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Untitled - 野村不動産投資顧問

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Untitled - 野村不動産投資顧問
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
目 次
レビュー 2014 年夏季号
東京オフィスマーケット動向調査(2013 年~2014 年第 1 四半期)
1
2
3
国内マクロ経済........................................................................................ 3
1-1
日本経済の概況 ............................................................................. 4
1-2
雇用・設備投資動向 ....................................................................... 4
1-3
日本経済の見通し .......................................................................... 4
1-4
マクロ経済環境と不動産市場........................................................ 5
東京オフィスマーケット中期予測 ............................................................ 6
2-1
マーケット概況 ................................................................................ 6
2-2
2014 年~2017 年供給量予測 ......................................................... 7
2-3
立地別供給動向 ............................................................................. 7
2-4
東京ビジネス地区・賃貸ビルの今後の動向 ................................. 8
2-5
需給バランスの中期見通し.......................................................... 10
まとめ ..................................................................................................... 12
2
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
1 国内マクロ経済
日本経済の概況
1-1
国内総生産―リーマンショック前を上回り過去最高に―
2013 年の日本経済は大きな回復を遂げた。2012 年 12 月に発足した安倍政権の迅速な政策発動と日
銀による異次元金融緩和により、円安・株高が進行した。株高の資産効果による個人消費の堅調と円安
による輸出増が景気回復の牽引役となり、企業業績の回復につながった。結果、2013 年の実質国内総
生産(GDP)は、525 兆 3,400 億円となり、リーマンショック前の 2007 年(523 兆 6,900 億円)を上回り
過去最大となった。
■国内総生産(実質・実額・暦年)
■(参考)名目 GDP の国際比較(暦年・ドルベース)
兆円
530
名目GDP(10億ドル) 世界に占める比率(%)
525
524
11年
518
520
517
512
512
510
11年
12年
1
アメリカ
15,534 16,245
21.9
22.4
2
中
国
7,324
8,224
10.3
11.4
3
日
本
5,913
5,935
8.3
8.2
4
ド イ ツ
3,628
3,426
5.1
4.7
5
フランス
2,782
2,611
3.9
3.6
6
英
国
2,463
2,472
3.5
3.4
7
ブラジル
2,477
2,253
3.5
3.1
8
ロ シ ア
1,899
2,015
2.7
2.8
9
イタリア
2,197
2,013
3.1
2.8
10 イ ン ド
1,873
1,842
2.6
2.5
510
504
500
497
490
490
486
480
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
12年
13
出所:内閣府
出所:内閣府
■異次元緩和と企業動向
マネタリーベース
短観・業況 DI
経常利益
経常利益(季節調整済)・製造業
大企業・非製造業
60
大企業・製造業
前年比
(%)
pt
60
