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2 少子化の流れを変える社会づくり

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2 少子化の流れを変える社会づくり
第1章 第3節
2
少子化の流れを変える社会づくり
2 少子化の流れを変える社会づくり
1 少子化の現状
本県の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子どもの数)は、1971 年の 2.28 をピー
クに、2003 年の 1.32 まで低下傾向にありましたが、その後は緩やかな上昇傾向にあり、
2014 年には 1.46 まで回復しています。この値は、全国(1.42)や他の大都市圏(東京 1.15、
神奈川 1.31、大阪 1.31、兵庫 1.41)に比べ高くなっているものの、安定的に人口を維持
できると言われている2.07 を大きく下回っています。
出生数についても、
1973 年の125,395
人をピークに、減少傾向が続いており、2014 年には 65,218 人と、ピーク時の半分程度に
まで落ち込んでいます(図表3-2-1)
。
それに伴い、年少(0~14 歳)人口割合も減少し、2014 年は過去最低の 14.0%となって
おり、少子化傾向が続いています(図表3-2-2)
。
図表3-2-1 出生数及び合計特殊出生率の年次推移
140,000
2014年
出生数:65,218人
合計特殊出生率:1.46
2.60
2.40
2.20
2003 年
合計特殊出生率:1.32(最低)
100,000
2.00
80,000
合計特殊出生率
出生数(人)
120,000
1973年
出生数:125,395人(過去最多)
1.80
60,000
1.60
40,000
20,000
1.40
1971 年
合計特殊出生率:2.28
1.20
1.00
0
(年)
出生数(愛知県)
合計特殊出生率(愛知県)
合計特殊出生率(全国)
出典:厚生労働省「人口動態統計」
、
厚生省人口問題研究所「都道府県別人口の出生力に関する主要指標 1970 年~1985 年」
図表3-2-2 年少人口・年少人口割合の推移(愛知県)
年少人口
年少人口割合
16.0
1,100
15.5
1,080
15.0
1,060
14.0
14.5
14.0
1,040
1,041
1,020
13.5
13.0
12.5
1,000
(年)
出典:総務省「人口推計」
75
年少人口割合(%)
年少人口(千人)
16.5
1,120
第1章 第3節 2
少子化の流れを変える社会づくり
2 少子化の原因・背景
(1)未婚率の上昇・晩婚化・晩産化の進行
本県の年齢階級別未婚率について、30 歳代前半の未婚率を見ると、1980 年では、男性が
20.0%、女性が 6.3%となっていましたが、2010 年では、男性が 45.9%、女性が 29.8%と
なっており、大きく上昇しています(図表3-2-3)
。
本県の平均初婚年齢も上昇し続けており、2014 年には、夫 30.8 歳、妻 28.9 歳と、1950
年と比較し、夫は 5.1 歳、妻は 6.2 歳高くなっています(図表3-2-4)
。
また、晩婚化の影響を受けて、晩産化も進んでいます。本県の出生したときの母の平均
年齢を見ると、2014 年においては、第1子が 30.3 歳、第2子が 32.3 歳、第3子が 33.4
歳であり、上昇傾向が続いています(図表3-2-5)
。
図表3-2-3 男女別・年齢階級別未婚率(25~39 歳)の推移
女性
男性
80%
80%
70%
60%
50%
70%
71.4%
60%
55.2%
47.3%
55.6%
40%
45.9%
35.6%
30%
34.3%
20%
0%
7.4%
1980
1985
1990
1995
2000
2005
56.0%
40%
30%
25~29歳(愛知県)
25~29歳(全国)
30~34歳(愛知県)
30~34歳(全国)
35~39歳(愛知県)
35~39歳(全国)
20.0%
8.5%
60.3%
50%
21.5%
10%
25~29歳(愛知県)
25~29歳(全国)
30~34歳(愛知県)
30~34歳(全国)
35~39歳(愛知県)
35~39歳(全国)
71.8%
