入され,偽陰性,
題として,いかに現在の好成績を維持するか,より地理的
偽陽性がモニターされるようになった。また,01年からは
条件の厳しい地域への拡大,検査室ネットワークや薬剤供
私的医療機関との連携のもとに結核診査会が活動を始め,
給システムの向上,人的資源の確保などが示された。
塗抹陰性患者のレントゲン診断の向上を図っている。これ
らの成功により,セブ州で試行が始まった新しい結核対策
カンボディア:HIV/TBと保健機構改革
指針は,全国で実施されるに至ったという,パイロット活
動の成功例が紹介された。
ネパール:交通困難な地域におけるDOTS
タン・イエン・マオ氏(カンボディア)
続いて,カンボディア王国国立結核・ハンセン病対策セ
ンターのタン・イエン・マオ所長が,HIV/TBと保健機構
ディル・シン・バム氏(ネパール)
12
改革について報告した。カンボディアは,推定罹患率は人
口10万対540とされアジアでは最悪であるが,1994年から
続いて,ネパール王国国立結核センターのディル・シン・
DOTS戦略が導入され,98年には公立病院を中心に全国
バム所長が,医療サービスに到達困難な状況下における
に普及し,90%以上の高い治癒率を達成した。しかし,90
DOTSに焦点を当て報告した。ネパールでのDOTS実
年代に入りHIV感染が急速に拡大し,結核の状況を悪化
施においては,移民,貧困,言語,性といった社会文化的
させている。96年から保健機構改革が実施され,公立病院
な,そして地理,気候といった環境的な,様々な障壁が存
の減少と保健所の増加は,当初は結核対策施設の減少とい
在することがまず紹介された。しかし,厳密な服薬確認の
う悪影響を及ぼしたが,現在WHOとJICAとの協力の
重要性は変わらず,治癒率35%の「服薬確認無し」,同60%
もとで行われている結核対策の保健所への導入の試みは,
の「家族による服薬確認」に比し,「医療従事者による服
患者発見の向上をもたらすことを示唆していると報告した。
薬確認」では治癒率90%を達成できることから,様々な取
91年に初めてHIV感染者が報告され,結核患者中のH
り組みがなされてきた。その具体例として,様々なグルー
IV陽性者の割合は95年の2.5%から99年の7.9%へと急速に
プの人々を巻き込んだDOTS委員会の重要性について述
増加している。この現状に対し,結核対策のもとに
べられた。これは,ソーシャルワーカー,政治指導者,住
HIV/TBの委員会を設置し,また国家エイズ対策との連携
07/2002 複十字 No.286
第77回日本結核病学会総会
シンポジウム「アジアの結核」
を開始した。また,国立結核・ハンセン病対策センターに
ベトナム:WHO世界目標達成までの道のり
おけるHIV陽性者に対する結核健診の試行を開始したこ
となども紹介した。
中国:世銀プロジェクトと実態調査
レ・バ・トゥン氏(ベトナム)
最後に,ベトナム社会主義共和国ファム・ゴ・タック結
核肺疾患センターのレ・バ・トゥン顧問が,治癒率85%,
患者発見率70%の世界目標を達成した数少ない国であるベ
ドアンム・ホンジン氏(中国)
トナムの例を紹介した。ベトナムでは,1957年からWHO
さらに,中華人民共和国国立結核対策センターのドアン
の勧告に従い結核対策が始められ,86年からは服薬確認下
ム・ホンジン前所長が,大規模な成功を収めた世界銀行プ
での標準化学療法(リファンピシンを含まない9カ月療法)
ロジェクトと最新の実態調査の結果について報告した。
を用いた新しい結核対策が,郡そして州単位に段階的に導
1990年以前の中国では,患者の85%が適切な患者管理を受
入された。さらに,89年からは短期化学療法が導入され,
けることなく治療され,多くの患者が治療から脱落してい
標準化学療法と徐々に入れ替えられた。さらに95年,政府
た。しかし,91年に結核対策規則が導入され,92年から世
は国家・州結核対策運営委員会を設置し,塗抹陽性結核患
界銀行の借款を活用した,DOTS戦略に基づく新たな結
者の発見・治癒,結核対策従事者の管理能力,すべての結
核対策を開始した。無料による診断と服薬確認下における
核対策関連機関の連携などの強化が図られた。そして00年
標準短期化学療法が導入され,80年に52%だった治癒率が
には,人口の99.8%がDOTS戦略を利用でき,患者発見
94年には90%まで改善した。そして,92年から99年にかけ
率は80%,治癒率は89年の85.3%から99年の90.3%と良好な
て140万人の塗抹陽性結核患者が発見され,その治癒率は
状態を維持し,WHOの世界目標を達成していることを紹
93.6%であったことが紹介された。
介した。これは,結核対策に対する政府や自治体の積極的
00年に第4回全国実態調査が実施され,活動性結核有病
な関与と共に,WHO,国際結核肺疾患予防連合,オラン
率は人口10万対367(約500万人),菌陽性肺結核有病率は
ダ王立結核予防会など多くの機関との国際的な連携による
同160(約200万人),塗抹陽性肺結核有病率は同122(約
ものであると強調した。今後の課題として,都市を中心と
150万人),結核死亡率は同9.8(年間約13万人)であった
して,私的医療機関の取り込みやAIDSなど他のプログ
ことが報告された。現在,DOTS戦略を利用可能な地域
ラムとの連携などが必要であることを示した。
に住む人々は人口の64%,そしてDOTS患者発見率は34
%であると報告した。 おわりに
今後の課題として,世界銀行,英国,日本などによる
これらの国々は,社会基盤が脆弱で,医療資源も十分では
DOTS戦略地域の拡大,既存の結核対策の質の維持など
ない。しかしそのような状況の中で,DOTS戦略の導入
を示した。最後に,実態調査の結果から1990年から2000年
と普及に成功している国々であり,また,高い治療成功率
までの世界銀行プロジェクト地域とその他の地域の有病率
も維持している。本シンポジウムを通じ,これら様々な国
減少に触れ,例えば塗抹陽性結核でみると世界銀行プロジ
の経験から学ぶものは大きいと考えられ,今後のわが国の
ェクト地域では人口10万対142から同79へ大きく減少したの
結核対策にとっても参考になることを期待したい。
に比し,その他の地域では同130から114とわずかな減少に
とどまり,かつ逆転した点を紹介し,DOTS戦略に基づ
いた結核対策の有効性を明確に示した。
07/2002 複十字 No.286
13
低蔓延国となったオランダ・ドイツの
結核対策から学ぶ
―保健師の役割を中心に―
結核研究所 対策支援部保健看護学科科長代理 永田 容子
大阪市保健所 保健医療対策課主査 有馬 和代
ヴィースバーデン市民病院感染症病棟にて。前列左から結核研究所永田氏(筆者)、
同中西氏、大阪市保健所有馬氏(筆者)、結核研究所山下氏。後列中央は感染症病棟
責任医、右隣がヴィースバーデン市フォルスボム保健所長。ほか病院スタッフたち。
第二次世界大戦前,日本と同様に死亡率が人口10万対
100を超えていたオランダ・ドイツが,1930年頃から国の
総力をあげた結核対策とその後の抗結核薬の使用で,劇的
な死亡率の減少という成果を収めました。現在では世界で
最も結核制圧が進み,低蔓延国となったオランダ・ドイツ
の結核対策の歴史と現状について学ぶべく,今回,国際共
同研究「低蔓延国の結核対策における保健看護専門職の役
割―オランダ・ドイツが低蔓延国となった結核対策から学
ぶ―」(班長:山下武子)の一環として,現地を訪問する
機会を得ました。
訪問施設 オランダ:アムステルダム保健所(GG&GD Amsterdam)
ハーグ保健所(GGD Hague)
ド イ ツ:ヴィ−スバーデン市保健所
(Public Health Center,Wiesbaden)
訪問期間 平成14年3月1日∼8日
訪問記1
患者へのVIP対応こそが
最大のインセンティブ
永田 容子
オランダ・ドイツの結核状況
オランダ
人口は約1,600万人(うち外国人約200万人),保健所
は全国で43カ所あります。近年の新登録患者は約1,400
人(うち外国人は56%),罹患率は人口10万対8.9
(1999年)です。患者発見の約70%は有症状受診,接触
者健診からは10%,移民・刑務所等のハイリスク者健
診からは20%の発見です。何らかの薬剤耐性を持って
いる率は意外に多く,11%(すべて外国人)です。
今回訪問した首都アムステルダム市の人口は約72万
人,新登録患者は210人,アムステルダムのような大都
市では低蔓延の中でも亡命者・移民・難民・AIDS患
者の増加,薬物中毒,アルコール問題,ホームレスなど
複雑な結核問題を抱えています。また,行政の中心である
ハーグ市の人口は約45万人,新登録患者は1年間に90人で
す。北海に近く落ち着いた趣があり,ベルギー王室が居住
するロイヤルシティでもあります。
ドイツ
人口は8,200万人(うち外国人750万人),16州に分かれ
14
07/2002 複十字 No.286
ており,保健所は全国で430カ所あります。一般患者の
平均入院期間は約10日,結核の場合は約25日です。新登
録患者は9,064人(うち外国人は約30%)
,罹患率人口10万対
11(00年)です。青年層での結核は外国人に多く,ドイツ人
では高齢者に多くなっています。受診後8∼10週内に診断さ
れないと「診断の遅れ」となります。患者発見の78%は有症
状受診であり,7%は接触者健診からの発見です。また,4
%が難民健診からの発見です。届出は開業医,病院,検査室
から出されます。00年の調査では患者の8.7%が何らかの薬剤
耐性を持っており,多剤耐性は1.7%です。
今回訪問したヴィースバーデン市はヘッセン州の首都で
あり,人口約27万人,治安のよい町として知られています。
1人1人の患者を完治させるために必要な
服薬の支援活動
オランダ・ドイツでは,自治体保健所の結核対策室が患者
の登録や接触者健診,患者支援を行っており,日本の保健
所と似た専門的,指導的な業務に携わっています。結核対
策室には結核専門保健師を配置し,患者の服薬支援を行う
責務を法的に位置付けています。保健師は,DOTSを行
う対象と方法について自由な発想で患者と話し合い,同意
を得て,いつ,どこで,どういう方法で行うのか,なぜ必
要なのか,患者に合わせた方法を個々に決定しています。
自己管理ができる患者への服薬支援は,確認方法を患者
と相談し,全員の患者をその支援の対象としています。こ
れについても保健師に管理する責務があります。
1)オランダ:アムステルダム保健所
6カ月間服薬を継続することは難しいことです。オラン
ダでの工夫としては,薬箱(聖書のような本の大きさ)を全
患者へ渡しています。この箱を開くと1日分の薬の
ケースが1週間分(7つ)あり,1日分のケースを取り出し
持ち運ぶこともできます。患者自身で薬を箱の中に入れる,
あるいは,一部の患者は保健所に来て薬を箱の中に入れるの
を確認するなど,患者に合わせた方法で行っています。
保健師は,服薬を忘れないために,色の付いている薬
を朝に,色の付いていない薬を夜に飲むことで間違えず
確実に服薬できるといったアドバイスを具体的に紹介し
ます。また,電話や訪問等により服薬の確認を行い,患
者には「不安や疑問が生じたときにはいつでも相談して
ください」と伝えています。その頻度は患者によって異
なり,週1回であったり,月に数回であったりします。
2)オランダ:ハーグ保健所
3人の保健師が患者情報を共有化し,チームで支援に当
たっています。1人の保健師は25人の患者を受け持ってい
ます。患者支援に困難な患者がいる場合には治療に時間が
かかるので,1人が20人を受け持つこともあります。
3)ドイツ:ヴィ−スバーデン保健所
保健師は1名で1年間に20人の新登録患者を受け持って
います。全体業務の約3割が結核で占められています。
保健師の訪問
保健師は届出から3日以内に訪問し,治療成功のため
の支援を行いたいこと,結核が感染症であることを患者に
伝えます。医師からの説明を補足し,結核に関して多くの
質問に丁寧に答えます。患者とは2∼3回会い,医師と協
力してDOTSの適応を見極めます。患者からの情報を待
つのではなく,保健師の方から情報を収集していきます。
患者の治療成功は保健師活動の成功でもあるのです。
患者の行動を制限させる
(法律に基づく)
診断後は感染拡大防止のため在宅での治療開始となる
ので,喀痰塗抹陽性患者は4週間外出禁止であることを
伝えます。その間の不安が強い初期には,他への感染防
止で配慮すべき注意点や衣食住の問題は起こっていない
かなど,生活全般を含めた過ごし方の工夫も伝えます。
全員の患者に服薬支援
95%の患者には自己管理のための服薬支援,5%の患者
がDOTSをしています。
患者発見時に徹底した接触者健診
保健師より薬箱の説明を受ける(アムステルダム)
オランダ・ドイツ共に患者発見時に徹底した接触者健
診(オランダでは全患者にRFLP検査)を実施していま
す。詳細な情報の収集と疫学的調査に基づき,同心円方式
家庭訪問を体験(ハーグ)
女性,20歳代,コロンビア人。2DKのアパートに,夫
と2人暮らし。2カ月の内服を終了したので,その後自分
で薬の管理ができているかどうかを確認するための家庭訪
問が行われました。
経過:昨年12月,咳が1カ月続き,最初ホームドクター
を受診するが,そこでは診断がはっきりせず,ハーグ保健所を
受診するように勧められ,発見されました。喀痰塗抹陰性。
発病当初,彼女は幼児とかかわる仕事をしており,子供たち
訪問したコロンビア人の患者宅(ハーグ)
に感染させたのではと,不安が強かったそうです。仕事はやめ
訪問時の状況
