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食品の安全性・ 機能性評価 - 経済産業省北海道経済産業局
食品の安全性・ 機能性評価 北海道経済産業局 平成25年度総合特区推進費補助金 (地域新産業集積戦略推進事業) ~機能性食品開発に向けて~ ◆ 事業の趣旨 ◆ 北海道では、「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特 区」における国との協議を経て、加工食品に含まれる機能性成分に ついて、健康でいられる体づくりに関する科学的な研究が行われた 事実を認定する「北海道食品機能性表示制度」を平成25年4月1日か らスタートさせました。 本書は、この認定制度取得に向けた取組を加速化させるため、食 品の機能性評価にかかる技術、制度、研究事例等について取りまと めたものです。 ◆ 本書の構成 ◆ ① 食品機能と生体への作用 ② 食品の機能表示制度 ③ 北海道食品機能性表示制度「ヘルシーDo」 ④ 食品の安全性評価技術 ⑤ 食品の機能性評価技術 ⑥ 道産素材の機能性評価の事例(その1) ⑦ 道産素材の機能性評価の事例(その2) ⑧ 道産素材の機能性評価の事例(その3) ⑨ おわりに ~機能性食品開発に向けて~ 平成26年3月 公益財団法人北海道科学技術総合振興センター 1 食品機能と生体への作用 ■ 食品の機能と機能性食品の市場 ◆食品は生命・生活に必要な栄養素の補給源であり、ヒトは食品を摂取することにより 吸収代謝して栄養にします。この点が食品の機能の第一義といえますが、食品が持つ 特性には、栄養性のほか、安全性、嗜好性、生理機能性などがあります。 ◆ひと昔前は「栄養性」と「嗜好性」の2つの特性を有するとされていましたが、1980 年代から疾病予防や健康維持にかかる機能(生理機能)に着目されるようになり、現 在は、この生理機能性を含めた3点が食品の機能(働き)として一般化され、一次機能、 二次機能、三次機能と称されています。 ◆一次機能は栄養機能のことで、生命を維持す るための栄養面での働きをいい、二次機能は 感覚機能のことで、味や香りなど嗜好・感覚 面での働き、そして、三次機能は生体調節機 能のことで、生体調節による病気予防の面で の働きを発揮するものです。 ◆栄養不足の時代から栄養過剰の時代へと変化 し、それに伴い生活習慣病が増えてきている ことから、その予防対策、健康づくりという 面で食品の三次機能(生体調節機能)への期 待が高まっています。 ◆この三次機能を有する食品が「機能性食品」とされています。ただし、「機能性食品」 や「健康食品」という名称は、法令上で定義されているものではなく、こうした名称 の食品(栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称も含む)は、販売業者 等が独自の判断で健康食品等と称して販売しているものです。 ◆市場調査機関の推計によれば、機能性食 品の国内市場規模は2兆円規模とされてい ます。 【機能性食品市場の推移】 2.5 ◆この内訳を効能別にみると、「整腸効果」2.0 「生活習慣予防」「滋養強壮」「マルチ バランス」の順に大きく、この4種類で全 (兆円) 1.87 1.87 1.89 1.85 1.84 1.86 1.87 1.98 2.05 1.5 体の約5割を占めています。 ◆また、平成17年から平成25年にかけての 1.0 増減をみると、「美肌効果」「滋養強壮」 「肝機能改善」「骨・関節サポート」の4 0.5 種が大きく増加しています。 0.0 05 06 07 08 09 10 11 12 13年 資料:「H・Bフーズマーケティング便覧2014-総括編-」(㈱富士経済) 1 ■ 食品機能の生体への作用 ◆食品の三次機能である生体調節機能とは、ヒトの生体内における消化系、分泌系、循 環系、免疫系、神経系などの恒常的な生命活動、さらに老化や生活習慣病などの疾病 からの回復に関与するものです。 【食品成分と作用する生体調節系】 ◆食品の生体調節機能にかかる研究開 感染症,アレルギーなどを改善 発の進展により、こうした健康の維 免疫系 持・増進にプラスに作用する機能性 を有する成分が数多く明らかにされ うつ,躁,不眠症などを改善 神経系 てきました。 ◆生理系からみた生体への作用および バリン,チロシン, ω-3 脂肪酸など それぞれの代表的な機能性食品成分 は右図のとおりです。 機能性 食品成分 プロバイオティクス プレバイオティクス 食物繊維など ◆消化系の代表的な作用は、整腸作用 であり、いわゆる善玉菌・悪玉菌の 話が広く知られています。 糖尿病などを改善 プロバイオティクス, ビタミン A・C・E, Zn,Se 消化系 便秘,下痢などを改善 ◆内分泌系は、ホルモンの分泌を調整 することであり、代表的な作用とし 内分泌系 グルコース生成酵素 阻害成分など 食品由来ペプチド ポリフェノールなど 循環系 その他の生体系 (発育系,生殖系, 口腔系,肥満系など) 高コレステロール, 高血圧などを改善 資料:「機能性食品の作用と安全性百科」(丸善出版㈱) てインスリンに関連した血糖値抑制があります。 ◆循環系は、心臓と血管の動き、血液を調整することであり、代表的な作用として血圧 調節、コレステロール低減があります。 ◆免疫系には、感染症を防ぐ免疫活性の上昇や、アレルギーを予防する免疫反応の抑制 などがあり、がん細胞の増殖を抑える働きもこれに含まれます。 ◆神経系には、脳の働きを支える、うつ・不眠症・統合失調症などのリスクを低減する、 症状を改善するといった作用があります。 ◆これら5つの系以外にも、骨系、生殖系、口腔系、皮膚系、肥満系など、生体のさまざ まな働きに作用する食品成分があります。また、体内の活性酸素を低減させる「抗酸 化」は、多くの疾病の予防につながるものであり、機能性食品・成分の作用の代表例 として広く知られています。 生理系 基本的な働き 機能性成分の作用 ①消化系 食物の消化・吸収、非栄養成分の排出 整腸作用 ②内分泌系 唾液、胃液、各種ホルモンを分泌 血糖値抑制 ③循環系 血液やリンパ球などの流れ 血圧調整、コレステロール低減 ④免疫系 外から侵入する病原菌やウィルスを防御 感染症予防、アレルギー予防 ⑤神経系 からだの動き、認識など情報を伝達 症状改善、精神安定化 ⑥その他 (骨、生殖、口腔、皮膚、肥満、発育など) 2 2 食品の機能表示制度 ■ 特定保健用食品制度の概要 ◆特定保健用食品制度(通称:トクホ)は平成3年9月にスタートし、平成5 年10月に表示許可第1号の商品が誕生しました。平成13年4月には保健機 能食品制度が発足し、特定保健用食品は保健機能食品に包含されて現在に 至っています。 ◆機能性食品の健康機能の表示は、薬事法によって規制されていましたが、この制度の 発足により機能表示が可能となりました。また、当初は通常の食品形態のもの(いわ ゆる明らか食品)に限定して許可されていましたが、平成13年の制度改正により、錠 剤・カプセル剤などの形態も対象になりました。平成17年には、条件付き特定保健用 食品制度と規格基準型特定保健用食品が創設され、手続きの迅速化、許可対象の拡大 などが図られています。 【飲食物の分類】 ( 薬事法) 医薬品等 ◆トクホとして商品化するためには、 生理的機能や特定の保健機能を示す 有効性や安全性等に関する科学的根 ( 食品衛生法等) 食 品 拠に関する審査を受け、消費者庁長 官の許可を受けることが必要となり ます。そのため、当該製品や成分の 安全性試験はもちろんのこと、ヒト 医薬品 (医療用医薬品、一般用医薬品) 新指定医薬部外品 (ドリンク剤等) 保健機能食品 (特定保健用食品、栄養機能食品) いわゆる健康食品 上記以外の食品 試験を実施して有意なデータを取得 資料:「改訂 食品機能学」(㈱光生館) する必要があります。 ◆トクホ制度が開始されて22年が経過し、現在の表示許可・承認品目数は1,101件まで 増加しています(平成26年2月時点)。平成23年度の市場規模はメーカー希望小売価 格ベースで5,175億円と推計されており、前回調査(平成21年度)との対比で319億 円の減少となっています。しかしながら、平成24年の炭酸飲料のヒットで再び注目度 が高まっています。トクホ炭酸で はコーラが火付け役となり、各社 の新商品が相次ぐとともに、さら に新たなカテゴリーとして、脂肪 対策のコーヒー飲料が話題を呼ん でおり、今後の市場拡大が期待さ れています。 ◆当初のトクホ市場は、乳酸菌を主 体とした「整腸」に効果のある商 【特定保健用食品の市場規模と表示許可件数の推移】 (億円) 8000 7000 755 年は、「中性脂肪・体脂肪」「コ 100 0 97 用途の比率が高まっています。 800 700 500 400 2269 1315 900 600 569 3000 1000 983 833 5494 5175 4121 4000 品が多くを占めていましたが、近 6798 5669 5000 (件) 1000 許可・承認件数 6299 6000 2000 レステロール」「血圧」といった 市場規模 398 300 289 200 100 171 0 99 01 03 05 07 09 11年度 資料:(財)日本健康・栄養食品協会による 3 ■ 新たな表示制度に向けた国の検討 ◆世界に先駆けて創設された特定保健用食品制度は、食品関連企業の新規投資を促し、 消費者の認知度の高まりに併せて市場としても拡大してきました。健康維持・増進に 対する国民のニーズはさらに高まっていますが、現在のところ、消費者にとって食品 の選択情報となる機能表示については、特定保健用食品・栄養機能食品以外に認めら れていません。 ◆こうした背景のもと、政府による『規制改革実施計画』および『日本再興戦略』(平 成25年6月14日閣議決定)において、科学的根拠をもとに企業責任において食品の機 能性を表示できる新たな方策を検討・実施することが示されました。 ◆これを受けて、消費者庁は「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」を平成25 年12月に設置し、制度にかかる安全性の確保や科学的根拠の考え方、消費者に誤認さ れない表示方法のあり方等について検討を行っています。 【「規制改革に関する答申」(平成25年6月5日)のポイント】 新たに機能性表示を可能と する仕組みの整備 表示内容の見直し(わかり やすさ、薬との判別、等) 現行の特別保健用食品、栄 養機能食品の拡充・改善 資料:大阪大学大学院医学系研究科・森下教授(内閣府規制改革会議委員)による 4 3 北海道食品機能性表示制度「ヘルシーDo」 ■ 北海道食品機能性表示制度の概要 ◆北海道では、国の特区制度を契機として、地域独自の機能性表示制度が平成25年度か らスタートしています。この制度は全国初の試みであり、北海道の食産業の高付加価 値化に寄与するものとして期待されています。 ◆平成23年9月の「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区(HFC特区)」の 指定申請における提案後、関係省庁との協議を進め、「健康でいられる体づくりに関 する科学的研究」が行われたことを表示できる制度の創設が認められました。 ◆この表示制度の対象は加工食品であり、商品に含まれる機能性素材が道内で製造され ていること、道内で製造された商品であること、製造事業者が自ら販売する商品であ ること、といった点が要件となっています。 ◆また、認定を受けるには、安全性の確認はもちろんのこと、食品 に含まれる成分の効用に関して、ヒト介入試験の結果にもとづい た学術論文が必要となります。 ◆この認定を受けると、認定マーク(右図)とともに、当該商品に 含まれる機能性成分に関して「健康でいられる体づくりに関する 科学的な研究」が行なわれたことをパッケージに表示することが できます。 【北海道食品機能性表示制度の概略】 対象商品 加工食品 対象要件 道内で製造された機能性素材を使用して商品を道内で製造し、製 造事業者が自ら販売するもの ※道内での加工が困難な一部の工程については、道外での加工 を認めることができる ※道内企業が他の企業の道内工場に製造を委託し、販売する場 合は対象とすることができる 研究対象 ①単一成分 ②組成物(植物の抽出物など複数の成分から組成される複合体) 審査基準 ・研究についての科学的研究の水準 ・研究についての論文の内容 ・安全性に関する基準 ・その他 制度運用 ・「北海道食品機能性表示制度委員会」を組織し、申請商品の適合 性について審議 ・年間2回(5月、11月)の申請期間を設定 ・3年毎の更新制 5 ■ 北海道食品機能性表示制度の認定一覧 ◆本制度の運用開始後、第1回目となる平成25年8月には札幌市内の企業を中心に8社12 品目が認定されました。第2回目となる平成26年2月には5社6品目が認定され、認定 数は累計で18品目となっています。 番号 企業名(所在地) 第1回 0001 ㈱活里 (札幌市) 8社 0002 黒松内銘水㈱ 12件 (黒松内町) 0003 ㈱活里 (札幌市) 0004 ㈱活里 (札幌市) 0005 ㈱オフィスセガ (札幌市) 0006 ㈱活里 (札幌市) 0007 ㈱雪印パーラー (札幌市) 0008 ㈲アイバ (札幌市) 0009 ㈱グランビスタホテル&リゾート (札幌市) 0010 ミッシュハウス㈱ (札幌市) 0011 フジッコ㈱ (神戸市) 0012 フジッコ㈱ (神戸市) 第2回 0013 ㈱活里 (札幌市) 5社 0014 ㈱北海道バイオインダストリー 6件 (札幌市) 0015 ㈱アミノアップ化学 (札幌市) 0016 ㈱アミノアップ化学 (札幌市) 0017 ㈱日本健康食品研究所 (江別市) 0018 ㈲アイバ (札幌市) 商品名 表記する成分名 活里エーエイチシーシーアルファ 細粒 オリゴノールウォーター AHCC(担子菌抽出 エキス) オリゴノール 活里エーエイチシーシーアルファ ソフトカプセル 活里エーエイチシーシーアルファ 液体タイプ(30本) AHCCイノムメディックピュア(120 包・30包) 活里エーエイチシーシーアルファ 液体タイプ(15本) 美ソフト AHCC(担子菌抽出 エキス) AHCC(担子菌抽出 エキス) AHCC(担子菌抽出 エキス) AHCC(担子菌抽出 エキス) オリゴノール 生キャラメル黒豆オリゴノール入り オリゴノール サプリドーナツ オリゴノール オリゴノールアイスクリーム オリゴノール カスピ海ヨーグルトプレーン400g クレモリス菌FC株 (乳酸菌) おいしいだいず水煮 大豆イソフラボン オリゴノールシトリック (粉末清涼飲料) プレミアム北海道タマネギドレッシ ングオリゴノールプラス AHCC for Professional (サプリメント 顆粒状) Oligonolハードカプセル (サプリメント カプセル状) 西洋カボチャ種子油 オリゴノール オリゴノール AHCC(担子菌抽出 エキス) オリゴノール 西洋カボチャ種子油 北海道クリームチーズチョコレート Oligonol オリゴノール入り(北海道メロン) 6 4 食品の安全性評価技術 ■ 安全性試験 ◆食品に関する安全性は食品衛生法によって規制されており、腐敗・変敗、有毒・有害 物質の混入、微生物汚染、その他有害物質の混入した食品または添加物を製造・販売 することが禁止されています。 ◆機能性食品・健康食品に類するものには、新規の食品として食履歴が不明なケースも 多々あります。食品添加物や特定保健用食品のように、法規制の中で安全性の担保が 要求されているものもありますが、多くの食品については必須ではなく、食品衛生法 第7条に示されているように、何か問題があれば対処するという状況です。 ◆しかしながら、法規制がないことを理由に安全性の確認を後回しにしていると、重大 な健康被害のリスクを内在することになり、ひいては企業としての存続を左右する事 態にもなりかねません。新たに開発する食品の安全性については、以下の点に留意す ることが必要です。 ①外国を含めヒトにおける食履歴があるか ②加工、抽出、濃縮した場合に特定の含有成分を多量に摂取することになるか ③一般的な食品衛生上の問題(農薬、重金属残留、微生物汚染など)はないか ◆このうち、③については一般的な食品分析によって担保できます。①および②につい て不明である場合、とくに主成分やその代謝物、混入している他の成分の毒性が不明 である場合は、生物学的安全性試験や文献調査などにより安全性評価を行うべきです。 ◆食品添加物や特定保健用食品は承認申請制度のもとで製造・販売されますが、申請に おいて要求されている主な評価項目は下記のとおりです。 ・単回投与毒性試験 ・発がん性試験 ・28日間反復投与毒性試験 ・1年間反復投与毒性/発がん性併合試験 ・90日間反復投与毒性試験 ・抗原性試験 ・1年間反復投与毒性試験 ・変異原性試験 ・繁殖試験 ・一般薬理試験 ・催奇形性試験 ・体内動態試験 ◆ただし、食品添加物、特定保健用食品いずれの申請においても、これらの試験全てが 必要とされるわけでなく、どのような試験を行って申請するかは、対象とする成分・ 素材の食経験や既往の科学的なエビデンスによります。 ◆安全性が科学的に明らかである場合は省略することができますが、食品添加物では、 げっ歯類の28日間反復投与毒性試験と変異原性試験を申請の際に添付することが望ま しいとされています。 ◆新たな食品の開発にあたっては、それに包含される安全性のリスク(商品化の後で発 生する可能性があるリスク)を事前に考慮・対処することが重要です。ここで紹介し た安全性試験の種類を参考にして生物学的試験を行い、安全性を担保することが必要 となります。 7 【おもな安全性試験の概要】 試験の種類 試験系 ① 単回投与毒性試験 食経験がないものなどで、まずは多量に摂取した場合に生命 や健康維持に大きな影響がないことを確認。投与量は通常2000 雌雄ラット又はマウス mg/kg体重を上限とする。 ② 反復投与毒性試験 無毒性量(NOAEL)などの算定を目的として、ある物質を動物 に所定の期間、繰り返し投与。食品の場合、28日間以上の反復 雌雄げっ歯類(通常ラット) 試験が必要となる場合が多い。 ③ 繁殖試験 二世代にわたって被験物質を投与し、発情、交配、受胎、分 娩、哺育などの生殖機能、離乳及び新生児の生育に及ぼす影響 雌雄げっ歯類(通常ラット) を探索。 ④ 催奇形性試験 胎児の発生、発育に対する影響、特に催奇形性に関する情報 雌雄げっ歯類(通常ラット)及 び非げっ歯類(通常ウサギ) を探索。 ⑤ 発がん性試験、1年間反復投与毒性/発がん性併合試験 動物のほぼ一生に近い長期間にわたり被験物質を投与して、 その物質に発がん性や発がんを誘導する性質があるのかを調 雌雄げっ歯類(通常ラット、マ ウス、ハムスター)、併合試験 では通常ラット1種 査。 ⑥ 抗原性試験 食品の場合、主に即時型アレルギー性に関する試験。 ⑦ 変異原性試験 突然変異を引き起こす作用を調べる試験。 a Ames試験(微生物を用いる復帰変異試験) b 哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験 c げっ歯類を用いる小核試験 ⑧ 体内動態試験 モルモットを用いる全身性ア ナフィラキシー試験、PCA反 応など a:Salmonella typhimuri umの4菌株及びEscheric hia coliの1菌株 b:通常はチャイニーズハムス ター肺細胞 c:マウス又はラットで通常は 雄のみ げっ歯類1種以上及び非げっ 被験物質を動物に投与して、その吸収、分布、代謝、排泄など 歯類1種以上 体内動態を調べる試験。 8 5 食品の機能性評価技術 ■ 細胞・生化学試験および動物試験 ◆機能性食品の開発にあたり、安全性試験とともに重要なステップとして機能性評価試 験があります。これが製品の特徴・効果を決定付けるエビデンスとなります。 ◆試験の区分としては、細胞・生化学試験、動物試験、ヒト試験があり、食品の開発・ 製造元である企業それぞれが判断して実施することとなりますが、特定保健用食品制 度や北海道食品機能表示制度で認定を受けるには、ヒト試験を実施してその有用性を 示すデータを得ることが必要となります。 ◆生活習慣病や老化に伴う機能不全に影響する要因として、血糖、血圧、脂肪、アレル ギー、免疫・炎症、細胞増殖、骨、酸化ストレス、糖化ストレスなどのほか、薬用化 粧品等への展開も考慮する場合は、皮膚への保湿やメラニン沈着防止などもあげられ ます。これらの要因のおもな評価方法(細胞および動物を用いた方法)を下表に示し ました。 ◆機能性評価試験には、安全性試験のように標準化されたプロトコル(試験計画)があ りません。そのため、通常は既知の作用が知られているものとの比較によって行われ ます。 【おもな機能性評価試験】 ターゲット 血 糖 血 圧 脂 肪 アレルギー 免疫・炎症 細胞増殖 細胞・生化学試験 動物試験 α-グルコシダーゼ活性阻害試験 〔生〕 抗血糖効果の検索(糖尿病モデルマウス) グルコース吸収抑制試験 〔細〕 血糖値上昇抑制試験(正常マウス/ラット) ACE活性阻害試験 〔生〕 血圧測定試験(自然発生性高血圧ラット) ACE活性阻害試験 〔細〕 脂肪蓄積抑制試験 〔細〕 脂肪蓄積抑制試験(卵巣摘出ラット、肥満モ デル動物) 脂肪分解促進試験 〔細〕 コレステロール上昇抑制試験(正常ラット) 脱顆粒抑制試験 〔細〕 抗原性試験によるアレルギー反応軽減の 検索 NO産出誘導・抑制試験 〔細〕 抗炎症剤の投与による浮腫の測定比較 アレルギー反応の軽減観察 細胞増殖抑制試験(マウス白血病細 短中期発がんモデル、遺伝子改変動物を 胞、ヒト白血病細胞、ヒト癌細胞) 〔細〕 用いた検索 骨代謝(骨形成)試験 〔細〕 骨代謝(骨吸収)試験 〔細〕 スーパーオキシド消去活性 〔生〕 DPPHラジカル消去活性 〔生〕 酸化ストレス ORAC 〔生〕 細胞内抗酸化試験 〔細〕 AGEs産生抑制 〔生〕 糖化ストレス 骨塩減少抑制試験(低カルシウム食と卵巣 摘出を組み合わせたラットモデル) 骨 皮 膚 活性酸素による反応産物の測定 酸化ストレスマーカーの利用 - チロシナーゼ活性阻害試験 〔生〕 メラニン産生抑制試験 〔細〕 注:表中の〔生〕は生化学試験、〔細〕は細胞試験を示す 9 育毛効果試験(マウス) ■ ヒト試験 ◆ヒトを対象とした食品の機能性評価試験の方法には、①介入試験と②観察試験があり ます。