2010(年)
34.5%
29.8%
24.0%
23.1%
20%
10%
0%
19.0%
17.3%
9.1%
6.3%
5.5%
4.0%
1980
1985
1990
1995
2000
2005
出典:総務省「国勢調査」
図表3-2-4 男女別初婚年齢の推移
(歳)
32
31.1
31
30.8
30
29.4
29
28.9
28
27
26
25
24
23
22
25.9
愛知県(夫)
愛知県(妻)
25.7
全国(夫)
23.0
全国(妻)
22.7
1950
1960
1970
1980
1990
2000
出典:厚生労働省「人口動態統計」
76
2006
2008
2010
2012
2014(年)
2010(年)
第1章 第3節
2
少子化の流れを変える社会づくり
図表3-2-5 母の平均出生時年齢の年次推移(愛知県)
(歳)
34
33.4
32
32.3
31.5
30
30.3
29.3
第1子出生時の母の平均年齢
28
第2子出生時の母の平均年齢
第3子出生時の母の平均年齢
27.2
26
1995
(年)
2000
2005
2010
2011
2012
2013
2014
出典:厚生労働省「人口動態統計」
(2)夫婦の子どもの数の減少
夫婦の最終的な平均出生子ども数とみなされる、夫婦の完結出生児数(全国)は、2005
年から減少傾向にあり、直近の「出生動向基本調査」
(2010 年)の結果では 1.96 人となっ
ています。半数を超える夫婦が2人の子どもを生んでいる一方で、子ども0人の夫婦及び
子ども1人の夫婦が増加しており、子ども2人未満の夫婦が2割を超えています。逆に3
人以上の子どもを生んだ夫婦は減少しており、出生子ども数3人の割合は2割を下回って
います(図表3-2-6)
。
図表3-2-6 出生子ども数分布の推移(結婚持続期間 15~19 年)
(全国)
出生子ども数の分布(%)
完結出生児数
0人
1人
2人
3人
4人以上
第7回調査 (1977 年)
3.0
11.0
57.0
23.8
5.1
2.19 人
第8回調査 (1982 年)
3.1
9.1
55.4
27.4
5.0
2.23 人
第9回調査 (1987 年)
2.7
9.6
57.8
25.9
3.9
2.19 人
第 10 回調査(1992 年)
3.1
9.3
56.4
26.5
4.8
2.21 人
第 11 回調査(1997 年)
3.7
9.8
53.6
27.9
5.0
2.21 人
第 12 回調査(2002 年)
3.4
8.9
53.2
30.2
4.2
2.23 人
第 13 回調査(2005 年)
5.6
11.7
56.0
22.4
4.3
2.09 人
第 14 回調査(2010 年)
6.4
15.9
56.2
19.4
2.2
1.96 人
出典:国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」
次に、出生する子ども数と結婚年齢の関係を見ると、平均出生子ども数は夫妻の結婚年
齢が高いほど少ない傾向が見られます。例えば、結婚持続期間 15~19 年の夫婦では、妻の
結婚年齢が 20~24 歳の夫婦では平均出生子ども数が 2.08 人であるのに対し、25~29 歳で
は 1.92 人、30~34 歳では 1.50 人となっており、晩婚化は夫婦の子ども数を低下させるこ
とにつながっています(図表3-2-7)
。
77
第1章 第3節 2
少子化の流れを変える社会づくり
図表3-2-7 夫妻の結婚年齢別にみた、結婚持続期間別、平均出生子ども数(全国)
夫の結婚年齢別
妻の結婚年齢別
1.99
1.91
1.63
1.73
1.5
1.0
0.5
2.19
2.16
2.0
2.5
平均出生子ども数(人)
平均出生子ども数(人)
2.5
1.95
2.0
1.81
1.39
0.95
1.21
1.0
0.73
20~24歳
0.64
25~29歳
0.5
0.97
5~9年
10~14年
1.92
1.50
1.50
1.31
1.16
20~24歳
25~29歳
0.77
0.66
35~39歳
30~34歳
35~39歳
0.38
0.0
0~4年
1.87
0.69
30~34歳
0.51
2.08
1.62
1.5
1.47
2.09
1.88
0.0
15~19年
0~4年
結婚持続期間
5~9年
10~14年
