...

活性酸素によるヒアルロン酸の解重合反応 に及ぼす二,三の蛋白質

by user

on
Category: Documents
29

views

Report

Comments

Transcript

活性酸素によるヒアルロン酸の解重合反応 に及ぼす二,三の蛋白質
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
活性酸素によるヒアルロン酸の解重合反応
に及ぼす二,三の蛋白質,ポリペプチドお
よびアミノ酸の影響
The Effect of Some Proteins, A Peptide, and Amino Acids in
the Depolymerization of Hyaluronic Acid by Active Oxygen
Species
佐藤, 郁夫; 柏村, 直樹
Sato, Ikuo; Kashimura, Naoki
三重大学生物資源学部紀要 = The bulletin of the Faculty of
Bioresources, Mie University. 1995, 14, p. 151-156.
http://hdl.handle.net/10076/3085
三選大盤物資源紀祭
第14号:151∼156
平成7年3月25日
活性酸素によるヒアルロン酸の解重合反応に及ぼす
ニ,三の空白質,ポリペプチドおよぴアミノ酸の影響#
佐藤 郁夫*・柏村 直樹
三東大学生物斑源学部
TheEffectofSomeProtein$,APeptide,andAminoAcid$inthe
Depolymeriz乱tionofHy乱1uronieAeidbyAetiveOxygenSpeeie$
IkuoSATOandNaokiKASHIMURA
FaeultyoどBioresourees,MieUniversity
Abstraet
The effect of proteins,a POlypeptide,and amino acids such as albumin,e−
polylyslnearldhisもidineinthedepolymerizationorhyaluronieacidwasexamined.
Allof the proteins,a pOlypepti加,and amino acids examined supressed 汰¢
depolymerizationwithdiffcrentinhibitionratios.Inaddition.theinhibitionratioin
thedepol)−merizaLioI10fh)・aluronieacidb)・D−fl・uCtOSe6−phosohate−Cuいdiffel・edfrom
thatin the depol〉,merization or hyaluronic acid by hydl・Ogen PerOXide. These
resultssuggested that the mode or depolymeriヱation of hyaluronic acid and active
OXygen SpeCiesi−1、rOl、・edin the reaction、、,ere different between the two s)・StemS.
ImcompleteiI−hibition of E,pOlylysine andlysinein the dcpolymerization of
hyaluronicaeidbyhydrogenperoxideimpliedtbeinvolvementorsomeactiveoxyg・en
SPeCiesinthereaction.
Key words‥ hyaluronic acid・depolym訂ization・aetive oxygen叩eCies・
Pl−Oteins ● E−pOlylysine
ように2価の銅イオンの存在で促進されたが,ヒアルロ
緒
言
ン酸の起源の相違により解番台の程度が興なる現象がみ
これまでに生体内多糖の…つであるヒアルロン酸が糖
られた。現私 動物と微生物由来のピアルロン敵間で構
質由来の活性酸素により解東食を受けることを見いだし
造等に塞がないと言われていることから,この原因とし
ているl・2)。これらの反応は,タバコモザイクウイルス
てそれらの分子盛か含有の不純物の遠いが考えられた。
やバクテリオファージ¢Ⅹ174の不清化作用8)と同じ
分子盟の異なる微生物由来のヒアルロン敢でその解惑合
に善がみられなかったこと1〉より,我々ほ後者の可能性
# 本研究は佐藤郁夫の学位論文研究の一部として行われた。
* 本学部生物資源学研究科,生物機能応用科学専攻
現孤 チッソ㈱水俣製造所勤務
が商いと考えた。
活性激発の生成を促遷あるいは阻解する化合物につい
てほ多くの研究が行われている4)。それらの申で,ヒア
佐藤 郁夫・柏村 麗樹
152
ルロン酸の起蘭に影轡を受ける不純物として含まれる蛋