ており,治療開始後2カ月経過し,副作用なく順調に内服継続
患者自身に,服薬箱に1週間分の薬を入れてもらい,それ
できているので,仕事を再開したいと相談がありました(夫は
を保健師が確認します。薬はすべて錠剤またはカプセルでや
コロンビアで医師の資格をとっていたが,オランダでは有効で
や大きく,1種類が1∼2個で,暖かい食事をとった後に飲
ないため,オランダで医師の資格を取る勉強をしているとのこ
むので忘れないそうです。心配なこと,不安なことがないか
とで,そのためにこの患者は働く必要がありました)。
本人へ確認し,いつでも電話で相談できることを伝えます。
感染源:彼女の姉が喀痰塗抹陽性肺結核。3カ月間咳があ
今回私たち外国人保健師の同行訪問を快諾して頂けたの
りましたが,教会には通っていました。姉の感染源は不明で
は,日頃から培われた保健師と患者との良好な信頼関係に
す。RFLP検査は実施されました。
よるものと痛感しました。
07/2002 複十字 No.286
15
で身近な家族から確実に行い,感染者が出なくなるまで
感染拡大防止及び感染源調査を丁寧に行うことを,原点
としています。濃厚接触のグループとその他のグループ
に分けそれぞれ健診内容,実施時期,実施期間を決めま
す。直接接触した人の名簿を患者と一緒に作る時,患者
との信頼関係を築くことが最も優先されます。その上で,
範囲を拡大,また追跡を終了とするなど疫学的判断をし
ています。必要に応じて患者の職場に出向き,同僚に結
核の専門的知識を伝えることもあります。
記録の簡便化とコンピュータ化
オランダでは,記録の簡便化を図るため,無駄のない
記録用紙で,必要最小限の記録のみです。またコンピュ
ータ化が進み,私が7年前訪れた時に見た登録票の姿は
ありませんでした。
結核対策専門技術者研修
オランダでは,年2回2日間ずつ,結核専門保健師に対
し専門的知識の向上・維持を目的とした研修会が提供され
ています。定期的な研修の機会は,質の高い専門的知識や
ケースワークの共有化に有効であり,また研修の機会を通
しお互いが顔見知りとなることで,地域を越えての様々な
連携の契機となっており,毎年必ず受講しています。
ドイツでも,毎年国が企画する研修(結核の専門的知
識)が1日,そのフォロー研修が地域で1回開催されて
おり,結核専門保健師は必ず受講しています。
終わりに
今回訪問させていただき,何よりも感銘を受けたこと
は,患者に対する対応がとても丁寧であり『VIP並み
の最高のもてなしこそが最大のインセンティブである』
という考え方です。結核にとって1番大切なことは,患
者が確実に抗結核薬を必要期間飲み続けることです。患
者との共同作業である服薬支援活動は,患者のニーズに
応じた個別アプローチやコミュニケーションであり保健
師の力量にかかってきます。信頼を築くための努力と保
健サービスの提供を惜しんではならないと考えさせられ
ると共に,日本での患者支援策の基本がオランダ・ドイ
ツと大きく離れていなかったことを確認できたことも,
大きな収穫の1つでした。
訪問記2
大阪市のDOTS事業と比べて
∼「患者に寄り添う看護」がキーワード∼
有馬 和代
オランダ・ドイツでのDOTSによる結核対策
オランダ
オランダでのDOTSは,ホームレス,薬物常習者,
アルコール依存者,不法入国者,反抗的な人(思春期の
反抗期の人も含む),中断者,再発者など継続内服が困
難であると考えられる人たちを対象に1995年頃から行っ
ていました。
オランダの初期治療での入院期間は,約1週間という
短い期間ということに驚いたと同時に,患者を取り巻く
人たちから感染を危惧する声は上がらないのだろうかと
いう疑問から質問すると,「確実に内服治療しているの
で,感染の危険性はもうない」とはっきり言い切られ,
「なぜ日本ではそんなに長く入院するのだ。自分であれば
耐えられない」という返事があり,反対に私が質問に答え
られない状況でした。入院期間が日本のように長期ではな
いので,患者に対して継続内服の重要性を十分説明し,患
者本人のアドヒアランスが高まるための患者教育は,結核
専門保健師の重要な役割となっているようです。
結核患者の中でDOTS実施の必要者は,主治医,保
健師,結核監視官(専門医)により病院内で実施される
月1回のミーティングで選定され,DOTSの回数,場
所や方法を患者本人と保健師が十分話し合いながら決め
16
07/2002 複十字 No.286
ていました。このミーティングにより,患者自身が「自
分にとってDOTSは必要であり,大切な行為なのだ」
ということを理解し,治療完了に向けて保健師と共にが
んばっていこうという気持ちが高まってくるようです。
DOTSは,保健師自身またはDOTSアシスタント
が行い,最初の2カ月は毎日行うのですが,治療チーム
が大丈夫だと判断した場合は回数が減ります。DOTS
アシスタントはDOTS行為のみを行い,患者にアドバ
イスをしてはいけないことになっており,DOTS行為
がうまくいっていない時は,保健師に伝えることになっ
ていました。あくまでもDOTSのコーディネーターは,
保健師であるということです。この点は,大阪市のふれ
あいDOTSにおける訪問服薬支援者と保健師の役割と
同じ体制となっていました。
インセンティブはDOTSの実施場所までの交通費で,
DOTSが「患者自身が自分の結核を治す当たり前の行
為」であることから,アメリカ式のDOTSのように,
薬を飲めば報酬としてお金を渡すということはないとの
ことです。
アムステルダム保健所においては,現在16人の患者に
保健所でDOTSをしており,保健所以外にも 共同生
活寮(50∼60代の男性が入居できる保護寮)の看護師が
実施したり,麻薬中毒者には,専用寮内で行ったりして
いました(麻薬中毒者3,000人中5∼6人)。また,ソマ
リア人は移動生活を行う民族なので継続内服が難しく,
症状がなくなると飲まなくなるので,ソマリア人の患者
はすべてDOTS対象としているようです。
オランダでのDOTSは,「患者の服薬を管理する」
という意味合いではなく,「患者自身が結核を治そうと
する行為に対して,専門職がサポートする」というスタ
ンスで患者に関わっているため,DOTSは患者の同意
のもとでスタートされ,DOTSに来た患者にコーヒー
を出したりして快く受け入れ,来てくれたことを喜び,
患者を励まし,そして患者は保健師とそのひとときを楽
しんで帰る,というものでした。
患者が薬を飲むことを拒否した時は,なぜ患者が飲ま
なくなったのか理由を十分把握し,飲むことの重要性を
理解してもらえるように説得するそうです。しかしそれ
でも内服を拒否する場合は,法的に(感染法により)病
院内に個室隔離することができます。この審査に当たっ
ては,弁護士・保健所長・市長の許可が必要となってい
ます。「個別隔離のことを患者に伝えると,ほとんどの
患者が継続内服をするようですが,法的制裁があるという
ことを前面に出して患者に継続内服させるのではなく,あ
くまでも患者と保健師のよりよい関係の中で,継続して
DOTSが行われていくことが重要です」という保健師
の言葉が印象的でした。
ドイツ ドイツにおけるDOTSもオランダととてもよく似て
おり,ホームレスなどハイリスク患者に対して行ってい
ました。ヴィースバーデンでは過去5年間(1996∼00年)
に280人の患者が発生し,DOTSは14人(5%)に行
い,これまでの12年間で1人が裁判にかけられ,1%弱
が隔離治療となっています。また,ドイツでも,裁判に
かけ法的に隔離治療が行えるようにしていましたが,強
制的な法律を背にしつつも保健師は患者との関係を大切
にして,患者がDOTSに来た時は飲み物を渡し,暖か
い雰囲気に包んであげ,親切に対応すると言っていまし
た。そのため,患者はDOTSが終了しても保健師のも
とを訪れてくるそうです。
終わりに
今回,低蔓延国におけるオランダ,ドイツの結核対策
現場を訪問させていただき,現在日本で行われている対
策が40年ほど遅れていることにショックを受けました。
また,オランダは,低蔓延国となったからといって結
核対策に手を抜くのではなく,HIV患者や薬物中毒者の
問題から結核問題が再燃する恐れがあることを行政が十分
理解しているため,不必要な対策はスクラップし,DOT
S事業,患者支援活動,接触者健診など重要な対策には,
丁寧にそして確実なシステムを確立させていました。世界
との交流が多く,移民の受け入れを積極的に行っている海
抜0mの国オランダは,結核対策においても水際作戦には
落ち度がない,という印象を受けました。
ドイツでは,結核対策において,患者や保健師・看護
師・医師など結核対策に携わるそれぞれの立場の人たち
が,結核を無くしていくために人権の尊重や職務の権限
と義務を明確にし,そして,実施しなかった時,守れな
かった時の罰則を設けるなどして,結核対策を誰が行っ
ても確実に実施できるように,法的な整備を行っていま
した。日本では,昭和26年に制定された結核予防法が改
定されようとしていますが,ドイツ・オランダでの結核
対策における法的制度はとても参考になると思いました。
低蔓延国オランダと大阪市におけるDOTSの違い
オランダ
大阪市
DOTSの選定者と
開始決定者
・結核監視官,主治医,保健師が月1回のミー ・ 医師,看護師,保健師によるDOTSカンファレンス
ティングで決定
あいりんDOTS認定委員会
・患者の同意で開始
・患者の同意で開始
DOTSの対象者
・ホームレス
・薬物中毒者
・アルコール依存者
・中断者・不法入国者
・再発者 等
・あいりんの結核患者
・住所不定者など服薬支援が必要と考えられる患者
・喀痰塗抹陽性患者
地域でのDOTSに至る
まで(入院期間)
平均1週間
結核の確定診断が出る期間
平均 2 ∼ 3 カ月
排菌していないという確定結果が出るまで
アドヒアランスを高める
手段
保健師による患者教育
入院中の看護師,薬剤師等による院内でのDOTS
DOTSの場所
・患者と保健師との話し合いにより決定
・拠点型と訪問型
・保健所,自宅,寮
「あいりんDOTS」拠点型:病院,寮
「ふれあいDOTS」訪問型:自宅,職場,保健
センター
DOTS期間と方法
期 間:標準治療期間(6カ月が主)
糖尿病等の合併症があっても6カ月治療
回 数:毎日∼週数回
実施者:保健師,アシスタント
期 間:標準治療期間
糖尿病等の合併症があれば治療期間や
DOT期間は延長
回 数:週5日∼1日
実施者:服薬支援者(看護職)
インセンティブ
DOTS場所までの交通費
「あいりんDOTS」:栄養ドリンク
「ふれあいDOTS」:なし
法的制裁
(服薬拒否の場合)
あり
なし
病院内で個別隔離
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17
和歌山県結核対策検討委員会
和歌山
∼診査機能強化と3カ月承認∼
岡澤 利彦
○岡澤 利彦,長谷 孝夫(和歌山県
福祉保健部健康対策課),内田 史
(和歌山県海南保健所),黒田 恵美
(和歌山市保健所),笠松 美恵(和
歌山市保健所西保健センター)
はじめに
この事業は,平成12年度より3年間を目途に,和
歌山県(7保健所1支所)と中核市である和歌山市
(1保健所)が共同で,結核予防会結核研究所,複
十字病院及び県医師会並びに国立療養所和歌山病院
の協力・支援を得て実施している事業です。
【目 的】
特に,年齢階級別罹患率をみると60歳代で81.9,70
歳以上で167.1 と,全国平均に比して非常に高い状態
です。一方,年齢階級別喀痰塗抹陽性罹患率のそれ
をみると,全国平均と比して差異がありませんでし
た(図を参照)。
このことは,医療機関の結核症に対する診断精度
に検討の余地があることを疑わせました。そして,
これら症例が結核診査協議会において,ほとんど問
図 年齢階級別罹患率及び塗抹陽性罹患率全国比較
(10万対)
180.0
160.0
平成7∼11年平均県罹患率
平成11年全国平均罹患率
140.0
平成7∼11年平均県塗抹陽性罹患率
120.0
この事業の目的は,1)県内医療機関の結核診断
の精度向上を図ること。2)県下各結核診査協議会
(県4カ所,市1カ所)の診査機能の強化を図るこ
と。の2点です。
【背 景】
平成7∼11年全国塗抹陽性罹患率
100.0
80.0
60.0
40.0
20.0
平成11年における和歌山県の結核罹患率は43.6と,
全国ワースト3位の状況でした。
0.0
0∼4
5∼9 10∼14 15∼19 20∼29 30∼39 40∼49 50∼59 60∼69 70∼
参考資料1 和歌山県下の結核診査協議会に係る問題点と改善策
問 題 点
保
健
所
診
査
協
議
会
主
治
医
18
改 善 策 ( 案 )
1 菌検査結果等,診査に必要な情報が不完全な状態
で診査会に諮問しているケースがある。
1 和歌山県統一の形式審査基準を作成し,診査会提出案件
に対する保健所の事前の形式審査を徹底する。
なお形式不備のまま診査会に諮問する案件については,
提出理由を明確にするとともに,主治医に対して「保留・
不承認」となる可能性があることを事前に伝えておく。
2 診査会における診査内容・経過が十分に把握・保
存されていないケースがある。
2 案件ごとに,診査会における診査概要(記録)を文章で作
成のうえ,承認(不承認・保留)の記録に添付・保存する。
3 診査会における診査内容・経過が主治医に伝わっ
ていないケースがある。
3 主治医に対しては,審査結果を文書で通知するのに加え
て,必要に応じて,保健所長が診査内容・経過を口頭で伝
え,主治医の理解を得る。
1 県内各診査会における,診査のポイント・手法の
違いがみられる。
