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「クリーン・エネルギーの波」:代替エ ネルギーにおける機会とリスク 第 7

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「クリーン・エネルギーの波」:代替エ ネルギーにおける機会とリスク 第 7
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Climate Change: Risks and Opportunities for the Finance Sector
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第 7 講:「クリーン・エネルギーの波」:代替エ
ネルギーにおける機会とリスク
第 7 講 学習内容



目的
序論
講義本論
o クリーン・エネルギーにおける最近の投資トレンドはどのようなものか
o クリーン・エネルギー投資の資金源
o 技術の概説
 太陽
 風力
 バイオ燃料
 バイオマス
 地熱
 水力
 海洋
 燃料電池
 原子力
 CCS
 合成燃料
 クリーン石炭
クリーンテクとは何か
クリーン・エネルギー革新をどのように賄うか
結論



o
o
o
復習
関連リンク
補足学習用資料
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目的
本講の中心的な目的は、以下のようなものである。
1.
2.
3.
4.
クリーン・エネルギー部門における現在の投資トレンドを吟味する
クリーンおよび代替エネルギーの技術を吟味する
「クリーンテク」という言葉の定義付けを行うとともに、その応用について考える
金融イノベーションのプロセスと、技術の開発から商業化までの「金融の連なり」
について検討する
序論
「クリーン」または「代替」のエネルギーという言葉には、再生可能エネルギーと他の様々
な低炭素技術の両方の意味が含まれる。本講では、クリーン・エネルギー部門における主だ
った投資家層、実在する技術、現在ある機会(およびリスク)の一部について説明していく。
「米国は石油中毒にかかっているが、石油というものは世界の不安定地域から輸入されてく
ることが多い。この中毒から脱する最善の方法は、技術の活用である」。
ジョージ・W・ブッシュ大統領による一般教書演説
2006 年 1 月 31 日
米
国大統領がこのスピーチをしてから 2 年、再生可能エネルギー
の各市場は不均一ではあるが劇的な成長を遂げている。今では、
世界で最も大きい風力発電拠点のうちのいくつかがテキサスに
ある。しかし、バイオ燃料の「ゴールド・ラッシュ」が原因の一翼を成
す穀物市場と油料種子市場における世界的な混乱は、気がかりな出来事
である。代替エネルギー部門は進化の途中にあって、成長の苦しみの一
環を味わい始めているのである。
最近の統計によれば、全世界のクリーン・エネルギー業界は複合年間成長率で言っておよそ
25%のペースで成長し続けているという。一部の地域および技術はこれよりも更に力強い成
長を見せている。信用市場および通貨市場における波乱、石油および商品の記録的な高値、
低迷する消費者信頼感、そして不況を告げる数々のサインを背景とする多難な経済見通しの
真っただ中にあって、過去 12 か月はクリーン・エネルギーにとってまたもや出色の一年と
なった。
再生可能エネルギー技術の比較費用と実績の積み上げは、経済の現場でこれらが応用される
件数に先進国と発展途上国の両方で上昇があるという段階にまで達している。2008 年現在、
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国際的なバイオ燃料産業および太陽光発電産業はそれぞれ 200 億ドルを上回る年間収益を上
げており、風力発電事業が稼ぎ出す年間収益は今や 300 億ドルを超えている。
1. クリーン・エネルギーにおける最近の投資トレンド
「クリーン技術」部門における投資家の顔ぶれはここ数年の間に様変わりしている。2007
年における対クリーン・エネルギー投資は、世界の全てのエネルギー産業インフラ融資の
19 パーセントを占めていた。最近の投資家および金融セクター参加者の多くは気候変動を
背景的な問題と捉えており、自分たちの事業判断の推進要因とは見ていない。全世界の各ク
リーン・エネルギー市場に対する投資は力強いペースで伸び続けると予測されている。同部
門はたちまちのうちに表舞台に躍り出ており、流行を博しているどの投資領域もそうである
ように、そこにはリスクが控えている。
クリーン・エネルギー:魅力ある機会を作り出す 5 つの力
1.
2.
3.
4.
5.
経済的に競争力のあるクリーン技術
エネルギー保障面およびエネルギー・ポートフォリオ管理面の懸念
石油およびガスの価格ボラティリティー
消費者および環境からの要請
義務的エネルギー政策および奨励制度
全世界における対クリーン・エネルギー技術新規投資(研究開発、ベンチャー・キャピタル、
公開市場およびプロジェクト・ファイナンスを含む)は 2007 年に 60 パーセント増大し、
2006 年の 926 億ドルから 1,484 億ドルに跳ね上がった。同時期、主要な代替エネルギー産
業も収益において 2006 年の 550 億ドルから 773 億ドルへの 40 パーセントの伸びを享受し
ている 1 。2008 年において、クリーン・エネルギー関連技術および市場は世界中の経済圏で
極めて重要な成長部門となっている。
この結果、初期開発から商業的応用、そして大型インフラ・プロジェクトに至るまで、金融
のプロ達の前に差し出される機会の数はどんどん増えている。これは技術開発についての
「金融の連なり」として捉えることができる。
金融の連なり:技術の開発と応用
A) 初期開発:公的資金およびベンチャー・キャピタル(助成金、エクイティ投資)
B) 拡大段階:ベンチャー・キャピタル/プライベート・エクイティ(エクイティ投資)

C) 商業化:プライベート・エクイティ/公開市場(エクイティおよびデット投資)
D) インフラ:プライベート・エクイティ、ストラクチャード・ファイナンス/プロジェ
クト・ファイナンス(デットおよびエクイティ投資)
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ニュー・エネルギー・ファイナンスからの提供数値。 http://www.newenergyfinance.com/
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金融のプロとして、上記に示された連なり領域のうちであなた個人が最も興味をそそられる
ものはどれか?その理由は?
では、その次は?
初期の矢継ぎ早の開発が終了した後、クリーン・エネルギー部門における好適技術および投
資についての軌道の予測を立てることはより困難になってきている。殆どの地域においては、
化石燃料からの移行を賄うためには公的支援に対する依存が続いているというのが現状であ
る。現在の「信用収縮」(2008 年現在)が短期的にはプロジェクト・ファイナンスへの資
本の流れに制限をかけているが、その一方で、2007 年に多くの公開クリーン・エネルギー
企業に対して行われた積極的な資金提供は一部に価値の過大評価をもたらした。太陽エネル
ギーに対する投資は 2004 年から 2007 年にかけて 250%を超える成長を遂げているが、多く
の太陽エネルギー株が 2008 年初頭に大幅な下落を経験している。バイオ燃料は調整期間を
経ているところで、バイオ燃料に対する投資は、生産者マージンの急落と歩調を合わせるよ
うにして 2007 年に対前年比で減退している。全世界の設置量が 20.6 ギガワット(GW)に達
している風力発電は、クリーン・エネルギー技術のうちで最も広範に設置されているととも
に最も商業的に受け入れられている技術であり続けている。同時に、クリーン・エネルギー
関連の多くの新分野も急速に拡大している。例えば、エネルギー貯蔵、「クリーン石炭」、
そして炭素捕捉・貯蔵といった手法はそれぞれに見合った関心を集めている。一つ常に変わ
らず確実なことは、新たな技術の展開からカネを儲けようとする試みに対しては多くの触手
が伸ばされるということである!
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2. クリーン・エネルギー投資の資金源
クリーン・エネルギー分野に対する金融セクター投資の主な資金源は以下のようなものであ
る。






プライベート・エクイティ/ベンチャー・キャピタル
公開市場(新規株式公開)
株式ファンド
炭素ファンド
プロジェクト・ファイナンス/インフラ・ファンド
エネルギー・ヘッジ・ファンド
再生可能エネルギーおよび代替エネルギーのプロジェクトに対する主だった企業投資家は以
下のようなものである。