DI・不動産・大企業
50
経常利益(季節調整済)・非製造業
兆円
12
10
40
40
8
30
20
6
20
0
4
10
0
2
-20
0
-10
-40
-2
-20
-30
-4
-60
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
出所:日本銀行
出所:日本銀行
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
出所:財務省
3
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
1-2 雇用・設備投資動向
労働需給は改善。雇用逼迫感が強く、雇用者数は増加基調で推移
経済の好循環が実現する中、企業の労働需要が高まっている。日銀短観・雇用人員判断 DI によれば、
企業の雇用逼迫感は高まっており、特に非製造業ではリーマンショック前を上回る水準となっている。こ
れに伴い、雇用者総数は増加傾向で推移している。また、雇用の先行指標となる新規求人数が拡大基
調で推移していることから、雇用者数は当面強含みで推移すると見られる。
■日銀短観雇用人員判断 DI と完全失業率
雇用・製造業
雇用・大企業
(右軸)完全失業率
40
■新規求人数と雇用者総数
雇用・非製造業
雇用・中小企業
失業率(%)
↑ 雇用過剰
30
6.0 1,000
5.0
20
雇用者総数季節調整値(右軸)
新規求人数
(千人)
4.0
10
(万人)
5,700
900
5,600
800
5,500
700
3.0
0
600
5,400
2.0
-10
500
↓ 雇用不足
1.0
-20
-30
0.0
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
5,300
400
300
出所:「短観・雇用人員判断 DI」日本銀行、「完全失業率」総務省
5,200
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
出所:「新規求人数」内閣府、「雇用者総数」厚生労働省
オフィス賃料と関連の強い設備投資の本格回復が示唆されている
企業収益の改善を背景に、製造業・非製造業とも投資意欲が高まっている。足下では、設備投資の先
行指標である機械受注(船舶、電力除く民需)や、日銀短観「設備投資計画」は増加傾向を示している。
設備投資はオフィス賃料に対して先行性が高い指標のひとつであり、今後の本格回復が期待される。
■設備投資とオフィス賃料(変動率)の推移
(兆円)
■設備投資と機械受注の推移
前年
同月比%
16
(兆円)
(兆円)
30% 16
13
12
14
20% 14
11
12
10% 12
10
0% 10
10
9
8
8
-10% 8
7
6
6
-20% 6
設備投資(ソフトウェア除く)
設備投資(ソフトウェア除く)
(右軸)都心5区平均賃料・変動率
5
(右軸)機械受注(民需、電、舶除く)
4
-30% 4
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
出所:「設備投資」財務省、「機械受注」内閣府
4
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14
出所:「設備投資」財務省、「オフィス賃料」三鬼商事
1-3 日本経済の見通し
消費増税の影響は限定的。企業・家計センチメントは底堅く、14 年 3Q 以降、景気は拡大基調へ
2014 年以降も GDP は底堅く推移すると予想される。第 2 四半期は 4 月の増税の影響で一時的な減
速が予想される。ただ、家計・企業の先行き景況感は増税前の水準を回復しており、反動減の長期化
4
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
は回避される可能性が高まった。当面、日本経済は内需主導で底堅く推移する見通しである。特に、不
動産マーケットとの関連が深い設備投資・労働需給の好調が予想されている点が注目されよう。
■景況感 上段:家計、下段:企業
50
■日本経済の見通し(内閣府)
50以上=良い
(%、%程度)
2012年度 2013年度 2014年度 2015年度
実績
実績
予測
予測
(%)
(%)
(%程度) (%程度)
45
40
実質GDP
35
30
25
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
60
55
50
45
40
35
30
25
20
15
50以上=良い
0.7
2.3
1.2
1.4
民間消費
1.5
2.6
0.3
1.9
民間企業設備
0.8
2.6
4.9
4.7
内需寄与度
(1.5) (2.8) (1.1) (1.3)
外需寄与度
(▲0.8)(▲0.5) (0.1) (0.1)
完全失業率
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
4.3
3.9
3.5
3.5
(注)寄与度及び完全失業率以外は対前年度比変化率
出所:内閣府