1 和歌山県統一の診査基準を作成し,診査の標準化を目指す。
また,診査基準によらないで承認を行う場合は,診査会と
しての診査のポイント・意見を明らかにする。
2 主治医もしくは主治医を監督する立場にある医師
が診査に参加しているケースがみられる。
2 自らが主治医もしくは主治医を監督する立場にある症例が
診査される場合には,他の診査委員からの求めに応じて,そ
の所見や背景等について説明を行う。
3 診断根拠が不十分な症例に対して,診査を行っ
ているケースがある。 3 診断根拠の不十分なものに対しては,「保留」として追加
情報の提出を求める。
1 結核予防法のシステムが理解されていないケース
がある。
1 県医師会等の協力を得て,結核予防法(特に公費負担申
請)について,講習会の開催やマニュアル作成をして広く広
報につとめる。
2 結核症の診断・治療に精通している医師が減って
きている。
2 県医師会等の協力を得て,医師を対象とした結核研修会の
開催や結核診断のテキスト配布等を行う。
また,国立療養所和歌山病院の協力を得て,県内医師を対
象とした「結核医療相談窓口」を設ける。
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題なく承認されていることに対する問題点もあると思
われました。
結核診査協議会の診査精度について
【平成12年度の検討手法】
そこで,平成12年度は,結核対策特別促進事業とし
て,次のような手法で症例検討を行いました。
1.結核研究所所属医師2名,国立療養所和歌山病院
院長,和歌山県医師会理事,各結核診査協議会代表5
名ほか,12名からなる和歌山県結核対策検討委員会を
設置する。2.各保健所において,平成12年度事業に
ついては,平成12年4∼6月の3カ月間に新規登録さ
れた肺結核患者全症例について,登録後2∼4カ月の
時点での患者の背景・菌検査結果等について調査票を
作成する。
3.これら全症例について,結核予防会所属医師2名
の協力を得て,特に検討を要する症例を選択する。
4.これら症例について,主治医の参加も求めて検討委
員会を開催し,診断根拠等について症例検討を行う。
5.検討結果を分析・評価し,医療機関・結核診査協
議会に還元する。
【平成12年度検討結果】
平成12年度結核対策検討委員会における症例検討
の結果は次のとおりとなりました。
1.対象:和歌山県下9保健所管内 73症例
2.「症例検討を要する」となった症例 22症例(30.1%)
3.うち,「肺結核と確定診断できない」とされた症例:陳
旧性の結核,肺がん,肺真菌症,非定型抗酸菌症
等他疾患も疑われる症例 16症例(21.9%)
なお,確定できないとされた主な理由は,次のと
おりでした。
○画像情報不足のまま診査している症例 7症例 (44%)
○菌検査情報不足のまま診査している症例4症例(25%)
○画像及び菌検査情報不足のまま診査している症例 1症例(6%)
○その他診査不十分な症例 4症例 (25%)
【診査ガイドラインなどの試験的導入】
上記のような症例検討の結果を受け,当結核対策
検討委員会において,和歌山県下の結核診査協議会
に係る問題点と改善策(参考資料1)をとりまとめ
ました。
併せて,平成13年度より,和歌山県下8保健所1
支所,5結核診査協議会において,下記の診査ガイ
ド等を試験的に導入することを決定しました。
・参考資料2:保健所における事前の形式審査基準
・参考資料3:和歌山県結核診査協議会における肺
結核初回申請(初回治療)のガイドライン(次頁)
3カ月承認について
【平成13年度結核診査協議会肺結核初回申請診査状況】
平成13年度における,県下の5結核診査協議会の肺
結核初回申請の診査状況は次頁(表)のとおりです。
参考資料2 保健所における事前の形式審査基準
重点確認事項
対 応
1 菌検査が適正に実施されているか。
①3日連続検痰の結果を確認
②核酸増幅法による同定検査結果の確認
③その他の菌検査(気管支洗浄液,胸
水等)結果の確認
1 3日連続検痰が実施されていなければ,実施するよう指導する。
2 喀痰が出ないことを理由に喀痰検査が実施されていなければ,ネブライザー等で
誘発することを指導し,結果を把握する。
3 培養・同定検査の実施を依頼する(診断後転院した者であっても実施を求める)。
4 核酸増幅法による同定検査が実施されている場合は,検査の種類,結果を把握する。
5 核酸増幅法で結核菌が否定された場合は,非結核性抗酸菌症の同定検査を助言する。
6 胸膜炎・髄膜炎を併発している場合は,胸水・髄液のADA値を把握する。
2 診断時のXP及び診査の参考となるX
P・CT等が提出されているか。
①過去に検診や医療機関受診により
XP検査を受けているかどうか確認
②CT等が添付されているか確認
1 過去にXP検査を受けていれば,そのXPの提出を求める。
2 他の医療機関でXPを受けている場合は,保健所がXPを借用し,診査資料として
提出する。
3 提出されたXP所見だけでは診査しがたいことが予測される場合は,CTまた
は断層の提出を求める。
3 家族歴等感染源の有無が把握されているか。
感染源が特定されている場合は,感染源となる患者の薬剤感受性結果を把握する。
4 治療歴の有無が把握されているか。
治療歴がある場合は,排菌状況,抗結核薬の種類,治療期間,薬剤感受性結果等を
把握する。
5 合併症の有無が把握されているか。
特に糖尿病,肝疾患,がん,胃疾患等の有無,ステロイド剤の使用の有無について
把握する。
6 結核と診断するまでの治療状況が把 抗生剤の使用状況等について情報を得る。
握されているか。
7 呼吸器症状の有無が把握されているか。
咳等の期間と程度について情報を得る。
○結核診査協議会終了後の留意事項
1 感染性を明確にするため,喀痰の培養検査結果,同定検査結果,薬剤感受性結果は必ず把握する。
2 保留になった症例については,次回診査協議会までに不足した情報を収集する。
07/2002 複十字 No.286
19
(単位 件)
34条関係(4∼12月)
35条関係(4∼12月)
6カ月 3カ月
6カ月 3カ月
(B)不合格 承認 承認
(D)不合格
(A)保留
(C)保留
承認 承認
3
94
124
17
2
13
1
5
計
84.9% 11.6% 1.4% 2.1% 83.2% 11.5% 0.9% 4.4%
うち、3カ月承認となった症例のその後の状況
34条3カ月承認(4∼10月
(A)
)の内訳
35条3カ月承認(4∼10月
(C)
)の内訳
13 総件数
総件数
3カ月後も肺結核として継続承認
11
5 3カ月後も35条として継続承認
2
3カ月後,非定型と判明して継続承認 3 3カ月後,非感染性として34条承認
4
診断的治療等により転症,治療終了
4 3カ月後,非定型として34条承認
2
その他(取り下げ)
1 診断的治療等により転症,治療終了
2
その他(死亡)
て,非感染性の結核であったことで,命令入所の3
カ月での打ち切りが確認されています。
このことは,結核を発病していない方に対して結
核と診断し,抗結核薬を長期に服用させることを結
核診査協議会,保健所,県・市が承認すること。非感
染性の患者に対して,従業禁止・入所命令を命じる
こと。この2点を防ぐという意味で機能したもの
と考えています。
1
【まとめ】
診査ガイドライン等の導入により,菌情報重視に
よる感染性の有・無や他疾患との鑑別診査の強化及
び,結核が疑われるが診断根拠に乏しい症例に対す
る3カ月承認を行い病状経過を観察するというシス
テムにより,結核診査協議会の診査機能が強化され,
当初肺結核と承認された症例のうち,12症例につい
て,肺結核と非定型抗酸菌症,肺真菌症や肺がん等
他疾患との鑑別がされています。また4症例につい
平成14年度は,初回申請に対する診査ガイドライ
ン充実とあわせて,肺結核治療の継続・終了の診査
ガイドライン作りを計画しています。
また,今回,初回申請に対する診査ガイドライン等
を試行する課程で生じた課題として,1)医療機関等に
対して診査協議会や保健所が難しくなったとの印象を与
えることから,患者発生届出等を行わず,結核治療する
といった結核治療の潜在化を起こさせないための対策。
2)主治医や医療機関等に対して,結核診断・診査を分
かりやすくするための,診査ガイドラインや事前の形式
審査基準の公表・広報。3)安易な結核治療の中断を認
めないために,3カ月承認となった症例に対する指導・
追跡等の対策が,併せて必要と考えています。
参考資料3:和歌山県結核診査協議会における肺結核初回申請(初回治療)診査のガイドライン
菌 検 査
画 像 所 見 他
迅速同定検査法陽性 結核陰影あり
培養検査で結核菌陽性になるお
それが極めて高い
喀痰塗抹陽性
迅速同定検査法陰性
もしくは未実施
培養検査で結核菌陽性になるお
それが極めて高いとはいえない
・非結核性抗酸菌症である可能
性が高い
35条
・デインジャ−グル−プの場合,
35条
遺伝子診断法による同定検査を依頼
(3カ月) ・培養検査結果,結核菌陰性であれ
ば,その時点で命令入所解除
34条
結核陰影あり
迅速同定検査法陽性
その他の
菌検査
陽性
34条
迅速同定検査法陽性
その他の
菌検査
陰性
・呼吸器症状等その他の状況から,
他への感染性が極めて高いと判断さ
れる場合は35条(3カ月)とする。
ただし培養検査の結果,結核菌陰
性であればその時点で命令入所解除
34条
活動性結核の所見あり
迅速同定検査法陰性
・培養検査及びその後の経過等によ
結核の診断根拠に乏しい(診断的
34条
もしくは未実施
治療等)
(3カ月) り結核と確定された場合は継続
34条
・呼吸器症状等その他の状況から,
他への感染性が極めて高いと判断さ
れる場合は35条(3カ月)とする。
ただし培養検査の結果,結核菌陰
性であればその時点で命令入所解除
34条
・感染源が明らかな場合に限る。
結核陰影あり
喀痰塗抹陰性
もしくは未実施
備 考
判 定
活動性結核の所見あり
迅速同定検査法陰性
もしくは未実施
その他の
菌検査 迅速同定検査法陰性
もしくは未実施
未実施
・培養検査結果等,その後の経過に
34条
結核の診断根拠に乏しい(診断的
(3カ月) より結核と確定された場合のみ継続
治療等)
活動性結核の所見あり
・誘発による排痰を指導
34条
・培養検査結果等,その後の経過に
(3カ月)
より結核と確定された場合のみ継続
その他の菌検査とは,喀痰以外の検体(気管支洗浄液・胃液・組織等)塗抹検査及び各培養検査を含む
20
07/2002 複十字 No.286
ずいひつ
日々是好日
結核予防会京都府支部顧問
(秩父宮妃記念結核予防事業功労賞第5回受賞者)
上田 千里
第53回結核予防全国大会で,栄ある秩父宮妃記念
結核予防功労賞を受けた。
このことは日々の仕事で,歯車の大小はあるにせ
よ京都府支部職員の協力の賜と感謝している。
私は,平成10年に退職した。今後は,自分の過去に
感謝し自分自身を大切にした価値ある人生を送りたい
との願いから,本来の仕事量は1/2位に,残りは今ま
でできなかった写真を楽しみ,自分への肥やしにして,
老化予防に役立てたいと考えた。
そこで,NHK写真教室,写真同好会に参加し撮影
会,研究会さらには作品展参加と楽しく比較的忙しい
日常生活を送って 4 年を経過した。技術的にはそれな
りにして,意義深い年月であったと喜んでいる。何を
喜んでいるかをつれづれなるままに書くことにする。
第 1 は,人間関係である。私は,原則として自分の
職種は言わないが,中には患者さん,色々な関係で
知っている方が居られるが,一般的には上田さんと
呼ばれてホッとしている。また,話す機会の少なか
った色々の職種の方(ほとんど定年退職者)と気軽に話
すことができ,かつ利害関係がないので,人として楽し
く付き合えば新しい知識や考え方を学ぶことが多い。
第 2 の写真関係では,写真の上手な方には,男女に
関係なく教えて頂く様に心掛けている。些細なこと
でも気軽に教えて頂いてありがたく思っている。先生
と生徒(生徒の考え方の進歩か?私が古いのか?)の
関係で不思議に思うことが 2 つある。それは,余り
質問をしないし,さらには撮影会の時にも,単独行
動している人が多い。私は,先生と行動を共にし,
質問点をすぐ聞くようにしている。写真関係の先生
方は,駄洒落が上手なので,調子を合わせて話せば
結構楽しく心も明るくなる。
第 3 は,景色,動植物,人間,行事等への関心が
今までとは一味も二味も違ってきた。写真撮影の諸
条件である主役,脇役,光,背景,露出,補正,フ
ィルター等々が頭に浮かぶ。この考える時間帯は苦
しくもあるが,結構楽しいものである。
旅行の楽しさも増幅されている。反面,旅行中も
撮影で時間を忘れていて,妻は半分あきらめている
ものの苦言を言う時もある。
第 4 は,手にする雑誌その他は,ほとんど写真関係と
変わってきた。他の雑誌類は年のせいかすぐ眠ること
が多いが,写真に関するものは時間を忘れている。
また,NHKテレビ画面は,写真のよい勉強資料であ
り,裏方のカメラマンの苦労や技術の高さが痛い程
伝わってくる。
第 5 に,昨年は写真展に 8 回参加したが,写真展の
重なった 9 月には,過労のためか軽い心筋梗塞になっ
た。その為,妻や子供たちから写真についてブレーキが
掛けられている。忠告はありがたく感謝しているが,喉
もと過ぎれば熱さ忘れるの諺通りで,向上心(?)と
葛藤している今日この頃である。
写真撮影は,日の出前,日の入りの時間帯が条件
としては良い。この条件を満たす宿泊続きの撮影旅行
は,疲労が多いので,やむなく中止している。
最後に,紅葉マーク(通称枯葉マーク)は人ごと
