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音楽を利用した会話の雰囲気改善システムの提案(O) Improved

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音楽を利用した会話の雰囲気改善システムの提案(O) Improved
DEIM Forum 2010 A10-5
音楽を利用した会話の雰囲気改善システムの提案(O)
長谷川文哉†
灘本明代‡
†甲南大学理工学部情報システム工学科 〒658-8501 兵庫県神戸市東灘区岡本 8-9-1
‡甲南大学知能情報学部知能情報学科 〒658-8501 兵庫県神戸市東灘区岡本 8-9-1
E-mail:
あらまし
†[email protected],‡[email protected]
近年,メールやSNSなどのITによるコミュニケーションの発達により,人と人とが面と向かって会話をする
ことが減少している傾向にある.また,ITに頼り過ぎている為に,会話をすることが苦手な人や会話ができない人が増加し
ている傾向にある.そこで本研究では,会話が苦手な人でも会話がはずむ,また会話が弾んでいる時にもっと弾ませることを
目的として,その会話の雰囲気にあった音楽を検索し提供するシステムの提案を行う.具体的には,会話を解析することによ
り,会話の雰囲気や場所,季節などを抽出し,これらの条件にあった音楽を検索して提供する手法の提案を行う.
キーワード 音楽,会話,雰囲気
Improved Conversation Atmosphere System based on Playing Music
Fumiya HASEGAWA† and Akiyo NADAMOTO‡
†Faculty of Science and Engineering
‡Dept. of Intelligence and Informatics
E-mail:
8-9-1 Okamoto, Higashinada-ku, Kobe, Hyogo, 658-8501 Japan
8-9-1 Okamoto, Higashinada-ku, Kobe, Hyogo, 658-8501 Japan
†[email protected], ‡[email protected]
Abstract Recently, face to face communication is on the decline due to the progress of the IT communication tools such as
e-mail, SNS. There are many people who don’t like conversation with other people, because they rely on IT too much. We
consider, it would be convenient to present the music when we can keep up a lively conversation. In this paper, we propose the
system which presents the music that matches up users’ conversation. In particular, we extract the place, atmosphere, and season of
conversation based on analyzing the conversation, the system searches and present the music by using the result of analyzing.
Keyword
recommendation,music,conversation,atmosphere
1.はじめに
本研究では,音声認識を行い,会話から形容詞を抽
近年,誰もが,いつでも,どこでも,簡単にコミュ
出して,各形容詞を上記の感情的性質に分類すること
ニケーションがとれるユビキタス環境の普及に伴い,
により,会話を解析して会話の雰囲気を抽出する.さ
人と人とが面と向かって会話をすることが減少してい
ら に , GPS デ ー タ よ り 会 話 を 行 っ て い る 場 所 , 季 節 等
る傾向にある.また,ITに頼り過ぎている為に,会
の TPO を 抽 出 し ,こ れ ら よ り 今 の 会 話 に あ っ た 音 楽 を
話をすることが苦手な人や,実際に会話をしても会話
抽出し提供するシステムを提案する.
ができない人が増加している傾向にある.そこで本研
縄 田 ら [2]に よ る と ,音 楽 を 聴 い て ,気 分 が 変 化 す る
究では,感情的性質を持つ音楽に着目し会話が苦手な
ことは,多くの人が経験することであり,調,和声,
人でも会話が弾む,また会話が弾んでいる時にもっと
リズム,音の高さなど,さまざまな音楽の性質によっ
弾ませる音楽を提供する事を目的としたシステムの提
て 異 な っ た 気 分 が 生 じ る .一 方 谷 口 ら [3]は ,そ れ ら の
案を行う.具体的には,会話から形容詞を抽出するこ
音楽的性質だけでなく,パーソナリティや音楽の好み
と に よ り ,現 在 の 状 況 を 我 々 の 提 案 す る 6 つ の 感 性( 元
などの個人的特性,音楽を聴く際の個人の心理状態,
気系,闘志系,爽快系,楽しい系,癒し系,リラック
さらに音楽の感情的性格なども,気分に影響する大き
ス系)に分類し,これらに適した音楽を提供すること
な 要 因 で あ る と さ れ て い る .さ ら に 松 本 ら [4]は ,非 常
を 行 う .形 容 詞 は ,悲 し い ,寂 し い ,嬉 し い ,楽 し い ,
に悲しい場合に,悲しい音楽を聴くと,悲しみが低下
騒 々 し い な ど ,感 情 を 表 す 一 連 の 語 で あ る こ と [1]が 知
することを示しており,悲しみが強い時には,悲しい
られているため,我々はその形容詞に着目する.
