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リスクと上手につきあうには

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リスクと上手につきあうには
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DE BO
OK
SK
RI
MANAG
EM
リスクと上手につきあうには・・・
社団法人 日本損害保険協会
はじめに
社団法人日本損害保険協会は、2000年の
4月に「NPO推進グル−プ」
(2001年4月に「N
POグループ」に改称)を設けました。当協会
が力を入れている安全対策・災害防止や環境保
全の活動を中心に、NPO(民間非営利団体)や
ボランティア活動の発展に寄与したいと考えて
います。
今般、こうしたNPO推進事業の一環として、
NPOを取り巻くリスクに焦点を当てたガイド
Contents
ブックを作成しました。
多くのNPO関係者は、様々なリスクの存在
あなたの団体の
リスク対応度チェック ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3
を感じてはいるものの、必ずしも明確な認識に
はなっておらず、漠然とした不安を抱いている
のが実態のようです。
本ガイドブックでは、NPO関係者の方々に
リスクの捉え方と対策 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4
リスクマネジメントの手順 ・ ・ ・ ・ ・ 6
組織の運営面に関するリスク ・ ・ ・ ・ 8
NPOを取り巻く様々なリスクを認識していた
だき、リスク対策の必要性について理解しても
Case 1 現金等の管理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9
10
らうことを主眼としています。このガイドブッ
Case 2 情報管理
クがNPO・ボランティア関係者にとって団体
Case 3 ボランティア ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 11
・・・・・・・・・・・
の運営または活動する上で役立つことを願って
Case 4 労務管理
います。
・・・・・・・・・・・
12
Case 5 マスコミ対応 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 13
社団法人 日本損害保険協会
個々の活動・事業面に
関するリスク ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 14
・・・・
15
Case 2 国際協力
・・・・・・・・・・・
16
Case 3 野外教育
・・・・・・・・・・・
17
Case 4 電話相談
・・・・・・・・・・・
18
Case 1 ホームヘルプ事業
・
Case 5 シェルター ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 19
参考資料 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 20
2
私たちは日頃あまり意識していませんが、NPOを取り巻くさまざまな場面に
も「リスク」は潜んでいます。まずは、あなたの団体が自分たちの活動に潜むリ
スクをどれだけ認識し、対応しているか、自己チェックしてみましょう。
※なお、詳細なリスクマネジメント・チェックリストは巻末に掲載しておりますのでこちらもご
確認ください。
チェック方法
(1)該当する場合は、チェックをしてください。
(2)項目ごとのチェック数を数えて、レーダーチャートの目盛の該当数字を○で囲んでください。
(3)それぞれ○の位置を線で結びレーダーチャートを完成してください。
< リスクへの意識 >
□ 組織のリスクを把握している
□ リスクに備えたプランを持っている
□ プランの内容をスタッフが理解している
< 人事管理 >
□ 就業規則を文書で作成している
□ ボランティアと契約書または同意書を交わしている
□ 重要な契約については、文書を交わしている
< モノ、災害 >
□ 退出時には戸締り、火の元の確認を行っている
□ 地震に備え、棚やコンピュータなどを固定している
□ 警察や消防などの連絡先を知っている
< 資金管理 >
□ 資金は責任者ならびに担当者により管理されている
□ 事務所内には、多額の現金を置いていない
□ 現金や会計帳簿は、ルールに従って保管されている
< 情報管理 >
□ 重要なデータはルールに従って管理している
□ 知り得た情報について守秘義務を徹底している
□ 重要なデータのバックアップを取っている
レーダーチャート
あ
な
た
の
団
体
の
リ
ス
ク
対
応
度
チ
ェ
ッ
ク
リスクへの意識
3
人事管理
3
1
2
1
2
1
0
1
1
2
2
3
3
情報管理
3
2
資金管理
モノ、災害
3
リ
ス
ク
の
捉
え
方
と
対
策
リスクとは?
3ページであなたの団体のリスク対応度をチェックしてみましたが、そもそも“ リ
スク ”とは何でしょうか? NP Oの運営において、また個々の活動中に、
「もし、こんな
ことがあったら、うちの団体はどうなるのだろう?」と思ったことはありませんか。もし、
移動中に自動車事故に巻き込まれたら・・・。もし、地震で団体が所有している機材が壊れ
たら・・・。
リスクとは、『 損失が発生するかもしれない不確実な要素 』と定義す
ることができます。
そして、リスクが発生することによって失われるものが、人・物・金・情報・信用と
いったNP Oの所有する 有形・無形の資産(財産)です。
N P O は、「○○を通じて、よりよい社会を実現する」「○○を行うことで、社会的
な課題を解決する」など、個々のミッション( 目 的 )に基づいて活動しています。リス
クの発生で大切な資産が失われ、そのミッションの達成が脅かされることこそが、
NPOにとって最も大きな損失といえます。つまり、自分たちの活動を阻害する要因す
べてをリスクと呼ぶことができます。
NPOを取り巻くリスクを大きく分類すると、次の2つに分けることができます。
① 組織の運営面に関するリスク (運営リスク)
→ 意外と気がつきにくいのがこのリスクです。しかし、どのNPOにもほぼ共通してあるものです。
② 個々の活動・事業面に関するリスク (事業リスク)
→ 個々の活動のタイプによって、いろいろなリスクが考えられます。
8ページ以降では、NPOのリスクを運営面、事業面に分類し、人・物・金・情報・信用などに
影響を及ぼすリスクは何か、対処方法としてはどのようなことが考えられるのか。個々のNPO
の対処事例を参考にしながらみていきます。
《 主なリスクの例 》
人的リスク
●
活動中にボランティアがケガをした。
●
団体のリーダーがケガをした。
情報リスク
● コンピュータに不正にアクセスされ、
NPO
財産リスク
機密情報を盗まれた。
● ウイルス感染でデータが破損し、
情報がすべて喪失した。
賠償責任リスク
火事で事務所の備品が焼失した。
●
活動中に誤って他人にケガをさせた。
● スタッフの不在時に泥棒に入られた。
●
他の団体から借りた機材を誤って壊した。
●
※この他に、何らかの事故が起きたことをきっかけに発生するいわゆる“風評(世間の評判・うわさ)リスク”などもあります。
4
リスクマネジメントとは?