総合エネルギー企業
再生可能エネルギー発電業者
石油メジャー
総合技術メーカー
本講はクリーン技術に対する金融セクター投資、そして技術開発における金融の連なりに焦
点を当てていく。以下数ページで、金融セクター投資の主要な資金源の一部についてのあら
ましを述べる。
a) プライベート・エクイティとベンチャー・キャピタル
プライベート・エクイティという言葉は、公開の株式市場で自由に取引可能とはなっていな
い、ある資産に対する持分投資の一切を指す。プライベート・エクイティ投資は以下のよう
なカテゴリーに分類することができる。




ベンチャー・キャピタル:プロの外部投資家が新興事業や成長事業に対して当該企業
への持分と引き換えに提供するプライベート・エクイティ資本のことである。ベンチ
ャー・キャピタル・ファンドというのは、資本市場または銀行貸付けにはリスクが大
き過ぎるような起業期の事業に第三者投資家の資本を投資する、資金プール型の投資
事業体(リミテッド・パートナーシップの形を取っていることが多い)のこと。
バイ・アウト:上記よりも成熟した会社の相当な部分または過半数の支配権の取得の
こと。
スペシャル・シチュエーション:破綻企業や、何らかの一回限りの機会(業界動向や
政府規制が変わる等)の結果として価値が急変する可能性がある会社に対する投資の
こと。
マーチャント・バンキング:私有会社または公開会社の未登録証券に対する、交渉を
通じたプライベート・エクイティ投資のこと。
通常、プライベート・エクイティのリターンの発生の形には 1) 合併または売却、2) 新規株
式公開、3) 資本再構成の 3 通りがある。
ベンチャー・キャピタルは、革新的な新技術の各セクターの発展にとって特に重要な資金源
である。ベンチャー投資家(VC)は 2007 年に世界各地における 221 のクリーン技術案件に 30
億ドルを超える金額を投資しており、これは 2006 年比で 40 パーセントを超える増加(同年
の案件数は 173)である。現在、全世界の「クリーンテク」ベンチャー投資の 80%以上を米
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国が占め、そしてクリーン技術は今や米国のベンチャー・キャピタル投資全体の 10%近くを
占めている。人口動態から察して、米国のベンチャー投資家や幹部たちが情報技術からクリ
ーン技術へのセクターの乗り換えを続けていくにつれて米国の投資は更に拡大すると思われ
る。
スカンジナビア、ドイツ、そしてスペインが再生可能エネルギー政策の第一線に長らく位置
してきたヨーロッパにおいては、クリーン技術へのベンチャー投資は 2007 年にはわずかな
増加があったのみである(案件数 56)。しかし、中国は 2007 年における全世界の対クリー
ンテク投資の 4%を占めていたに過ぎず、シンジケート案件の数は前年から急激に下がって
いる。中国における投資資金の出どころは国内にあって、新興事業よりもプロジェクトに向
けられているものが多いのである。
(ベンチャー・キャピタルとクリーンテクについては、後により詳しく論じる。)
b) 公開市場
公開会社とは、新規株式公開(IPO)を通じて証券を発行した会
社で、少なくとも一つの株式取引所や店頭市場で取引の対象と
なっているもののことである。IPO において、会社はその最初
の一般株主となる者たちに対して株を売却する(発行市場)。
IPO が実施されて一般株主の手に株が渡った後は、それらの株
を取引所で売り買いすることができるようになる(流通市場)。
公開市場においてここ数年、クリーン・エネルギーに対する投
資の成長ペースが最も早い領域となっている。クリーン・エネルギー企業のIPOは投資業界
の主流層に好意的に受けとめられてきている。実際、2007 年における公開クリーン・エネ
ルギー企業の多くに対する資金提供の加速は、一部にドットコム・バブルを彷彿させる価値
の過大評価をもたらした。太陽エネルギーに対する投資は 2004 年から 2007 年にかけて
250%を超える成長を遂げたが、一部の株式はそれ以来大幅な下落の憂き目に遭っている。
2008 年の初めに石油価格が記録的な高値を付けたとき、再生可能エネルギー株は市場全体
で急落した。公開会社となっている殆どの太陽エネルギー、燃料電池、バイオ燃料企業のベ
ータ 2 が相対的に高いことから、それらの株式の業績は石油価格との間の相関は弱いが、市
場全般のトレンドには強く影響されるようである。これに比べて、風力エネルギー企業は変
動の幅が少ない傾向をみせている。
c) 株式ファンドと株式指数
代替エネルギー株やクリーンテク株に連動している新たな株式指数の多くは、同セクターに
おける株式投資の拡充を促進する目的で作られたものである。指標は投資の呼び込みに一役
買ってくれるが、それは対象指標の成績に連動する取引所上場ファンド(ETF)を通じた直接
的なものである場合もあれば、参照後に個々の株式を選ぶことで同指標よりも好成績を上げ
ようとする小口投資および機関投資のファンド・マネージャーに対して「ベンチマーク」を
提供することによる間接的なものである場合もある。以下に関連指標の例をリンク付きで示
す。
2
ベータは、株式 1 株のボラティリティーの計測値である。ベータ値の高い株式の価格は、市場で株
が全体に上がっている日には平均株価の上昇幅よりも高い上昇を示し、株が下がっている日には平均
株価の下落幅よりも大きな下落を示す。
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クリーン・エネルギー、技術および「持続可能性」関連指標 The Ardour Global Index(アーダー・グローバル指数) The Cleantech Index™(クリーンテク指数) DAXglobal Alternative Energy Index(DAXグローバル代替エネルギー指数) Dow Jones Sustainability Indexes(ダウ・ジョーンズ持続可能性指数) The Impax ET50 Index(インパックスET50 指数) Jefferies Global Clean Technology Composite IndexSM (ジェフリーズ・グローバル・クリーン技
術複合指数SM) The KLD Global Climate 100SM Index(KLD世界気候 100SM指数) Ludlow Alternative Energy Index(ラドロー代替エネルギー指数) Merriman Curhan Ford & Co. Next‐Generation Energy(メリマン・カーハン・フォード社次世代エ
ネルギー) NASDAQ Clean Edge U.S. Index(ナスダック・クリーン・エッジU.S.指数) The WilderHill Clean Energy Index(ワイルダーヒル・クリーン・エネルギー指数) The WilderHill® Progressive Energy Index(ワイルダーヒル・プログレッシブ・エネルギー指数) The WilderHill New Energy Global Innovation Index(ワイルダーヒル新エネルギー・グローバル・
イノベーション指数) 取引所上場ファンドは、株式と同じように売り買いすることができる。クリーン・エネルギ
ー関連指数に連動しているETFには、PowerShares WilderHill Clean Energy(パワーシェア
ズ ・ ワ イ ル ダ ー ヒ ル ・ ク リ ー ン ・ エ ネ ル ギ ー ) フ ァ ン ド 、 PowerShares WilderHill
Progressive Energy(パワーシェアズ・ワイルダーヒル・プログレッシブ・エネルギー)フ
ァンド、Market Vectors Global Alternative Energy(マーケット・ベクターズ・グローバル
代替エネルギー)ファンド、そしてFirst Trust NASDAQ Clean Edge US Liquid(ファース
ト・トラスト・ナスダック・クリーン・エッジUSリキッド)ファンドがある。2007 年、ク
リーン・エネルギー関連指数は市場全体を凌ぐ成績を上げた。例えば、ナスダック・クリー
ン・エッジU.S.リキッド・シリーズ指数は 66.67 パーセント上昇しており、S&P 500 指数の
3.53 パーセントやナスダック複合指数の 9.81 パーセントに比べて際立っている。しかし
2008 年は、価格が暴騰していたことや株式市場についての一般のセンチメントが悪かった
ことが原因となって多くの再生可能エネルギー会社の株が激しい売り浴びせに遭ったことか
ら、苦しいスタートとなった。
d) 炭素ファンド
この資産クラスは、京都議定書が効力を発する前にその構想を試すことを目指したイニシア
ティブであった世界銀行の「プロトタイプ・カーボン・ファンド」を最初のものとして、
2000 年に出現した。過去 8 年間において、炭素クレジットに対する投資への特化を目的と
して 70 を超えるファンドがおよそ 95 億から 100 億ドルを集めている。その合計額の内訳
は、約 40%が公的資金、60%が民間資金となっている。炭素ファンドはセル・サイドのファ
ンドとバイ・サイドのファンドに分かれる。セル・サイドのファンドは、市場で売るための
クレジットを創設することになるプロジェクトを形成するためにデベロッパーと協力する。
バイ・サイドのファンドは、炭素クレジットの所有者の遵守ニーズを満たすため、あるいは
遵守を図る買い手に後に売却するために炭素クレジットに投資する。
ロンドンは現在、炭素ファンドの運用の主要な拠点となっているが、実際に英国で実施され
ている炭素関連事業はごくわずかである。他の商品に比べると、炭素は規制が強いとともに
政治的な市場である。今後数年間に渡って炭素市場の土台を成す制度上の枠組がどうなるか
