〔 Invitation to Clinical Family Sociology (`14) 〕 臨床家族社会学
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〔 Invitation to Clinical Family Sociology (`14) 〕 臨床家族社会学
事務局 開設 記載欄 年度 2014年度 科目 区分 科目名(メディア) = 臨床家族社会学 英文名 = 〔 Invitation to Clinical Family Sociology ('14) 〕 専門科目 科目 1518895 コード 履修 制限 無 単位 数 2 (’14)= (R) 〔主任講師(現職名): 清水 新二 (奈良女子大学名誉教授) 〕 【 本 学 担 当 専 任 教 員 : 宮本 みち子 (放送大学副学長) 】 講義概要 いま多岐にわたる様々な家族問題の解決が期待されている。精神疾患や高齢者介護問題などの各種慢性疾患は 言うに及ばず、児童虐待やドメスティック・バイオレンスなどの家族暴力、犯罪被害者家族や災害被災者家族あるい は自死遺族、非行・犯罪者の家族、いじめや引きこもりの子どもを抱えた家族等々、日々の生活の中で出会う各種 の家族生活問題の解決に関心が寄せられている。問題解決志向性を強調する本科目では特に家族のストレスやメ ンタルヘルスに焦点をあわせるとともに、その背景としての現代の社会状況にも目配りをしながら、単に実態の把握 にとどまらずミクロ・メゾ・マクロそれぞれのレベルにおける問題の解決に向けた支援をも視野に入れ、必要とされる 社会的取り組みについて臨床家族社会学の視点から整理検討を加え、現実に即した家族問題の理解を深める。 授業の目標 現代の家族生活のポジティブな面とネガティブな面の双方に目配りしつつ、日常的な家族生活で生じる具体的家 族問題について取り上げ、その実態の理解を深めるとともに問題への現実的な対処や支援に関する方法を検討す る力を養う。 履修上の留意点 既開講科目の「在宅看護論」「高齢期の生活と福祉」「今日のメンタルヘルス」「リスク社会のライフデザイン」、大学 院科目の「家族生活研究」など、関連科目もあわせて学習することをすすめる。 回 テ ー マ 内 容 執 筆 担 当放 送 担 当 講 師 名講 師 名 (所属・職名) (所属・職名) 臨床家族社会学の基本的特徴を問題解決志向性ならびに 問題中心的アプローチから捉え、ミクロな事例的臨床とマク ロな対策的臨床の二つの面から問題解決へ向けた総合的 な社会的取り組み、対応の必要性とありようを概説する。事 例的臨床における家族への対処支援においては対処の主 体としての家族の位置付けを検討し、対策的臨床に関して 清水 新二 清水 新二 臨床家族社会学をど は対策の枠組み構築にあたっての手掛かり、ヒントを示唆 (奈良女子大 (奈良女子大 1 う理解するか する。その上で、対策効果をどのように考えたらよいかの理 学名誉教授) 学名誉教授) 解を深める。 【キーワード】 問題解決志向性、事例的臨床と対策的臨床、対処主体ア プローチ、対策効果、ポピュレーション・アプローチとリスク グループ・アプローチ 家族問題の実態理解から社会的な対応法にわたるまで、 問題解決に向けてどのように理解分析するかの基本的視 点により、またどのような対象を取り上げ問題とするかによっ て、その結ぶ像は異なってくる。家族に対する人々や社会 臨床家族社会学の基 からの期待と実際の家族生活の現実との間に横たわる亀裂 清水 新二 清水 新二 2 本的視点とアプロー や、<ミウチ>と<タシャ>との関連性をどう考えるのかな (奈良女子大 (奈良女子大 チ法 学名誉教授) 学名誉教授) ど、これらの基本問題について整理し学ぶ。 【キーワード】 家族ストレス、生活知と専門知、無知のアプローチ、近代家 族、家族の他者性 今日、家族の個人化・多様化などを背景に、一定の家族像 からの逸脱に問題の原因をみるのではなく、家族の行為や 解釈などその主観的経験に基点をおきながら「家族問題」 に接近しようとする質的研究が登場している。