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「英語の力」のとらえ方

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「英語の力」のとらえ方
吉田 孝 :「英語の力」のとらえ方
17
「英語の力」のとらえ方
── 知識と使用 ──
吉 田 孝
文中,その日本語訳が定まらない用語,強調したい語句は < > に英語を挿入した。
日本の英語教育(Teaching of English as a Foreign Language in Japan)は TEFLJ と略記。 # 印は吉田のコメント。
[キーワード]
中間言語 <interlanguage>,についての知識 <meta-linguistic knowledge>,(文法)
形 式 へ の 注 意, 気 づ き <focus on form>, 構 造 的・ 手 続 き 的 知 識 <structural and procedural knowledge>, 関 連 的・ 自 動 的 使 用 <associative and automatic use>, コ ミ ュ ニ カ テ ィ ブ・ コ ン ピ タ ン ス
<communicative competence>
内容 :
0. プロローグ
I. 「英語」の多面体,
「力」の多面体,その組合わせ
1. 「英語」の多面体のとらえ方 : チャンネルとスタイル
2. 「力」の多面体のとらえ方
1) 伝達能力 <Communicative Competence>
(1) 文法の能力・正確さ <grammatical competence or accuracy>
(2) 場面に適切な英語を使う力 <sociolinguistic competence>
(3) 談話・文章構成に関わる英語力 <discourse competence>
(4) 伝達ストラテジー <strategic competence>
2) 推論する力 <inferring>
3) 各種テストによって捉えられる力
(1) 学力(達成)テスト <achievement test>
(2) 能力(熟達)テスト <proficiency test>
(3) 適正テスト <aptitude test>
II. 英語の「知識」<knowledge> とその「使用」<proficiency>
III. 分析力 <Analyzability> と自動的力 <Automaticity>
VI. エピローグにかえて : 日本の英語教育(TEFLJ)
Appendices :
Appendix A : 推論による英語理解力(アンケート)
Appendix B : 関係代名詞構文の知識と使用(ミニ実験)
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人間発達文化学類論集 第 18 号
2013 年 12 月
0. プロローグ
英語の研究者として,教えるものとして,使用者として,英語との様々な関わりが我々の生活を形作っ
ている。英語のどの面を研究し,英語のどの面を授業や講義で教えているか,どの面を我々自身が用い
ているか,その答えは文字通り自明の理で,我々が最も自信が持てる英語の一面を研究し,教え,使用
しているし,またそうでなければなるまい。自身にとっておぼつかない英語を研究することは出来ない,
他人に不安げに自分が使用出来ない英語を教えてはいけない,日常的に自由に使いこなすことも出来な
い。例えば,私が専門に研究し専門教科として講義し,英語教育(TEFLJ)を行っている際の私の出発
点とゴールは常に自分自身の英語力と学習方法 <learning strategy> である。研究上必要な第二言語習
得論 <Second Language Acquisition(SLA)
> の文献,論文を数多く読んでも,
多くの学会発表を聞いても,
研究にゆきづまった際に,結局は自分の英語の力はどのようなものか,現在の力に到達するのにどのよ
うな勉強をしてきたかについて最も身近なデータに対する「内省」に立ち戻って解決策を模索している。
私の英語力で強い面は何か,弱い面は何か,何故そうなのかの内省が私の,英語研究者として,教育者
として,また英語使用者としての原点であると思っている。ただし,
「英語の力」とひとことで表現さ
れるものが実は「英語」自体も,
その「力」も一面体からはほど遠い多面体であることは自認している。
以上を踏まえ,英語,その力,その組合せを,第二言語習得論 <SLA> で一般に用いられている幾つ
かの角度と枠組み <frame of reference> の中で整理,記述することが本稿作成のひとつの動機である。
もうひとつの動機は,柳瀬陽介氏は安井稔著『ことばで考える─ことばがなければものもない』(開
拓社,2013 年 3 月刊)の書評『英語教育』
(大修館書店)
(2013 年 10 月増刊号)の中で,安井氏が「高
校における英語の授業は英語を用いて行うという提案については「素人による素人のための提案」とい
うしかない」
,と述べつつ ,「浅薄化しつつある現代の英語教育界は碩学の知恵を必要とするのではない
か」(アンダーライン筆者)と訴えられている旨を紹介した。私は,この訴えに強く共感を覚え,同調
する。今,我が国は,小学校から大学までの英語教育の各レベル,さらに一般社会人対象の英語教育に
至るまで,「国際化」というスーパースローガンのもとに,2020 年開催予定のオリンピックの追い風も
受け,経済,政府,英会話産業界,マスメディアが一丸となって,第⃝次英語(実際は「英会話」
)ブー
ムを巻き起こしつつある。
「スピードラーニング」?? 永年英語教育に汗を流し,効果的な教授法を求め,
専門研究を続けている者は,誰が「聞くだけで,一夜で」などという CM を信じることが出来ようか。
スローガンの提案にあたって,「国際化」と,日本における言語(含,国語)教育,外国語(含,英語)