介入試験の一つである二重盲検無作為割付試験がヒトを対象とした試験方法の 中で最も質が高いといわれています。 ①介入試験 〔被験者に被験物質を直接摂取させることにより、有効性を確認する方法〕 ・代表的な例は無作為割付試験であり、被験者を無作為に2つ以上の群に分け、試験群の 被験者には被験物質を含む食品を摂取させ、対照群の被験者には被験物質を含まない 同一の形態の食品(プラセボと呼ぶ)を摂取させる。一定の期間摂取した後に評価指標に ついて、2つの群で比較する。 ・有効性をより正しく評価するために、被験物質を含む食品かプラセボであるかを研究者も 被験者も分からないようにする二重盲検(Double blind)で実施することが推奨される。 研究者には知らせ、被験者のみ分からない試験法を単盲検(single blind)と呼ぶ。 ②観察試験 〔食事内容への介入を行わず、対象者の食事内容を観察または調査する方法〕 ・前向きコホートと後向きコホートがあり、前向きコホートでは、まず対象者の摂取している食 品成分を中心とした食生活を調査し、この集団について評価する食品成分の摂取量と有 効性を評価するマーカーを将来に亘って追跡調査して、摂取した食品成分とマーカーとの 関係を解明する。 ・これに対して、後向きコホートは、評 価しようとするマーカーの値が境 界領域又は病的なレベルの対象 者を集め、次にその対象者群と性 別や年齢などが類似している健康 人を選んで、2つの群のヒトに過去 に遡って聞き取り調査をする方 法。 資料:「食品機能の制度と科学」(㈱同文書院、清水俊雄著)より ◆また、ヒト試験の実施にあたっては、通常、倫理委員会を通す必要があります。倫理 委員会では、試験をする食品の安全性の担保が取れているか、試験計画書がヘルシン キ宣言にもとづき被験者の倫理性・安全性を担保するような内容になっているかなど を審査します。倫理委員会に提出する主な資料は下記のとおりです。 ・試験食品概要書 ・生活習慣アンケート(必要な場合) ・試験実施計画書 ・試験食品の摂取記録(日誌) ・同意および説明文書 ・試験責任医師の履歴書 ・ケースカード(症例報告書) ・実施医療機関の概要書 ・健康被害に対する補償に関する資料 10 道産素材の機能性評価の事例(その1) ■ 生化学試験・細胞および動物試験の事例 ~タマネギの評価~ 試験に用いた品種と成分分析値 ・タマネギ3品種を凍結乾燥粉末化(フリーズドライ化)し、その粉末中のケ ルセチン量等を測定した。なお、ドライ粉末中の水分量は1.1~1.5g/100g であった。 総ポリフェノール ( g/100g ) 成分分析値 0RAC値 ( µmol TE/g ) ケルセチン ( g/100g ) タマネギA 0.89 270 0.67 タマネギB 0.75 210 0.53 タマネギC 0.82 230 0.64 品種名 ACE活性阻害・α-グルコシターゼ活性阻害 (1) 試験試料の調製 ・タマネギ凍結乾燥粉末、各3gに超純水12mlまたは70%エタノール12mlを加え、5分間振盪 させた後、12,000rpm、15分、4℃で遠心分離し、その上清を試験に用いた。 (2) 試験結果 ①ACE活性阻害(血圧上昇抑制に関する試験) ・タマネギB品種の凍結乾燥粉末は、70%エタノール抽出液25mg/mlで、また、水抽出溶液 16.7mg/mlで100%のACE阻害活性が見られた。また、タマネギA品種及びC品種も同様に、 顕著なACE阻害を示した。 ・さらに、水抽出物とエタノール抽出物の阻害活性を比較すると、水抽出物の方が高い阻害活 性を示した。 ②α-グルコシターゼ活性阻害(血糖値上昇抑制に関する試験) ・タマネギB品種の凍結乾燥粉末は、 70%エタノール抽出液及び水抽出溶 液35mg/mlで約60%のα-グルコシ ターゼ活性阻害が見られた。 ACE活性およびα-グルコシターゼ活性阻害 (品種B) a) ACE活性 100 b) α-グルコシダーゼ活性 n=3 80 Residual activity (%) 6 80 60 60 40 40 20 0 n=3 100 20 0.4 0.8 1.7 3.3 5 6.7 8.3 10 11.713.3 15 16.7 25 41.7 mg/ml 水抽出、当日 0 0.4 0.8 1.7 3.3 5 6.7 8.3 10 mg/ml 15 20 25 35 EtOH抽出、当日 (分析:天使大学) 11 抗炎症試験 (1) 試験試料の調製 ・タマネギ凍結乾燥粉末、各1gに70%エタノール4ml、または各0.5gに50%エタノール10ml を加え、5分間振盪させた後、10,000rpm、15分、4℃で遠心分離し、その上清を試験に用 いた。 ・最終試験液中の試料濃度は、70%エタノール抽 出は5mg/ml、50%エタノール抽出は1.25mg/ mlとした。 (2) 試験結果 ・マウスマクロファージ細胞株RAW264を用い、L PS(リポ多糖)刺激によるNO過剰産生に対する 抑制作用を抗炎症作用として評価した。 ・細胞が産生するNO2イオン濃度の変化をGriess試 薬により測定した。 ・3品種のタマネギ凍結乾燥粉末の抽出物は何れに おいても、顕著な抗炎症作用を示した。 (分析:酪農学園大学) 自然発症高血圧ラットに対する血圧降下作用の検討 ・タマネギ凍結乾燥粉末を28日間混餌投与(たまねぎ1に対し飼料9の重量比率で調製)するこ とにより、自然発症高血圧ラットに対する血圧降下作用の検討を行った。 ・タマネギ摂取により、投与3日以降、対照群の群平均値を超えることなく、投与24日および2 8日に統計学的有意な低値を示したことから、タマネギ凍結乾燥粉末は血圧降下作用を有して いる可能性が示唆された。 道産食材凍結乾燥粉末(タマネギB)の自然発症高血圧ラットに対する血圧降下作用の検討(血圧) 収縮期血圧(mmHg) 試験群 投与日数 投与前 3 7 10 14 17 21 24 28 対照群 平均 標準偏差 194 19 192 18 201 18 217 15 213 15 207 15 218 17 220 19 218 15 玉ねぎ群 平均 標準偏差 195 17 188 17 194 15 207 22 205 16 201 13 193 16 185 ** 14 191 * 11 各群n=6 *, **:対照群に対する統計学的有意差 5%または1%(Dunnet検定) 12 道産素材の機能性評価の事例(その2) ■ 生化学試験・細胞および動物試験の事例 ~アロニアの評価~ 試験に用いた品種と成分分析値 ・アロニアを凍結乾燥粉末化(フリーズドライ化)し、その粉末中の総ポリ フェノール量等を測定した。なお、ドライ粉末中の水分量は0.9g/100gで あった。 成分分析値 品種名 アロニア 総ポリフェノール 0RAC値 (g/100g) (µmol TE/g) 総アスコルビン酸 (総ビタミンC) (mg/100g) 9.68 1,100 9 ACE活性阻害・α-グルコシターゼ活性阻害 (1) 試験試料の調製 ・アロニア凍結乾燥粉末、各3gに超純水12ml または70%エタノール12mlを加え、5分間 振盪させた後、12,000rpm、15分、4℃で 遠心分離し、その上清を試験に用いた。 (2) 試験結果 ACE活性およびα-グルコシターゼ活性阻害 (アロニア、凍結乾燥) a) ACE活性 100 Residual activity (%) 7 n=3 b) α-グルコシダーゼ活性 n=3 100 80 80 60 60 40 40 20 20 ①ACE活性阻害(血圧上昇抑制に関する試験) ・70%エタノール抽出液3.2mg/ml溶液にお いて、約20%程度のACE阻害活性が見られ た。 0 ②α-グルコシターゼ活性阻害(血糖値上昇抑 制に関する試験) 0.4 0.8 1.6 mg/ml 3.2 水抽出、当日 ・70%エタノール抽出液12.8mg/ml溶液に 0 0.4 0.8 1.6 3.2 mg/ml 6.4 12.8 EtOH抽出、当日 (分析:天使大学) おいて、約70%程度のα-グルコシダーゼ阻害活性が見られた。 ・以上のことから、アロニアはACE活性阻害及びα-グルコシターゼ活性阻害活性を有しており、 エタノールでの抽出が有効であることが示唆された。 抗菌性試験 (1) 試験試料の調製 ・アロニア凍結乾燥粉末、各1gに70%エタノール4ml、また は各0.5gに50%エタノールを10ml加え、5分間振盪させた 後、10,000rpm、15分、4℃で遠心分離し、その上清を試 験に用いた。最終試験液中の試料濃度は、70%エタノール 抽出は5mg/ml、50%エタノール抽出は2.5mg/mlとした。 (2) 試験結果 ・大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する増殖抑制作用を比濁測定 した結果、70%エタノール抽出液に極めて強い抗菌作用を 認めた。 (分析:酪農学園大学) 13 NO産生促進(免疫賦活)試験 (1) 試験試料の調製 ・アロニア凍結乾燥粉末、各1gに70%エタノール4ml、ま たは各0.5gに50%エタノールを10ml加え、5分間振盪さ せた後、10,000rpm、15分、4℃で遠心分離し、その上 清を試験に用いた。 ・最終試験液中の試料濃度は、70%エタノール抽出は5mg/ ml、50%エタノール抽出は1.25mg/mlとした。 (2) 試験結果 ・マクロファージの活性化指標としてのNO産生能を、NO2 イオン濃度の変化としてGriess試薬により測定し、アロ ニアは極めて高い免疫賦活能を示した。 (分析:酪農学園大学) 動物試験による機能評価 ・アロニア凍結乾燥粉末を28日間混餌投与(アロニア1に対し飼料9の重量比率で調製)するこ とにより機能評価を行った。 ①自然発症高血圧ラットに対する血圧降下作用の検討 ・アロニア摂取により、投与3日 道産食材凍結乾燥粉末(アロニア)の自然発症高血圧ラットに対する血圧降下作用の検討(血圧) 以降、対照群の群平均値を超え 試験群 ることなく、投与28日には統 計学的有意な低値を示したこと 投与前 3 7 収縮期血圧(mmHg) 投与日数 10 14 17 21 24 28 対照群 平均 標準偏差 194 19 192 18 201 18 217 15 213 15 207 15 218 17 220 19 218 15 アロニア群 平均 標準偏差 198 15 185 7 191 18 198 15 193 15 186 27 207 33 195 25 196 * 15 から、アロニア凍結乾燥粉末は 血圧降下作用を有している可能 性が示唆された。 