ここでは、そ 南山 浩二 南山 浩二 臨床家族社会学と質 の中から、主にナラティヴアプローチなどに焦点をあて、そ (成城大学教 (成城大学教 3 的研究法 の研究の背景や特徴について論ずる。 授) 授) 【キーワード】 家族問題、質的研究法、量的研究法、ナラティヴアプロー チ、無知の姿勢、研究倫理 回 テ ー マ 4 学校臨床と家族 5 非行臨床と家族 内 容 執 筆 担 当放 送 担 当 講 師 名講 師 名 (所属・職名) (所属・職名) 学校現場での問題行動として、不登校・いじめ・校内暴力を 取り上げ、その現況を概説し、家庭との関わりを検討する。 社会的取り組みのなかでも、児童・生徒の保護者への支援 生島 浩 を中心に考察する。教職員に加えて、スクールカウンセラー 生島 浩 (福島大学教 (福島大学教 の役割に注目し、家族支援の実際について理解する。 授) 授) 【キーワード】 不登校、いじめ、校内暴力、スクールカウンセラー、家族 (保護者)支援 少年非行の動向、特に家庭内暴力を社会学的観点から読 み解く。「非行原因としての家族」から「立ち直りの手立てと しての家族」に視点を転換させる重要性を述べる。非行臨 床における家族支援について、臨床家族社会学の知見を 生島 浩 生島 浩 活かした、家族システム論、構築主義的アプローチ、講師 (福島大学教 (福島大学教 自身の手法を解説する。 授) 授) 【キーワード】 少年非行、家庭内暴力、立ち直り、家族システム論、構築 主義的アプローチ 6 犯罪臨床と家族 犯罪臨床のシステムを概説し、家族内殺人など犯罪と家族 との関連を考察する。家族支援が、再犯抑止をはじめとす る犯罪対策に重要であることを解説する。また、加害者家族 生島 浩 への取り組み、さらには、犯罪被害者の家族(遺族)への支 生島 浩 (福島大学教 (福島大学教 援、自助組織の社会的活動も取り上げる。 授) 授) 【キーワード】 家族内殺人、加害者支援、再犯抑止、被害者支援、自助 組織 地域資源の脆弱性や家族扶養主義などを背景に、家族に 対する精神障がい者の身近な支え手としての社会的期待 は未だ大きい。しかし、家族の抱える生活上の困難やストレ ス、経過の長期化に伴う家族の高齢化、障がい者・家族間 に葛藤が生じやすいことなど、家族生活をめぐる課題が指 南山 浩二 南山 浩二 7 精神障がい者と家族 摘されている。そこで、精神障がい者家族の生活実態につ (成城大学教 (成城大学教 いての概観をふまえながら、医療や福祉をめぐる政策的課 授) 授) 題を検討する。 【キーワード】 隔離収容主義、社会的入院、精神障がい者の地域生活と 社会復帰・社会参加、家族 統合失調症である人の家族に対する家族支援について、 専門家の家族へのまなざしを基点にその歴史的変遷を検 討する。そして、コミュニティケアが重要視されるようになっ た現在、リカバリー志向の家族支援が模索され始めている 南山 浩二 南山 浩二 統合失調症と家族支 が、こうした近年の取り組みについて概観するとともに、今 (成城大学教 (成城大学教 8 援 後の展開可能性や課題について理解を深めていく。 授) 授) 【キーワード】 家族の医療化-脱医療化、スティグマ、リカバリー、アウト リーチ、セルフヘルプグループ 少子高齢化が家族集団に与える影響は大きく、様々な問 題が生じてくることが考えられるが、これから高齢者と呼ば れるようになる人たちには働き方や社会参加、地域におけ る人々のつながりや生活、高齢期に向けた備え等、人生90 年時代を前提としたものへの転換と超高齢社会を先導して 高梨 薫 高梨 薫 高齢者と高齢期家族 いく役割が期待されている。ここでは高齢者と家族の生活 (神戸学院大 (神戸学院大 9 の生活 がどのように変化してきているか統計を基に理解し、わが国 学教授) 学教授) の高齢者のウェルビーイングにとって重要なのは何である のかを社会学的に考察する。 