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今月の技術と経営

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今月の技術と経営
平成28年2月1日
第508号
今月の技術と経営
農 政 部 農 業 経 営 課
目
次
1 今月の農政情報 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
新たな岐阜県オリジナル3品種が誕生 ・・・・・・・・・・・・・・
1
1
~柿「ねおスイート」、フランネルフラワー「ファンシーマリエ」、
いちご「華かがり」~
(農業技術センター 越川兼行)
2 気象災害等を踏まえた農作業のポイント
・・・・・・・・・・・・・・
3
(高橋宏基、臼田浩通)
(1)
麦
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
(2) 花 き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
3 専門項目に関する情報
・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・
9
(1) 堆肥施用による野菜の収量・品質向上 ・・・・・・・・・・・・
9
(市原知幸)
(2) 農作物を加害する野生鳥獣の捕獲活動について ・・・・・・・・ 13
(林 啓介)
今
月
の
農
政
情
報
新たな岐阜県オリジナル3品種が誕生
~柿「ねおスイート」、フランネルフラワー「ファンシーマリエ」、いちご「華かがり」~
岐阜県農業技術センターで、柿の新品種「ねおスイート※」
、切花用フランネルフラワーの新品種「ファン
シーマリエ」
、いちごの新品種「華かがり」を開発しました。
※岐阜県が開発した初の柿新品種になります。
1 柿新品種「ねおスイート」
(1) 育成経過
・ 主力品種「冨有」は11月以降が出荷シーズンの
ため、10月に出荷ができ、他県産柿と差別化が図
れる品種の開発を目指し、平成17年度に、高糖度
系品種の「新秋」とサクサクした食感を持つ「太秋」
を交配し、育成を開始しました。
・ 平成26年度に育成を完了し、平成27年2月1
8日に農林水産省へ品種登録出願(出願公表日:平
成27年7月27日)
。
「ねおスイート」果実
(2) 名前の由来及び特徴
・ 平均糖度は20度以上と極めて甘く(スイート)
、
サクサクとした新しい(Neo)タイプの食感、本県
の柿の主産地が根尾川流域に位置することから「ね
おスイート」と命名。
・ 果実の大きさが中程度と量販店で扱いやすく、着
色も良好。
・「富有」の出荷前に収穫できる中生品種で、10月
収穫果実の糖度別発生割合
中旬から市場に出荷可能。
2 フランネルフラワー新品種「ファンシーマリエ」
(1) 育成経過
・ これまでに育成した切花用フランネルフラワー「ファンシースノー」は、
春出荷に限られていたため、平成21年度に「ファンシースノー」と鉢花用
の「エンジェルスター」を交配して、四季咲き性を有し、切花に適した系統
を選抜しました。
・ 平成26年度に育成を完了し、平成27年2月18日に農林水産省へ品種
登録出願(出願公表日:平成27年7月27日)
。
「ファンシーマリエ」の花
(2) 名前の由来及び特徴
・ 年中開花が可能であり、ブライダル需要が多
い秋の販路拡大を期待し、フランス語で「結婚」
を意味する「マリエ」と「ファンシースノー」
を親にもつことを合わせて「ファンシーマリ
エ」と命名。
・ 品質が確保しにくい夏から秋においても、切
- 1 -
切花の比較
上:新品種 「ファンシーマリエ」
下:既存品種「ファンシースノー」
花長を十分確保することが可能。
3 いちご新品種「華かがり」
(1) 育成経過
・ 果実が大きく品質が優れ、安定的に出荷
することができる品種の開発を目指し、平
成18年度に当センター育成の「美濃娘」
と果実が大きな当センター育成の中間母
本を交配し、育成を開始しました。
・ 平成26年度に育成を完了し、平成27
年3月11日に農林水産省へ品種登録出
願(出願公表日:平成27年8月24日)
。
(2) 名前の由来及び特徴
系統番号 19-2-1:「華かがり」
・ 県内イチゴの主力産地である岐阜地域の
シンボル「金華山」の「華」と、赤々と燃
える清流長良川の鵜飼いの「かがり火」を
イチゴの赤く大きな果実に見立て、この両
者を重ねあわせて、
「華かがり」と命名。
・ 果実はツヤのある赤色で大きく、28g
以上(最大規格の3L サイズに相当)の果
実収量は「濃姫」
「美濃娘」の約3~4倍。
・ 形がきれいな秀品が多く、多収でありな
がら優品となる乱形果の発生が少ない。
規格別収量の比較(2014 年)
・ 果実は、果汁が多く甘い。
・ 順調に花が咲き果実を連続的に収穫でき、シーズンを通して出荷量の変動が少ない。
4 今後の予定
まつもと わ せ
「ねおスイート」は、5年後頃からの市場出荷を想定し、収穫期が同時期の「 松 本 早生富有」から
の切り替えを進め、5年後に5ha、10年後には20ha 程度の普及を見込んでいます。
「ファンシーマリエ」は、来年度秋頃からの市場出荷が見込まれ、将来的には年間5万本程度の生産
を目指します。
「華かがり」は、今年春に苗の供給を開始し、5年後には1ha、10年後には15ha 程度の普及を見
込んでいます。市場への本格出荷は、平成30年の冬を予定しています。
当センターでは関係機関と一体となって、普及に向けて技術支援を図ってまいります。
- 2 -
気 象 災 害 等 を 踏 ま え た 農 作 業のポイント
暖冬傾向に歯止めがかからず・・・寒波も襲来!