教育の意味が厳密に吟味されたであろうか,安井氏と軌を一にして,疑問を抱かざるを得ない。時の流
行や怪しげなムード的国際化論争に右往左往することのない,確固で不変・普遍の英語教育の価値観,
信念を求めなければならない。
「予定調和論」は無責任。子供,生徒,学生を犠牲にしてはいけない。
そのためには,日本もその一員である国際社会における外国語としての英語のありようを再確認しなが
ら,英語教育のいわば原点である「英語の力」とは何ぞや,という問いかけから出発するべきであると
考えた。
# i. 国際社会における外国語としての英語の位置づけ : EFL = English as a Foreign Language, ESL =
English as a Second Language, EAL = English as an Auxiliary Language, EIAL = English as an International
Auxiliary Language, ELWC = English as a Language of Wider Communication. それらのカテゴリーで行わ
れている世界の英語教育での「英語の力」の捉え方は,教育の目的論とともに,それぞれ異なっている
ことに留意しなければならない。ii. 小学校英語教育に関する英語教育,言語研究者達による本格的な
議論 :『小学校での英語教育は必要か』大津由紀雄編著(2004 年 慶応義塾出版会)(主な内容 : 賛成
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論「Who’s afraid of teaching English to kids ?」
(唐須教光)
/賛成論「国際理解教育の一環としての外国語
会話肯定論─競争原理から共生原理へ」
(冨田祐一)/反対論「公立小学校での英語教育─必要性なし,
益なし,害あり,よって廃すべし」
(大津由紀雄)
/ 反対論「小学校英語教育─異文化コミュニケーショ
ンの視点から」
(鳥飼玖美子)
(他)
私自身は,ことばの教育につての深い思慮,とりわけ日本語・文
化への配慮が欠落している小学校英語(英会話)教育には反対の意見である。
I. 「英語」の多面体,
「力」の多面体,その組合わせ
1. 「英語」の多面体のとらえ方 : チャンネルとスタイル
チャンネル :
a. 音声面(聞く,話す)
聞き話す音声(聴覚)チャンネルを英語が通る
b. 文字面(読む,書く)
読み書く文字(視覚)チャネルを英語が通る
スタイル :
c. もともと聞き話される(英会話)スタイルの英語
d. もともと読み書かれるスタイルの英語 Lawrence : ‘Writing as a Thinking Process’(1977 : 31-32)
チャンネルとスタイルの組合わせ
i. a-c : 音声チャンネルを通る英会話の英語
ii. a-d : 音声チャンネルを通る読み書きスタイルの英語
iii. b-c : 文字チャンネルを通る英会話スタイルの英語
iv. b-d : 文字チャンネルを通る読み書きスタイルの英語
吉田 :「和文英訳」
(1983 : 781-783)
# 英語教育上注意すべき組合わせ :
ii 及び iii がチャンネルとスタイルの組合わせで指導上問題となるケース :
(1) 話し,聞く英会話(チャンネル a,スタイル c )が文字化(チャンネル b,スタイル d)されて
いる組合わせの際に,英会話力ではなく英語の読解力を評価しているケース。
(2) 読み,書く読解(チャネル b,スタイル d)が音声化(チャンネル a,スタイル c)されている
組合わせの際に,読解力ならず英会話力を評価しているケース。
# 組合わせ ii, iii が誘発している指導や評価上の食い違いは英語教育現場ではしばしば見られるので
注意を要する。
もちろん,例えば従来が聞き楽しむための読解教材や,読まれるための会話の教材はそれなりの特徴
を備えたスタイルとなり,その英語力のとらえ方や指導方法は当然 ii, iii とは異なるものでなければな
らない。
2. 「力」の多面体のとらえ方
1)
伝達能力 <Communicative Competence> : Canal and Swain(1980)が作成し,Canale(1983)が
発展させた次の 4 種類の能力を含むモデルが知られている。
(1)
文法の能力・正確さ <grammatical competence or accuracy> : 4 技能(聞き,話し,読み,書き)
に必要な語彙・文法力,発音,綴り,接頭辞・接尾辞使用力。 #「4 技能」とあるが,このモデルに関しては対話者間の伝達をスムースにするための対話現場での
意味の交渉 <negotiation of meaning> が余りにも強調されているため,
(1)は前述したチャンネル a(音
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声面 : 話し,聞く)の英語力だけを指し,チャンネル b(文字面 : 読み,書く)の英語力は指さない英
語の力であると誤解されがちであるが,印刷された英語文学作品を媒体 <catalyst> として,読者が作
者と意味の交渉を行う場合の英語の力を想起されたい。例えば,チャンネルとスタイルの組み合わせ
iv. b-d で示した文字チャンネルを通るもともとが読み書きスタイルの英語に対応出来る英語力である。
Yoshida : ‘Translation as a reading strategy’(2013 : 73-77)
(2)
場面にふさわしい英語を使う力 <sociolinguistic competence> : 例えば 4 時 10 分に終る講義時
間が過ぎたことに 気付かずに講義を続けている教授に学生が講義を止めてもらう際の適切な英
語は ‘Quit your lecture.’ はいかにも不適切で,‘It’s already 4 : 30, Professor Y.’ の方が適切な発話