音楽を好むという傾向を確かめている.このことは,
Copyright ©2009 by
IEICE
悲しみが強い時に,悲しい気分を低下させるというこ
とを表している.これらのことより,本研究では,事
前に用意した音楽作品が,上記の6つの感情的性質の
どれに当たるのかを実際に聴いてもらい,聴いた結果
と歌詞を基に感情的性質を決定する実験を7名のユー
音声認識マイク
ザを対象として行い,その実験結果を基に,各音楽の
感情的性質のデータベースを作成する.そして,この
形容詞抽出
データベースから,その音楽の歌詞に着目し,歌詞に
で て く る TPO と 会 話 の TPO を マ ッ チ ン グ さ せ る こ と
により、その会話の感性的性質にあった音楽作品を提
示する.例えば,夏についての会話であれば提示する
音楽作品の中から夏に関する音楽作品を提示すること
を行う.
楽しい系音楽①
元気系音楽①
楽しい
癒し系音楽①
凄い
らしい
提供する音楽
抽出された形容詞
提案システムは以下の手順で行う.
①
音 声 マ イ ク か ら 音 声 を 取 得 後 ,形 態 素 解 析 を 行 う .
マッチング
その結果から形容詞を抽出する.
②
抽出された形容詞を基に感情的性質を決定する.
③
感情的性質にあった音楽を決定する.
④
③ の 結 果 か ら , TPO に 基 づ き , 音 楽 の 絞 り 込 み を
行う.
⑤
音楽をユーザに提示する.
図1に提案システムの全体図を示す.
以下,第2章では関連研究について,第3章では雰
囲気にあった音楽抽出手法について,第4章では予備
実験と考察について,第5章で評価実験と考察につい
て,そして第6章でまとめについて述べる.
元気系
闘志系
爽デ
快ー
系タ ベ ー ス
感情
楽しい系
癒し系
リラックス系
2.関 連 研 究
音楽
季節
状況
場所
①
夏
朝
海
②
冬
昼
公園
③
秋
昼
山
④
秋
夜
駅
⑤
夏
昼
公園
TPO デ ー タ ベ ー ス
近年,音楽と人間の感情との関係についての研究が
広く行われている.本研究では,会話の雰囲気を抽出
する手法として,形容詞を基にして雰囲気を抽出する
絞り込み
手法を提案する.
大 曽 [1]は , 感 情 を 表 す 形 容 詞 の 提 案 を 行 っ て い る .
楽しい系
そこでは,感情表現とその主体に関する制限,第3者
元気系
の感情の表現,感情的品定めに使われる感情表現,文
癒し系
TPO
副詞としての用法,使役表現の5つにおいての形容詞
季
場
状
節
所
況
に分類しておき,それらを基に会話の雰囲気の抽出を
日
緯
時
行う.
付
経
間
の 感 情 的 意 味 の 違 い に つ い て 述 べ て い る .そ れ に 対 し ,
抽出された感情的性質
本研究では,各形容詞を,元気系,闘志系,爽快系,
楽しい系,癒し系,リラックス系の6つの感情的性質
ま た ,近 年 ,音 楽 と 人 間 の 感 情 と の 関 係 に つ い て の 研
究 も 広 く 行 わ れ て い る .縄 田 ら [2]は ,非 常 に 悲 し い と
きに聴く聴取曲の効果,非常に悲しいときに求める音
楽の感情価,懐かしさの感情がつながるしくみの3つ
においての感情の変化について述べている.また,大
串 ら [5]は ,音 楽 と 感 情 の 関 連 付 け に 際 し て ,感 情 を 区
別している.具体的には,例えばこの音楽は楽しい感
楽しい系音楽①
度
楽しい系音楽②
元気系音楽①
GPS デ ー タ
癒し系音楽①
癒し系音楽②
音楽作品候補
図1:全体のシステム
じを表現していると判断した場合の感情は,音楽の持
聴いてもらい,聴いた結果と歌詞を基に感情的性質を
つ感情的性格をその人の知覚,認知過程によって判断
決定する実験を行い各音楽の感情的性質を決定した.