結婚持続期間
15~19年
出典:国立社会保障・人口問題研究所「第 14 回出生動向基本調査」
(2011 年 10 月)
注:対象は初婚同士の夫婦(出生子ども数不詳を除く)
また、本県の「少子化に関する県民意識調査」
(2013 年度)によると、理想の子ども数
(2.48 人)と予定子ども数(2.07 人)との間に差(0.41 人)が生じており、夫婦が理想
の子ども数を持てていない状況があります。その理由として最も多いのは、
「子育てや教育
にお金がかかりすぎるから」
(54.9%)となっており、特に 20 歳代、30 歳代でそう回答す
る割合が高くなっています(図表3-2-8)
。
図表3-2-8 予定子ども数が理想子ども数を下回る理由(愛知県)
54.9
子育てや教育にお金がかかりすぎるから
21.4
18.4
働きながら子育てができる職場環境がないから
自分や配偶者が高年齢で、産むのがいやだから
17.9
雇用が安定していないから
自分の仕事(勤めや家業)に差し支えるから
16.1
12.5
11.8
健康上の理由から
自分や配偶者が育児の負担に耐えられないから
子どもがのびのび育つ社会環境でないから
10.9
8.9
欲しいけれども今のところまだ赤ちゃんを授からないから
8.2
8.1
自分や夫婦の生活を大切にしたいから
保育サービスが整っていないから
家が狭いから
7.7
7.4
妊娠・出産のときの身体的・精神的な苦痛が嫌だから
5.8
5.1
配偶者の家事・育児への協力が得られないから
配偶者が望まないから
その他
特にない
わからない
無回答
16.5
2.5
1.1
3.0
0
出典:愛知県「少子化に関する県民意識調査」
(2014 年3月)
78
10
20
30
40
50
60(%)
第1章 第3節
2
少子化の流れを変える社会づくり
3 少子化の流れを変えるための愛知の取組
(1)若者の経済的安定
安心して子どもを生み育てることができる環境をつくるためには、若者が社会人として
経済的にも精神的にも自立し、就労や結婚・出産・子育てを積極的に捉えることが重要で
す。このため、若者のニーズに合った就労支援を行うとともに、結婚を望む若者への支援
を行っていく必要があります。
雇用形態別の未婚者の割合(全国)を見ると、特に男性については、正規の職員・従業
員の 30~34 歳が 36.1%、35~39 歳の 25.2%に対し、非正規の職員・従業員の 30~34 歳
が 71.7%、35~39 歳が 64.9%と大きな開きが見られるなど、雇用の安定・経済的安定が
結婚に与える影響が大きいことがうかがえます(図表3-2-9)
。
図表3-2-9 雇用形態別の未婚者の割合(全国)
女性
男性
100%
就業者全体
自営業主・家族従業者
正規の職員・従業員
非正規の職員・従業員
完全失業者
90%
80%
70%
100%
就業者全体
自営業主・家族従業者
正規の職員・従業員
非正規の職員・従業員
完全失業者
90%
80%
70%
歳
65以上
~
60 歳
64
~
55 歳
59
~
50 歳
54
~
45 歳
49
~
40 歳
44
~
35 歳
39
~
30 歳
34
~
25 歳
29
~
20 歳
24
~
15 歳
19
歳
65以上
~
60 歳
64
~
55 歳
59
~
50 歳
54
0%
~
45 歳
49
10%
0%
~
40 歳
44
20%
10%
~
35 歳
39
30%
20%
~
30 歳
34
40%
30%
~
25 歳
29
50%
40%
~
20 歳
24
60%
50%
~
15 歳
19
60%
出典:総務省「2014 年労働力調査年報」
本県では、若者の勤労観を育み、職場定着へとつなげられるよう、小・中・高等学校等
を通じた体系的・系統的なキャリア教育を推進しているほか、若者の就労支援に取り組ん
でいます。大学生に対しては、雇用のミスマッチを避けるため、中小企業の経営者との意
見交換や職場体験の機会を提供するとともに、大学生向けの面接会や合同企業説明会を開
催し、新規学卒者の就職機会の拡大を図っています。また、離転職者、学校中退者などの
若年未就職者に対しては、職業に必要な基礎的な知識・技能を習得させるための職業訓練
を高等技術専門校で実施しています。
(2)結婚を希望する人への支援
本県の「少子化に関する県民意識調査」