出所: 上段:「消費者態度指数」内閣府、下段:「景気ウォッチャー調査」内閣府
1-4 マクロ経済環境と不動産市場
雇用・設備投資の回復を追い風にオフィスマーケットの好調継続
マクロ経済の好調を背景にオフィスマーケットは回復している。オフィスマーケットは、一般の景気サイク
ルに遅れて動く性質がある。実際、オフィス空室率と景気動向指数(先行・一致・遅行)の動きを比較す
ると、オフィス空室率は遅行系列との連動性が高いことがわかる。遅行系列を構成する主な指標は設備
投資と雇用(雇用者数・失業率)である。2013 年以降、雇用・設備投資の回復に伴い遅行系列が上昇
しているが、これに連動するかたちでオフィス空室率も回復基調を強めている。今後、両指標は底堅い
動きが予想されており(1-3)、オフィスマーケットは強い動きが続くだろう。一方、銀行の融資姿勢も緩和
化が進んでいる。日銀短観・銀行貸出態度判断 DI(大企業・不動産業向け)は、プラス圏を回復し、リ
ーマンショック前の水準に近づきつつある。尚、同指標は不動産マーケットの悪化局面で先行して低下
する指標のひとつである。当社では今後も同指標を早期警戒指標のひとつとしてモニタリングしていく。
本章で確認した経済環境を踏まえ、次章では日本のコアビジネスエリアである東京オフィスマーケットの
中期予測を試みた。新規供給の調査結果と需要動向から、今後の需給バランスを明らかにする。
■景気動向指数と都心 5 区空室率
先行
遅行
140
2010年=100
130
■銀行貸出態度判断 DI
一致
(右軸)都心5区空室率
空室率(%)
銀行貸出態度DI(対不動産業)
0.0
40
1.0
30
2.0
3.0
110
4.0
10
5.0
0
6.0
90
7.0
8.0
80
70
-10
-20
9.0
-30
10.0
-40
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
出所:「景気動向指数」内閣府、「都心 5 区空室率」三鬼商事
07年2Q
20
120
100
0以上=良い
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
出所:「短観・銀行貸出態度判断 DI」日本銀行
5
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
2. 東京オフィスマーケット中期予測
2-1 マーケット概況
都心 5 区における 6 月時点平均空室率は 6.45%。先行指標となる新築ビル空室率は 18.09%。目
安とされる 15%の水準に近づく。平均賃料は 16,607 円(前月比+0.64pt)。5 ヶ月連続の上昇。
■東京都心 5 区の平均空室率推移
(%)
都心5区平均空室率
(%)
(右軸)新築ビル平均空室率
10
45
9
40
8
35
6.45
7
6
18.09
5
30
25
20
4
15
3
2
10
1
5
0
0
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
■東京都心 5 区の需給バランス
需要増加量
(千坪)
40
30
2001年
145
90
2002年
151
-54
2003年
292
223
2004年
144
262
10
2005年
67
185
0
2006年
49
134
2007年
127
139
2008年
33
-107
2009年
115
-119
2010年
-5
-60
2011年
80
66
2012年
179
186
2013年
57
146
2014年(~6月)
37
98
650
(千坪)
(千坪)
600
18
15
20
550
500
-10
-20
450
-30
供給増加量
需要増加量
空室在庫(右軸)
14.06
14.05
14.04
14.03
14.02
14.01
13.12
13.11
13.10
13.09
13.08
400
13.06
-40
13.07
供給増加量
(千坪)
■東京都心 5 区の平均賃料推移
(円/坪)
40,000
平均賃料
平均賃料(新築)
35,000
30,000
26,611
27,363
16,377
16,607
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
13.06
13.07
13.08
13.09
13.10
13.11
13.12
14.01
14.02
14.03
14.04
14.05
14.06
01Q1
01Q3
02Q1
02Q3
03Q1
03Q3
04Q1
04Q3
05Q1
05Q3
06Q1
06Q3
07Q1
07Q3
08Q1
08Q3
09Q1
09Q3
10Q1
10Q3
11Q1
11Q3
12Q1
12Q3
13Q1
0
出所:三鬼商事資料を基に NREAM 作成/2014 年 6 月末時点(上記グラフ・表全て)
6
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
2-2 2014 年~2017 年供給量予測