と思っていたが,今回の自動車運転免許更新は,自
動車学校でのシミュレーション運転と実技が必要と
の通知を受け複雑な気持ちではあるが,自分を見詰
めるよい切っ掛けになった。
その他,敬老乗車証,老人保健法医療受給者証等,社
会の仕組みも敬老(?)である。
防ぎ様のない老化の現実に背かずに積極的に共存し
て受け入れ,自分を明るく生きるため,日々是好日
を大切にして送ることを願っている。
黄果樹の滝(筆者撮影)
:中国貴州にあり,「カルスト瀑布」
と言われている。滝の幅81m,落差74mでアジア第1である。
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21
第4回世界結核会議
6月3日∼5日/ワシントン
世界からの結核制圧を目指して
10年間の研究の進歩
結核予防会顧問
島尾 忠男
会議開催の背景
6月3日から5日まで,米国のワシントンDCで
第4回世界結核会議が開催された。主催,共催に米
国のNIH(国立保健研究所),CDC(疾病対策予防セ
ンター),USAID(国際援助庁),国際機関としては
Stop TB や関連する諸組織,TDR(熱帯性疾患研究
研修機構)やIUATLD(国際結核肺疾患予防連合),そ
れに米国内のいくつかの関連学会や協会,さらにロ
ックフェラー財団やゲイツ財団も名を連ねた豪華版
で,実務はNIHとCDCが担当していた。
古知新博士がWHO本部の結核担当課長に1989年
に就任し,2年間の準備期間の後,91年の世界保健
総会で結核対策強化の決議が採択された。2000年ま
でに,全世界で発見される新しい塗抹陽性肺結核患
者の85%以上を治せるようにし,世界で発生する患
者の70%以上を把握するという目標を掲げ,これを
1
実現する手段としては, 結核の多い国の対策の支
2
3
援, 対策を効率よく行うための研究, 研究開発
の推進を掲げた。米国内では90年代初期にニュー
ヨーク市を中心に多剤耐性結核菌による院内感染が
多発し,結核が再度増加,これに対応するために結
核対策と研究開発のための予算が急増された。この
ような事情を背景に,第3回会議は92年にNIHの
あるワシントンDC郊外のベセスダで開催され,今
後の活動の方向について協議されたとのことである。
今回の会議はその後10年間の成果を確認し,今後
何をするべきかを協議するために開催された。会場
は市内のマリオット・ウオードマンパーク・ホテルで,
参加者は600名を超え,開発途上国からも多くの参加
者がみられた。
22
07/2002 複十字 No.286
英国王立科学大学分子微生物学,感染症センターのヤ
ング博士が見事な総説を行った。主なものを取り上げ
ると,92年には薬剤耐性の分子生物学的な研究で,結
核菌の耐性は伝達されず,単剤耐性の連鎖で多剤耐性
が発生することが分かり,耐性検査の迅速化が行わ
れた。93年には結核菌の指紋法が開発され,94年に
はそれを群別することによって,新しい感染による
発病か再燃かを判別するなど,分子疫学的な研究が
可能になった。98年には結核菌の全遺伝子が解明さ
れ,99年には世界で使用されている種々のBCGワ
クチン菌株の系統樹が解明された。
今後の課題としては,薬ではまず細胞壁合成阻害
剤の開発,10年先には分裂しない菌に効く薬の開発
を挙げ,診断では免疫を利用する診断法とツベルク
リンに代わる感染の検出法の開発を,ワクチンでは
自然免疫を上回るワクチンの開発が課題である。世
の中の出来事との対比でユーモラスに話を進めたヤ
ング博士の講演の中で,2001年の出来事としてイチ
ローの活躍を紹介したのが印象的であった。
10年間の対策の進歩
この10年間は,当初示した2000年までの目標は達
成されなかったとはいえ,結核対策が飛躍的に強化
された10年であることが,多くの演者によって示さ
れた。93年に結核の非常事態宣言が出され,94年に
1
は, 結核対策が優先施策であることを政府が公約
2
し, 患者の発見は有症状者の痰の塗抹検査で行い,
3
標準処方で服薬を見守りながら確実に治療を行い,
4
薬剤の供給が国の隅々まで遅滞なく行われる体制
5
を整備し, 患者の発生状況や治療成績を把握でき
る制度を整備することを内容とする,新しい結核対
策の基本的な考え方が示された。95年にはこの新し
い対策にDOTS(ドッツ)対策という名称が与え
られ,DOTS対策の全世界への早急な普及が最優
先課題となった。
10年前にはしっかりした結核対策を行っていた国
は15カ国に過ぎなかったのが,現在では148カ国が
DOTS対策を行っている。しかし,世界で発生し
ていると推定される塗抹陽性の肺結核患者の中で,
DOTS対策を行っている地域で発見されている患者
の割合は95年の11%から,2000年には27%まで到達し
たに過ぎず,これを加速して,2005年までに発生患者
の70%をDOTS対策実施地域で発見し,その85%を治
せる体制を整え,維持しないと,「2010年までに患者
数や死亡を半減する」というG8サミットが2000年に
沖縄で示した目標には到達できない。そのために,結
核患者数が多い23カ国に重点を置いて,国際機関や先
進国の協力の下に対策の強化が進められている。
対策を支える熱意ある指導者
結核対策の進歩と強化に関連する多くの報告の中
で,最も印象深かったのはフリーデン博士の講演で
あった。彼は90年初頭にニューヨーク市で多剤耐性
菌による院内感染を中心に結核が急増した時期に,
結核対策の責任者となり,結核診療を担当する医師
に対する個別の指導を含む適切な処方の普及,直接
保健職員が見守りながら行う確実な服薬,患者1人
ごとに治療成績の点検を厳格に行い,流行を制圧し
た実績を持っており,その後WHOの職員としてイ
ンドでDOTS対策の普及に努め,最近帰国してニ
ューヨーク市の衛生局長として活躍している。
博士は経験に基づいて次の点を強調した。治療を
見守ることは,友好的に行わねばならないが,ぜひ
必要で,それなしには治る率は70%を上回ることは
ない。家族に見守る役を担当させてはだめで,発生
した患者を治すのは国の責任であり,地域の自覚と
支援が必要である。抗結核薬の価格が低下してきて
いる現状で,薬を第一線まで確実に配布するのは政
府と援助機関の責任であり,熱意ある担当者を養成
せねばならない。多剤耐性患者は対策の精度が悪い
と容易に発生するが,その治療は容易ではない。多
剤耐性患者の治療は最優先課題ではない。発生させ
ないため,1人1人の患者を確実に治療することの
ほうが大切である。対策を維持し続けることは大切
であるが,その見通しがないからといって,対策を
始めない理由にはならない。対策を始めながら,啓
発活動によって維持することが大切である。対策成
功の鍵は業務の適切な指導,管理であり,職員の研
修を繰り返し,対策の内容をよく理解した熱意のあ
る人材がそろえば,成功する。博士の発言は,実績に
基づき,発生した患者はすべて治さずにはおくもの
かという決意と熱意に満ちたもので,参加者に強い
感銘を与えた。
マラウイで結核とエイズ対策に従事している英国
のハリース博士は,結核対策の効果を上げるための
研究の実例を紹介した。塗抹陽性肺結核患者の治療
終了後の再発率が5∼6%とやや高かったので,新
患の中に実際には再治療の患者が含まれていないか
と考え,問診や記録の点検を行ったところかなり再
治療の患者が含まれていることが明らかにされ,新
患の再発率は2∼3%で,治療に問題はないことが
分かった。また,患者発見後当初2カ月間は入院さ
せていたが,エイズの流行と共に結核の発生が増え,
病床の利用率が100%を超えてしまった。この事態に
対応するため,当初の入院を2週間とし,その後は
自宅で治療してもよいよう保健所を整備したところ,
半数以上が在宅で治療を続けるようになり,治療成
績は低下せずに,病床利用率は58%に低下した。こ
のような実際的な研究によって,対策を改善しなが
ら,成果を保つことができる。多くの問題を抱える
途上国にとって,博士のような熱意のある,優れた
助言者の存在は大きい。
今後の課題
研究面ではかなりの成果が過去10年間で得られて
おり,新薬やより強力なワクチン,的確で迅速な診
断法の開発に対する期待は大きいが,どれくらいが
今後10年に実現するであろうか。一方,対策の面で
は,2010年までの患者や死亡の半減という目標の達
成には,結核患者の多い国を重点に,DOTS対策
をいかに早く普及できるかが鍵となるであろう。先
進国では発生する患者の半数以上を占める外国生ま
れの患者への対策,日本のような中蔓延国では,高
齢者対策,社会的に恵まれない者への対策の強化が
課題であろう。
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23
第28回TSRU会議報告
4月4日∼6日/ハノイ(ベトナム)
∼結核サーベイランス研究会∼
1
1.サーベイランス: 世界のDOTSの現状(WH
2
O), Epi-Infoを用いた電子的患者登録(CDC),
3
4
結核登録の記入再現性(オランダ), 結核サーベ
結核研究所副所長
石川 信克
本年のTSRU会議は4月4日∼6日,ベトナムのハ
ノイで開催された。世話役はベトナム国立結核研究所所
長のコー博士であった。韓国,ドイツ,フィンランド,
日本(東京),スイスと毎年先進諸国を回っていた本会
議が,創設以降初めて途上国で開かれたことになる。 TSRUとは,Tuberculosis Surveillance Research
Unit(結核サーベイランス研究会)の略号で,世界の結
核疫学専門家の研究会である。1967年オランダ結核予防
会とWHOのかけ声のもとで,IUATLD(国際結核肺疾
患予防連合)の活動として設立された。主に先進国の結
核予防会や組織がメンバーとなっていて,毎年1回メン
バー諸国の持ち回りで会議が開催される。いわゆる国際
学会に比べ,40∼50名程度の顔見知りの多い家族的な集
まりであるが,内容は先鋭的で,世界的な結核疫学の顔
ぶれによる議論が展開されるのが特徴である。研究途中
や未発表の論文の内容が徹底して議論される。
今回は,オランダ,英国,米国,スイス,ノルウェー,
中国,韓国,タンザニアなどからと地元のベトナムから
の参加者を加えて総勢50人程度,日本からは,結核研究
所国際協力部山田紀男氏,カンボジア在住JICAプロ
ジェクトの小野崎郁史氏,マニラ在住WHO西太平洋地
域の葛西健氏が参加した。プログラムの内容を概観する
と,以下のとおりである。
イランスデータの分析(中国)
2.薬剤耐性サーベイランス及びツベルクリン反応調査:
1
2
治療結果と薬剤耐性結核(ドイツ), 抗結核薬剤耐
3
性のサーベイランス(スイス), カンボジアの抗結核
4
薬剤耐性調査(山田), 地域の結核発生と小児の感染
5
(南アフリカ), ツ反応分布の数学的解析モデル
(オ
6
ランダ), ジプチの結核感染率
(フランス)
1
3.結核対策の効果: ベトナムの6地区での10年間
2
の対策効果と感染危険率の傾向, 慢性排菌患者の分
3
析(ベトナム), 疫学状況把握のための結核患者の
4
年齢構成の傾向(スイス), 結核患者の死亡と対策
5
6
効果指標(WHO), 中国の結核実態調査, 南ア
フリカ都市部の結核
1
4.分子疫学及びモデル分析: RFLPパターンの
2
安定性(オランダ), RFLPパターン変化の数学
3
的分析(オランダ), 治療失敗・再発と初回耐性
4
(オランダ), 南アフリカ高まん延地区における結
5
核感染リスク, HIV流行地域での結核予防と治療
(英国)
1
2
5.その他: ベトナムの結核対策, 韓国の結核患
3
者の受療行動, バングラデシュ都市のDOTSシス
4
テム構築(石川), インドネシアにおける4剤合剤
の効果(オランダ)
興味ある議論
ベトナムの結核疫学
ベトナムでの実施ということもあり,ベトナムの結核
に関する発表がいくつかあった。そのうち興味深かった
のは,これまでの結核対策の疫学指標への影響の分析で
あった。WHOの集計によれば,
ベトナムはWHOの目標(80%以上
の治療成功と75%以上の患者発見
率)を達成した国であるが,新患
者登録率では減少が見られていな
い。6つの地域のツ反応調査で
は,小学生の既感染率の減少が観
察されたのは1地域のみであっ
た。これには,BCGなどによる
ツ反応検査の解釈の問題と,私的
医療機関でかなりの患者が治療さ
れている状況下での結核対策の効
果,都市化(都市への人口移動)の
影響などが考えられる。
参加者全員で記念撮影
24
07/2002 複十字 No.286
ツベルクリン反応検査に関して
BCG及び非定型抗酸菌感染のツ反応検査への影
響に対して,いくつかの解決方法が検討されてきて
いる。これまでのところ,結核の自然感染によるツ
反応分布を数学的モデルにより推定する方法,BC
G接種から時間が経過するとBCG接種群と非接種
群との差がなくなるという仮説,既感染率そのもの
は実測できないが,年間感染危険率がある程度高い
ところでは,BCG接種群であっても既感染率の年
次推移は推定できる等である。
現在は非定型抗酸菌と結核菌の自然感染が混在し
ている場合の数学的なモデルに関して,発表が2題
あった。これについては現在コンピューターソフト
ウェアの開発を行っており,近く入手可能になると期
待されている。将来的には,BCG接種による反応
が混在している集団でのモデル開発を目指している
ようである。ツベルクリンに関しては,ツベルクリ
ンに代わる感染検査法の話題もあり,今後の検討課
題として取り上げられた。
患者発見の指標
WHOの参加者から世界の結核対策の現状分析が
