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日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか

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日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
宗教団体に関する世論調査から
─
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
─
石井 研士
都市部での高い人口移動に伴う地域の紐帯の脆弱化は、
伝統宗教を揺さぶっている。
少 子 化、 高 齢 化、 晩 婚 化、 単 身 世 帯 の 増 加 と い っ た
家 族 構 造 の 急 激 な 変 化 も、 近 年 宗 教 界 に お い て 実 感 さ
はじめに
近 年、 宗 教 団 体 を 取 り 巻 く 社 会 状 況 は、 よ り 深 刻 さ
を増し先鋭化している。
れ る ま で に な っ て い る。 今 年 1 月 に N H K で 放 送 さ れ
た﹁無縁社会~"無縁死"3万2千人の衝撃~﹂︵1月 日︶
昭和 年代に初めて社会問題化した過疎化は、近年、
た ん に 情 報 や 理 念 と し て 理 解 さ れ る だ け で は な く、 伝
視 さ れ て い る 限 界 集 落 増 加 の ス ピ ー ド は、 伝 統 宗 教 に
ま で に な っ て い る。 今 後 消 滅 す る で あ ろ う こ と が 確 実
統宗教の基盤を揺るがす重大な問題として実感される
活において維持してきた儀礼文化に大きな変容が生じ
は 指 摘 さ れ て き た こ と で あ る が、 個 人 や 家 族 が 日 常 生
え た。 死 の 儀 礼 の 変 化 は、 す で に 多 く の 研 究 者 の 間で
で は、 引 き 取 り 手 の な い 孤 独 死 が 紹 介 さ れ、 衝 撃 を 与
あ
致 命 的 と も い え る 打 撃 を 与 え よ う と し て い る。 過 疎 化
て い る。 神 社、 寺 院 と 家 庭 を 結 び つ け る 装 置 と し て 機
31
や 限 界 集 落 に ま で 至 ら な く て も、 地 域 共 同 体 の 崩 壊 や
40
254
「東洋学術研究」第 49 巻第2号
ある。
の 急 激 な 関 心 は、 こ う し た 中 で 生 じ て い る 現 象 な の で
悪 化 し て い る。 一 方 で、 世 界 遺 産 や パ ワ ー ス ポ ッ ト へ
能 し て き た 神 棚、 仏 壇 の 保 有 率 は 減 少 し、 参 拝 状 況 も
公 益 法 人 制 度 を 抜 本 的 に 改 革 す る た め に、 公 益 法 人
制 度 改 革 関 連 3 法 案 が 2 0 0 6 年 5 月 に 成 立 し た。 2
したのは宗教界であり、一部の研究者であった。
る と い っ て も、 一 般 社 会 に お い て で は な い。 関 心 を 示
性 に 関 す る 議 論 が 盛 ん に な っ て い る。 盛 ん に な っ て い
月 か ら 施 行 さ れ て い る。 今 回 の 法
ポ ッ ト で 参 っ た か ら と い っ て、 宗 教 団 体 と 関 わ っ て い
直 接、 宗 教 法 人 の 制 度 的 変 化 を 求 め る も の で は な い。
改正は、財団法人、社団法人、中間法人に関わるもので、
年後の2008年
るとは考えない。日本人が宗教団体と考えているのは、
し か し な が ら、 こ の 頃 か ら 宗 教 に 関 す る 新 聞 や 情 報 誌
一 般 的 に い っ て、 日 本 人 は 初 詣 や お 盆・ お 彼 岸 に 社
寺 へ 参 詣 す る か ら と い っ て、 あ る い は 観 光 や パ ワ ー ス
新 宗 教 や キ リ ス ト 教 で あ る。 儀 礼 的 な 広 が り は 別 と し
団体が相次いでシンポジュウムや研究会を開催するよ
の1パーセントほどに過ぎない。また、これまでの研究
成 果 に よ れ ば、 新 宗 教 は、 社 会 構 造 や 価 値 観 が 大 き く
うになった。
宗教団体の公益性に関する基礎的作業
短くしてしまうと誤解を招くが、﹁個々の宗教団体の
組織的活力や信徒の﹃社会に役立ちたい﹄という気持ち
変 わ っ た と き に、 人 々 の 苦 悩 の 受 け 皿 と な っ て き た。
て か、 宗 教 教 団 に よ る 布 教 は 控 え め と な り、 我 々 一 般
を社会に生かせないかという問題の設定﹂をすることを
シ ャ ル・ キ ャ ピ タ ル を 醸 成 す る 媒 体 と し て 社 会 に 貢 献
い
の日本人も現在は総体的に関心を失った状態にある。
社会貢献と関連づけ、あるいは﹁宗教集団自体が、ソー
し か し な が ら、 1 9 9 5 年 の オ ウ ム 真 理 教 事 件 も あ っ
で﹁宗教法人の公益性﹂に関する記事が掲載され、関係
て、教会に帰属するキリスト教徒は、
﹃宗教年鑑 平成
年版﹄記載の信者数でも、世論調査の結果でも、人口
12
、日本人と宗教団体との関わりや知識が全
ところで
般 的 に 薄 れ つ つ あ る と き に、 宗 教 団 体 の 公 益 性、 公 共
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
255
20
本 論 が 問 題 に す る の は、 こ う し た、 あ る 意 味、 政 治
的政策的な動向や主張の基礎となる現状の把握である。
する研究も生まれている。
を 得 る た め に、 1 9 9 9 年 か ら 5 年 ご と に 宗 教 団 体 に
こ と に し た い。 宗 教 団 体 の 現 状 に 関 す る 基 礎 的 な 資 料
な テ ー マ で あ る。 ま た、 紙 面 の 都 合 上 も テ ー マ を 絞 る
い る か は、 上 記 で 述 べ た よ う な 文 脈 の み な ら ず、 重 要
日 本 人 が ど の 程 度、 宗 教 団 体 の こ と を 知 り、 信 頼 し て
