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正しい荷締めの手引き資料
事故は起きるものではなく、人が起こすものです 正しい荷締め方法と 安全輸送へのご提案 増え続ける貨物落下による交通事故。原因のほと んどは積み荷作業の不良とみられています 道路を走っていて、ダンボール箱や木箱が落ちているのをたまに見 かけますね。思わず急ハンドルを切ってよけます。危険この上ありま せん。でも、中に赤ん坊が入っていたなんて事件がありましたからね。 西日本高速道路(株)関西支社が平成16年度に処理した高速道路等 の落下物処理件数は、約 56,500 件に上りました。1日平均 155 件 もの多さです。毛布などの布類(22%)、角材など木材類(16%)、タイ ヤなど自動車部品(13%)などがベスト3ですが、鉄材や家具・電化製 品など物騒な落とし物も少なくありません。 最近、豚を運搬中のトラックが事故を起こし、積み荷が高速道路を トン走するといった珍事もありました。多くの豚が対向車線に入って ひき殺されました。 落下事故は「人災」です。積載作業時や走行中の荷崩れは、運転ミ スなどによる事故を除けば、積み荷作業の不良・不備に原因のほとん どすべてがあります。 落下物は落とし主の責任です!! 落下物による事故が増えています。時 には人命にかかわる重大事故を引き起こ しかねません。積み荷の落下により他人 に被害を与えると、落とした側の責任が 法律によって厳しく問われます。 道交法 71 条4号の2 車両等に積載して いる物が道路に転落し、または飛散したと きは、速やかに転落し、または飛散した物 を撤去する等道路における危険を防止す るため必要な措置を講ずること。 ピッピー、積み荷を落とし てはいけませんよ 違反による罰則(同法 120 条第 1 項の 9 号)は、5万円以下の罰金と、 それほど重いものではありませんが、他人に与えた被害によっては、業務上 過失致死傷まで加わる重大なものとなりえます。 運転者などとともに、積み荷に従事した人や、総合的に管理監督責任を 負う人や会社にも広く責任が及びますから、荷崩れや落下の防止には日ご ろから細心の注意を払う必要があります。 (1) 最新鋭のトラックも、腕のいいドライバーも、下手な 荷締めにはお手上げです ゴルフなどで、休日の高速道路をのんびり走っていると、追い越し 車線をものすごいスピードでトラックが追い抜いていきます。風圧で こちらのクルマがぐらりと圧されます。最近のトラックはスポーツカ ー並みのスピードが出せるようです。そんなトラックから突然ものが 落ちてきたら、と思うとぞっとします。 もっとぞっとするのはドライバーでしょう。積み荷のバランスが悪 かったり、荷台でガタガタ音がするようでは、安心して走っていられ ません。そう、最新鋭のトラックも、腕自慢のドライバーも、下手な 荷締めで、三文の値打ちもなくなってしまうのです。 安全は、正しい荷締めから!! トラックは大破するわ、電柱は折れ るわで、えらい損害です 国土交通省自動車交通局貨物課の 調べによりますと、登録されている 貨物自動車運送業者数は、平成 16 年度で 61,040 社を数えます。20 年 前 の 昭 和 59 年 に 比 べ る と 24,000 社ほど増えています。同じ 統計で、平成 16 年度の運転者数は 823,000 人です。 一方、同じ年の営業用貨物自動車 (主にトラック)は 138 万台で 20 年 前との比較でおよそ 50 万台増えて います。平成 15 年度の貨物輸送量 は全体で 55 億 9,700 万トン、そ のうち 28 億 2,700 万トンを営業 用トラックが運んでいます。20 年 前と比べると、全体では横ばいです が、営業用トラックがほぼ 10 億ト ンも増えています。 自前で運ぶところが減って、専門 業者への委託が増えているわけです が、それだけ運送業者には大きなリ スクと責任がかぶさってきているの です。 責任を全うするためのキーワード は「無事故」、そのポイントの一つが 「正しい荷締め」なのです。 (2) 国も皆さんも、大事な荷締め作業を、少々軽く見 すぎているのではありませんか 大昔に、自転車で百貨店の配達のアルバイトをしたことがあります が、配達そのものより配達所でのボテ箱への荷積みがとても大切でし た。一度に 50 個くらい運ぶので、配達順路に沿って、重いものを下 から積んで行かないと走り出したとたんに立ち往生します。荷崩れ防 止用具はネットでしたが、それでも不安なときは自転車のチューブで しっかり固定したものです。 自転車もトラックも原理は同じです。安全と効率は積載と荷締めの 上手下手にかかっているのです。あとで詳しく述べますが、そのこと が業界にはまだまだよく理解されておらず、運転手や作業員の経験や 勘に任されているのが実情です。 重大事故はともかく、商品の保護や運送効率向上のためにも、運送 業務の準備行程としての積載や荷締め作業を軽く見ることは許され ません。 荷締めの重要性の再認識を!! 日本は許認可のお国柄です。倉庫など で荷物を安全に吊り上げるクレーン作業 にも免許や資格制度が実施されていま す。玉掛けや吊り準備の作業がそうです。 どちらも「労働安全衛生法」に定められ ていて、正規の教育機関で講習を受け、 合格者に免許や資格が与えられていま す。 ところが、荷物を適正に積んだり、安 全に固縛(荷締め)する作業には免許や資 格制度はありません。 クレーン作業も重量物を安全に輸送す るため積載する作業ですから重要度にお いては変わりありませんが、こちらは免 許・資格の世界、荷締めは経験と勘の世 界というのは、とてもうなづける話では ありません。 それはさておき、今のところ荷主、事 業主、作業者まかせになっているトラッ クの荷締め作業に対して、その重要性な どについて正しい理解と認識を持ち、適 正な技術を学び育てていくことが、今ほ ど求められているときはないと言えるで しょう。 (3) 港湾における船からトラックへ の積み替え作業 欧米では 高速道路やア ウトバーンの出入り口で安 全な荷締めができている かなどを、保険機構の専 門官が測定器具を使って チェックして安全輸送を確 認しています。 実践編 安全な積み荷の3条件 ひと言で「荷締め」と表現してきましたが、内容は、商品を安全に 効率よく目的地まで運ぶための準備行程全体を指します。つまり物を トラックの荷台に正しく載せるまでの作業すべてが対象です。 これはとても重要で、難しい仕事です。 作業に重要なファクターは、主に下の3つです。これが「安全な積 み荷の3条件」です。決して忘れないでください。 1.積み付け方法 積み付ける荷物の種類、寸法、重量、重心、作業の内容などによっ て、それぞれに適した方法があります。 2.荷締め用具の選定 用具には、荷締め機、台付け用具、角当てなどがあります。荷物の種 類、荷姿などによって決めます。 3.正しい荷締めの方法 正しい荷締めは、荷締め箇所と荷締め数で決まります。この設定を間違 ったり手抜きしたりすると、荷崩れの原因になります。 上の3条件につきましては、次ページ以下で詳述させていただきます 少々古いお話で恐縮ですが、一昨年 の夏の真っ昼間、民家から 30 キロもあ る重い金庫を盗み出し、自動車の荷 台に載せて逃走中の無職男(58)が、 あろうことか、荷崩れを起こしてパトロール中の神 戸須磨署員に逮捕されました。 金庫は高さ 40 センチ、幅 60 センチ、奥行き 40 センチの頑丈なもので、男はこれを布で巻い てローラー付きの台車を荷台に固定して走って いたのですが、犯行現場からわずか 200 メート ルのところで台車と金庫がずれたため、道路上 に停車して直していたところを御用となりました。 中には 5 万円しか入っていなかったそうです が、犯人はもちろんそれを拝めずじまいだったと いうことです。汗っかき、でしたね。 判決がキンコ何年だったかまでは聞き及んで いません。 (4) あらやだ、袋の山がフェンス にもたれちゃってる 各論1.積み付け方法 積み付けとは、要するに、トラックの荷台にどのように荷物を並べ たり積んだりするかということです。寸法や形状はもちろん、重量の バランスや重心など、いろいろ気をつけることがあります。 ① カートン類と雑貨 ゴムシート カートン類を重ねると、カートン間の摩擦 係数が 0.2∼0.4 まで下がって滑りやすく なります。水平の揺れによって荷崩れを起 こす原因になりますので、多段積みの場 合は、中段に摩擦係数の高いゴムシート を挟むようにします。 ② 積み付けの位置 積み付けが単体か混載かなどによっ て条件は変わりますが、どのような場合 でも積み荷が集中荷重や偏心荷重に ならないように気をつけます。 単体の場合は、トラック荷台の重心と 積み荷の重心が合致するように積み付 け、混載の場合は様々な貨物の複合 重心がトラック荷台の重心に合うように 積み付けます。 2003 年 7 月のことです。兵庫県川西市内で乗用車と大型ト レーラーが出会い頭に衝突、トレーラーに積まれていた鋼板 27 枚が荷崩れを起こし、その一部が運転席を直撃しました。運転 手はつぶれた運転席に挟まれて重傷を負いました。 鋼板は長さ6メートル、幅 1.5 メートル、重さ 1.5 トンでしたが、積んでいた 27 枚のうち 18 枚が運転席を直撃、残り9枚が荷台から滑り落ち道路に散乱したそうです。付近には信号待 ちのクルマや事故を起こした乗用車などがいましたが、幸いトレーラーの運転手以外にけが 人はありませんでした。 63 歳のトレーラー運転手は、2時間後に救出されましたが、両足の骨を折る重傷だったと いうことです。現場付近は事故処理のため4時間にわたって通行止めになりました。 警察は事故原因について、右折乗用車を避けようとしたトレーラーが急ブレーキをかけた ため、鋼板を結束していたワイヤーが慣性に耐え切れず切断されて運転席を襲ったと断定 しました。 荷締め時に事故を想定することはできないにしても、もう一工夫あればという意味で、荷 締めの重要性を如実に示したケースだったと言えるでしょう。 ケースワーク (5) ③ 径管、コイルなどの積み付け 転がる荷物には十分注意する必 要があります。放っておけば、発 進、停止、カーブのたびに自在に動 き回ります。 そういう荷物には歯止めスタンシ ョンといった便利な用具がありま す。それでも、抑止力には限界があ りますから、こういう荷物を運搬する ときには、積み付けの際も運転者も 細心の気遣いが欠かせません。 ④ スキ間は荷崩れの大敵 トラックの荷台のあおり(積み下ろし時に 上げ下ろしする囲い)と積み荷の間にスキ 間があると、いくら強力に固縛しても荷物 が動いて荷締めが緩んでしまいます。 単体、混載を問わず、スキ間があれば 木材などでそれを埋めて、走行中に積み 荷がずれないようにします。 ⑤ 作業は安全第一で 積み付け作業はつねに危険と隣り合 わせです。荷崩れは走行中のトラックだ けで起こるものではありません。 また、クレーンやフォークリフトを使うこ とが多いのでそれらの動きから目を離し てはいけません。とくにクレーンは現場 から離れた場所で操作していますので、 必ず運転士から見えるところで作業し、 死角に入らないようにしましょう。 2004年8月には、千葉県でトラックの荷台に乗っていた子供3人のう ち、14 歳の少女が荷崩れした材木の下敷きになって意識不明の重 体になり、残る2人も軽傷を負うという痛ましい事故がありました。36 歳男性が運転するトラックが県道を左カーブしているときに、畳一枚分の大きさのベニヤ板 100 枚と長さ5メートルの角材数十本が荷崩れを起こし、少女は倒れてきた材木と荷台の手すりに挟 まれて胸部を強打したといいます。 運転手は業務上過失致傷の現行犯でその場で逮捕されましたが、調べに対して「結束の仕 方が悪かったかもしれない」などと供述しました。経験と勘による荷締めゆえの悲劇だったのかも 知れません。 ケースワーク (6) 各論2.荷締め用具の選定 荷締め用具には用途によって様々なものがあります。荷台で荷物 を固縛するだけではなく、荷物を荷台に積み込んだり、傷つかない ように保護したりするのも用具の大事な役割です。どれを使うかは、 用途や荷物の種類、荷姿などで決めますが、荷物の重量や荷締めの 強度などによっても選択基準が変わります。用具の選択を誤ったり 手抜きをしたりすると、重大事故に結びつく恐れがあります。 ◎ 個々の用具についての詳細は、別添の弊社カタログをご覧ください ① 荷締め用具の製品表示 荷物を吊るクレーンホイストおよび玉掛け用具は、J I S 規格によって使用 荷重と破断荷重(安全倍率)が定められています。一般に破断荷重の5分の 1が使用荷重として表示されています。ただし、ワイヤーロープの使用荷重 は、破断荷重の6分の1で表示されています。 これらに対して、荷締め用具、台付け用具には J I S 規格がありません。そ のためメーカーが独自に使用荷重を、「安全荷重」として商品ごとに表示して います。ただし、チェーンレバーホイストは荷締め用具に分類されていますが 吊り作業にも使われるため、J I S 規格製品になっています。 さて、用途ですが、重量物の荷締めにはチェーンレバーホイストを、軽量物 にはベルトラッシングを使うのが一般的です。 また、台付けには現在ワイヤーロープが多く使われていますが、最近は積 み荷を傷つけないベルトスリングを使用するケースが増えてきており注目され ています。 ② 重要な「角当て」の役割 チェーン、ワイヤー、ベルトなどは、いずれも硬い積み荷の角に当たると 強度が半減するので非常に危険です。硬い荷物の角が 90 度の場合、強 度は通常の50∼60%に低下するので危険です。 逆に積み荷の角がソフトな場合はキズの原因にもなりますので、角ばっ た積み荷には必ず角当て使用することをお勧めします。 また、荷締めに使う車両の金具が角張っている場合も、直接通さずシャ ックルを使うようにしてください。 (7) 各論3.正しい荷締めの方法 ここまで再三申し上げてきましたが、荷締めはこれまで現場作業者 や運転手の経験や勘に頼ってきました。しかし、高速道路等での落下 事故が関西だけで年間5万件を超えている現実や、荷崩れなどによる 死傷者が後を絶たない現状を考えると、荷締め技術の絶えざる向上と 普及が、トラックメーカーをはじめ運送に携わるすべての業界・企 業・従業員にとって、まさに 焦眉の急 になってきたと申し上げて 過言ではありません。 荷締めの箇所と荷締めの数 荷締めの箇所は、積み荷の形状で決まります。通常の積み荷は前後の2本止 め(下左)、長尺物は前後と中央の3本止め(下右)、積層物は上段と下段でそれ ぞれ必要本数を荷締めします。 土木建設機械は重量物で、しかも車床接地面積が小さいので振動や衝撃に よる横ずれを防止するため、荷締め箇所は通常の積み荷より多くします。 混載の場合でも、1単体に2本止めまたは3本止めを施します。どんなに軽い ものでも1本止めは厳禁です。走行中に外力、衝撃などで荷締めが外れ社外に 落下する危険性があるためです。 積み荷とロープの張り角度を 45 度以内にすることもおろそかにすることはでき ません。この角度が大きくなると、荷締め力が極端に弱くなってしまいます。 このほか、積み荷とあおりの間にスキ間がある場合、木材で埋めてから荷締めす る(下左端)ことや、荷締めフックを直接トラックのフックに掛けず、必ず補助ワイヤー を使う(その他)などの手順を守ることが、安全な荷締めには欠かせません。 (8) おわりに トラック輸送業界はいまや、国内物流を支える大動脈の地位に君臨して います。しかしながら、その内情を見ると、構造的な供給過剰に加えて人 件費の上昇や慢性的な人手不足、さらに最近では、原燃料コストの急騰や 道交法改正などの逆風が一気に押し寄せてきて、個々の企業の経営内容は 決してかんばしいものとはいえなくなってきました。 また、トラック輸送事業はきわめて労働集約的な色彩が濃く、効率化・ 合理化の余地が非常に限定的である反面、環境破壊や労働災害などへの対 応にも以前とは比べものにならない出費を強いられるなど、経営リスクは かってない高まりを見せています。 弊社は、そうした業界に、輸送関連機器の分野から参画する企業として、 皆様がたの、安全と、効率化・合理化努力に対して、良品の安価な提供を 通じて少しでも貢献できたらと、ひたすら願っております。 どうか、弊社のこの心意気をお汲み取りいただき、今後とも変わらぬご ひいきを賜りますよう、社員一同、心よりお願いする次第であります。 (9) 正しい荷締め方法と 安全輸送へのご提案 (資料編)