阻寒率(%)=[1−(Vp…Va)/(Vc…Va)]
白質が考えられる。蛋白質は活性観衆により変性等の影
×100
響を受けることば良く知られており,蛋白質の主観又は
Vc:ヒアルロン髄のみを24時間処理した時の粘度
その残基と多糖の活性歓楽様に対する反応性の相違がヒ
Va:ま白質,ポリペプチドあるいはアミノ敷鯉添加
アルロン散解東金の程度差の原因であると考えられた。
での24時間後の反応液の粘度
そこで,本研究では活性酸素によるヒアルロン駿解墾合
Vp:蛋白質,ポリペプチドあるいはアミノ穀添加に
反応に対する蛋白質,ポリペプチドおよびアミノ敢の添
よる24時間後の反応液の粘度
加効果について検討した。
結果および考察
実験村糾および方法
1一 材料
乳酸蘭励㌻叩£0ご0ごC㍑ぶZOO叩;deJ乃ic混ざ由来のヒア
これまでに活性観衆の玄白質への影妙については数多
く報告されている。特に川岸らによって蛋白質申のヒス
チジンとトリプトファンが活性観衆により軟化を受けや
ルロン酸ナトリウム塩(平均分子盟約100万)と
すく5・6),ヒスチジンと同様にイミダゾール環を有する
盈㍗呼£omツeeぶα∼わ㍑ヱ㍑ぶ由来のど−ポリリジン塩酸墟
化合物に活性駿紫摘蘭作用があることが報告されてい
(平均分子戯約4000)はチッソ(株)より恵与されたも
る7)。また加藤らは,牛血滑アルブミンやグリケート化
のを用いた。D・プラクトース6・リン酸はSigma製を,
された年血滴アルブミンに活性酸素捕捉作用があると報
過酸化水素ほ三徳化学製を使用した。アミノ穀類は和光
告している8)。
純寒製を用いた。また,蛋白質のうちアルブミン(Bov
ine),チトクロームc(Horse HらarもType8)およ
そこで我々は活性酸素によるヒアルロン穀解蕊合反応
に対する市販の種々の蛋白質の添加劾束について検討し
びインスリン(Boville Pancreas Crystalline)は
た。使用したヒアルロン敵中の蛋白質含應が0.1%以下
Sig・ma製摩1d・グロプリ■ン(BovineyR4−1)とヘ
であるので,その添加段をヒアルロン酸露盤の1およぴ
モグロビン(Human2ⅩCryStallまzed)は‡NCPhar・
0.1%(反応液中の蛋白質濃度としてはそれぞれ
maceuticals製を使用した。
0.01および0.001%)とした。
2.D−フラクトース 8・リン放と過酸化水素によるヒ
の蛋白質が活性観衆によるヒアルロン駿の解東食反応を
検討した蛋白質問でその程度に差はあるものの,全て
アルロン酸解重合反応
それらの添加磯度に応じて阻脅した。ヘモグロビンは
ヒアルロン傲の反応液中での終濃度が1.0%になるよ
0.001%で28.3%の商い解蔑合阻害率を示した
うに,50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に溶解
(Tablel)。調製されたヒアルロン敵中に残存する動物
後,同じ緩衝液に溶解した硫軟鋼,D−フラクトース 6・
組織や微生物細胞由来の蛋白質含駿によっては,活性酸
リン酸,過酸化水素および蛋白質,ポリペプチドおよび
素によるヒアルロン酸の解東食反応に大きな影轡を与え
アミノ酸溶液のそれぞれを適宜添加し,1分間手で振と
るものと考えられる。これまでに種々の活性酸素生成系
う授絆後,37℃で静渡した。その後経時的にサンプリ
を用いてヒアルロン扱解意合反応が検討されているが9〉,
ングし,E型回転粘度計(東京計器製)を用いて回転数
これらの研究を進める上で,調製したヒアルロン教申の
1−100叩m,25℃で粘度を測定した。なお,粘度の
蛋白質にも十分注意してその結果を比較する必要がある
単位にはmPa・Sを用いた。
と思われる。
3.阻害率の計算
ラクトース6−リン酸および過酸化水素系を用いて解東
活性酸素生成系として2価の鋼イオン存在下でのD−フ
D.プラクトース6−リン駿,過酸化水素によるヒアル
合に及ぼすリジンのホモペプチドであるg・ポリリジン
ロン駿解褒愈反応に対する蜜自質,ポリペプチドおよぴ
(塩酸墟)の影啓をみた(ぎまg.1)。これらの活性駿東
アミノ酸の阻啓率を次式で計算した。
生成系でリジンあるいはe−ポリリジンが存在しない域
活性歓楽によるヒアルロン敢の解螢合反応に及ぼすこ三の蛋白質,ポリペプチドおよびアミノ酸の影轡 153
Tablcl.Inhibition effect of proteinsin the depolymeri組tion of hyaluronic acid byDイructose6−
phosphate
Proteinconcentration(%)
7
1
9
4
6
7
4
2
5
3
8
2
2
5
3
9
1
6
2・A▲
In$ulin
4
Hemoglobin
5
α・Globulin
5
Cytochromec
0.001
0.01
0.001
0,01
0.001
0.01
0.001
0.01
0.001
0.01
∩くU
Albumin