宗教団体に関する問題が社会的に少なくないにもかか
関 す る 世 論 調 査 を 行 っ て き た。 2 0 0 9 年 の 調 査 で 3
う
しているという考え方﹂を宗教団体や社会に対して提案
え
わらず、﹁宗教団体﹂そのものの把握は進んでいないの
回目となり
年間の変化を把握できるようになった。
お
が 現 状 で あ る。 た と え ば、 宗 教 団 体 に 関 す る 基 本 的 な
資料を提供しているとして頻繁に引用される文化庁編
﹃宗教年鑑 平成 年版﹄のデータによれば、日本の宗
万 3 千、 宗 教 法 人 は 万 2 千、 信 者 数 は 2
り、 調 査 協 力 を 得 て い る 宗 教 法 人 も 包 括 宗 教 法 人 に 限
億 6 6 0 万 人 と な る。 宗 教 法 人 数 以 外 は 自 己 申 告 で あ
(1)信仰の有無
最初に、﹁信仰の有無﹂など、日本人の宗教性に関す
る必要な最小限のデータを順に示しておく。
日本人の宗教性の変化と現状
定 さ れ る た め、 宗 教 団 体 数、 信 者 数 は あ き ら か に 実 態
﹁ あ な た は 何 か 信 仰 を 持 っ て い ま す か ﹂﹁ あ な た は 何
か宗教を信じていますか﹂という質問は、信仰心がどの
教団体は
と は 異 な っ て い る。 し か し、 宗 教 団 体 数、 信 者 も し く
よ う に 変 化 し た か を 知 る た め の、 最 も 基 本 的 な 質 問 で
日 本 人 の 場 合 は、 特 定 の 教 団 や 教 会 に 帰 属 し、 そ こ
回答することには十分な意味がある。
本人が﹁信仰﹂﹁宗教﹂という日常的に使用される言葉で
は会員は、社団法人でいうような﹁団体﹂や﹁会員﹂とは
ることもできないのである。
教 団 体 に 関 す る デ ー タ の 中 で、 本 論 文 が 取 り 上 げ
宗
るのは﹁宗教団体への信頼﹂についてである。現状で、
18
10
あ る。 回 答 者 は ご く ふ つ う の 日 本 人 で あ り、 一 般 の 日
20
基準が異なっており、一概に﹁不正確な数字﹂といい切
22
256
「東洋学術研究」第 49 巻第2号
時事通信社 読売新聞 朝日新聞
NHK 放送文化研究所 永末輿論研究所
統計数理研究所 科研等 石井調査
100
%
1946 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 年
0
56.0
60.0
59.7
56.4
(時事)
60
(統計)
で示される教義や儀礼を遵守する人はごく一部である。
教団に帰属していなくても信仰や信心が﹁ある﹂と回答
す る 日 本 人 が 2 割 ほ ど い る こ と に な る。 戦 後 実 施 さ れ
た世論調査による﹁信仰の有無﹂に関する結果を示すと
図1のようになる。
・ 2 %、 最 も 低 い
昭和 年代に実施された複数の世論調査の結果を見
ると、﹁信仰有り﹂の割合はかなり高い。時事通信社に
よ る 調 査 で は、 最 も 高 い 回 答 率 は
・7パー
パ ー セ ン ト を 下 回 っ て い る。 戦 後
年間
の間に、日本人の﹁信仰有り﹂は パーセントから
パ
60
30
た﹁信仰有り﹂は、現在では明らかに少数派であるとい
ー セ ン ト を 切 る ま で に な っ た。 あ る い は 多 数 派 で あ っ
60
異 な る が、
こうした高い﹁信仰有り﹂の割合は、その後、しだい
に 低 下 し て い っ た。 現 在 は、 調 査 に よ っ て 数 値 は 若 干
セントとなっている。
・5パーセ
・ 4 パ ー セ ン ト と な っ て い る。 1 9 4 6
年の永末世論調査研究所の世論調査では
回答率でも
71
ン ト、 1 9 5 2 年 の 読 売 新 聞 の 調 査 で は、
76
64
56
30
30
37.0 38.9 36.0
(NHK)
35.2
36(朝日)
31.5 30.9 32.5
32
31
33 32
30
32.5 34
27.8
(石井)
29 29.1
33.6 29.1 28.0
27.0 27.7
26.1
26.1
25
22.9
20.3 20.5 21.5
20
35.8
31
35
40
20
う言い方もできる。
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
257
(読売)
76.5(永末)
71.2 70.1
64.7
80
図1 「信仰有り」と回答する人の割合の推移 ※NHK は「『神』を信じている人の割合」
(2)宗教団体への帰属と帰属している宗教団体
5パーセントから
セント以下であった。﹁宗教の団体や会﹂の帰属につい
パ ー セ ン ト の 間 に 収 ま っ て い る。
ては、﹁業界・同業者の会﹂﹁ボランティア﹂とともに、
日本人に限らず、とくに国際比較を考慮したときに、
宗教性を理解する場合の目安のひとつに教団への帰属
問項目となる。
そうした意識と活動を行っているかどうかは重要な質
がある。メンバーシップを持った会員であるかどうか、
調 査 年 と 合 わ せ て 結 果 を 示 す と 表 1 の よ う に な る。 面
﹁宗教意識調査2003﹂﹁宗教意識調査2008﹂で
は、信仰の有無とは別に、﹁あなたは何か特定の宗教団
調査期間内の変化はほとんど見られない。
政治関係
業界・同業者
ボランティア
市民運動
スポーツ関係
15.8
体に入っていますか﹂という設問を設けた。JGSSの
﹁そ
これまで世論調査では、信仰の有無を尋ねた後に、
の宗教はどういうものですか﹂と質問する形で宗教の系
宗教
統を聞くのが一般的であった。JGSSでは﹁あなたは、
次にあげる会や組織に入っていますか﹂という形式で、
政 治 関 係 の 団 体 や 会、 業 界 団 体・ 同 業 者 団 体 な ど と 並
んで﹁宗教の団体や会﹂への帰属が質問されている。図
2001
2 は、 J G S S の 調 査 結 果 を 他 の 制 度 を 含 め て 表 示 し
2000
。
たものである︵JGSSに関しては注5参照︶
3.0
2.6
0.0
変化が理解しやすいようにスケールを作成してある
が、﹁スポーツ関係﹂を除いては、どの団体や会にも大
2006
2005