このようなリスクに対応するために、一般的に「リスクマネジメント」の手法が用いられます。
リスクマネジメントとは、『 リスクの存在、
大きさなどを事前に把握し、合理的な方
法とコストで適切な対処策を講じておくことにより、リスクによるダメージを小
さくすること』です。
NPOを運営し、さまざまな活動を行おうとするときに、いろいろなリスクが伴うのはいわば当然の
ことです。問題なのは、リスクが存在すること自体ではなく、気づいていないリスクが存在すること、
リスクを過小評価したり放置したりして、適切な処理を行わないこと、であるといえます。
どのようなリスクがどこに存在するのか、またそのリスクをどう評価し、どのような方法で処理す
るのかを知ることがとても重要です。そして、実際に対処することによって、「リスクを管理する」
のがリスクマネジメントなのです。
実際にリスクマネジメントを行うときの基本的な手順(ステップ)は次のとおりです。
①リスクの発見・把握
②リスクの評価・分析
③リスクの処理
④確認・フォロー
Step 1
リスクの
発見・把握
Step 2
リスクの
評価・分析
Step 3
リスクの
処 理
Step 4
確 認
フォロー
NPOがより有益な活動・事業を安定的かつ効率的に行うことができるよう次ページでは、リスクマネジメントの
手順に従い、各ステップのポイントについてご紹介します。
5
リ
ス
ク
マ
ネ
ジ
メ
ン
ト
の
手
順
ステップ 1 リスクの発見・把握
∼どこにどんなリスクがあるのか∼
N P O の運営や活動・事業時に起こる可能性のあるリスクを漏れなく見つけ出すこと
が大切です。今までに団体に起こった事故や災害の実例は言うまでもなく、他の団体で
起こった事例なども参考にします。
例えば,次の視点から考えてみましょう。
① 団体運営面でのリスクなのか事業面でのリスクなのか
② 人、物、資金、情報どれにあたるリスクなのか
ポイント
リスクマネジメントを行う上で、最も重要なことは、団体を取り巻くすべてのリスクを洗
い出すことです。もし、この段階で見過ごされてしまったリスクは、何の対処もされず、
実際に発生すると予想外の損失として否応なく負担しなければなりません。このような
損害を被った場合、どうなるでしょうか。おそらく事業活動は中断せざるを得なくなり、
場合によっては団体自体が消滅してしまうおそれもあるのです。 ステップ 2 リスクの評価・分析
∼そのリスクはどのくらいの大きさ・起こりやすさなのか∼
洗い出したリスクは、次のA∼D
大
のどれに当てはまりますか。
ここでは、そのリスクが団体に与
える影響度はどのくらいかを見極め
リスク
大
リスク
起こりやすさ
小
リス ク
リスク
リスク
リスク
ます。
リスク
大
き
さ
A B
C D
小
ポイント
洗い出したリスクについて、それが具現化した場合にNPOに及ぼす損失の影響を検
討します。リスクの発生頻度はどのぐらいか、発生した場合の損害の程度はどのぐらい
かという2つの観点から評価をして対応すべき優先順位を決定します。なお、
リスク分析・
評価に最も重要な情報は過去の事故や損失記録です。可能な限り詳細な情報を集め、
(これは、事
損失は発生していないが事故が起こりそうだった事例も対象に含めます。
故または損失に至らなかった事例の中には損失防止に役立つ情報が多く含まれており、件
数も多いためです。)
6
ステップ 3 リスクの処理
∼そのリスクにどのように対処するのか∼
リスクの種類・性質に応じて主に次の ① ∼ ④ の処理方法があります。
① リスクの軽減 ・・・ リスクを起こりにくくする「予防」やリスクによる損害を小さくする対策をとる
② リスクの転嫁 ・・・ 保険な どを利用して、予測される損失の大部分または一部を団体以外に負担させる
③ リスクの保有 ・・・ 損失そ のものを団体自身で負担する
④ リスクの回避 ・・・ リスクのある活動自体をやめる
前頁のAからDのリスクは次の
A の場合
ように処理することが考えられま
C の場合
① リスクの軽減
軽減が行えなければリスクの回避
できない
D の場合
できる
できる
す。例えば、Aの場合、リスクの
を行うことになります。
B の場合
① リスクの軽減
③ リスクの保有
できない
④ リスクの 回避
② リスクの転嫁
ポイント
一般的に、
「リスクの軽減」「リスクの転嫁」「リスクの保有」の3つの方法があり、これらは相互補完
関係にあります。効率的に費用を投入するためには、適切な方策を選択もしくは組合わせて実施して
いくことが重要です。
ステップ 4 確認・フォロー
∼リスクマネジメントに終わりはない∼
一連のステップを経てリスクの処理を実施したら、リスクマネジメントの目的が果たされているか
確認し、実施による効果と要したコストのバランスをみます。また、定期的な見直しのほか、活動・
事業を広げたり、社会環境の変化などに対応して新たなリスクが発生する場合もあります。したがって、
継続してリスクマネジメントの内容を見直すことが大切です。
ポイント
ステップ 1 からステップ 3 まで順を追って
〈主な着目点〉
リスクの処理を実施しますが、実際のリス
① 予定通りリスクマネジメントを実施できたか
クマネジメントの手法が十分な効果をもた
② 期待通りの効果が得られたか
らし、目的が達成されたかを確認の上、必
要に応じて確認・見直しをすることが必要
③ 新たなリスクの発生で処理方法を見直す必要はな
いか
です。
④ リスクマネジメントにかかるコストは削減できた
7
組
織
の
運
営
面
に
関
す
る
リ
ス
ク
︵
運
営
リ
ス
ク
︶
運営リスクとは?