は不透明である。連邦の排出取引スキームが義務化されれば、米国が興味深いポテンシャル
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をもたらしてくれることになるだろう。(炭素金融および炭素取引については、本コースの
最終章で詳しく論じる。)
e) プロジェクト・ファイナンス・資産金融
クリーン・エネルギー・プロジェクトの資産金融の資本源には様々な
ものがあり、プライベート・エクイティ、オン・バランスシート金融、
インフラ・ファンド、銀行貸付け、債券、リース、そしてノン・リコ
ース・プロジェクト・ファイナンスがそれらの一環を成す。
2007 年、風力タービンやソーラー・グレードのシリコン等のサプラ
イ・チェーンにおけるボトルネックによっていくつかのプロジェクト
が遅延を被った。風力は資産金融において中心的なクリーン・エネルギー技術で、一部のプ
ロジェクトは債務 90%に対して資本 10%という比率で賄われている。米国、特にテキサス
における最近の風力エネルギー投資は生産税控除(現時点では 2008 年末に期限切れの予
定)による後押しを受けている。中国市場は力強い成長を続けており、ヨーロッパからの参
加者、ことにスペインの総合エネルギー企業は、自社の風力ポートフォリオを、資産金融を
通じて精力的に拡充している。2008 年の信用収縮をものともせず、大型の太陽エネルギー
設備は現在、2 年前であれば取りつけるのは困難だったと思われるようなプロジェクト・フ
ァイナンスを呼び込んでいる。
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3. 技術の概説
本項では、主要なクリーン・エネルギー技術のあらましを手短に述べていく。
a) 太陽エネルギーと太陽光発電(PV)
太陽エネルギーおよび PV 部門は、光起電材料を使うことによって、
あるいは集光器やスターリングエンジンといったパッシブ技術を通じ
て太陽から直接にエネルギーを捕捉するあらゆる技術を対象とする部
門である。太陽光発電は最も成長ペースが早い再生可能エネルギー源
である。従来、太陽光発電設備は遠隔地やポータブル発電機の市場に
向けて販売されていたが、今ではそれらよりもずっと規模の大きい建
物一体型太陽光発電市場が需要を後押ししている。
太陽光発電のバリュー・チェーンは、原材料の世界的な不足の影響を被ってきている。殆ど
の太陽電池では、光子(太陽光)を電子(電気)に変換させる媒体としての役目をシリコン
が果たしている。処理済みポリシリコン(半導体の素材で、「ポリ」としても知られてい
る)の供給においては、需要の伸びと限られた供給を原因としてボトルネックが生じている。
ポリの価格は 2008 年の間は高いまま推移するが、2009 年には供給の増加に伴って低下する
と予測されている。
太陽光発電市場における新たな開発の一つに、ガリウム、インジウム、セレンその他の新材
料を用いた、シリコンに完全に取って代わる薄膜型太陽電池技術がある。薄膜電池は大企業
による投資の対象となっている 3 。薄膜型の太陽光発電の原料コストは従来の結晶シリコン
電池よりも小さいが、これは同じ量を生産するために前者が通常用いる半導体素材が後者の
わずか 1%に過ぎないためである。また、薄膜電池は応用における柔軟性も一層高い。太陽
パネルは、異なる構造体に巻き付けて建物、車両、あるいは衣類とさえも一体化することが
できるのである。しかし、薄膜はシリコン・ベースの電池の信頼性と耐久性にはまだ到底太
刀打ちできないため、京セラ、シャープ、シーメンスといった多くの企業は現行の太陽光発
電技術に多額の投資をし続けている。消費者にとっての朗報は、太陽発電パネルの設置コス
トは、競争が激しくなるにつれて低下を続けるものとみられていることである。2008 年後
半には、ファースト・ソーラー、ナノソーラー、そしてAVAソーラーといった会社の薄膜パ
ネルが住宅市場で入手できるようになるだろう。過去 18 か月の間、一部の著名機関投資家
は大型の集光型太陽熱発電(CSP)プラントに重点を置いている。CSPプラントはミラー配位
を通じて太陽のエネルギーを集め、発電機の使用を通じて熱を電気に変換する。CSP設備に
は、トラフ型設備、タワー式設備、ディッシュ-エンジン式設備の 3 種類がある。
本稿執筆時点において太陽エネルギー業界にとって懸念材料となっているのは、2010 年を
通じて浮上してくるとみられる二つの気がかりなトレンドである。一つ目は、2008 年末ま
でに電池とパネルが供給過剰に陥るとみられること。二つ目は、太陽発電装置の設置に対す
る需要が、ドイツ、スペインおよび米国の公的部門による金銭的奨励措置の減少または遅延
によって後退するおそれがあることである。
b) 風力発電
風力は、過去 10 年間に渡って我々のエネルギー使用パターンに最も大きな影響を与えてき
た、今や象徴的な地位を占める再生可能エネルギー技術である。世界風力エネルギー協会
3
http://www.japancorp.net/Article.Asp?Art_ID=13817
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(GWEC)による数値は、風力の設置容量が 2007 年に 20 ギガワット(GW)の増加を記録し、
風力の合計設置容量が 2006 年の 74GW から 94GW に引き上げられたことを示している。
風力エネルギー技術はかなりの進歩を遂げたが、自らの更なる技術発展に向けたポテンシャ
ルをまだ発揮しきっていない。沖合風力発電は現在、再生可能エネルギー資源の大型開発に
おいて単一の方法としては最も有望な機会を呈している。
風力発電技術部門は、風力タービンの構成材および部分組立品、そしてタービン自体の製造
業者で構成されている。典型的な陸上設備においては、風力タービンのコストの約 20%をロ
ーター(羽根)が占めている。羽根は、風力エネルギーを中間材としての低速回転エネルギ
ーに変換する。発電機部分は通常は総コストのおよそ 35%で、これには低速回転エネルギー
を電気に変換させるための発電機、制御電子機器、そしてギアボックス部分が含まれる。陸
上の場合は、タワー(構造支柱)はコストのおよそ 15%を構成するに過ぎない。沖合設備の
構造支柱の設置およびメンテナンスのコストにはかなりのばらつきがあるため、数字で示す
ことは困難である。
風力発電業界の大部分は、風力発電拠点を世界中に建設する機会を活かそうと続々と登場し
た多彩な顔ぶれの開発業者、発電業者、公益事業会社そしてエンジニアリング会社から成る。
中小規模の風力発電開発業者が過去最高の資産価値が付いているときに身売りをして、自社
のプロジェクトを賄うために自らよりも強大なプレイヤーと組んでいったため、同業界には
ここ数年の間に相当な整理統合があった。
タービン供給は風力業界の 2006/2007 年中の大きな関心事であり、2008 年においても依然
として問題となっている。供給業者は 2008 年が明けるかなり前に同年中の在庫を売り尽く
してしまっていた。出資または融資のファシリティーのある開発業者がタービン供給を買い
占めたのである。しかし、自国の製造能力が昨年に増大した中国とインドを中心として、更
に多くの供給業者が需要に応えようと市場に参入してきている。
更なる事実
世界最大のタービンは、いずれもドイツ企業であるエネルコンとREパワーによって製造さ
れている。エネルコンのE112 4 は最大 6MWの発電能力を持ち、大きさは全高 186 メート
ル(610 フィート)、直径 114 メートル(374 フィート)。REパワーの 5M 5 は最大 5MW
の発電能力を持ち、大きさは全高 183 メートル(600 フィート)、直径 126 メートル
(413 フィート)。
c) バイオ燃料
「バイオ燃料」という言葉は一般に、バイオディーゼルおよびバイオエタノールを含む輸送
用液体燃料を指す。これらは、サトウキビ、菜種(キャノーラ)、大豆油、セルロースを含
む多岐に渡るバイオマス源から抽出できる。サトウキビ、トウモロコシ、食用または非食用
油料種子といったものを原料として生産されたエタノールやバイオディーゼルは、「第一世
代」バイオ燃料として知られている。最大規模のエタノール生産プログラムは、ブラジルに
おけるサトウキビと米国におけるトウモロコシを原料とするものである。現在、ブラジルの
4
5
http://www.enercon.de/en/e112.htm
http://www.repower.de/index.php?id=237&L=1
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サトウキビのおよそ 50%、米国のトウモロコシの 20%がエタノールに転換されている。バ
イオディーゼルの商業的生産が現在最も進んでいるのは、ヨーロッパにおいてである。
第一世代バイオ燃料が潜在的に取って代わることのできる輸送用化石
燃料の割合はわずか 10%から 15%だが、これは耕作地の需要、商品市
場の波乱、そしてそれらの生産が環境面にもたらす様々な影響を理由
とする。例えば、2008 年 3 月にミネソタで提起された訴訟は、ある世
界的な農業事業者がアイオワ・フォールズにある自社バイオディーゼ
ル工場から出る汚泥廃棄物を処分する目的で自治体の水処理施設に送
る前に、それに前処理を施すことを怠っていた旨を主張している。市が汚泥の受入れを拒ん
だとき、同社はある請負業者に金を払って汚泥 135,000 ガロンを近隣の牧草地に撒布させる
という行動に出ており、そこでは汚泥が小川の中にこびりついて魚を死なせてしまった。不
幸なことに、事例はこれだけにとどまらない。有害なメタノールで汚染されていることが多
いグリセリンを不法に投棄していたバイオディーゼル工場を相手取った訴訟は複数起こされ
ている 6 。この種の悪評は、原料価格の高さ、エタノール価格の低さ、建設コストの上昇、