1 月 21 日の大寒を迎える頃になって忘れかけていた
‘冬将軍’がやっと来た。それも何十年に一度という厳
しい寒さが。当然、ポカポカ陽気に誘われて固い皮を脱
ぎ始めようと動き始めた植物にとっては身震いする思い
であったと思う。なにしろ、1月1日岐阜地方気象台発
表によると、1883 年の統計開始以来、12 月の月平均気温
は、
岐阜市で 9.2℃
(平年値 6.9℃)
と観測史上最高値を、
高山市でも 3.7℃(平年値 1.4℃)と観測史上2番目の値
を記録し、名古屋地方気象台が 12 月 25 日に発表した東
海地方の 3 ヶ月予報でも、いわゆる一因とされる‘スー
パー・エルニーニョ現象’の継続により 3 月まではこの
まま‘暖冬’傾向が続き、気温はかなり高め、降水量も
多めで推移すると予想されていた。
しかし、一転して1月 25 日から 26 日にかけて日本全
域で寒波による大雪や低温となり、沖縄でも観測史上初
の降雪を記録した。岐阜県でも山間部、特に郡上市、高
山市、飛騨市でかなりの積雪となった他、1 月 25 日朝に
は岐阜市で-5.0℃、高山市で-8.3℃、白川町と中津川市
に至ってはそれぞれ-12.8℃、-10.4℃と観測史上最低気
温を記録したのである。もっとも 1927 年1月 24 日に岐
阜市で最低気温-14.3℃を記録したことを考えるとこの
図1 アメダス気象図(岐阜市:1/25 現在)
程度の寒さは想定される範囲内ではあるが、岐阜市の 1961 年から 2015 年までの 11 月~4 月の寒候期を見る
と 55 年間に 1.9℃上昇している。これは、暖候期(5 月~10 月)より気温上昇は顕著で、西日本の寒候期の
平均上昇 1.3℃、また雪解けが気温上昇に影響され上昇程度が大きいとされる東日本の 100 年間の寒候期の
平均上昇 1.5℃をともに大きく上回っており、岐阜市の冬が急激に暖かくなっていることが伺える。
表1 具体的気象データ
岐 阜 市
月
12
1
旬
平均気温℃
降水量 mm
高 山 市
日照時間 h
平均気温℃
降水量 mm
日照時間 h
実績
平年
実績
平年
実績
平年
実績
平年
実績
平年
実績
平年
上
9.8
8.3
22.0
19.5
53.1
52.9
3.4
2.9
30.0
26.6
28.7
29.1
中
10.5
6.7
87.5
18.3
44.0
50.2
5.6
1.3
82.0
28.4
29.9
27.1
下
7.6
5.7
25.5
20.3
62.5
57.5
2.3
0.0
16.0
32.8
27.0
32.9
上
7.6
4.6
0.0
25.2
59.7
50.1
2.0
-1.0
2.5
37.4
35.1
26.7
中
5.3
4.4
25.5
20.6
57.6
52.1
-0.2
-1.4
49.0
28.0
21.9
32.4
5
1.6
4.1
1.0
10.1
26.8
26.2
-4.1
-1.8
6.5
14.2
12.0
26.0
半旬
〔岐阜地方気象台公表値より引用〕
暖冬は続く・・・急激な寒波、気温の乱高下に注意!
名古屋地方気象台が 1 月 25 日に発表した東海地方の 4 月までの 3 ヶ月予報によると、
気温は 4 月まで常に
高い傾向が続き、降水量も多めで推移すると予想されている。これは、監視区域である西太平洋の海水温は
基準値より高く、エルニーニョ現象が続く見込みで、春を迎えても‘暖冬’傾向が続くこと考えられる。し
かし、期間中には 1 月 25 日前後のような厳しい寒さが到来する可能性もあるので、積雪や低温被害について
も十分想定するとともに、暖冬年に多い凍霜害にも早めの備えが大切になってくる。
- 3 -
さて、梅の花の便りがニュースで流れ、庭の河津桜も柔らかな葉を 4cm 程伸ばしたまま、ここ暫くの寒さ
に驚いたのか立ち止まったように全く動かない。膨らみかけたコブシの花が目当てかヒヨドリもその姿を現
すようになったが、まだまだ真冬である。今冬のような春並の暖かさと厳しい寒さが両極端に変化する気象
は作物にとっても、人にとっても好ましくない。2 月 4 日は‘立春’。三寒四温という言葉のとおり、‘平
年並み’の寒さの後に続く暖かい日を愛おしむ月日とともに芽生えの兆しを感じながら徐々に春に近づいて
いくのがよい。今年もそろそろ娘たちのチョコレートづくりが気に懸かる嫌な季節となった。
暖冬下での生育状況と対応
暖冬による影響は、①生育が進みすぎることにより、僅かの寒さで、凍霜害などが発生すること、②気温
が高めに推移することで、全体的に病害虫の発生が早く、かつ増加傾向となること、③少雪が夏作物の給水