新規供給量は増加傾向も、今後 4 年間の平均供給量は前回 2012 年のピークの 6 割程度
東京 23 区のオフィスビル(延床面積 1,000 坪以上)の新規供給量の推移を見る(図 1)。2012 年は
58 万坪と 2006 年を超える新規供給が行われたが、翌年以降低水準で推移している。このところの
景況回復傾向を反映し、各所で計画の前倒しや中断されていた計画が再開されたことなどから、
2017 年の新規供給見込みは約 41 万坪と増加しているものの、今後 4 年間の平均では約 34.8 万
坪と前回ピーク時の 2012 年供給量の 6 割程度で推移する見込み。
■東京 23 区のオフィスビル供給量(延床面積 1,000 坪以上 ※自社ビル含む)
(万坪)
80
M : 1,000坪以上
L :3,000坪以上
XL :18,000坪以上
(右軸)棟数
70
7
60
11
50
予定
70
4
6
4
6
20
8
2
17
9
4
12
18
02
12
10
15
41
3
6
9
03
6
5
04
05
8
18
7
8
11
10
28
7
0
01
6
5
9
60
41
7
7
30
90
80
13
40
10
LL : 9,000坪以上 (棟数)
12
10
28
6
6
5
3
36
11
4
1
4
10
12
08
09
21
35
33
30
4
6
8
2
1
7
2
6
13
13
14
21
23
15
16
50
40
30
34
5
15
7
1
4
3
20
10
0
06
07
10
11
12
17
出所: 各種公表資料、三鬼商事資料等より NREAM 作成
(注) 調査対象はオフィスを主な用途としたビル(基準階 100 坪 ・延床 1,000 坪以上)。
現地調査、公開情報、ヒアリングにより、2014 年 6 月末時点で集計した(竣工未定は除外)。
規模別に M クラス(1,000 坪以上)、L クラス(3,000 坪以上)、LL クラス(9,000 坪以上)、XL クラス(18,000 坪以上)
に分類、棒グラフの供給量は、店舗・住宅・ホテル等を除く、オフィス部分の延床面積を集計したもの。折れ線グ
ラフは、各年の竣工ビル棟数を示す。
2-3 立地別供給動向
■主要区別新規供給量の割合
(2014~2017)
新規供給の 69%が都心 3 区
2014 年~2017 年における東京 23 区の新規供給量
を区別にみると、千代田区が 43 万坪で最も多く全体
の 32%。次いで港区、中央区と続き(図 2)、都心 3 区
で全体の 69.4%を占める。
建替比率は千代田区 79%、中央区 92%、港区 52%
で平均約 66%となっており、概して高い。
渋谷区
5%
新宿区
5%
江東区
7%
その他
5%
千代田区
31%
品川区
9%
中央区
14%
港区
24%
出所:三鬼商事資料等を基に NREAM 作成
7
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
■2014~2017 年 都心 3 区の区別新規供給量の内訳
(千代田区)
(港区)
2014
年代
2015
6.5
2016
11.0
10.1
4.7
4.0
40%
60%
(万坪) エリア
100%
新規
48%
(%)
虎ノ門
5.7
0%
(万坪)
5.0
4.9
17.4
20%
(万坪)
その他
40%
60%
80%
100%
(参考・新宿区)
2014
2015
5.5
2016
7.0
2017
1.6 (万坪)年代
6.1
建替
建替
3.3
2.7
日本橋室町・日本橋本町
40%
2017
2.6
0.8
建替
60%
80%
39%
大久保
市谷・神楽坂
エリア
1.6 (万坪)
(万坪)
新規
61%
銀座
12.6
20%
2016
3.3
8% (%) 建替
日本橋・八重洲・京橋
エリア
2014
新規
92%
0%
10.8
六本木・麻布
(中央区)
年代
2017
5.9
52%
港南
7.5
80%
2016
8.2
建替
その他
麹町・平河町・紀尾井町
20%
(%)
飯田橋・九段
・富士見
27.3
2015
8.1
建替
21%
大手町・丸の内・有楽町
0%
年代
新規
79%
エリア
(万坪)
15.9
建替
建替
2014
2017
3.8
(%)
新宿
2.6
0.3 (万坪)
その他
100%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
出所:NREAM
2-4 東京ビジネス地区(千代田区・中央区・港区・渋谷区・新宿区)・ 賃貸ビルの今後の動向
供給増加量はピーク時の 6 割程度の水準へ
2014 年以降の都心 5 区のマーケット動向を推定するため、まず、賃貸ビルの供給増加量を試算し
た。直近 4 年間(2009 年~2013 年)の年平均滅失量約 9.5 万坪と同水準の滅失量が今後もあると
仮定した場合、今後 4 年間(2014 年~2017 年)のネット供給増加量は以下のようになる。
■都心 5 区賃貸ビルの供給増加量(2014 年~2017 年・貸室面積)
(万坪)
25
供給増加量
滅失量
20
15
8.1
9.6