2003
2.0
(市民運動)
3.0
2.8
3.4
3.2 (政治)
4.2
4.1
8.2
4.0
5.0
19.3
20.0
5.1
5.8
5.4 (ボランティア)
6.8
8.2
8.5
7.8
7.1
8.1
7.8
(スポーツ)
17.6
18.1
10.2
(業界)
9.0
8.7
8.1
(宗教)
8.2
8.3
2002
10
15.3
14.5
15.0
8.9
8.4
9.7
10.0
き な 変 化 は な い よ う で あ る。 帰 属 し て い る 割 合 の 高 い
﹁団体や会﹂は﹁スポーツ関係﹂で、他は1割以下であっ
た。低い帰属は﹁市民運動﹂﹁政治関係﹂で、およそ5パー
図2 団体や会への帰属(JGSS)
258
「東洋学術研究」第 49 巻第2号
接 方 式 の 世 論 調 査 に よ る と、 宗 教 団 体
の帰属はすべて1割以下であった。
か
﹁宗教意識調査2003﹂では、﹁宗教
団体に入っている﹂と回答した人に、具
体 的 な 所 属 宗 教 団 体 名 を 尋 ね て い る。
他 方 で J G S S で は、 組 織 へ の 帰 属 の
質問とは別に﹁あなたは、信仰している
宗教がありますか﹂と尋ねた上で、具体
1.6
3. キリスト教系
1.1
4. 創価学会
3.7
5. 立正佼成会
0.3
6. 天理教
0.4
7. 真如苑
0.4
8. その他の宗教団体
0.9
9. わからない
1.6
ている教団の割合は一致していない。
属 に 関 す る 質 問 の 回 答 割 合 と、 帰 属 し
も十分に考えられる。
く ま で 回 答 者 の 自 己 申 告 で あ り、 帰 属
した8 8
・ パーセントの内訳である。あ
述べたようにJGSSは、﹁宗教の団体や会﹂への帰属
化庁編︶の信者数の割合とほぼ同じとなっている。先に
1%︶となる。
﹁キリスト教﹂の割合は、﹃宗教年鑑﹄︵文
、﹁キリスト教﹂︵1・
ついで﹁伝統的な仏教﹂︵1・6%︶
する団体をどのように認識しているか
を回答した者に対して具体的な教団名を尋ねているわ
き
に よ っ て 回 答 は 異 な っ て く る。 た と え
け で は な い。 そ の 結 果、 表 3 を 見 て も 分 か る よ う に、
表2は﹁宗教意識調査2003﹂の結
果で、﹁宗教団体に入っている﹂と回答
見 る と、 最 も 帰 属 の 多 か っ た 団 体 は 創 価
調査結果を
学会で、全体に占める割合は3・7パーセントだった。
教派神道なのか、神道系の新宗教なのかはわからない。
0.4
2. 伝統的な仏教団体
的 な 宗 教 団 体 を 尋 ね て い る。 そ れ ゆ え
1. 神道
﹁伝統仏教﹂の中に仏教系の新宗教が含まれていること
意識調査・2003 年)
(%)
に、 J G S S の 場 合 に は、 教 団 へ の 帰
表2 帰属する宗教団体(宗教
ば﹁神道﹂が神社神道なのか、それとも
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
259
2008
─
6.8
2007
─
─
2006
8.2
─
表1 宗教団体への帰属
2001 2002 2003 2004 2005
7.1
8.1
8.4
─
8.1
─
─
8.8
─
─
2000
JGSS
6.8
宗教意識調査 ─
6.0
7.1
7.6
8.0
1.9
1.9
0.0
0.2
0.1
0.3
0.0
0.1
0.2
0.6
0.1
0.1
2.1
1.0
0.1
0.1
0.0
0.3
0.0
0.0
0.1
0.9
0.4
0.2
2.4
1.3
─
0.0
0.1
0.6
─
0.1
0.3
0.8
0.3
0.0
2.2
1.4
─
0.0
0.0
0.3
─
─
0.3
0.5
0.2
0.2
0.0
0.0
─
─
0.1
0.2
0.2
0.2
0.0
0.0
0.0
0.0
0.1
0.1
0.0
0.0
2.4
0.3
0.0
0.1
0.0
0.2
0.5
0.1
0.0
0.1
0.0
0.1
0.0
─
0.1
0.3
─
2.4
0.2
0.0
0.0
0.1
0.2
0.8
0.2
0.0
0.1
0.0
0.1
0.2
0.0
0.0
0.2
─
2.2
0.1
0.0
0.0
─
─
0.5
0.0
0.0
─
─
0.1
0.3
─
─
0.2
0.5
2.5
0.3
0.1
0.0
0.1
0.0
0.3
0.3
0.0
─
─
0.1
0.0
0.1
─
0.3
0.7
※数値は JGSS の結果を回答者全体に占める割合に直したもの。
「0.0」は、実際に回答者はいるが全体に占める割合が 0.05 以下の場合、
「─」は、該当者がいない場合
部 新 宗 教 の 信 者 が 含 ま れ て い る と 考 え ら れ る。 宗 派 名
2006
9.5
2.4
0.5
1.3
全体に占める帰属の割合の合計は3割を超えている。
2005
11.0
1.8
0.3
2.0
ではなく特定の教団に帰属していると答えた者で最も
2003
8.2
1.8
0.4
1.5
多かったのは、ここでも﹁創価学会﹂
で、2006年は2・
2002
7.1
2.2
0.2
1.4
伝 統 仏 教 の 各 宗 派 を 回 答 し た 者 の 大 半 は、 い わ ゆ る
﹁家﹂の宗教を回答した者であろうと考えられるが、一
表3 帰属する宗教団体(JGSS)
(%)
2000 2001
仏教
8.8
8.7
禅宗(曹洞宗・臨済宗)
3.2
3.1
天台宗
0.3
0.5
浄土宗
2.0
1.6
浄土真宗(本願寺 ・
7.8
6.6
門徒宗・南無阿弥陀仏)
真言宗
2.2
2.6
日蓮宗
1.9
1.6
時宗
0.1
0.0
法華経・法華宗
─
0.0
本門佛立宗
─
─
神道
0.9
0.6
稲荷大明神
─
0.1
大山ねずの命神示教会
0.1
0.0
仏教+神道(仏様・神様) 0.2
0.1
キリスト教
0.4
0.6
カトリック
0.2
0.0
プロテスタント
0.1
0.2
ギリシア正教
0.0
0.0
(日本ハリストス正教会)
エホバの証人
0.0
0.1
世界救世教
─
0.1
統一教会
─
─
(世界基督教統一神霊協会)
創価学会
2.0
1.7
立正佼成会
0.2
0.1
霊友会
0.1
0.0
仏所護念会
0.0
0.0
幸福の科学
0.0
0.0