あったが,患者発見の指標の検討が1つの焦点であ
った。WHOの目標の1つは75%の患者発見率である
が,この指標には,罹患率の推定が必要である。し
かし現在その推定の方法は確立していない。そのた
め,患者発見を反映するような別の指標について討
論があった。例えば,塗抹検査中の塗抹陽性率(患
者発見のプログラムが進行すれば,重症で見つかる
患者が減少するという仮説)などが挙げられた。これ
には患者発見の遅れなども活用できると思われるが,
いずれにしても単一の指標では評価できないので,い
くつかを組み合わせて検討する必要がある。
その他
中国から2000年の結核実態調査の報告があった。これ
によると,全国平均で塗抹陽性結核の有病率は人口10万
対97で,1990年の調査の134から27.6%減少した。減少率
は世界銀行のプロジェクト地域が他の地域に比し高かっ
た。ベトナムでも現在の疫学状況を把握するため,有病
率調査が企画されてい
るということである。
RFLPに関しては,
患者個人の中でパターン
の安定性に関するもの,
疫学調査への応用に関
して発表があった。
RFLPパターンの解
釈は複雑であるため,
今後の十分な検討が必
要になろう。
ハノイにある結核研究所。コー所長と共に
ホーチミンの結核センター前。ベトナムらしいのどかな風景
全体の印象
ホスト側ベトナムの出席者は,結核研究所で研修を
受けた人たちが多く,心強く感じた。TSRUの良い
点は,未発表のデータや研究中の課題・テーマに関し
て十分な討議が行われることであり,対策の基礎とな
る疫学的なテーマの掘り下げもなされ,多くのアイデ
アが生まれる。例えば,「患者の年齢構成は平均値で
見るか,中央値でとるか」,「結核死亡は対策の失敗
である」等々。結核疫学の専門家を志すなら,この会
議に参加することをお勧めしたい。帰途,南のホーチ
ミン市に立ち寄り,結核センターや保健所でのDOT
Sの見学をしたが,そこでもレバ・トゥン医師をはじ
め,結核研究所の研修生たちの活躍に感銘を覚えた。来
年は4月上旬にタンザニアで開催される予定である。
【マスコミ資料】
結核
●4/5 読 ザンビアでは国民の5人に1人がエイズウイル
スに感染し,免疫機能が低下した感染者の間に結核が流行,深
刻な問題となっている。
●4/27 北海道 全日本国立医療労組・道地方協議会は,国
が示している国立病院・療養所の再編計画により,網走管内の
結核医療体制が2年間空白になるとして抗議声明を発表。
●5/14 朝 厚労省はアフガニスタンの医療体制建て直しの
ため,17日から3週間,国際医療センターの平林医師,結核予
防会須知医師を派遣。
●5/15 読 大阪府貝塚市内の民間病院で,入院患者3人と
薬剤師の計4人が結核を発病,うち男性患者1人(82歳)が今
年2月に死亡。感染源は,昨年3月に入院し,転院後の同年5
月に結核で死亡した無職男性(54歳)と見られる。
●6/10 北海道 札幌鉄道病院で看護師ら9人が院内感染。
同病院に入院中結核を発症し,2000年10月に死亡した50代女性
患者が感染源と見られる。
【厚生科学審議会感染症分科会結核部会関連記事】
●5/ 2 朝 結核部会・感染症部会の合同委員会(以下合同
委員会)が5月1日開催され,生後6カ月までの乳児にはツ反
を実施せず直接BCGを接種,中1ツ反は廃止するという意見
が大勢を占めた。
●5/29 朝,経,5/30 産,毎,読 合同委員会は29日,
定期健診としてのツ反を原則として全廃すべきとする報告書を
まとめた。BCGについては3月,結核部会が生後6カ月まで
の乳幼児期の1回のみとすると提言している。
●6/5 薬,読 結核部会は5日,先にまとめられた提言に,
合同委員会報告を盛り込むことを決め,感染症分科会に報告。
全国民を対象とした一律の対策を大幅に縮小する。
●6/10 読 国の結核対策が半世紀ぶりに「国民一律」から
「重点対策」に大転換。
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25
平成13年度フィルム評価会報告
平成13年度フィルム評価会報告
12月6日・7日/結核研究所
結核予防会複十字病院
第一診療部長
(結核予防会胸部検診対策委員会
精度管理部会長)
尾形 英雄
はじめに
平成13(2001)年度の結核予防会胸部検診対策委員
会精度管理部会フィルム評価会は,12月6・7日の両
日,結核研究所講堂で開催された。開会挨拶終了後
に胸部検診対策委員会高瀬顧問の発声により,参加
者全員で5月に急逝された高知県支部の高島正先生
に対し黙祷を捧げた。高島先生には御尊父と併せ親
子2代に渡ってこの会を支え,精度管理部会委員と
していつも暖かいご助言を頂いてきただけに,誠に
残念であった。今回は全国の支部から新人の放射線
技師が多く参加されたが,医師の参加が少なかった
だけに高島先生の抜けた穴の大きさが特に目立つ結
果となった。ともあれ,1985年から始まったフィル
ム評価会は,結核予防会で撮影されたエックス線写
真の品質向上に大きく貢献してきたことは疑いよう
もない。しかし医師の新規参加が少ないことは,そ
の果たしてきた役割が十分喧伝されてこなかったた
めかもしれない。今回は,評価会に参加したことの
ない医師・放射線技師やその他の結核予防会職員に,
この会がどのように運営されているか紹介すること
に重点を置いて報告する。
初日のフィルム評価会の流れ
評価対象のフィルムは,4月以降に各支部が撮影
した間接フィルムと直接フィルム及びCRフィルム
の一部である。これを全国から参加した医師14人・放
射線技師63人が8班に分かれて評価した。対象フィル
ムにはエックス線装置・付加フィルタ・増感紙・使
用フィルム・現像処理などを記した調査票が添付さ
れ,これを見ながら肺野・肺周辺部・縦隔・心陰影部
のそれぞれの濃度・コントラストと鮮鋭度・姿勢・キ
ズなどの項目について適・やや不適・不適の審査を
して,すべてが適だったA,1∼2個やや不適のあ
るB,以下C上・C中・C下,そして不適の並ぶDま
での判定を下す。ただし,D評価のひどい胸部写真は
26
07/2002 複十字 No.286
幸いこの数年見ていない。
毎年初日の午前中は執行部から20分ほどの評価方法
の解説があった後,間接フィルムの目慣らしを行う。
目慣らしとは用意された8本のサンプルフィルムを
交替で8班すべてが判定を下すことから始まる。1
時間ほどかけて全部の班の判定結果が出たら,執行
部で集約して各班の判定結果をオーバーヘッドプロ
ジェクターで投影する。これを参加者全員で見なが
ら,解説者が壇上から司会をして全体討議の上で会
としての判定を下す。これによって自班の評価が他
班と比べ甘すぎるか辛すぎるか明らかになる。言っ
てみれば,目慣らしは測定機器のキャリブレーショ
ンに当たる不可欠な作業である。毎年評価会に参加し
ていても,自施設のフィルムばかり見ていると,とか
く判定する目が甘くなってしまっている。目慣らし
が終わるころに,やっと自分の目が評価会の厳しい
目に戻った感じになる。
これに続く本評価は,対象の間接フィルムを各班
に分担して,各班の責任で判定する。1度判定され
たフィルムはもう1度他の班で再判定を受けて,午
前の部を終了する。昼食後は参加者を2グループに分
けて,良い評価を受けたA判定・B判定フィルム,逆
に評価の低かったC中やC下のフィルムを判定結果
ごとに集めて最終判定を行う。本判定を行った2つ
の班の審査結果を読み上げながら,そのフィルムを
全員で見てフリートークで決めていく。事前に評価
した2班の目が全体からみても妥当であったか検証す
る作業にもなっている。フィルムの評価は濃度測定値
を除けば主観に基づくので,できるだけ多くの専門家
によって検証を繰り返すことが,安定した精度管理シ
ステムを生む鍵となっている。手本となるA・B評価
のフィルムは次年度にも展示されて,年次ごとの評価
のぶれが生じないようにするアンカーの役目も果たす
ので,その選定は特に慎重に行われている。間接フィ
ルムの最終評価を午後3時頃には終え,2日目に評価
する直接フィルムの目慣らしを済ませてしまう。
13年度の講演会と懇親会
直接写真の目慣らしが終わると,毎年エックス線検
診に関わる講演会が企画されている。講師は通常外部
にお願いしていたが,今年は例外的に副部会長の増山
医師(第一健康相談所診療部長)が講師を務めた。こ
れは,厚生労働省が答申を求めている結核検診事業
の見直しに,増山医師が関わっていること,見直し
案が実施されると全国の予防会支部の経営に大きな
影響の出ることが確実なことから企画された。
増山医師の講演は「今後の胸部検診の状況」と演
題名は穏やかだが,法律によって毎年行われている
学校・事業所の結核検診が大幅に縮小されることが
決まるだろうという厳しい内容であった。結核患者
の減少・高齢化にともなって,特に若年層の結核検
診は患者発見の効率が著しく悪化しているのが現状
である。従って39歳以下の会社員・大学生の結核検
診は,大学入学時・入社時など節目の検診のみ残す
方向で答申されるという。結核検診に経営基盤を依存
している結核予防会支部では,数年後の実施に備えて,
業務内容の転換を始める必要があると指摘があった。講
演終了後に結核研究所食堂で懇親会を開き,各支部職
員との親交を暖めて長い1日目を終えた。
評価会2日目の流れ
午前9時過ぎから,前日行った直接フィルムの目
慣らしの結果発表と解説が始まった。昨年A・B評
価を得たフィルムを指標に,前日行った各班の評価
結果をオーバーヘッドプロジェクターで投影して,
1枚ずつ全体討議で判定を下していく。粒状性など
一部を除いて直接フィルムの審査項目と間接フィル
ムの審査項目は共通している。しかし連続した1巻
のフィルム全体を評価する間接フィルムは,住民検
診のフィルムを提出した支部は不利となり,職場検
診を提出した支部は有利になる傾向がある。なぜな
ら住民検診受検者は老人が多く,被写体の姿勢が悪
くかつ不均一なのに対し,職場検診受検者は被写体
がそろうからである。その結果,間接フィルムより
被写体が1人の直接フィルムの方が,より技師の技
量の差が出やすいと思うのは私だけであろうか。
目慣らしが済んだところで,直接フィルムとCR
フィルムの本評価を始める。本評価は間接フィルム
と同様の仕組みで,2つの班が別々に判定する。次
表1. 間接・直接・CRフィルムの評価成績(平成13年度)
A
B
C上
C中
C下
計
81
49%
12
7%
0
0%
直 接
10
7%
C R
4
25%
55
33%
93%
42
31%
90%
7
44%
165
間 接
17
10%
100%
71
52%
5
31%
7%
13
0
10%
0%
10%
0
0
0%
0%
0%
100%
136
100%
いで参加者を二分してA判定・ B判定・C中判定な
どのフィルムをまとめてフリートークで最終判定を
下す。2日目は午前中には終了し,また1年後の再
会を約して解散した。
13年度の評価結果報告と私見
今回のフィルム評価会の結果を表1に示す。間接
フィルムと直接フィルムの判定の分布はほぼ同一で
あった。一方CR画像にC中評価はなく,直接フィ
ルムより総じて評価が高くA評価も多い。ただ個人
的印象でいうと,CRは明らかな欠点が少ないため
かよい評価を得やすいように思う。しかし同じA評
価のCRと直接フィルムを見並べると,どうも前者
は見劣りしてしまう。CRは情報量が少ないのか,
何か平面的で物足りないのに対し,A評価の直接フ
ィルムは何度見てもほれぼれしてしまう芸術写真の
趣がある。
直接フィルムについて年ごとの評価結果を表2に
示す。近年,評価の低いC中・C下のフィルムは減っ
ているが,評価の高いA評価はほとんど増加せず,や
や劣るB評価のフィルムが増えている。この現象は
何を物語っているのだろうか。全くの私見だが,撮影
機器などのハード面の向上はB評価を増加させるが,
A評価を得るようなよい写真を撮るには結局は技師の
工夫によるところが多く,不断の努力を要するからで
はないか。フィルム評価会は,撮った写真を通してそ
の努力を正当に評価できる会でありたいと思う。
表2. 直接フィルム成績の年次変化
年度
A
B
C上
C中
C下
1985
2.8%
10.2%
47.5%
33.3%
6.2%
1986
5.6%
16.9%
41.3%
35.0%
1.3%
1987
8.0%
21.6%
40.9%
26.7%
2.8%
1988
4.1%
18.0%
43.6%
33.1%
1.2%
1989
6.2%
19.8%
49.2%
24.9%
0.0%
1990
5.7%
20.0%
55.4%
17.7%
1.1%
1991
6.1%
19.4%
50.0%
23.3%
1.1%
1992
14.7%
28.3%
42.9%
14.1%
0.0%
1993
14.1%
33.2%
42.7%
10.1%
0.0%
1994
9.7%
28.0%
46.4%
15.0%
1.0%
1995
9.1%
27.4%
52.8%
10.2%
0.5%
1996
12.7%
25.3%
48.0%
14.0%
0.0%
1997
8.8%
26.0%
51.1%
14.1%
0.0%
1998
10.6%
32.4%
44.1%
12.9%
0.0%
1999
8.4%
22.4%
53.1%
14.7%
1.4%
16
2000
9.5%
27.2%
57.6%
3.8%
1.9%
100%
2001
7.4%
30.9%
52.2%
9.6%
0.0%
07/2002 複十字 No.286
27
平成13年度複十字シール運動募金成績がまとまりました!