されていると考えられ,音楽の中に知覚される感情で
音楽データベースは以下の通りである.
ある.一方,音楽を聴くことによって聴取者が楽しく
(1)
元気系⇒17曲
なったり,荘厳な気持ちになったりする感情は,音楽
(2)
闘志系⇒
6曲
によって人間に惹き起こされた感情である.つまり,
(3)
爽快系⇒
3曲
前者は,音楽は聴取者の知覚,認知の対象であり,後
(4)
楽しい系⇒16曲
者は,音楽は聴取者の感情を惹起する刺激であると述
(5)
癒し系⇒17曲
べている.それに対し,本研究では,ユーザに提供す
(6)リ ラ ッ ク ス 系 ⇒ 1 0 曲
る音楽を上記の6つの感情的性質にそれぞれ分類し,
このデータベースを用いて,現在の会話の雰囲気にあ
抽出された形容詞とマッチングさせて,音楽を提供す
った音楽の候補を抽出する.
る手法を行う.
3.3.感 性 的 性 質 に適 合 する音 楽 の決 定
3. 雰 囲 気 にあった音 楽 抽 出 方 法
3.1.会 話 からの感 情 抽 出
感性的性質に適合する音楽の候補を抽出したのち,
そ の 候 補 の 音 楽 の 歌 詞 に 注 目 し ,歌 詞 に で て く る TPO
会話からの感情抽出を行う為に,まず,音声マイク
と GPS デ ー タ に 基 づ い て 音 楽 を 決 定 す る .例 え ば 夏 の
を使用して音声を取得後,音声認識により会話を認識
場合検索された音楽の中から,夏に関する音楽作品の
する.次に,認識した会話を形態素解析し,その中か
みを提供する.
ら感情的意味を持つ形容詞を抽出する.最後に,抽出
具 体 的 に は , ま ず GPS デ ー タ よ り 日 時 か ら 季 節 を ,
された形容詞と感情データベースとのマッチングを行
緯度経度データから場所を,時間から状況(朝,昼,
い,感情的性質を抽出する.ここで抽出する感情的性
夜 )を 求 め ,抽 出 さ れ た 季 節 ,場 所 ,状 況 を TPO と す
質は以下の通りである.
る . 次 に , GPS デ ー タ よ り 抽 出 さ れ た TPO と TPO デ
(1) 元 気 系 : 元 気 の で る , テ ン シ ョ ン の 上 が る , プ ラ
ータベースとのマッチングを行い,抽出された音楽候
ス思考,勇気づく,励まされる
補 の 中 か ら ,上 記 TPO を 含 ん で い る 音 楽 を 提 供 す る 音
(2) 闘 志 系 : 闘 志 を 燃 や す , 目 が 覚 め る
楽 と す る .も し も 上 記 TPO を 含 ん で い る 音 楽 が な い 場
(3) 爽 快 系:爽 快 な ,す っ き り す る ,晴 れ や か ,幸 せ ,
合 は , 3.2 節 で 抽 出 さ れ た 音 楽 候 補 の 内 , 上 位 3 件 を
気持ちいい,さわやか
提 供 す る 音 楽 と す る .尚 , 本 研 究 で の , TPO デ ー タ ベ
(4) 楽 し い 系 : 陽 気 な , 楽 し い , 面 白 い , 愉 快 な
ースとは,各音楽の歌詞を解析し,季節,場所,状況
(5) 癒 し 系 : 癒 し , 心 温 ま る
を決定したものである.
