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No.108[2015年4月発行]

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No.108[2015年4月発行]
2015 年4月発行
か が や き
No.108
いすみ学園
いすみ学園 夏祭り
八王子生活実習所 園芸活動
八王子生活実習所 施設外観
INDEX
強度行動障害支援指導者養成研修……………2
施設紹介「八王子生活実習所」
… ………………9
新年総会・受賞者の声…………………………4
気仙沼学習会……………………………………10
生活寮・グループホーム等ネットワーク委員会の活動と今後……5
事務スタッフ会学習会…………………………11
happy ! news……………………………………6
リレーコラム「夢が語れる世界へ」
… …………12
施設紹介「いすみ学園」
… ………………………8
編集後記…………………………………………12
●発行者 知的発達障害部会 部会長 坂本 光敏 ●編集 知的発達障害部会 広報委員会
●発行所 〒 162-8953 東京都新宿区神楽河岸 1-1 TEL 03-3268-7174 FAX 03-3268-0635
●東社協ホームページ(http://www.tcsw.tvac.or.jp/)からもご覧いただけます。
強度行動障害支援指導者養成研修
強度行動障害支援指導者養成研修特別委員会
幹事 堀内 太郎
平成26年10月9日(木)から平成27年2月19日
シート」
(図1)という支援計画作成の為の用紙
(木)までの5か月間、月1回のペースで開催させ
を使い、具体的な支援計画を立てていきました。
て頂いた東京都社会福祉協議会主催の「強度行動
その支援計画を各施設に持ち帰り実行し、支援計
障害支援指導者養成研修」が終了いたしました。
画に基づいた実際の支援の結果を現場の支援記録
参加者は東京都社会福祉協議会会員施設の中堅
にとり、井上先生やそれをサポートするインスト
以上の支援職員で、それぞれが施設現場の利用者
ラクターの方に送り、データを駆使して支援計画
の支援事例を持ち寄り、現場で対応に苦慮してい
の効果があったかどうかを次の月の研修で確認し
る不適応行動の機能分析を、鳥取大学医学部の井
(図2)
、さらに改善した新しい支援計画を作成し
上雅彦先生にスーパーヴァイズして頂きました。
て、再び現場に持ち帰り実施するという大変実践
研修ではまず、現場で様々な不適応行動を示す
的な研修でした。
当事者の行動を「事前状況」
「課題となる具体的
井上先生は厚生労働省の科学研究で強度行動障
行動」
「対応とその結果」
として具体的に記録する。
害研究の主任研究員をされていて、豊富な事例と
それらを「スキャッタープロット」で生起回数、
経験から毎回の座学部分で実際に当事者の対応困
発生時間帯を客観的に記録していくことで、不適
難な行動の捉え方をご教授して下さいました。5
応行動が発生しやすい時間帯や場面の環境要素
回の開催期間中に大半の参加者の利用者事例の行
や、逆に不適応行動が発生していない時間帯(適
動に少しずつ効果が見られていき、改善が見られ
切に過ごせている時間)の環境要素から当事者が
ました。
その行動をとることの背景を捉える。そして過ご
第5回の最終日は井上先生の公開講座に続き、
しやすくなる環境や活動の工夫、伝えた方がよい
参加者の全5回の支援を振り返った事例発表会が
行動、良い行動をとれた場合の当事者へのフィー
あり実際の支援で利用者の行動をどう捉え、どう
ドバック(強化子、肯定的賞賛)を考えて行く。
支援したのかについて、発表をして頂きました。
それらを研修のグループワークで参加者それぞれ
どの発表も当事者への配慮にあふれた素晴らしい
がアイディアを持ち寄りながら「ストラテジー
実践でした。
図1
図2
「強度行動障害指導支援者養成研修に参加して」
~支援は科学である~
指定障害者支援施設 さやま園 副主任 古林 昇
研修を終え、「支援は科学である」この一言に
なりました。
つきると感じました。
それでも着実に歩みをすすめることは、近い将
なぜなら、支援とは、思いつきや場当たり的に
来、この支援方法(ABC 分析、ストラテジーシー
行うものではなく、綿密なアセスメント、地道な
トの活用等)が、知的障害者支援のスタンダード