であることは明白であろう。他にも社会的上下関係,男女関係,年齢差,職場での立場の違い,
方言等が反映された場面などに適切に対応出来る英語の使い分け,理解する語用論 <pragmatics> の力がチャンネル a, b で発揮される。吉田 :「日・英敬語対照研究」
(2011 : 19-33)
# ‘social competence’ の訳語は「社会言語能力」が一般的であるが,筆者は「社交言語能力」が正確
な訳語であると考えている。 ‘social’ の正しい意味は「社会」ではなく,対人関係を意味する「社交」
であろう。(ちなみに social dance の日本語訳は「社会ダンス」にあらず「社交ダンス」
)
(3) 談話・文章構成に関わる英語力 <discourse competence> : ひとくぎりの談話(含,<written discourse>)に必要な形式上の統一性 <cohesion> と意味上まとまりのある一貫性 <coherence> を
保って発話し,書く際に必要とされる英語の力である。日本語における文章構成方法の一例と
して「起・承・転・結」が挙げられる。さらにパラグラフの展開の仕方を,English, Semitic,
Oriental, Romance 及び Russian の 5 つのタイプに分類した Kaplan
(1972)の図式が知られている。
Halliday : ‘Language Structure and Language Function’(1970 : 140-165),McCarthy : Discourse
Analysis for Language Teachers(1991)
(4)
伝達ストラテジー <strategic competence> : 主として「話し」
,
「書く」場合の発表 <productive> の言語活動に関わる英語の力である。中間言語能力 <interlanguage> のある段階の英語
使用者が,実際の英語使用の場面で適切な英語語彙,構文等想起出来ない事態に直面した際,
当たらずとも遠からず的な表現をその時点の中間言語から探し求めたり,パラフレーズしたり,
場合によっては話題そのものを転換,回避 <topic avoidance> し,当面の伝達上の問題の解決
をはかろうとするいわば対話上の戦略 <communication strategy> として発揮される力のことで
ある。
#(4)は語用論 <pragmatics> 上の英語の力の中で TEFLJ ではとりわけその指導とともにもっと強調
されるべき力ではなかろうか。non-native speaker である筆者は,このストラテジーを駆使せずに英語
を用いることは不可能である。
2)
推論する力 <inferring> : 未知の単語に出会った場合,文内・言語上のコンテクスト(語彙的
<lexical>,文法的 <syntactic>=<linguistic context>)をてがかり <local cues> としてその意味を推し
測る文脈上の推理,及び文脈を超えた,それを取り囲む諸情報 <global cues> を活用する力のことであ
る。後者は,一般に,読み手が持つ世界の知識 <knowledge of the world> として知られている。‘Every
act of comprehension involves one’s knowledge of the world as well.’ Anderson, Reynolds, Schallert, and Goets
(1977 : 369) 英語読解教授法でのスキーマ理論 <Schema(= scenario, plot)Theory> の適用である。
<knowledge of the world> を活性化して,読解しようとする際に,あらかじめ英語の内容に,
「こんな
ことが書いてあるに違いない」と,仮説 <hypothesis> を設定する。読解とはその仮説の信ぴょう性
<validity> を確かめながら読み進むプロセスと定義される。書かれている内容と最初に立てた仮説(の
吉田 孝 :「英語の力」のとらえ方
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一部)が合致しなければ,仮説を修正し全体から部分へ <top-down>,部分から全体へ <bottom-up>
の ア プ ロ ー チ を 重 ね な が ら 次 へ と 進 む。Ushiro et al. ‘Discourse Based Lexical Inferencing in EFL
Reading : Focusing on Depth of Vocabulary Knowledge and Cue Availability’,(ARELE Vol. 25.(2013 : 77-92)
)
# 荒 , 吉田(2013)は小規模な調査ではあるが「Reading in English の際の inferring strategy(アンケー
ト)
」を実施し,推理力と英語読解力の相関を調査した結果,相関がかなり高いことが判明した。(Appendix(A))
もちろん統計学上の相関 <correlation> は因果関係を示すものではなく,その度合いは相関の有無,
強弱の係数に過ぎないが,我々は推理力を原因,読解力を結果と解釈し,推理力が読解力導くと考える。
それが,英語の理解 <comprehension> 指導上の我々教師としての直感 <intuition> と経験に合致する。
吉田のほぼ 30 年間に及ぶ NILE <Newspapers in Language Education> の大学での英語授業実践では,
英字新聞記事を読む場合の <global cues> となる読み手のその記事に関する背景的知識,問題意識,興
味・関心,好奇心に加え,記事に付されたタイトル,サブタイトル,報道写真とその解説,中抜きの英
文,逆ピラミッド形が特徴とされる新聞記事の最初の数行が特に重要であることを読解方略 <reading