そして信用市場の逼迫を受けてもなお投資を手控えていなかった一部の投資家の投資意欲を
減退させている。バイオ燃料についての新たなパラダイムが求められていると言えよう。
スイッチグラス等の原料を用いたリグノセルロースを基にする「第二世代」バイオ燃料技術
の潜在性は、第一世代よりもはるかに大きく、またクリーンである。セルロース系バイオ燃
料関連イニシアティブや農業バイオ技術企業は、開発の初期段階においてかなりのベンチャ
ー・キャピタル投資を惹きつけているが、新しいプロセスの殆どは商業化までまだ数年かか
る。中期的には、やせた土壌でも育ち食用作物と競合しないような原料(ジャトロファ等)
の利用が、中国、インドその他の国々によって積極的な研究の対象とされているところであ
る。
d) バイオマス、固体廃棄物、バイオガス
エネルギー生産におけるバイオマスとは、燃料として利用、または工業生産目的に利用する
ことができる生きた生体物質、あるいはすぐ前まで生きていた生体物質を指す。バイオマス
とは普通、バイオ燃料としての利用を目的として栽培される植物のことをいう。エネルギー
部門向けの固体バイオマスは、エレファント・グラスやコピス型ヤナギ等の多くの特殊栽培
作物を含み、また作物残渣や藁からできていることもある。下水、化学副産物、そして都市
廃棄物のエネルギー転換ポテンシャルを探る試みにも類似の技術が関わっている。
バイオガスは有機物質の嫌気性消化の過程によって生成されるもので、生分解性廃材(下水
や動物スラリーを含む)から作り出すこともできるし、ガスの発生を補完するために嫌気性
消化槽内に入れたエネルギー作物の使用を通じて作り出すこともできる。バイオガスはメタ
ンを含有しており、産業用嫌気性消化槽や機械式生物処理装置の中で回収することが可能で
ある。埋立地ガス(強力な温室効果ガス)はどちらかというとクリーンではないバイオガス
の一種で、自然に起こる嫌気性消化を通じて埋立地で発生する。埋立地ガス捕捉プロジェク
トは炭素排出クレジットから相当な収益を呼び込むことから、これらは炭素プロジェクトの
開発業者に人気がある 7 。今では多くの公益事業会社が廃棄物のエネルギー転換事業の拡充
を図っており、この部門の見通しは非常に明るい。我々は、廃棄物という資源には不自由し
ていないのだから!
6
2008 年 3 月 11 日付のニューヨーク・タイムズ掲載記事、“Pollution Is Called a Byproduct of a ‘Clean’
Fuel”(「汚染の別称は『クリーン』燃料の副産物」)を参照のこと。
7
炭素金融につき、第 9 講を参照のこと。
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e) 地熱
地熱発電電力が最初に生産されたのは 1904 年のことである。以来、発
電目的の地熱エネルギーの利用は世界 20 か国でおよそ 8,000 メガワッ
トにまで成長した。地熱技術は比較的成熟しており、地熱業界はプロジ
ェクト開発、探査および仮掘削の各初期段階においてはかなり資本集約
的である。それでも、他のエネルギー源に比した地熱プロジェクトの生
産能力の高さとベースロード発電における安定性のおかげで、プロジェクト・ファイナンス
型の投資を着実に呼び込んでいる。(地熱発電プラントの平均利用率は 90%またはそれ以上
で、石炭火力発電プラントにおけるおよそ 75%の利用率とは段違いである。)
ある二つの領域における最近の進展は、地熱エネルギーが世界各地でますます重要な役割を
演じ得るということを意味している。一つは、新たな掘削技術のおかげで嘗ては位置が深過
ぎてアクセスできなかった資源に手を付けられるようになったこと、もう一つは、より低温
の地熱地帯から利用可能なエネルギーを抽出する新手段のおかげで、過去においては経済的
な利用が叶わなかった資源の生産的な利用ができるようになったことである。
米国における地熱発電施設の設置容量は 2.5GW、稼働容量はおよそ 1.9GWと世界最高であ
る。にもかかわらず、地熱エネルギーは種々の発電源の合計のわずか 0.4%未満しか占めて
いない。アイスランドでは、合計発電量のおよそ 17%が地熱資源から生成されている。欧州
投資銀行(EIB)は積極的なプロジェクト融資者となっている。オーマット社 8 は定評を得てい
る地熱開発業者である。
f) 水力
水力発電は世界の電力の 20%を供給しており、地熱と同様、れっきとした再生可能資源であ
る。しかし、大型のダムは環境に相当なダメージを与えることから、物議を醸すプロジェク
トである。ここ数年来、大型ダムの建設を全般に敬遠する風潮がある。ダムというものは、
電力を作り出すタービンの設置場所とすること、そしてそのタービンを効率的に駆動するた
めに十分な圧力水頭を確保することという二重の目的を担っている。作動にそのような水頭
を必要とせず、また河床に(あるいは海底にさえも)据え付けられるようなタービンを開発
することができれば、発電目的でダムを建設する必要はなくなることになる。
2008 年現在、自立構造水中タービンの採用によってこれが現実となっている。新しい(そ
してより強固な)自立構造タービン設計は、再生可能エネルギーの中ではどちらかというと
見過ごされている分野である水力エネルギーに新たに投資家の資金を呼び込んでいる。自立
構造タービンの建造または採用を計画している会社に対する投資は、2004 年の 1,300 万ド
ルから 2007 年には 1 億 5,600 万ドルに増大している 9 。複数のプロジェクトが既に進行中で
ある。米国のVerdant Power(緑の力)社はニューヨークのイースト・リバーに波力タービ
ンを設置しており、またUEK、オープンハイドロそしてカナダのクリーン・カレントは、ノ
バ・スコシアでパイロット・プロジェクトを実施している。
g) 海洋
海洋エネルギー部門は、海底地熱(熱:蒸気および発電機を使用)や
波力・潮力(機械的手段:波力発電ダムまたは潮汐流発生装置を使
8
9
See http://www.ormat.com/businesses.php?did=25
ニュー・エネルギー・ファイナンスより。
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用)を含む、海からのエネルギー採取に関わる全ての技術を対象とする部門である。資本コ
ストは高いが、ゆくゆくはインフラが自ずと採算を取ってくれる。ランス潮汐発電所はフラ
ンスのブルターニュで 1967 年から運営されている発電所で、その運営主体はEdFである。
EdFによると、同発電所は顧客に対して原子力よりも安価で電力を供給しており、また今後
30 年間は持つとのことである 10 。新たな潮力および波力技術が出現してきてはいるが、殆ど
の会社はまだ開発やパイロット・プロジェクトの段階にある。海洋エネルギーのパイロッ
ト・プロジェクトの歩みは遅い。多くの異なる(そして競争関係にある)規制当局が沿岸水
域を管轄しているため、許認可が問題となるのである。
更なる事実
2008 年 3 月、イベルドローラ・レノバブルがスペインのサントーニャで波力発電のパイ
ロット・プラントを開業した。ヨーロッパにおけるこの種の発電所の設置第一号である。
イベルドローラは、オーシャン・パワー・テクノロジーズ(OPT)製造の「パワーブイ」の
第一機をテストしている。OPT 製「パワーブイ」波発生装置は、ブイの支柱内のピストン
様の構造物を動かすことで海底に固定した発生装置を駆動する油圧用作動油がポンプで送
り込まれるようにするために、波の上下運動を利用する。
h) 燃料電池
燃料電池は 150 年前から存在しており、その性能も証明済みであるが、製造コストの高さと
信頼性の低さがずっと問題であり続けている。多くの評者は、ポスト化石燃料エネルギー構
造の基礎の一部分を燃料電池が占めることになると考えており、また非常に多くの官民のイ
ニシアティブが燃料電池技術の応用を来たる 10 年の間に商業化することを目標に据えてい
る。
大々的な採用はまだ遠い先のことのように窺われるし、太陽エネルギー
や風力、バイオ燃料に比べると燃料電池企業はクリーン・エネルギー領
域に新たに参入した投資家からあまり関心を寄せられてきていない。今
では燃料電池業界は、石油ベースの燃料を水素が駆逐することになる輸
送用途の大衆市場向けの応用からは概して手を引きつつあり、代わりに、
燃料電池の性能特性(小型、モジュール性、無排出、低騒音等)に対する高い関心が軍隊等
の特別顧客から寄せられている、より狭いニッチ市場における応用に重点を置くようになっ
ている。
i) 原子力
世界各地で原子力発電所が建設中であり、一部の評者は「原子力の復
興」として賞賛している。日本と韓国は自国の原子炉基数を増やして
おり、インドと中国は野心的な新設計画を温めている。西欧および北
米では、長寿命化プログラムが進行中である。原子力発電市場は大企
10
ランス発電所の仕様については、http://www.edf.fr/html/en/decouvertes/voyage/usine/usine.htmlを
参照のこと。
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業、輸出信用機関、そして政府が独占している 11 。商業銀行は、警戒心を抱きつつも関心を
寄せている。
原子力は排出ゼロ技術だが、クリーンというわけではない。原子力エネルギーを生成するた
めにウランが採鉱されるが、これは効率のよい天然資源である。ウランの大幅な値上がりが
原子力エネルギーの生成コストに与える影響はごくわずかである。原子炉技術は「世代」別
に分類されている。現存する原子炉は第二世代および第三世代として知られるものである。
現在の設計(1997 年以降)は第三世代プラスとして知られている。ある国際的なタスク・
フォース 12 が、2010 年から 2030 年の間における採用を目指して以下の 6 つの第四世代原子
炉技術の開発を行っているところである。