NPOの運営リスクとは、活動を行う基盤となる組織そのものに関連するリスクを指
します。例えば、スタッフの労働環境や活動資金など金銭の管理および確保、オフィス
やオフィス機材の管理、会員情報や重要文書の安全な保管など、さまざまなものがあげ
られます。言い換えれば、組織運営に関するあらゆる側面にリスクは存在するのです。
多くのNPOが、活動を進めていく中で組織の形態を整えていくということもあり、個々
の活動から生じる事業リスクに比べて運営リスクへの意識や取り組み度合いは、低いの
が現状です。しかし、安定した事業や質の高いサービスを提供するには、組織の基盤を
しっかりさせる必要があり、運営リスクに対するリスクマネジメントは、ミッション(目
的)の達成のためにもとても重要な作業といえます。
この項では、次のような運営面に関するリスクマネジメント事例を取り上げ、ある
N P O で実際に行われている対処事例なども紹介していきます。
※ 運営リスクの多くは、どのNPOにもほぼ共通しているといえますが、それぞれの組織の形態
や構成によって違いがありますので、これらの内容を参考にして自分たちの団体にあったリス
クマネジメントを構築してください。
現金等の管理
p. 9
マスコミ対応
p . 13
情報管理
p . 10
運営リスク
ボランティア
p . 11
労務管理
p . 12
8
運営リスク
Case 1
現金等の管理
に お けるリスクマネジメント
NPOにとって、資金は組織運営と活動に欠かせない重要な資源です。多少にかかわらず資金を
どのように管理するかという問題は、NPO運営の重要な一側面です。盗難・紛失などにより失わ
れる金銭的損失をはじめとするダメージと、資金管理をルール化することにより発生する労力や経
費とを比較して、適切な資金管理対策をとることが大切です。
現金等の管理におけるリスクとは (リスクの発見・把握)
● 現金や通帳、印鑑、キャッシュカードが盗難・紛失する
● 盗難・紛失した印鑑、キャッシュカードなどが悪用される
そのリスクが発生したらどうなるのか (リスクの評価・分析)
● 組織運営や事業継続に影響がでる
● 銀行や郵便局への届け出や実印の変更手続きなど、労力と時間がかかる
● スタッフやボランティアなど、関係者の間で不信感が生まれる
● 社会的な信用が失墜する
どのような対処法が可能か (対処方法)
● オフィスの防犯を徹底する
● 通帳とキャッシュカードや印鑑を同じところに保管しない
● 鍵のかかる金庫に現金などを保管する(耐火・耐震性に強いものであればなお可)
● 現金の出し入れに対してルールを作り、決まった人のみが取り扱う
● 会計帳簿を定期的に複数の人間がチェックする
対処事例
あるNPOの場合 ・・・
夜間、何者かにオフィスに侵入され、現金が盗まれるということがありました。被害総額は80万円以上でした。日
頃は多額の現金を置いておくことはないのですが、運悪く、近々行われる予定だったイベントの経費として、金庫に
約50万円の現金が入っていました。また、手渡ししていた給料を、一部のスタッフが鍵のかからない自分の引き出
しに入れていたため、それも一緒に盗まれてしまいました。古いビルに入居していたため、防犯管理上、抜け道にな
るところが何点かあったのが原因の一つでした。
それ以後、現金の取り扱いを減らすために、スタッフへの給料や各種の支払も振り込みに変更しました。
また、現金を盗まれたことは、会員など関係者にすぐに報告して事態を説明し、再発防止策を講じるなど、関係者
からの信頼回復に努めました。もし彼らが私たちからではなくどこか別のルートからこの事態を知ることになれば、私
たちへの不信感が募ると思ったからです。
9
運営リスク
Case 2
情報管理
に お けるリスクマネジメント
NPOにとって情報は大切な財産です。単に情報といっても、組織運営にかかわる会員、ボラン
ティア、寄付者などの個人・団体に関する情報と、事業推進にかかわる重要な情報や団体独自の蓄
積情報(ノウハウ)に分かれます。これらの情報を有効に活用しつつ、協力者の保護、団体の信用
や権利を守るためにきっちりとした情報管理を行う必要があります。もし情報が漏れたら・・・等のリ
スクに備えて、手元にある情報活用の基準やルールを明確にしておかなければなりません。
情報管理におけるリスクとは (リスクの発見・把握)
● 災害や事故によりデータが喪失・破損する
● コンピュータウィルスの感染によりデータが喪失・破損する
● うっかりミスによりデータを削除する
● データが盗用・複写・改ざんされる
そのリスクが発生したらどうなるのか (リスクの評価・分析)
● 会員などの個人・団体情報が悪用される
● データ・情報の喪失により事業活動に支障をきたす
● 組織の信用が失墜する
どのような対処法が可能か (対処方法)
● 組織内部で情報の取り扱いルールを決めて、日常的にルールの徹底を行う
● 重要なファイルは、鍵がかかる場所に保管する。または、限られた関係者のみがアクセスできるようにする
(例:コンピュータのデータはパスワードを設ける)
● コンピュータのデータは、バックアップをとり安全な場所に保管する(耐火・耐震性の強い金庫ならなお可)
● データの破棄方法に留意する
対処事例
滞日外国人からの相談に対応するNPOの場合 ・・・
私たちの団体へは、相談に訪れる外国人やボランティアなど、毎日さまざまな人が出入りするので、情報の共有化
とともに情報管理の必要性も痛感しています。外国人から相談を受けたときは、相談内容をケースシートに記入し、
その内容をデータベースに入力します。入力を終えたケースシートは鍵のかかる書庫へ保管し、データベースには、
パスワードを入力しなければアクセスできないようにしています。それと同時に、個人情報の入力や取り扱いについ
ては、責任を十分に認識した特定のボランティアが担当することにしています。
情報管理で見落としていたのがコピーです。以前、
コピーに失敗したケースシートの用紙が再利用するための裏
紙に使われてしまったことがありました。それを発見したスタッフが再発防止を強く要望し、それ以降、ボランティア
の業務分野ごとに細かな情報管理の認識を徹底させるよう改善しました。
10
運営リスク
Case 3
ボランティア
に関 するリスクマネジメント
有給スタッフを有するNPOでも、ボランティアの協力なくしては活動が成り立たないという団
体もあります。「ボランティア」と一口に言っても、かかわり方や組織での位置付けはさまざまです。
ヘルパーや通訳といった専門的なスキルの提供を担ったり、会報の発送やデータ整理などの事務を
手伝ったり、実際に組織の運営の一部を任されるボランティアもいます。