9.8
9.5
9.5
9.5
9.5
2014
2015
2016
6.4
10
5
0
2017
出所:三鬼商事資料等を基に NREAM 作成
8
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
年によって滅失量は多少差があるものの、2014~2017 年ネット供給増は平均約 8.5 万坪/年と
2012 年ピーク時(滅失分を考慮したネット供給量 17.9 万坪)の 5 割程度の水準の推移を予想。
需要量は 2011 年以降増加傾向
2011 年以降プラスに転じた需要増加量は 2014 年も堅調。6 月時点で前年の 7 割に達する需要量
■都心 5 区の需要増加量の推移
30
(万坪)
26.2
25
22.3
18.6
18.5
20
14.6
13.4 13.9
15
9.8
10
6.6
5
0
-5
-10
-5.4
-6.0
-10.7
-15
-11.9
-20
出所:三鬼商事資料等を基に NREAM 作成
テナント移転理由の変化
500 坪以上のテナント移転事例において増床・拡大を理由とする移転割合が増加してきている。
また期中に移転のあったテナント移転の約 3 割が BCP 対応を理由とする移転であった。
■テナント移転理由別割合(500 坪以上、件数ベース)
・2012 年 1 月~12 月期
・2014 年度(2013 年 4 月~2014 年 3 月期)
その他
6%
不明
13%
縮小・ 撤退
0%
経費削減
2%
会社合併
統合 売却
3%
購入等
5%
売却
・購入等 その他
0.6%
組織再編
集約
42%
建替え
8%
増床
拡大
21%
会社
合併
統合
1.4%
縮小
撤退
6%
不明
14%
3%
組織再編・
集約
35%
建替え
11%
増床
拡大
30%
出所: 各種公表資料、三鬼商事資料等より NREAM 作成
一方近年テナント移転理由が多様化するとともに BCP、防災・環境性能等移転先ビルに求められ
る条件が高度化していることから、この対応可否による需要の偏り=ビル 2 極化が進展している。
9
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
通常こうした物件は住宅や商業ビルへのコンバージョンによるオフィスマーケットからの消失、ある
いは建替・リニュアルによりマーケットに復帰していくことになるが、近年の建築費上昇の局面にあ
ってはこれも困難な「デッドストック」物件が増加、平均賃料水準上昇の足かせとなる可能性がある。
今後のマーケットは平均空室率のみで捉えられない場合があることに注意が必要であろう。
■都心オフィスエリア 空室率別ビル棟数割合(未竣工ビル除く)
(空室率)
5%未満
5%以上~10%未満
10%以上~20%未満
2014Q1
20%以上~30%未満
2013Q1
30%以上~40%未満
40%以上~50%未満
50%以上
0.0%
5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0%
(棟数割合)
出所:三鬼商事資料等を基に NREAM 作成
2-5 需給バランスの中期見通し
上記の他、需要量、ストック量等の予測前提を整理した上で(※1)都心 5 区平均空室率の中期
予測を行った
■都心 5 区オフィスビル 平均空室率実績と予測値の推移
10.00
9.30
9.00
8.00
自然空室率到達⇒予測賃料反転期
7.00
7.50
実績値
6.00
予測値
5.86
5.00
5.31
4.97
4.00
2016.12
2016.09
2016.06
2016.03
2015.12
2015.09
2015.06
2015.03
2014.12
2014.09
2014.06
2014.03
2013.12
2013.09
2013.06
2013.03
2012.12
2012.09
2012.06
2012.03
2011.12
3.00
※2012.12 及び 2013.12 の空室率は同様の試算前提で前年に行った予測値
出所:三鬼商事、NREAM
10
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
空室率は今後も減少を続け 2016 年内には好況の目安と言われる 5%以下の水準に達すると予想さ
れる。賃料水準については次回賃料反転時の「自然空室率」(※2)を約 6%前後と推定しており、この
水準に到達が予想される 2014 年第 4 半期頃から本格上昇過程に入ると予測する。
■ 平均募集賃料(前四半期差)と空室率の推移
1,000
【左軸】都心5区・募集賃料(前月比) 円
【右軸】都心5区・空室率 %
自然空室率 (賃料反転の目安)
予測
10.0%
9.0%
500
8.0%
7.0%
0
6.0%
-500
05年1Q
5.78%
-1,000
-1,500
14年4-5月
6.46%
14年4Q
5.0%
4.0%
3.0%
01年3Q
3.31%
2.0%
前回(03~07年)と同ペースで空室消化が進むと仮 定
91年2Q
⇒ 平均賃料の本格上昇は14年4Q頃?