ガス冷却高速炉(GFR)
超高温ガス炉(VHTR)
超臨界圧水冷却炉(SCWR)
ナトリウム冷却高速炉(SFR)
鉛合金冷却高速炉(LFR)
溶解塩炉(MSR)
これらのシステムは全て今日の原子炉よりも高温で作動するもので、うち 4 つは水素製造を
目的とする。これらは現在運用されている原子炉技術に比べ、経済面、安全性、信頼性そし
て持続可能性において格段の向上を実現するものである。
j) 炭素捕捉・貯蔵(CCS)
スターン報告書は、化石燃料は尚も 2050 年までの世界のエネルギー供給の半分を占めるこ
とになると予測した。我々がどうすれば今以上のCO 2 の排出をせずに利用可能な石炭および
天然ガスの相当な量の使用を続けられるかについては、熱心な研究が行われているところで
ある。炭素捕捉・貯蔵(CCS)技術は、化石燃料の排気流からCO 2 を分離し、用済みの油田や
ガス田の中、海中その他の場所におけるCO 2 の長期貯蔵を実現する技術である。CO 2 を捕捉
する技術は既に、発電所等のCO 2 大量排出業者にとっての商業的な利用が可能になっている。
しかし、CO 2 の貯蔵は依然として発展途上の科学領域であり、炭素捕捉および貯蔵のシステ
ムを完備して操業している発電所は今のところ存在しない。
更なる事実
ノルウェーのスタトイル社は、北海スライプナー鉱区ガス田における深海の塩性帯水層で
炭素貯蔵手法のテストを 10 年間に渡って成功させてきている。同社は 1996 年から毎年
100 万トンのCO 2 を一切の漏出なく注入しており 13 、このことは見通しの明るさを感じさ
せる。昨年(2007 年)、テキサス大学の経済地質学研究所は、貯蔵目的で地中に大量の
CO 2 を注入する作業の実施可能性を研究することを目的とした、米国における最初の徹底
監視型の長期プロジェクトの実行を内容とする期間 10 年の契約を受嘱している。
11
原子力に関して参考になるコメントにつき、 http://neinuclearnotes.blogspot.com/を参照のこと。
参照先:Generation IV International Forum (GIF)
13
Chadwick, A., Noy, D., Lindeberg, E., Arts, R., Eiken, O., Williams, G., 2006: Calibrating reservoir
performance with time-lapse seismic monitoring and flow simulations of the Sleipner CO2 plume(ス
ライプナー鉱区CO 2 プルームの経時的地震監視および流入シミュレーションに対する貯留槽の性能の
測定)、第 8 回温室効果ガス制御技術国際会議 (GHGT-8)、トロンハイム、June 2006
12
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k) 合成燃料
合成燃料、別称シンフューエルとは、石炭、天然ガスまたはバイオマスから得られる液体燃
料の一切のことで、またオイルシェール、タールサンド、プラスティック廃棄物に由来する
燃料やバイオ物質の発酵物のことも指す。合成燃料が石油ベースの燃料と補助金なしで張り
合うためには、比較的高価な原油を必要とする。低質の石炭資源とタールサンドを持つ国々
は、シンフューエルの商業的開発に特に関心を寄せている。
シンフューエルを生産するプロセスは、何を原料にしているかにより、それぞれ石炭液化
(CTL)、ガス液化(GTL)またはバイオマス液化(BTL)と呼ばれている。シンフューエルの商業
化の第一人者は、南アフリカを本拠とするサソール社である 14 。シェル、エクソン、スタト
イルといった石油メジャーはシンフューエルのパイロット・プラントを持っている。
l)
「クリーン石炭」
石炭は世界で最も豊富かつ広く流通している石炭燃料であり、また今後もそうあり続けるだ
ろう。多くの発展途上国では石炭需要が急速に増大している。2000 年から 2050 年までの
50 年間に需要は倍増し、世界の一次エネルギー供給の 28%を石炭が占めることになりそう
である。エネルギーおよび熱を作り出すために石炭を使用することが環境に及ぼす影響を管
理するため、諸々の新技術や改良型技術が登場してきている。
例えば石炭地下ガス化(UCG)は、燃料を合成するために、地下で石炭を燃やして結果として
起こる反応によって生成されるガスを抽出する作業をいう(上記「合成燃料」参照)。UCG
は、石炭をエネルギー源として使用することが環境に及ぼす影響を最小化しつつ、世界の再
生可能な石炭資源を大幅に増加させる可能性をもたらしてくれる。UCG の主たる利点は、
これによって鉱山建設のコストが回避できることと、従来はアクセスできなかった地中深く
の石炭に手が届くようになることである。(更に詳しくは、本講末尾の「補足学習用資料」
参照。)
4. 「クリーンテク」とは何か
クリーン技術、別称「クリーンテク」というのは比較的新しい言葉で、人類が環境に対して
もたらす影響を減じながら、価格や性能の面で競争力を備えた商品およびサービスを作り出
すための革新的な技術を活用している会社について語る際に用いられる。例えば、再生可能
エネルギーはクリーン技術の産業部門で、画期的な太陽電池技術を持つ個々の会社は「クリ
ーンテク」企業といった具合である。しかし、クリーンテクの中身はクリーン・エネルギー
の生成のみにとどまらない。
技術、研究手法、製造、そして通信における最近の進歩は、環境保護に照ら
して適正な技術のコストを引き下げ、その多くを経済の表舞台に出している。
セルロース系バイオ燃料等の一部のクリーンテク分野は、確固とした地位を
築きつつある。何百万ドルもの研究費、環境法制、そして投資家の関心が相
俟って、これらの分野で創業期にある有望な新興企業の形成を助けてきた。
ナノ技術等の他のクリーンテク部門が出現してきてもいる。一つの投資セク
14
参照先:http://www.sasol.com/sasol_internet/frontend/navigation.jsp?navid=1600033&rootid=2
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ターとしてのクリーンテクへの関心は着実に伸びており、ベンチャー・キャピタル業界がよ
く確立している北米においてはこれが特に顕著である。
クリーンテク・ベンチャー・ネットワークhttp://www.cleantech.com/は、
案件を探しているVCに資金調達を求めている新設会社を紹介する会議
の開催を 2002 年から手がけている。この業界は飛躍的な成長を遂げて
おり、今ではクリーンテクは北米第三位のベンチャー・キャピタル投
資分野となっている。以下は、エネルギーおよびエネルギー効率に関
係するクリーンテク産業カテゴリーの例である。
• 先端材料
• 農業
• 消費財
• 実現技術およびサービス
• 発電効率、貯蔵およびインフラ
• 環境情報技術
• 製造・工業技術
• 原材料の再生および再利用
• 輸送および物流
• 廃棄物処理、水の浄化および管理
クリーンテク部門の例