崇教真光・真光
0.1
0.1
天理教
0.4
0.5
真如苑
0.1
0.2
PL 教団
0.0
0.1
霊波之光
0.0
0.2
白光
0.0
0.0
生長の家
0.2
0.0
金光教
0.1
0.1
黒住教
─
─
御獄教
0.0
0.0
先祖供養
0.1
0.1
日蓮正宗
─
─
260
「東洋学術研究」第 49 巻第2号
図3 宗教団体の信頼度・国際比較(ISSP・1998 年)
非常に信頼
かなり信頼
まあ信頼
30
42.1
フィリピン
34
40
アメリカ 9.6
18.2
24.2
37.9
ポルトガル
28.9
40.3
ポーランド 10.3
29.2
23
26.2
チリ
27.3
41.2
北アイルランド 6.7
29.3
32.4
キプロス 13.4
24.9
35.1
ラトビア 11.9
24.4
39.5
イタリア 7.9
20.2
47.9
スイス 3.5
23.5
37.3
デンマーク 8.3
28.4
37.2
オーストラリア 3.2
19.4
44.4
ニュージーランド 4.3
26.5
25.7
スロバキア 14.9
6.1
17.2
43.7
アイルランド
21.4
40.5
カナダ 4.4
27.5
35.5
ノルウェー 3.2
14.2
24.1
27.6
ロシア
24.8
29
ハンガリー 11.8
22.8
29.1
スペイン 10.8
21.6
37.8
オランダ 2.4
18
34.3
ドイツ
(西)7.8
43.6
イギリス 1.8 14.2
19.8
31.1
オーストリア 6.3
19.1
34.9
スウェーデン 1.7
18.9
30.8
スロヴェニア 5.2
15.2
28.6
ブルガリア 8.5
16
23.8
イスラエル 12.3
2.3
11.9
35.6
フランス
31.6
チェコ 4.4 9.6
23.1
ドイツ
(東)4.2 11.4
22.3
日本 3.6
1.3
0
261
20
40
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
60
21.5
80
100
5パーセントだった。
宗教団体への信頼度
戦 後 行 わ れ た 宗 教 に 関 す る 世 論 調 査 を み る と、 い く
つか興味深い点に気づく。たとえば、﹁宗教﹂と﹁宗教団
ヵ 国 で あ る。 日 本 人 の 宗 教 団 体 に 対
調 査 を 行 っ た 国 は も っ ぱ ら キ リ ス ト 教 国 で、 途 上 国 か
ら先進諸国まで
す る 評 価 が き わ め て 低 い と い う 事 実 は、 調 査 結 果 を 見
ヵ国中最下位で、
ると一目瞭然となる。日本は信頼度︵﹁非常に信頼﹂﹁かな
り信頼﹂﹁まあ信頼﹂の合計︶
に関しては
・2パーセントにとどまった。
に一任されている。
教団体﹂がどのような団体を指すかについては、回答者
に関しても、一般的には﹁宗教団体﹂というだけで、﹁宗
団 名 や 事 件 に 関 す る も の で あ る。 宗 教 団 体 へ の 信 頼 度
ウム真理教﹂や﹁改正宗教法人法﹂といった、具体的な教
い。明確に﹁宗教団体﹂に関する質問をする際には、﹁オ
日 本 人 が 日 常 生 活 に お い て 接 触 す る 機 会 の 多 い 組 織・
﹁宗教団体﹂の信頼度の低さは他の調査でも確認する
こ と が で き る。 J G S S は 2 0 0 0 年 か ら 2 0 0 6 年
は﹁国会﹂を上回ったが
次は﹁学校などの教育制度﹂で
者の7割以上が﹁信頼している﹂と回答している。その
︵図4︶
、
国内の他の制度と比較した調査結果をみると
最も高い信頼を得たのは﹁裁判所や法律制度﹂で、回答
体﹂とが区別されておらず、質問内容から質問された個
宗 教 団 体 へ の 信 頼 度 に 関 す る 質 問 は、 近 年 に な っ て
初 め て 行 わ れ る よ う に な っ た。 1 9 9 8 年 に 実 施 さ れ
制度
パーセント、
﹁宗教団体﹂
た I S S P 調 査 に お い て、 宗 教 団 体 へ の 信 頼 度 に 関 す
。
い組織である(表 4)
く
る 国 際 比 較 と、 国 内 の 他 の 制 度 と の 比 較 の 2 種 類 の 質
35
問が行われている。
図 3 は 宗 教 団 体 の 信 頼 度 に 関 す る 国 際 比 較 で あ る。
・5パーセントにとどまった。
55
ま で、 組 織・ 制 度 の 信 頼 度 調 査 を 実 施 し て い る。 我 々
36
の中で、﹁宗教団体﹂は一貫して最も信頼度の低
15
人が曖昧なまま回答を余儀なくされる場合が少なくな
35
い。﹁中央
﹁病院﹂﹁新聞﹂の信頼度が最も高く9割近
官庁﹂﹁労働組合﹂﹁国会議員﹂﹁市区町村議会議員﹂が
27
262
「東洋学術研究」第 49 巻第2号
図4 他の制度との信頼度の比較(ISSP・2008年)
4割前後と低くなっているが、﹁宗教団体﹂はこうした
パーセント台となっている。
団 体 や 制 度 よ り さ ら に 低 く、 調 査 し た 項 目 の 中 で は 唯
一、
100%
2 0 0 0 年 か ら 2 0 0 6 年 ま で の 変 化 を 見 る と、 信
頼 度 が 近 似 す る 項 目 が 交 代 す る こ と は あ っ て も、 大 規
10
10
13.9
23.5
80%
以上見てきたように、﹁宗教団体﹂と尋ねたときの信
頼 度 は、 国 際 比 較 も 国 内 の 他 の 制 度 と の 比 較 に お い て
頼度の高いものから順に示したのが図5である。
18.3
模 な 変 化 は み ら れ な い。 2 0 0 6 年 の 調 査 結 果 を、 信
かなり信頼
あまり信頼していない
わからない
も、著しく低いことがわかる。たとえば世論調査で﹁宗
60%
左から 非常に信頼
まあ信頼
まったく信頼できない
を大幅に上回っているのである。
宗教系統別の信頼度
宗教団体調査では、以上のような﹁宗教団体﹂全般の
信頼度ではなく、系統別の信頼度について尋ねている。
0.8
20%
大切か﹂という質問の回答結果は、﹁宗教団体﹂の信頼度
回答が高くなっている。また﹁宗教の重要性﹂や﹁宗教は
40%
教﹂のイメージを尋ねると、
﹁こころ﹂﹁精神的﹂という
図12 宗教団体の信頼度(ISSP)(%)
0%