ボランティアとして参加する人たちの思いと、受け入れる団体側の理念や活動内容を十分に確認
し合い、リスクを最小限にしつつ、最大限の力を発揮できる環境づくりをする必要があります。
ボランティアに関するリスクとは (リスクの発見・把握)
● ボランティアが事故の加害者あるいは被害者になる
● ボランティアが自分の役割や責任の範囲を把握せずに行動する
そのリスクが発生したらどうなるのか (リスクの評価・分析)
● ボランティアが、サービス利用者や第三者の安全をおびやかす
● 団体として賠償責任が問われる
● 組織の信用が失墜する
どのような対処法が可能か (対処方法)
● ボランティアの選考から配置、研修活動、フォローアップに至るまでの基準とルールを確立する
● ボランティアの採用時には合意書を交わす
● 保険に加入する
対処事例
長期にわたる森林ボランティアを募集するNPOの場合 ・・・
ボランティアの選考は、
まず申込書の応募動機などで書類選考した後、委嘱している面接委員によるグループ
面接を行い、最後に事務局による個人面接を経て決定するというプロセスを踏んでいます。
ボランティア活動中のケガなどに対しては、原則として「事故は自己責任」としていますが、国内の活動では参加
時に必ずボランティア保険に加入してもらうシステムをとっています。また、海外へボランティア派遣する際は、人に
よって求める保障も異なるため、各自が保険に加入するなどの対応をしています。
外国人支援を行うNPOの場合 ・・・
ボランティアを始めてもらう際には、
まず登録フォームに記入してもらい、組織の理念や現在のプロジェクトについ
ての総合的なオリエンテーションを受けてもらいます。私たちの組織はボランティア中心で動いているので、ボラン
ティアが思い込みで対応することがないよう、常に自分たちのミッションは何かを、全員で確認し合いながら活動を
進めています。個々の事業では、プロジェクトごとにチームによる運営体制を敷き、ボランティアマニュアルをそれぞ
れ作成することによって、一定のリスクは顔の見える範囲で回避しようとしています。
11
運営リスク
Case 4
労務管理
に お けるリスクマネジメント
NPOで働いている人の中で、収入面や福利厚生面を第一条件としている人は少ないかもしれま
せんが、おろそかにしていいということにはなりません。熱意や善意あふれるスタッフであるから
こそ、社会保険や就業規則などをきちんと整備し、安心して仕事を続けてもらえる環境をつくるこ
とが必要なのではないでしょうか。
労務管理におけるリスクとは (リスクの発見・把握)
● スタッフが業務中に死亡・ケガをする
● 組織の意向に反する行動をする
そのリスクが発生したらどうなるのか (リスクの評価・分析)
● スタッフが業務中に死亡・ケガをした場合、雇用者としての責任が生じる
● スタッフがトラブルを起こすことにより、組織の信用が失墜する
どのような対処法が可能か (対処方法)
● 労災保険などに加入する
● 就業規則等、雇用に関する諸規則を作成する
● 就業規則等を徹底するため、定期的にオリエンテーションを行う
対処事例
介護サービスなどを行うNPOの場合 ・・・
私たちの団体は、法人格を取得する以前からパートタイムのスタッフとヘルパーに対して、組織が経費を負担して、
パート法による労災補償に加入していました。事務局のスタッフには、商工会議所の中小企業制度を利用して失
業保険もかけていました。
なぜかというと、NPOも事業をするための一つの形態にすぎず、NPOだからといって特別のものではなく、社会
の中での組織の責任やスタッフへの責任は、とても重要なものだと私たちは考えているからです。
その後、法人格取得を機に、就業規則や給与規定といった各種規定を作成し、労働基準監督署に提出しました。
これらの規定については、担当者と社会保険労務士が打ち合わせを重ね、全体での研修会も行いながら、組織内
に徹底させました。
12
運営リスク
Case 5
マスコミ対応
に お けるリスクマネジメント
マスコミは自分たちの組織の目指すものや活動について多くの人に知ってもらいたいとき、大き
な助けとなります。しかし、「取材を受けて応対したが、自分の発言が違う意図にとられかねない
ような記事にされた」というように、自分たちにとってマイナスに働くこともあります。また、自
分たちが抱える問題について批判的に報道をされることは、団体にとってのダメージだけでなく、
非営利セクター全体への信用を落とすことにもなりかねません。普段から、マスコミへの対応のル
ールを取り決めておくことと、記者等との信頼関係を築いておくことが大切です。
マスコミ対応におけるリスクとは (リスクの発見・把握)
● 誤った内容や批判的な報道をされる
● 発言やコメントが真意とは異なる形で使用される
そのリスクが発生したらどうなるのか (リスクの評価・分析)
● 組織の信用が失墜する
● 誤報の訂正や信頼回復には多大な労力と時間がかかる
どのような対処法が可能か (対処方法)
● 取材打診の際に、取材内容の使われ方を確認する
● 可能であれば、事前に事実確認のための原稿チェックをしたいと要請する
● 取材内容が採用された成果物を、完成時に送ってもらう
● 普段からマスコミとの信頼できる関係を築く
対処事例
NPOを支援するNPOの場合 ・・・
取材対応については、対面取材を原則にしています。電話で取材コメントを求められたときには、面識のない記者
からの依頼はお断りをしています。また、職員が個人的に取材を受けるかどうかを決めてしまわずに、事務局長や他
の職員たちと事前相談を行うことも徹底しています。新聞社以外のところから取材の申し出があった場合は、いっ
たん記事の企画を書面でいただけるようにお願いし、企画内容を検討してから取材等の協力の可否を決めます。
どういうときに取材を受けるかなどの細かな点では職員の間でも意見が分かれることがありますが、概ねルールは
守られています。
中には、私たちに対する取材ではなく、他のNPOを取材したいので紹介してもらえないかという依頼がくることもあ
ります。このようなときには、
まず企画の趣旨を最初に確認します。確認できないときには、
こちらから他のNPOを紹
介することは控えます。また、団体を紹介する場合は、原則として先方の承諾をとってから紹介しています。ここまで
慎重にしているのは、いったん記事になると変更や訂正をすることが難しいからで、この基本ルールは団体設立時
に作成し、現在に至っています。
13
個
々
の
活
動
・
事
業
面
に
関
す
る
リ
ス
ク
︵
事
業
リ
ス
ク
︶
事業リスクとは?