【キーワード】 少子高齢化社会、高齢期家族、老化の社会的側面、高齢 社会対策大綱 回 テ ー マ 内 容 執 筆 担 当放 送 担 当 講 師 名講 師 名 (所属・職名) (所属・職名) 介護保険サービスの利用は、重度の者は施設サービス利 用が半数を超えているが、重度でも著しい数の要介護高齢 者が居宅サービスと家族による介護を受けていることが考 えられる。介護を自分たちの手で何とかしたいと思っている 家族は少なくないといわれ、また要介護高齢者にとっては、 高梨 薫 高梨 薫 10 要介護高齢者と家族 介護を家族に期待できるかということでなく、家族と良い関 (神戸学院大 (神戸学院大 係を保っていられることが大切な場合も考えられる。要介護 学教授) 学教授) 高齢者と家族の生活について理解を深める。 【キーワード】 要介護認定、自立の支援、介護充実感、社会情動的選択 理論 生老病死は家族生活の歴史でもある。本章では家族生活 にとって確実に訪れる永別、わけても自死と遺された家族 の問題を取り上げ、臨床家族社会学的に自死の実態、自 清水 新二 清水 新二 自死遺族の困惑と苦 死遺族の直面する問題、自死による永別への対応、支援な (奈良女子大 (奈良女子大 11 どについて「事例的臨床」の観点から学ぶ。 境 学名誉教授) 学名誉教授) 【キーワード】 封印された死、さよならのない別れ、自責感、わかちあいの 会 自殺問題のなかでこれまで看過されてきた自死遺族支援 の問題を正面からとりあげる。この章では「対策的臨床」の 観点から、先ずマクロ的に近・現代社会が死について向き 合わなくなってきた流れを説明する。次いでわが国の自死 の実態を概観した上で、自死対策枠組みの中でも特に自 清水 新二 清水 新二 自死遺族の社会的支 死遺族支援に焦点をあて、自死遺族支援の課題について (奈良女子大 (奈良女子大 12 援 学び、その問題対処に向けた社会的取り組みの歴史と展 学名誉教授) 学名誉教授) 開、支援の際の視点や留意点などについて理解を深める。 【キーワード】 自殺率、メメント・モリ、自死遺族支援、自殺対策基本法、ポ ストヴェンション 13 家族生活とドメス ティックバイオレンス 本章ではドメスティック・バイオレンスを中心に用語の置き換 え効果について述べ、言葉が開く家族臨床課題の発見に ついて考える。次いでその実態および対策枠組み的支援と しての法制度の展開を見る。さらに、専門的科学知としての 研究知見と経験的生活知としての支援現場から立ち上がる 清水 新二 清水 新二 家族暴力の立像を対比させつつDV問題を考える際に注意 (奈良女子大 (奈良女子大 すべき論点や研究知見・成果を紹介整理して、問題ならび 学名誉教授) 学名誉教授) に論議の複層性への理解を広げる。 【キーワード】 ドメスティック・バイオレンス、DV防止法、DV定義の外延的 拡大、非対称性仮説、世代間連鎖仮説、学習性無力感 社会学的視点からの、被虐待児童とその家族への支援の 基礎理論の学習を目指す。最初に伝統的ナラティヴモデル の理論を説明し、その理論的問題点について論じる。そし 加茂 陽 加茂 陽 児童虐待問題へのも て新たな修正ナラティブモデルの理論的枠組みを示す。 (県立広島大 (県立広島大 14 う1つのアプローチ 学名誉教授) 学名誉教授) 【キーワード】 児童虐待、ナラティヴモデル、生成的システムズ理論、修正 ナラティヴモデル 前章で示した修正ナラティヴモデルについて、問題定義 法、評定法、そして変容技法に関して詳細に論じ、事例分 被虐待児童の家族支 析によりそれらの使用の実際を示す。その上で、その有効 加茂 陽 加茂 陽 援の実際 : 修正ナラ (県立広島大 (県立広島大 15 ティヴモデルによる支 性と問題点を明らかにする。 学名誉教授) 学名誉教授) 援とその課題 【キーワード】 被虐待児童の家族支援、修正ナラティヴモデル、評定方 法、変容手法