源となる雪解け水の不足などの影響を与えることなどであるが、当面の大きな課題は、極端に生育の進んだ
農作物への肥培管理と凍霜害である。
1 麦
(1) 現在の生育状況
1月3半旬までの気温は、平年を大きく上
回った状況で推移しており、平成 22 年・23
年の暖冬下での凍霜害被害など、今後の気象
推移が気懸りな状況である。
ここでは、これまでの播種、初期生育の状
況とともに、麦の凍霜害について述べる。
① 播種状況
中山間地域の大麦並びに小麦イワイノダ
イチを皮切りに 10 月中旬から播種が開始
され、天候に恵まれたことから作業は昨年
図1 播種進度の年次比較
より順調に進んだが、農林61号の播種が
本格化した 11 月中旬頃から降雨が断続的
に続くようになり、結果的に播種作業終了は昨年
より遅くなった。
● 麦類全体の作付面積:3,376ha
● 播種期中央値:11 月 7 日(H27:11 月 10 日)
② 初期生育
11 月上旬までに播種が行われたほ場は、出芽・
初期生育は順調で、12 月~1月中旬にかけて近年
で最も高温で経過したため、草丈・分げつはさら
に旺盛となり、1月下旬現在、幼穂形成はもちろ
ん、平年より1ヶ月程度前進した 8 葉期に達した
図2 品種・時期別の播種状況
株も見られる状況となっている。
※ 7~8 葉期:平年では穂肥の施用時期(2月下旬~3月中旬にあたる)
また、11 月下旬以降に播種が大幅に遅れた圃場も分げつは着実に増えており生育は順調である。
- 4 -
◇「イワイノダイチ」の草丈と茎数(海津・揖斐)
図4 茎数の年次比較
図3 草丈の年次比較
図5 イワイノダイチ(大野:1/27)11/4 播種
図6 「イワイノダイチ」株(大野)
幼穂長 0.5mm
◇「農林61号」の草丈と茎数(海津・可茂)
図7 草丈の年次比較(N61)
図8 茎数の年次比較(N61)
図9 農林 61 号(海津:1/27)11/5 播種
図 10 「農林 61 号」株(海津)
幼穂長 1.0mm
◇「タマイズミ」・「さとのそら」の茎数
図 11 茎数の年次比較
- 5 -
図 12 「さとのそら」株(海津)
幼穂長 0.5mm
図 13 さとのそら(垂井:1/27) 図 14 さとのそら(海津:1/27)
10/21 播種
11/5 播種
図 15 「さとのそら」株(垂井)
幼穂長 1.0mm
◇「さやかぜ」の草丈と茎数
図 16 茎数の年次比較
図 17 さやかぜ(谷汲:1/27)
10/25 播種
図 18 「さやかぜ」株
幼穂長 1.5mm
表2各品種の葉齢の年次比較(1月中旬)
イワイノ
年次
農林61号
ダイチ
さとの
さやか
そら
ぜ
海津
大野
海津
可茂
海津
谷汲
H28
7.6
6.2
5.7
5.2
6.5
4.6
H27
6.2
5.2
3.5
4.0
4.5
4.8
※各現地実証ほデータによる
・ 元来、初期生育が旺盛で茎数の多いイワイノダイチを除き、前年を大幅に超える茎数と
なっており、1ヶ月以上の前進化の様相を呈している。
・ 特に、播種期の早いイワイノダイチの葉齢がかなり進んでおり、幼穂形成とともに茎立
ち期に入るのも早まるものと想定される。
・ しかし、葉齢の前進に比べ、幼穂形成や茎立ちは進んでおらず、平年以上に出葉数が多
くなるとともに分けつ数も暫く増加することが予想される。
・ 茎立ち、さらには出穂期は平年より確実に早まることが考えられるので、穂肥の時期は
例年の 2 月下旬~3 月中旬頃を半月程度は前倒しする必要がある他、施用量も葉色や生育
量を考慮して設定する。
1 月 25 日現在の現地調査では、葉齢の前進化の割に、幼穂形成とそれに伴う
茎立ちは進んでおらず、心配される凍霜害は、確認されていない。
(2) 今後とり得る技術対策
① 凍霜害回避のための踏圧作業
◆ 踏圧のねらい:節間伸長(茎立ち)時期の遅延
※ 麦踏みは根張りを良くし、麦を硬化させることで耐寒・耐乾性を高め、さらに分げつを促進する
効果があり、凍霜害の回避や倒伏防止、有効茎の確保にも有効。
◆ 実施時期と回数
- 6 -
作業開始〔本葉 3 葉期〕~作業晩限〔茎立ち前の 5 葉期〕:1~2 回行うのが理想
※ 今冬の場合、10 月末までに播種した圃場では葉齢は既に 7 葉期以上に達したものが多いが、1
1 播種のほ場を含めて、進んだ葉齢の割に、幼穂形成・茎立ちが進んでいない場合もあるので、
茎立ちの高さ1cm 以下で幼穂長1mm 以下の場合は、踏圧作業は可能と考えられる。
※ 麦踏みローラーはゆっくり走らせる。土壌が乾燥している状態であれば、トラクター車輪に
よる踏みつけの害はほとんどないが、土壌水分が高い場合は、土が締まって、根張り及び排水
性も悪くするので厳禁!