データの収集、冷静な分析をふまえたうえで、理
となり、虐待の予防、利用者の生きづらさの緩和、
論と実践を繰り返すことなのだと実感できたから
家族の負担の軽減、支援者の意欲的な支援態度の
です。研修で参加者は、自らの現場で実際に直面
向上への太い柱となることでしょう。
しているケースを用いました。
「行動を機能でみ
最後になりましたが、ご多忙の中、丁寧にご指
る」このことを常に念頭に置いてケースに向き合
導をしてくださった鳥取大学 井上先生 井上研
い実践を行いました。その結果、
手ごたえを感じ、
究室の方々、のぞみの園 五味先生 信原先生、
少なからず成果をあげることができたのです。
さらに、企画実施してくださった知的発達障害部
そして、「チームとして統一した支援をする」
会の皆様に心より御礼申し上げます。本当にあり
ことの困難さなど、施設が一丸とならなければい
がとうございました。
けないことも重要な要素であることが浮き彫りに
「強度行動障害支援指導者養成研修に参加して」
~実践の難しさとコミュニケーションの大切さを学ぶ~
スクラムあらかわ 山崎 倫世
この研修を通して、チーム作りの難しさについ
ことが出来ます。分析を行なう事で、ご利用者に
て考えることが出来ました。とくにシフト勤務で
とって良い環境作りに繋がり、職員も適切な支援
あると全員が揃う機会がなく、最初の頃は情報共
を統一して行なう事が出来ると考えられます。
有が難しかったです。研修を重ねていく度に他の
この研修で学んだこと、
感じたことを忘れずに、
事業所の工夫や実践を聞くことが出来て、自分の
当施設で指導者として他の職員に広められる様に
チームにも生かすことが出来ました。さらに職員
して行きたいと思います。
間でのコミュニケーションを密に取る機会が設け
ありがとうございました。
られ、記録の習慣、工夫・アイディアを吟味する、
意識の向上に繋がったと言えます。
強度行動障害の方の支援はとくに一人で行なう
のではなく、チーム全体で統一した支援を行なう
ことが必要不可欠であると思うので、良い学びの
機会になりました。
研修が終了したとしてもストラテジーシートを
用いれば、他のご利用者の問題行動の分析を行う
新年総会
平成27年1月28日(水)今年度3回目の総会
正予算や部会組織変更に伴う規定変更、平成27・
が研究社英語センターにて開催されました。まず
28年度役員体制について、利用者支援研究会運
山下部会長より新年の抱負も交え開会の挨拶があ
営要項の改正等7議案が議決されました。報告事
り会が進められました。はじめに行政説明。東京
項では今年度の表彰受賞者の紹介があり厚生労働
都長期ビジョンと平成27年度東京都予算の概要
大臣表彰に福生学園の菅原妙子氏、東京都知事表
について説明がありました。主要事業の紹介では
彰に青梅学園の一条長敏氏が受賞されました。
短期入所開設準備経費等補助事業、地域移行促進
後半ではぐるなび大学の山本啓輔氏による『や
コーディネート事業、障害者地域生活移行・定着
さしいマーケティング・ブランディングセミナー』
化支援事業についての紹介がありました。東京都
の講演がありました。わかりやすくマーケティン
からの連絡事項では前回に続き施設・事業所にお
グについて講義してくださり、福祉の考え方に一
ける虐待防止と事故防止の対策の徹底について指
石投じてくださる内容で皆さんの頭をリフレッ
導がありました。次に議決事項について、部会補
シュさせる良い機会になったようです。
受賞者の声
厚生労働大臣表彰を受賞して
東京都功労賞を受賞して
社会福祉法人あすはの会福生学園 菅原 妙子
私がお仕事させていただいている法人「あすは
昨年の10月1日、東京都功労賞を頂きました。
の会」は平成26年3月に創立20周年を迎えまし
当日は、東京都名誉都民の表彰もあり、プロ野球
た。その記念すべき同じ年に、厚生労働大臣表彰
で活躍された長嶋茂雄さんを含めた三名が表彰さ
を受賞させていただき、大変うれしく思います。
れました。憧れの長嶋茂雄さんが表彰される場所
そして、部会からもお祝いしていただき感謝の気
に居合わせたことは、自分が場違いであると感じ
持ちでいっぱいです。
るとともに、功労賞受賞の重みと責任を改めて感
学校を出て初めて勤めた施設、結婚出産を経て
じる貴重な経験となりました。
再就職した施設、ともに心温かい利用者の皆様と過
私は、新卒で南風会の青梅学園に入職して以来
ごさせていただいた貴重な時間が思い出されます。