運営リスクが組織の存在基盤そのものに関するものだとすると、事業リスクはNPO
が提供するサービスや活動それぞれに関連するリスクと言えます。運営リスクと同様に、
「人・物・金・情報・信用」に影響を及ぼすリスクが、それぞれの事業に存在しています。
介護サービスや自然の中での活動など、リスクの起こりやすいものや、紛争地域での難
民支援のように、発生すると損失がとても大きいものなど、事業によってその特徴はさ
まざまです。それだけに、リスクを自覚し、すでに取り組んでいるNPOも多くあります。
事業リスクに対するリスクマネジメントができていなかったり失敗したりすると、場
合によっては組織の存在そのものが脅かされることとなります。その点では、事業リス
クは運営リスクと完全に分けて考えられるべきものではありません。現場のスタッフや
ボランティア、サービス利用者の意見に耳を傾けながら事業の責任者がリスクを把握し
リスクマネジメントを行うことが、事業リスクのマネジメントのカギとなります。
この項では、次のような事業面におけるリスクマネジメント事例を取り上げ、ある
NPOで実際に行われている対処事例なども紹介していきます。
※事業リスクは、個々の活動・事業によって違ってきますが、リスクを洗い出したり評価する手
法や視点には共通するものが多々ありますので、これらの内容を参考にして自分たちの活動や
事業にあったリスクマネジメントを構築してください。
ホームヘルプ
p . 15
事業
事業 国際協力
p . 16
シェルター
p . 19
事業リスク
野外教育
p . 17
電話相談
p . 18
14
事業リスク
Case 1
ホームヘルプ事業
に お けるリスクマネジメント
2 0 0 0 年4月からの介護保険制度の実施により、NPO法人や企業もこの分野に新規参入してき
ており、サービスの質やコスト面で競争が図られるようになってきています。
閉じられた空間の中で、利用者とヘルパー・職員が直に接するという事業だけに、トラブルが発
生する危険性も高く、リスクも大きなものになる可能性があります。安全で確実なサービスを提供
するためには、サービスの質はもちろんのこと、ヘルパーなど介護事業にかかわる人たちへの保障
など、組織からの支援体制も重要です。
ホームヘルプ事業におけるリスクとは (リスクの発見・把握)
● ヘルパーがサービス利用者に対してケガ等を負わせる
● ヘルパーがサービス利用者やその家族とのトラブルに巻き込まれる
● 組織のヘルパー管理が徹底されなくなる
そのリスクが発生したらどうなるのか (リスクの評価・分析)
● サービス利用者の安全がおびやかされる
● ヘルパーの安全がおびやかされる
● 組織の信用が失墜する
どのような対処法が可能か (対処方法)
● ヘルパーの質を高め、その質を維持する
● 事故や事故につながりそうなことに関する報告体制を確立する
● ヘルパーへの保障も提供する
対処事例
訪問介護や看護、デイケア・サービスを提供するNPOの場合 ・・・
私たちは、ボランティア団体から出発したのですが、当初から「組織としての責任」について意識してきました。
そして、年々組織が大きくなり、
リスクマネジメントの必要性も十分に感じ、実践するようになりました。
例えば、サービス利用者から「連絡がくる」
「相談を受ける」
・・・など、業務の内容によって7つの段階に分け、す
べての作業にフォーマットを設けてリスクを予防しています。また、危険は介護の現場に一番多く存在するので、
各ヘルパーには、
「活動中にドキッとしたこと」
「不適切な対応をしてしまったこと」
「相手から出されたクレーム」の
3種類について報告書を作成することを徹底し、
どんなことでも報告書にして提出してもらっています。ただ、
どんな
にリスクをリスト化し、対処方法を積み上げたとしても、行くはずのヘルパーが行かなかったり、何か変更があっても
先方に電話をしなかったというような初期ミスは起こりえます。そこで、スタッフには日頃から、初期ミスを防ぐ措置を
徹底させています。
また、私たちはサービスの品質管理について、訪問介護、訪問看護、デイ・サービスおよびケアプランの4部門で、
ISO9001
(国際標準化機構が定めた品質管理に関する国際規格)の認証を取得しました。
15
事業リスク
Case 2
国際協力
に お けるリスクマネジメント
国際協力には、技術支援やフェア・トレード(※)、難民支援といった平時の活動と、災害や紛争
時における救援活動などがありますが、現地に拠点を置かず緊急時にかけつけるNPO、事務所や
常駐のスタッフを現地に置いて事業を行っているNPOなど、その活動形態はさまざまです。
海外で活動を行う場合には、習慣の違いや治安の問題など、トラブルや犯罪に巻き込まれるケー
スが多く見受けられます。特に災害や紛争などの救援活動では危険性も高く、いかに普段からリス
クマネジメントが徹底されているかが重要です。
※ フェア・トレード:発展途上国との公正な貿易
国際協力におけるリスクとは (リスクの発見・把握)
● 活動地域が戦争や紛争などで危険な状態になる
● 事故や犯罪の加害者または被害者になる
● 現地の住民との不和・対立が起こる
● 本部の機能が災害などでマヒする(例:海外のオフィスへの送金や指揮系統の要となっている日本の事務局)
そのリスクが発生したらどうなるのか (リスクの評価・分析)
● スタッフやボランティアの安全がおびやかされる
● 現地の住民からの信頼を失い、活動ができなくなる
● 現地事務所への資金や情報などの流れが途絶える
どのような対処法が可能か (対処方法)
● 普段から緊急時の対応についてマニュアルを作成し徹底する
● 他団体や国連、大使館などと協力体制をつくり、チームとして活動する
対処事例
海外で救援活動などを行うNPOの場合 ・・・
日頃から緊急時の対応については、本部・現地事務所でそれぞれの取り決めを行っています。