麦の凍霜害について(メカニズム)
● 幼穂の発育程度と凍死との関係
2~5mm 程度に伸長した時期(頴花分化期)が凍死しやすい。しかし、幼穂凍死の発現は寒
波襲来時、幼穂長 2mm~1cm 程度で地上に抽出したものにみられ、幼穂自体の発育程度より
はむしろ幼穂の位置、即ち稈の長さの方が幼穂凍死に影響を与える場合が多い。稈長(幼
穂節位)5cm 程度以上になると幼穂の発育程度に関係なく凍死が見られる。
● 幼穂凍死を起こす気温
通常-3~-4℃が数時間続くと起きる。幼穂凍死限界温度と凍死危険期の幼穂長の関係で
は、小麦で幼穂位置の気温が-2℃、六条大麦で-4℃以下になると凍霜害が発生し、その
障害程度は気温が低いほど、また幼穂の発育が進んでいるほど大きい。
● 不稔型の障害を受ける低温
-2℃で 4 時間、-1~-1.5℃で 3~4 時間とされる。開花期では+2℃程度の低温でも
持続時間によってはかなりの不稔を生じる。不稔型の凍害に最も敏感な生育時期は、受精
中、花粉母細胞の形成もしくは分裂期、花粉第1核分裂期等である。
● 作物間・品種間差異
小麦品種は、大麦品種に比べ幼穂分化程度の割に稈の伸長が大きく、凍霜害に遭う危険性
が高い。
凍霜害に遭う危険性は、節間伸長の早晩に密接に関係し、秋播性程度が低いほど節間伸長
開始が早く、凍霜害に遭遇しやすい傾向にある。これは、生理的、本質的な耐凍性の差と
いうよりも、むしろ茎立ち性の差に基づいている。
※ 凍霜害耐性:農林61号(播性程度Ⅱ)<イワイノダイチ(播性程度Ⅳ)
〔低温に遭遇した時の対応〕
a.農林61号とイワイノダイチ別に、主な地域の生育状況と穂の状況を確認する。
b.基本的には、凍霜害の程度が大きくなければ生き残った穂の充実を図ることとするが、幼穂の大
部分が枯死し、遅発茎を確認した場合には、速効性の硫安等を施用(窒素成分:2.0kg/10a)し、そ
の後の穂の養成を図る。
c.イワイノダイチは農林61号に比べ茎立ちしにくい分、早期播種による生育の前進が目立つので
減数分裂期以降は凍霜害の危険性は農林61号と同様であり、注意深く観察・確認をする。
② 追肥並びに穂肥
麦の特性として、冬期(厳寒期)に小穂分化を開始する牧草を含むイネ科作物は、栄養生長(分け
つ)と生殖生長を同時に進める性質を持っている。したがって、常に、体内窒素成分は一定以上を確
保する必要があるとともに、幼穂形成期になればいわゆる穂肥と称する栄養補給が必要であるが、水
稲のように栄養生長から生殖生長に変わる転換期があるわけでもないので、穂肥を‘この時期に!’
といった明確な、厳密な時期をい求める必要はなく、例年であれば、親茎が7葉期に達した頃(2 月
下旬~3 月中旬頃)に実施すれば問題はない。むしろその量である。生育量(分けつ数)との兼ね合
いでもあるが、収量、内容品質(タンパク質含量)、収穫遅れへの影響等、慎重に決定すべきである。
しかし、今冬については熟考が必要である。まず、1月中旬までの観測史上もっとも暖かいとされ
る暖冬による生育の前進化により葉齢が 7~8 葉期に達している株も見られる。ただし、幼穂の形成、
- 7 -
茎立ちは葉齢の前進に比べ進んでおらず、凍霜害も今のところ確認されていない。
ただ、7 葉期以上に達したほ場では、生育量(茎数)もが繁茂気味の生育を呈している可能性が高
いので、リニア型被覆尿素(R25)の効果の持続性が問題である。
● 中庸株で7葉期以上に達し葉色が大きく低下しているほ場
⇒ 2 月中旬からの規定量の穂肥を実施する。
● 中庸株で6葉期以上に達し葉色が大きく低下しているほ場
⇒ 2 月中旬までに 1.0~1.5kg/10a 程度の追肥(即効性の高度化成または硫安)を施用した後、3 月上
中旬に規定量を上限に生育状況及び葉色を確認して施用する。
③ 雑草対策
● 土壌処理除草剤の効果が不十分で、播種後しばらくして一年生イネ科雑草と広葉雑草が混在して発
生が多くなった場合、麦葉齢 2L~3L期以降に茎葉除草剤(ハーモニー細粒剤Fなど)の散布を行う。
● 播種後に散布した土壌処理剤は 30~40 日位で効力が無くなるだけでなく、
今冬のように暖冬で経過
すると、スズメノテッポウやヤエムグラなど雑草の多い圃場が目立つようになる。生育の中盤以降に
使用できる除草剤としては、エコパートフロアブル、アクチノール乳剤、ハーモニー75DF 水和剤など
があるが、必ず使用時期や使用量等を確認して使用する。
④ 排水対策
縞萎縮病や後の赤カビ病等、
暖冬によりその発生が早まると同時に多発することが予想されるので、
出来る限り良好な排水性を保つことが重要である。
暖冬年は一般的に雨が多く、十分な管理作業が出来にくいので、生育への悪影響を回避するととも
に、確実に適期作業が出来るよう排水溝の整備を常に怠らないように努める。
6 花 き