strategy> として教えている。これらはすべて推理力 <referencing> に直結した要素であり,前述した
読解の際のスキーマや仮説作り <hypothesis generation> に少なからず関わっている。Yoshida : ‘Newspaper in Language Education(NILE): Rationale, Method and Action’(2006 : 55-59)
#1)の(2)<sociolinguistic>,(3)<discourse competence> 及び 2)<inference> に関して留意す
べきは,社交言語能力,談話・文章構成能力,推論の能力とも,必ずしも,英語力にのみ限定される能
力ではなく,母語である日本語にも共通する能力であり,従って日本語からのプラスの転移 <positive
transfer> が英語力の基礎になっているのではないかという議論がある。さらに,対話の場に相応しい
言葉選びをすること,筋の通ったパラグラフを用いること,世界の知識 <knowledge of the world>,常識,
理解しようとしている話題に対する興味と関心,好奇心,思い入れなどは言個別語の枠を超えた,普遍
的 <universal> な言語能力かも知れない。しかしながら,このことを踏まえながらも,本稿のスタンス
はあくまでもあらゆるレベルで実践されている「英語教育」の現場である教室でその対象とされていな
ければならない面を英語の力として取り込むことを主張している。社交言語能力,談話能力,推理とい
う認知の力 <cognitive power> はまぎれもなく英語使用者が備え持つべき英語の一部として教えなけれ
ばならない英語そのものの力であると考える。この点,我が国の英語教授法上,この面の指導が充分で
はなかったことへの反省を踏まえての主張でもあることにも注意されたい。
3)
各種テストによって捉えられる力
(1) 学力(達成)テスト <achievement test> : 教育現場で英語の力と言った場合の尺度は,それが
計られる時(授業,学期,学年)ごとに,その時点までに学習者が習得した授業内容の到達レベル・成
績を現わす。形成的評価 <formative evaluation> と呼ばれることもある。尺度は授業内容である。
(2)
能力(熟達)テスト <proficiency test> : 持てる英語の力で「何が出来るか」が尺度のテストで
ある。
標準化されたテストの種類としては次が一般に用いられている。 STEP テスト(実用英語技能検定):
中学校および高校教員として準 1 級以上の英語力が望まれている。TOEFL(Test of English as a Foreign
Language): 多くの英語国の大学は留学生に対し 550 点から 600 点を要求している。EFL に携わる我が
国の英語教員には 600 点以上の英語力が望まれる。TOEIC(Test of English for International Communication): 国際語としての英語のコミュニケーション能力の測定を行う。主として聴解力と読解力からな
り,990 点満点である。
『英語科教育の理論と実践』(松村,青木他)
(現代教育社,1996),
「英語外部
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人間発達文化学類論集 第 18 号
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試験」
『英語教育』
(大修館書店)2013 年増刊号 (2013)。これらに,クローズ・テスト <close test>
を加えることが出来る。これは <proficiency test> のひとつとされ,被験者に比較的難度の低い 50 個
程度の空白が出来る程度の長さの英文を用いる。アトランダムに n 語(ふつう 5 から 7 語)ごとに単語
を抜き,空所とする。被験者は文脈中の冗長性 <redundancy> 及び文法上の推理 <grammatical expectancy, inference> を活用して空所に単語を埋める。前述した推論する力を測定するのに適しており,信
頼度が高いテストであるとされる。
『英語教育現代キーワード事典』安藤編(増進堂)
(1991)
(3) 適正テスト <aptitude test> : 具体的な使用目的に適する英語力かどうかを測定する。例えば,
医療現場での通訳に適する英語力かどうか,裁判所での通訳にはどうか,国際線航空機の添乗員として
の英語力,専門分野の学会で論文を英語で発表出来るのに適している英語力か,目下話題の,
「高校英
語授業はすべて英語で」に応えうる教室英語 <classroom English> の力か,等。ESP<English for Specific Purposes> のための英語力を測定するテストである。
# 吉田は,全国共通一次テスト(現,大学入試センター試験)はこれら三種類の尺度の使い方が,極
めて不分明で,何を計ろうとしているのか明快ではないという批判を発表したことがある。吉田 :「共
通一次テスト雑感」JACET 東北支部ニュースレター (1984 : 5-6)
II. 英語の「知識」<knowledge> とその「使用」<proficiency>
「英文法の知識が英語の流暢さを邪魔している」,「英文法の知識 <USAGE> があるから英語がスムー
スに使える <USE> とは限らない」
,は教室現場でよく耳にする。いわゆる「使用上の知識」と「知識
の使用」のコンフリクトの問題である。
USAGE : 使用上の知識
...that part of performance which makes evident the extent to which the language user demonstrates his
knowledge of linguistic rules.