(2013 年度)によると、結婚に関しては、独身
者の約9割が「いずれ結婚する意思がある」ものの、
「結婚したい相手にまだめぐり会わな
いから」などの理由から、結婚していない現状があります。
かつては、ある年齢になると職場や親戚などの紹介により、結婚相手に出会える機会が
多くありましたが、時代の変化により、家庭・地域・職場の果たしてきた役割が低下して
きており、行政を含め、社会全体で結婚をサポートする取組が求められています。
79
第1章 第3節 2
少子化の流れを変える社会づくり
本県では、これまで、出会いサポートポータルサイトを運営し、市町村や非営利団体が
主催する婚活イベント情報を掲載するなどの結婚支援を行ってきましたが、今後は、2016
年2月に企業間の情報交換の機能等を追加し新たに構築した結婚支援ウェブシステムを活
用して、企業などと連携した更なる出会いの場の創出を図っていきます(図表3-2-10)
。
図表3-2-10 結婚支援ウェブシステムイメージ
(3)ワーク・ライフ・バランスの推進・男性の働き方の見直し
共働き世帯が増加する中で、安心して子どもを持ち、子育てしながら働き続けられるよ
うにするためには、男女が共に人生の各段階に応じて、多様で柔軟な働き方を選択するこ
とができる職場環境の整備など、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の実現
が重要となります。
国が実施した「第 12 回 21 世紀成年者縦断調査」
(2015 年)によれば、夫の休日の家事・
育児時間が長いほど、第2子以降の子どもの出生割合が高くなるという結果が得られてい
ます(図表3-2-11)
。
図表3-2-11 子供がいる夫婦の夫の休日の家事・育児時間別にみたこの 11 年間の第2子以降の出生の状況
出生あり
出生なし
43.4
56.6
総数
88.1
11.9
育児時間なし
71.0
29.0
2時間未満
43.9
56.1
2時間以上4時間未満
27.9
72.1
4時間以上6時間未満
20.0
80.0
6時間以上
0%
20%
40%
60%
80%
100%
出典:厚生労働省「第 12 回 21 世紀成年者縦断調査」
(2015 年)
)
注:1.集計対象は①または②に該当し、かつ③に該当する同居夫婦(妻の出生前データが得られていない夫婦は除く。
①第1回調査から第 12 回調査まで双方が回答した夫婦
②第1回調査時に独身で第 11 回調査までに結婚し、結婚後第 12 回調査まで双方が回答した夫婦
③出生前調査時に子どもが1人以上いる夫婦
2.家事・育児時間は、
「出生あり」は出生前調査時の、
「出生なし」は第 11 回調査時の状況である。
3.11 年間で2人以上出生ありの場合は、末子について計上している。
4.「総数」には、家事・育児時間不詳を含む。
80
第1章 第3節
2
少子化の流れを変える社会づくり
そのため、本県では、子育てしながら働き続けられる職場環境の整備に向けて、企業の
経営者等に「ワーク・ライフ・バランス」への理解を促すとともに、
「イクメン*」
・
「イク
*
ボス 」の普及拡大を呼びかけるなど、社会的気運の醸成を図る取組を進めています。
具体的には、本県が中心となり、労使団体や他の行政機関等とともに設置した「あいち
ワーク・ライフ・バランス推進協議会」
で定めた11月第3水曜日の
「県内一斉ノー残業デー」
などへの取組を、企業等に呼びかける運動の実施などに、官民一体となって取り組んでい
ます。
また、2014 年には協議会のもとに「あいちイクメン応援会議」を設置するとともに、2015
年8月には愛知県知事をはじめ、協議会構成団体トップが「人が輝くあいち・イクボス宣
言」を行うなど、
「イクメン」
・
「イクボス」の普及拡大に向けた取組も進めています。
更に、従業員が、仕事と育児・地域活動など仕事以外の生活を両立できるよう積極的に
取り組む「愛知県ファミリー・フレンドリー企業」の普及拡大も図っています。
《あいちワーク・ライフ・バランス推進協議会》
○構成員
有識者
労 働 団 体:日本労働組合総連合会愛知県連合会
経 済 団 体:愛知県商工会議所連合会,愛知県経営者協会、愛知県中小企業団体中央会、愛知県商工会連合会
行政機関等:愛知労働局、名古屋市、愛知県、(公財)愛知県労働協会
○主な活動
仕事と生活の調和実現に向けた職場環境の整備促進にあたり、2016 年2月に策定した「あいち仕事と生活の調