ご協力ありがとうございました。
平成13年度の複十字シール運動募金成績が,支部のご協
力によりまとまりました。
万円
6000
当年度も平成5年より引き続き,目標額は6億5千万円を
5000
掲げて運動を展開した結果,厳しい経済状況にもかかわら
4000
ず募金額は全国で5億4,393万円,前年に比べ135万円の減
3000
と,ほぼ横ばいの成績でした。
2000
内訳は,郵送による募金が全体の34%,婦人会や関係団
1000
体などの組織のご協力による募金は66%となっています。
0
都道府県別募金額上位5支部
5,236
3,684
2,800
2,799
2,705
1,157
沖縄
大阪
宮城
静岡
長野
全国平均
募金経費は昨年に比べて2%増の31%となりました。
都道府県別に募金状況をみると,前年に比べ増えたのは
13支部で,その中でも沖縄県は平成9年以来5,000万円台に
万円
120
再び到達しました。その他,大阪は3,000万円台,宮城,静
100
岡,長野,兵庫では2,000万円以上の募金が集まりました
80
一世帯当たり募金額上位5支部
111.2
60
(右上図参照)。
益金の主な使途は以下のとおりです。結核予防知識の普及
広報活動に1億5,238万円(40.8%),胸部検診車等の整備に
2,530万円(6.8%),結核予防団体の活動費等に6,527万円
36.7
40
35.9
33.7
0
11.3
沖縄
秋田
(17.5%)途上国の結核対策支援に1,122万円(3%),医療
施設の整備に543万円(1.5%),結核研究241万円(0.6%),使
わせていただきました(右下図参照)。
●頒 布 数
●募金総額
●諸 経 費
●益
大型シート(50面)
422,000部
小型シート(6面)
2,658,000部
シール・封筒組合せ
733,000部
5億4,393万1,117円
(シール封筒の製作費,宣伝資材その他)
金※
※募金額から諸経費を差し引いた金額
28
07/2002 複十字 No.286
1億7,061万2,125円
3億7,331万8,992円
26.4
20
次年度以降に行う胸部検診車、
検診機器等の整備のための
積立てとして1億1,131万円
0.6%
結核など胸の病気の
研究や調査に
241万円 長野
1.5%
福井
全国平均
益金の使途
29.8%
医療施設の設備 543万円
宮城
結核予防思想の普及、啓発に
1億5,238万円
40.8%
17.5%
6.8%
胸部検診車等の整備に
3.0%
途上国結核対策の支援に
1,122万円
2,530万円
全国各地域の
結核予防団体の活動費に6,527万円
健康おきなわ2010
健康おきなわ2010
喫煙率の目標値設定の経緯
沖縄県福祉保健部健康増進課長 崎山 八郎
沖縄県は長寿県として広く知られている。100歳以上
ことになった。
の長寿者が人口10万対35(全国は12)で,全国一であ
沖縄県の喫煙率は,平成10年の県民栄養調査では男
る。がん,脳卒中,心疾患の死亡率が低いということ
43%,女12%である。男性の喫煙率は,過去10年間で
が大きく寄与している。しかしながら,肺がんの死亡
6.7ポイント減少している。女性では,逆に7.1ポイント
率,青壮年層の死亡率が高く,今後の大きな課題の1
増加している。数値目標の設定とは関係なく,男性の
つとなっている。
喫煙率は今後減少していくと思われる。このままの傾
このような状況の中,沖縄県では今年1月に「健康
向で減少していくとすると,2010年には35%程度にな
おきなわ2010」を策定,公表した。豊かな人生を実現
ると予測されるが,対策を強化することにより30%ま
するために早世を予防し,健康寿命を延伸し,生活の
で減少させたいという目標である。女性については増
質を向上させることを目的としている。そのために具
加傾向に歯止めをかけ,できれば10%までもっていき
体的な達成目標値を設定し,計画を推進していくこと
たいということである。たばこをやめたいと思ってい
にしている。当然,喫煙率についても数値目標を設定
る人が約50%,そして未成年喫煙者の存在,このよう
している。
な人たちの禁煙を支援し,さらに新たな喫煙者を出さ
沖縄県では,喫煙の影響が大きい肺がん,慢性閉
ないことにより目標達成がなされると考えている。
塞性肺疾患が全国ワースト1位という不名誉な状況
沖縄県は全国有数の葉たばこ生産県であり,年間の
がある。計画策定委員会では,喫煙率についてもぜひ
粗生産額が40∼60億円にのぼる。たばこ生産者等へ配
数値目標を設定して対策を強化すべきとの意見がほと
慮することは当然であるが,喫煙による健康影響から
んどであった。たばこ関連の団体からは,数値目標の
県民を守ることが最重要であり,喫煙対策はさらに強
設定はすべきではないとの要請があり,そのため意見
化されなければならないと思っている。
交換の場を設定したり,委員会にオブザーバーで参加
県教育委員会では,公立学校の教職員に対し,本年
してもらい,意見を述べていただいたりした。
4月から児童生徒の目に触れる場所での喫煙制限の徹
計画策定に当たっては,委員会を公開にし,中間報
底を通知している。県立病院をはじめ県内の医療機関
告を県のホームページにも載せ,意見募集をした。た
では院内禁煙が増えており,また,県庁,市町村の庁
ばこは大人の嗜好品,行政が数値目標を設定するのは
舎の分煙化も徐々に進んでいる。コンビニでは年齢の
問題,葉たばこは県の基幹作物,売り上げが減少すれ
確認をして販売するようになってきた。たばこを取り
ば栽培農家は大打撃を受ける,たばこ税を通じて財政
巻く環境は少しずつではあるが改善されてきている。
に寄与している等の意見が寄せられた。一方,健康で
これまでは個人の努力による禁煙に期待する部分が
あることが大切,数値目標はぜひ設定すべきとの意見
大きかったが,それを取り巻く環境の改善についても
もあった。これらの意見をとりまとめ,委員会で判断
目が向けられるようになってきたのは,喜ばしいこと
してもらうことにした。
である。10年後のたばこを取り巻く状況はどのように
最終的には,委員会で,数値目標はたばこ以外につ
変化しているのであろうか。
いても設定されているものであり,喫煙率についても
全体の数値目標の中の1つという位置づけで設定する
07/2002 複十字 No.286
29
2002年世界禁煙デー
記念シンポジウム・中央大会報告
テーマ:たばことスポーツは無縁(無煙)です。 ―きれいにやろう―
5月31日/銀座ガスホール
5月31日−WHO(世界保健機関)は毎年この日
を世界禁煙デーと定めており,これに合わせて記念
シンポジウムが東京・銀座ガスホールにて行われた
(参加者239名)。
そこで,例えば「運動をすれば肺機能が強くなり,さ
らに禁煙することによって喫煙で摂取してしまう一酸
化炭素を減らすと,肺機能はもっと上昇する。運動能
力も上がり,気管支の疾病は減る」というように,並
立した指導で相乗的な効果が生まれる。健康に意識を
持って,禁煙も運動もフェアに行ってほしい。
「教育現場で取組む禁煙・防煙教育」 パネル討論。活発な質疑応答が繰り広げられた。
tobacco free sports − play it clean
このシンポジウムは今回で15回目を迎えるが,今
年は「スポーツを通じて,多くの人がたばこについ
ての健康影響や正しい知識を理解し,スポーツ界に
おいて受動喫煙やたばこ広告をなくそう」という目
標から『tobacco free sports − play it clean(たばこ
とスポーツは無縁(無煙)です。−きれいにやろ
う!−)』を標語として開催された。おりしも当日
はサッカーW杯の開会式でもあり,呼びかけにふさ
わしい日となった。
開会に向けて,坂口力厚生労働大臣(代読:久野
恒一政務官)ほか挨拶の後,早速各専門家の立場から
見た禁煙についての発表があった。概要は次の通り。
「健康づくりにおけるたばこと身体活動
(スポーツ)の関わりと相互作用」
内藤 義彦(大阪府立健康科学センター健康度測定部長)
現代人の健康に関して,たばこだけでなく,運動不
足による生活習慣病のまん延も大きな問題である。こ
れらは各々が独立して影響を及ぼすが,喫煙によって
交感神経が緊張(血圧の上昇)する一方,運動不足で
は肥満による高血圧症が起こる,というように,影響
する臓器や生体機能には共通する部分が多い。
30
07/2002 複十字 No.286
並木 茂夫(埼玉県川口市立芝東中学校校長)
自分を表現することを苦手とする中学生が増えて
いる。その結果,人間関係を避けてしまい社会に適
応することが難しい。教育者はこのような特徴を理
解することから始まり,生徒の『行動力(ライフス
キル)』を育てることが大切だ。喫煙を防ぐ意思の
決定力もその1つである。喫煙防止教育は従来,知
識伝達型の授業で禁煙の動機づけを主体としたが,
さらに生徒自らが専門家から調査しそれを発表によ
って伝えること,たばこ広告の分析や,禁煙を説得
する役になって演じることで気付いた意見を発表し
てもらう…このような自発的な学習により,動機を
行動へ結びつける指導ができた。
「スポーツにおける禁煙活動と指導の実際」
辻 秀一(エミネクロスメディカルセンター長, スポーツドクター)
スポーツには,「元気になる」「感動を生む1つ
の自己表現」「友達と交流できる」「教育の場とな
る」など,勝つこと以外にも多くの文化的な側面が
ある。スポーツそのものの可能性を広げる『教育ス
ポーツ心理(Educational Sports Psychology)』と
いう概念を紹介したい。
試合でよりよい成果,能力を引き出すためには,
基礎トレーニングだけでなく,「自分らしく戦う力
(コミュニケーション能力,感情表現力,ストレス
マネージメント)」も大事だ。例えばスポーツ塾の中
で参加者とその親子が話し合う機会が重要であり,ト
ッププレーヤー・子どもの参加者・車椅子選手たち
の交流により,心の成長が生まれることも重要だ。
こうした地域的な交流の場で禁煙教育を取り込んで
いる。スポーツに参加している子どもを通して,そ
の父兄が禁煙を考え始める。また,トッププレーヤー
が模範となるよう禁煙活動を推進する,というように
色々な可能性がある。
「Tobacco free sports」
谷川 真理(マラソンランナー)
学生時代に喫煙を経験していたが,自分が本当に
走りたいと思う転機が訪れ,大会優勝という大きな
目標を持った時,過酷な練習に耐えられる体を作ら
ねば,と感じた。この強い動機で禁煙に成功し,さ
らに練習量も増やせるようになった。
マラソンと人生は似ている。過程がどうであれ,
自分と戦って最後には勝つ。人に促されてではなく,
自分が納得しての禁煙が大事。どうしても精神的な
強さが必要だったので,そんな時マラソンは大いに
役立ちありがたく思った。
青森県深浦町の平沢町長が試みた,町内にある外
付たばこ自動販売機の撤去についてだが,昔のたば
こ屋は対面販売によって,買う人の年齢を判別でき
た。売り方1つで,たばこを気軽に買えてしまう環
境をなくすことも大切だと感じた。
ディスカッション
櫻井秀也日本医師会常任理事を座長に迎え,アン
ケートによる質疑にパネリストからの専門的な意見
が伺えた。討議された内容を紹介する。
≪生徒の禁煙教育について≫
「喫煙している生徒への指導法は,既にニコチン
依存症まで進行している可能性もあるので,場合によ
っては薬の処方,カウンセリングまで対応して根本
的に解決することが必要」。「喫煙をやめられない
教師は指導する立場としては行いづらいが,禁煙したい
がやめられない苦しさを代弁しながら行ってほしい」。
「生徒が吸い始めないよう,吸う前の時点からたばこの
ない環境を整えたい。ぜひスポーツを窓口として社会的
環境,家庭環境,学校環境をもう1度見直すきっかけと
してほしい」。「若者に喫煙の影響を伝える時に『20年
先の体が…』といった先の長い話より,『試合でなぜ負
けたのだろう?もっと練習が必要ならたばこは控え
る』とか『歯が黄色くて格好悪い,肌がカサつく』と
いった,端的な効果や身近な話題から考えられる導入が