エネルギー貯蔵は、再生可能エネルギー技術の導入の拡大に立ちはだかる最大の障壁
の一つである。主要な技術応用分野の例には、公益事業会社規模での貯蔵、エネルギ
ーの質の問題の緩和、そして新エネルギー源および再生可能エネルギー源の統合の促
進がある。エネルギー貯蔵技術に含まれるのは、公益事業会社における新しいタイプ
の電池貯蔵、フライホイール・エネルギー貯蔵、超伝導磁気エネルギー貯蔵、圧縮空
気エネルギー貯蔵、揚水発電、スーパーキャパシタ等である。

生成効率は、生成における効率において、または現存する発電装置による温室効果ガ
スの排出の削減において飛躍的な向上をもたらすような技術を対象とする部門である。
この部門における重要技術には、モーターや発電機の設計、ソフトウェア、センサー
および制御技術における画期的発明が含まれる。

スマート流通は、送電ロスを減らして電力の流通効率を向上させることが可能な技術
を対象とする部門である。これの大部分は情報技術である。再生可能エネルギー資源
の可用性を予測したり、需給のバランスを取ったり、電力網における障害を見つけた
り、ピーク移動やインテリジェント検針を可能にしたりするソフトウェアがその例で
ある。

需要削減部門には、小売施設および商業施設の建物におけるエネルギー使用を減らす
技術が含まれ、その例には高度断熱、エネルギー消費管理のための建物構成材やイン
テリジェント・システム等がある。また、様々な工業プロセスにおけるエネルギー使
用を減らすことに焦点を絞った技術もこの部門に含まれる。