フランネルフラワー
(1) 春出荷の作型
① 暖冬の影響で生育が前進しています。無加温ハウスでも 12 月~1月も生育しています。
そのため、肥料切れによる下葉の黄化が見られる場合は速やかに追肥を行う。
また、着蕾も早まると考えられるので、摘心栽培では摘心が遅れないようにする。
7月に播種されたエンジェルスターは、早い株から開花が始まる。下葉(黄化葉等)等を取り除き、
順次出荷する。ふらつきや根張りが悪い株は、市場評価を下げる原因となるため注意する。
② 灰色カビ病が発生しやすい時期のため、花き類で登録のある農薬を有効に利用する。
③ 過湿や水切れを起こさないよう、かん水管理に注意する。
【フランネルフラワー「エンジェルスター」の春出荷作型例】
月・旬
作型
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下 上 中 下
春出荷作型
○:播種
:鉢上げ(2.5 号)
:摘心
- 8 -
:鉢替え(3.5 号または 4 号) ■■:出荷
専 門 項 目 に 関 す る 情 報
堆肥施用による野菜の収量・品質向上
1 はじめに
野菜の生産を安定させるためには、土に水分・空気・養分などが適度に保持され、降雨、乾燥、温度変化
等、環境変化の影響をやわらげる緩衝能力に優れた土をつくることが重要である。堆肥等有機物の施用は「良
い土をつくる」ために利用されてきたが、どの有機物を施用しても良いわけではなく、発酵していない有機
物を大量に施用した場合には作物に生育障害が起きる。
2 堆肥施用と土壌改良
(1) 土の化学性の改善(=養分の供給)
堆肥には窒素、リン酸、カリウム等の多量
要素だけでなく、マンガン、ホウ素等の微量
要素も含まれる。そのため、作物に対する総
合的な養分供給源になるが、化学肥料と異な
る点は窒素などの養分供給が緩効的であり、
連年施用で効果が累積していく。この地力窒
素の増加が最も収量に影響する。
(2) 土の物理性の改善
堆肥を連用すると有機物の分解過程で腐植
が形成され、土壌粒子が互いに結合した土壌
団粒構造を形成する。排水や保水性が向上し、
図1
作物の根が伸長する(図 1)。
腐植と土壌団粒構造
(3) 土の生物性の改善
堆肥中には多くの微生物が含まれ、また堆肥施用によって有機物の分解に関与する多様な生物群が棲
息し、土壌の生物的緩衝能が増大する。
3 堆肥の種類と野菜の養分特性
堆肥は図 2 のように種類によっ
て肥料成分の高い堆肥と低い堆肥
がある。成分の低い堆肥は土壌の
物理性改良効果が高い(図 2)。
多肥を好む野菜を栽培している
農家は堆肥に肥料効果も期待して
いるが、少肥を好む野菜を栽培し
ている農家は堆肥に土壌物理性改
良効果を期待しているのが多い
(表 1)。
図 2 土づくり堆肥と有機質肥料的堆肥
(資料:中央農業研究センター 木村 一部改訂 原図 安西)
- 9 -
表1
堆肥の用途と野菜品目(日本土壌協会)
堆肥の用途
品目
土壌改良目的として利用
果菜類:イチゴ、メロン、トマト、スイカ、カボチャ等
果菜類:ピーマン、ナス等
肥料目的もあわせて利用
葉菜類:キャベツ、ハクサイ、コマツナ、レタス、ネギ、
タマネギ、ホウレンソウ、シュンギク等
4 堆肥施用の収量向上事例
(1) ハクサイ+バレイショ(堆肥 6 年連用)
ハクサイでは化学肥料区に比べ、もみ殻牛糞堆肥多量区(3t/10a)区、堆肥区(1.5t/10a)の収量が
それぞれ 156%、146%増と堆肥施用区の多い区ほど増収した。しかし、バレイショでは堆肥多量区、堆
肥区とも収量が 120%増と向上したが、堆肥投入量と収量には関連がみられなかった(表 2)。もみ殻
堆肥を連用した土壌及び堆肥からは、バレイショ期間中は余り窒素の無機化が進んでいないが、ハクサ
イ定植時期には地温上昇により進んでいる(図 4)。
表 2 堆肥連用による収量比較(岡山農試)
籾殻堆肥
籾殻堆肥
化学
3t 区
1.5t 区
肥料区
ハクサイ結球重
9,529(156)
8,866(146)
6,088(100)
バレイショ上イモ重
3,966(120)
3,955(120)
3,323(100)
※単位:kg/10a。( )は対化学肥料の収量比。
堆肥区:堆肥に化学肥料の慣行施肥を上乗せ
収量:ハクサイは H10~H13、H15~16 の 6 ケ年平均
バレイショは H11~13、H15~16 の 5 ケ年平均
図3
ハクサイ結球開始期の生育(岡山農試)
(左:堆肥 3t/10a 施用区、右:化学肥料連用区)
図4
バレイショとハクサイ栽培中の土壌及び堆肥からの推定窒素
無機化量(岡山農試)
(バレイショ:3 月植付、7 月収穫、ハクサイ:9 月定植、12 月収穫)
(2) キャベツ
神奈川県三浦試験場はガラス温室内で、主に根箱を用いて完熟堆肥、未熟堆肥、化学肥料別にキャベ