USE : 知識の使用
...that part of performance which makes evident the extent to which the language user demonstrates his
ability to use his knowledge of linguistic rules for effective communication.
(Widdowson(1973)in Ellis 1994 : 727))
英文の構造に関する知識 <structural knowledge> とその作り方に関する知識 <procedural knowledge> がそれを使用する力 <associative and automatic use> と結びつけるのが困難な内容と形なら,当
然知識の力への転換 <compilation> が困難となり,両者の間に接する面を設けるのは難しくなろう
<non-interface>。
吉田(2006, 2013)は Widdowson(1989)
, Bialystok(1982), McLaughlin(1987), DeKeyser(1998), 板垣
(2000)等の先行研究に学びながら,従来の方向とは逆の,使用から発想,構築され,知識とその使用
の間に接する面 <interface> が設定し易いシステムモデル[Fig. 1]を提起した。吉田 :「文法の知識と
運用の相互関係」(2006 : 4-27)
,
「文法の知識(knowledge of grammar)とその運用(use of grammar)
」
(2013 : 14)
吉田 孝 :「英語の力」のとらえ方
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KNOWING
USING
DK
USE
SK ⇆ PK
⇆
AssU ⇆ AutU
Knowledge Learning
Cued Practice
Communicative Practice
Compilation I
Compilation II
Compilation III
Learning
INTERFACE
Acquisition
Key :
(D)K :(Declarative)Knowledge「宣言的(ことばで説明出来る)知識」
SK : Structural Knowledge「構造(文法)についての知識 」
PK : Procedural Knowledge「手続(文の作り方)についての知識」
AssU : Associative Use「連合(あれこれ試行錯誤しながらの)使用」
AutU : Automatic Use「自動(無意識)的使用」
Compilation : 転換
INTERFACE :「接触面」
⇆ : bi-directional「両方向性」
[Fig. 1 Grammatical Knowledge and its Use]
教室文法 <educational, pedagogical, school grammar>(
「知識」
)が従来の方向性とは逆に「使用」か
ら構想され,学習方略 <learning strategies> が適用しやすいようにシステム化されているならば
<KNOWING(USAGE)= Learning> と <USING(USE= Acquisition> の 間 に は 両 方 向 性 の <INTERFACE> が設定しやすくなる。さらに,モデル[Fig. 1]では,英語構文の作り方 <procedure> を知識
として知っていても,実際に使用出来るとは限らないことに着目し,PK <procedural knowledge> を
<KNOWING>「知識」の枠の中にシステム化した。
モデル[Fig. 1]の有効性を確かめるために吉田は英語の関係代名詞構文を取りあげ,
「使用」から発
想された関係代名詞の学習文法を作成し,その文法知識と使用力の相関について,旧来の関係代名詞指
導と比較するためのミニ実験研究を実施した。N= 15 被験者の英語の力(レベル)= 英検準 2 級 5 名,
3 級 6 名,4 級 2 名,級なし 2 名。TOEIC に換算すれば C レベル(470-729)の下部と D(400-440)の
上部に分布。TOEFL ではほぼ 400-440 の間に相当。
実験は <non-interface position> に基づく仮説(1)と,下位仮説(2)からなる。
(1) 使用から逆算されたマニュアル文法の知識の方が学習から使用力に転換 <compile> し易い。
(2)
「マニュアル文法の知識でも,使用力に転換しにくいものがある。
調査項目は 4 通り :(1)知っていれば出来る。
(2)知っていても出来ない。
(3)知らなくとも出来る。
(4)知らなければ出来ない。
(
「知っていれば」= 関係代名詞構文の知識の度合い,
「出来る」= 正しい
使用の度合い) 調査は旧来の関係代名詞文法を基にしたテスト(Pre-test)と今回作成した関係代名詞
文法を基にしてテスト(Post-test)の二つの部分からなる。
実験の流れ : Pre-test →使用から構想された「関係代名詞文法」教授→ Post-test
次のような結果及び今後の課題を得た(Appendix(B)
):
1. 実験仮説(1)及び,下位仮説(2)の妥当性がほぼ確かめられた。
2. 実験仮説の反証となる,知識がないのに使用できるという結果の一部をどのように解釈するか。
(III 分析力 <Analyzability> と自動的力 <Automaticity> の枠組みの中で言及する。
)
吉田 :「文法の知識と運用の相互関係」
(2006 : 4-27),「アクション・リサーチ : 文法の知識と運用
─関係代名詞指導のミニ実験─(2006 : 28-41)
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#(文法)形式への注意,気づき <focus on form>,形式のきわだち <salience> とモデル
i. focus on form …overtly draws students’ attention to linguistic elements as they arise incidentally in lessons whose overriding focus is on meaning or communication.(Long, 1991, 45-46)
