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総裁ごあいさつ - JBIC 国際協力銀行

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総裁ごあいさつ - JBIC 国際協力銀行
総裁ごあいさつ
年次報告書2002の発行にあたり、あらためて皆様
の日ごろのご支援に心から感謝申し上げます。
昨今の世界経済の動きの中には、いくつかのダイナ
ミズムが看取されます。その一つは、言うまでもなく、
市場経済がIT革命という手段を得てグローバル化を
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21世紀最初の年の昨年、9月11日の未曾有の米国
進めていく動きです。最近のIT関連需要の減退がそ
テロ事件を挟んだ米国経済の退潮は、アジア地域にも
の進行速度にブレーキをかけたり、いくらかの失敗事
ITのウェイトの大きい韓国、シンガポール、マレーシ
例も見られるとは言え、グローバル化の動きは引き続
ア等を中心として大きく影響し、またユーロ圏では第
き大きな展開をしていくものと考えられます。わが国
4 四 半 期 の マイ ナ ス 成 長 を 生 み ま し た 。そ の 後 、
の国力の再興も、このような流れの中で、国内経済構
2002年に入り、米国の回復とテロおよびテロ後の
造改革とともにわが国企業の海外事業展開による最
情勢の影響が予想程のものでなかったことの心理的
適地生産・販売を適切に進めることがポイントになり
安堵感もあって、欧州、アジアにも景気の減速に歯止
ましょう。同時に、グローバル化の進展の下で、貧困
めがかかるとの期待が高まっています。
しかしながら、
の削減・緩和や地球環境問題への取組みが強化されよ
南西アジア地域および中東地域をはじめとした不安
うとしており、本年のモンテレイからカナナスキス・
定な国際政治情勢は、世界経済の回復に向けての歩み
サミットを経てヨハネスブルグに至る「持続可能な開
に引き続き暗い影を落としていることは否定できま
発」へのエネルギーは、大きい歴史的意義が感じられ
せん。
ます。
一方、わが国経済を顧みますと、2001年度は数年
最近における第二の特色は地域経済の動きです。
来の国内需要の不振に加え、テロ事件後の世界経済の
世界経済は、今後とも米国経済の動向に依存したり、
減速の影響を受けて輸出が減少するなど、景気は低迷
影響されたりする一方で、米州、欧州、アジア等がそ
いたしました。2002年度に入り、米国やアジアにお
れぞれ域内経済を活性化し、相互に影響を及ぼしつつ
ける景気回復の動きが輸出や生産に好影響を与えて
全体として持続的な経済成長への努力を続けるとい
いるものの、本格的な回復感が出るまでには至って
う形で、多極化が進展しそうです。わが国も、WTO
いません。今後、景気を上向きに転じ、持続的な成長
における国際的な枠組みの中での自由貿易体制を堅
を達成していくためには一層の努力を必要としてい
持する一方、本年1月の小泉首相の東南アジア諸国歴
ます。
訪における日・ASEAN包括的経済連携構想の提唱
(同時に、シンガポールとの経済連携協定の調印)に
一段と透明性の高い業務運営と成果重視の業務改善
みられるような、アジア地域の域内連携重視の姿勢を
が重要と考え、本年度より
「業務運営評価制度」を導入
内外に示しました。
いたしました。そして、海外経済協力業務に関しては、
第三の特色は、
市場経済のグローバル化が進む中で、
今後3年間の方針を定めた「海外経済協力業務実施方
市民社会・NGOの役割が急速に広まっていることが
針」を2002年4月に制定、公表し、また、2001年度
あります。ここでは、グローバルな情報化の進展をフ
より、各事業の事前評価表の作成・公表を開始するな
ルに活かした活動が展開されており、既成のシステム
ど、透明性の向上に尽力してきております。また、本
との調和ある力の発揮は、特に開発途上国経済・社会
年4月には、学識経験者、企業関係者、NGO関係者ほ
の発展を質的に高度化するものと期待されます。
かのご協力を得て、当行業務の実施にあたり環境・社
会面で配慮すべき事項を定めた「新環境ガイドライン」
このような環境の変化の中で、国際協力銀行は、
「国際金融等業務」を通してわが国企業の戦略的な海
を策定し、公表いたしました。さらに、国際協力銀行
では、従来より財務関連情報のディスクロージャーに
外事業展開を資金・情報の両面で支援するとともに、
努めてまいりましたが、2001年10月から東京市場
わが国ODA(政府開発援助)の一翼を担う「海外経済
で開始された財投機関債(国際協力銀行債券)発行に
協力業務」
(円借款の供与)により、アジア地域をはじ
あわせ、昨年度の年次報告書より、民間会計基準に準
めとする開発途上国の経済社会開発や貧困削減のた
拠した財務諸表を作成、公表しております。
めの努力を支援し、世界経済の調和の取れた発展を目
指して努力しております。3年前、日本輸出入銀行と
今後とも、国際協力銀行の役職員一同、国民の皆様
海外経済協力基金の統合により新たに発足した国際
のご期待にこたえ、適切な業務運営に努めてまいりた
協力銀行は、ようやくかつてのEXIM、OECFに代わ
いと考えております。国際協力銀行の活動に一層の
って、
“ JBIC”の名前が諸外国や国際機関に浸透して
ご理解を賜りますよう、
よろしくお願い申し上げます。
きました。
国際協力銀行では、わが国の厳しい経済・財政状況
国際協力銀行総裁
のもとで、国民の皆様のご理解とご支持をいただいて
効果的・効率的にその使命を達成していくために、
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