農業バイオ技術もまたエネルギー関連のクリーンテクの一つで、その例にはバイオ燃
料向けの品種改良植物の生産のための遺伝子技術やゲノム技術がある。各企業は、成
長、窒素利用、光生物学、ストレス生物学といった農学上貴重な特質に影響を与える
遺伝子を発見している。これらの遺伝子は、食用作物と拮抗しないようなやせた塩性
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の土壌条件で使用することを目的とした多種多様なエネルギー作物において活用でき
るものである。
投資行動
クリーンテクに対するベンチャー・キャピタルの関心は強いし、VC は優
良な投資先を探し求めているのだが、創業期にある一部の会社は伝統的
なベンチャー出資のルートをすり抜けてしまっている。同部門に対する
投資家需要が拡大した結果として、案件の取り合いが生じている。その
原因の一端は、IPO(または相対売却)を出口とすることを見込んで 12
か月から 36 か月に渡ってプライベート・エクイティ投資を行う方針を取る「プレ IPO」フ
ァンドにある。
エネルギー価格の高騰、乏しい資源への限られたアクセス、気候変動についての懸念といっ
た、クリーン技術部門の形成を推進する高次元の要因は今後も存在し続ける。クリーンテク
企業およびファンドに対する近年の投資ラッシュは、悲喜こもごもの結果を生んでいる。来
たる数年に渡って経験が積み上がり、新たなトレンドができていくにつれて、勝者と敗者が
分かれていくことになるだろう。
5. クリーン・エネルギー革新をどのように賄うか
a) 金融イノベーション
技術開発への資金提供の範囲は、研究および開発から実証、そして最終的には商業化に至る
までの新たな商品またはプロセスのライフサイクルに渡る。下掲の金融の連なりにおける第
2段階(赤で初期と表示されているところ)は、米国の企業家言葉では「死の谷」として知
られている。連なりにおけるこの領域が表しているのは、新たな技術の実証段階である。
新技術企業はしばしば実証段階と商業化段階のはざまで融資の途切れに直面するが、これは、
実証およびテストに必要とされる時期にかかるコストが高いためである。初期の研究と開発
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が完了してしまうと、利用できる公的融資はあまりなく、また事業リスクと技術リスクの高
さから民間資本の調達は困難なのである。本項では、この融資の途切れを埋めてくれる公的
部門のメカニズムの事例をいくつか取り上げて解説していく。
研究と開発(R&D)は、主として公的部門からの直接(政府機関や部局)または間接(大学や
研究施設)の資金提供で支えられている。また、自社で R&D を実施したりこれに資金を出
したりする大手の企業および業界参加者によって賄われることもある。技術の実証という目
的に利用可能な資金は、研究開発段階向けの資金よりも少ないというのが実情である。この
融資の途切れは、プロトタイプの開発および構築に高いコストがかかる技術の商業化や展開
を成功に導く上で大きな障害となっている。
実証段階における融資の途切れをつなぐことを目的とした公的部門融資メカニズムには、条
件付き助成金 15 、転換貸付け、保証等があり得る。事業上および技術上の支援は、開発者が
技術の商業化を成功させるためにこれらのメカニズムを確実に利用できるようにする助けと
なってくれる。公的部門は、事業促進サービスや技術インキュベータを通じた能力構築に向
けた支援を提供することもできよう。
更なる事実
デット投資は、技術への金融の連なりの後半段階においてのみ役割を発揮する。商業貸
出機関は早期のリスクの引き受けには消極的なのである。一般に、技術が商業化を果た
して収益源となることを証明して初めてデット投資が確保できるようになる。この途切
れに市場という場で対応する商品は少数だが存在する。例えば、GEコマーシャル・ファ
イナンスが提供している、クリーン・エネルギーに「ベンチャー・デット」投資を行う
初期技術向け貸付けプログラムがそれである 1 。金額は通常 50 万ドルから 500 万ドル
で、その構造は多岐に渡っている。
インキュベータは、実証段階における運転費用に対して援助を提供するとともに、技術サポ
ートを付与したり、事業開発や資本調達について助言したり、チームの指導を手助けしたり、
研究を提供したりする場合もある。インキュベータ・プログラムは地場および地域の経済発
展に寄与し、雇用を創出することから、政府は概してインキュベータ・プログラムを好む。
b) インキュベータ
 英国では、カーボン・トラスト・インキュベータ・プログラム 16 が、主要な低炭素セ
クターに対する実地検証やエンジニアリング関連の支援を提供する「促進サービス」
を含めた商業化への足がかりを、新技術を対象に提供している。カーボン・トラスト
は、25 万ポンドを上限とする条件付き助成金の授与も行っている。プロジェクトに
帰属する知的財産から無事に収益が得られるようになれば、無利子で毎年収益の 5%
15
条件付き助成金(返済免除条件付き貸付け)は、新興技術企業が資本へのアクセスを殆どまたは全
く持たないという高リスクの実証段階に際して効果を発揮する。条件付き助成金というのは、対象技
術や知的財産(IP)から無事に収益が得られるようになるまで無利子または返済義務なしで「貸し付け
られる」助成金のことである。これは、技術の開発者が民間および商業的融資に移行しようとする過
程を助ける役目をし得る。ソフトで転換条件付きの貸付けを返済することが、後にデットやエクイテ
ィ資金を調達しようとする際に役に立つ実績の積み上げにつながるということである。
16
http://www.carbontrust.co.uk/technology/incubator/
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のペースで助成金の返済を行うものとされている。収益が出なければ支払いの必要は
一切ない。
 カナダでは、技術早期行動措置 17 (TEAM)基金が、実証期にある技術に対する金銭的
支援を、条件付き助成金を通じて供与している。TEAM融資は数百万カナダ・ドルの
資本梃子入れをフォロー・オン融資の形で行い、以降の民間融資やその他の投資にお
いて 5 対 1 のレバレッジ比率を達成している。
 オーストラリアでは、エネルギー・温室効果関連技術センター 18 (CEGT)が、投資一
案件につき 100 万オーストラリア・ドルを上限としてクリーンテク領域の民間ベン
チャー・キャピタルの資本梃子入れを即時開始の共同投資機会を通じて行っている。
同基金は 50%を上限としてプライベート・エクイティ資金を拠出し、リターンその
他の条件は技術の開発者と他のエクイティ出資パートナーとの間の交渉に任せる。
CEGTはイノベーションの流れの全段階を通じて技術に対する資金提供を行っている。
c) 技術革新に対するベンチャー・キャピタル
技術革新に対する主要な資金源は、技術系企業の創業期に進んで関与しようとするハイリス
ク・ハイリターン志向の投資家が資金を出す民間のベンチャー・キャピタルである。
ベンチャー投資家(VC)とは、前途有望な新興企業の持分(株式のシェア)の相当部分を取得
するために創業期のリスクを引き受けるプロの投資家のことである。そうした持分には通常、
その企業の経営および技術開発における当該 VC の参画が伴う。
どのクリーン技術企業に投資するかを決定するにあたってベンチャー投資家(VC)が求める主
要な特性はどのようなものか

第一の要素は財政的実行可能性である。対象商品またはサービスがもたらす可能性があ
る環境面の利点は、いずれも殆どの VC にとっては付随的なものなのである。

長期的な計画策定への意欲、堅実な商業上戦略、外部の助言(執行役員ではない経験豊
富な取締役を通じたものが考えられる)に耳を傾けてそれを実行に移すことに積極的な
姿勢を備えた強力な経営チーム。VC は、優れたアイデアを持つ前途有望な新米よりも、
経験豊富な起業家(例えば IT やバイオ技術における実績がある等)を支持する傾向の方
が強い。

確かな(できれば証明済みの)技術。技術リスクの引き受けに対する意欲は、クリーン
テク部門におけるトレンドによって変わってくる。

明確に定義され、保護されている知的財産。

対象商品またはサービスが明らかにターゲットとし得る市場が、収益を生むような価格
設定での需要を伴って存在していることが必要である。

収益発生までの期間が比較的短い、明確に示された「市場行きルート」。創業初期段階
に投資する投資家の射程はわずか 3 年から 5 年に過ぎない場合もある。VC が定める射
17
18
http://www.team.gc.ca/english/
http://www.cegt.com.au/
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程はかつてよりも短く(以前は 8 年)、今では 12 か月から 36 か月期間の「プレ IPO」
ファンドがこの部門における投資先の取り合いをしている。

