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<米国の研究者の1週間あたりの平均労働時間について>
<米国の研究者の1週間あたりの平均労働時間について> このほど、米国科学財団(National Science Foundation)は、米国の研究者の1週間あたりの平 均労働時間の調査結果を発表した。 調査対象は米国内の教育機関(総合大学、単科大学)、政府機関(連邦政府、州政府、その他地方 自治体)、企業等(民間企業、自営業、NGO)、に所属している博士号を所有している常勤の研究者 である。なお、本調査においては単に研究や教育活動に従事している時間だけでなく、事務的な仕事 に従事している時間も含まれる。調査時期は2003年である。 表1は、8つの研究分野に分けて、教育機関、政府機関、企業、それぞれの部門に所属する研究者 の週間平均労働時間を示したものである。 表1 所属機関種別、分野別、週間平均労働時間(2003 年) 全体 研究分野 全分野 労働時間 48.79 教育機関 人数 労働時間 530,962 50.59 民間企業等 人数 254,279 労働時間 47.61 Biological and agricultural sciences 50.53 135,280 52.07 74,893 49.25 Computer and information sciences 49.33 11,035 51.00 5,020 48.15 Engineering 48.64 94,889 52.13 27,365 47.56 Health sciences 49.57 20,649 50.82 12,734 47.76 Mathematical sciences 47.33 24,886 48.65 15,430 45.59 Physical sciences 48.26 103,883 50.65 39,912 47.10 Psychology 46.62 70,334 47.90 32,348 46.19 Social sciences 48.80 70,006 49.68 46,577 48.30 情報源: National Science Foundation/Division of Science Resources Statistics, Survey of Doctorate Recipients, 2003. 人数 政府機関 労働時間 人数 222,136 45.17 54,547 44,947 5,616 59,259 6,002 7,829 52,553 30,161 15,768 46.77 44.84 44.83 46.89 43.08 45.28 42.97 44.45 15,440 399 8,264 1,914 1,627 11,418 7,825 7,661 表1によると全体としても、また、各分野においても教育機関(大学等)に所属する研究者の週間 労働時間が最も多い。分野間で比較すると生物学・農学分野(Biological and agricultural sciences) が最も週間労働時間が多く、数学(Mathematical Science)及び心理学(Psychology)分野が、他 分野とくらべて若干、少ないことが分かる。 (キャリアステージと週間労働時間) 平均週間労働時間は、研究経歴の長さによって も相違がある可能性がある。経歴の浅い段階に おいては、週間平均労働時間よりも更に長い労 働時間が要求される可能性がある。この傾向は、 医療界や法曹界において一般的に見られ、それ らの世界においては新人研修生の週労働時間 は特に長いものとなっている。学術の世界にお いてもテニュアトラックにより就職した初期 の段階においてはかなりの時間的投資が要求 されるのではということが想定される。 しかし、調査結果(図1)は、そうした予想に は反し、学術の世界に関しては、週の労働時間 と博士号取得後の年数、すなわち経験年数との 間には何ら明確な相関関係が存在しないこと が分かった。 教育界及び政府部門においては博士号取得 の年数によって週の平均労働時間が違うとい 図1 博士号取得年別週間労働時間 (博士号取得後経過年数と週間労働時間の関係) 週間平均労働時間 1 博士号取得年 う相違は見られなかった。 産業界に雇用された博士号取得者あるいは自由業の博士号取得者の中でも最近の博士号取得者は 過去の取得者と比較すると若干週の労働時間が短くなっているようである。 (性別と子供の数との関連) 男性は、女性に比べ、週平均0.7時間多く勤務している。この差は、19歳未満の子供が家庭に いることが原因としてあるようだ。その証拠として、19歳未満の子供がいない場合は、男女間にお ける労働時間の差はない。表3のとおり、家庭に子供がいる女性研究者の労働時間は同数の子供がい る男性研究者に比べて、少ないという結果となった(表2)。この傾向は期せずして、 「America Time Use Survey」の結果と類似している。この調査は、18歳以下の子供を持つ働く女性の労働時間は、 同様の条件にある男性に比べて、少ないという結果が出たものである。すなわち、子供の世話をする 時間は、女性の方が多い傾向にあるようだ。 表2 性別及び子供の数別、週間平均労働時間 男性 子供の数 合 計 子供なし 1人 2人 3 人以上 女性 労働時間 人数 Mean 人数 48.97 397,379 48.25 133,583 49.31 48.57 48.44 49.13 208,116 75,052 85,914 28,297 49.35 46.88 46.04 46.56 82,030 25,516 21,621 4,416 (ワシントン研究連絡センター) 2