和行動計画 2016-2020」に基づき、官民一体となった取組を進める。
《あいちイクメン応援会議》
○構成員
有識者
労働団体:日本労働組合総連合会愛知県連合会
経済団体:愛知県経営者協会
企
業:中小企業経営者、企業担当者
行政機関:愛知県
○主な活動
男性の仕事と育児等との両立支援に関し、会議での意見を、県の施策や取組、官民の連携協働による啓発活動
に反映するとともに、専用ホームページを活用し情報発信を行う。
(4)保育サービス・放課後児童対策の充実
(保育サービスの充実)
全ての子ども・子育て家庭を支援するとともに、子どもの成長に応じて必要なサービス
が確実に利用できるよう、子育て支援策を充実させていくため、働きながら子育てができ
る環境づくりが求められます。
なかでも、待機児童の解消が大都市部を中心に大きな課題となっています。本県では、
保育所の整備を促進するなどの取組により、
2010 年からの5年間で保育所の定員が 13,007
人増え(図表3-2-12)
、名古屋市を中心に待機児童数は大きく減少していますが、入所希
望児童が増え続けていることもあり、
待機児童の解消には至っていません
(図表3-2-13)
。
81
第1章 第3節 2
少子化の流れを変える社会づくり
図表3-2-13 待機児童数(愛知県)
図表3-2-12 定員及び保育所数の推移(愛知県)
保育所数
160,000
1,400
149,981
1,300
1,295
1,183
1,100
130,000
1,422
1,400
1,207
1,200
1,000
800
1,200
140,000
保育所数(ヶ所)
定員(人)
162,988
定員
150,000
(人)
1,600
1,500
170,000
600
744
452
400
120,000
2010
2011
2012
2013
2014
1,000
2015(年)
0
出典:厚生労働省「福祉行政報告例」
注:各年4月1日現在
165
107
200
2010
2011
2012
2013
2014
2015(年)
出典:厚生労働省「保育所入所待機児童数」
注:各年4月1日現在
そこで、教育・保育の量の更なる拡充を図るため、教育・保育施設(認定こども園、幼
稚園、保育所)の計画的な整備や地域型保育事業の認可など、市町村が地域の様々な状況
に合わせた保育の場を提供する取組を支援しています(図表3-2-14)
。
図表3-2-14 地域型保育事業の種類
種類
概要
家庭的保育
家庭的な雰囲気のもとで、少人数(定員5人以下)のきめ細かな保育を実施
小規模保育
少人数(6人~19 人)を対象に、家庭的保育に近い雰囲気のもと、きめ細かな保育を実施
事業所内保育
会社の事業所の保育施設などで、従業員の子どもと地域の子どもとを一緒に保育を実施
居宅訪問型保育
障害、疾患などで個別のケアが必要な場合や、施設がなくなった地域で保育を維持する必要があ
る場合などに、保護者の自宅で1対1の保育を実施
また、多様な保育ニーズに対応するため、病中や病気の回復期にある子どもを病院・診
療所、保育所などで一時的に預かる病児・病後児保育、保護者の多様な就労形態に対応し
た休日保育や延長保育が提供されるよう、市町村に働きかけています。このうち、保護者
から特にニーズの高い病児・病後児保育については、2014 年度から、県がファミリー・サ
ポート・センター*を活用したモデル事業を実施してきましたが、その取組の全県的な普
及を図っています。
併せて、保育士の資格を持ちながら保育所などで就労していない潜在保育士の再就職を
支援するなど、保育士の確保に努めるとともに、現在の保育士に対する研修を充実させ、
地域の子育て支援や障害児保育などの多様な保育ニーズに対応できるよう、保育士の専門
性や実践力などの資質の向上に努めています。
(放課後児童対策の充実)
保育所を卒園した後に子どもを預ける場所がないという、いわゆる「小1の壁」が課題
となっていますが、本県の支援などにより、2010 年からの5年間で、放課後児童クラブの
82
第1章 第3節
2
少子化の流れを変える社会づくり
実施箇所数は 194 箇所、登録児童数は 10,837 人増加しています(図表3-2-15)
。しかし
ながら、放課後児童クラブに登録できない児童の解消には至っていないことから、本県で