33年間、現場の支援を中心に従事してきました。
利用者さんの「あした来る?」の問いに「あし
この間、理事長をはじめとする上司や先輩方の指
たも来ますよ」の返事。支援の中で繰り返し交わ
導、ご家族からの激励、同僚や後輩職員等から沢
される何気ない会話ですが、利用者さんとの「あ
山の刺激をもらってきました。そして、何よりも、
した」を継続していくために、体調を整え、ゆっ
私を支えてきてくれたのは、笑顔で待っていてく
たりとした気持ちで今日を過ごす。利用者さんと
れる利用者さんたちの存在があったからこそです。
の関係を深めていくにはそういった日々の積み重
わからないことが多く、上手くいかない、失敗
ねが大切だと思います。
だらけの33年間でしたが、これからの福祉を支
受賞の重みを感じつつ、これからもずっと、利
えていく情熱に燃えた若いスタッフと共に、利用
用者の皆様が安心して暮らせる生活作りの一端を
者さんの幸せ作りの一翼になれるよう、今しばら
担っていけたらと思っています。
く頑張っていきたいと思っております。
社会福祉法人南風会青梅学園 一条 長敏
生活寮・グループホーム等
ネットワーク委員会の活動と今後
代表幹事 坂本 光敏
生活寮・グループホーム等ネットワーク委員会
ム支援を地域の関係機関も含めて担えるような支
(以下ネットワーク委員会と言います)は、今か
援体制の構築」を訴えて来ました。幸い、運営ガ
ら10年前に、
「世話人の社会的地位と資質の向
イドラインは昨年度発行されましたし、27年度
上」を目的として、部会地域支援分科会が支援す
東京都予算で「障害者施策推進区市町村包括補助
る特別委員会として開設されました。
「地域支援
事業」の中に、
「グループホーム地域ネットワー
の事業を部会活動に位置づける必要がある。
」と
ク事業」
が新設されました。区市町村事業なので、
の声は部会内外から出ていましたが、東社協の部
各市区町村が条例を制定する必要がありますが、
会に正式加盟するには、会費の高さがネックと
ネットワークを推進していく基盤作りとしては前
なっていました。そこで、世話人個人・ユニット・
進したと言えます。
事業所単位を問わず、登録制として、3000円の
現在のネットワーク委員会は、原則毎月の幹事
年会費を東社協本体に支払うことで、部会活動の
会を開催して制度や地域の動向等の情報交換を行
中に位置づけて頂くこととしました。
い、5月の全体会では参加者がグループに分かれ
「生活寮」という名称を今も使っているのは、
ての情報交換と東京都のグループホーム施策につ
現状のグループホーム制度は都内においては生活
いての学習、7月には2回目の学習会、11月に
寮として出発したこと、開設当初は大部分の寮が
は都内・都外のいろんな事業所の見学会(都外施
「業務委託」として世話人を配置したこと、利用
設見学の場合は宿泊研修)
、そして、12月には「東
者の地域生活を最前線で支える重要な仕事にも係
京都グループホーム運営協議会」との合同研修を
わらず、世話人の方がいわゆる「施設職員」より
実施しています。この合同研修は、都内の多様な
身分が低く見られかつ孤立していることなどの実
グループホームの実践報告と講演という形を取っ
態が多くあることを踏まえるためでもあります。
ています。講師としては、現場の実践を学ぶとい
そんな世話人の思いが平成18年に東社協から出
う観点で招聘しています。ちなみに平成26年度
版された「知的障害者グループホーム世話人の業
は栃木県にある障害者支援施設「かりいほ」施設
務実態と想い」―副題(地域の暮らしを支え続け
長石川氏から「生きにくさを抱えた知的に軽度の
て)と言う小冊子に結実しています。
方の支援」について、学習しました。
10年前に比べてグループホーム利用者数は約
今、知的発達障害部会では、グループホーム事
2.5倍の6500人を超えるに至り、自立支援法で
業所を正式に会員として迎えるための作業に入っ
は、新たにケアホームが制度化されました。かつ
ています。ネットワーク委員会としては、部会の
ての「地域生活援助事業」は「共同生活援助・介
利用者支援研究会と連携して、当初の目的である
護事業」となり、生活支援員の配置が求められる
グループホームの支援体制の充実と世話人の資質
ようになり、また「業務委託」ではなく「法人雇
の向上を目指していきたいと思います。会員施設
用」も着実に増えています。