例えば、現地事務所が強盗に襲われたような場合、①生命の安全を第一に考え、物品などはあきらめること、
②ただし、外部との連絡のため通信機器と移動手段だけは確保すること、と指示しています。
現地の治安が悪化した場合の指示としては、①事業は当面停止すること、②現地にとどまるのが危険な場合、
安全な隣国あるいは最も近い安全地域に移動すること、
を徹底しています。治安や危険性の認識などは、現地の
ネットワークが一番詳しく情報を把握しているので、撤退の時期などについては現地スタッフの判断を優先しています。
また、不測の事態を想定して、通常の活動費とは別に、緊急対策費をプールしています。
16
事業リスク
Case 3
野外教育
に お けるリスクマネジメント
野外教育の分野は以前から、ケガや事故に対する危険意識や安全管理への取り組みなどには実績
がありました。しかし、従来の安全管理とは、救急法など「事故が起きてから」の対処法であり、
現在では、「事故が起きる前」の危険予知や危険回避など、総合的なリスクマネジメントの必要性
が叫ばれています。また、野外教育企画担当者向けのセミナーでも、指導者のためのリスクマネジ
メント講習が開催されるようになり、各団体においてリスクマネジメントに対する意識が高まり、
熱心に取り組まれるようになってきました。
野外教育におけるリスクとは (リスクの発見・把握)
● 参加者が道具を誤って使用し、ケガをする
● 雪崩や高波などの自然災害により参加者がケガをする
● 利用施設の器物などを損壊する
● 移動中に事故に遭う
そのリスクが発生したらどうなるのか (リスクの評価・分析)
● 参加者に自然の楽しさを知ってもらうという趣旨が損なわれる
● 信用を失うことにより活動の継続が困難になる
● 賠償責任や傷害などによる医療費負担が生じる
どのような対処法が可能か (対処方法)
● 自然や野外活動における危険について、事前に参加者(未成年者の場合はその親に対しても)に説明し、合意を得る
● 野外教育指導にあたるボランティアやスタッフが救急法などの講習を受ける
● リスク発生時に現場や参加者の家族、マスコミなどとの連絡がとれる体制を整える
(必ず主催者を代表して話ができる人が事態にあたれるようにする)
● 保険に加入する
対処事例
ある野外教育を実施しているNPOの場合 ・・・
私たちの団体では、活動ごとに役割分担を明確に決めています。例えば、自然の中での危険対処を行う「班付
きリーダー」を参加者10人(1班)に対して1人つけ、その上に、総合的な現場での危険対処を行う責任者として、
40人(4班)に4人の割合で「プログラム・ディレクターやマネジメント・ディレクター」を置いています。さらにその
上には、保険加入など野外教育活動全体の安全管理を行う「ディレクター」がいて、最後に組織全体のリスクマ
ネジメント責任者としての「最高責任者」を置いています。
参加者が子供の場合にはより細心の注意を払います。20歳未満の参加者については、保護者への説明会や
文書で活動の内容を事前にお知らせし、保護者の参加同意書をもらっています。危険予知訓練では、指導者やボ
ランティアだけでなく、参加者にも危険予知・回避能力を身につけてもらうよう努力しています。
保険への加入は、不可欠のものと考えています。日本キャンプ協会の指導者資格を保有する会員には賠償責
任保険に自動的に加入されるようにもなっています。
今後の課題ですが、事故に関するデータベースの整備や、現場で起きた事故に対してオフィスでより充実したバ
ックアップができる体制も整えていきたいと考えています。
17
事業リスク
Case 4
電話相談
に お けるリスクマネジメント
いじめ、ひきこもり、離婚、ドメスティックバイオレンス(※)など、深刻な問題を抱えている人
たちからの電話相談には、毎日複雑な相談が寄せられています。
しかし、顔が見えないままの知らない人との会話は難しいものです。内容が複雑で深刻なもので
あればなおさらのこと。それだけに、対応の仕方によってはトラブルに巻き込まれたり、訴えられ
たりする可能性も生じてきます。限られた時間と情報の中で問題の所在を的確に見抜きながら、適
切な対応をしなければならないため、相談員の適性・資質が問われることもあります。
※ ドメスティックバイオレンス:夫や恋人など男性から女性への暴力
電話相談におけるリスクとは (リスクの発見・把握)
● 相談員が情報を第三者に漏らす
● 相談員が相談者に不適切な助言や発言をする
● 相談員が相談を受けるにつれて精神的にストレスをためこむ
● 特定の相談員が相談者やその家族などから非難される
そのリスクが発生したらどうなるのか (リスクの評価・分析)
● 相談者のプライバシーが侵害される
● 相談者への支援という目的が達成されない
● 相談員が長続きしない
● 相談員の不適切な助言により訴えられる、または、かえってトラブルを大きくする
どのような対処法が可能か (対処方法)
● 相談員の選考や研修に細心の注意を払う
● 「ベテラン」相談員が「新人」相談員に常にアドバイスを行う
● 相談者は名前を訊かれても名乗らない
● 相談者が特定できるような情報は外部に流れないようにする
対処事例
女性からの電話相談を受けるNPOの場合 ・・・
電話相談には、相談員として採用されたスタッフとボランティアが対応しています。相談員になるには、
まず私た
ちが実施する養成講座を受講してもらいます。講師には弁護士や心理カウンセラーなどの専門家を迎え、内容は離
婚相談やドメスティックバイオレンス(DV)など、実際に私たちが受ける相談の中で多いものを扱います。講座は年
に1回開かれ、受講後に面接を行い、最終的に採用する人を絞り込んでいきます。
しかし、採用されたからといって、すぐに相談業務ができるわけではなく、ベテランの相談員がついて指導します。
また、相談を受けはじめてから、向いていないことがわかると辞めてもらうこともあります。その他、研修を年に2∼3回
行い、新人だけでなく、ベテランも常に資質を高めるよう努めています。