ツを栽培した。未熟堆肥は完熟堆肥の堆肥センターのもので、発酵途中のものである。キャベツの根の
発達は完熟堆肥区が最も良く、未熟堆肥区、化学肥料区は余り良くない。葉の密度は堆肥区、特に完熟
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堆肥ほど高かった。(図 5)。生育・収量はキャベツの葉の長さや重要について特に完熟堆肥が勝って
いた。キャベツの品質についても完熟堆肥は糖度も高く、硝酸態窒素濃度も低く、施用の効果が明瞭に
認められた(表 3)。
図 5 堆肥と化学肥料のキャベツの根状況と葉の密度(協力:神奈川県三浦試験場)
表 3 キャベツの収量・品質等(日本土壌協会)
6 堆肥施用の品質向上事例(調査:(一財)日本土壌協会)
(1) ハクサイ
農家圃場で堆肥区と化学肥料区の比較試験を行った。消費者に喜ばれるハクサイの黄芯率が堆肥区に
おいて高かった(図 6)。
(2) ブロッコリー
収穫後と 5 日後に成分分析して比較した。
堆肥区は鮮度の指標となる水分の減少が少なかった
(表 4)
。
表 4 ブロッコリー品質分析結果
(日本土壌協会)
水分(%)
1 日後
5 日後
堆肥
実
85
85
1.5t 区
茎
87
86
堆肥
実
86
85
0.7t 区
茎
91
91
無堆肥
実
88
85
茎
91
88
図 6 堆肥施用のハクサイ(日本土壌協会)
(3) ニンジン
各種堆肥と化学肥料との比較試験(各区窒素成分同一に補正し試験)をした結果、α及びβカロテン
は堆肥区が高かった(表 5)。
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表 5 各種堆肥区と化学肥料区のニンジンの品質成分の比較(日本土壌協会)
生ゴミ
牛糞
豚糞
下水汚泥
バーク
化学肥料
αカロテン
8,850
7,510
7,230
9,110
6,830
6,730
βカロテン
5,170
4,160
4,510
5,720
4,440
3,900
(4) 赤カブ
収穫後に室内に放置し、比較した。試験
期間は平成 20 年 12 月 19 日~平成 21 年 1
月 6 日と寒い時期での 18 日間で行ったが、
堆肥を施用してきた土壌の赤カブの方が
重量の減少が少なく、表面のしわもなく、
日持ち性が良かった(図 7、8)。
図 7 赤カブ収穫後の重量推移(日本土壌協会)
図8 赤カブ収穫 18 日後の品質
(日本土壌協会)
7 堆肥の施用効果が出にくい主な要因
(1) 過剰な施用量による土壌養分の過剰
堆肥を大量に連用することにより養分
過剰となり、軟弱に作物が育ち、病害虫
にかかりやすくなる。事前に土壌診断を
行うことが重要である。また、イチゴ、
トマト等では落花する等により減収す
る。
(2) 未熟堆肥施用による根への障害
土壌中で有機酸等、根の発達を阻害す
る物質を出し、根に障害を与え、生育が
悪くなる(図 9)。
図 9 ダイコンでの未熟堆肥施用(左)、完熟堆肥施用
(日本土壌協会)
参考文献:「土壌診断と作物生育改善」(日本土壌協会)
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農作物を加害する野生鳥獣の捕獲活動について
1 はじめに
県内における野生鳥獣の捕獲頭数を年々増加させてきたが、この冬は猟師の方の話では、餌の豊富な奥山
からシカやイノシシが里地近辺へ下りてこないため狩猟による捕獲が難しく、現状では捕獲頭数が少ないと
のことであった。平成27年度は奥山においてドングリなどの木の実が豊作であったこと、今冬は暖冬傾向
で積雪が少なく、例年以上に冬を越せる野生鳥獣が多いものと推察される。、これらのことから野生鳥獣の
生息数が増加する要因を抱えており、平成28年度も引き続き、農作物の被害防止に努める必要がある。
被害防止対策は、次にあげることが基本となる。
<鳥獣被害防止5策>
① みんなで …… みんなで勉強して話し合い、集落活動として対策を実行。
② 囲って ……… 侵入防止柵でできる限り囲い込む。設置後は集落で適正に管理。
③ 除いて ……… 餌となる物、隠れ場所をできる限りなくす。
④ 追い払って … 農作物がある時期だけでなく、見かけたら 1 年を通じて追い払う。
徹底した嫌がらせにより、集落が危険な場所、人間は怖いと思わせる。
⑤ 捕って ……… 被害が減らない場合には捕獲を行う。
被害農地の近くにいる個体を狙って捕獲すると効果的。
農作物を加害する野生鳥獣の被害を減らす最も効果的な対策は、まずは集落において「みんなで」話し合
うことから始め、集落の合意のもと侵入防止柵で「囲って」被害を防ぎ、放置野菜や収穫しない果樹等の餌
場を「除いて」野生鳥獣を集落に寄せ付けない工夫が必要である。そして、それでも農地に入ろうとする野