(6) リ ラ ッ ク ス 系 : リ ラ ッ ク ス , 穏 や か , 落 ち 着 く ,
表 1 に TPO デ ー タ ベ ー ス の 一 部 を 示 す .
安心
上記の感情的性質は,被験者7名に対して,あらか
め用意した379個の形容詞の気分の時に,どのよう
以上の方法により,会話が苦手な人でも会話ができ
る,また,会話が弾んでいるときにもっと弾ませるな
ど ,現 在 の 条 件 に あ っ た 音 楽 作 品 を ユ ー ザ に 提 供 す る .
な音楽を聴きたいかを質問し,その回答を感情的性質
に分類して決定した.
4.予 備 実 験 と考 察
本研究での,感情データベースとは,各形容詞が6
本 研 究 を 行 う に あ た り ,感 情 デ ー タ ベ ー ス を 作 成 す
つの感情的性質のどれに該当するかを示しているもの
る為,どんな気分の時にどんな音楽を聴きたいかを決
で あ る .( 例 え ば ,楽 し い は 楽 し い 系 ,慌 た だ し い は リ
定する実験を行った.
ラックス系となる)尚,プロトタイプシステムでは,
①
被 験 者 7 人 に 対 し て ,あ ら か じ め 用 意 し た 3 7 9
個 の 形 容 詞 の 気 分 の 時 に ,ど の よ う な 音 楽 を 聴 き
音 声 認 識 ソ フ ト は AmiVoice ES 2008 を ,形 態 素 解 析 に
たいかを質問し,回答を得た.
は mecab を , デ ー タ ベ ー ス は Mysql を 使 用 し た .
表2に聴きたい音楽の一部を示す.
3.2.感 情 的 性 質 に適 合 する音 楽 の候 補 の検 索
②
① の 結 果 ,聴 き た い 音 楽 の 種 類 が あ ま り に も 多 い
3.1 節 よ り 抽 出 さ れ た 感 情 的 性 質 に 該 当 す る 音 楽 作
と い う 問 題 が 発 生 し た 為 ,聴 き た い 音 楽 を 6 つ の
品を検索する.ここで我々は,あらかじめ感性的性質
感 情 的 性 質 に 分 類 し た .尚 ,6 つ の 感 情 的 性 質 と
は , 3.1 節 で 説 明 し た も の で あ る .
に適合した音楽データベースを作成する.音楽データ
ベースは事前に用意した69曲の音楽が,6つの感情
的性質のどれに当てはまるかを5名のユーザに実際に
③
① と 同 様 の 被 験 者 7 名 に 対 し て ,3 7 9 個 の 形 容
詞の気分の時に②の6つの感情的性質のどの音
楽 を 聴 き た い か を 質 問 し ,回 答 を 基 に 聴 き た い 音
楽を決定した.
表3に各形容詞の感情的性質の一部を示す.