Inhibitionratio(%)
ハ0
4
Hyaluronまcacid(1%)solutioncontainまngD・rruCtOS¢6−phosphaもe(1mM)andCu2サ(10〟M)
wasincubatedwまthprotein(0.001andO.01%)at37℃どor24h.
1
0
Forinhit)ition ratio,SeeMatcriと11s andMctIlOds.
合には同程度のヒアルロン軟の解露台が起こるように条
酸の解東食への影轡ほ,川蝉らの研究結果から予測され
件を設定してある。ど−ポリリジン(塩酸塩)およびそ
るように,1mMヒスチジンの添加によって94.6%の
のモノマーであるリジン(塩酸墟)の場合も蛋白質同様
高い解整合阻審効果がみられた。これはヒアルロン観の
に活性散楽捕捉作用が組められた。さらに過酸化水系に
解惑合に関与する活性酸素がヒスチジンを優先して教化
よる活性観衆生成系の方がより太さな阻寒が見られ,活
したためと貰える。
性酸素生成系でその阻賓率に塞が生じた。これは,D−フ
このように蛋白質,ポリペプチドおよびアミノ観はヒ
ラクトース6−リン酸】2価飼イオン系および過餞化水
アルロン故意の1およぴ0.1%桂皮のわずかな應でヒア
素系では解惑合に関与する活性酸素種が異なるか,その
ルロン酸解窓合反応を強く阻害した。これはヒアルロン
生成経絡が異なることによると考えられる。また,D−フ
敢の解蛋合を引き起こす活性散発がヒアルロン敢よりほ
ラクトース6−リン駿とど−ポリリジンあるいはリジン
むしろ蛋白質,ポリペプチドやアミノ酸をより選択的に
間でアミノカルポエル反応が起こり,この反応が若干解
攻撃するためであると習える。
蕊合反応を促進している可能性も考えられる。ど・ポリ
以上のように活性散発によるヒアルロン駿解蛮合反応
リジンが,残遜数の同じ磯波でリジンに比べ約2倍程度
ほ蛋白質,ポリペプチドおよびアミノ酸により効果的に
高い阻審率を与えた。現在のところ理由は明らかでほな
阻寒された。このことから動物や微生物由来のヒアルロ
いが,高分子のポリリジンがヒアルロン駿と会合し,活
ン教の解蚤合反応を検討する際にば,用いるヒアルロン
性酸素の攻撃からヒアルロン按を保護する効娘が増大す
酸の精製を十分に行う必要があり,実験結果を相互に比
るのかもしれない。Fig.2において£−ポリリジン,リ
絞する場合は蛋白含恩が同じか,よく似たヒアルロン駿
ジンともに0.01%以上の添加でその阻啓効果が頭打ち
を使用することが望ましい。さらに,生体内で発生した
になるのは,過酸化水素系によるヒアルロン駿の解露台
活性酸素はヒアルロン酸よりその周辺に存在するコラー
反応が単…・の活性酸素種のみによっておこっていないこ
ゲンなどの蛋白質を選択的に攻撃するのではないかと推
とを物語るものである。このような現象はヒアルロン駿
察される。
解盤台反応のSODによる阻啓実験でもみられたま〉。
Table2に種々のアミノ敢添加によるヒアルロン髄
解盛会反応の阻轡効果を示した。アミノ酸のヒアルロン
154
佐藤 郁夫・柏村 政樹
ActiY¢OXygeng¢n¢ratOrS
0 10
=0 30 40 50 60 70 80 90 100
】nhibition】加10(馬)
Fig,1.Inhibitioneffectof8・POlylysineHCI(PL HCI)andlysine HCI(Lys HC‡)in the
depolymeriヱation or hyaluronic aeid byD・鉦uctose6−phosphate(FふP)and by
hydrogenperoxide.Hyaluronicacまd(1%)soluもioncontainingF・6・P(1mM)and
Cu2ヰ(10〃M)orhydrogenperoxide(1%)wasまneubatedwithPL HCI(0.01%)or
LysHCI(0.01%)at370cfor24h.
Forinhibition raLio.seeMaterialsandMethods.
00
鍾
鮒
Ⅶ
の
幻
亜 30
︵辞︶虐巴UO⋮︼ヨ叫召−
罰 10
0
0.∝〉5
0.01 0.015 0.02 0,025 0.03
Coneenhadon(%)
0.035
0.04
Fig.2.E汀ectofeoneentrationofど・pOiyiy扇neHC‡(FLHC‡)andlysine壬まC‡(Lys吾Cl)inthe
depolymerizatまonofhyaluronieaeidbyhydrogenperoxide.Hyaluronieacid(1%)
solutioncontaまning・hydr叩enperOXide(1%)wasincubatedwithPLHCI(昏)orLys
HCI(○)at370crol、24h.
Forinhibition ratio,SeeMaterialsandMethods.
活性敢紫によるヒアルロン酸の解盟合反応に及ぼすこ三の蛋白質,ポリペプチドおよびアミノ酸の影轡155