より具体的に﹁宗教団体﹂のイメージが湧くように、﹁神
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
263
1.2
10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
0%
35
28.1
4
2008
3.2
0.6
42
20
3.2
1998
国会
わからない
8.9
18.5
48.3
4
0.8
20.6
13.9
18.3
35
宗教団体
28.1
14.3
5
33
4.1
0.4
43.3
企業
4.8 10
28.2
48.4
7.8
0.8
学校・教育制度
まったく信頼できない
13
3.6
19.9
47.1
14.3
2.2
裁判所・法律制度
まあ信頼
あまり信頼していない
かなり信頼
左から 非常に信頼
表4 制度・組織の信頼度(JGSS) (%)
2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2005 年 2006 年
宗教団体
12.8
13.1
13.4
16.3
15.3
14.5
大企業
51.7
51.3
50.1
53.7
52.3
58.2
学校
76.5
77.2
77.8
79.0
71.3
74.0
中央官庁
43.1
40.5
44.2
43.7
39.2
41.1
労働組合
40.9
38.0
36.5
35.3
32.2
36.7
新聞
89.4
88.4
89.0
89.8
86.2
88.3
病院
86.1
88.3
86.8
87.1
88.7
88.5
テレビ
76.9
79.3
79.0
79.0
75.6
76.2
裁判所
69.0
69.2
72.0
68.5
68.4
73.7
学者・研究者
64.5
64.2
65.2
63.3
59.4
66.4
国会議員
28.8
31.8
28.1
28.7
31.2
34.8
市区町村議会議員
40.5
40.6
36.4
39.8
37.0
38.7
自衛隊
61.6
58.8
53.3
55.8
58.5
64.5
警察
67.3
70.6
67.8
70.3
70.6
73.1
金融機関
56.8
53.6
50.5
53.9
56.1
59.8
※「とても信頼してる」と「少しは信頼している」の合計
※2004 年、2007 年以降は調査が行われていない
学校
裁判所
警察
学者・研究者
自衛隊
金融機関
大企業
中央官庁
市区町村議会議員
労働組合
国会議員
14.5
宗教団体
0.0
20.0
41.1
38.7
36.7
34.8
40.0
76.2
74.0
73.7
73.1
66.4
64.5
59.8
58.2
60.0
80.0
100.0
道︵神社︶
﹂や﹁仏教︵寺院︶
﹂といった表記を採用している。
テレビ
88.5
88.3
調 査 結 果 を 見 る と 宗 教 の 系 統 に よ っ て、 信 頼 の 程 度 が
新聞
。
かなり異なっていることがわかる︵図6︶
病院
︵神社︶
﹂﹁仏教︵寺院︶
﹂の信頼度︵﹁ひ じ ょ う に 信 頼
﹁神道
図5 制度・組織の信頼度(JGSS・2006年)(%)
264
「東洋学術研究」第 49 巻第2号
で き る ﹂と﹁ ま あ ま あ 信 頼 で き る﹂の 合 計 ︶
は、この
54
10
年でし
・3パーセント、﹁仏
・1パーセント
・2パーセントとなっている。
﹁キリスト
﹂で
だいに増加し、﹁神道︵神社︶
﹂で
教︵寺院︶
﹂は5割を切るが、それでも
教︵教会︶
である。本論で見てきた﹁宗教団体﹂の低い信頼度に見
合うような数値は、
﹁新しい宗教団体﹂が該当するか、
﹁新
しい宗教団体﹂の評価が他の肯定回答を押し下げている
40
68
図6 宗教団体の信頼度:神道(神社)
わからない
ことになる。
宗 教 団 体 の 系 統 に よ っ て 信 頼 度 は か な り の 程 度、 異
な っ て い る が、 こ の 年 間 の 変 化 に 着 目 す る と、 い く
つ か の 傾 向 を 指 摘 す る こ と が で き る。 ま ず、 総 じ て 宗
ポイン
ポイン
教団体への信頼度は好転したということが指摘できる。
﹂の信頼度は大きく変化し、
とくに﹁神道︵神社︶
﹂が
ト増加している。また、﹁キリスト教︵教会︶
10 12
1999年
34.9
7.3
2004年
8.7
2009年
11.1
18.5
40.6
0%
20%
30.8
19.4
43.3
10.7
16.7
40%
60%
80%
9.9
100%
仏教(寺院)
まあまあ信頼できる
左から 非常に信頼できる
わからない
あまり信頼できない
まったく信頼できない
1999年
14.9
46
13.7 7.5
2004年
14.2
52.3
13.2 6.6
2009年
16.4
51.8
20%
11 7.5
40%
60%
80%
100%
キリスト教
左から 非常に信頼できる
まあまあ信頼できる
わからない
あまり信頼できない
まったく信頼できない
25.2
1999年 4.5
2004年 3.6
2009年 4.6
0%
19.5
17.1
35.1
24
13.1
35.5
22.9
12.6
20%
40%
60%
80%
100%
新しい宗教団体
左から 非常に信頼できる
まあまあ信頼できる
あまり信頼できない
1999年
2004年
2009年
14
2.2
0.5
1
52.3
21.8
2.9
52.5
23.5
3.8
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
わからない
まったく信頼できない
0.6
0%
265
あまり信頼できない
まったく信頼できない
0%
10
まあまあ信頼できる
左から 非常に信頼できる
20%
40%
46.4
60%
80%
100%
ト、﹁仏教︵寺院︶
﹂が7ポイント、﹁新しい宗教団体﹂が2
ポイント増加した。
﹂の増加は顕著である。
﹁神道︵神社︶
誤差を考慮しても、
他 方 で、 神 社 神 道 の 基 盤 を な す 氏 神 信 仰 の 脆 弱 化 が 明
け
らない人はいないレベルであった。創価学会︵ ・9%︶
パー
、伏見稲荷大社 ︵ ・6%︶
、鶴岡八幡
天満宮 ︵ ・4%︶
セ ン ト を 超 え る 認 知 度 の 高 い グ ル ー プ と し て、 太 宰 府