表 1 . TPO デ ー タ ベ ー ス の 一 部
音楽
季節
状況
I Wonder
冬
夜
(DA PUMP)
横顔
夏
夜
(平 井 堅 )
あなた
夏
夜
場所
草原
海
海
(ラルクアンシエ
ル)
Pieces
(ラルクアンシエ
ル)
くじら12号
(Judy And Mary)
ごきげんだぜ
(DA PUMP)
スターフィッシュ
(ELLEGARDEN)
告白
(FUNKY MONKEY
BABYS)
Motto
(Judy And Mary)
表2.聴きたい音楽結果の一部
聴きたい
形容詞
音楽
楽しい
テ ン シ ョ ン 欲しい
の上がる
面白い
穏やかな
苦しい
歯痒い
激しい
辛い
凄い
落ち着いた
寂しい
も っ た い な 寂しい
だるい
い
嬉しい
明るい
怖い
形容詞
懐かしい
夏
夜
海
冬
夜
城
夏
朝
クラブ
冬
夜
駅
冬
夜
秋
夜
照れ臭い
言い難い
好ましい
心強い
思い出に浸
れる
勇気づける
勢いのつく
陽気な
勢いのある
憎らしい
落ち着いた
心地好い
望ましい
穏やかな
希望に満ち
あふれた
目が覚める
興味深い
しつこい
あきらめの
つく
落ち着いた
恐ろしい
恨めしい
今回の予備実験の結果より,まず全体的に,各形容
仕方ない
渋い
素晴らしい
恥ずかしい
有りがたい
悔しい
うっとうし
い
悲しい
浅ましい
幼い
聴きたい
音楽
穏やかな
励まされる
励まされる
盛り上がる
爽快な
とにかく明
るい
勢いのつく
面白い
落ち着いた
諭す感じ
爽快な
応援してく
れる
変わった
激しい
びっくりす
る
とにかく明
るい
大人っぽい
詞 の 気 分 に 近 い 意 味 を も つ 感 情 的 性 質 の 場 合( 例 え ば ,
楽しい時は楽しい系,心地好い時はリラックス系とな
る)には,形容詞の気分に近い感情的性質がなりたい
気分として選択されることが多い傾向にあった.また
各形容詞の気分とは反対に近い意味を持つ感情的性質
の場合(例えば,しんどい時は元気系,ややこしい時
はリラックス系となる)には,反対に近い意味を持つ
感情的性質が選択されることが多い傾向にあった.次
に各感情的性質に関して,辛い時や情けない時など気
分が沈んでいる時や落ち込んでいる時には楽しい系と
元気系を,うるさい時や腹立たしい時など気持ちが荒
れている時にはリラックス系を,悔しい時や心憎い時
など気持ちを奮い立たせる時には闘志系を,愛らしい
時や忙しい時など気分が落ち着く時と落ち着いていな
い時には癒し系を,誇らしい時や晴れがましい時など
誇らしい気分の時には爽快系を,それぞれ選択するこ
とが多い傾向にある.
5.評 価 実 験 及 び考 察
本システムを使用して,本研究の目的を達成できる
かどうかを調べる為,被験者5名に対して評価実験を
行った.実験内容としては,私が用意した3つの状況
(① 会 話 が 弾 ん で い る 状 況 ,② 会 話 が 弾 ん で い な い 状 況 ,
③ 普 段 の 会 話 で の 状 況 )に お い て ,音 楽 を 流 す 前 と 後 で ,
表3.形容詞の感情的性質分類結果の一部
形容詞
感情的性質
形容詞
感情的性質
楽しい
楽しい系
欲しい
元気系
面白い
楽しい系
苦しい
リラックス
系
歯痒い
楽しい系
辛い
楽しい系
凄い
元気系
寂しい
元気系
も っ た い な 元気系
だるい
爽快系
い
嬉しい
楽しい系
怖い
リラックス
系
懐かしい
癒し系
素晴らしい
爽快系
照れ臭い
楽しい系
恥ずかしい
元気系
言い難い
闘志系
有りがたい
爽快系
好ましい
爽快系
悔しい
闘志系
心強い
元気系
うっとうし リラックス
い
系
憎らしい
リ ラ ッ ク ス 悲しい
元気系
系
心地好い
リ ラ ッ ク ス 興味深い
癒し系
系
望ましい
爽快系
しつこい
リラックス
系
恨めしい
癒し系
浅ましい
元気系
仕方ない
癒し系
恐ろしい
楽しい系
渋い
爽快系
幼い
楽しい系
以下の質問に対して5段階評価してもらう実験である.
質問①会話が弾むようになったか
①ユーザが音楽を選択できる点
これは,現在の雰囲気にあう音楽をシステムを使っ
質問②雰囲気はよくなったか
てランダムに1曲選択し流すのではなく,ユーザに現
質問③システムは使いやすかったか
在の雰囲気にあう音楽作品の一覧を提供し,ユーザが
質問④雰囲気にあった音楽を提供できていたか
一覧の中から音楽を選択できる本システムが高く評価
表4に質問①の実験結果を,表5に質問②の実験結果
された結果だということがわかる.