生鳥獣を捕獲することで侵入防止柵が破られるリスクを軽減でき、より被害防止効果が発揮される。
今回は、このうち自ら加害鳥獣を捕獲する場合に必要な資格や手続きについて紹介する。
2 捕獲の区分
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)においては、鳥獣及び鳥獣の卵
は捕獲等又は採取等してはならないとされており、一定条件の下、狩猟または許可を受けた場合のみ、その
捕獲が認められている。岐阜県における「許可捕獲」は、被害防止のための「有害鳥獣捕獲」と、著しく増
加した個体数を管理するための「個体数調整捕獲」に区分される。
表1 捕獲の区分
区 分
定 義
狩 猟
許可捕獲
有害鳥獣捕獲
個体数調整捕獲
狩猟期間に、法定猟法によ
農林水産業又は生態系等
第二種特定鳥獣管理計画
り狩猟鳥獣の捕獲等(捕獲
に係る被害の防止の目的
に基づく鳥獣の捕獲等又
又は殺傷)を行うこと
で鳥獣の捕獲等又は鳥類
は採取等を行うこと
の卵採取等を行うこと
※
対象鳥獣
捕獲及び
狩猟鳥獣48種
狩猟鳥獣以外の鳥獣も可
第二種特定鳥獣管理計画
(鳥類のひなを除く)
能(鳥類の卵も含む)
で定められた鳥獣
問わない
農林水産業等の被害防止
地域個体群の長期的にわ
採取の事由
個別の
たる安定的な維持
狩猟免許取得、狩猟者登録
許可申請
許可申請
申請先:市町村長
申請先:県知事
原則として狩猟免許を有
原則として狩猟免許を有
した者
した者
法定猟法
法定猟法以外の方法も可
法定猟法以外の方法も可
(網猟、わな猟、銃猟)
能(危険猟法等については
能(危険猟法等については
手続き
資格要件
方 法
狩猟免許を有した者
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対象地域
制限あり)
制限あり)
鳥獣保護区や休猟区等の捕
許可された範囲
許可された範囲
獲禁止場所以外の地域
(鳥獣保護区や休猟区で
(鳥獣保護区や休猟区で
も可能)
も可能)
※ ニホンザルやカモシカは狩猟鳥獣に含まれていないため、狩猟による捕獲はできない。
※ 捕獲した鳥獣は、捕獲した場所に放置することはできず、基本的に全量を回収するか、適切に埋却
処理しなければならない。
3 狩猟
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)において狩猟とは「法定猟法に
より、狩猟鳥獣の捕獲等をすること」と定義されており、狩猟免許を取得することが必要である。
(1) 狩猟免許の種類
法定猟法の種類(使用できる猟具の種類)に応じて、4種類の狩猟免許がある。狩猟免許を取得する
ためには、狩猟について必要な適正、技能及び知識に関して県知事が行う試験に合格することが必要で
ある。
① 網猟免許:鳥類や小型の獣類を捕獲するために網を用いた猟法
猟具:むそう網、はり網、つき網、なげ網
② わな猟免許:獣類※を捕獲するためにわなを用いた猟法
猟具:くくりわな、はこわな、はこおとし、囲いわな
わな設置後は、毎日見回る必要がある。
※鳥類、
及びツキノワグマの捕獲等をするためにわなを使用することは禁止されている。
a.くくりわな:対象動物の通り道等に設置しておいたワイヤー等で作った輪に足等が掛り捕獲する。
材料や仕掛けに制約がある。
はこわななどを警戒して、長年捕獲できない成獣も捕獲できることがある。
b.はこわな :全面を金網や板等で囲われた箱状のわなで、中にある餌を食べようとすると扉が閉じ
捕獲する。わなに誘引するための餌が必要となる。移動可能なものが主流。
c.囲いわな :基本構造は、はこわなと同じであるが、天井がない。大型なものが主流で、設置後の
移動が困難なため、常設用として用いられることが多い。
特例:狩猟期間内に狩猟が可能な区域であれば、農業者又は林業者が自らの事業に対
する被害を防止する目的で、事業敷地内で囲いわなを用いて加害狩猟鳥獣を捕獲
することについては、狩猟免許や狩猟者登録を受ける必要がない。
「農業者又は林業者」とは、農業又は林業を行っている者であって、一定の収
入を得ている者を指し、専ら自家消費のための作物を栽培している者は 含まれ
ない。
表2 わなの特徴
区 分
はこわな
捕獲方法
餌付けによる捕獲
囲いわな
くくりわな
通り道に気付かれないよう設置して
捕獲
餌で誘因する手法もある
設置の難易度
比較的容易
大がかりなもの
設置自体は容易だが、場所の見極めな
は業者対応
どが初心者には難しい
困難
容易
移動性
一人では困難
購入費用
高価
比較的安価
安全性
設置の有無が容易にわかるため、人が
見つけにくいため、人が誤ってかかる
誤ってかかる危険性は少ない
危険性がある
捕獲動物の負傷は少なく、放獣は容易