は、放課後児童クラブの受け皿を 2019 年末までに新たに約1万人分確保することを目標と
して、計画的な整備などを進めています(図表3-2-16)
。加えて、市町村などへの支援を
通じて、開所時間の延長や職員配置の充実など、放課後児童クラブの施設運営の質の向上
を図っています。
図表3-2-15 放課後児童クラブの実施箇所数
及び登録児童数の推移(愛知県)
46,569 1,200
登録児童数
46,000
箇所数
1,150
44,000
41,174
42,000
40,000
38,406
38,000
36,000
35,732
36,288
1,050
1,080
36,600
1,100
1,000
1,026
950
2011
900
2015 (年)
30,000
2012
786
800
700
567
600
500
462
427
458
376
300
200
976
943
2010
(人)
900
400
1,004
34,000
32,000
1,137
実施箇所数(箇所)
登録児童数(人)
48,000
図表3-2-16 放課後児童クラブの待機児童数
(愛知県)
2013
2014
100
0
2010
2011
2012
2013
2014
2015(年)
出典:厚生労働省「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)実施状況」
注 :箇所数、登録児童数、待機児童数は、各年5月1日現在
(5)子育て世帯への経済的支援
本県の「少子化に関する県民意識調査」
(2013 年度)によると、期待する育児支援策と
して、約5割の方が「経済的支援の充実」と回答しており、子育てへの経済的負担感を軽
減する取組を推進していく必要があります。
本県では、これまで教育費、医療費の軽減のほか各種手当などにより、子育て家庭への
経済的支援を実施してきましたが、更に、保育料の高い3歳未満児のうち、第3子以降の
子どもの満3歳到達年度末までの保育料の無料化を継続していくとともに、私立幼稚園に
対する授業料などの軽減補助、私立高等学校に通う生徒の授業料の負担軽減などにより、
子育て家庭への経済的負担の軽減を図っています。
(6)地域における子ども・子育て支援
少子化の流れに歯止めをかけるためには、社会全体で子どもや子育て家庭を応援する気
運の醸成を図ることが必要となります。
そこで、本県では、市町村や経済団体などの関係団体と連携しながら「子育て応援の日
(はぐみんデー)
」の普及を図るとともに、子育て家庭に「はぐみんカード」を配布し、協
賛店舗の独自の優待が受けられる「子育て家庭優待事業」を市町村と協働で行うなどの取
組を推進しています(図表3-2-17)
。
83
第1章 第3節 2
少子化の流れを変える社会づくり
図表3-2-17 子育て家庭優待事業の仕組み
また、核家族化や都市化が進み、地域とのつながりが希薄になっている中で、身近に相
談できる相手がいないなど、子育ての孤立感や不安感、負担感を感じやすい状況にありま
す。本県の「少子化に関する県民意識調査」
(2013 年度)によると、
「困ったときや不安な
ときに相談できる人がいない」人は、他の理由により不安・負担に思う人に比べ、子育て
に「喜びを感じる時の方が少ない」という割合が高くなっており、そのような人々は出産
をためらうことが考えられます(図表3-2-18)
。
図表3-2-18 子育ての不安・負担に思っていることと子育ての喜びの度合いとの関係(愛知県)
66.7
困ったときや不安なときに相談できる人がいない
30.8
71.4
子育てが大変なことを身近な人が理解してくれない
子育てによる身体の疲れが大きい
81.5
仕事が十分にできない
82.6
0%
喜びを感じる時の方が多い
22.4
77.8
子育てによる精神的疲れが大きい
20%
40%
喜びを感じる時の方が少ない
2.6
6.1
15.9
12.9
0.8
5.4
0.8
4.8
14.7
60%
わからない
80%
2.8
100%
無回答
出典:愛知県「少子化に関する県民意識調査」
(2014 年3月)
そこで、本県では、子育てへの孤立感・不安感を解消するため、生後4ヶ月までの乳児
がいる全ての家庭を訪問し、
子育て支援に関する情報提供や養育環境などの把握を行う
「乳
児家庭全戸訪問」
、養育支援が特に必要な家庭を訪問し、養育に関する指導・助言などを行