のみなさま、是非幹事会にグループホーム関係者
ネットワーク委員会では当初から東京都に対し
を派遣してください。
て、支援活動の標準となる「運営ガイドラインの
制定」と「運営法人に委ねられているグループホー
タ
ブ
禁
ー
断
視
さ
の
テ
れ
ー
て
マ
い
た
施設紹介
いすみ学園
昭和59年、東京を離れ千葉県「いすみ市」に
16年には大原漁港の工場からも依頼を受け、新
自閉症の人達を中心にした学園を開設して30年。
たに利用者8名と支援員1名のグループを作って
その後、定員増やグループホーム建設などを行
参加をしています。
い、現在、生活介護60名、施設入所支援52名、
一般社会で、従業員の中で働く事は彼等の人間
短期入所4名、グループホーム10名の人達が生
形成に大きな効果をもたらしました。
活する地となっています。
そして働きが認められる事による自信と居心地
彼等は、平日は日中活動で汗を流し、休日は、
の良さは、彼等の心(生活)の安定に繋がってい
田園や外房の海などに季節を感じつつそれぞれの
ます。作業後、染み付いた魚臭さは誇りです。
時間を過ごしています。
【これから】
【日中活動の紹介】
今、学園利用者の平均年齢は46歳を超え、年々、
いすみ学園の日中活動は、受注作業、石鹸つく
個別支援の時間が増えています。
り、農作業、食品加工、さをり織り、グループ実
彼等は『第二の故郷』として生活してきたこの
習などに分かれています。
「いすみ」が大好きです。
今回は、その中の『グループ実習』を紹介致し
彼等が、今後もこの地で生活を続けていくには
ます。
どんなサービスが必要か‥、今、検討を進めてい
単独だと社会参加が難しい自閉症の人達も、そ
るところです。
ばに支援員が付き添う事で落ち着いた状態で社会
しかし、
安定しない福祉制度に不安を感じてか、
に参加することができます。
人材確保が思うように進みません。
そんな人達を中心に平成6年、近くの勝浦漁港
学園はこれからも、温暖で豊かな自然、そして
の水産加工会社に利用者9名と支援員1名で、
『支
星の綺麗なこの地で、彼等の良きパートナーとし
援員付き実習』を始めました。
て「共に関わりたい」と思っていただけるような
そして、そこでの彼等の働きが評価され、平成
学園を目指していきます。
地域清掃活動
グループ実習
施設紹介
八王子生活実習所
1.施設概要
3.高齢化重度化への対応 八王子生活実習所では、重度の知的障害者40
嚥下機能の低下、認知症、ダウン症候群の退行
名が地域から通ってくる生活介護事業所です。
ケアをはじめインシュリン管理、気管切開等の医
基本理念である「自分を愛するようにあなたの
療的ケアへの対応が迫られ、医療的ケアに向けた
隣人を愛せよ」の基本理念のもとに、
「安心・安全」
体制整備を進め、現在、気管切開等の医療的ケア
を基盤として、利用者にとって居心地の良い満足
を要する利用者を4名受け入れました。
した一日となるよう支援しています。
4.地域の中での継続的に一人ひとりの生活を支える
2.活動内容
利用者と家族の高齢化や障害の重度化の中で、
日中活動は、障害や行動の特性を配慮した4グ
家族が共に安心して暮らしていくには、24時間
ループ体制(基礎集団:海と渚、宙、風、星)で
365日の地域支援体制を視野に、相談支援事業、
活動しています。グループを中心に「居場所」と
居宅介護等事業を行う「もなか」を立ち上げまし
「仲間づくり」を行う一方で、紙工芸、陶芸、染色、
た。移動支援や居宅支援をはじめ、様々な社会資
織物、リサイクル活動などの自主生産品づくりを
源を活用しながら、事業所だけで自己完結しない
はじめ、園芸、フィットネス、ダンス、音楽、ア
サービスを展開し始めました。
ロマテラピー、スヌーズレンなどの活動を行って
います。
5.地域貢献
その他、おやつ作りや喫茶外出・買い物、プー
触法障害者の受入れをバックアップグループ
ル、ドライブ、散策等の戸外での活動も重視して
ホームと連携して実施しています。不適応や引き
います。また、理学療法士による機能訓練や余暇
こもりケース事例数件を契約関係の枠外で地域の
指導による個別プログラムやグループ活力を生か
見守り機能として実施しています。数年前から機
した様々なレクリエーション活動を行っていま
械浴槽による地域入浴サービスを開始し、これを
す。活動は事業所内に限定せず、社会体験活動と
契機に地域の入浴や引きこもりニーズの掘り起こ
して個別外出や宿泊旅行を行っています。
