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エネルギー価格の国際比較
環 電力中央研究所報告 境 報告書番号: Y 0 8 0 2 7 エネルギー価格の国際比較 −地球温暖化防止政策の視点から− 背 景 地球温暖化防止政策の国際的協調にあたっては、各国の現状やこれまでの政策的 努力の程度を国際的に比較する指標の整備が必要である。 目 的 国際比較指標の一つとして、省エネに関係する最終エネルギー価格を取り上げて 国際比較を行い、エネルギー消費及び CO2 排出量との関係を見るとともに、価格構 成要因を確認し、集計した平均価格の変動要因を分析する。 主な成果 IEA 統計から最近年のデータが入手可能な国について、エネルギー(末端)価格 の国際比較を行った。特に G7 各国、BRICS 諸国については、以下の項目について比 較・分析を行った。 税・補助金の国際比較 (1) 先進国の税率の比較 欧州4カ国(フランス、ドイツ、イギリス、イタリア)では、石油製品の物品税 は、税抜き価格の 80∼180%と高率であり、さらに従価税である VAT 税率も高い。 産業用・発電用エネルギーは免税される。日本でも、石油製品には税抜き価格の 50 ∼80%と比較的高率の物品税が掛けられているが、北米では総じて税率は低い。 (2) 途上国の補助金の比較 途上国では、依然として消費者向けのエネルギー価格補助が広く存在する。価格 に占める補助金の率でみると、燃料別では、天然ガス、次いで灯油、LPG、軽油が高 い。地域別には、エネルギー純輸出国のほか、アジアでは中国、インド、インドネ シアで高い。 最終エネルギー価格(末端価格)の比較 (1) 家庭用エネルギー・産業用エネルギーともに、課税前の価格水準では、おおむ ね、日本、欧州、北米の順となるが、課税後の価格水準では、欧州の税率が高いこ とから、日本と欧州はほぼ同水準となる(図 1)。 (2) 電力・ガスでは、課税前のエネルギー本体価格の国際的な格差が大きい。 (3) 先進諸国では、家庭用に比べ産業用価格は低めで、国際間の価格差も相対的に 小さい。 エネルギー集計(平均)価格の比較 最終エネルギー消費部門について、部門別・エネルギー源別の末端価格を需要量 で加重平均し、各国のエネルギー集計(平均)価格を推計した。 (1) 2000-2005 年間での変動要因をみると、各国とも石油価格上昇の影響が最も大 きいが、それに次いで、欧米地域では、ガス価格上昇の影響が、中国では、石炭価 格上昇に加え、電力シフトの影響が大きくなっている。日本では、電力価格の低下 が石油価格の上昇をほぼ相殺している。 (2) エネルギー集計価格と、CO2 排出原単位(CO2 排出量/GDP)の関係をプロットす ると、右下がりの関係を見出すことができる(図 2)。エネルギー価格水準が高い国 では、エネルギー消費原単位、CO2 排出原単位ともに低いことがわかる。 2005年 US$/石油換算トン 2,500 日本 1,500 電力 北米 1,000 中国 インド 軽油 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 北米 軽油 電力 500 1 欧州4カ国 日本 1,500 軽油 - 軽油 ○本体価格●税込価格 ガス △本体価格▲税込価格 電力 □本体価格■税込価格 2,000 ガス 1,000 産業用エネルギー価格 2,500 軽油 ○本体価格●税込価格 ガス △本体価格▲税込価格 電力 □本体価格■税込価格 電力 2,000 2005年 US$/石油換算トン 家庭用エネルギー価格 欧州4カ国 14 インド ガス 500 ロシア 軽油 ロシア 15 ガス 16 17 ガス - 18 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 電力 16 17 注 1. IEA Energy Prices and Taxes より当所作成。「欧州 4 カ国」は、イタリア、フランス、ドイツ、英国の価格を、各需要量 で加重平均した。価格は、2005 年の米ドル表示である。 図 1 国内最終エネルギー価格(末端価格)の比較 (2006 年, データ欠損のため一部 2005 年) 一次エネルギー消費原単位(石油換算トン/万US$) 9 0.6 CO 2排出原単位(t/千US$) 中国 8 0.5 中国 0.4 インド 7 インド 6 5 0.3 4 カナダ 3 米国 2 フランス 1 ドイツ カナダ 0.2 イタリア 日本 米国 0.1 フランス 英国 0 イタリア 日本 ドイツ 英国 0 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 0.2 エネルギー最終消費部門の集計価格(千US$/石油換算トン) 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 エネルギー最終消費部門の集計価格(千US$/石油換算トン) 注)GDP、エネルギー価格ともに市場為替レート換算値を用いている。 図 2 エネルギー価格と CO2 排出原単位の関係 (2005 年) 調査報告 Y08027 担当者 連 絡 先 [非売品・不許複製] キーワード:地球温暖化,国際比較指標,エネルギー価格,エネルギー税, エネルギー補助金 星野 優子(社会経済研究所 エネルギー技術政策領域) (財)電力中央研究所 社会経済研究所 Tel. 03-3480-2111(代) E-mail : [email protected] c財団法人電力中央研究所 平成21年4月 08−027