と天理教︵ ・9%︶の知名度もひじょうに高い。
89
50
、成田山新勝寺︵ ・4%︶
、浅草寺︵ ・9%︶
宮︵ ・1%︶
といった伝統教団の他に、立正佼成会 ︵ ・8%︶
、幸福
76
、 P L 教 団 ︵ ・ 7 %︶
、ものみの塔
の 科 学 ︵ ・ 2 %︶
54
ら か に な っ て お り、 近 年 の 神 社 へ の 信 頼 度 の 増 加 は、
66
界 遺 産 や パ ワ ー ス ポ ッ ト・ ブ ー ム な ど が 背 景 に あ る も
年 間 に 生 じ た 顕 著 な 神 社 へ の 関 心、 た と え ば 世
67
︵ ・1%︶
、統一教会︵ ・3%︶
をあげることができる︵数
この
84
78
60
ら れ て い る キ リ ス ト 教 の 教 会、 信 者 数 が 多 い か マ ス コ
者 が 多 い 社 寺、 歴 史 的 に 著 名 で あ っ た り、 結 婚 式 で 知
宗 教 団 体 調 査 で は、 宗 教 団 体 の 認 知 度 に つ い て も 調
。取り上げた教団は、初詣の参拝
査を行っている︵図7︶
い る と 考 え ら れ る か も し れ な い。 し か し な が ら デ ー タ
高い新しい宗教団体によってそうした評価が作られて
体﹂を意味しているとすれば、今ここで示した認知度の
会 と 天 理 教 の 認 知 度 は き わ め て 高 い の で、 2 教 団 を 除
96
・ 6 パ ー セ ン ト と、 日 本 人 で あ れ ば 知
と 回 答 し た 者 に 関 し て、 新 し い 宗 教 団 体 の 信 頼 度 を ク
く 立 正 佼 成 会、 幸 福 の 科 学、 P L 教 団、 も の み の 塔、
である。
34
統一教会を﹁知っている﹂と回答した者と、﹁知らない﹂
パ ー セ ン ト、
94
調 査 の 結 果、 ひ と き わ 認 知 度 の 高 い 一 群 の 団 体 が 見
ら れ た。 伊 勢 神 宮 と 明 治 神 宮 の 認 知 度 は、 そ れ ぞ れ
ミでしばしば取り上げられる新宗教団体の合計
か ら は そ う し た 傾 向 を 認 め る こ と は で き な い。 創 価 学
先に述べたように、﹁宗教団体﹂に対する信頼度はき
わめて低いが、その場合の﹁宗教団体﹂が﹁新しい宗教団
59
64
字はすべて2009年︶
。
50
教団
宗教団体の信頼度と社会活動
こ
71
のと考えられる。
10
266
「東洋学術研究」第 49 巻第2号
図7 宗教団体の認知度(宗教団体調査)
上から 1999年
2004年
2009年
伊勢神宮
明治神宮
成田山新勝寺
川崎大師
伏見稲荷大社
鶴岡八幡宮
太宰府天満宮
浅草寺
イグナチオ教会
霊南坂教会
浦上天主堂
創価学会
立正佼成会
天理教
金光教
世界真光文明教団
崇教真光
幸福の科学
霊友会
霊波の光
大本
世界救世教
生長の家
真如苑
PL教団
円応教
松緑神道大和山
善隣教
法の華三法行
ワールドメイト
ものみの塔
モルモン教
統一協会
サイエントロジー
0
267
10
20
30
40
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
50
60
70
80
90 100
の 狭 い 経 験 の 範 囲 内 で、 現 代 社 会 に お け る 宗 教 団 体 が
わ け で は な い。 言 い 換 え れ ば、 わ ず か な 資 料 や 研 究 者
本 論 の 冒 頭 で 述 べ た よ う に、 我 が 国 の 宗 教 団 体 に 関
す る 現 状 に つ い て は、 必 ず し も 豊 富 な 資 料 が 存 在 す る
入手の経路とその質的問題にあるように思える。
主 た る 理 由 は、 我 々 の 新 し い 宗 教 団 体 に 関 す る 情 報 の
教 団 体 へ の 低 い 帰 属 率 や 認 知 度 を 考 慮 す る と、 原 因 の
も の よ り も 他 に 求 め ら れ な け れ ば な ら な い。 加 え て 宗
体 に よ る も の で は な い と し た ら、 理 由 は 宗 教 団 体 そ の
宗 教 団 体 の 評 価 が 低 く、 そ の 場 合 の 宗 教 団 体 が 新 し
い 宗 教 団 体 で あ り、 し か も 認 知 度 の 高 い 新 し い 宗 教 団
結果は導き出されなかったのである。
った。つまり、﹁知っている﹂から信頼度が低いという
ない者との間で有意な差異を確認することはできなか
役 割を 背 負 っ て 長 く 実 践 を 積 み 重 ね て き た に も か か わ
と は よ く 知 ら れ て い る。 し か し な が ら、 小 さ く は な い
会 事 業 が 行 わ れ る よ う に な り、 現 在 ま で 続 い て い る こ
降 は、 教 育、 医 療、 平 和 活 動 を は じ め と し た 多 く の 社
に 求 め る 点 は 他 の 著 作 に お い て も 同 様 で あ る。 明 治 以
間 的 ズ レ が 見 ら れ て も、 宗 教 と 福 祉 の 関 係 を 近 代 以 前
為 に つ い て 詳 述 し て い る。 こ う し た 傾 向 は、 多 少 の 時
治初期のミッションを背景としたヘボンなどの医療行
い る。 同 様 に キ リ ス ト 教 で は、 愛 の 概 念 か ら 幕 末・ 明
慈 悲、 縁 起 か ら 論 を 始 め、 行 基 の 福 祉 思 想 に 注 目 し て
多 い。 吉 田 久 一 は 仏 教 の 福 祉 思 想 を 述 べ る に 際 し て、
れ て き た。 そ れ ゆ え に、 宗 教 福 祉 の 源 流 と し て は、 か
弱者への取り組みはこれまで社会福祉の文脈で考えら
公 益 性 の 概 念 と も 関 わ る が、 一 般 的 に 言 っ て、 広 く
宗 教 と 社 会 と の 関 わ り の 中 で、 宗 教 団 体 に よ る 社 会 的
ロ ス 集 計 し て み た が、 結 果 的 に は 知 っ て い る 者 と 知 ら
理 解 さ れ て い る こ と に な る。 冒 頭 で 宗 教 の 公 益 性 に 言
らず、日本人の評価は芳しくないのである。
し
なり歴史的にさかのぼるという見解が示されることが