ii. focus on form often consists of an occasional shift of attention to linguistic code features by the teacher
and/or one or more students-triggered by perceived problems with comprehension or production.(Long &
Robinson, this volume 23)
. Doughty and Williams : Focus on Form in Classroom Second Language Acquisition(C.U.P. 1998)
i は,明らかに,モデル[Fig. 1]のシステムが示している USE〈使用〉から DK〈知識〉へ(⇠)の
方向性である。
AssU や AutU のレッスン中に生徒の注意を英語(文法構文)についての知識 <meta-linguistic knowledge> に転じる <Compilation II> のことである。ii は,
やはり USE のレッスン中に生徒が何らかのコミュ
ニケーションの問題が生じた際に,その問題 <salient problem> の個所に彼らの注意をフォーカスさせ,
問題の性質に気付かせることである。
Yoshida(2013)は ‘Translation as a reading strategy(Research Notes)’ で大学レベルの <TEFLJ> 授業
から具体的な事例を示した :
Thus, the Grammar-Translation Method(based on <meta-linguistic knowledge>)as a teaching strategy
provides teachers with a quick way to identify and correct learners’ errors in reading, making it easy for
teachers to discover and pinpoint the trouble spots learners are struggling with. If we check the result of our
students’ translation in Japanese, we will easily notice problems with their processing of reading in English,
and may comment, e.g., “Ah, you have taken the object noun for the subject noun,” “You haven’t realized the
objective complement noun in the sentence,” “You were not aware that the sentence pattern here is S + V+
O + C,” or “You were not able to identify the antecedent noun of the relative clause in the sentence.” Examples such as these are easy to cite from our classroom experience. Yoshida(2013 : 76)さらに,#Swain
(1985)が提唱した出力仮説 <Output Hypothesis> の「言語知識についての仮説を検証する機会」はモ
デル(Fig. 1)では,DK から USE の方向性として解釈出来る。
III. 分析力 <Analyzability> と自動的力 <Automaticity>
この角度には従来から英語の力の捉え方の枠組みとして,
「英語について(about English)」と「英語
そのもの(English itself)
」
,正確さ <accuracy> と流暢さ <fluency>,意識的使用 <conscious use> と
無意識的使用 <unconscious use>,など様々な表現が与えられて来た。英語教育研究と授業では,両者
間の移行(流れ,移行,転換 <compilation>,< ⇆ >)は英語の力の問題を扱う際には避けて通れない
問題だからである。英語の力を通時的,共時的に,各授業毎に,学期を通して,個々の学習者について,
クラス全体に関して正確に把握することは教える者には絶えず要求されている。
以下,Bialystok(1988)が示した二つの軸 <two dimensional> からなる枠[Fig. 2]に言及しながら論
究する。(正確さ <accuracy>,流暢さ <fluency> という次元からの解説には,
和泉伸一 :『英語教育』
(大
修館書店 10 月号)(2013 : 10-13)
)
EFL 学習者が A から D に到達するまでに経由する中間段階 <interlanguage stage> の一般的ルートは
次の 3 種類である。 A-B-D : {A} 英語の知識・使用力ゼロ→ {B} 英語授業で知識を習得,英語使用の学習→ {D} 知識と
使用両方の力の最終段階に到達。 典型的な日本の学習者の英語の力のたどるルート。
antecedent noun of the relative clause in the sentence.” Examples such as these are easy to cite from our classroom
experience.
Yoshida (2013: 76)
さらに、#Swain (1985)が提唱した出力仮説<Output Hypothesis>の「言
知識についての仮説を検証する機会」はモデル(Fig. 1)では、DK から USE の方向性として解釈出来る。
吉田 孝 :「英語の力」のとらえ方
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III. 分析力<Analyzability>と自動的力<Automaticity>
A-C-B-D : {A}
英語の知識・使用力ゼロ→ {C} 英語の知識ゼロでも英語の使用力あり→
{B} 英語授
この角度には従来から英語の力の捉え方の枠組みとして、
「英語について(about English)」
と「英語そのも
業での知識の学習→