相談員は相談者に訊かれない限り、名前を言わないようにしています。これは、いつも同じ相談員が対応できる
わけではないという事情もありますし、相談業務でもし何かトラブルが起きて訴えられることがあっても、相談を受け
た相談員個人ではなく団体として対処するためでもあります。
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事業リスク
Case 5
シェルター
に お けるリスクマネジメント
女性のためのシェルター(※)には、外国人や日本人、子どもを連れた人など、さまざまな人たち
が助けを求めてやってきます。近年では、ドメスティックバイオレンスの被害者なども多くなり、
居場所が相手方などにわかると生命に危険が及ぶことも考えられます。入居者に対するプライバシ
ーの保護と安全の確保がシェルターには重要です。また、シェルターの中には集合住宅の一室を利
用している場合もあるので、スタッフや守衛が24時間配置されていないところでは、夜に警備が手
薄になるという課題も残されています。
※ シェルター:暴力被害者などのための緊急一時避難所
シェルターにおけるリスクとは (リスクの発見・把握)
● シェルターの場所がボランティアを含む関係者、入居経験者やマスコミ、近隣住民等により
(「うっかり」も含めて)第三者に知られる
● 利用施設の器物を損壊する
● 入居者同士のトラブルによりケガをする
● スタッフやボランティアと入居者がトラブルを起こす
● 入居者やシェルター関係者と、近隣住民がトラブルを起こす
そのリスクが発生したらどうなるのか (リスクの評価・分析)
● 入居者の肉体的・精神的な安全がおびやかされる
● 施設の一部または全損壊により、シェルター運営の続行が不可能になる
どのような対処法が可能か (対処方法)
● シェルター利用者の入居時には、利用規則などについて説明し合意してもらう
● マスコミの取材(特にカメラが入る場合)には、シェルターの場所が特定しうる場所(近隣の町並み、
窓からの景色など)はいっさい撮影禁止にする
● 入居者の情報管理を厳重に行う
● 火災保険や地震保険などシェルター施設に保険をかける
対処事例
女性のためのシェルターを運営するNPOの場合 ・・・
シェルターにおいては、入居者の身の安全を脅かすリスクが一番深刻な問題です。私たちのシェルターは集合住
宅の一室にあるのですが、ボランティアや入居者には、
シェルターの場所を知られないように指導しています。それ
がたとえ家族や友人であっても、場所を伝えたり、連絡をしたりしないよう徹底しています。取材などに対しては、入
居者の姿はもちろんのこと、建物の入口や玄関、窓からの景色など、場所が少しでも特定可能なものは絶対に撮影
させません。
また、時々、入居者の夫らしき人が建物のまわりをうろついたりすることがあるのですが、管理人とはすぐに連絡が
とれる体制をとっています。しかし、夜間は管理人がいなくなるので、警備の面で心配が残ります。
集合住宅には一般の方も生活をしているので、近隣住民とのトラブルを避けるための配慮もしています。特に、
小さな子どもがいる入居者の場合には、騒いで隣や階下の住人の方に迷惑をかけないよう徹底しています。
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参考資料
リ ス ク洗い出しシート
団体名
作成日:
作成者:
団体の設立趣旨は何ですか
どのような活動を行っていま
すか
活動を阻害するものにはどう
いうものがありますか
(あなた の 団体 のリスクはなん
ですか)
そ の 阻 害 要 因 が 現 実 に起こ
ったらどうなりますか
そ の 阻 害 要 因 が 起こら な い
よう、どの ように準 備して い
ますか
今までどのような阻害要因が
発生しましたか
そのときどう対応しましたか
(注)本シートは、貴団体の活動にどのようなリスクがあるかを把握し、理解していただくためのもので具体的な対策は記載
していません。なお、利用される場合には、
コピーしてお使いください。
<記載方法の注意>
● 設立趣旨にしたがって様々な活動をされていますので、
もう一度設立趣旨を確認しておくことが必要です。
● 回答欄は、
簡潔に(できれば箇条書き)ポイントのみを記載するとともに、優先度の高い順位にしたがって記載す
ることが重要です。
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参考資料
リスクマネジメント・プランシート
作 成 日: 年 月 日
承 認 日: 年 月 日
実施開始日: 年 月 日
リスク
リスクがもたらす
損失
発生頻度(起こりやすさ)
および 損害程度
発生頻度: 高 ・ 低
損害程度: 大 ・ 小
責任者
予算
プランの概要
役割と担当者
リスクとプランの
再検討時期
備考
(注)前頁で発見された「リスク」に備えるため、各リスクごとにプランシートを作成し、具体的な方法を記入してください。
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参考資料
リスクマネジメント・チェックリスト
リスクへの意識
□ 組織が直面するリスクについて把握している
□ 現実的なリスクマネジメントプランを持っている
□ リスクやプランの見直しを定期的に行っている
めざすべき 状 態
リスク感 覚を 、責 任 者 はじめ 関 係 者
全員が持ち、リスクマネジメントを実
施している
□ 必要に応じて、専門家に相談をしている
モノ・災害
□ 退出時には戸締まり、火の元の確認を万全に行っている
□ 天災や人災に備え、適切な保険等に加入している
□ 地震に備え、棚やコンピュータを固定している
めざすべき 状 態
オフィス の 安 全 管 理 が なされ 、ケ ガ
や 盗難を予防する体制、災害に備え
る体制ができている
□ 警察や消防、町内会の代表者などの連絡先を知っている