Table 2・Inhibitioneffectofarninoacidsinthedepolymeriヱationof hyaluronic acid by hydrogen
pel・OXide
Addition
Inhibitionratio(?6)
5
4
9
rg
AG
nV
2
4
7
6
4
5
ハU
3
7
6
4
2
7
9
4
結
八一U
Forinhibition ratio.seeMaterialsand Methods.
翰
活性酸素によるヒアルロン敢の解東食反応がま自質,
QU
Hyaluronic aeid(1%)solution containing hydro酢n perOXide(1%)wasincubated with
aminoacids(1mM)at37bcfol・24h.
引用文献
1)SATO,Ⅰり才.ZU,S.NISH王KAWA and N.XAS肌
ポリペプチドやアミノ酸によりそれらの添加厳に応じて
MUR^.Depolymerization of hyalしIrOnic acid
阻番された。ヒアルロン吸の起源の相遵により解窓合の
byD−fructose6−phosohate,Btosci.BEo亡ech.
程度が異なる原因としてサンプル申に微塵に存在してい
る蛋白質あるいはその分解物の作用によるためでほない
かと考えられる。
月よocJほm.57:2005−2009(1993).
2)SATO,Ⅰ.,Y.YosH工D^,S.NISHZKÅ\\7A,M.7NAGAKI
andN・K^SHIMUR^.]TIUitrodepol)・merization
Ofhyaluronicacidby oligosaccharide−derived
OXygen radicalspecies.ln FroTttiers q[
要
約
2価銅イオン存在下でのD・フラクトース 6・リン酸お
よび過酸化水発系によるヒアルロン穀解東合反応に及ぼ
す蛋白質,ポリペプチドおよぴアミノ酸の影啓を研究し
た。使用した蛋白質,ポリペプチド,アミノ酸全てに,
属eαC£わg O∬ツge花 勒ぞぐieぶ £花 成0わgッ α花d
Medicine(ed.byl(.Asada andT.Yoshida,
Excepta Medica,Amsterdam),P167−168
(1994).
3)RASH王MURA,N.,Ⅰ.SAで0,Z.KuMAZAWA,H.KuNO,
程度に産はあるものの,解重合反応阻審効果が認められ
S.KoYAMAand M.KJIr^GAW^.Generation of
た。これらの異なる活性駿東生成系でその阻賓率が異なっ
SuPerOXideandinuLtroinactivationofviruses
たが,これは発生している活性観衆種が異なるためと考
byaldopentoses,Agric.Biol.Chem‥46:2407L
えられる。さらに,e一ポリリジンとリジンの添加効果
2409.(1982).
が0.01%以上で頭打ちになることより,過酸化水素系
によるヒアルロン敢解露台反応には禎数(2つ以上の意
味)の活性観衆確か関与しているもめと推察された。
4)HALLIWELL,B.andJ.M.C.GuγrERIDGE:フリー
ラジカルと生体(松尾光乳嵯峨井勝,膏川敏十私
学会出版センター),p71−149(1988).
5)UcJilD^.K.and S.K^WAKISHl.Selective
謝
辞
本研究を行うに当たり多大な御助言を頂いた当研究室
の西川司朗助教授に心から感謝致します。
oxidation of imidazole ring in histidine
residues by the ascorbic acid−COpperion
SyStem,戯0ご九em.βi8pんッ訊Reg.Comm㍑軋,
138:659−665(1986).
佐藤 郁夫・柏村 政樹
156
6)Uc昆ヱDA,Ⅹ.aIldS.XAWAXユS瓜Seleetiveoxida・
8)OKAMOTO,G.,F.HAYASEand罠−KA・m.
tion or tr)・ptOphan alld histidinel・esiduesin
Scaveng・1ng Of active oxyg・en Spedes by
protein through tbe copper・Catalyzed autq
glycatedproteins,β£0ぷCi.戯0とどcん.戯oc′とem.,
OXidation or L−aSCOrbic acid,Agrよc.戯oZ.
56:928…931(1992).
C九emり52:1529榊1535(1988).
7)内田浩二三井弟番,川岸舜朗.活性酸索に対する
イミダゾール関連化合物の反応とその教化抑制作メ札
日本螢芸化学会昭和63年度大会餓演婆乱名儲乳
p215(1988).
9)柏村麗樹.糖質と活性駿嵐蛋白質核酸酵素,33:
3116仙3126(1988)一
Fly UP