しができました。このように、社会的な受皿が整
日中活動は、どんなに障害が重くても、その人
備されるのを待つのではなく、自分たちの身の丈
に「選んでもらう」という「意志決定」を支援す
でよいのでアウトリーチして、利用者に適った地
る取り組みを重視し、日々研究中ですが、利用者
域社会のシステムを徐々に変えていく地域で小さ
の夢や希望を実現するための支援者でありたいと
くともきらりと光る事業所を目指します。
職員一同考えています。
体の取り組み
作業 創作
(施設長 山内哲也)
運動活動
平成 26 年度 気仙沼学習会
去る1月22日、23日に利用者支援研究会と復
マンサービスに携わる専門職には知識や技術を活
興支援特別委員会の共催による学習会が宮城県気
かしながらも価値と倫理が不可欠である。これら
仙沼市で行われた。講師に東洋大学社会学部社会
専門職は人間の弱さに関わる故に、その弱さにつ
福祉学科教授高山直樹氏をお招きし、
「価値と倫
けこむ、相手に自分の価値観を押しつけるなど強
理に根差した支援を考える」というテーマで学習
者となってしまうことを自己覚知しなければなら
会を開催。権利擁護(アドボカシー)が社会福祉
ない。こうした押しつけやつけこむことをしない
支援における最も重要な概念であり、個人の価値
と公言したものが倫理綱領であると話された。
観ではなく専門職としての価値観を重んじた支援
最後に、
起点がずれないように漫然と傍観せず、
の統一を考える機会となった。
虐待や不適切な対応(グレーゾーン)を意識し説
学習会開始に先立ち講師の高山氏より、社会福
明責任を果たす。そして差別してしまう自分にど
祉、障害者支援の価値を再確認しどう具体化する
う向き合うのかを、葛藤しながらみんなで考えて
か。そうした本質的支援を考える場にしたいと話
欲しいと学習会をしめられた。
された。学習会でははじめにいくつかの社会福祉
法人の利用者への権利擁護規定や職員の倫理綱
領、行動規範などが当該職員から紹介された。例
えばスタッフの行動規範を職員会議で法人の基本
理念にそって話し合って作成した。他には権利擁
護規定をネームプレートに畳んで持ち歩いてい
る。行動指針をつくるきっかけが行政指導や不祥
事であったなどが説明されたが、どこも現場では
形骸化を感じていると話された。
つづいてグループワークでは、なぜ倫理綱領が
必要なのかを呼称の問題から話し合いをおこなっ
た。グループ内では倫理綱領の取り扱いや自身の
呼称の対応を出し合った。定期的に会議などで読
み合わせをしたり、チェックシートを活用して浸
透を図るなどの工夫をしている。
呼称については、
自らの感情で呼称を変えてしまうと支援がゆがん
でしまう。自分の生い立ちに影響されている。お
客様と思って呼んでいるが熱が入ってしまうと危
険であるといった話が出た。
これらのグループワークの発表に「くん、ちゃ
ん」を使う所もあり、高山氏からは「くん、ちゃ
ん」で呼ぶことにどう説明できるのか?職員は専
門職としてこの呼称に対して説明責任がある。医
師や教員、SW、そして私たち支援員などヒュー
10
二日目は津波で利用者二名が亡くなり、建物も
使用不能となった南三陸町にある社会福祉法人洗
心会のぞみ福祉作業所を見学した。さまざまな支
援により高台の公園にプレハブを設置し事業を再
開している。紙漉き作業を中心に活動しており、
こうしてできたハガキなどに付加価値をつけて作
業収入につなげているとのことだった。
参加者のひとりは、倫理綱領が自身を戒めるた
めの文言を掲げ常に原点に立ち返るものであると
実感した。講師の「葛藤している自分を見失って
はいけない」という言葉から、この職業に携わる
者として背筋を正すとともに良い緊張感をいただ
いたと語っていた。アンケートでは専門職として
の責任を感じた、チームとして価値観や倫理を合
わせていく大切さを感じたといった声が多かっ
た。今回の学習会には地元気仙沼で支援に携わっ
ている19名を含めた40名の参加があった。
事務スタッフ会学習会
事務スタッフ会代表幹事 内山 和弥
平成26年11月29日(土)に東社協会議室にお
いて2つのテーマ
『事務職員向け知的障害者理解』
『施設における会計の基礎知識』の学習会を開催
しました。
事務職員は、利用者との接し方や障害に対する
知識を必ずしも有している訳ではありません。し
かし障害者の施設に勤務している職員として基本
を理解していないと支障をきたすこともありま