D 知識と使用両方の力の段階に到達。いわゆる帰国子女の英語の力
(English
itself)」、正確さ<accuracy>と流暢さ<fluency>、意識的使用<conscious
use>と無意識的使用
のルート。
unconscious use>、など様々な表現が与えられて来た。英語教育研究と授業では、両者間の移行(流れ、移行、転
A-B-D-C : {A} → {B} → {D} ルート後 {C} へ。P の英語使用が完全自動化し,知識依存が無くなる。
<compilation>、<⇆ >)は英語の力の問題を扱う際には避けて通れない.問題だからである。 英語の力を通時的
問われれば K の取出し <retrieval> が不可能ではない。II のミニ実験の課題「実験仮説の反証となる,
共時的に、各授業毎に、学期を通して、個々の学習者について、クラス全体に関して正確に把握することは教える
知識がないのに使用できるというデータをどのように解釈するか」は上記ルート A-B-D-C のひとつの
には絶えず要求されている。
結果として説明可能である。
以下、Bialystok (1988)が示した二つの軸<two
[Fig. 2] に言及しながら論究する。
# 中間言語 <interlanguage>
が意味している言語とは P, dimensional>からなる枠
K の次元 <dimension> に継続的に分布して
確さ<accuracy>、流暢さ<fluency)という次元からの解説には、和泉伸一:
『英語教育』
(大修館書店 10 月号
いる全ての状態の言語を指している。
(2013:10-13))
P = Proficiency (Automaticity)「 使用」
C
(100)
Intermediate stage
Ultimate stage
D
(2)
(100)
K = Knowledge (Analyzability)「知識」
(0)
Initial stage
Intermediate stage
(1)
A
(0)
B
[Fig. 2 Bialystok(1988)remodeled by Yoshida]
Key :
[Fig. 2: Bialystok (1988) remodeled by Yoshida]
P 軸 : 英語の使用力,USING(USE)
,Automaticity +/−(Automatic/Nonautomatic)
K 軸 : 英語の知識,KNOWING
(USAGE)
,Analyzed +/ −(Analyzed/Nonanalyzed)
Key:
A = 始発段階(Initial stage)
(Automatic/Nonautomatic)
P(1)
軸:英語の使用力、USING
B = 中間段階
(Intermediate stage(1)) (USE), Automaticity +/C = 中間段階(2)(Intermediate stage(2))
K 軸:英語の知識, KNOWING (USAGE), Analyzed +/ - (Analyzed/Nonanalyzed)
D = 最終到達段階(Ultimate stage)
P(0)= 英語は自動的にほとんど出来ない
A = 始発段階 (Initial stage)
K(0)= 英語についての知識ほとんどない
B = 中間段階 (1)(Intermediate stage (1))
P(100)= 英語はほぼ自動的に駆使出来る
K(100)= 英語についての知識も十分持っている
C = 中間段階 (2)(Intermediate stage (2))
P-K = 組合わされた状態(各段階内での位置づけ 0 から 100 の間に分布)
D = 最終到達段階 (Ultimate stage)
P(0) = 英語は自動的にほとんど出来ない
VI. エピローグにかえて : 日本の英語教育(TEFLJ)
K(0) = 英語についての知識ほとんどない
1. 中間言語
<interlanguage>
の考えを発展させた Corder(1967)及び Selinker(1967, 1972)の概念
P(100)
= 英語はほぼ自動的に駆使出来る
規定にも拘わらず,「中間」という日本語訳に惑わされて,英語の力をとらえようとする際に,III で記
K(100) = 英語についての知識も十分持っている
述した始発段階 {A}= 初期(英語力ゼロ)と最終到達段階 {D} の「中央」の位置に,静的 <static> に
P-K = 組合わされた状態 (各段階内での位置づけ 0 から 100 の間に分布)
存在する不完全,中途半端な英語の力としてとらえてしまう傾向がある。それでは <interlanguage> の
定義を逸脱し,学習者の英語の上達状況を継続的にプロッティング,指導することが出来ない。本稿 II
及び III で詳述したように,
「中間言語」は知識も使用の力も行きつ戻りつ進む,継続的で動的 <dy-
26
人間発達文化学類論集 第 18 号
2013 年 12 月
namic> な,学習者が学習の段階 {B,C,D} ごとに発揮出来る「力」<communicative competence>(本稿
I-2-1))の状態を指すものであることを認識して,英語指導を展開すべきである。
2. TESL と TEFL の違いはいくら強調してもし過ぎることはない。英語に常時とりかこまれた環境
で,母語の次(second)の言語として英語を身につけなければ文字通り生きて行けない環境での英語教
育(TESL)と,英語教室の外では英語を使用しなければならない機会が事実上皆無の日本(TEFLJ)
とでは英語教育の目的も,教授法も , その研究内容も,大きく異なったものでなければならないことは
多言を要さない。本論で対象とした「中間言語」は日本という EFL の教育環境においては,ESL のそ
れとは違うということである。しかし,この点を考慮に入れずに,英語の力,…その知識も使用の力も
…を論じ英語教育政策作りに関わっている人たちが多いのは誠に残念なことである。先にも触れた碩学
安井稔博士の嘆き,「素人による素人のための提案,浅薄化しつつある現代の英語教育界」
(ママ)を再
び思い起こさざるを得ない。本稿が,浅薄な国際化議論を遠ざけ,言語教育の価値観を深めながら,小
学校の英語教育を含めた日本の英語教育 <TEFLJ> が正しい軌道に戻るのに幾分でも寄与出来るなら
ば幸いである。
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紀要第 14 号.