う「養育支援訪問」などの市町村の取組を支援しているほか、保健師などが妊娠期から子
育て期まで継続して相談や支援を行う「子育て世代包括支援センター」の市町村における
設置を促進しています。
84
第1章 第3節
コラム
2
少子化の流れを変える社会づくり
子育て世代包括支援センター
「子育て世代包括支援センター」は、妊娠期から子育て期にわたるまでの様々な
ニーズに対して総合的相談支援を提供するワンストップ拠点です。フィンランドの
「ネウボラ」という子育て支援施設をモデルとするため、
「日本版ネウボラ」とも称
されます。
ネウボラは、フィンランド語で「アドバイスの場所」を意味しており、フィンラ
ンドでは、市町村での設置が義務付けられています。ネウボラでは、健診・保健指
導・予防接種等のほか、子育てに関する相談や必要に応じて他の支援機関との連携
を行っており、ワンストップの母子支援地域拠点となっています。また、フィンラ
ンドでは妊娠手当が支給されるほか、妊婦健診及び出産費用等がほぼ無料となって
おり、このような支援を背景に、フィンランドの合計特殊出生率は 1.80(2013 年時
点)を保っています。
日本においても、保健師などの専門職が全ての妊産婦などの状況を継続的に把握
し、必要に応じて関係機関と協力して支援プランを策定することにより、妊産婦な
どに対しきめ細かい支援を実施していくこととしています。
子育て世代包括支援センター イメージ
出典:厚生労働省資料
(7)子どもの貧困対策
国の調査によれば、我が国の 17 歳以下の子どもの貧困率*(2012 年)は、16.3%であり、
約6人に1人の子どもが貧困の状態にあります。特に、ひとり親世帯の相対的貧困率*は
54.6%となっており(図表3-2-19)
、ひとり親家庭等の自立に向けた支援が必要となりま
す。
本県の「ひとり親家庭等実態調査」
(2012 年度)によると、ひとり親家庭になって困っ
たこととして、
「子どもの養育・教育」が最も多くなっています(図表3-2-20)
。そのた
*
め、本県では、ひとり親家庭の自立に向けて、母子家庭等就業支援センター における就業
相談・企業開拓などの就労支援、県営住宅への優先入居などの生活支援、児童扶養手当・
遺児手当などの経済的支援などに取り組んでいます。
85
第1章 第3節 2
少子化の流れを変える社会づくり
図表3-2-19 貧困率の年次推移(全国)
1991 年
1994 年
1997 年
2000 年
2003 年
2006 年
2009 年
2012 年
相対的貧困率
13.5
13.7
14.6
15.3
14.9
15.7
16.0
16.1
子どもの貧困率
12.8
12.1
13.4
14.5
13.7
14.2
15.7
16.3
子どもがいる現役世帯
11.7
11.2
12.2
13.1
12.5
12.2
14.6
15.1
大人が一人
50.1
53.2
63.1
58.2
58.7
54.3
50.8
54.6
大人が二人以上
10.8
10.2
10.8
11.5
10.5
10.2
12.7
12.4
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査」
注 :貧困率は、OECDの作成基準に基づいて算出。
大人とは 18 歳以上の者、子どもとは 17 歳以下の者をいい、現役世帯とは世帯主が 18 歳以上 65 歳未満の世帯をいう。
図表3-2-20 ひとり親家庭になって困ったこと(愛知県)
父子家庭
母子家庭
57.9
家事のこと
47.5
自分の就職
64.6
子どもの養育、教育
53.2
子どもの養育、教育
41.5
収入が減ったこと
38.4
収入が減ったこと
収入がなくなったこと
37.9
自分の就職
17.7
相談相手がなかったこと
16.5
31.5
住居の事
家事のこと
9.1
収入がなくなったこと
その他
6.8
その他
4.3
特になかった
0
12.2
住居の事
14.4
相談相手がなかったこと
8.5
2.4
6.7
特になかった
10 20 30 40 50 60 70(%)
0
10 20 30 40 50 60 70(%)
出典:愛知県「ひとり親家庭等実態調査」
(2012 年度)
86
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