必要だ」。「反社会性のアピールとして喫煙している生
徒がいる。生徒が認められる環境を作るという教育の大
きな課題にも見えてくる」。
≪スポーツと禁煙について≫
「プロスポーツ界がぜひとも禁煙活動をリードし
て,スポーツと喫煙のイメージを結びつけないよう
にしてほしい。その際,トッププレーヤーの影響力
は大きいので,選手自身が喫煙のことを真剣に考え
てほしい。たばこ業者をスポーツの大会等のスポン
サーとしない」。「自分の体と向き合うきっかけとし
て,スポーツの存在は大きい。スポーツを通してたば
このことを考えられる環境を作っていきましょう」。
最後に,たばこと健康問題NGO協議会島尾忠男
会長(結核予防会顧問)の挨拶があり,全体を総括
してシンポジウムは閉会した。
(文責 編集部)
マスコミ資料
たばこ・肺がん
●3/30 読 受動喫煙によりニコチンが胎児の体内にも入ることが,静
岡県立こども病院及び島田市民病院の研究で確かめられた。
●4/1 産 スコットランドの半導体工場で従業員のがん発生率が通常
よりも高いという発表がなされ,シリコンバレーでも注目されている。半
導体製造工程ではヒ素等多くの化学物質が使われており,その影響が長年
議論されてきた。
●4/4 読 喫煙男性は,がんの種類に関係なく,飲酒量が多いほどが
んで死亡するリスクが高くなることが,厚労省研究班の調査で分かった。
●4/4 中日 愛知県の調査で禁煙・分煙が医療機関で進む一方,レス
トラン・駅の待合所やホテルのロビー等で遅れていることが分かった。
●4/6 読 日本で病院内全面禁煙としているのは,大学病院でさえ東
北大付属病院,京都府立医大,和歌山県立医大などわずか。
●4/10 産 解像力の高いCTが普及したことで早い段階で小さな肺が
んの腫瘍を発見できるようになり,切除量を必要最小限にとどめる「縮小
手術」を行う医療機関が増えてきた。
●5/11 朝 癌研究会付属病院では,たばこを吸う患者は手術後のたん
が多く,気管支につまって肺炎等の合併症を招くおそれがあることから,
喫煙者に対しては手術を行わない方針。
●5/11 毎 「健康日本21推進フォーラム」の「健康を支える」研究会
が会員企業45社に禁煙・分煙の実態調査を実施。禁煙・分煙により喫煙者
が減った企業が3割以上にのぼる一方,「全館禁煙」は7社のみだった。
●5/12 朝 和歌山県教育委員会の通知により,4月から県内540すべ
ての公立小中学校が禁煙となった。また,若い妊婦の喫煙率が高いことか
ら,母子健康手帳でもたばこに関する項目が新たに加わった。
●5/12 朝 たばこ7銘柄の箱に表示されているタールとニコチンの値が,
実際に近い吸い方で測った値と大きく異なる問題で,厚労省が銘柄名を公開。
●5/14 朝 初の禁煙大会となったサッカーW杯で,韓国たばこ人参公
社が「記念たばこ」発売に踏み切り,批判が集中。
●5/18 朝 民主党は,公共スペースでの喫煙に1万円以下の罰金を科
す軽犯罪法改正案を,近く議員立法として国会に提出。
●5/25 朝 シリーズ癌:「東京から肺がんをなくす会」の健診で肺が
んが見つかった会員の5年生存率をCT検査導入前後で比較したところ,
導入前49%に対し,導入後は83%となった。
●5/25 毎 厚労省の薬事・食品衛生審議会の部会は24日,肺がん治療
薬「ゲフィチニブ」(製品名イレッサ)を新たに承認。非小細胞肺がんの
患者に効果が認められ,副作用が軽い。
●5/31 毎 じん肺患者は一般の3.7倍も肺がんにかかりやすいという調
査結果を厚労省専門家グループがまとめた。
●6/1 朝 千代田区は区内7地区に「路上禁煙地区」を設定,違反者
には最大2万円の罰金を科す条例案を提案。
●6/1 毎,読 禁煙推進議員連盟は,次期国会から参院の全委員会室
への禁煙導入を参院議院運営委員長に申し入れた。
疫学研究
●4/10 毎 健康診断等のデータを用いて病気の要因等を探る「疫学研究」
について,厚労省と文科省は9日,調査対象者へのインフォームド・コンセン
トを基本原則とする倫理指針案をまとめた。7月をめどに施行する予定。
07/2002 複十字 No.286
31
予防会だより
●2002年世界禁煙デー記念シンポジウム
5月31日の世界禁煙デーを記念して,今年13回目を数える標記シン
ポジウムが,銀座ガスホールにて開催された。詳細はp30∼31に掲載。
(石川県支部),辻野文昭,野尻友昭,黄川田由起子,辻雅子,小川恵
子,前田和幸,松井洋子,下濱八重子,三輪満子,‹野トミコ,秋山千
代子(大阪府支部),足立博文,中本泰之,須賀富士男,長谷川勝美,松
下頼久(兵庫県支部),中島加代子(鳥取県支部),高山和雄(岡山県
●結核予防事業資金寄付者に対する感謝状贈呈並びに永
年勤続職員の表彰
6月6日(木)午後1時より,ホテルオークラにおいて,総裁秋篠宮
妃殿下のご臨席を賜り,永年勤続職員に対しては青木会長から表彰状が,
また結核予防事業資金として多額のご寄付を下さった方々に総裁から感
謝状が授与された。引き続き記念撮影とお茶会が行われた。
支部),佐古通,新宮美奈子,新中雄二,後河内勝弘(広島県支部),石
見寿康,味元堅一(高知県支部),原田則子,奥平桂子,古賀純子
(福岡県支部),木下博文,副島民子,川崎博(佐賀県支部),近藤洋,
野中明弘,愛宕彰,崎村正一郎,川端多喜子,川原寿(長崎県支部),
岩切眞澄(宮崎県支部),加治佐滋子,佐々木正光,川井田政己(鹿児
島県支部),新垣春子,吉田晃(沖縄県支部),神尾光宣,松本康子,
宮下良子,尾形英雄,村上えり子,小野寺さゆり,亀田保子,新堂恵子,
【感謝状贈呈者(順不同,敬称略)】
荒木みき子,上田三枝(複十字病院),長田功,伊豆田弘,品川セツ子,
●事業資金(個人:11名)
井上淳子,藤井とよ子,吉田スミ子,岡山侃,西本靖,岩井和郎,澤田町
粕川澄江,中村知子,藤島和美(新山手病院),長谷川洋子(保生の森),
福島弘,假屋博一,谷口正子(第一健康相談所),杉木孝次(渋谷診療所)
子,小倉義恵,高島伸子,柳池光代,中塚ゆり子
●事業資金(団体:1社)
●複十字シール募金協力者(個人:6名)
●平成14年度第1回結核予防会・日本対がん協会
・予防医学事業中央会3団体連絡会議開催
中戸川公治,岩崎睦子,軽部フジ,大鳥ソヨ,本田厚子,成田實
6月24日(月)午後3時より結核予防会3階小会議室にて開催。主な
●複十字シール募金協力者(団体:1社)
議題,出席者は以下のとおり。
上田嘉一朗商店
新都市サービス
【議題】
【永年勤続職員表彰者(敬称略)】
1.検診車の排ガス規制について
●30年勤続者(31名)
2.結核予防会「健診事業のあり方検討委員会」中間報告など
坂上高行,佐々木光一,植山裕子(北海道支部),小田木幸子,矢口正
3.健診結果情報のとりかた(各団体のフォーマットで討議)
樹(茨城県支部),高野秋男,藤沢章(栃木県支部),村瀬壽奈子(神
4.日程調整
奈川県支部),笹崎拓司(新潟県支部),大野茂夫(愛知県支部),工
【出席者】
俊夫,宗像五郎,丸山勝子,山内孝臣(大阪府支部),小椋敏男(鳥取
結核予防会
専務理事
羽入 直方
県支部),経遠美代子,三宅義太郎(岡山県支部),北角奉生(広島県
企画・情報部長
橋本 壽
支部),門田基,遠藤益宗,熊沢幹恵(高知県支部),堀尾武敏(福岡
事業部長
山下 武子
県支部),荒木誠喜,村“辰治(熊本県支部),山崎初,馬場立子(鹿
第一健康相談所所長
杉田 博宣
児島県支部),並木正行,佐藤アキヱ,菅井光子(複十字病院),遠藤
第一健康相談所副所長
村上 治洋
第一健康相談所診療部長
増山 英則
事業部参事
本橋 進
常務理事
富永 久雄
吾妻明子,佐藤浩司,渡辺繁男,佐久間裕子,原田博(福島県支部),
事業部長
石井 忠之
追田昌文,小泉行広,栗原美津男,上川新一,大内陽治,田中一成(茨
広報部長
高田 穹伸
常務理事
山内 邦昭
男,田中すみ,高橋紀江(千葉県支部),宇留野廣,平山清次,米山久
事務局次長
畠腹 正明
光,山田さよ子,吉原美幸,山田明,荻原昭義(神奈川県支部),望月
事業課長
西田 幸一
公臣,田草川みのり(山梨県支部),竹内久人(長野県支部),沼田育男
広報部課長補佐
斉藤真奈美
敏子(新山手病院),‹橋佳代子(第一健康相談所)
●20年勤続者(95名)
塩森聡,大沼トシ,石川ひさ子(宮城県支部),上野俊幸(山形県支部),
城県支部),引田輝久(群馬県支部),稗田三知代,今溝順子,小山利
予防医学事業中央会
北海道対がん協会,ユニオンサービス,旭川市医師会,村山内
同仁会浪打病院,芙蓉会村上病院,厚生会渡辺病院,クリ
科医院,音威子村ライオンズクラブ,北海道庁,藤根勝,鈴木
ーンサービス青森,西田組,東北産業廃棄物,亀屋みなみ
清繁,酒井仁,陸上自衛隊(南恵庭駐屯地,鹿追駐屯地,
チェーン,青森県漁業協同組合連合会,丸高高橋蒲鉾店,
島松駐屯地,留萌駐屯地,帯広駐屯地,北恵庭駐屯地,美幌駐
青森県薬剤師会衛生検査センター,青森県貯水槽衛生管理
屯地,東千歳駐屯地,丘珠駐屯地,真駒内駐屯地,北千歳駐屯
協会,平内町,今別町,蓬田村,三厩村,青森保健所,誠仁
地,札幌駐屯地,苗穂駐屯地,名寄駐屯地,滝川駐屯地),航
会尾野病院,済生堂増田病院,白生会胃腸病院,ショウエー
空自衛隊第二航空団千歳基地,札幌市健康をまもる婦人の
五所川原店,千秋薬品五所川原支店,アスカム五所川原営
つどい,札幌市北区健康をまもるつどい,紋別保健所,苫小
業所,航空自衛隊三沢基地,三沢市,野辺地町,六ヶ所村,
<複十字シール募金>(敬称略)
北海道 −寺山吉彦,恵佑会札幌病院,東建工業,札幌
牧保健所,静内保健所,旭川市保健所,美唄市,深川市,旭
横浜町,日本ホワイトファーム,三沢聖心会病院,仁和会
川市,上磯町,八雲町,北桧山町,京極町,赤井川町,栗
三沢中央病院,公立野辺地病院,三沢食品衛生協会,三沢環
山谷運送,記念塔病院,大栗新聞販売所,上遠野建築事務
沢町,月形町,鷹栖町,当麻町,比布町,愛別町,上川町,
境衛生協会,三沢保健所,青森銀行三沢支店,小嶋商事合名
所,コニカメディカル,川南サチ,仲野谷泌尿器科医院,
東川町,美瑛町,風連町,中富良野町,小清水町,鵡川町,
会社,育栄管財,青森県医薬品配置協会上北支部,三八五
小樽病院,久米設計,コニカ,日本土木工業協会,東洋熱工業
穂別町,新冠町,浦幌町,厚岸町,浜中町,白糠町,音別
交通三沢営業所,まかど温泉富士屋ホテル,海上自衛隊大湊
札幌支店,伊藤義郎,札幌臨床検査センター,北海道ロング
町,羅臼町
地方隊,下北食品衛生協会,下北環境保全,下北支部獣医師
リバー,辻商店,岡本正敏,札幌防衛施設局,札幌都市開発
青森県 −伯養軒青森支店,工藤パン,青森ヤクルト販
会,東通運輸,谷川環境衛生開発,野村建設,環境社,ヒ
公社,梅川医科器械店,社団修道会本田病院,鈴木寿江,
売,酸ケ湯温泉,青森食品衛生協会,大谷製麺工場,ヤマ
グチ,むつ保健所
平田保,札幌しらかば台病院,中央給食センター,青木新
モト食品,エヌ・エス環境青森支店,青森県浄化槽検査セ
宮城県 −宮婦連健康を守る母の会,日本競輪選手会宮
聞店,三王印刷,医用センターフクヤ,龍興寺,丸福福士,
ンター,オカムラ食品工業,丸藤食品,青森中央水産,ア
城支部,七十七銀行,宮城県職員,仙台市職員,宮城県警
高瀬ビル,吉尾病院,前田建設工業北海道支店,アクセスソ
スカム,東北化学薬品,医薬品配置協会東青支部,青森県
察本部,仙台中央警察署,仙台北警察署,仙台南警察署,
フトウェアーテクノロジー,サンケイ企画,大平燃料店,
薬種商協会青森支部,回生会近藤病院,佐藤病院, 慈恵会,
仙台東警察署,泉警察署,古川警察署,岩沼警察署,青葉
多額のご寄付を下さった方々
<指定寄付等>(敬称略)
支部=大塚満子(千葉県支部)
本部=寺田文男,本田基恵(複十字病院),岡島雅
子・佐藤泰子(保生の森)
32
日本対がん協会
07/2002 複十字 No.286
区衛生団体連合会,宮城野区衛生団体連合会,太白区衛生
倉田豊(田川市立病院),ヨシダコーポレーション,金城興
第一病院,楠病院,大脇久和,弥永協立病院,天神会古賀
団体連合会,若林区衛生団体連合会,宮城地区公衆衛生組