及したが、問題を﹁宗教団体の公益性﹂に限定すると、
さ
実態と理念や望ましい関係の構築にはかなりの距離感
図8は﹁あなたは、宗教団体が、女性や子どものため
の 学 校 教 育 活 動、 弱 者 の た め の 病 院 運 営 な ど の 社 会 貢
のあることがわかる。
268
「東洋学術研究」第 49 巻第2号
知らない,
60.3
献活動を長い間
行ってきたこと
を知っています
す
図9 知っている社会貢献活動(庭野平和財団 2009)
図 9 は、 知 っ て い る 宗 教 団 体 の 社 会 貢 献 活 動 を 具 体
値である。
7.5
か﹂と尋ねたと
きの回答結果で
ある。社会貢献
活動を具体的に
イメージしやす
いように、質問
の文中に最も一
般的と考えられ
る学校教育活
・8
・8パーセントは、あまりに低い数
経 営 す る 医 療 施 設 が 多 く 存 在 す る こ と を 考 慮 す る と、
に 関 し て も ミ ッ シ ョ ン 系 の 学 校 が 好 ま れ、 宗 教 団 体 の
性 や 子 ど も の 教 育 に 大 き な 役 割 を 果 た し て き た。 進 学
本 の 教 育 に お い て、 宗 教 団 体、 と く に キ リ ス ト 教 は 女
パ ー セ ン ト と、 全 体 の 3 分 の 1 ほ ど に と ど ま っ た。 日
動、病院活動を例に挙げたが、﹁知っている﹂は
わからない, 4.9
﹁知っている﹂の
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
269
0
14.5
10.3
10
33.4
12.2 11.9
10.9
14.8
20
40
50
18.7
23.8
20.7
30
知っている,
34.8
34
40
34
図8 社会貢献活動の認知(庭野平和財団 2009)
︵
・2%︶
で、
宗教団体の行
的 に 複 数 挙 げ て も ら っ た 結 果 で あ る。 最 も 知 っ て い る
宗教団体の社会貢献活動は﹁小学校、中学校、高等学校、
う社会貢献活
大学、専門学校などの教育機関の経営﹂で
・4パーセントと高く、教育との
れる。その他では﹁診療所、病院など医療機関の経営﹂
関 わ り に お け る 認 知 は、 そ れ な り に あ る も の と 考 え ら
5・4パーセ
は、わずかに
︵
ム、特別養護老人ホームなど︶
﹂
︵ ・7%︶
、
﹁災害時のボラン
で、2割ほどにとどまった。
ティア活動﹂︵ ・7%︶
は、 宗 教 団 体 の 行 う 社 会 貢 献 活 動 の 評 価 に
また図
関する結果である。最も多い回答は﹁宗教団体が勝手に
体の行う社会
図10 社会貢献活動の評価(庭野平和財団 2009)
の左側の数値が期待す
知らなかった,
22.5
・4パーセントで
期 待 が あ る も の と 考 え ら れ る。 そ の 他 の 項 目 で、 認 知
あった。宗教団体が行う平和活動には高い評価と認知、
動は﹁平和の増進に関する活動﹂で
結 果 で あ る。 最 も 期 待 す る 宗 教 団 体 が 行 う 社 会 貢 献 活
る 活 動、 右 側 が 図 9 で 示 し た、 知 っ て い る 活 動 の 調 査
い て 見 て お き た い と 思 う。 図
貢献活動につ
・5パーセントだった。
肯定的な評価は、﹁たいへん立派な活動で、もっと活
、﹁ 宗 教 団 体 が こ う し た
発 に 行 っ て ほ し い ﹂︵ ・ 1 %︶
かった﹂が
団体がこのような社会活動を行っていたことを知らな
かまわない﹂で
・4パーセントだった。ついで﹁宗教
や っ て い る こ と で、 や っ て も や ら な く て も ど ち ら で も
最後に、期
待する宗教団
った。
ントにとどま
け止める回答
動を宣伝と受
パーセント
15
・8%︶
、﹁老人の扶助を目的とした事業︵養護老人ホー
児童養護施設など︶も
だった。児童の福祉の増進に関する事業︵保育所、幼稚園、
40
活 動 を 行 う の は、 宗 教 活 動 の 一 環 と し て 当 然 で あ る ﹂
活動は宗教
活動の一環,
15.2
どちらでも
かまわない,
24.4
その他, 1.2
やめた方が
いい, 5.4
33
19
わからない,
12.2 たいへん立派,
19.1
34
18
24
10
22
11
20
23
270
「東洋学術研究」第 49 巻第2号
4.3
だ ろ う。 教 育 に 関 す る 活 動 が 認 知 と 比 較 し て 大 幅 に 減
少 し て い る が、 こ れ は す で に 教 育 機 関 に 関 し て は、 新
たな展開を望む必要が生じていない点が背景にあると
考えられる。そして﹁政治への積極的発言や参加﹂を期
待する回答はわずかに4・3パーセントだった。
︵ New Public Management
︶とい
こうした状況は、NPM
われるような民間の企業経営手法を政府や行政部門の
運 営 に 応 用 す る 方 法 が 検 討 さ れ る 現 在、 宗 教 団 体 が 積
極的に参加することが困難であることを物語っている。
おわりに
本 論 で は、 昨 今 の 宗 教 団 体 を 取 り 巻 く 社 会 状 況 の 変
化 や 宗 教 団 体 に 対 す る 社 会 貢 献 の 提 言 を 念 頭 に 置 き、
視 点 を 宗 教 団 体 の 信 頼 度 に 据 え る こ と で、 宗 教 団 体 の
現 状 に 関 す る 理 解 を 進 め る こ と を 目 的 と し た。 宗 教団
よ り も 期 待 が 高 く な っ て い る 項 目 は、 医 療 福 祉 や 環 境
析 や 意 見 が 飛 び 交 っ て い る よ う に 思 え て な ら な い。 研
に は、 あ ま り に 実 態 を 無 視 し た、 性 急 で、 理 念 的 な 分
体 が、 い い 意 味 で も 悪 い 意 味 で も 社 会 問 題 化 す る と き
問 題 な ど、 現 在、 社 会 問 題 化 し て い る も の で、 宗 教 団
0
究 者 の 関 心 も、 そ の 時 代 を 象 徴 す る と 考 え る 宗 教 現 象
10
20.2
14.5
13.8
12.7
10.3 11.9
30
18