す。学習会では「障害・障害者とは」に始まり「知
的障害者への対応の仕方」など、あっという間に
時間は過ぎました。
知的障害者は18歳までに能力障害が生じるこ
と、様々な場面で本人にあった対応が求められる
こと、また関連しやすい障害や病気として発達障
害や自閉症等についても学ぶことが出来ました。
そして、すべての職種に人権擁護の精神が求め
られていること、他者にあたってしまうことがな
いように自分の心の安定も大切であること等多岐
に渡る内容を参加者が熱心に、時に頷きながら聞
き入っていました。
後半の会計に関する基礎知識では、日常行ってい
る業務の再確認の場となりました。社会福祉法人の
会計基準の沿革として、経理規程準則から会計基準、
新たな会計基準までの流れを学び、その中で平成27
年度からは社会福祉法人が行う全ての事業に新たな
会計基準が適用されること、そのことにより財務情
報の透明性が図られること等を全員が確認しました。
経理規程の確認と具体的な運用では、経理担当
者が経理規程を把握していないということがあっ
てはならない、そういうことから所属する法人の
規程の内容をひとつひとつ確認しながら進みまし
た。区分の明記だけでなく、様々な条文で理事会
の承認等が必要なこと、多くの参加者がそうであ
ろう出納職員の職務内容も再確認出来たと思いま
す。グループ討議の時間には、各施設で行ってい
る配分基準等を出してもらい、どのような考え方
で行われているかをお互いに知ることが出来まし
た。他にも業務を行ってはいるが規程を改めて読
み返すと、確認不足だったこともあり良い見直し
の機会となりました。
参加者にとって、障害者の理解・会計の基礎知識
はともに大切な内容です。時間が足りないくらい充
実した学習会で、新たに得た知識と再確認できたこ
とを、今後の業務に役立てて頂けることと思います。
11
Relay
Column
私の主張
20
夢が語れる世界へ
社会福祉法人龍鳳 ライフパートナーこぶし/たんぽぽ 副施設長 貝沼 寿夫
気がつけば知的障害者の方々を支援する仕事を
利用者の夢の実現をお手伝いする仕事」と捉えて
始めて随分長い年月が経ちました。過去を振り返
います。お手伝いをする私たちに夢もなく、夢に
れば、楽しいことや思い通りにいかないこと辛い
向かって努力することもなければ、ご利用者の夢
経験もありましたが、今となっては、全ての経験
を実現することは困難なのではないでしょうか。
が今の私の血肉となっていると考えています。そ
私たち皆が夢を持ちそれに向かって努力すること
してここまでこの仕事を続け、この先も続けたい
が、人材の確保やご利用者へのより良い支援の提
と思うのは、
「一日一日を楽しむ」「これを実現さ
供に繋がっていくと考えています。夢を持つこと
せたいとかあの先輩のようになりたいという目標
や楽しむことを決定するのは、一人一人の心です。
や夢を持ち続けてきた」ことが原動力になってい
ですが、それを変える環境を作ることは、私たち
る気がします。
先輩に責任があるのかもしれません。
私は、
人が成長する過程には、
「楽しむ心」と「目
これを読んでくださっている皆様がワクワクし
標や夢を持つこと」が重要なのではと考えていま
ながら仕事を楽しみ、夢を語れる。そんな人達が
す。心から楽しめないものを継続することは出来
溢れる世界になっていくことが、今の私にある夢
ませんし、目標や夢がなければ、その地点に到達
の一つであり、私に課せられたこれからの使命だ
することは絶対にありえません。
と思って、この先も一日一日を楽しんでいきたい
私の拙い経験で障害者支援という仕事は、「ご
と思います。
**次回は、社会福祉法人 すみれ会 統括支援ディレクター 小林 由美子 氏のコラムです**
編 集 後 記
冬も終わって日中はどんどん暖かくなり、春の訪れを感じます。2015年の桜の開花は東京
で3月23日、満開は3月29日でした。春といえばお花見、行かれた方もいるでしょうか?今
年は桜の開花と休日が重なりお花見に行かれた方も多いと思います。桜を眺めながら、暖かい
日差しの中で気の合う仲間と飲んだり食べたり、楽しみですね。ただし、食べ過ぎや飲み過ぎ
にはご注意を。
春といえば入学、入社シーズン。新しいことが始まる季節です。ワクワクしている方にドキ
ドキしている方、いらっしゃると思います。春は出会いの季節、皆様に良い出会いがあります
ように。
12
Fly UP