捕獲動物が負傷する場合もあり、放獣
錯誤捕獲への
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対処
に手間がかかる
捕獲頭数
一度に複数の捕獲が可能
一度に1頭しか捕獲できない
設置適所
被害農地または侵入防止柵周辺
動物の通り道や生息地周辺
止めさし
保定しやすく、ナイフや電撃器の使用
捕獲動物が一定範囲移動可能なため、
が可能
接触等身体に危険が及ぶ可能性があ
る。また、罠のかかりが不十分の場合、
ワイヤー等が外れ鳥獣が暴れだすこ
とがあり注意が必要。
③ 第1種銃猟免許:銃器を用いた猟法
猟具:装薬銃(散弾銃・ライフル銃)、空気銃
銃砲刀剣類所持等取締法により所轄警察署の猟銃・空気銃所持許可の取得が必要。
火薬類取締法により、装弾などの火薬類の売買・保管・消費に規制がある。
④ 第2種銃猟免許:空気銃を用いた猟法
猟具:空気銃
銃砲刀剣類所持等取締法により所轄警察署の空気銃所持許可の取得が必要。
(2) 関連法令
狩猟による捕獲を行うには、下記の関連法令を順守しなければならない。
① 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)
図1 狩猟免許状と狩猟者登録の申請手続き
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a.狩猟免許の取得
県内に住所を有し、網猟及びわな猟にあっては18歳以上、第1種銃猟及び第2種銃猟免許にあ
っては20歳以上の者(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律第40条第2号から
第6号の規定に該当する者を除く。)を対象とする。
狩猟免許試験は、居住している地域を管轄する都道府県知事が実施するものを受験する必要があ
り、試験に合格して取得した免許は全国で有効である。免許の有効期間は3年間で、3年ごとに更
新が必要である。
b.狩猟者登録
狩猟をしようとする場合は、狩猟をする地域を管轄する都道府県ごとに、毎年、狩猟者登録をす
る必要がある。その際、狩猟により生ずる損害の賠償に係る証明書が必要。
c.狩猟期間
狩猟できる期間が定められており、その期間のみ狩猟鳥獣を捕獲することが可能
狩猟期間:11月15日 ~ 2月15日(岐阜県の場合、イノシシ・シカは3月15日まで延長)
② 銃砲刀剣類所持等取締法
銃砲刀剣類の所持を原則禁止とし、所持に関する危険等を予防するために、銃器・刀剣類の所持を
許可制にするなどの規制について定めた法律。
猟銃を所持する場合、住所地を管轄する警察署の猟銃・空気銃所持許可が必要。
③ 火薬類取締法
装薬銃に使われる実包(装弾)、空砲、雷管、火薬などの火薬類による災害を防止するために、そ
れらの売買(譲受・譲渡)、保管(貯蔵)、消費、製造等に関する規制について定めた法律。
装薬銃に使われる実包(装弾)、雷管、火薬などの譲渡又は譲受は許可制である。なお、狩猟や有
害鳥獣捕獲等に使用する一定量以下の実包等の譲受については、一定の条件の下、無許可で購入する
ことができる。
4 有害鳥獣捕獲
鳥獣による生活環境、農林水産業、生態系に関わる被害が発生している、あるいはその恐れがあり、原則
として各種の防除対策によっても被害が防止できないと認められた場合に限り、その防止、軽減を図るため
に捕獲が許可される。岐阜県においては、主たる鳥獣は市町村長の捕獲許可のもと有害鳥獣として捕獲する
ことが可能になる。
鳥獣被害を受けている農家が、被害防止のための有害鳥獣捕獲を依頼する場合には、市町村の鳥獣行政担
当課へ相談する。
また、農業者自らが有害鳥獣捕獲を行う場合は、市町村により許可条件が異なるので、市町村の鳥獣行政
担当課に確認が必要である。
5 個体数調整捕獲
岐阜県においては、第二種特定鳥獣管理計画(ニホンジカ)を定めており、本計画に基づき、県下全域に
おいてその数が著しく増加しているニホンジカの個体数調整を目的とした捕獲ができることとしている。
ニホンジカの個体数調整捕獲は市町村が県の許可を受けて実施するものであり、捕獲への参加を希望する
場合は、市町村により個体数調整捕獲に携わる従事者の条件が異なるので、市町村の鳥獣行政担当課に確認
が必要である。
6 おわりに
野生鳥獣の捕獲活動は、加害鳥獣の生息数を減少させることで農作物の被害を抑える手法の一つである。
しかし、捕獲のみに偏った対策では効率よく農作物被害を減少させることはできないため、前述の鳥獣被
害防止5策を地域ぐるみで話し合い、
被害の実情に合った複数の対策を総合的かつ継続的に実行することで、
確実に被害減少に結びつくものと考えられる。
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