を,表6に質問③の実験結果を,表7に質問④の実験
②音楽を流すことにより,会話が弾まないことはなか
結果をそれぞれ示す.尚,表4,表5の左の行の①~
③の数字は状況①~③を,表の中の数字はチェックし
た人数をそれぞれ示している.
った
3つの状況すべてにおいて,全然弾まなかったある
いはあまり弾まなかったにチェックする被験者はいな
かった.このことは,問題点はまだあるものの本シス
①
②
③
表4.質問①に対する実験結果
全然弾 あまり どちら 少し弾
ま な か 弾 ま な で も な んだ
かった い
った
0
0
0
5
0
0
3
1
0
0
2
2
テムが,本研究の目的を果たしているということを示
かなり
弾んだ
0
1
1
している.
また,悪かった点として以下のものがあった.
①会話認識の際に形容詞が認識されず,音楽のリスト
を提示することができなかった
本システムは会話から形容詞を抽出し,抽出された
形容詞より現在の会話の雰囲気を抽出している.逆に
①
②
③
表5.質問②に対する実験結果
全然良 あまり どちら 少し良
くなら 良くな でもな くなっ
なかっ らなか い
た
た
った
0
0
0
2
0
0
2
2
0
0
3
1
言えば,会話から形容詞を抽出できなければ,本シス
かなり
良くな
った
3
1
1
テムは意味をなさないこととなる.評価実験の際にこ
のような失敗が起こった.このことから,今後は形容
詞以外で現在の雰囲気を抽出する方法の検討が必要で
ある.
②提示する音楽に問題があった
具体的に言えば,提示した音楽作品が同じ歌手の音
楽ばかりであったり,提示した音楽を見てもパッとす
使 い づ
ら か っ
た
0
表6.質問③に対する実験結果
少 し 使 ど ち ら ま あ ま
い づ ら で も な ま 使 い
かった
い
や す か
った
0
0
5
る音楽がなかったということである.このことより,
か な り
使 い や
す か っ
た
0
今後は音楽作品の増加はもちろんのこと,様々な歌手
の音楽や様々なジャンルの音楽の増加も必要である.
また,改善点として以下のものがあった.
①知っている音楽を増やして,音楽を自分で選択する
のではなく,みんなが知っているであろうサビの部分
全 然 で
き て い
ない
0
表7.質問④に対する実験結果
あ ま り ど ち ら ま あ ま
で き て で も な ま で き
いない
い
ている
0
2
3
をランダムで流し続けるという風にしたらさらに使い
か な り
で き て
いる
0
表4,表5の結果より,どちらでもないにチェック
をいれた被験者はいるものの,全体的に少し弾んだ,
かなり弾んだ,少し良くなった,かなり良くなったに
チェックを入れた被験者が多く,また全然弾まなかっ
た,あまり弾まなかった,全然良くならなかった,あ
まり良くならなかったにチェックをいれた被験者がい
ないことから,本システムは本研究の目的を果たして
いると言える.しかし,先ほども述べたように,どち
らでもないにチェックをいれた被験者もいる為,本シ
ステムはさらに改善の余地があるともいえる.
また,良かった点として以下のものがあった.
やすくなると思う
①に関しては,ユーザが音楽を選択できる点が高く
評価された為,実現は難しいように感じるが,今後改
良するにあたって①の方法の検討も行う余地があると
感じた.
② 最 初 に , 音 楽 の カ テ ゴ リ ー (レ ゲ エ , ラ ッ プ な ど )を
選択できればよいと思う,
曲名と歌手名だけでなく,音楽のカテゴリーも提示
したらユーザも音楽を選びやすいという意見もあった
為,今後システムを改良する際には,②の方法も検討
するべきだと感じた.