各群n=6 *, **:対照群に対する統計学的有意差 5%または1%(Dunnet検定) ②高脂肪食餌性肥満マウスに対する抗肥満効果の検討 ・アロニア摂取による明確な抗肥満効果はみられなかったものの、体重増加抑制、腸間膜脂肪 増加抑制、血中脂質低下の傾向がみられた。この抗肥満効果は28日を超える期間摂取させる ことで明確となる可能性が示唆された。 道産食材凍結乾燥粉末(アロニア)の高脂肪食餌性肥満マウスに対する抗肥満効果の検討(体重) 試験群 0 3 7 体重(g) 投与日数(日) 10 14 17 21 24 28 28日翌日 対照群 平均 標準偏差 21.49 0.72 22.10 0.81 23.10 0.87 23.48 0.74 23.95 1.01 24.45 0.89 24.95 1.04 25.70 0.94 26.09 1.20 25.44 1.10 アロニア群 平均 標準偏差 21.75 0.56 22.09 0.51 22.78 0.64 22.81 0.66 23.48 0.74 23.73 0.86 24.55 0.97 25.04 1.15 25.53 1.20 24.70 1.09 各群n=6 14 8 道産素材の機能性評価の事例(その3) ■ ヒト試験の事例 ~西洋カボチャ種子油の評価~ 『カボチャ種子油継続摂取がヒトの脂質異常症、排尿障害、過敏性膀胱など生活習慣病に 与える影響に関する臨床試験』 ○佐藤 博二(株式会社北辰フーズ) 仁木 弘(株式会社エス・ネット)、川村 里奈、西平 順(北海道情報大学) 背景・目的 ・西洋カボチャの種子から抽出した油脂には、脂質異常症、腹部肥満、排尿阻 害過活動膀胱などの生活習慣病の改善効果が期待されている。また、ドイツ で前立腺肥大症や過敏性膀胱炎の治療薬として承認されているペポカボチャ の成分と類似の成分が含まれている。 ・これまで農産廃棄物となっていた西洋カボチャ種子の有効活用のため、カボ チャ種子オイル継続摂取の有用性を明らかにすることを目的とした。 内容・方法 ・西洋カボチャ種子油の継続摂取が脂質代謝改善、ペポカボチャと同様の排尿障害や過敏性膀 胱に与える影響について、その有用性を評価した。また、西洋カボチャの種子にはビタミン やミネラルも豊富に含まれており、ビタミンEの抗酸化作用も期待し副次評価を行った。 ・北海道情報大学生命倫理委員会の承認後、健康情報科学研究センターに登録している35歳か ら80歳のボランティアのうち、同意を得た被験者から45名(男性25名、女性20名)を選出 し実施した。スクリーニング試験において排尿に関するアンケート、身体測定を行い適格と 認めた者を選出した。 ・被験者にはカボチャ種子油を1日に10gずつ12週 エントリー 間摂取してもらい、摂取前から摂取6週間後、摂 取12週間後の変化を血液検査(血中脂質、DHT、 PSA、、抗酸化)、アンケート調査(OABSS、I- 西洋カボチャ種子オイル 同意取得 摂取 スクリーニング 0 week 6 week PSS、QOL)を実施し評価した。 結果・考察 ・試験中止者4名、被験食摂取率が90%未満の2名を除き、最終データ解析は39名のデータで 行った。 ①アンケート調査 ・臨床試験において実施した過活動膀胱症状質 問票(OABSS)では、摂取前から摂取12週 間後において起床から就寝までの尿の回数、 就寝後から起床までの尿の回数、尿意切迫感、 尿失禁のすべての項目のスコアが有意に減少 した。 15 12 week ・また、排尿状態に対する被験者の満足度を 表す指標として実施したQOLスコアの評価 でも、排尿により外出が億劫になる、気分 が落ち込んだりストレスを感じる、毎日の 生活がそこなわれている、現在の排尿症状 が一生続くとしたらどう感じるかの4項目 においてもスコアが有意に減少した。 ②血液検査 ・血液マーカーとして、PSA(前立腺特異 抗原)、DHT(ジヒドロテストステロン) を測定したが、摂取後においての変化は 見られなかった。 ・脂質代謝改善の評価では、HDL-CHOが 摂取6週間後、12週間後に増加、T-CH Oが摂取12週間後に増加した。 ・また、抗酸化についての評価では、酸化 LDLが6週間後、12週間後に増加し、血 清抗酸化では12週間後に減少する結果 となった。 まとめ ・本研究において、排尿障害や過敏性膀胱 に与える影響については血液マーカーの 変化は見られなかったが、OABSSスコア、 QOLスコアの改善が見られ、カボチャ種 子油にはペポカボチャと同様の排尿障害 や過敏性膀胱の改善効果があると示唆さ れた。 ・北海道は日本のカボチャの45%を生産し ており、その1/3、約1万トンが加工用に 利用されている。加工の際に排出される種子・ワタは農産廃棄物として処理されているが、 株式会社北辰フーズはこれまで農産廃棄物となっていた西洋カボチャ種子を有効活用し「カ ボチャ種子油」の商品化を進めている。 (平成24年度 16 北海道食品機能報告会 要旨集より) 9 おわりに ~機能性食品開発に向けて~ ◆機能性食品の国内市場は、平成16、17年をピークに横ばいの傾向を示していましたが、 消費者への認知が進んでいる商品は売上が堅調なこともあり、ここ数年は再び増加傾 向に転じています。2兆円市場もさることながら、国の重要課題である健康維持・増進 の観点からも、機能性食品は重要な産業分野となっています。 ◆こうした背景から、北海道地域のみならず全国各地において、地域資源等を活用した 機能性食品の開発・ビジネス化への取り組みが活発化し、科学的エビデンスの取得に よる機能性の解明・実証が進められています。 ◆しかしながら、国内で食品の効果効能(機能性)を表示するためにはトクホ制度の許 可の取得が唯一の方法であり、大規模なヒト介入試験の実施などに莫大な費用を要す る本制度の取得は、中小企業者にとって極めて困難な状況にありました。 ◆この様な中、北海道は、全国に先駆けて地域独自の機能性表示制度を創設し、機能性 食品の開発・事業化をさらに促進しようとしています。また、国においても加工食品 および農林水産物に関する新たな機能表示制度づくりの検討がスタートしました。 ◆商品開発の担い手となる企業にとっては、開発環境・ビジネス環境が整備されたとも いえ、有効に活用できる機会となっています。 ◆しかも、北海道内には安全性・機能性評価にかかる一連の機能(産学官)が集積して おり、エビデンスを取得しやすい環境にあるといえます。今後の事業展開にあたって は、こうした制度・機能をフルに活用した取り組みが期待されます。 小規模なヒト試験、機動 的な研究プロジェクトの 編成・遂行が可能に 北海道地域には安全性・機能性評価にかかる一連の機能が集積 ヒト試験 動物試験 ( in vivo ) 細胞試験 ( in vitro ) 生化学試験 食品衛生上の試験 一(般の食品分析 ) 食品素材 ◆一方、地域資源の機能評価にあたっては、品種、収穫時期・地域、保存方法、収穫す る年の気候など、様々な要素で機能成分が変化することに注意する必要があります。 ◆また、生産される食品の更なる品質や安全性の向上に向け、今後、食品GMPを取得し た生産体制なども検討していく必要があります。 17 ◆北海道内には、バイオに関する基礎研究から臨床試験までをサポートする研究開発 支援企業が集積しています。 【食品機能の研究を支える企業群】 会社名 所在地 電話/FAX 事業内容 ㈱エクサム 〒060-0001 TEL 011-222-5225 ○皮膚に関する食品・化粧品の安全性及び臨床 札幌市中央区北1条西 FAX 011-222-5265 試験 5丁目2 ㈱エコニクス 〒004-0015 TEL 011-807-6811 ○食品・化粧品の機能性成分等の分析・評価 札幌市厚別区下野幌 FAX 011-807-6800 テクノパーク1丁目214 ㈱化合物安全性研究所 〒004-0839 札幌市清田区真栄 363-24ハイテクヒ ル真栄 ㈱クリニカル・サポート・ コーポレーション 〒060-0061 TEL 011-223-3130 【食品のヒト試験に特化した受託】 札幌市中央区南1条西 FAX 011-272-7301 ○各種保健目的別の有効性確認試験 8丁目4-1TG札幌ビル ○長期摂取・過剰摂取の安全性確認試験 ○食品のエビデンス構築・保健機能食品付加価値化支援 TEL 011-885-5031 ○健康食品・特定保健用食品等の安全性試験お FAX 011-885-5313 よび機能性評価試験、ヒト臨床試験 ㈲クロモソームサイエンス 〒003-0801 TEL 011-788-3431 ○腸内細菌、口腔細菌、環境微生物のFISH解析 ラボ 札幌市白石区菊水1条 FAX 011-788-3432 受託 4丁目6-55-1004 ○微生物用FISHプローブの製造販売 コスモ・バイオ㈱ プライマ 〒063-0061 TEL 011-667-5911 ○培養細胞を用いた食素材の機能評価、腸内フ リーセル事業部 札幌市西区西町北12 FAX 011-667-5912 ローラ解析、コラーゲン抗糖化アッセイなど 丁目1番12号 YSビ ル ㈱新薬リサーチセンター 〒061-1405 恵庭市戸磯452-1 一般財団法人日本食品分 〒066-0052 析センター千歳研究所 千歳市文京2-3 TEL 0123-34-0111 ○健康食品~トクホをターゲットとした、食品の機 FAX 0123-34-1950 能性・安全性にかかわる動物・ヒト試験全般 ○食品の機能性メカニズム探索をターゲットとした非臨 床サンプル(臓器、血液、糞便、尿)の各種アッセイ TEL 0123-28-5911 ○食品の機能性評価(化学分析・細胞評価・動物試験) FAX 0123-28-5921 ○食品の安全性試験(細胞評価・動物試験) ○食品の機能性成分定量 ○食品の栄養分析 ○食品の衛生試験 日本ハム㈱中央研究所 札幌サテライト 〒001-0021 TEL 011-708-8065 ○食品中の残留農薬などの受託分析 札幌市北区北21条西 FAX 011-708-8073 12丁目コラボほっか いどう内 ㈱ホクドー 〒063-0849 TEL 011-641-7507 ○食品中の機能性成分含量の測定系構築および 札幌市西区八軒9条西 FAX 011-644-9209 測定の受託 10丁目4-28 ○食品の安全性試験および機能性評価試験 北海道システム・サイエン 〒001-0932 TEL 011-768-5901 ○次世代シーケンサー等を用いた腸内細菌群衆 ス㈱ 札幌市北区新川西2条 FAX 011-768-5951 解析、発酵食品中の微生物群衆解析など 1丁目2-1 18 平成26年3月 公益財団法人北海道科学技術総合振興センター 札幌市北区北21条西12丁目 コラボほっかいどう TEL:011-708-6392 / FAX:011-747-1911