20
33.3
34.4
28.1
23.8
40
40
50
認知
期待
体のより積極的な参加が求められていると考えていい
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
271
図11 期待する宗教団体の行う社会貢献活動(庭野平和財団 2009)
に飛びつきがちである。
宗 教 や 宗 教 団 体 を 取 り 巻 く 状 況 が 激 変 す る な か で、
客観的な資料の収集と判断の基礎となる分析が急がれ
月に、住民基本台帳
場 を 取 る も の で は な い。 こ の 点 に 関 し て は、 別 に 稿
を 設 け た い と 思 う。
歳以上の男女2000人︵167地点、層
・3%。﹁2004年調査﹂は
月に、
月に、同様の方法で実施した。有効回答
・1%。以上
率は ・3%。
﹁2009年調査﹂は、2009年
2004年
施した。有効回答率は
化二段無作為抽出法︶を対象に、個別面接聴取法で実
による満
︵5︶﹁1999年調査﹂は1999年
11
宗教意識調査﹂を実施している。この他にもJGSS
を実施している︵JGSSプロジェクトは、アメリカ
く ︶、 宗 教 団 体 へ の 帰 属 に 関 す る 質 問 を 含 む 世 論 調 査
が 2 0 0 0 年 か ら 2 0 0 6 年 ま で︵ 2 0 0 4 年 を 除
くなる可能性があるという。1999年にも同様の調
年以内にな
集落は2109だった。7年間で限界集落化するスピ
利用を希望する研究者にそのデータを公開することを
2009年、9頁。
頁。
︵4︶私 自 身 は 、 宗 教 団 体 の 社 会 貢 献 に つ い て こ う し た 立
︵3︶ 同、
39
回答者は質問に対して回答を留保できるにもかかわら
調 査 は、 葉 書 で 相 手 の 了 解 を 取 り 付 け た 後 に 行 わ れ、
的 な 教 団 名 を 尋 ね る こ と を 断 念 せ ざ る を え な か っ た。
人情報に鑑みて不適切と行政側から指導を受け、具体
予定であったが、住民票の閲覧を得る際に、質問が個
︵6︶﹁宗教意識調査2008﹂においても同様の質問を行う
ある︶。
目的として2000年から実施されたプロジェクトで
ードが増したことになる。山口県立大付属地域共生セ
年前と比べて﹁減った﹂との回答が
界集落に対するアンケート調査では、草刈りや祭りと
ンターが2009年から2年間にわたって実施した限
査が実施されており、その時は、消滅の可能性がある
可能性があり、そのうち422集落が、
の他に、2003年と2008年に﹁日本人の神観と
同様の方法で実施した。有効回答率は
12
るのではないだろうか。
注
67
る と、 全 国 の 過 疎 地 域 に あ る 約 6 万 2 千 集 落 の う ち、
︵1︶国土交通省と総務省が2006年に実施した調査によ
20
10
4%強にあたる2641集落が高齢化などで消滅する
68
69
にならって、日本人の意識や行
の General Social Survey
動を総合的に調べる社会調査を継続的に実施し、二次
10
年後には﹁開催できなくなる﹂との
・3%を占めた。
・6%に達し、
いった集落活動が
予想が
10 10
︵2︶稲場圭信・櫻井義秀編﹃社会貢献する宗教﹄世界思想社、
49
42
272
「東洋学術研究」第 49 巻第2号
があり、きわめて遺憾なことである。
SSPでは宗教に関して1991年、1998年、2
教団体﹂という把握の仕方であるが、信頼度は199
︶。
0%
ついては、筆者は問題の指摘と提言を行ったことがあ
論新社、2008年︶参照。
る。﹃テレビと宗教 オウム以後を問い直す﹄︵中央公
03年。
100%
80%
えられている。
︶は、多
︵8︶ISSP︵ International Social Survey Programme
くの国が参加して毎年同じテーマで行われている。I
回からで、調査母体はNHKである。日本の第3回の
調査結果は西久美子﹁"宗教的なもの"にひかれる日本
人﹂︵﹃放送研究と調査﹄2009年5月︶に報告されて
いる。
告書﹄︵神社本庁教学研究所編、2007年︶を参照。
︶宗教団体の信頼度の増加は、ISSPにおいても確認
することができる。ISSPでは系統別ではなく﹁宗
8年の ・4パーセントから ・9パーセントへと8・
5ポイント増加している︵図
3.2
0.6
︶メディア、とくにテレビにおける宗教報道のあり方に
国会
︶吉田久一﹃社会福祉と日本の宗教思想﹄勁草書房、20
図12 宗教団体の信頼度(ISSP)(%)
1.2
10
0.8
13.9
ず、﹁宗教﹂に関する調査に関して行政が認めないこと
10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
︵7︶﹃宗教年鑑﹄のキリスト教信者の数値は実数に近いと考
わからない
まったく信頼できない
︵9︶この点に関しては﹃第3回﹁神社に関する意識調査﹂報
︵
︵
︵
日本人はどれくらい宗教団体を信頼しているのか
273
4
0.8
60%
13.9
18.3
35
28.1
宗教団体
40%
20%
0%
14.3
5
33
43.3
企業12 4.1
32
0.4
18.3
4.8 10
28.2
48.4
7.8
0.8
学校・教育制度
35
28.1
4
2008
かなり信頼
左から 非常に信頼
24
あまり信頼していない
23.5
13
3.6
19.9
47.1
14.3
2.2
裁判所・法律制度
42
20
3.2
1998
8.9
18.5
48.3
20.6
10
11
12
かなり信頼
あまり信頼していない
わからない
左から 非常に信頼
まあ信頼
まったく信頼できない
まあ信頼
008年の3回行っている。日本が参加したのは第2
図4 他の制度との信頼度の比較(ISSP・2008年)
︵
︶調査は庭野平和財団を母体にして石井が行った。調査
・8%
歳以上の男女4000人で、調査方法
は調査員による個別面接調査、有効回答数は
対象は全国の
︵いしい けんじ/國學院大學教授︶
調査報告書﹄︵庭野平和財団、2009年︶参照。
だった。詳しくは﹃宗教団体の社会貢献活動に関する
30
20
13
274
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