6.まとめ
近年の携帯電話のメールやSNSなどのITによる
コミュニケーションの発達による,人と人とが面と向
かって会話をすることの減少や,ITに頼り過ぎてい
た為に,いざ会話をしても会話ができない,会話が苦
手な人が増加している傾向にあるなどの,現代の問題
を解決することを目的とし,本論文では,音声認識に
よって会話を解析することにより,会話の雰囲気や場
所,季節などを抽出し,これらの条件にあった音楽を
検索して提供する手法の提案を行った.また,会話の
雰囲気抽出に際し,感情的性質を持つ形容詞に着目し
て ,形 容 詞 を 基 に し て ,会 話 の 雰 囲 気 を 抽 出 し た .尚 ,
本研究では,感情的性質を①元気系,②闘志系,③爽
快系,④楽しい系,⑤癒し系,⑥リラックス系の6つ
とした.また,ユーザに提供する音楽作品が多いとい
う問題に直面した為,音楽作品候補の歌詞に出てくる
TPO と GPS デ ー タ よ り 日 付 か ら 季 節 , 時 間 か ら 状 況 ,
緯度経度から場所を求め,それらをマッチングされる
ことにより音楽作品の絞り込みを行い,ユーザに現在
の雰囲気にあう音楽作品を提供した.
今後の課題としては,主に以下の2点が挙げられる.
①形容詞以外で現在の雰囲気を抽出する方法の検討
②音楽作品及びジャンル,歌手の増加
①に関しては,例えば形容詞以外で名詞も抽出し,
名詞から場所等認識して該当する音楽作品候補を抽出
する方法などが考えられる(例えば,津軽海峡が認識
されたなら,津軽海峡冬景色を提供する音楽作品の候
補 と す る ).② に 関 し て は ,音 楽 作 品 の 増 加 や 様 々 な 歌
手の音楽作品を音楽データベースに落とし込むことは
容易である.また,ジャンルに関しては,ユーザに音
楽作品を提供した際に,それぞれの音楽作品のジャン
ルも記載してほしいとの意見があった為(例えば,
EXILE の Choo choo train は ポ ッ プ ,大 塚 愛 の プ ラ ネ タ
リ ウ ム は バ ラ ー ド な ど ),提 供 し た 音 楽 作 品 の 一 覧 の 中
にジャンルも一緒に記載する方法や,単純に音楽デー
タ ベ ー ス の 中 に ,様 々 な ジ ャ ン ル の 音 楽 作 品 を 入 れ る ,
提供する音楽作品候補を各ジャンルに分類して,その
ジャンルの中から数曲ずつ提供する方法など,提案シ
ステムを改良する余地はあると感じた.
今 後 は ,移 動 中 特 別 な GPS 機 能 を 持 た な く と も 携 帯
電話で気軽に会話に適した音楽が聴けるように,
i-Phone 等 を 対 象 と し た シ ス テ ム の 改 良 を 行 う 予 定 で
ある.
謝辞
本 研 究 の 一 部 は ,平 成 2 1 年 度 科 研 費 特 定 領 研 究 域「 コ
ミュニティ型コンテンツのコンテンツホール検索に関
す る 研 究 」( 課 題 番 号:21013044,代 表:灘 本 明 代 )及
び甲南大学平生太郎基金科学研究奨励助成金による.
ここに記して謝意を表します.
文
献
[1] 大 曽 美 恵 子 ,“ 感 情 を 表 す 動 詞 ・ 形 容 詞 に 関 す る
一考察”,言語文化論集 第ⅩⅩⅡ巻 第2号,
vol.22, no.2, pp.21-30, 2001.
[2] 縄 田 友 香 ,“ 感 情 変 化 に も た ら す 音 楽 の 効 果 と 関
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h='縄 田 友 香 感 情 変 化 に も た ら す 音 楽 の 効 果 と
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[3] 谷 口 高 士 ,“ 音 楽 作 品 の 感 情 価 測 定 尺 度 の 作 成 及
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研 究 第 65 巻 第 6 号 , pp.463-470, 1995.
[4] 松 本 じ ゅ ん 子 ,“ 音 楽 の 気 分 誘 導 効 果 に 関 す る 実
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育 心 理 学 研 究 , pp.23-32, 2002.
[5] 大 串 健 吾 ,”音 楽 と 感 情 ”,バ イ オ メ カ ニ ズ ム 学 会
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Fly UP