業,友口,日本海員液済会門司病院,本正寺,香月きょう子
病院,花畑病院,内藤病院,堀川会堀川病院,森山誠哉,
合連合会,県内各市町村立小中学校,名取・岩沼医師会,柴
(池田医院),大久保雅,加藤和子,小林昭治,北九州健
久留米市女性の会連絡協議会,大坪文子,宮ノ陣病院,久
田郡医師会,角田市医師会,白石歯科医師会,角田歯科医
診診療所,北九州市衛生総連合会,北九州市歯科医師会,
留米土木事務所,オアシス根城リハビリテーション病院,か
師会,柴田地区歯科医師会,仙南薬剤師会,名取病院,石
一本杉外科消化器科医院,安永朋喜,正行寺,伊崎駿,村
ぶとやま会久留米リハビリテーション病院,博愛病院,久留
巻市,塩竈市,古川市,気仙沼市,白石市,名取市,角田
松正俊,浜崎茂男税理士事務所,梶原富子,久野循環器科
米大学医療センター,三瀦町婦人会,城島町健康推進婦人
市,多賀城市,岩沼市,蔵王町,七ヶ宿町,大河原町,村田
内科,高嶋クリニック,太田良實,深江保子,縄田義夫(萩
会,神代病院,三井郡婦人会連絡協議会,山門郡婦人会,
町,柴田町,川崎町,丸森町,亘理町,山元町,松島町,
原中央病院),那智商会,エンゼル病院,阿部和哲(正和
エイコー自動車工業,大川市連合婦人会,大川三瀦医師会,
七ヶ浜町,利府町,大和町,富谷町,大衡村,大郷町,中
中央病院),中村哲郎税理士事務所,遠賀郡婦人会,村本
田主丸中央病院,浮羽郡地域婦人会,浮羽町婦人会,崇久
新田町,小野田町,宮崎町,色麻町,松山町,三本木町,
陽子,社会保険稲築病院,嘉穂郡婦人会,飯塚市婦人会,
寺,真勝寺,柳川市婦人会,石橋栄三税理士事務所
鹿島台町,岩出山町,鳴子町,涌谷町,田尻町,小牛田町,
中間市婦人会,光林寺,福間町地域婦人会,福間病院,宗
熊本県−有明測量開発社,諫山工業,大森産業,金子
南郷町,築館町,若柳町,栗駒町,一迫町,瀬峰町,鶯沢
像歯科医師会,沖広屋旅館,古賀中央病院,粕屋郡宇美町
鉄工所,九州開発エンジニアリング,九州満喜,熊本木材,
町,金成町,志波姫町,花山村,迫町,登米町,東和町,
婦人会,粕屋郡久山町婦人会,粕屋郡志免町婦人会,粕屋
熊本県土地改良事業団体連合会,セルモ,desダイヤエンジ
中田町,豊里町,米山町,石越町,南方町,河北町,矢本
郡篠栗町婦人会,粕屋郡新宮町婦人会,粕屋南病院,正信
ニヤリングサポート,反後皓介,東和メディカルサービス,
町,雄勝町,河南町,桃生町,鳴瀬町,北上町,女川町,
会水戸病院,大谷化学工業,箱田病院,粕屋薬剤師会,粕
長広印刷所,福島文隆堂,ミハナタクシー,三ツ矢建設,
牡鹿町,志津川町,本吉町,唐桑町,歌津町,東北大学,
屋郡粕屋町婦人会,三野原病院,篠栗病院,浄土真宗真光
三浦登城夫,友和会,熊本県選挙管理委員会,熊本県天草
宮城学院中・高等学校,仙台東高等学校,東北工大高等学
寺,西日本産業衛生会若杉病院,高比良昌一,済生会支部福
不知火海区漁業調整委員会,出水幼稚園,熊本機能病院,
校,常盤木学園高等学校,仙台白百合学園中・高等学校,
岡県済生会,荒川洋,梶山医院,高橋内科医院,岳南建設福
寺尾病院,菊陽中央病院,有明成仁病院,山鹿中央病院,
三島学園高等学校,陸上自衛隊船岡駐屯地,東北郵政局,
岡支店,吉住正子,竹下誠二,蒲池徹志,的野歯科医院,田
谷田病院,天草郡市医師会立苓北医師会病院,上村循環器
東北郵政監察局,仙台市交通事業振興公社,理容組合柴田支
原ハツ子,松本笑美子,岡本健,法研九州,入江内科医院,
科,北熊本井上産婦人科医院,浦田医院,中村医院,元島
部,仙南地域広域行政事務組合,食品衛生協会
福岡県歯科医師会,吉田耳鼻咽喉科病院,和田クリニック,
産婦人科医院,しらおく内科クリニック,御幸病院,山下
千葉県−千葉銀行広報部,三菱化学ビーシーエル,金
佃博子,協通配送,中山医院,福岡市健康を守る婦人会,昭
富子,旭志村議会事務局,化学及血清療法研究所,東部大
坂明美,千葉信用金庫都町支店,文友堂印刷,千葉興行銀
栄電業社,法伝寺,東和メディカルサ−ビス,拓新産業,中
谷化学,九州記念病院
行千葉支店,サンメディックス,中村瑞江,石井商会,萩
村医院,伊東尚美,中村診療所,ハナダデンタルラボラト
巣敏子,志村昭光,中野愛彦,岩渕薬品,永光自動車工業,
リー,川合辰雄,篠崎税理士事務所,九州地方計画協会 ,九
結核予防会役員人事(敬称略)
京葉事務器,京葉銀行本町支店,田中三誠堂,都クリーニ
州建設技術管理協会,千代田メディカル福岡営業所,水三
ング,鷲見照,板谷喬起,忍足美代子,高砂子通子,篠崎
島紙工九州支店,カイゲン福岡営業所,ヒラシマ,帝人在
本部=〔理事を委嘱する〕星野正義(6.25)
支部=〔支部長を委嘱する〕青森県支部吉田豊,
正樹,和久井功司,鈴木光子,坂井隆之,藤井京子,伊藤
宅医療九州,福岡県信用保証協会,生野恵美子,扶桑薬品
栃木県支部笹川道三(重任),長野県支部中澤馨,
園江,坂口練平,嶋瀬順二,山本泰,吉永雅俊,柿栖米次,
工業福岡第一支店,吉塚林病院,西林寺,トヨタカロ−ラ博
三重県支部山本器,大分県支部嶋津義久(4.1),
内田朝彦,根本達久,榎本発雄,池上智康,中野義澄,鈴
多,石蔵富士子,穂積会計事務所,箱崎ユ−ティリティ,内
福井県支部栗田幸雄(重任)(4.24),大阪府支部
木公典,井橋秀治,角南祐子,矢部勤,綿貫静江,藤田智
科小児科河手医院,二宮医院,松本組,ヤマト設備工業,福
小倉剛(5.1),〔支部長の委嘱を解く〕青森県支
恵子
迫多美,宮内貴博,柴田医院,花田勝,トーホー九州本社,
部金上幸夫,長野県支部鈴木強,三重県支部林幹
新潟県−三沢博人,松澤秀美,新潟臨港総合病院,東
城島産業株式会社,日経新聞西新専売所,千眼寺,杉浦博
三,大分県支部吉川暉(3.31),大阪府支部螺良英
明産業,北川スイ,登坂尚志,ジオックス,大熊内科医院,
夫,岡税務会計事務所,福元孝三郎,八田内科医院,平田
郎(4.30),〔副支部長を委嘱する〕青森県支部佐
静修医院,岡田商店,横田内科医院
耳鼻咽喉科医院,森重立身(福岡鳥飼病院),福岡市城南
々木義樓・田中榮子(重任),千葉県支部梅田勝,
岐阜県−岐阜大学,土岐市保健センター,本巣町,久
保健所,村上歯科医院,柴田稔,田中小児科医院,一野建
長野県支部菅谷昭,福井県支部仲井公秀,香川県
々野町,岐阜県信用保証協会,高山ライオンズクラブ,山
設,藤田英昭,分山医院,山田昇税理士事務所,黒瀬純子,
支部和泉幸男,福岡県支部狩野俊秀(4.1),福井
田忠雄,田中礼一,岐阜婦人子供服工業組合,可茂建設業,
財部酒店,佐藤安弘,九州協和電機工事,岩永整形外科医
県支部仲井公秀(重任)・波多野基一(重任)
国井組,大生堂薬品工業,麻田宮司,岐阜県理容生活衛生
院,金隈病院,石橋内科循環器科医院,日本地研,湯田医
(4.24),大阪府支部増田國次(5.1),〔副支部長
同業組合,大垣土建,大垣病院,森本組,杉本組,宮沢建
院,井手律子,進藤岩夫,タケシマ整形外科医院,伊藤内科
の委嘱を解く〕青森県支部北島智子,千葉県支部瀬
設,石地組,清水組,川甚,大澤化学,高田化成工業,岐阜
医院,戸渡晃一,曽根泰子(福岡豊栄会病院),林法生,
上清貴,長野県支部小林文宗,福井県支部山元和也,
管工事,岐阜信号施設,帝国建設コンサルタント,ハシマ,
北原靖久(西日本内科クリニック),諸岡整形外科病院,
香川県支部木幡浩,福岡県支部工藤壽文(3.31),
サンメッセ
生井脳神経外科病院,那珂川町婦人会,乙金病院,つくし
〔顧問を委嘱する〕長野県支部鈴木強(4.1)
大阪府−秩父志行,山川英治郎,中山きみ子,常盤義
会病院,甲斐電気工事,秦病院,十全会,十全病院,井本鴻
澄,渡辺幸太郎
作,文佑会原病院,誠愛リハビリテーション病院,筑紫南ヶ
〈お詫びと訂正〉
福岡県−豊前市連合婦人会,福岡県京築保健所築上支
丘病院,白水清三,岡部病院,樋口病院,春日市婦人会,渡辺
No.285・p27 下から9行目(「思い出の人を偲
所,豊前市職員,築城町職員,築上郡連合婦人会,椎田町
病院,福岡徳州会病院,筑紫野病院,二日市共立病院,杉病
職員,吉富町職員,行橋三校区婦人会,行橋記念病院,小
院,二日市中町病院,二日市整形外科病院,高山病院,水城
んで」の頁)…また先生の好きな言葉は「小異を
・・・
・・・
捨てて大同につく」で…は「小異を残して」の誤
竹町職員互助会,鞍手郡婦人会連絡協議会,若宮町住民一
病院,木下病院,恵山会丸山病院,太宰府市婦人会,
り。お詫び申し上げますと共に訂正いたします。
同,鞍手共立病院,日本磁力選鉱,陽明会小波瀬病院,陽
小郡市婦人会,嶋田病院,朝倉郡地域婦人会,甘木市連合婦
明会御所病院,健康保険直方中央病院,直方商工会議所,
人会,八女市連合婦人会,川崎病院,馬場病院,広川病院,
雲心寺,津田商事,徳乗寺,田川市婦人会連絡協議会,
耳納高原病院,八女郡連合婦人会,原陽一,社会保険久留米
平成14年7月15日 発行
複十字 2002年286号
編集兼発行人 山下 武子
発行所 財団法人結核予防会
〒101-0061 東京都千代田区三崎町1-3-12
電話 03(3292)9211(代)
印刷所 勝美印刷株式会社
東京都文京区小石川1-3-7
電話 03(3812)5201
結核予防会ホームページ
URL http://www.jatahq.org
本誌は皆様からお寄せいただいた複十字シール募金の益金により作られています。
複十字シール運動
みんなの力で目指す,結核・肺がんのない社会
平成14年度複十字シール
複十字シール運動は,結核や肺がんなど,胸の病気
をなくすため100年近く続いている世界共通の募金活
動です。複十字シールを通じて集められた益金は,
研究,健診,普及活動,国際協力事業などの推進に
大きく役立っています。皆様のあたたかいご協力を,
心よりお願いいたします。
運動の輪を広げてください。シールは,はがきや,手紙や包装の封印,何にでも使えます。
問合せ:資金課 TEL03-3292-9287(直)
X デ
ジ
医療現場の
デジタルネットワーク化もすすみ、
画像診断分野における病診連携も、
FUJI COMPUTED RADIOGRAPHY
デジタルX線画像診断システム
いよいよ実現へと近づいた現在。
いまや、医用画像も
DICOM準拠
デジタル化への流れは待ったなし。
FCR Pico SYSTEMは、
そんなデジタル時代をもっと身近に、
さらに快適にするために生まれました。
ドライ画像記録装置
いまX線画像が便利に、
DRYPIX 1000
許可番号 24BZ5010
高画質に変わります。
線
画
像
も
デ
ジ
タ
ル
の
時
代
へ
。
B4サイズの
出力ができます。
画像読取装置
FCR XG-1
承認番号
21200BZZ00305000
※専用架台はオプションです。
お問い合わせ先 総発売元
本システムは、MD法による
骨密度測定には対応しておりません。
タ
ル
が
、
い
ま
世
界
を
動
か
し
て
い
ま
す
。
東京都中央区銀座7-13 - 8 第2 丸高ビル 〒104-0061 (03)
3545-3321
(代)
URL:http://www.fujifilm.co.jp/fms/
新刊
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呼吸器疾患症例集
(平成14年 2月発行)
結核予防会第一健康相談所 杉田 博宣
胸部X線写真178点について、経験豊富な
著者が臨床上の注目点を添えた便利な写真集。
B5 判・80頁・定価2,940(本体2,800)円
ISBN4-87451-204-6
最寄りの書店・結核予防会各都道府県支部または直接下記までお申し込み下さい。
財団法人結核予防会 出版調査課 *本年5月より移転しました。 〒204-8533 東京都清瀬市松山 3-1-24 結核研究所1階 TEL 0424-93-6783(直) FAX 0424-93-6832(直)
E-mail [email protected] URL http://www.jatahq.org (E-mail アドレス、URLは変更なし)
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