情報管理①:データ編
□ 重要なデータのバックアップをとっている
□ ウィルスの感染を予防するソフトウェアをインストールしている
□ バックアップは、コンピュータとは別のところに保管してある
□ 重要なデータには、限られた人のみが閲覧できるようにしている
めざすべき 状 態
データの流出、改ざん、盗難を未然に
防ぐ最 善 の 努 力をし、データ回 復 の
措置をとっている
(例:コンピュータ文書にパスワードをもうける、鍵のかかるキャビネットに保管する)
情報管理②:渉外・コミュニケーション・風評管理編
めざすべき 状 態
□ 会員やクライアントなどに関する個人情報を守る措置を
講じている
□ 守秘義務を守るよう関係者に徹底している
組織に関しての外部での悪評や風評
を 未 然に防ぐ最 善 の 処 置を 施し、風
評リスクに備えている
□ 取材やクレームなどに対応する責任者を決めている
労務
□ 就業規則を文書で作成している
□ 有給スタッフとの間で雇用契約書を交わしている
□ ボランティアと契約書または同意書を交わしている
□ 雇用条件や待遇などについて、定期的に見直している
めざすべき 状 態
スタッフやボランティアなど、広い意
味での人事面でのトラブル の発生予
防と対処をしている
□ 適切な社会保障制度を整備している
契約
めざすべき 状 態
□ 重要な契約について、文書で合意している
□ 契約を結ぶ相手がパートナーとして適切かどうか、
十分に検討している
□ 重要な契約書は厳重に保管されている
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重要な契約や 約束は書面化し、当事
者による合意がなされている
資金管理
□ 限られた人(事務局長、会計責任者など)のみが資金への
アクセスを有している
めざすべき 状 態
□ オフィスにある現金の出し入れに関するルールが徹底され
ている
組織の資金を守るためのシステムが
確立されている
□ 収入源が極端に限られずに分散している
□ 通帳と印鑑は別々のところに保管している
□ 統一した明朗な会計システムを使用している
(毎年変えたりしていない)
事業リスクに対するマネジメント
□ イベント実施の責任者を明確にしている
めざすべき 状 態
□ 業務マニュアルを作成している
□ 事故が起きたときの報告体制が確立されている
□ 事故やトラブルの内容を、書面でも記録している
□ オフィスの外でのイベントでは、一番近い病院、警察・消防署、
(海外の場合は)大使館などの連絡先や場所を把握している
事業実施に関する流れと各人の役割
や 責 任が 明 確にされ 、
トラブル の 防
止と発生時の対処が事前に確立され
ている
□ 特別な活動を行う場合、必要な保険に加入している
(注)上記は一例であって、すべてのリスクやリスクマネジメント方法を網羅するものではありません。
NPOのためのリスクマネジメント −リスクと上手につきあうには・・・
発 行 日 : 2001年6月
発 行 者 : 社団法人 日本損害保険協会
企画・編集 : 特定非営利活動法人 日本NPOセンター
社団法人 日本損害保険協会
取材協力団体(五十音順)
・ 特定非営利活動法人 かながわ女のスペースみずら
・ 特定非営利活動法人 ケアセンターやわらぎ
・ 特定非営利活動法人 国際自然大学校
・ 特定非営利活動法人 市民フォーラム 21・NPOセンター
・ 社団法人 シャンティ国際ボランティア会
編 集 協 力 : NPOリスク・マネジメント・オフィス
・ 特定非営利活動法人 多文化共生センター
・ 特定非営利活動法人 地球緑化センター
・ 特定非営利活動法人 難民を助ける会
・ 日本ボランティアコーディネーター協会
・ I I H O E[人と組織と地球のための国際研究所]
23
日本損害保険協会の主な事業
●消費者への情報提供と対話活動に積極的
に取り組んでいます
・情報提供活動
・対話・調査活動
・学校教育関係活動
●安全対策と災害防止に力を注いでいます
・交通事故防止事業
・災害予防事業
・安全防災に関する調査・研究
・自動車盗難防止対策
●環境保全活動を推進しています
・損害保険業界の環境保全に関する行動計画の推進
・リサイクル部品活用キャンペーン、
部品補修キャンペーン
●NPO・ボランティア活動を推進してい
ます
・NPOシンポジウム、講演会の開催
・ボランティアガイドブックの作成
●活発な国際交流で相互理解の輪を広げて
います
・国際会議への参加
・海外保険関係機関との交流
・対外情報サービス
・日本国際保険学校( I S J )の開催
・海外保険事情の調査・研究
●損害保険の相談窓口を設けています
・そんがいほけん相談室(全国15か所)
・自動車保険請求相談センター(全国52か所)
●損害保険業界に関する種々の課題につい
て業界の意見を表明しています
あいおい損保
ソニー損保
ニッセイ同和損保
アクサ損保
大成火災
日本興亜損保
朝日火災
太陽火災
日本地震
共栄火災
第一ライフ損保
富士火災
ジェイアイ
大同火災
三井海上
スミセイ損保
東京海上
三井ダイレクト
住友海上
トーア再保険
三井ライフ損保
セコム損害保険
日動火災
明治損保
セゾン自動車火
日産火災
安田火災
災
日新火災
安田ライフ損保
安田ライフダイレクト
社団
日本損害保険協会
法人
安全防災部N P Oグループ
〒101-8335 東京都千代田区神田淡路町 2-9
URL:http://www.sonpo.or.jp
E-mail:[email protected]
*本ガイドブックに関するお問い合わせ先
安全防災部NPOグループ TEL:03-3255-1294
このガイドブックは、古紙100%・白色度80%の再生紙を使用し、
大豆油インクで印刷しています。
2001. 6, 10000
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