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2100 年までに北極地域の永久凍土表層がほとんど融解(米国)

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2100 年までに北極地域の永久凍土表層がほとんど融解(米国)
NEDO海外レポート
NO.974,
2006.3.8
< 新刊目次のメール配信をご希望の方は、http://www.infoc.nedo.go.jp/nedomail/ >
海外レポート974号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/974/
【地球温暖化特集】
2100 年までに北極地域の永久凍土表層がほとんど融解 (米国)
地球温暖化は、北半球のいたるところで長年にわたり凍土だった地表を深さ 10 フィ
ート(3 メートル)以上にわたり破壊する可能性があり、カナダ、アラスカおよびロ
シアの建物や道路を損傷するだけではなく、生態系を変えてしまうかもしれない。国
立大気研究センター(National Center for Atmospheric Research:NCAR)が新たに
行ったシミュレーションは、この永久凍土層の最上層に覆われている区域の半分以上
が 2050 年までに、約 90%が 2100 年までに解けるだろうとしている。科学者は永久凍
土層の融解が北極海への流水を増加し、莫大な量の炭酸ガスを大気中に放出すると予
想している。
NCAR のコミュニティー気象システムモデル(Community Climate System
Model:CCSM)を使ったこの研究は、凍結および解凍に関する土壌モデルだけではな
く、大気、海、陸地および海氷の相互作用を含む全球モデルにおける初の永久凍土層
の状況を調査するものである。研究結果は 12 月 17 日に発表された地球物理学速報誌
「Geophysical Research Letters」にオンラインで掲載された。
「これまでも永久凍土層の研究にモデルは用いられて来たが、相互作用を完全に考慮
した気象システムモデルは用いられてなかった」と筆頭著者である NCAR のデヴィッ
ド・ロレンスが述べる。共著者はコロラド大学国立雪氷データセンター(National
Snow and Ice Data Center)のアンドリュー・スレーターである。
北半球の陸地の約四分の一に永久凍土層が含まれている。ここでは永久凍土層は少
なくとも過去二年間、華氏 32℃(摂氏 0℃)以下のままだった土壌として定義づけら
れている。永久凍土層は数センチメートルから数メートルまで変化する表面の冬季凍
結層(active surface layer)によって特徴づけられ、この層は夏の間は融け、冬の間は再
凍結する。深い部分の永久凍土層は凍ったままである。冬季凍結層は気候の変動の影
響を受け、地表気温の上昇と共に下方向に発達する。深い永久凍土層は一万年以上前
にあった最後の氷河期以来融けていなく、次世紀の地球温暖化でも大きな影響を受け
ないとロレンスは述べている。
最近の温暖化は、内部にある氷が融けて土塊が崩れるために、アラスカ中央部のい
たるところの永久凍土層区域を退化させている。その結果、主要道路が歪み、家屋が
不安定になり、「酔っぱらった森」、即ち木々が乱れて傾いた状態となった。シベリア
では、一部の産業施設が深刻な損害を受けたと報告された。これ以上、永久凍土層を
失えば、トナカイやカリブー等の動物の移動パターンを脅かしかねない。
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CCSM のシミュレーションは、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental
Panel on Climate Change)により構築された 21 世紀の温室効果ガス排出量の高い見
積量と低い見積量の二つに基づいて行われた。いずれの場合も、CCSM はどの地域が
11.2 フィート(3.43 メートル)下方の土壌深度 10 のどの深度まで永久凍土層を維持
出来るかどうかを判断した。
排出量が多いシナリオの場合、これらの深度のいずれかに永久凍土層がある区域は
2050 年までに 400 万から僅か 100 万平方マイル強に、2100 年までに 40 万平方マイ
ル(100 万平方キロメートル)に縮小してしまう。省エネルギーおよび代替エネルギ
ーに大幅な進歩が見込まれる低排出シナリオの場合、2100 年までに永久凍土層区域は
約 150 万平方マイルに縮小する。
NCAR の CCSM を使ったシミュレーションによれば、次世紀、北極地域で土壌
の深さ 11 フィート以内に永久凍土層がある地域は約 90%減少する。図は CCSM
の模擬実験で 1980 年から 1999 年(水色)および 2080 年から 2099 年(青色)に
かけて地表近くに永久凍土層がある地域を示している。後者の予測は、気候変動
に 関 す る 政 府 間 パ ネ ル A1B の シ ナ リ オ に 基 づ い て い る 。 こ れ は し ば し ば 、
“business as usual” シナリオと称される。(図の提供: デヴィッド・ロレンス)
「永久凍土層が融けることで、大量の水が海に流れるだろう」とスレーターは述べる。
彼は北極海への流出水が 1930 年代から 7%増加したことを見出した。排出量が高いシミ
ュレーションでは、2100 年までに流出が更に 28%増加するとされている。その増加に
は、土壌中の氷解による水分だけではなく降雨量および降雪量の増加が含まれている。
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2006.3.8
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海外レポート974号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/974/
新しい研究では、融解する土壌から排出される温室効果ガスの重要性を明らかにし
ている。永久凍土層は世界中の土壌中に蓄積されている全ての炭酸ガスのうち、30%
以上を保有している。永久凍土層の融解は、化石燃料からの排出以上に大規模なメタ
ンおよび二酸化炭素の排出につながるだろう。
「土壌中には大量の炭酸ガスが蓄積されている」とロレンスは述べる。「もしも我々の
モデルが予測したように永久凍土層が融けたら、気象に多大な影響を与えるだろう。」
この問題および他の問題に対処するために、現在、ロレンスは同僚と共に炭素ガスの
相互作用を考慮したより進歩したモデルの開発に取り組んでいる。
この研究は NCAR の第一出資者である米国科学財団(National Science
Foundation)および米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)より資金助成を
受けている。
アラスカ州フェアバンク近くのこの陥没穴は、気温の上昇に伴い徐々
に解けた永久凍土層の巨大な氷の氷解により出来たものである。
(写真提供:ウラジミル・ロマノフスキー、アラスカフェアバンク大学
地球物理化学研究所)
以上
翻訳:NEDO 情報・システム部
(出典:http://www.ucar.edu/news/releases/2005/permafrost.shtml)
NCAR の許可により英文ニュースリリースを翻訳。Copyright © 2005, UCAR
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