0.62%
-2,000
91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14
1.0%
0.0%
出所:三鬼商事、NREAM
**********************************************************************************************
※1 試算前提条件(2014 年末時点予測のケース)
2014 年年間賃貸ビル供給量(貸室面積)
:
15.9 万坪
2014 年年間滅失量(過去 4 年平均想定)
:
9.5 万坪
空室在庫量(2013 年末)
:
52.2 万坪・・・・①
⇒2014 年のネット供給増加量
:
6.4 万坪 (= 15.9 – 9.5)・・・・②
⇒2014 年末の総貸室面積
:
2014 年の需要増加量推定
:
717.8 万坪 (2013 年末時点総貸室面積+②)・・③
16.6 万坪(2012 年~2013 年の平均値)
(①+②-見込需要量)÷③=2014 年末時点想定空室率≒ 5.86%
※2 賃料反転の目安となる経験則的な空室率。賃料水準が空室率の影響を受け決まるという仮定に基づき、
下記の式を想定できる。
「賃料増減率=a+b×空室率+ε(誤差)」
上式につき過去データからの線形回帰により ab 各数値を求めた上、賃料増減率 0%(賃料反転時の
空室率水準を示す)を代入することで求める。
一般的に東京においては 5%前後と言われるが、近年 10P で触れたビル 2 極化傾向の進展等からその水
準は上昇傾向にあると見られる。前回反転局面(2005 年第 1Q)では 5.78%であったが、今回の自然空室
率は以上の計算により 6%超の水準まで上昇していると推定している。
11
Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
3
まとめ
・ 日本経済は回復基調を継続。国内消費に対する消費税実施の影響は想定の範囲内であった
と見られる。すでに景気の先行指標とされる景気ウオッチャー調査の先行き見通しはすでに反
動減からの回復基調を示しており、消費動向も堅調。オフィス需要に関連の深い設備投資・雇
用指標もようやく回復基調へ入ってきた。
・ 需給バランスの見通しについて、供給面では予測対象期間(2014 年~2017 年)後半の大幅供
給増が懸念されたものの、調査の結果当初想定より若干増に留まり、今後 4 年間の新規供給量
はピーク時の 2012 年の約 6 割程度の水準での推移が見込まれる。内訳をみると競争力のある
都心 3 区立地の大規模物件が中心であり、建替比率も高いことから、既存のテナントが還流する
可能性も高い。建物滅失分も考慮すればマーケットへの供給インパクトは限定的と判断する。需
要面では 2011 年以降増加傾向が続いており、企業設備投資や雇用状況の見通しから見ても
相当の需要量発生が期待できる。2017 年初頭まで需給バランスはタイト化に向かうと予測する。
・ ただし中心部における大規模ビル供給増の結果、マーケットの 2 極化の可能性があることには
注意が必要である。BCP(事業継続計画)、環境性能、防災対応等テナント側の移転条件が厳し
くなっていることから、市況回復フェーズでもビルにより需要の濃淡が大きく分かれる可能性があ
る。ビルの運用能力に加え、建築費上昇下にあっても適切なリニュアル、建替えを実施できる資
金量・開発力が今後ビル事業者には求められよう。
・ 東京都心 5 区の空室率は需要回復を背景に 2014 年末に賃料反転の目安となる「自然空室率」
の 6%前後に達し、以降本格賃料上昇期の局面を予測する。J-REIT を中心とするオフィス取引
が活発化し取引水準もリーマンショック直前の水準に近づく一方、テナント需給面ではマーケット
の回復遅れが懸念されていたが、状況は着実に明るくなってきている。
・ 投資・売買市場ではすでにこうした期待値を織り込みながら、活発な取引が展開されている。
J-REIT を牽引役とする 2013 年度の国内売買取引量は 4.2 兆円と 2006 年のリーマンショック
前の水準に近づいてきた。本年末以降の賃料本格上昇局面が、売買取引量のさらなる拡大を
後押しすることを期待したい。
■ 全国商業不動産取引金額の推移
出所:各種公表資料より NREAM 作成
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Japan Real Estate Investment Review – Summer 2014
<内容に関するお問い合わせ先>
野村不動産投資顧問株式会社 リサーチ室
笠原 謙二
本庄 出
東京都新宿区西新宿 8 丁目 5 番 1 号 野村不動産西新宿共同ビル TEL 03-3365-8508
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