最後に、投資家にとっては、明確に定められた出口戦略が死活的に重要である。あらゆ
るベンチャー・キャピタル投資にとっての勘所は、別会社への売却、プライベート・エ
クイティ会社へのセカンダリー市場での売却、または株式取引所上場を通じた、採算性
のある出口なのである。
薄膜型太陽電池やセルロース系バイオ燃料といった「もてはやされてい
る」分野は、廃棄物のエネルギー転換等のどちらかといえば魅力に欠ける
ニッチ分野よりもスポンサーを見つけられる成功率が高いだろう。後者は、
例え成熟度がより高い技術の場合であっても、ベンチャー出資の取りつけ
にとても苦労している。VC は「画期的」かつ「飛躍的」な技術に関心を
寄せるが、その焦点の幅は狭い傾向にある。実績がない実業家、あるいは
発展途上国を拠点としている起業家は、VC の興味を惹きつけるための助けを必要としてい
る。SEFI(次項)等の組織がこのような助けを提供できる。
d) 持続可能なエネルギー金融イニシアティブ(SEFI)
市場の失敗により、持続可能なエネルギーの開発の構想から商業化までの様々な段階にでき
てしまう金融の途切れを埋めるために、起業家の支援を図る公的な資金提供メカニズムを利
用することができる。同時に、複雑かつ変化の目まぐるしいクリーン・エネルギー技術とい
う舞台において投資対象を見出し、管理するためのより優れたツール、支援およびネットワ
ークを資金の出し手が活用できるようにすることも重要である。
SEFIhttp://www.sefi.unep.org/とは、エネルギー効率および再生可能エネルギーに対する投資
の拡大を奨励し、促進し、そして支援することを使命とするUNEP機関、持続可能なエネル
ギー金融イニシアティブ 19 のことである。SEFIは、イノベーションのプロセスの進行を早め
るためにどうすれば公的資本をよりよく利用することができるかを話し合うことを目的とし
て、起業家や資金提供者と協力するとともに、国際的な公的部門および民間部門の意思決定
者たちの関与を図っている。
SEFI およびパートナーは、世界中のクリーン・エネルギー分野の起業家、開発者および
資金提供者の役に立つ多彩なサービスを提供している。情報および資源については、
「リンク」の項を参照して頂きたい。
19
SEFIは、UNEP再生可能エネルギー・金融ユニットとUNEP金融イニシアティブ(UNEP FI)の共同プ
ログラム。これらの機関はいずれも、UNEPの技術・産業・経済局(DTIE)、そしてUNEP研究協力セ
ンターであるBASE(持続可能なエネルギーのためのバーゼル・エージェンシー)の一環を成してい
る。
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結論
クリーン・エネルギー部門への投資の流れは今後も成長し続けると
ともに、多様化し続けていくだろう。諸々の要因が重なり合ったお
かげで、商業的発展が可能となった新エネルギー技術の種類は拡大
している。気候変動とエネルギー保障がエネルギー政策や炭素軽減
イニシアティブに対する高次元の推進要因として働き、その一方で
エネルギー価格や収益が自由市場を先導しているのである。投資家は当座のポテンシャルを
見て動き、ベンチャー・キャピタルからプロジェクト・ファイナンスに至るまでの金融の連
なりに沿ってクリーン・エネルギー関連の投資機会に参加している。大企業や大口の貸出業
者は、グリッド接続型の再生可能エネルギーの案件の取りつけにしのぎを削っている。太陽
エネルギーは今や銀行によるプロジェクト・ファイナンスの対象になり得るし、また機関投
資家は買収や直接投資を通じて自らの再生可能エネルギー・ポートフォリオを精力的に拡充
している。それでも、新しい技術の革新者や発明者は従来抱えてきたものと同じ多くの試練
に直面している。今では、技術開発の実証段階といった初期に融資の綻びが生じた際の援助
として、より優れた公的部門メカニズムの利用が可能になっている。条件付き助成金は、そ
れを受けるに値する起業家に資金とやる気を与える。この目的には、更に多くの方途が必要
とされている。ベンチャー投資家は、若い企業にとって重要な資金提供源である。
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総括・復習
(1) クリーン・エネルギー部門に対する投資の主要な資金源は、プライベート・エクイティ
やベンチャー・キャピタル、株式新規公開、エクイティ・ファンド(セカンダリー市
場)、炭素ファンド、インフラ・ファンド、そして各種の資産融資およびプロジェク
ト・ファイナンスである。
(2) 現在ある主だった排出ゼロ・エネルギー技術は、太陽エネルギー、風力、バイオマス、
バイオ燃料、地熱、水力発電および海洋エネルギー、原子力、炭素捕捉・貯蔵であり、
また「クリーン炭素」技術も将来のエネルギー・ポートフォリオの重要な構成要素であ
る。
(3) 「クリーンテク」という言葉は、価格や性能の面で競争力を備えた商品およびサービス
を作り出すために革新的な技術を利用する会社について使う言葉である。スマート流通
やエネルギー貯蔵といった分野に対する投資は、クリーン・エネルギーのバリュー・チ
ェーン全体を前進させる。
(4) 金融イノベーションとは、新技術の開発を金融の連なりに沿って大規模な商業的実用化
へと進ませる過程に関わるものである。新技術にとって、この連なり上の「死の谷」と
なるのが実証段階である。インキュベータ等の公的メカニズムや民間のベンチャー・キ
ャピタルは、初期段階の資金を提供する。SEFI は、開発者および資金提供者に情報と援
助を提供している。読者は関連リンクを是非チェックして頂きたい。
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関連リンク
SEFI 関連リンク
再生可能エネルギー・金融ユニット(REFU):クリーン・エネルギー・プロジェクト開発と
投資家コミュニティーを支援するプログラムを担当するユニット。最近の報告書、研究およ
び概要説明文書はwww.uneptie.org/energy/financeでダウンロードできる。
UNEP金融イニシアティブ(UNEP FI):UNEP FIは、UNEPと金融セクターの間の世界的なパ
ートナーシップ。銀行、保険業者、資産運用業者を含む 170 を超える機関が、環境面および
社会面の検討材料が財務業績に与える影響を理解するためにUNEPと共同で活動している。
役に立つ様々な刊行物や金融機関向けの国際的イベントのスケジュールについては、
www.unepfi.orgを閲覧されたい。
持続可能なエネルギーのためのバーゼル・エージェンシー(BASE)は、技術系の起業家と投
資家との間に戦略的なパートナーシップを構築することを支援する非営利基金で、UNEP協
力センターでもある。詳細はwww.energy-base.orgを参照のこと。
持続可能エネルギー融資ディレクトリーは、クリーン・エネルギー部門に対する資金提供を
行っている貸し手および投資家のオンライン・データベース。同ディレクトリーはSEFIが管
理している。参照先:http://www.sef-directory.net/
持続可能な選択肢ネットワーク(SANet)は、新興市場におけるクリーン技術プロジェクトの
活動を援助するためのオンライン資源を提供しているウェブサイト。参照先:
www.sustainablealternatives.net
FDI.netは世界銀行グループに属し、世界各地の新興市場における直接投資の機会と事業運
営条件についての情報を提供している。参照先:http://www.fdi.net
RETScreen International クリーン・エネルギー意思決定支援センターは、クリーン・エネル
ギー市場の参加者に向けて 21 カ国語で情報を揃えているカナダ政府運営の能力構築ツー
ル。 www.retscreen.net
再生可能エネルギー及びエネルギー効率に関するパートナーシップ(REEEP)は、クリーン・
エネルギーのための政策や規制のイニシアティブを打ち立て、エネルギー・プロジェクト向
けの資金提供を円滑化する作業を活発に行っている世界的な官民パートナーシップ。
http://www.reeep.org/
Portfolio Based Electricity Generation Planning(ポートフォリオ・ベースの発電計画策
定): Awerbuch, Dr. Shimon, Mitigation and Adaptation Strategies for Global Change(世界
的変化のための緩和および適応の戦略) “Portfolio-Based Electricity Generation Planning:
Policy Implications for Renewables and Energy Security(ポートフォリオ・ベースの発電計
画策定:再生可能エネルギーとエネルギー保障についての政策的示唆)”, March 2005, ティ
ンドール・センター客員研究員, サセックス大学 科学技術政策研究ユニット, ISSN 13812386 (印刷物)
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関連リンク(続き)
報道と情報
クリーン・エッジ http://www.cleanedge.com/
エンバイロンメンタル・ファイナンス誌 http://www.environmental-finance.com/index.htm
ニュー・エネルギー・ファイナンス www.newenergyfinance.com/
フォーラムやブログは、クリーンテク部門の動きを追うのに役に立つ資源である。
 「クリーンテク・フォーラム」 http://www.cleantechforum.com/
 「クリーンテク・ブログ」 http://www.cleantechblog.com/
 「2 ステップス・フォワード」 http://makower.typepad.com/joel_makower/
スターン・レビュー全文:
http://www.hm-treasury.gov.uk/independent_reviews/stern_review_economics_climate_change/stern_review_report.cfm
技術関連
カナダ政府クリーン・エネルギー・ポータル&技術ディレクトリー
http://www.cleanenergy.gc.ca/tech_dict/index_e.asp
米国エネルギー省(DOE) エネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)は、省エネルギー
および再生可能エネルギー技術に関する情報を掲載している米国エネルギー省のウェブサイ
トである: www.eere.energy.gov/
投資家関連
英国ベンチャー・キャピタル協会 http://www.bvca.co.uk/
全米ベンチャー・キャピタル協会 http://www.nvca.org/
国立再生可能エネルギー研究所(NREL)「クリーン・エネルギー投資家ディレクトリー」
http://www.nrel.gov/technologytransfer/entrepreneurs/directory.html
その他
エネルギー貯蔵協会 http://www.electricitystorage.org/about.htm
英国工学技術学会, “IEE proceedings(IEE 会報)”, 以下の分野に関連する記事:

電力応用

発電、送電および流通
インテリジェント輸送システム

http://www.ietdl.org/journals/doc/IEEDRL-home/info/journals/proceedings/
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P16
クリーン・エネルギー技術への資金提供:連なりの図
1
シード期融資
(研究と開発)
2
初期(VC)
(実証/パイロット・プラント)
3
拡大期(VC)
(商業化/収益)
4
企業/資産金融
(出資、融資、IPO)
5
ストラクチャード・ファイナンス/プロジェクト・ファイナンス
(SPV〔特別目的事業体〕)、オフ・バランスシート、マーチャント型)
VC=ベンチャー投資家
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