(2013 年 10 月 1 日受理)
A Profile of Competence in English in TEFLJ
YOSHIDA Takashi
The paper attempts to draw a profile of competence in English( 英 語 の 力 )and Interlanguage as perceived in Teaching of English as a Foreign Language in Japan with special reference to meta-linguistic knowledge and its use. The description is given specifically in terms of basic SLA frames of reference such as
Communicative Competence, Inferring, Test, USAGE and USE, Analyzability and Automaticity. At various
points, the paper also makes reference to Accuracy and Fluency, Focus on Form, Output Hypothesis, and
Saliency. A system model is proposed to show how neo-prescriptive grammar can be organized not from
KNOWING to USING but from USING to KNOWING. Two sets of results are introduced obtained from an
investigation by questionnaire on global-cue based inferring and from a series of mini experimental research
into correlation between Knowledge and Use. These are designed to prove the validity of the viewpoints
employed throughout this paper for the description of competence in English and Interlanguage. Finally, the
paper emphasizes the importance of recognition among those concerned with TEFLJ about the difference between EFL and ESL and concludes that this recognition is crucial in planning English Education at all levels
in Japan.
28
人間発達文化学類論集 第 18 号
2013 年 12 月
Appendices
Appendix(A)
荒 哲,吉田 孝 : Reading in English の際の inferring strategy(アンケート)
(下記は吉田が 2013 年 1 月に実施した福島大学人間発達文化学類(2012 度後期)英語 II(上級クラス)
N=10 からの報告)(荒のアンケート(N=28 & N=68)は現在分析中)
調査項目 : 状況,常識,場,対人関係などソーシアルな文脈,手がかりに依存した推理に基づく理解ス
トラテジー使用による推理力と英語読解力の相関 <Inferring based on global context and cues, top-down
(field-dependent)strategy(vis-à-vis local context and cues, bottom-up(field- independent)strategy)>
結果 : かなり高い相関が求められた。
課題 : 次の A, B 二人の対話からなる文中のアンダーライン部はどんな意味か,前後関係から類推せよ。
A. I finally found Mr. Right !(1) Yesterday I got the chance to have lunch with Ryan from the sales department, who I always thought was cute. He is smart and witty and I instantly fell in love with him.
B. Ah, Meg…
A. Let me finish.(2)
He said he likes driving. Just imagine he says “Hop in the car” (3)and takes me
to an empty beach. Then he gently runs his fingers through my hair while watching the beautiful sunset and
whispers into my ear, “I love you.”
B. Meg, I hate to rain on your parade(4)
, but he is married and a father of the two.
(1)推理力 : 課題各問 25 点×4 問 =100 点(10 点満点に換算処理)
(2)英語力(授業期間中実施された期末テスト合計点 100 点(10 点満点に換算処理)
各得点順位,標準偏差(SD)
学生
M
A
T
N
S
P
H
G
B
D
計
平均点
標準偏差
Y(推理力) 1
1
7
1
7
4
7
4
4
7
43
4.3
2.07
X(英語力) 9
1
9
3
5
5
5
3
5
1
46
4.6
2.24
Appendix(B)
文法知識と使用力の相関 :「使用」から発想された関係代名詞の学習文法の有効性確認のミニ実験
吉田 孝 :「英語の力」のとらえ方
29
(N= 15 被験者の英語の力(レベル)= 英検準 2 級 5 名,3 級 6 名,4 級 2 名,級なし 2 名。TOEIC
に換算すればほぼ C レベル(470-729)の下と D(400-440)の上部に分布。TOEFL ではほぼ 400-440
の間に相当。)
実験は <non-interface position hypothesis> に基づく。
仮説 :「使用から逆算されたマニュアル文法の知識の方が学習から使用力に転換 <compile> し易い。
」
調査項目は 4 通り :(1)知っていれば出来る。
(2)知っていても出来ない。
(3)知らなくとも出来る。
(4)知らなければ出来ない。
(
「知っていれば」= 関係代名詞構文の知識の度合い,
「出来る」= 正し
い使用の度合い)
調査は旧来の関係代名詞文法を基にしたテスト(Pre-test)と今回作成した関係代名詞文法を基にし
た テ ス ト(Post-test) の 二 つ の 部 分 か ら な る。 実 験 の 流 れ : Pre-test → 新 関 係 代 名 詞 文 法 の 授 業
→ Post-test
結果 : 実験仮説の妥当性がほぼ確かめられた。
<Pre-test>
KNOWING
USING
SK – AssU
PK -- AssU
(1)知っていれば出来る
1名
1名
(2)知っていても出来ない
3名
1名
(3)知らなくとも出来る
0名
0名
(4)知らなければ出来ない
11 名
13 名
KNOWING
USING
SK – AssU
PK -- AssU
(1)知っていれば出来る
8名
5名
(2)知っていても出来ない
5名
1名
(3)知らなくとも出来る
0名
3名
(4)知らなければ出来ない
2名
6名
〔計 15 名〕
<Post-test>
〔計 15 名〕
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